差別解消法実施に関する調査研究協力者会議

2015年8月11日

 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)は障害者基本法第4条に定める差別禁止の基本原則を具体化し、全ての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向けて、障害を理由とする差別の解消を推進することを目的として、平成25年6月26日に公布されました。
 具体的には、障害を理由とする差別等の権利侵害行為の禁止、及び社会的障壁の除去を怠ることによる権利侵害の防止を規定し、国及び地方公共団体の責務と国民の責務を定めています。昨年9月、差別解消法の基本方針策定がスタートし、今年2月24日、基本方針が閣議決定されました。これに基づいて、国及び地方公共団体等が、当該機関職員が適切に対応するために必要な要領(対応要領)と、事業者が適切に対応するために必要な指針(対応指針)の策定を進めています。

 この度、文部科学省では、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の実施に関する調査研究協力者会議」(調査研究協力者会議)を開催し、「文部科学省事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針」の検討を行いました。日本盲人会連合からは、工藤正一情報部長が出席しました。
  文部科学省の調査研究協力者会議は6月から7月にかけて集中的に開催され、第1回目が6月17日(趣旨説明、ヒアリング)、第2回目が6月30日(ヒアリング)、第3回目が7月7日(対応指針素案)、第4回目が7月21日(対応指針案)というスケジュールで進められました。これらの会議に臨むに当たり、視覚特別支援学校など教育現場の関係者とも意見交換を行い、対応要領に対する要望書(7月2日)、対応指針(案)に対する意見書(7月10日)を提出しました。
 ちなみに、当初、第3回目で「対応要領」が検討される予定でしたが、内閣府主催の合同ヒアリングで行われることになったため、協力者会議では検討されませんでした。内閣府合同ヒアリングのうち文部科学省に関しては、7月31日に開催され、日本盲人会連合から及川清隆副会長が出席して意見を述べ、意見書を提出しました。

 今後、この対応要領案並びに対応指針案に関しては、これまでに示された意見も参考にして最終案がまとめられます。8月中にパブリックコメントの手続きを経て決定された後、9月には官報で告示され、来年4月の施行に向け周知が図られます。

 文部科学省の調査研究協力者会議で出された様々な意見の中で、直接対応指針に関係しないものは、今後の施策の参考とするためにとりまとめられました。
 視覚障害に関する意見は次の通りです。
(1)特に視覚障害について、点字を教えられる教員が減ること、教員が短期間で異動することにより専門性の確保が困難になることを懸念。
(2)対応指針の対象外である国公立特別支援学校においても、障害者差別解消法に基づく取組の推進が必要。学校を設置する地方公共団体等が対応要領を定める際には、文部科学省の定める対応要領を参考にすると予想されるため、今後、対応要領を策定する際には、そのことも念頭に置いて検討することが重要。
(3)障害のある特別支援学校の教職員を支援し、在籍児童生徒への十分な教育効果を確保するためには、事務補助支援員の配置、音声ソフト付きパソコンなど支援機器の導入等の支援について、個々の学校に任せるのではなく、行政も支援することが必要。
(4)拡大教科書の標準的な規格に基づく試験問題の作成や高等部用拡大教科書の充実、通常の学級に在籍していても支援機関との連携体制が構築できるような環境の整備など、視覚障害のある児童生徒に対する支援の充実が必要。
(5)デジタル教科書のアクセシビリティの確保を図ることや、副教材や副読本等も障害のある児童生徒のためにテキストファイル等での提供に努めることが必要。また、高等学校において拡大教科書や点字教科書を使用する場合、検定教科書よりも実費負担が掛かる現状があり、一部の自治体が取り組んでいるような補助制度が必要。
(6)公立図書館での障害者サービスの充実(視覚障害者や発達障害者、上肢障害者などの読書をすることに困難のある障害者に対して、利用可能な資料を提供すること)が更に必要。