愛盲時報 令和7年10月25日(土)第288号 目次  1.英国の視覚障害者の早期介入・支援に学ぶ講演会 開催  2.関係府省庁に陳情  3.全国視覚障害女性研修大会が新潟で開催  4.第33回視覚障害リハビリテーション研究発表大会で口頭発表  5.ご寄付のお願いについて  6.奥付  *見出しの頭には「--(半角で2つ)」の記号が挿入されているので、検索機能を使って頭出しをする際にご利用下さい。  また検索の際、目次でご紹介した数字を続けて半角で入力すると、その項目に直接移動することができます。  (例)1をご希望のときは、「--1(すべて半角)」と入力。 (以下、本文) --1.英国の視覚障害者の早期介入・支援に学ぶ講演会 開催 【写真】記念撮影する、講師のお二人と主催者  日本視覚障害者団体連合(以下、日視連)では、慶應義塾大学経済学部中野泰志(なかのやすし)研究室と共催にて、8月18日(月)〜22日(金)の5日間にわたり4つの分野のテーマで英国の視覚障害者の早期介入・支援に学ぶ講演会を開催しました。  英国では、医療現場に常駐し、患者の気持ちに寄り添いながら適切なタイミングで情報提供を行い、地域の支援機関へと橋渡しをする専門職ECLO(エクロ)(Eye Clinic Liaison Officer)が制度化されています。このECLOの育成や配置、サポート及びフォローアップ等を英国最大の当事者団体であるRNIB(アールエヌアイビー)(Royal National Institute of Blind People)が担っています。  そこで、RNIBからお二人を講師としてお招きし、英国の視覚障害者への早期支援の取り組みを学び、日本の視覚障害者の早期介入・支援を考えることを目的として、講演会を対面とオンラインのハイブリッドで開催しました。  講演  講演会の講師は、ECLOの制度設計や人材育成に取り組んでいるStevie Johnson(スティービー ジョンソン) 氏、英国全土のアイケア支援サービスを総括しているCarolyn Chamberlain(キャロリン チェンバレン)氏に務めていただきました。  【写真】スティービーさん(左)とキャロリンさん(右)  講演は、各日(1)医療従事者(2)視覚障害当事者(3)歩行訓練士等のリハビリテーションの専門家(4)小児眼科や視覚障害教育の専門家向けに行いました。  はじめに主催者を代表して、竹下義樹(たけしたよしき)日視連会長の 挨拶があり、日本で医療と福祉・教育・就労等の支援機関との連携が図られているものの、未だに失明や視力低下を理由に離職せざるを得ない人がいること、また、視力が低下した中で様々な補装具や日常生活用具等の情報を得られないがために、生活の質を落としてしまう人がいることに触れ、こうした状況を少しでも無くしていく為に、英国が30年にわたり確立してきたECLOの取り組みを学び、日本でも視覚障害リンクワーカーの実現を目指して調査研究を進めていきたいと表明しました。 【写真】挨拶をする竹下義樹日視連会長  講演会では、ECLOが1994年に欧州連合の資金提供によりヨークシャーの病院で採用されたことから始まり、約30年が経った現在は英国内で約180名のECLOが活動されていること等を紹介していただきました。  ECLOが英国で広まった背景として、約30年前の英国では、病院で視覚障害の告知を受けた患者が、支援やリハビリテーションの情報がなく困っている声が多く、医療から福祉等につながらない課題がありました。  【写真】視覚障害当事者向けの講演の模様  そこで、RNIBでは大規模な聞き取り調査を視覚障害者に対して行いました。調査の結果、視覚障害者は、眼科以外で提供しているサービスや支援について多くの情報を求めていることがわかり、より多くの眼科病院にECLOを配置する必要があるというRNIBの考えを裏付ける根拠になり、ECLOの養成や病院への配置に取り組んでいます。  ECLOは、眼科医や、リハビリテーションの専門家であるROVI(ロビー) (Rehabilitation Officer for Visual Impairment)や、視覚障害教育の専門家であるQTVI(キューティヴィアイ)(Qualified Teacher of Children and Young People with Vision Impairment)と連携しながら患者やその家族の支援を行っています。  ECLOが病院内で患者やその家族への支援にあたる効果としては、1.支援が必要な方を早期に発見し、支援できること、2.患者本人だけでなく家族や介助者にも必要な情報の提供や支援に繋げられること、 3.医療従事者の時間が削減され医療の業務に専念できること、4.RNIBや他の支援団体の存在意義の向上の4つがあげられました。  日本において、眼科病院で視覚障害の告知をうけた 患者とその家族の早期支援及び医療・福祉・教育・就労等の連携について考えるうえで、非常に参考になる 講演でした。  意見交換会・日視センターの見学も開催  【写真】講演前の和やかな意見交換会の様子  講演会に先立ち、日本の視覚障害者の福祉・教育・就労等の現状を報告するとともに、日視連で取り組んでいる視覚障害リンクワーカーの実現に向けた調査研究についてアドバイスをいただくため、Stevie Johnson(スティービージョンソン) 氏・ Carolyn Chamberlain(キャロリン チェンバレン)氏と意見交換を行いました。  意見交換会では、竹下義樹(たけしたよしき)日視連会長から、視覚障 害者の福祉及び法制度の現状の報告があり、その後、 中野泰志(なかの やすし)慶應義塾大学経済学部教授が日本における視覚障害者支援の現状と課題を報告しながら、日本においてもECLOのような病院を拠点として、早期に患者とその家族の支援にあたるリンクワーカーが必要であることを説明しました。  また、吉泉豊晴(よしいずみとよはる)日視連総合相談室長兼情報部長は、 日視連がこれまでに取り組んできた視覚障害リンクワーカーの調査研究について報告しました。  医療・福祉・教育の連携強化、患者中心の支援体制の構築、財源の確保といった課題等について活発な意見交換が行われ、有意義な時間となりました。  その後の、日本視覚障害者センターの見学では、点字図書館、録音製作所、点字出版所、用具購買所をそれぞれ見学し、各職員が業務内容や使用機器について説明を行いました。  【写真】用具購買所で、説明を受ける講師のお二人  見学の中で、英国と日本の制度等の違いについても話題となり、取り組みの比較を通じて、それぞれの支援技術の独自性や利便性を再認識する機会となりました。 --2.関係府省庁に陳情  令和7年5月25日(日)から5月26日(月)に千葉県千葉市で開催いたしました第78回全国視覚障害者福祉大会(千葉大会)において集約された視覚障害者福祉施策に関する要望事項をまとめ関係府省庁及 び民間企業等へ陳情しました。 陳情先は、次のとおりです。 ■陳情先(順不同)  厚生労働省(福祉関係、職業関係)、人事院、文部科学省、こども家庭庁、国土交通省、警察庁、経済産業省、農林水産省、消費者庁、デジタル庁、金融庁、国税庁、総務省、内閣府、法務省、旅客鉄道株式会社(北海道、東日本、東海、西日本、四国、九州)、日本民営鉄道協会、日本バス協会、高速道路株式会社(東日本、首都、中日本、西日本、阪神、本州四国連絡)、日本自動車工業会、全国ハイヤー・タクシー連合会、全国個人タクシー協会、定期航空協会、全国空港事業者協会、日本放送協会、日本民間放送連盟、日本郵政株式会社、全国銀行協会、日本小売業協会、日本フランチャイズチェーン協会、日本フードサービス協会、日本ホテル協会、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会 【写真】陳情の様子1【写真】陳情の様子2  陳情書はホームページで公開中  陳情書全文は、日視連ホームページ(http://nichimou.org/all/news/secretariat-news/25-jimu-1/)からみることができます。 --3.全国視覚障害女性研修大会が新潟で開催 【写真】会場の新潟ユニゾンプラザにて、大会開始前の様子 「第71回全国視覚障害女性研修大会(東海・北信越ブロック 新潟大会)」が、9月3日(水)・4日(木)の両日、新潟ユニゾンプラザ(新潟市)を主会場に女性協議会会員、関係者約300名が出席し開催されました。  1日目の午前の全国代表者会議では、常任委員に成田優子(なりたゆうこ)(岩手県)・ 宇都木泰代(うつぎやすよ)(神奈川県)・ 鈴木鈴子(すずきれいこ)(岡山県)・清水幸枝(しみずさちえ)(広島県)の4名が承認され、一部修正を加えて7つの議事すべてを採択しました。  午後の研修会第1部の講演では、講師に新潟医療福祉大学教育・学生支援機構中央教育センター教授の 五十嵐紀子(いがらしのりこ)氏を迎え、「がんによって得た自由『自分を解放する力』」というテーマで展開しました。  35歳で乳がんを告知されて一番辛かったのは「かわいそうに」という周りの目、正しい情報を得れば不必要に怖がることはない。様々な資源と出会えたことをキャンサーギフトととらえ、がんになったあと結婚 し、自分で決定し、自分に自由に生きていられると述べました。  また、脳転移という再発を経てがん闘病から学んだことは、人に頼ることは弱さでなく技術であるということ。じっとしていたら人と出会わず、つながりも生まれない、自分を活かせる力は誰にでも備わっている と結びました。  第2部では、「視覚障害あるある あんな事こんな事、失敗談やそれを乗り越えたこと」をテーマとして、各ブロックから、6名の発表が行われました。  若い頃は自分が視覚障害者であることを隠したり、白杖を持てなかったり、見えにくくなっていく中で葛藤しながらも自分でできることは何でもやりたいと試行錯誤したり、仕事と子育ての合間を縫って生きがい を見つけたり、変わるきっかけをつかんで考え方が変わったり、社会貢献している実体験を披露しました。表現力豊かに語られる女性ならではの体験に会場からは笑いと共感の拍手が絶えませんでした。  助言者の日視連吉松政春(よしまつまさはる)副会長は、自分も白杖を 持って50年になるが地元では白杖をつけなかった体験など具体的に助言しました。 【写真】吉松政春日視連副会長  最初は辛いこととして対応できないが、次第に自分なりの方法を見つけ出していくもの。小さなきっかけや挑戦、同じ悩み・苦しみ・失敗談を共有できる仲間作りが大切と述べました。  新潟県視覚障害者福祉協会の木村弘美(きむらひろみ)理事長からは、失敗を笑いに変えるライフスタイルや全盲でよかったと言えるエネルギーはすごい、見えにくくなる中での工夫や努力は、見えにくくなって辛い思いをしている子どもたちに元気を与える内容であると述べました。  また、周りの方々に支えられていることへの感謝が共通して印象的だったとご自身の経験も交えて述べました。会場からは、簡単でおいしい唐揚げの作り方や食事介助の工夫などについて、長年の様々な経験によ る活発な情報提供、意見交換が行われました。  2日目の午前の式典では、主催者・歓迎の挨拶に続き、女性協議会顧問である石田昌宏(いしだまさひろ)参議院議員、花角英世(はなずみひでよ) 新潟県知事、青柳正司(あおやぎまさし)新潟県議会議長、中原八一(なかはらやいち)新潟市長からご祝辞をいただきました。  第2部の議事では、初日の全国代表者会議および研修会の報告、宣言・決議の採択を行いました。  今年は、日々の買い物をはじめとする生活に関する項目、デジタル化や移動に関する項目、子育て支援や介護、災害・犯罪に対する視覚障害者のための具体的な方策など15項目が採択されました。  閉会式では、次年度開催団体である兵庫県視覚障害者福祉協会の大谷 武(おおたにたけし)会長より挨拶がありました。  第72回全国視覚障害女性研修大会(近畿ブロック兵庫大会)は令和8年9月3日(木)・4日(金)に ANAクラウンプラザホテル神戸で開かれます。  採択された決議項目は次のとおりです。  1.食品の賞味期限、消費期限は視覚障害者にも見やすいように文字を大きくするよう要望する。2.最低限の文化的生活を保障するために、物価上昇率に連動した障害基礎年金の増額を要望する。3.地域生活 での自立を高めるための歩行訓練を含む生活訓練、及び視覚障害を持つ親が安心して子育てができるよう、育児支援サービスに関する情報提供、利用支援、介助者の確保を要望する。4.視覚障害女性が家族の介護 を担う際に、適切な情報や支援が得られる体制の整備を要望する。5.医療機関における情報保障(点訳、音声案内、触知案内等)の徹底と緊急時の入院や検査等の代筆代読を含め、医療従事者の視覚障害に対する 理解促進を要望する。6.視覚障害女性が選択できる職業の拡大と、個々の能力に応じた多様な働き方(リモートワーク、短時間勤務等)を可能にする環境整備を要望する。7.視覚障害女性が行う家事の支援、及 び外出支援、移動支援の更なる充実と、地域住民に対する理解促進を要望する。8.災害発生時における避難情報、避難経路、避難所での生活情報が、視覚障害者にとってアクセスしやすい形で提供されるようにす るため、防災計画に視覚障害者の意見が反映されるようにするとともに、避難訓練等に視覚障害者が参加しやすい工夫を凝らし、自助・共助の意識を高めるための啓発活動を要望する。9.公共トイレはJIS規格 に従った操作ボタンの形状、色並びに操作ボタン及びペーパーホルダーの配置とすること。さらに、点字や拡大文字による表示、トイレ個室や手洗い場までの音声案内や点字ブロックの敷設をするよう要望する。 10.飲食店、小売店等で進むサービスの無人化やセルフレジ化に対し、人的支援等の代替手段を設けることを制度化するよう要望する。11.情報アクセシビリティの抜本的改善と多様な情報提供の推進を要望す る。12.鉄道駅において、視覚障害者が特急券や身体障害者割引を受けた乗車券等を円滑に購入するために、みどりの窓口等、有人の窓口や視覚障害者も利用できる話せる券売機を確保することを要望する。13.全ての特急券が普通乗車券と同様の割引を受けられるよう要望する。14.高速道路において、視覚障害者が同乗する車両がスマートインターチェンジを利用した際、障害者手帳の提示で割引きが受けられるようにすることを要望する。15.防犯対策の観点から、無人駅にライブカメラの設置を強化し、指令センター内に係員を配置すること。また、事件・事故を未然に防ぐために、視覚障害者に積極的に声掛けすることを要望する。 --4.第33回視覚障害リハビリテーション研究発表大会で口頭発表  東京都千代田区の日本教育会館を会場に、8月29日 から31日の3日間にわたり第33回視覚障害リハビリテーション研究発表大会が開催され、学識経験者、視覚障害リハビリテーションの専門家、教育関係者、視覚障害者等多くの方々が参加しました。  今大会は、「LIFE 我々はどう生きるか」をテーマとし、乳幼児期から学童期、学童期から成人、壮年期から老年期等のそれぞれの時期における課題や必要とする支援を視覚障害当事者、支援者等がそれぞれの立場から発表及び議論するシンポジウムが開催されました。  また、視覚障害当事者、支援機関、教育機関等の研究の成果を発表する口頭発表及びポスター発表が行われるとともに、視覚障害者のための機器及び便利グッズを紹介する機器展も行われました。  日視連は、「視覚障害者の通勤や職場等における支援の実施状況アンケート結果報告」をテーマとして口頭発表を行いました。  この発表では、市区町村が行っている「雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業(以下、連携事業)」の実施状況と課題等を把握するために行った自治体向けのアンケート調査(137ヶ所)の結果と連携事業を利用している視覚障害者(8名)のヒアリング結果を発表しました。  発表者代表の吉泉豊晴(よしいずみとよはる)日視連総合相談室長兼情報部長は、連携事業を利用している方々は、通勤支援では安全の確保ができ、安心して通勤できていることや、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師(通称あはき師)として自営業を営む方は患者宅等への移動の支援とともに、領収証の作成や事務作業の支援を受けて、効率的に仕事が出来ている等の連携事業を利用することによる効果を紹介しました。  一方で、連携事業を実施する自治体数が全体の約1割と少なく、その数が増えないことや、連携事業を担う同行援護事業所がない、または少ないことで連携事業の利用が進まない現状の課題等を報告しました。  その要因として、連携事業を利用したいという視覚障害者のニーズはあるものの、ニーズを自治体が把握できていないことや、連携事業の専門性を問われる作業内容に見合う報酬単価になっていないことにより、連携事業を担う同行援護事業所があまりないことが大きいと説明しました。  日視連として、連携事業がより多くの市区町村で実施され、視覚障害者が事務処理や外出の支援を受けることができるように、引き続き事例収集し、公表して自治体や同行援護事業所等へ働きかけていきたいと決 意を表明しました。 --5.ご寄付のお願いについて  日本視覚障害者団体連合は視覚障害者自身の手で、<自立と社会参加>を実現しようと組織された視覚障害者の全国組織です。  1948年(昭和23年)に全国の視覚障害者団体(現在は、都道府県・政令指定都市60団体が加盟)で結成され、国や地方自治体の視覚障害者政策の立案・決定に際し、当事者のニーズを反映させるため、陳情や要求運動を行っています。  活動内容は多岐にわたりますが、そのために必要な経費の確保は、厳しい財政の中困難を極めています。  視覚障害者福祉の向上を目指し、組織的な活動を維持していくため、皆様からの特段のご厚志を賜りますよう、何とぞ宜しくお願い申し上げます。 ■ゆうちょ銀行 記号番号 00160−5−536104 加入者名 社会福祉法人日本視覚障害者団体連合 ■みずほ銀行 店名 高田馬場支店 預金種目 普通  口座番号 2868101 カナ氏名(受取人名)フク)ニホンシカクショウガイシャダンタイレンゴウ ※領収証が必要な方、本連合が振り込み手数料を負担する専用の振込用紙をご希望の方は、日本視覚障害者団体連合までご連絡ください。(電話:03−3200−0011) --6.奥付 愛盲時報 令和7年10月25日(土)第288号 ※この愛盲時報は鉄道弘済会の不動産賃貸事業などの益金等、日本盲人福祉委員会の愛盲シール維持会費の中から贈られた寄付金などで作られたものです。 発行所:社会福祉法人 日本視覚障害者団体連合  〒169-8664東京都新宿区西早稲田2-18-2 発行人:竹下 義樹 / 編集人:吉泉 豊晴 電話:03-3200-0011/FAX:03-3200-7755 URL:http://nichimou.org/ Eメール:jouhou@jfb.jp(情報部) 以上で、愛盲時報 令和7年10月25日(土)第288号を終わります。