第96回雇用分科会持ち回りで開催

2020年4月17日

 昨今の新型コロナウイルス問題のため、各種会議が軒並み中止される中、第96回労働政策審議会障害者雇用分科会が持ち回りにより開催され、3月26日、厚生労働省職業安定局障害者雇用対策課 小野寺徳子課長が日視連本部の日本視覚障害者センターを訪れ、竹下義樹会長に対して、審議すべき議題について説明し、意見交換しました。審議の議題は次の通りです。

議題1.障害者の雇用の促進等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案要綱について(諮問)
議題2.障害者の雇用の促進等に関する法律施行規則第二十条の二第二項の定に基づき厚生労働大臣が定める障害者介助等助成金の額等を定める件及び障害者の雇用の促進等に関する法律施行規則第二十条の四第二項の規定に基づき厚生労働大臣が定める重度障害者等通勤対策助成金の額等を定める件の一部を改正する告示案要綱について(諮問) 
議題3.障害者雇用分科会における2020年度目標について 
議題4.障害者雇用率の0.1%引上げの時期について

 なお、各議題に対する竹下会長の意見表明は、事務局からの連絡を待って、文書で回答することとなりました。その結果、3月31日、各議題に対してそれぞれ意見を付して回答することになりました。竹下会長は、各議題に対して、文書にて次のように回答しました。

 議題1及び2の諮問案については妥当である、議題3及び4についても、厚生労働省案について了承する。その上で、次のような意見書を提出した。文書による意見は議事次第の議題4についてのみ求められているが、以下に述べるように、内容的には議題1から議題3にも及ぶことをご了解願いたい。
1.議題4について(障害者雇用率の0.1%引上げの時期)。民間企業の場合、現在は2.2%であるが、当初2.4%の数字を2.3%とした上でさらに猶予期間を置いたのであるから、予定通り、2.3%に引き上げることが当然と考える。よって、厚生労働省案には賛成する。経済界からは「景気動向やコロナ問題で大変だから雇用率の引き上げは困難」との意見もあるが、景気の良い時代に雇用率を達成していたかと言えばそうではない。コロナ騒動の影響で障害者が真っ先に解雇されないためにも、雇用率は規定通り上げるべきである。資料4によると、「各指標について、過去最高を更新中」とあり、また、民間企業の雇用状況を見ても、実雇用率が2%を超えたとある。このことは、法定雇用率制度ができた当初から考えると、隔世の感がある。しかし、視覚障害者の実感としては、いわゆる「61調査」における身体障害者の部位別の状況が公表されていない中、むしろ厳しさを増している。視覚障害者の場合、制度はあっても、社会資源が少なく、必要な訓練やジョブコーチ支援などが受けられない。これは、いくら雇用率を引き上げたからといって解決できる問題ではない。そこで、「61調査」で部位別の実態を明らかにするとともに、実雇用率が2%を超えた今だからこそ、雇用率にとらわれずに雇用の質について考え、障害の種別に応じた働き方、よりきめ細やかな支援の在り方(例えば、視覚障害の場合、中途視覚障害者の継続雇用支援など)について、具体的な対策を議論すべきである。

2.議題1及び2について(通勤に対する助成金制度の拡充)。本連合は、同行援護を通勤に使えるようにして欲しいという要望をかねてより行っていたことから、基本的に賛成する。この新しい制度は、障害者雇用納付金制度に基づく助成金と地域生活支援事業との合わせ技であるため、複雑な仕組みとなっており、実効性が懸念される。福祉制度の地域生活支援事業は、同行援護制度とは違ってメニュー事業なため、自治体格差が生じることは必至である。通勤という基本的なことに、自治体による地域格差が生じたり、障害者本人負担が生じないよう特段の配慮をお願いする。併せて、将来的には一般財源を導入して、必要な障害者がいつでもどこでも安心して利用できるような制度にすべきである。以上のことを踏まえて、厚生労働省案は妥当とする。 

3.障害者雇用納付金制度に基づく助成金の在り方について(財源問題)。障害者雇用納付金制度に基づく助成金は、法定雇用率が達成した暁には、納付金財源が枯渇するという制度的矛盾を内包している。本連合は、公務員などが障害者雇用納付金制度に基づく助成金や雇用保険財源の助成金を使えない問題を指摘し、公務員も民間企業と同様に使えるよう、一般財源の導入を要望している。そのために、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構法の改正が必要ならば、その改正も含めて検討すべきである。

4.議題3について(障害者雇用分科会における2020年度目標)厚生労働省案については、基本的に了承するが、以下のように意見を述べておきたい。目標項目案に「ハローワークのマッチング機能の評価」があるが、ハローワークでの目標設定は、失業率と新規求職者の動向を分析し、その新規求職と有効求職者(保留、就職を外した求職者=ハローワークの紹介に応じられる、働く意思と能力のある求職者)にどれだけの職業紹介を行い、その結果どれだけの就職数が出てくるかである。新規求職者数と就職者数からだけでは、ハローワークの努力、真のマッチング機能の評価はできない。したがって、ハローワークでの新規求職者数、有効求職者数、紹介件数、就職数を公表した上で目標設定をすべきである。そのことにより、紹介率、新規就職率、有効求職者就職率が正確に把握できる。難病、高次脳機能障害は、障害者手帳の対象とならなくても「障害者」として職業リハビリテーションの対象として支援される。2018年度は、年間でその他5,152人のうち発達障害が1,956人となっている。発達障害者の確認方法は、都道府県によって異なるが、精神保健福祉手帳、療育手帳の対象である。なぜその他の障害カテゴリーのままなのか疑問である。

【参考資料】厚労省ホームページ 第96回労働政策審議会 (障害者雇用分科会)会議の資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-rousei_126985.html