視覚障害者向け代筆・代読支援ガイドライン 社会福祉法人日本視覚障害者団体連合 令和5年3月 1.はじめに  このガイドラインは、厚生労働省令和4年度障害者総合福祉推進事業として実施した「視覚障害者の代筆・代読の効果的な支援方法に関する調査」で得られた結果を基に作成しました。 (1)ガイドラインの目的  このガイドラインは、福祉制度を担当する自治体の方、代筆・代読支援を実施する事業者の方、また、視覚障害当事者の皆さんに次のことをお伝えする目的で作成しました。 @代筆・代読支援が視覚障害者の日常生活や社会参加にとって重要な支援であること A代筆・代読支援が効果的に行われるためにニーズの把握が必要なこと B実際に代筆・代読支援が行われるようにするための制度設計や支援者養成研修の在り方   代筆・代読支援が更に広がり、効果的に実施されるための参考資料としてこのガイドラインを活用していただければ幸いです。 (2)代筆・代読支援の意義・必要性  日常生活や社会参加のためには様々な意思決定が必要になります。そのためには必要と思われる情報を取得し、それを取捨選択しなければなりません。 しかし、多くの情報が視覚的に得られるようになっているため、視覚障害者には大きなハンディキャップがあります。また、自らの意思決定を表示するためには書類等に記入する機会も多くありますが、これにも困難が伴います。 つまり、視覚障害者の日常生活や社会参加にとって代筆・代読支援はとても重要な要素です。  近年は視覚障害者の読み書きを支援するICT機器やソフトウェアの開発が進んできていますが、それらを駆使したとしても、日常生活に必要な様々な文書を効率的に読むのは大変な作業です。 また、書式が印刷された用紙に記入することも難しい作業です。代筆・代読を支援してもらえるととても助かります。  また、晴眼者と同居している視覚障害者は、その同居者に手助けしてもらえるかもしれませんが、遠慮があったり時間が合わなかったりすることはよくあります。 たとえ家族であっても、個人的な内容を知られたくないということもあります。そして、一人暮らしの視覚障害者は手助けしてもらうこと自体が思うようにできません。  代筆・代読支援は、視覚障害者の日常生活や社会参加にとって重要な支援になっています。 また、代筆・代読支援を行う上でニーズを把握することが重要です。全盲の方だけでなく、弱視(ロービジョン)の方にとっても読み書きは大変なので、地域の視覚障害者のニーズを的確に把握して、代筆・代読支援が効果的に実施されるよう、自治体において制度設計を行う必要があります。事業開始後に内容改善することも重要です。  一方、代筆・代読の支援方法を理解することも大切です。目の前の書類を単純に読めばいいというものではありません。 必要な箇所がどこかを視覚障害者が判断できるようにするには工夫が必要です。代筆の時も、黙って書き込んだのでは視覚障害者が不安に感じます。何を書き込むかを説明しながら進める必要があります。 また、代筆・代読支援で出来ること・出来ないことを視覚障害者と支援者の双方が知っておく必要もあります。    (3)代筆・代読支援に関する最近の動向  代筆・代読支援を含めた意思疎通支援の重要性は近年ますます高まっており、新たな法律の施行等が行われており、主に次のものが挙げられます。 @第208回通常国会において「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律(以下、障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法)が成立し、2022年(令和4年)5月25日に施行されました。同法では、全ての障害者が、あらゆる分野の活動に参加するためには、情報の十分な取得利用・円滑な意思疎通が極めて重要であり、日常生活・社会生活を営んでいる地域にかかわらず等しく情報取得等ができるようにすることとされています。 A「障害者総合支援法改正法施行後3年の見直しについて〜社会保障審議会障害者部会報告書〜」が2022年(令和4年)6月13日に出され、その中で代筆・代読に関する効果的な支援に資するための調査研究を実施し、必要な支援が提供されるような運用の見直しについて検討する必要があるということが盛り込まれています。 B2023年(令和5年)2月27日に厚生労働省の社会保障審議会障害者部会(第135回)が開かれ、「障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針」改正後全文が出されました。 この指針において、令和6年度から令和8年度までの第7期障害福祉計画及び第3期障害児福祉計画の作成または変更に当たって即すべき事項を定められています。  その中で、第7期障害福祉計画において、障害者等による情報の取得利用・意思疎通の推進の取り組みが必要であると示されました。都道府県・市区町村において、障害特性に配慮した意思疎通支援や支援者の養成等の促進を図るため、次のような取り組みを実施することが必要であると明記されました。 ○障害特性に配慮した意思疎通支援(手話通訳、要約筆記、代筆・代読、触手話や指点字等 )のニーズを把握するための調査等 ○ニーズに対応した支援を実施するために必要な意思疎通支援者の養成 ○意思疎通支援者の派遣及び設置を実施するための体制づくり(都道府県による広域派遣や派遣調整等を含む) ○遠隔地や緊急時等に対応するためのICT機器等の利活用 C障害者がそれぞれの障害の特性に応じた意思疎通手段により情報を取得し、円滑に意思疎通ができる環境づくりを推進していくため、条例を定めた自治体があります。 「多様な意思疎通の促進に関する条例」、「障害者の意思疎通に関する条例」等の条例を定め、視覚障害者が日常生活又は社会生活を営む上で代筆・代読支援が必要だと明記されています。 条例が制定されたことにより意思疎通支援事業の代筆・代読支援を実施したという自治体もあります。 2.視覚障害者の困りごとと支援の必要性  厚生労働省の2018年度(平成30年度)障害者総合福祉推進事業として日本視覚障害者団体連合が行ったアンケート調査によると、479人の回答者の中で全盲の人の約9割、弱視(ロービジョン)の人の約8割が読み書きに困ると回答しています。  困りごとの具体例として、たとえば次のようなことがあります。 ○自宅に届いた郵便物を確認できない。また、書類に記入して返信しなければならない場合、その記入ができない。 ○請求書、領収証、レシートを確認できない。  生活を営む上で金銭の管理は不可欠。  レシートが割引券を兼ねている場合があるが分からない。 ○回覧板を読むことができない。 ○広告の特売品を知りたいがチラシなどを読めない。 ○イベントや催し物の内容がわからないので申し込めない。 ○薬や家電製品等の説明書及び注意書きが読めない。 ○子どもが通う保育園や学校からの便りやお知らせが読めない。  書類に記入して返す必要があっても対応できない。 ○健康診断や病院受診の際の問診票が書けない。 ○年末調整や確定申告等の税金にまつわる書類を書けない。 ○アンケートに回答したいと思ってもその読み書きができない。 ○たまった書類の仕分け(要るものと不要なものの整理)ができない。  全盲の人だけでなく、多くの弱視(ロービジョン)の人も困っています。 ○一般的に普及している大きさの文字を読むことができない。 ○拡大読書器やルーペを使用しても文章の全体把握が困難。  時間もかかる。 ○拡大読書器やルーペを使用して読むことは疲れる。 ○各種の契約書類を自筆で書くことが困難。記入欄の罫線や枠が見にくいなど、どこに記入したらいいか分からない。  細かくみれば更にいろいろな困りごとがありますが、いずれも生活を維持し社会参加を実現する上で解決しなければならない課題です。代筆・代読支援によってそれらを解決することが不可欠です。  また、紙に書かれたもののほか、パソコンやスマートフォンでオンラインの手続きをする場合、スクリーンリーダー(画面読み上げソフトウェア)で読み上げない場面があって困るという話も聞きます。  社会全体のデジタル化の中で、オンラインショッピングやネットバンキングもそうですが、いろいろな行政手続きもオンライン化が増えつつあります。  視覚に障害があっても支障なくオンラインの手続きが行えるようになっていることが理想ですが、現実はそうなっていません。代筆・代読支援が不可欠です。    3.代筆・代読支援の基本  ここでは代筆・代読支援の際に心がけてほしいこと、効果的な支援を行う上で留意してほしいことなどを記します。 (1)支援の際に心がけてほしいこと A.視覚障害についての理解  視覚障害というと全く見えない状態(全盲)をイメージしがちかもしれませんが、弱視(ロービジョン)の状態の人も多くいます。  見え方も様々です。光の認識も難しい、明るいか暗いかが分かる、目の前の手の動きや指の数が分かる、拡大すれば墨字(点字ではない一般の文字)を読める、視野が狭く見たいものを見ることができない、色の識別が難しい等々。  見え方によって効果的な対応方法が違ってきます。音声で伝えることが中心になりますが、弱視の人には大きな文字でメモを書いて示すことが有効な場合もあります。  また、デジタル化に伴うオンラインの手続きを支援するためには、パソコンやスマートフォンの基礎知識に加えて、視覚障害者のICT活用に関する基本的な知識・理解が必要になります。 B.自己決定の尊重  代読の際は、何を読むか、どの部分を読むかを障害者本人に確認して判断してもらうようにします。  代筆に当たっては、障害者本人が自署を希望する場合があるので意向を確かめた上で行います。 自署できるかどうかは、見え方だけに左右されるものではありません。全盲の人でも署名欄がわかれば自署できる場合がありますし、弱視の人でも自署が難しい場合があります。 C.個人情報の取扱い  代筆・代読支援では個人情報を扱うことが少なくありません。知り得た個人情報を他の人に伝えることがあってはなりません。守秘義務を厳守します。  個人情報は、氏名・性別・生年月日・住所・年齢・職業・続柄等のほか、個人の身体・財産・職種・肩書き等の属性に関する判断や評価を表す全ての情報をいいます。  また、代筆の際に必要となる個人情報は、本人に提供してもらうようにします。家族等から情報を提供してもらう必要がある場合でも、本人の意向を確認した上で行います。 D.人格の尊重と信頼関係  支援の際は障害者本人の人格の尊重を忘れないようにします。たとえば、慣れ親しんできたとしても「○○ちゃん」と呼んだり、子ども扱いするような言い方は慎みましょう。  家庭を訪問する場合、障害者本人はもとより、同居者がいる場合はその人たちとも信頼関係を築くことが大切です。適切な挨拶やコミュニケーションを心がけましょう。 E.福祉制度などやその手続きに関する基礎的理解  役所から送られてくる書類を適切に伝え、また、必要に応じて代筆する場合、その内容を理解しているかどうかは、無駄なく支援できるかどうかに大きくかかわってきます。  内容を理解できれば、そのあらましを説明して障害者本人が読むべき箇所を判断する手助けができますが、内容が分からないまま読もうとすると、単純に冒頭から読み進めようとしがちで時間がかかってしまいます。  その意味で、年金や福祉サービスに関する基礎的な知識、あるいは医療や税金などについても常識的な範囲の知識を持っておくことが大事です。    (2)効率的な代読支援  郵便物は、差出人によって中身を読む必要があるかどうか判断できる場合があります。まず、どこから来た郵便物かを伝え、中身を読むかどうかを障害者本人に確認します。  郵便物の中身などの書類を読む場合、単純に冒頭から読み始めるよりも、見出しなどを手がかりにして全体として何が書かれているかを伝え、どの箇所を読み上げたらいいか、障害者本人に確認しながら読み進めます。そうすることにより、例えば定型的な挨拶文等をスキップして効率的に読み進めることができます。  ただし、勝手に判断するのではなく、障害者本人の判断を確認しながら進めることが大切です。    (3)正確な読み書きと配慮  代筆・代読支援では、正確な読み書きが求められます。必要に応じて辞書で確認するなどが有効です。書籍としての辞書以外にスマートフォンで調べることもできます。持ち運びに便利です。  代筆に当たっては、間違いのないようにするため、メモ用紙等に下書きをしてから正式な書類に書くようにすることも有効です。また、書いた後に確認することも重要です。メモ書きは、個人情報保護の観点から適切に破棄します。  代筆する内容については、逐次、障害者本人に確認しながら行いましょう。正確に行うという意味もありますが、沈黙していると障害者側が不安に感じます。  なお、代わりに捺印する場合、何のための捺印を行うのかを説明しながら行うようにします。    (4)文字の大きさや種類、写真や図表等の説明  字面を追って読むだけでなく、場合によっては大きな文字で書かれていることや太字で書かれていることを説明すると、文書の意図が伝わりやすくなります。  写真やイラスト、あるいは図表についても説明が求められる場合があります。そうした文字以外の説明にも一定程度慣れておく必要があります。    (5)視覚障害者に提供するメモ書き  買い物した食品の消費期限や賞味期限などは、視覚障害者が読める点字や拡大文字でメモしておくと便利です。  支援者が読み上げて視覚障害者が点字でメモする、あるいは、支援者が点字を書ける場合は点字のメモを作成することで便利になります。 更に最近では、ICチップや専用のシートなどに音声を吹き込み、専用の機器で音声を確認できる装置も出ています。それらICチップやシートを紙パックなどに貼り付けておくと識別しやすくなります。 紙パックの牛乳やジュースなどはパックを触っただけでは識別できませんから便利になります。  弱視の人向けにメモを書く場合は、人によって読みやすい文字の大きさや色が違いますので、どのようにしたらいいかを障害者本人に確認するようにします。    (6)支援者の装備品  筆記用具としては鉛筆、ボールペンのほか、冠婚葬祭にかかわる代筆に当たって筆ペンがあると便利なことがあります。  健康診断の問診票などは、ボールペンでなく鉛筆で書くよう求めるものがあります。修正液、修正ペン、消しゴムもあると便利です。  また、メモ用紙があると下書きなどで用いることができます。  眼鏡がないと代筆が難しい場合は、必ず持っていきましょう。  定規、スケール、辞書やスマートフォンに入っているアプリなども役立ちます。 4.福祉施策における代筆・代読支援に関する制度と課題  代筆・代読支援は、障害者総合支援法に基づく以下のサービスとして実施することが可能です。 @意思疎通支援事業(地域生活支援事業) A居宅介護事業(個別給付事業)※家事援助 B同行援護事業(個別給付事業)  以下では意思疎通支援事業を中心に、代筆・代読支援がどのように実施されているかなどを記します。 (1)意思疎通支援事業における代筆・代読支援  地域生活支援事業の意思疎通支援事業は必須事業です。代筆・代読支援は、この意思疎通支援事業の一つに位置づけられています。他に手話通訳、要約筆記などが挙げられています。  市町村の創意工夫により利用者の状況に応じて柔軟に実施することが可能であり、自治体が実施要領を定めて行います。 A.支援の対象者  身体障害者手帳(視覚障害)を所持している人を対象としている自治体がある一方で、手帳を所持していない人でも見えにくさを抱える人を対象としている自治体があります。その場合、医師の判断や診断書等をもとに支援が必要か判断する必要があります。  意思疎通支援では、自治体が柔軟に対象者を定めることができるため、弱視なので読み書きに困っているが、障害支援区分が低いため、居宅介護(家事援助)や同行援護が受けられない人達を対象にして支援することが可能です。そのため、様々な見えにくさを抱える人のQOL(生活の質)を維持するという意味では、多くの代筆・代読に関するニーズに対応できる意思疎通支援事業の実施が望まれています。 B.代筆・代読支援を担う事業所・支援者  事業所として想定されるのは、同行援護事業所、居宅介護事業所、社会福祉協議会、視聴覚障害者情報提供施設等です。  支援者としては、ガイドヘルパーやホームヘルパーの養成研修を受講した人、また、代筆・代読支援従事者養成研修を行っているところではその修了者が担い手になっています。 C.代筆・代読支援の時間 ○1回あたりの支援時間:上限0.5時間〜2時間 ○1ヶ月あたりの支援時間:上限5時間〜12時間  ただし、1ヶ月あたりの上限を設けず、支援計画によるという自治体もあります。 D.支援に関する報酬単価  代筆・代読支援に関する報酬単価は様々ですが、同じ意思疎通支援事業に含まれる手話通訳や要約筆記の報酬単価と横並びで設定している自治体が比較的多いようです。そのほか、それらを参考にしつつも独自に定めているところもあります。  いくつか具体例を挙げると次のとおり。 ○1時間当たりで設定している場合:2,000円、1,500円(交通費は別途支給)など。 ○0.5時間及び1時間当たりで設定している場合:約800円・1,500円、約1,000円・2,000円など。  その他、時間に関係なく1回当たり1,800円と定めている自治体もあります。    (2)居宅介護事業及び同行援護事業における代筆・代読支援 A.居宅介護事業における代筆・代読支援  居宅介護事業は、障害者個々人の障害状況に応じて給付が行われる個別給付事業の一つです。居宅において入浴、排せつ及び食事等の介護、調理、洗濯及び掃除等の家事並びに生活等に関する相談及び助言その他の生活全般にわたる援助を行いますが、その中に代筆・代読支援も含まれています。  ただ、居宅介護(家事援助)においては調理・洗濯・掃除等が優先され、指定の利用時間内では代筆・代読に十分な時間を割けないのが実情です。  また、支援の担い手であるホームヘルパーの研修において、視覚障害者のための代筆・代読支援が十分に取り上げられていないといった課題があります。  代筆・代読支援に時間を割けないという課題に対しては、居宅介護の枠内においてその支援の時間を増やして対応している自治体があります。既支給決定時間に加えて、代筆・代読支援にかかる時間を上乗せする形です。 B.同行援護事業における代筆・代読支援  同行援護事業は、障害者個々人の障害状況に応じて給付が行われる個別給付事業の一つです。視覚障害により移動に困難を有する障害者に対し、外出時に同行し、移動に必要な情報を提供するとともに、移動の援護その他について外出時の必要な援助を行うものです。移動を支援するだけでなく情報の提供等も行うこととされており、代筆・代読支援もその中に含まれています。  ただし、同行援護事業は外出時の支援であるため、居宅で代筆・代読の支援を行うことは認められていません。代筆・代読支援を実施できるのは外出先ということになります。  外出先に郵便物等の書類を持ち出して読み上げてもらう場合、個人情報の保護に不安があります。  また、居宅介護事業の場合と同じように、支援の担い手であるガイドヘルパーの研修において、代筆・代読支援が必ずしも十分でないといった課題があります。    5.代筆・代読支援者の養成研修  代筆・代読支援者の養成研修は、神奈川県視覚障害者福祉協会が先駆的に実施しました。また、そのカリキュラムを参考にして他の地域で実施されている例があります。  内容を大枠で分類すると、視覚障害や福祉制度等について解説する講義形式の部分と、実際に支援を行う場を設定して代筆・代読支援を経験してもらう実習の二つがあります。  実習は2人・1組になり、1人が支援者役、もう1人はアイマスクをして視覚障害者役になって行い、交代してそれぞれを経験する形で行うことが多いようです。  研修の日程としては、受講希望者の参加しやすさに配慮して1日で行うケース、実習に時間をかける形で2日間行うケースの2パターンがあります。  参考まで、以下に養成研修カリキュラムの主な項目を列記します。 (1)講義形式の解説 @視覚障害者にかかわる福祉制度  ○意思疎通支援事業  ○地域生活支援事業における他の支援事業  ○福祉制度にかかわる法律  ○障害者手帳、支援区分、障害年金 A視覚障害者の現状  ○視力、視野、色覚  ○視覚障害にかかわる疾患  ○視覚障害者の障害程度別・年齢階層別の状況  ○生活面の困りごとと工夫 B代筆・代読支援従事者の倫理  ○意思決定支援が必要な場面  ○意思決定支援の基本的原則  ○人格の尊重、挨拶、信頼関係構築、プライバシー保護 C代筆・代読支援従事者の業務  ○前提としての福祉制度や金銭管理にかかわる基礎的知識  ○書類の読み上げ  ○代筆・自署・捺印  ○パソコン・スマートフォン利用における支援  ○従事者が持っていると便利な備品  ○視覚障害者が識別できるマークが付いている物品に関する知識 (2)実習部分  実習は講義で取り上げた内容を確認しながら次のような方法で実施。 @支援者役と視覚障害者役の両方を経験 A代筆・代読の実習 B備品の利用 C必要となる基礎知識の確認    6.おわりに  これまで述べてきたように、視覚障害者は読み書きに関して様々な困りごとを抱えています。そして、それらを解決することはQOL(生活の質)を維持・向上させ、社会参加を実現する上で不可欠です。  代筆・代読支援は、それら困りごとを解決する有効な手段です。是非多くの自治体及び事業所の方々に取り組んでいただき、制度的基板に支えられる形で代筆・代読支援が行われるようにしていただきたいと思います。  また、視覚障害当事者の方々には読み書きにかかわる困りごとについて諦めずに、支援が必要であると声を上げてほしいと思います。そうすることが自らの可能性を広げることにつながります。  そうした関係各位の取り組みに、このガイドラインが参考になれば幸甚です。是非ご活用下さい。  最後に、このガイドラインの作成に当たって、「視覚障害者の代筆・代読の効果的な支援方法に関する調査研究」の検討委員会の方々、アンケート調査にご協力いただいた自治体並びに事業所の方々、ご意見をお聞かせいただいた視覚障害当事者の方々に多くのご協力をいただきました。深く感謝申し上げます。 《日本視覚障害者団体連合》