表紙 もっと知ろう障害福祉サービス 視覚障害当事者が運営する事業化への道 テキスト 社会福祉法人日本視覚障害者団体連合 目次 はじめに 1ページ 1 障害福祉サービスとは 2ページ 2 措置制度と契約制度 6ページ 3 委託事業と指定事業 9ページ 4 自立支援給付(個別給付)事業と地域生活支援事業 13ページ 5 障害福祉事業と介護保険事業のすみわけ 14ページ 6 福祉事業における障害福祉課のスタンス 16ページ 7 同行援護事業 17ページ 8 就労支援事業A型B型 20ページ 9 共同生活支援事業 24ページ 10 相談支援事業 26ページ ※本テキストに関する注意 ・本テキストの記載内容は、以下の動画で説明しています。   URL https://www.youtube.com/watch?v=RhMcKSkqkhY ・掲載内容は令和7年12月現在の情報を掲載しています。 ・障害福祉サービスは自治体によって裁量権があり、各自治体で実施する障害福祉サービスの内容や要件が異なることがあります。 1ページ はじめに  日本視覚障害者団体連合(以下、本連合)は、加盟団体支援プロジェクト委員会を中心に、本連合の加盟団体の組織強化を進めています。この取り組みの一環として、同委員会は令和4年12月に報告書「加盟団体の組織強化に向けて」をとりまとめ、本連合の加盟団体が組織強化を図るためには「積極的に事業を実施すること」が必要であることを提言しました。  そこで、同委員会は本連合の加盟団体、つまり視覚障害の当事者団体が障害福祉サービスの事業を実施することを後押しするための資料として、動画「もっと知ろう障害福祉サービス 視覚障害当事者が運営する事業化への道」を作成しました。本テキストは、この動画で説明した内容をまとめたものです。  視覚障害の当事者団体が障害福祉サービスの事業を実施するメリットとはなんだろう。  それは、視覚障害の当事者が運営することで、利用者たる視覚障害者に対してきめの細かいサービスを提供できることに尽きるでしょう。利用者たる視覚障害者のニーズを第一に考えたサービスを提供することで、地域の視覚障害者のQOLを向上させることが期待できます。このことができるのは視覚障害の当事者が運営する事業所だけではないでしょうか。  また、障害福祉サービスを実施することで地域の視覚障害者との繋がりが増えること、事業を行うことで組織・団体活動を続ける上で必要な活動費や事務員等を確保できること等、視覚障害の当事者団体を運営する上でのメリットも大きいです。  しかし、障害福祉サービスを立ち上げ、事業を運営するためには様々な知識が必要になります。そのため、前述の動画及び本テキストでは、この知識を補うために必要な内容を整理しています。  障害福祉サービスを立ち上げ、事業を運営することは簡単なことではありません。ただ、その一歩を踏み出すには、各地の視覚障害者の「やる気」があれば難しくありません。皆さんの一歩を動画及び本テキストで後押しできれば幸いです。 2ページ 1 障害福祉サービスとは 1.障害福祉サービスとは  生まれつきや事故など、さまざまな理由によって、日常生活を送るのに困難を抱え、「支援が必要となった」ときに、その人の生活を支えるサービスのことです。  サービスは、個々の障害のある人々の障害程度や勘案すべき事項(社会活動や支援者、居住などの状況)を踏まえ、個別に支給決定が行われる「障害福祉サービス」と、市町村の創意工夫により利用者の状況に応じて柔軟に実施できる「地域生活支援事業」に大別されます。  「障害福祉サービス」は、介護の支援を受ける「介護給付」、訓練などの支援を受ける「訓練等給付」に位置付けられ、それぞれ、利用の際のプロセスが異なります。 (1)訪問系サービス  自宅で生活する際に必要な支援を提供するサービス。 (2)日中活動系サービス  日中の活動の場を提供し、社会参加やリハビリテーションの支援を提供するサービス。 (3)施設系サービス  特定の施設に入所して、生活全般の支援を提供するサービス。 (4)居住支援系サービス  自宅やグループホームなどでの支援を提供するサービス。 (5)訓練系・就労系サービス  就労や職業訓練を受けるための支援を提供するサービス。 2.視覚障害者が利用する障害福祉サービスなど @居宅介護 A同行援護 B重度訪問介護(重複障害がある者が利用することがある) C生活介護(重複障害がある者が利用することがある) D施設入所支援(自立訓練や就労移行支援と併用して利用) E共同生活援助 F自立訓練(機能訓練) G就労移行支援 H就労継続支援A型(雇用型) I就労継続支援B型(非雇用型) J就労定着支援 K重度障害者等就労支援特別事業(地域生活支援促進事業として実施) 3.障害福祉サービスの内容 (1)介護給付で利用する訪問系サービス @居宅介護  日常生活の支援(食事、排泄、入浴など)を提供するサービス。 A重度訪問介護  重度の障害者に対して、長時間にわたる介護を提供するサービス。 B同行援護  視覚障害者が外出する際に、移動の支援や必要な情報提供を行うサービス。 C行動援護  知的障害者または精神障害者が安全に生活できるよう支援を提供するサービス。 D重度障害者等包括支援  重度の障害者が地域で自立した生活を送るために、複数のサービスを包括的に提供する制度。 (2)介護給付で利用する日中活動系サービス @短期入所  一時的に施設に入所している障害者に介護や支援を提供するサービス。 A療養介護  医療的ケアを必要とする障害者に対して、日中の介護と療養を提供するサービス。 B生活介護  日常生活の介助や創作活動、軽作業などを提供し、日中活動の支援を提供するサービス。 (3)介護給付で利用する施設系サービス @施設入所支援  施設に長期間入所している障害者に対して、生活全般の支援を提供するサービス。 (4)訓練等給付で利用する居住支援系サービス @自立生活援助  一人暮らしをしている障害者に対して、必要に応じて生活支援を提供するサービス。 A共同生活援助  共同で生活している障害者に対して、日常生活の支援を提供するサービス。 (5)訓練等給付で利用する訓練系・就労系サービス @自立訓練(機能訓練)  自立した生活を送るための訓練を提供するサービス。 A自立訓練(生活訓練)  自立した生活を送るための訓練を提供するサービス。 B就労移行支援  一般企業への就労を目指す障害者に対して、職業訓練や就職活動の支援を提供するサービス。 C就労継続支援A型(雇用型)  一般企業での就労が難しい障害者に対して、継続的な就労の場を提供するサービス。 D就労継続支援B型(非雇用型)  一般企業での就労が難しい障害者に対して、継続的な就労の場を提供するサービス。 E就労定着支援  就職後の職場定着支援を提供するサービス。  入所施設のサービスは、昼のサービスと夜のサービスに分かれており、サービスの組み合わせを選択できます。例えば、常時介護が必要な方は、日中活動の生活介護と、住まいの場として施設入所支援を組み合わせて利用することができます。地域生活に移行した場合でも、日中は生活介護を利用し続けることが可能です。 (6)その他のサービス @重度障害者等就労支援特別事業(地域生活支援促進事業)  重度障害者等に対する通勤支援や職場における介助について、重度訪問介護、同行援護、行動援護と同等のサービスを提供するサービス。 A就労選択支援(令和7年10月から開始)  障害者が自分に合った就労先や働き方を選択できるよう、就労アセスメントを通して支援を提供するサービス。 B児童発達支援  小学校就学前の障害児が通所して日常生活や社会参加に必要な力を育むための療育サービス。 C放課後等デイサービス  学校就学中の障害児に対して、放課後や休日に生活能力の向上訓練や社会交流の機会を提供するサービス。 D医療的ケア児支援  医療的ケア(人工呼吸器、経管栄養、吸引など)を日常的に必要とする子どもとその家族を、社会全体で支えるための仕組みやサービス。 6ページ 2 措置制度と契約制度 1.措置制度とは  行政がサービスの必要性を判断し、利用者に適切な施設や支援を決定する制度です。かつては福祉サービスの主流でしたが、利用者の意思が反映されにくいという課題がありました。 2.契約制度とは  利用者が自ら福祉サービスを選び、事業者と契約を結ぶ制度です。現在の福祉サービスの基本的な仕組みであり、利用者の選択の自由が尊重されます。 3.措置制度と契約制度の違い  措置制度は行政主導でサービスを提供するのに対し、契約制度は利用者が主体的にサービスを選択できる点が大きな違いです。 4.措置制度と契約制度の具体例 (1)措置制度の具体例 ・児童養護施設への入所  行政が保護の必要性を判断し、児童を施設に措置する。 ・生活保護の支援  生活困窮者に対し、行政が必要な支援を決定し提供する。 ・障害者支援施設への入所  障害の程度に応じて、行政が適切な施設を選び入所を決定する。  例 盲養護老人ホーム (2)契約制度の具体例 ・介護保険サービスの利用  利用者が介護事業者と契約し、訪問介護やデイサービスを選択する。 ・障害福祉サービスの利用  障害者が自ら事業者を選び、ヘルパー利用や就労支援を契約する。  例 居宅介護、同行援護、就労継続支援など ・保育園の選択  保護者が希望する保育園と契約し、子どもを預ける。 (3)措置制度から契約制度への変遷  措置制度が採られるようになった要因としては以下の理由が考えられます。 ・各種福祉サービスの整備が不十分で、それらの資源に限りがあったため、行政側が限られた福祉資源を必要に応じて効率的な割り当てを行う必要があったこと。 ・生活保護法や児童福祉法でも措置制度が採られており、身体障害者福祉法でも参考にされたこと。  以上のように、措置制度については、戦後の日本における福祉サービスの創設において、重要な役割を担ってきたことは事実です。ただし、長い時間のうちに措置制度の根本的な課題が目立つようになり、制度の変更が必要になったことから、契約制度への移行が図られるようになりました。 5.措置制度と契約制度のメリットとデメリット (1)措置制度 @メリット ・行政がサービスを決定するため、利用者が手続きをする負担が少ない。 ・低所得者や支援が必要な人に対して、確実にサービスが提供される。 ・公的な支援があるため、費用負担が軽減される。 ・行政が限られた福祉資源を必要に応じて、効率的に割り当てることができる。 Aデメリット ・利用者の希望が反映されにくく、利用者が主体的に選択できる自由が少ない。 ・行政の判断によるため、サービスの質にばらつきが出る可能性がある。 ・ 競争が少ないため、サービスの向上が進みにくい。 (2)契約制度 @メリット ・利用者が自分のニーズに合ったサービスを選択できる。 ・競争があるため、サービスの質が向上しやすい。 ・介護保険などの制度を活用し、柔軟な支援を受けられる。 Aデメリット ・契約制度では、利用者がサービスを選択する自由がある一方で、自己負担が増加するケースが見られる。特に低所得者は、必要なサービスを受けるのが難しくなることがある。 ・競争が生まれたことでサービスの質が向上する一方で、事業者によってサービスの質に差が出ることもあり、利用者のニーズに十分応えられない場合もある。 ・措置制度では行政がサービスを決定してきたが、契約制度では利用者が主体となるため、行政の役割が減少し、適切なサービスを受けられない人が出る可能性がある。 ・契約制度では、利用者がサービスを選ぶ際に契約内容を理解する必要があるため、高齢者や障害者などにとっては負担が大きくなることがある。 ・競争が激化することで価格競争が進み、事業者の経営が不安定になることがある。特に小規模な事業者は、サービスの質を維持しながら経営を続けるのが難しくなる場合がある。 9ページ 3 委託事業と指定事業 1.委託事業と指定事業  委託事業と指定事業は、行政や自治体が特定の業務を外部に任せる際の仕組みです。それぞれ異なる特徴があります。 (1)委託事業 ・行政が民間企業や団体に業務を委託し、契約に基づいて実施される事業。対価(委託費)が支払われ、業務の遂行に関する責任は委託先にある。  例 公共施設の運営、清掃業務、福祉サービスの提供など。 (2)指定事業 ・法律や条例に基づき、特定の事業者が指定を受けて実施する事業。指定を受ける事業者は、一定の基準や条件を満たす必要がある。  例 指定管理者制度による公共施設の運営、介護保険サービスの提供など。  委託事業は契約に基づく業務であり、指定事業は法的な枠組みの中で特定の事業者が選ばれる点が大きな違いです。  障害者団体への委託事業は、行政や企業が障害者の就労支援を目的として業務を委託する仕組みです。これにより、障害者の雇用機会が増え、社会参加が促進されます。 2.委託事業 (1)主な委託事業の内容 ・データ入力・事務作業(名刺入力、領収書整理、アンケート集計など) ・軽作業(袋詰め、箱詰め、シール貼り、検品作業など) ・職業訓練の委託(企業や福祉団体が障害者向けの職業訓練を提供) ・デザイン・制作業務(ロゴ制作、チラシ作成、ポスター制作など) ・施設外就労(企業の業務を障害者施設で請け負う形態) (2)委託事業のメリット ・企業側 業務コストの削減、CSR活動の推進、障害者雇用のノウハウ獲得 など ・障害者側 安定した仕事の提供、職業スキルの向上、社会参加の促進 など (3)委託事業のデメリット ・企業側 コストが不明瞭、偽装請負のリスク、受託者の管理が難しい など ・障害者側 収入が不安定、社会保険の適用外、労働基準法が適用されない など 3.指定障害福祉サービス事業  指定障害福祉サービス事業とは、障害者総合支援法に基づき、自治体が一定の基準を満たした事業者を指定し、福祉サービスを提供する制度です。指定を受けた事業者は、国や自治体の補助を受けながら、障害者の生活支援や就労支援を行います。 (1)指定障害福祉サービスの種類 ・居宅介護(訪問介護) ・重度訪問介護 ・同行援護 ・行動援護 ・生活介護 ・就労移行支援 ・就労継続支援(A型・B型) ・自立訓練(機能訓練・生活訓練) ・短期入所 ・共同生活援助(グループホーム) (2)指定事業者の要件 ・人員基準(必要な資格を持つ職員の配置) ・設備基準(適切な施設・環境の整備) ・運営基準(利用者の権利を守る適正な運営) (3)指定事業のメリット @安定した収益  指定を受けることで、自治体や国からの給付金を受け取ることができ、経営の安定に繋がる。 A利用者への信頼性向上  公的な指定を受けることで、利用者やその家族に安心感を提供できる。 B債権回収のリスクが低い  国保連を通じて給付金を受け取るため、未回収のリスクが少ない。 C地域社会への貢献  障害者の支援を通じ、地域社会に貢献し、社会的な評価を高めることができる。 D多機能型事業の活用  生活介護や就労支援など、複数のサービスを組み合わせることで、利用者の選択肢を広げられる。 (4)指定事業のデメリット @運営の自由度が制限される  指定を受けることで、自治体や国の規定に従う必要があり、柔軟な運営が難しくなる。 A財務的な負担  報酬費単価が低く設定されることがあり、十分な収益を確保するのが難しい場合がある。 B競争が激しい  地域によっては指定事業者の数が多く、競争が激しくなるため、利用者の確保が難しい場合がある。 C公共性の維持が求められる  利益追求よりも公共性を優先する必要があるため、経営のバランスが難しい。 D契約内容の透明性が必要  指定事業者の運営過程において、不正や不透明な手法が用いられるリスクがあるため、慎重な対応が求められる。 4.指定管理者制度  指定管理者制度は、2003年(平成15年)に地方自治法改正で導入され、地方公共団体が公の施設の管理運営を指定した法人その他の団体に代行させる制度です。 (1)対象となる施設  住民の福祉を増進する目的で利用に供される施設が対象です。具体的には、スポーツセンター、公園、美術館、公民館、児童館など幅広い施設が含まれます。  視覚障害者団体では、点字図書館や視聴覚情報センターの指定管理を受けている例があります。 (2)指定管理者になれる団体  地方公共団体が指定する「法人その他の団体」が対象で、民間事業者やNPO法人、地域公益法人などが幅広く含まれます。 (3) 制度の特徴 ・指定管理者は、条例の定めにより施設の利用料金を自己の収入として徴収し、管理経費に充てることが可能です(利用料金制)。 ・施設の利用承認などの使用許可も、指定管理者が行うことができます。 ・地方公共団体は、施設の設置者として、条例で管理の基準や業務の範囲などを定めます。 13ページ 4 自立支援給付(個別給付)事業と地域生活支援事業 1.自立支援給付  自立支援給付(個別給付)は、利用するサービス費用を行政が障害のある方へ個別に給付するものです。  障害に関する医療や福祉サービス、補装具などの費用が給付されます。  自立支援給付の基本的な運用ルールは、国(厚生労働省)が定めます。  具体的には同行援護事業や就労支援事業などが挙げられます。 2.地域生活支援事業  地域生活支援事業は、国が一律に運用ルールを定めるのではありません。各地域で運用ルールを定めて実施した方が実情に応じた対応を期待できる事業や、一般的な相談対応のように個別の給付には当たらない事業のことが該当します。  例えば一人では外出が困難な方への付き添いを提供する「移動支援」や、手話通訳者や要約筆談ができる人を派遣・設置する「コミュニケーション支援」といった事業が挙げられます。  同行援護では認められていない通学時の支援などは、自治体によっては移動支援によって対応されているケースが見受けられます。また移動支援ではグループ支援と言って複数の視覚障害者を同時に一人の支援者が支援するようなケースもあります。  なお、地域生活支援事業は、各都道府県が主管として行っているものと各市町が主管として行っているものがあります。 14ページ 5 障害福祉事業と介護保険事業のすみわけ 1.障害福祉事業  障害福祉事業は、障害児者が日常生活や社会生活を営むための支援を提供する制度です。  視覚障害者がよく利用しているサービスに以下のようなサービスがあります。 @居宅介護(ホームヘルプ)  自宅での生活を支援するためのサービス。 A同行援護  視覚障害者の外出保障を行うサービス。 B就労支援  就労移行支援や就労継続支援など、働くための支援。 2.介護保険事業  介護保険事業は、主に高齢者が自立した日常生活を送るための支援を提供することを目的としています。以下のようなサービスがあります @訪問介護(ホームヘルプ)  自宅での生活を支援するための訪問サービス。 Aデイサービス  日中に施設で提供されるサービス。 Bショートステイ  短期間の施設利用。 C福祉用具貸与  介護用具の貸与。 3.障害福祉事業と介護保険事業のすみわけ  障害者福祉と介護保険制度との関係が問題になることもあります。それは、障害者福祉と介護保険との間に「介護保険優先」という考え方があるからです。  ただし、この考え方は、利用したい障害福祉サービスに対して共通するサービスが介護保険の中にある場合は該当しますが、同行援護サービスのような外出時の視覚的情報提供を目的としたサービスは介護保険の中に無いことから、同行援護には「介護保険優先」が該当しません。  また、利用者が通院したい場合、通院等介助(ホームヘルプ制度のひとつ)を利用するのか、同行援護を利用するのかも優先関係はありません。なぜなら、同行援護は外出時の視覚的情報提供が目的であって、単に病院に連れて行ってもらう支援ではないからです。  なお、どちらを利用するかは、利用者が決めます。ただし、介護保険での通院では1割負担が生じます。同行援護は、非課税世帯が無料で利用できるため、負担が少なくなることがあります。また、介護保険では院内の利用も制限されることも多く見受けられます。 ●すみわけのポイント (1)優先順位  同じサービスが介護保険にあり、介護保険サービスが利用できる場合は、原則として介護保険サービスが優先されます。(注1) (2)併用の可能性  介護保険でのホームヘルプだけでは支援が不十分な場合、障害福祉サービスでのホームヘルプを併用することができます。 (3)個別の状況に応じた判断  利用者の状況やニーズに応じて、どちらのサービスが適切かを判断します。 (注1)平成26年3月障害保健福祉関係主管課長会議 資料の抜粋  サービス内容や機能から、介護保険サービスには相当するものがない障害福祉サービス固有のものと認められるもの(同行援護、行動援護、自立訓練(生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援等)については、当該障害福祉サービスに係る介護給付費等を支給する。 16ページ 6 福祉事業における障害福祉課のスタンス  介護保険制度の導入をきっかけに障害福祉サービスも契約制度へ移行しました。移行したことで、利用者が自分の意思でサービスを選び、事業者と対等な立場で契約を結ぶことができるようになりました。  そのため、自治体の障害福祉課の役割もサービスの提供者から利用者と事業者を結びつけるコーディネーターのような立場に変わりました。野球に例えれば、ルールに沿って対戦している両チーム(事業所と利用者)のプレイヤーから審判をするアンパイアに変わったことになります。  これにより、障害福祉課は利用者が必要とするサービスを適切に選べるよう、また利用できるよう公平に支援することが求められるようになりました。  障害福祉課の存在意義は、障害者が地域社会で安心して暮らせるように支援することです。  しかしながら、日本の障害福祉サービスは申請主義となっています。そのため、家族や相談員など含む障害者自らが窓口に申請しなければサービスが始まりません。  この点を踏まえて、視覚障害の当事者団体はアウトリーチを意識した支援を心がけなければいけません。 17ページ 7 同行援護事業  同行援護とは、視覚障害者が外出する際に必要な支援を提供する障害福祉サービスです。移動が困難な者に対し、移動の援護や視覚的情報の提供(代読・代筆など)を行い、安全に外出できるように支援します。 1.同行援護の支援内容 ・移動の援護(歩行支援、公共交通機関の利用補助) ・視覚的情報の提供(周囲の状況説明、案内表示の読み上げ) ・代読・代筆(書類の読み上げや記入補助) ・食事・排泄の介助(必要に応じて支援) 2.同行援護事業を利用するメリットとデメリット  同行援護には視覚障害者の外出を支援するための多くのメリットがありますが、デメリットも考慮する必要があります。 (1)メリット @安全な移動が可能  視覚障害者が安心して外出できるよう、移動の支援が受けられる。 A視覚情報の提供  代筆・代読を含め、外出先で必要な情報を得ることができる。 B社会参加の促進  買い物や趣味活動など、日常生活の幅を広げることができる。 C個別対応が可能  利用者のニーズに合わせた柔軟な支援が受けられる。 (2)デメリット @自治体による違い  地域によって支援内容にばらつきがある。 A費用負担の可能性  世帯収入によって発生する自己負担、同行援護利用時の交通費、入館料、入場料などの費用が発生することがある。 B利用制限  営業活動や長期的な外出など、同行援護の対象外となるケースがある。 3.同行援護事業の課題  同行援護事業にはいくつかの課題があり、運営の難しさが指摘されています。 @利用率の低さ  視覚障害者の数に対して、同行援護を利用している人の割合は1割未満と低い。 A事業所の不足  地域によって同行援護事業所の数が偏在しており、利用したくても近くに事業所がないケースがある。 B人材不足  ガイドヘルパーの数が不足しており、利用希望者がいても対応できないケースがある。 C制度の認知度が低い  視覚障害者自身が制度を知らないため、利用に繋がらないケースが多くある。 D利用の制約  通勤や通学、長時間の利用ができないなど、制度の適用範囲に制限がある。 Eマッチングの難しさ  希望する日時とガイドヘルパーの空き時間が合わず、希望に沿って支援を受けられないことがある。 4.当事者団体がこの事業を立ち上げることによるメリットとデメリット (1)メリット ・利用者を確保しやすいこと。会員の中にも同行援護の利用者が潜在的に存在している。 (2)デメリット ・人材確保が難しいこと。特にサービス提供責任者の確保が難しい。 5.同行援護を利用する際のマナー  同行援護は、利用者と支援者の協力によって成り立つサービスです。お互いに気持ちよく利用できるよう、適切なマナーを心がけることが大切です。以下の点に注意することで、より快適な支援を受けることができます。 ●同行援護利用者に求められるマナー @事前の準備  外出の目的や行き先を事前に伝え、スムーズな支援ができるようにしましょう。 A同行援護業務以外の依頼  同行援護は、移動支援と情報支援などの法令に定められたサービスを提供することとなっています。スポーツの相手や同行援護利用者以外のお手伝いなどを行うことはできません。 B適切なコミュニケーション  支援者に対して感謝の気持ちを持ち、丁寧な言葉遣いを心がけましょう。 C時間の厳守  約束した時間に集合し、支援者のスケジュールに配慮して、安易に時間変更をしないようにしましょう。 D支援者との信頼関係の構築  自分の希望や困りごとを適切に伝え、支援者と協力して移動をスムーズにしましょう。 Eカスハラの増加  利用者からの過度な要求、サービス以外の依頼などは支援者へのカスハラ(カスタマー・ハラスメント)に繋がる事例が増えています。 6.同行援護事業者と自治体との関係  同行援護事業を円滑に運営するためには、自治体との関係構築が重要です。以下のようなポイントが挙げられます。 @制度の理解と活用  自治体ごとに支援内容や予算が異なるため、制度の詳細を把握し、適切な申請を行うことが必要です。 A自治体との定期的な協議  事業所と自治体が定期的に情報交換を行い、利用者のニーズに応じた支援を調整することが重要です。地域によって支援内容に差があるため、自治体と協力して公平なサービス提供を目指すことが重要です。 20ページ 8 就労支援事業A型B型 1.就労継続支援A型  就労継続支援A型は、障害者総合支援法に基づく福祉サービスの一つで、障害や病気のために一般企業で働くことが難しい障害者に対し、雇用契約を結んで働く機会を提供するのが特徴です。 (1)主な特徴 @雇用契約の締結  利用者と雇用契約を結び、最低賃金以上の給与が支払われる。 A働きながらスキルアップ  実際の業務を通じて職業スキルを習得し、一般就労への移行を目指す。 B社会保険の適用  雇用契約があるため労働基準法が適用され、社会保険にも加入できる。 C多様な業務内容  事務作業、軽作業、飲食業、農業など、事業所によって様々な業務が提供される。障害者が安定した収入を得ながら働くことができる環境を提供し、一般企業への就職を目指すためのステップとして活用されている。 (2)就労継続支援A型の具体的な仕事内容 @パソコンを使った業務  アンケートの集計、原稿入力、各種データの作成など。 A事務作業  書類整理や伝票管理などの事務作業。 B清掃業務  ホテルや施設の清掃業務。 C商品管理  在庫管理、発注作業、検品など。 D配達業務  宅配の補助業務。 E接客・販売  カフェやレストランでの接客・販売業務。 Fものづくり  パンやお菓子、アクセサリー、雑貨などの製造。 H視覚障害者向けの業務  はりきゅう・マッサージ施術業務、点訳・点字印刷、音訳、テープ起こし。 (3)就労継続支援A型の課題  就労継続支援A型には、障害者が雇用契約を結んで働けるというメリットがありますが、いくつかの課題も指摘されています。 @収益性の課題  事業所は最低賃金と社会保険料を上回る収益を確保する必要があり、経営が厳しくなっている。 A事業所の閉鎖や解雇の増加  近年、報酬改定の影響で事業所の閉鎖や利用者の解雇が相次いでいる。 B就職支援の不足  一般就労への移行支援が十分でないため、長期的なキャリア形成が困難。 C勤務の安定性  週3〜5日の安定した出勤が求められ、体調管理が難しい利用者には負担が大きい。 2.就労継続支援B型  就労継続支援B型は、障害や病気などの理由で一般企業での雇用が難しい障害者に対し、雇用契約なしで働く機会を提供する福祉サービスです。主な特徴として以下の点が挙げられます。 (1)主な特徴 @雇用契約なし  A型とは異なり、事業所と雇用契約を結ばず、利用契約のみで働く。 A柔軟な働き方  週1日・短時間から通所可能で、体調や生活リズムに合わせて働ける。 B工賃の支給  最低賃金の対象ではないが、作業に応じた工賃が支払われる。 C社会参加の促進  軽作業やパソコン業務などを通じて、社会との繋がりを持つことができる。 Dスキル習得の機会  動画編集やeスポーツなど、将来に繋がるスキルを学べる事業所もある。 Eその他  A型と比べて就労のハードルが低く、働くことに慣れるためのリハビリとして活用できる特徴もある。 (2)就労継続支援B型の具体的な仕事内容  就労継続支援B型では、障害者が雇用契約なしで働く機会を得られる福祉サービスです。具体的な業務内容として、以下のようなものがあります。なお、業務内容は事業所によって異なり、利用者のスキルや希望に応じた仕事を選ぶことができます。 @軽作業  商品の袋詰め、シール貼り、梱包作業など。 A農作業  野菜の栽培、収穫、出荷準備など。 B食品製造  パンやお菓子の製造、販売補助。 C清掃業務  公共施設やオフィスの清掃業務。 Dデータ入力  簡単なパソコン作業やアンケート集計。 E手芸・工芸  アクセサリーや雑貨の制作・販売。 F視覚障害者向けの業務  はりきゅう・マッサージ施術業務、点訳・点字印刷、音訳、テープ起こし。 (3)就労継続支援B型の課題  就労継続支援B型には、障害者が雇用契約なしで働けるというメリットがありますが、いくつかの課題も指摘されています。 @工賃の低さ  利用者に支払われる工賃が低く、生活の安定に繋がりにくい。 A職員の定着と育成  福祉業界全体で人材不足が深刻で、経験豊富な職員の確保が難しい。 B利用者の獲得と定着  新規利用者の獲得が難しく、既存利用者の定着率が低い事業所もある。 C法令遵守の負担  頻繁な法改正に対応するための準備や書類作成が煩雑で、事業運営に影響を与える。 Dサービスの多様化への対応  利用者のニーズが多様化しており、柔軟な支援が求められるが、対応が難しい。 3.その他  就労継続支援A型、就労継続支援B型とも、収益の確保という課題があります。これらの課題を解決するために、工賃向上のための業務改善や職員の育成強化、地域との連携強化が求められています。  また、業務の幅を広げるために視覚障害者以外の障害者(肢体不自由、精神障害者、知的障害者)を受け入れる場合もあります。その際は、障害の特性に詳しい専門家が必要となります。身体介護に詳しい介護福祉士、精神保健福祉士などの幅広い人材の雇用が求められます。 24ページ 9 共同生活支援事業 1.共同生活支援事業とは  共同生活援助(グループホーム)とは、障害者が地域住民との交流が確保される地域の中、家庭的な雰囲気の下で共同生活を営む住まいの場です。  共同生活援助には介護サービス包括型と外部サービス導入型があります。また、報酬単価は世話人の配置や障害支援区分に応じて異なります。なお、共同生活援助は原則として18歳以上の障害者が利用できます。 (1)介護サービス包括型  共同生活を行う住居で、相談、入浴、食事などの日常生活上の援助をグループホームの従業者によってすべてが提供されます。  このサービスは、障害支援区分にかかわらず利用可能です。 (2)外部サービス利用型  共同生活を行う住居で、相談や日常生活上の援助を行います。このタイプの支援では、事業所の従業者が相談や家事などの日常生活上の援助を行い、入浴や食事の介護などは外部の居宅介護事業所に委託されます。  障害支援区分が比較的軽い障害者(区分1〜3)が利用する傾向にあります。 2.具体的な支援内容  共同生活援助では具体的には、以下のような支援が行われます。 @日常生活の援助  食事の準備、入浴の準備など。 A家事の支援  洗濯や掃除などの家事全般の支援。 B生活相談  日常生活や社会生活に関する相談や助言。 C社会生活の支援  就労先や日中活動サービスとの連絡調整、余暇活動の支援など。 3.当事者団体がこの事業を立ち上げることによるメリットとデメリット (1)メリット ・一人暮らしに困難を抱えている障害者に住まいを提供できること。このことはその地域での法人の広報に繋がる。 ・支援の場が法人事業の拠点となりえること。 (2)デメリット ・報酬が比較的低いため、運営の収支を十分に検討しなければ赤字となり、法人の経済的負担になりかねないこと。 ・事業所を立ち上げるにも相応の経費が掛かること。 26ページ 10 相談支援事業 1.相談支援事業とは  相談支援とは、障害者が地域社会で暮らしていく中での困りごと・悩みの相談に応じ、自立した暮らしに必要な福祉・支援(社会的リソース)が受けられるように支援することです。  相談支援は市町村の福祉窓口の他、都道府県や市町村が指定した「相談支援事業所」でも提供されています。この中で、視覚障害当事者が同行援護事業などの障害福祉サービスを利用するために必要なサービス等利用計画の立案を手がけるのは、「特定相談支援事業所」の計画相談支援を行う相談支援専門員です。  計画相談支援では、障害福祉サービスの利用申請に必要な書類を作成したり、サービスの利用にまつわる相談に対応したりします。具体的には、障害福祉サービスの利用申請に必要なサービス等利用計画(案)の提出からサービス等利用計画の作成、障害福祉サービスを提供する事業者との連絡調整などを行います。  また、障害福祉サービス利用者に対して、一定期間ごとに生活状況や障害福祉サービスの利用状況などの検証(モニタリング)や希望を受けたり、必要に応じて関係機関の担当者会議を開催するなどしながら、サービス等利用計画の見直しを実施します。 2.当事者団体がこの事業を立ち上げることによるメリットとデメリット (1)メリット ・専用の小さいスペースとパソコンが1台あれば、少ない経費で立ち上げることができること。 ・当事者の困りごとに直接携わることができ、当事者団体の視点で個々の生活の質(QOL)を挙げていくことができること。このメリットは当事者団体の組織強化に繋がることがある。 (2)デメリット(リスク) ・相談支援専門員の絶対数が少なく、安定して雇用することが難しいこと。絶対数が少ないため、給与も相応な金額に設定しなければ人材が集まりまらない。また、一人事業所の場合、その担当者が退職すると事業が継続できなくなることもある。 裏表紙 【発行】 2026年3月 社会福祉法人日本視覚障害者団体連合 加盟団体支援プロジェクト委員会 〒169−8664 東京都新宿区西早稲田2−18−2 TEL 03−3200−0011 FAX 03−3200−7755 メール jim@jfb.jp