厚生労働省令和4年度障害者総合福祉推進事業 視覚障害者の代筆・代読の効果的な 支援方法に関する調査研究事業 ― 報告書 ― 令和5年(2023年)3月 社会福祉法人日本視覚障害者団体連合 目次 第1章 事業概要  1 事業名  2 事業の目的  3 事業の内容  4 調査の実施 第2章 調査の背景・先行調査結果  1 視覚障害者の読み書きの現状  2 代筆・代読支援に関する最近の動向  3 視覚障害者への代筆・代読を支える制度  4 先行研究の要点 第3章 アンケート調査結果  1 調査の目的・対象等  2 自治体を対象とする調査  3 同行援護事業所・居宅介護事業所を対象とする調査  4 自治体を対象とする調査の結果と要点  5 事業所を対象とする調査の結果と要点 第4章 ヒアリング調査結果  自治体ヒアリング調査結果   1 A市 ヒアリング結果   2 B市 ヒアリング結果   3 C区 ヒアリング結果   4 D区 ヒアリング結果   5 ヒアリングの結果の整理(補足)  代筆・代読支援従事者養成研修を実施している団体   1 A団体 ヒアリング結果   2 B団体 ヒアリング結果   3 C団体 ヒアリング結果   4 ヒアリングの結果の整理(補足)  居宅介護及び同行援護事業所(団体)   1 A事業所 ヒアリング結果(意思疎通支援事業を実施)   2 B事業所 ヒアリング結果   3 C事業所 ヒアリング結果   4 D事業所 ヒアリング結果   5 E事業所 ヒアリング結果   6 F事業所 ヒアリング結果   7 G事業所 ヒアリング結果(意思疎通支援事業を実施)   8 ヒアリングの結果の整理(補足) 第5章 考察 第6章 提言 第7章 ガイドライン・リーフレット 巻末資料 第1章 事業概要 1 事業名  厚生労働省令和4年度障害者総合福祉推進事業  「視覚障害者の代筆・代読の効果的な支援方法に関する調査研究事業」 2 事業の目的  視覚障害者が日常生活を円滑に送る上で代筆・代読は、必要かつ有効な支援である。 代筆・代読支援が必要な視覚障害者に対し適切かつ効果的にサービスが提供されるよう、地域生活支援事業に位置付けられた「意思疎通支援」及び居宅介護等で提供される代筆・代読支援に関する効果的支援の方法に関する調査を行う。 また、代筆・代読の支援者の在り方及び必要とする資質について明らかにするとともに、研修等に関するガイドラインを作成する。 3 事業の内容 (1)検討委員会の設置  調査事業の専門性と客観性を確保するために検討委員会を設置した。委員は、支援関係者、視覚障害当事者の他に、視覚障害者支援に見識のある学識経験者、個人情報保護等に知見のある法律家等で構成した。 (2)検討委員会 委員名簿(順不同・敬称略)  中野泰志 慶應義塾大学経済学部 教授(委員長)  竹下義樹 日本視覚障害者団体連合 会長(副委員長)  渡辺哲也 新潟大学工学部工学科 教授  棚橋公郎 岐阜アソシア・視覚障害者生活情報センターぎふ 部長  田中伸明 名城法律事務所 弁護士  大脇千鶴 名古屋市健康福祉局障害福祉部障害企画課 課長  鈴木孝幸 神奈川県視覚障害者福祉協会 理事長  金村厚司 日本視覚障害者団体連合同行援護事業所等連絡会 副会長   (3)検討委員会の開催日程 第1回委員会 期日:10月7日(金) 場所:日本視覚障害者センター及びオンライン(Zoom) 議事:代筆・代読支援に関する現状と課題    自治体アンケート調査(案)    自治体・事業所ヒアリング調査(案) 第2回委員会 期日:12月15日(木) 場所:日本視覚障害者センター及びオンライン(Zoom) 議事:意思疎通支援事業における代筆・代読支援の拡充    代筆・代読の効果的な支援方法の検討 第3回委員会 期日:3月 6日(月) 場所:日本視覚障害者センター及びオンライン(Zoom) 議事:調査の報告(案)    考察・提言の骨子(案)    報告書骨子(案) 4 調査の実施  本事業では、「自治体」「同行援護事業所及び居宅介護事業所」を対象にアンケート調査を実施した。 調査票の質問項目や表記の適切性、内容のわかり易さ、質問紙の見易さ、回答に要する時間などについて委員会で検討し、修正を行った上でアンケート調査を実施した。 自治体調査は、調査票を郵送し、同行援護事業所及び居宅介護事業所調査はメールで行った。  また、アンケート結果の補足及び地域で行われている代筆・代読支援の方法や現状と課題を把握するため、ヒアリング調査を行った。 (1)アンケート調査 @自治体 【対象】 ○令和2年度に意思疎通支援の代筆・代読支援を予算化した自治体 ○政令指定都市、中核市、東京23区 【実施方法】  郵送:200ケ所 【実施期間】  予算化した自治体 107ヶ所   実施期間:10月31日〜11月18日  政令指定都市、中核市、東京23区(上記と重複を除く) 93ヶ所   実施時期:11月16日〜12月7日  2次調査(1次未回答の自治体のみ)   実施期間:12月15日〜12月28日 【調査内容】 ○意思疎通支援事業の代筆・代読支援 ○同行援護での代筆・代読 ○居宅介護(家事援助)での代筆・代読 A居宅介護及び同行援護事業所 【対象】  日本視覚障害者団体連合同行援護事業所等連絡会の所属事業所・団体 【実施方法】  メール:71ケ所 【実施期間】  実施期間:11月28日〜12月9日 【調査内容】 ○意思疎通支援事業の代筆・代読支援 ○同行援護での代筆・代読 ○居宅介護(家事援助)での代筆・代読 (2)ヒアリング調査 @自治体 【対象】  令和元年度以降に意思疎通支援事業を開始した自治体及び先駆的な取り組みをしている自治体 【実施方法】  対面及びオンライン 【調査内容】 ○代筆・代読支援について  実施の経緯、実施方法と工夫、人材の養成、オンライン(リモート)の活用、課題、視覚障害当事者または事業所からの要望、他の地域においても代読・代筆支援を実施していくための方策 実施日 A市 12月8日 B市 1月17日 C区(社会福祉協議会) 1月27日 D区 2月7日 A代筆・代読支援従事者養成研修を実施している団体 【対象】  代筆・代読支援従事者養成研修を行っている団体 【実施方法】  対面及びオンライン 【調査内容】 ・研修を始めた経緯、実績、効果 ・他の地域においても広げていくための方策、視覚障害者へ代筆・代読支援が効果的に行われるための方策 実施日 A団体 11月17日 B団体 11月30日  C団体 12月1日 B居宅介護及び同行援護事業所(団体) 【対象】  意思疎通支援事業の代筆・代読支援を実施している事業所  居宅介護及び同行援護において代筆・代読支援を行っている事業所・団体 【実施方法】  対面及びオンライン 【調査内容】 ・意思疎通支援事業で代筆・代読支援を実施している  実施の経緯、利用者を増やすための取り組み、オンライン(リモート)の活用、効果的に支援が行われるための手がかり、支援を行っている上での課題、他の地域(市区町村)でも意思疎通支援において代読・代筆支援を広げていくための手がかり ・居宅介護・同行援護で代筆・代読支援を実施している  意思疎通支援の代筆・代読支援のニーズ、派遣事業及び従事者養成研修の実施意欲、オンライン(リモート)の活用、同行援護及び居宅介護での代筆・代読、視覚障害者への代筆・代読支援の要望 実施日 A事業所 12月7日 B事業所 12月26日 C事業所 1月5日 D事業所 1月6日 E事業所 1月6日 F事業所 1月11日 G事業所 2月2日 第2章 調査の背景・先行調査結果 1 視覚障害者の読み書きの現状  視覚障害のある人の中には、見えない人(全盲)もいれば、見えにくい人(弱視(ロービジョン))もいる。視覚障害者というと全盲を思い浮かべる人が多いが、実際には一部の視力が残っているなど、弱視(ロービジョン)の方が多い。 また、弱視(ロービジョン)は、視力が弱い、視野が狭い、中心が見えにくい、明るいところや暗いところで極端に見えにくくなる等、その見え方及び見えにくさが異なる。  視覚からの情報は全体の約80%〜90%を占めていると言われており、見えない・見えにくいことにより、日常生活を送る上で、「移動」と「読み書き」で不自由を抱えている。  例えば、「自宅に届いた郵便物の差出人がわからない」、「郵便物が読めない」、「イベントや催し物の内容がわからないので申し込めない」、「薬や家電製品等の説明書及び注意書きが読めない」、「子どもが通う学校からの便りやお知らせが読めない」、「病院の問診票が書けない」等の日常生活を送る上で読むこと・書くことは多くあり、社会参加や安心して日常生活を送るために代筆・代読支援を受けたいという視覚障害者のニーズがある。 また、代筆・代読支援を受けている人からは、身近な人に頼むことに躊躇してしまうこと、自分で読むのは時間がかかり疲れること、違うところに署名してしまった等の理由で読み書きをあきらめていたが、代筆・代読をしてもらうことで、社会参加できることや日常生活が楽しく送れるようになったという声がある。 意思疎通支援事業の代筆・代読支援を受けている2人の感想 Aさん(女性・光覚)  郵便物の整理、料理のレシピ、取り寄せた調理家電及び製品の取り扱い説明書等の代読をお願いしている。代筆は病院の予診票をお願いしている。支援を受けられる前は、近所の知人にお願いしていた。 プライバシーもあるので、支援者に代筆・代読をお願いできるのは助かっている。 Bさん(女性・弱視)  私は左目が若干見える程度であり、拡大読書器やルーペを使用しても読み書きすることが難しい。左目で少しずつしか見えないため、細かい字が読みにくいことやどこに何が書いてあるのかを自分で確認するには、相当時間がかかり疲れてしまう。 代筆・代読支援を受ける前は、自分で何とか時間をかけて読むか、夫に頼んでいた。夫には郵便物の整理などを頼んでいたが、化粧品や家電製品の説明書、植物(花)の育て方等を夫に読んでもらうには時間や内容からしても難しい。 自分で読むこともしにくいので気持ちがふさぎこんでしばらく読むことから離れていた。代筆・代読支援は、視覚障害者の集まりに行って知った。読み書きの支援を受けられることを知り、さっそく申し込んだ。郵便物の整理、催し物(イベント)の案内、レシートの確認、化粧品や植物(花)の育て方の代読をお願いしている。 代筆・代読支援を受けてからは、楽しく日常生活を送れている。月の代筆・代読支援の支給時間を使い切ってしまうので、もう少し時間が欲しいとも思う。 コラム1:弱視(ロービジョン)者の見えにくさの例  視力低下 中心暗点 視野狭窄 透光体混濁 の見えにくさの写真を掲載 出典:国立障害者リハビリテーションセンター学院視覚障害学科 ホームページ (http://www.rehab.go.jp/College/japanese/yousei/rv/feature/)を加工して作成 2 代筆・代読支援に関する最近の動向  視覚障害者が日常生活や社会参加するためには情報を取得し、意思決定を行うことが不可欠である。情報の取得及び障害福祉に関する法律が新たに施行される等、視覚障害者にとって、代筆・代読により情報の取得・発信等による意思疎通支援の必要性が法制度の上でも増している。 (1)障害者による情報の取得および利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律(以下、障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法)  障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法が令和4年5月25日に公布・施行された。  この法律は、全ての障害者があらゆる分野の活動に参加するためには、情報の十分な取得利用・円滑な意思疎通が極めて重要であることから、障害者による情報の取得および利用並びに意思疎通に係る施策を総合的に推進し、共生社会の実現に資することを目的に制定された。  障害者による情報の取得利用・意思疎通に係る施策の推進に当たり、以下の4つの基本理念が定められている。 @障害の種類・程度に応じた手段を選択できるようにする A日常生活・社会生活を営んでいる地域にかかわらず等しく情報取得などができるようにする B障害者でない者と同一内容の情報を同一時点において取得できるようにする C高度情報通信ネットワークの利用・情報通信技術の活用を通じて行う(デジタル社会)  また、基本的施策の13条では、障害者が自立した日常生活・社会生活を営むために必要な分野に係る施策として、意思疎通支援者の確保・養成・資質の向上、事業者の取り組みへの支援をすることと等が明記されている。 (2)障害者総合支援法改正法施行後3年の見直し  厚生労働省の社会保障審議会 障害者部会において、障害者総合支援法改正法施行後3年の見直し報告書がまとめられた。 その中では、意思疎通支援については、以下のような指摘があった。 ○地域生活支援事業として、地域の特性や利用者の状況に応じた柔軟な形態により実施されている一方で、地域により事業の実施状況にばらつきが見られ、支援が必要な者に対して十分なサービスが行き届いていないこと。 ○視覚障害者に対する代筆・代読支援について、1回当たりの支援時間がそ れほど長くならないことから事業として成り立たず、制度として確立させるため、現行制度の運用の見直しなどを検討する必要がある。 ○代筆・代読を必要とする場面によっては、当事者の権利義務関係にかかわることもあることを踏まえ、質の高い支援員の養成が必要。  また、指摘を受け、代筆、代読に関する効果的な支援に資するための調査研究事業を実施する旨が明記された。 (3)第7期障害福祉計画  2023年(令和5年)2月27日に厚生労働省の社会保障審議会障害者部会(第135回)が開かれ、「障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針」改正案が議論された。 この指針において、令和6年度から令和8年度までの第7期障害福祉計画及び第3期障害児福祉計画の作成または変更に当たって即すべき事項を定められている。  その中で、第7期障害福祉計画において、障害者等による情報の取得利用・意思疎通の推進の取り組みが必要であると示された。 都道府県・市区町村において、障害特性に配慮した意思疎通支援や支援者の養成等の促進を図るため、次のような取り組みを実施することが必要であると明記された。 @障害特性に配慮した意思疎通支援(手話通訳 、要約筆記、代筆・代読、触手話や指点字等 )のニーズを把握するための調査等 Aニーズに対応した支援を実施するために必要な意思疎通支援者の養成 B意思疎通支援者の派遣及び設置を実施するための体制づくり(都道府県による広域派遣や派遣調整等を含む) C遠隔地や緊急時等に対応するためのICT機器等の利活用 (4)自治体における条例の制定  障害者がそれぞれの障害の特性に応じた意思疎通手段により情報を取得し、円滑に意思疎通ができる環境づくりを推進していくため、条例を定めた自治体がある。「多様な意思疎通の促進に関する条例」、「障害者の意思疎通に関する条例」等の条例を定め、視覚障害者が日常生活又は社会生活を営む上で代筆・代読支援が必要だと明記されている。条例が制定されたことにより意思疎通支援事業の代筆・代読支援を実施したという自治体もある。 3 視覚障害者への代筆・代読を支える制度 (1)視覚障害者への代筆・代読  障害者に対する福祉サービスは、障害者総合支援法により、自立支援給付と地域生活支援事業で構成されている。視覚障害者への代筆・代読支援は自宅(居宅内)で行う居宅介護、外出先での代筆・代読を行う同行援護、地域生活支援事業の意思疎通支援事業で行われている。 ○居宅介護(ホームヘルプサービス)  介護が必要な障害者の自宅で、ホームヘルパーが「身体介護」「家事援助」「通院等介助」「通院等乗降介助」の4つの援助を行う。代筆・代読は「家事援助」として行われている。 ○同行援護  視覚障害者が外出する際に、ガイドヘルパーが必要な情報の提供や同行を行う。役所や病院等での代筆・代読が行われている。 ○意思疎通支援事業  障害や難病のため、意思疎通を図ることに支障がある障害者に、障害特性に応じた方法により、意思疎通を支援する者の派遣等を行う。市町村必須事業とされ、視覚障害者の意思疎通支援の具体例として、点訳、代読・代筆等があげられている。 地域生活支援事業 市町村対象事業一覧 (1)必須科目(10項目) @理解促進研修・啓発事業、A自発的活動支援事業、B相談支援事業、 C成年後見制度利用支援事業、D成年後見制度法人後見支援事業、E意思疎通支援事業、F日常生活用具給付等事業、G手話奉仕員養成研修事業、H移動支援事業、I地域活動支援センター機能強化事業 (2)意思疎通支援の具体例 聴覚障害者:手話、要約筆記 視覚障害者:代筆・代読、点訳、音声訳 盲ろう者:直接本人に接触する触覚手話、指点字、指文字 失語症者:会話における理解や表現の補助(必要に応じて道具や絵の利用等) (3)市区町村 1.手話通訳者、要約筆記者、盲ろう者向け通訳・介助員、失語症者向け意思疎通支援者等の派遣や代筆・代読、点訳、音声訳等による支援 2.市区町村の窓口に手話通訳者を設置 (4)都道府県 1.市町村が派遣できない場合などにおける手話通訳者、要約筆記者、失語症者向け意思疎通支援者の派遣 2.市区町村域や都道府県域を越えた広域的な派遣を円滑に実施するための市区町村間の派遣調整 注:下線は特に視覚障害者に関する項目です。 (2)障害福祉サービスと地域生活支援事業の対象者 @居宅介護や同行援護の障害福祉サービスの対象者  障害者総合支援法 第4条第1項において、支援の対象者である障害者について規定しており、そのうち身体障害者については「身体障害者福祉法第4条に規定する身体障害者」となっている。  身体障害者福祉法第4条においては、「身体障害者とは、(略)身体障害者手帳の交付を受けたものをいう。」となっていることから、障害者総合支援法に基づき実施される障害福祉サービス等の対象者は、原則として、身体障害者手帳の交付を受けた者となる。  障害者総合支援法による障害福祉サービスには、必要とされる支援の度合いに応じて適切なサービスが利用できるように、障害支援区分がある。  障害支援区分は、6段階の区分で、利用者にアセスメント調査を行い、その結果と医師の意見書の内容を総合的に勘案した審査判定が行われ、市町村が認定する。 A地域生活支援事業の対象者  障害者総合支援法第77条および第78条で規定されている地域生活支援事業は、「地域の特性や利用者の状況に応じ、実施主体である市町村等が柔軟な形態により事業を実施することが可能」と整理されている。  よって、地域生活支援事業のメニューの一つである意思疎通支援事業は、実施主体である市町村等において「手帳の有無や医師の診断、障害の状態等をもとに、支援の必要性を判断」し、事業を実施することが可能。 なお、無条件で対象になるものではなく、あくまで「支援が必要な者」が対象となる。 (3)意思疎通支援の代筆・代読で実施する必要性  上述のように、意思疎通支援では、自治体が柔軟に対象者を定めることができる。弱視なので読み書きに困っているが、障害支援区分が低いため、居宅介護(家事援助)や同行援護が受けられない人達を対象にして支援することが可能となる。 そのため、様々な見えにくさを抱える人のQOL(生活の質)を維持するという意味では、多くの代筆・代読に関するニーズに対応できる意思疎通支援事業の実施が望まれている。 4 先行研究の要点  本連合が過去に行った調査において、視覚障害の程度にかかわらず代筆・代読支援のニーズが高いことを明らかにしている。本調査においてもその点につき、先行研究を参考にした。その要点を記す。   (1)弱視(ロービジョン)者の読み書きに関する調査研究  平成28年に「読み書きが困難な弱視(ロービジョン)者の支援の在り方に関する調査研究事業」を実施した。  この調査で行ったアンケート結果から、弱視(ロービジョン)が読み書きに困っていることが明らかになった。  回答者の年齢  704人の回答を得ることができた。回答者は10歳未満から75歳以上にわたっていたが、51歳〜64歳が、261人で最も多く、65〜74歳が217人でついで多かった。両者が全体の3分の2を占めていた。  回答者の視力の状況  視力は0.1を下回っていて、視野狭窄、夜盲、羞明等の見えにくさを持っている人が多かった。   表1 視力以外の見えにくさ(複数回答可) 人数 % 屋外等の明るいところは、まぶしくて見えにくい 477人 67.8% 薄暗くなると途端に見えにくくなる 434人 61.6% 中心部が見えにくい 140人 19.9% 視野のところどころが見えにくい 187人 26.6% 目が揺れてしまって見えにくい 100人 14.2% 視野が狭い 402人 57.1% 色の区別が難しい 267人 37.9% 特になし 33人 4.7% その他 73人 10.4% 無回答 9人 1.3% 全体 704人 100.0% @読むことの不便さ  読むことの不便さの程度  回答者704人中、非常に困っている人が302人(42.9%)、やや困っている人が303人(43.0%)で両者を合わせると605人となり、回答者の85.9%が読むことに困難を示していた。  読むことで困っている理由(複数回答可)  読むことで困っていることとして、文字が見えにくい(文字のサイズ、濃さ、コントラスト、行間・文字間等)という理由をあげた回答が最も多かった。非常に困る、やや困ると回答した605人中523人で、これは読みに困難を訴える人の86.4%にあたる。次いで「読むのが疲れる」が433人、「読む箇所を探すのが大変」が336人となっていた。 A書くことの不便さ  書くことの不便さの程度  回答者704人中、非常に困っている人が267人(37.9%)、やや 困っている人が279人(39.6%)であった。8割近くの人が書くことに困っている。  書くことで困っている理由(複数回答可)  494人(90.5%)が、「どこに何を書いたら良いかわからない(枠が小さい・記入すべき位置がわからない等)」で書く際に困ると回答した。 ○参考 「読み書きが困難な弱視(ロービジョン)者の支援の在り方に関する調査研究事業」 http://nichimou.org/all/news/secretariat-news/170327-jimu/ (2)視覚障害者の代筆・代読に関する調査  平成30年に厚生労働省障害者総合福祉推進事業において「視覚障害者への代筆・代読支援に関する調査研究事業」を実施した。  この調査で行ったアンケート結果から、視覚障害の程度にかかわらず代筆・代読支援が必要なことが明らかになった。 読み書きで困ることの有無 479人の回答を得ることができた。全体で86.4%が「困っている」と回答。全盲では90.3%、弱視(ロービジョン)では80.7%もの人が読み書きで困っている。 読み書きを支援する公的な福祉サービス認知度  意思疎通支援事業、同行援護、居宅介護で代筆・代読が行われていることを知っているかを尋ねたところ、25.9%が「知らない」と回答。 代筆・代読支援の利用状況  公的な福祉サービスを利用したことがある239人に対して、実際にサービスを利用したかどうかを尋ねたところ、「同行援護(86.8%)」、「居宅介護(43.5%)」、「意思疎通支援事業(7.5%)」であった。 <視覚障害者の代筆・代読支援を求める声>  アンケート調査において、代筆・代読に特化した支援を求める声が多く寄せられた。 ○代筆・代読の専用のサービスが手軽に利用できるようにしてほしい。 ○いつでも必要な時にお願いできる制度にしてほしい。 ○代筆・代読に対する制度がきちんとあるのかどうか不安。なければ早急に整備してほしい。 ○同行援護だけではなく、意思疎通支援事業が実施できるようになると更に良いと思います。 ○同行援護と居宅介護の持ち時間がどうしても不足するので、意思疎通支援事業「代筆・代読支援」を利用できると嬉しい。 参考 視覚障害者への代筆・代読支援に関する 調査研究事業 http://nichimou.org/all/news/secretariat-news/190409-jim/ 第3章 アンケート調査結果 1 調査の目的・対象等  意思疎通支援事業の代筆・代読支援、居宅介護、同行援護等で行われている視覚障害者への代筆・代読支援の現状と課題を把握するため、自治体及び事業所へのアンケート調査を行った。 2 自治体を対象とする調査 (1)目的  自治体の意思疎通支援事業の代筆・代読支援に係る現状と課題を考察するためアンケート方式で調査を実施。 (2)調査対象  令和2年度の予算に意思疎通支援事業を計上した自治体を中心として政令指定都市、中核市、東京都23区を対象に調査を行った。 (3)調査方法  郵送によるアンケート調査を実施。 (4)調査時期  第1段:10月31日〜12月7日  第2段(再依頼):令和4年12月15日〜28日 (5)回答件数・回収率  アンケート送付先   200自治体(うち、令和2年度に予算化した自治体 107自治体)  回答総数   153自治体(うち、令和2年度に予算化した自治体 77自治体) 回収率  全体:76.5%(153/200) 令和2年度に予算化した自治体:72.0%(77/107) (6)主な設問  @意思疎通支援事業における代筆・代読支援の実施状況  A実施の有無、及び支援内容(代読のみか、代読と代筆の両方かなど)  B支援事業開始年度  C利用者数、利用延べ回数  D代筆・代読支援を実施することとなった経緯・きっかけ  E支援事業の視覚障害者に対する周知方法  F支援者の養成に関する取り組み  G支援の利用時間・利用回数の設定  H支援を実施する上での課題  IICT機器を活用したリモート支援の実施状況  J同行援護の前後における居宅での代筆・代読支援の実施  K居宅介護事業における代筆・代読支援に関する要望の有無と内容  L意思疎通支援事業以外の代筆・代読支援の実施状況  M視覚障害者等の読書環境整備推進計画の策定と代筆・代読支援の位置づけ   3 同行援護事業所・居宅介護事業所を対象とする調査 (1)目的  同行援護事業所並びに居宅介護事業所における代筆・代読支援に係る現状と課題を考察するためアンケート方式で調査を実施。 (2)調査対象  同行援護事業所等連絡会の加入事業所等 71事業所 (3)調査方法  メールによりアンケート調査票の配布及び回答の回収を行った。 (4)調査時期  令和4年11月28日?12月9日 (5)回答件数・回収率  アンケート送付先 71事業所  回答総数 17事業所  回収率 23.9% (6)主な設問  @代筆・代読支援を行っている事業の種類    (意思疎通支援事業、同行援護事業、居宅介護事業等の種別)  A意思疎通支援事業の代筆・代読支援を行うこととなったきっかけ  B代筆・代読支援を行う上での制度的工夫(複数事業の組合せなど)  C代筆・代読支援にかかわる課題(支援者の確保、利用者ニーズの把握等)  D複数の事業において代筆・代読支援を行う上での課題 4 自治体を対象とする調査の結果と要点  自治体対象の調査及び事業所対象の調査それぞれについて、設問ごとにその結果と要点を示す。  問1は自治体名と部署名の記入を求めるものなので省略する。 (1)意思疎通支援事業における代筆・代読支援の実施状況 問2 地域生活支援事業の「意思疎通支援事業」における、視覚障害者向けの代筆・代読支援について、実施状況等をお書き下さい。 ※移動支援事業、同行援護事業、居宅介護事業における代筆・代読支援は除きます。 <結果と要点> @実施の有無及び支援内容  まず、回答のあった全自治体153件の内訳を示し、次に、意思疎通支援事業について令和2年度に予算化した自治体77件の内訳を示す。 表2−1 実施の有無及び支援内容(全体) 支援の実施状況 自治体数 構成比(%)の順 代筆支援・代読支援両方 18(11.8) 代読支援のみ 2(1.3) 代筆支援のみ 0(0.0) 実施していない 123(80.4) その他 4(2.6) 無回答 6(3.9) 合計 153(100.0)  意思疎通支援事業の代筆・代読支援を実施していない自治体が80.4%で大半を占める。実施している自治体は13.1%。実施している20件に絞ってみると、その支援内容は「代筆支援・代読支援両方」が18件で90.0%を占めるが、「代読支援のみ」も2件あった。    表2−2 実施の有無及び支援内容(予算化した自治体) 支援の実施状況 自治体数 構成比(%)の順 代筆支援・代読支援両方 15(19.5) 代読支援のみ 2(2.6) 代筆支援のみ 0(0.0) 実施していない 53(68.8) その他 1(1.3) 無回答 6(7.8) 合計 77(100.0)  実施していない自治体が68.8%と3分の2以上を占める。実施している自治体は22.1%。意思疎通支援事業を予算化している自治体においても代筆・代読支援があまり実施されていないことが分かる。  実施している17件に絞ってみると、その支援内容は「代筆支援・代読支援両方」が15件で88.2%を占めるが、「代読支援のみ」も2件あった。    A支援事業開始年度  意思疎通支援事業の代筆・代読支援を開始した年度を尋ねたところ、有効回答が14件あった。その内訳は次のとおり。 表2−3 代筆・代読支援の開始年度 開始年度 自治体数の順 2006(平成18) 4 2007(平成19) 1 2010(平成22) 1 2013(平成25) 1 2014(平成26) 1 2015(平成27) 1 2017(平成29) 2 2020(令和2) 1 2021(令和3) 1 2022(令和4) 1 合計 14    代筆・代読支援の開始年度は分散しているが、2006(平成18)年度が4件あった。ちなみに、この年の4月から障害者自立支援法が施行されている。2017(平成29)年度が2件で、他は1件ずつである。    B利用者数、利用延べ回数  自治体ごとの利用者数と利用延べ回数は下のとおり(n=19)。  令和元年度〜令和3年度の数(年度末時点)を尋ねたが、記述のなかったところは空欄にした。  なお、平均利用回数は、利用延べ回数を利用者数で割った値(1人当たりの延べ利用回数)。 表2−4 利用者数、利用延べ回数、平均利用回数 自治体名 利用者数 延べ利用回数 平均利用回数の順  令和元 令和2 令和3の順 A 8 11 10 160 492 549 20.0 44.7 54.9 B 1 1 1 1 1 2 1.0 1.0 2.0 C 3 3 4 117 102 104 39.0 34.0 26.0 D 6 4 4 50 23 37 8.3 5.8 9.2 E 8 6 7 191 181 200 23.9 30.2 28.6 F 空欄 13 16 空欄 27 32 空欄 2.1 2.0 G 0 0 0 0 0 0 空欄 空欄 空欄 H 7 8 8 623 569 605 89.0 71.1 75.6 I 0 0 0 0 0 0 空欄 空欄 空欄 J 2 0 0 5 0 0 2.5 空欄 空欄 K 7 9 12 24 39 46 3.4 4.3 3.8 L 1 1 1 1 3 3 1.0 3.0 3.0 M 11 12 9 空欄 空欄 346 空欄 空欄 38.4 N 3 3 3 86 65 54 28.7 21.7 18.0 O 1 1 1 7 4 3 7.0 4.0 3.0 P 24 25 25 129 124 107 5.4 5.0 4.3 Q 空欄 空欄 3 空欄 空欄 4 空欄 空欄 1.3 R 空欄 空欄 1 空欄 空欄 12 空欄 空欄 12.0 S 空欄 空欄 1 空欄 空欄 11 空欄 空欄 11.0  令和3年度のうち利用者数が1人以上の16自治体についてみると、利用者数、延べ利用回数、平均利用回数それぞれの最小値・中央値・平均値・最大値は次のとおり。 表2−5 令和3年度の利用者数等の分布情報 項目 最小値 中央値 平均値 最大値の順 利用者数 1 4.0 6.6 25 延べ利用回数 2 41.5 132.2 605 平均利用回数 1.3 10.1 18.3 75.6    《参考》  把握できた各自治体の実施要綱から、利用できる範囲と利用できない範囲(概ね共通)を掲げると次のとおり。 @利用できる範囲 ○市・区役所等公的機関の手続きに関すること ○受診又は相談等医療に関すること ○金融機関、医療、福祉施設への申請等 ○公的行事や地域における各種行事への申込 ○社会の出来事や生活情報を知るための新聞等 ○日常の買い物に関する折り込みチラシ等 ○電化製品等の取扱説明書等 ○地域生活を営むうえで必要不可欠なこと A利用できない範囲 ○政治活動、営業活動等、宗教活動、ギャンブル ○趣味・教養を目的とした代筆・代読 ○代筆・代読支援員が何らかの判断を要する文書の代筆・代読 ○この事業の対象者以外の者に関する書類等の代筆・代読 ○その他社会通念上不適当なもの (2)代筆・代読支援を実施することとなった経緯・きっかけ 問3 視覚障害者向けに代筆・代読支援を実施することとなった経緯・きっかけはどのようなものですか。該当するものに○を付けて下さい。(複数回答可) <結果と要点>  意思疎通支援事業の代筆・代読支援を実施している20自治体から得られた回答は次のとおり。 表3 代筆・代読支援を実施することとなった経緯・きっかけ 選択肢 自治体数 構成比(%)の順 障害当事者から要望があった 10(50.0) 意思疎通支援事業の一つとして実施した 10(50.0) 障害者サービス提供事業所から提言があった 1(5.0) ニーズ調査や自立支援協議会等の議論の結果 0(0.0) その他 3(15.0) 全体 20(100.0)  「障害当事者から要望があった」と「意思疎通支援事業の一つとして実施した」が同じく50.0%を占める。  なお、「その他」の主な自由記述には次のものがあった。 ・読書バリアフリー法の制定、定例会における議会での要望 (3)支援事業の視覚障害者に対する周知方法 問4 地域に住む視覚障害者に対しどのようにして代筆・代読支援の情報を提供していますか。該当するものに○を付けて下さい。(複数回答可) <結果と要点>  意思疎通支援事業の代筆・代読支援を実施している20自治体から得られた回答は次のとおり。 表4 支援事業の視覚障害者に対する周知方法 選択肢 自治体数 構成比(%)の順 障害者福祉のしおりに掲載している 13(65.0) 自治体のホームページに掲載している 9(45.0) 身体障害者手帳を交付する際に窓口で案内している 8(40.0) 事業のリーフレットを作成して配布している 1(5.0) 自治体の広報紙に定期的に掲載している 0(0.0) その他 3(15.0) 全体 20(100.0) 「障害者福祉のしおりに掲載している」が65.0%で高い割合。 「ホームページに掲載」と「窓口で案内」も比較的高い割合だが、40%台で半数以下である。 (4)支援者の養成に関する取り組み 問5 代筆・代読支援を実施するため人材の養成に取り組んでいますか。(複数回答可) <結果と要点>  意思疎通支援事業の代筆・代読支援を実施している20自治体から得られた回答は次のとおり。 表5 支援者の養成に関する取り組み 選択肢 自治体数 構成比(%)の順 養成の取り組みは特に行っていない 14(70.0) 研修等を実施して養成に取り組んでいる(委託を含む) 4(20.0) 団体や事業所が行っている養成に対して補助金を交付 0(0.0) 団体や事業所の取り組みで足りると考えて任せている 0(0.0) 点訳者養成研修を行っている 2(10.0) 音訳者養成研修を行っている 2(10.0) 盲ろう者通訳・介助員の養成研修を行っている 0(0.0) その他 0(0.0) 全体 20(100.0)  「養成の取り組みは特に行っていない」が70.0%と高い割合となっている。  代筆・代読支援の充実のためには、「研修等を実施して養成に取り組んでいる(委託を含む)」の4自治体の事例を参考として、取り組みの拡充が求められる。    (5)支援の利用時間・利用回数の設定 問6 代筆・代読支援の利用時間、利用回数をどのように設定していますか。 《ここでは、1回当たりの利用時間の上限、月当たりの利用時間または利用回数の上限等を質問した。》 <結果と要点>  有効回答は18件で、そのうち8件は「利用時間につき特に規定は設けていない(支援計画による任意の設定等)」であった。 @1回当たりの利用時間の上限  1回当たりの利用時間の上限に回答した10自治体の状況は次のとおり。 表6−1 1回当たりの利用時間の上限 上限利用時間 自治体数の順 2時間 5 1.5時間 1 1時間 2 0.5時間 2    A月当たりの利用時間・利用回数の上限  月当たりの利用時間・利用回数の上限に回答した10自治体の状況は次のとおり。 表6−2 月当たり利用時間・回数の上限 月当たり利用時間・回数の上限 自治体数 12時間 6回 2 10時間 2 5時間 2 2時間 1 5回 2 2回 1 (6)支援を実施する上での課題 問7 意思疎通支援事業で代筆・代読支援を行う上で何が課題だと思いますか。(複数回答可) <結果と要点> @支援を実施する上での課題(全体)  有効回答全体(153自治体)の結果は次のとおり。 表7−1 支援を実施する上での課題(全体) 選択肢 自治体数 構成比(%)の順 支援者の確保 102(66.7) 支援事業を担う事業所の確保 69(45.1) 利用者ニーズの把握 66(43.1) 財源(予算)の確保 64(41.8) 支援者の養成方法(カリキュラム)の確立 57(37.3) 利用者が増えない 21(13.7) 契約書等取り扱いが難しい資料への対応策の確立 20(13.1) 事業の周知 16(10.5) 支援を行う際のプライバシー保護(情報漏洩対策) 12(7.8) 分からない 8(5.2) その他 1(0.7) 全体 153(100.0) A支援を実施する上での課題(予算化したが未実施の自治体)  令和2年度に意思疎通支援事業を予算化したが、代筆・代読支援を実施していない自治体の有効回答(60自治体)の結果は次のとおり。 表7−2 支援を実施する上での課題(予算化したが未実施の自治体) 選択肢 自治体数 構成比(%)の順 支援者の確保 37(61.7) 支援事業を担う事業所の確保 24(40.0) 利用者ニーズの把握 21(35.0) 財源(予算)の確保 17(28.3) 支援者の養成方法(カリキュラム)の確立 16(26.7) 利用者が増えない 9(15.0) 事業の周知 3(5.0) 契約書等取り扱いが難しい資料への対応策の確立 2(3.3) 支援を行う際のプライバシー保護(情報漏洩対策) 1(1.7) 分からない 3(5.0) その他 0(0.0) 全体 60(100.0)    B支援を実施する上での課題(実施している自治体)  代筆・代読支援を実施している自治体の有効回答(18自治体)の結果は次のとおり。 表7−3 支援を実施する上での課題(実施している自治体) 選択肢 自治体数 構成比(%)の順 利用者が増えない 7(38.9) 事業の周知 7(38.9) 支援者の確保 5(27.8) 利用者ニーズの把握 4(22.2) 支援事業を担う事業所の確保 2(11.1) 財源(予算)の確保 2(11.1) 支援者の養成方法(カリキュラム)の確立 1(5.6) 支援を行う際のプライバシー保護(情報漏洩対策) 1(5.6) 契約書等取り扱いが難しい資料への対応策の確立 1(5.6) 分からない 1(5.6) その他 1(5.6) 全体 18(100.0)     前掲の3つの表から次の特徴・傾向がみられる。  有効回答全体と、令和2年度に意思疎通支援事業を予算化したが代筆・代読支援を実施していない自治体との間に、あまり違いはみられない。  どちらも「支援者の確保」が最多で60%を超えている。それに続く「支援事業を担う事業所の確保」など、選択の多い順がほぼ同じ。あえて違いをみるとすれば、財源の確保と支援者の養成方法の確立が、全体では40%前後なのに対し、未実施の自治体では30%未満と割合が低い。  一方、代筆・代読支援を実施している自治体の傾向は異なり、最多は「利用者が増えない」と「事業の周知」が同数で38.9%を占める。  代筆・代読支援を実施していない自治体が実施に転ずるためには、まずは支援者の確保、そして支援事業を担う事業所の確保に目処をつける必要がある。  また、実施後については代筆・代読支援を行っていることを視覚障害者に周知し、利用者を増やす工夫が必要といえる。 (7)ICT機器を活用したリモート支援の実施状況 問8 地域生活支援事業の「意思疎通支援事業」の代筆・代読支援においてICT機器を活用したリモート支援を行っていますか。 <結果と要点>  下に示すように、ICT機器を活用したリモート支援を実施しているところはなかった。 表8 ICT機器を活用したリモート支援の実施状況 選択肢 自治体数 構成比(%)の順 はい0(0.0) いいえ 19(95.0) 無回答 1(5.0) 合計 20(100.0)    (8)同行援護の前後における居宅での代筆・代読支援の実施 問9 同行援護事業における代筆・代読支援は外出先で行うこととされていますが、支援する前後に自宅での代筆・代読支援を特例的に一定時間認めていますか。(単一回答) <結果と要点>  「認めている」という自治体は2.6%とほとんどないが、「同行援護事業所の裁量に任せている」が39.9%と比較的高い割合だった。 表9 同行援護の前後における居宅での代筆・代読支援の実施 選択肢 自治体数 構成比(%)の順 認めている 4(2.6) 認めていない 51(33.3) 同行援護事業所の裁量に任せている 61(39.9) その他 13(8.5) 合計 153(100.0) その他の主な回答 ・同行援護事業者から問い合わせがあった際にその都度対応している。 ・一律で不可とはしていない。必要があれば個別検討をした上で、認めているケースあり。 ・外出前後における簡易な支援であれば認めている。 ・支援が必要な場合は、居宅介護(家事援助)で支給決定している。 ・同行援護では認めていないが、居宅介護(家事援助)で日常生活において、必要不可欠な郵便・通信関係物のみを対象として1日10分程度認めています。 (9)居宅介護事業における代筆・代読支援に関する要望の有無と内容 問10 居宅介護事業における代筆・代読支援について視覚障害当事者または事業所から要望がありますか。(複数回答可) <結果と要点>  実質的には回答が少ないが、その中では「家事援助との兼ね合いで支援時間が足りない」が21件、13.7%と最多である。 表10 居宅介護事業における代筆・代読支援に関する要望の有無と内容 選択肢 自治体数 構成比(%)の順 家事援助との兼ね合いで支援時間が足りない 21(13.7) 代筆・代読の支援者の養成研修の実施 2(1.3) 代筆・代読支援の報酬の加算 1(0.7) その他 10(6.5) 全体 153(100.0) その他の主な回答 ・趣味の本の朗読など、家事援助の範疇を超える代筆・代読を希望されることがある。 ・「時間を増やして欲しい」等の当事者からの相談は相談支援専門員にしてもらい、相談支援専門員によるアセスメントの上、相談支援専門員から区に連絡を入れてもらい、対応している。 ・居宅介護のサービス中に代筆・代読の希望があれば、事業所の対応可能な範囲で対応してもらっている。 (10)意思疎通支援事業以外の代筆・代読支援の実施状況 問11 地域生活支援事業の「意思疎通支援事業」以外で代筆・代読支援を実施していますか。(複数回答可) <結果と要点>  「特に実施していない」が最多で57.5%を占める。 表11 意思疎通支援事業以外の代筆・代読支援の実施状況 選択肢 自治体数 構成比(%)の順 公共図書館におけるサービス 32(20.9) 点字図書館におけるサービス 13(8.5) ボランティア団体等の活動に補助金を支給 2(1.3) ボランティア団体等の活動を後押し(広報等) 7(4.6) 特に実施していない 88(57.5) その他 20(13.1) 全体 153(100.0) その他の主な回答 ・行政での手続きの際は、担当職員により対応している。 ・区の社会福祉協議会視覚障害者・聴覚障害者交流コーナーに委託をして代読・代筆支援を行っている。 ・令和3年9月1日より、家事援助において、代読代筆のニーズのみで支給決定できるようサービスを拡充した。 ・区の障害者緊急介護人派遣事業において、代読・代筆支援を実施。 (11)視覚障害者等の読書環境整備推進計画の策定と代筆・代読支援の位置づけ 問12 貴自治体において「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(読書バリアフリー法)」の視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する計画(推進計画)を策定していますか。また、その推進計画において代筆・代読を位置づけていますか。 <結果と要点>  無回答が多く約60%であるが、次いで「推進計画の策定する予定はない(未定も含む)」が35.3%を占め、「推進計画を策定し、代筆・代読を位置づけている」は1件のみであった。 表12 視覚障害者等の読書環境整備推進計画の策定と代筆・代読支援の位置づけ 選択肢 自治体数 構成比(%)の順 推進計画を策定し、代筆・代読を位置づけている 1(0.7) 推進計画を策定しているが、代筆・代読を位置づけていない 1(0.7) 現在推進計画の策定作業中 0(0.0) 現在推進計画の策定に向けて検討中 6(3.9) 推進計画の策定する予定はない(未定も含む) 54(35.3) 無回答 91(59.5) 合計 153(100.0) (12)視覚障害者への代筆・代読支援に関する意見 問13 視覚障害者への代筆・代読支援に関してご意見あればご記入ください。(自由記述) (1)ニーズの把握 ○当町では事例がないため、他市町村の取り組みについて知る機会があれば大変有益と感じます。 ○自治体として、地域における当事者ニーズを把握したうえで、必要な支援を提供するための体制整備に努めたい。 ○代筆・代読支援は、利用者の身近なところで解決できるよう、様々なところでサービスが受けられるような形が望ましいと思います。 (2)障害福祉サービス・介護保険 ○何かのついでで、代読してほしいという要望があるが、利用者から事業者へ家事援助の途中でお伝えするのは気が引けるという方がいます。 (3)代筆・代読支援の課題 ○代筆・代読のニーズは、視覚障害のある方の生活にとって、より重要であり、大きな影響を及ぼすこと(金融、裁判、宗教活動など)について、より高まると考えられるが、それらのニーズに支援者がどこまで応えるのか責任の所在はどうなるのか、支援者を守る仕組みをどうやって構築するのか、等も考える必要があり、結果として、代筆・代読を必要とするニーズの多くに応えられないことも起きるのではないでしょうか。 ○視覚障害のみならず、視覚障害と聴覚障害、視覚障害と知的障害等の障害が重複する方々に対して、有効な代筆・代読がノウハウとしてどこまで確立されているのか。障害の個別性に対応できる代読・代筆のノウハウや支援者としてのふるまいなどを「支援者の養成・確保」等の文脈で、一般化して提供できるのか、地域差などを将来的に無くしていけるのか、課題が多くあり、成功例、モデルケースの共有が重要ではないか。 (4)国への要望 ○カリキュラム策定にあたって国の支援がほしい。 ○視覚障害者にとって、代筆・代読支援は必要不可欠である。しかしながら支援を受けることが難しいのが現状である。日常的な代筆・代読支援(契約等が難しい書類は除く)については、日常的に支援が受けられる必要がある。各自治体任せにするのではなく国全体として日常的に支援を受けることができる体制作りが大切だと考えます。 コラム2:居宅介護で代筆・代読支援を増やした自治体  代筆・代読支援の時間を確保できないため、居宅介護(家事援助)の代筆・代読支援の時間を増やしている。 (1)対象者 家事援助の支給決定が可能な方で、代筆・代読の支援が必要な方 (2)支給時間 原則、週に1回30分 (3)対象となる範囲 ・日常生活上必要とされる範囲 ・家事援助のサービスの一環として行われるので、特殊なスキルを求めるのは対象外 【対象となるものの例】 郵便物の整理、電化製品等の取扱説明書の代読、買い物や食材等のメモ、ネットショッピング等の自宅で行う買い物代行のためのパソコン操作。 コラム3:障害者緊急介護人派遣事業  自治体独自で行っている障害者緊急介護人派遣事業において、視覚障害者への代筆・代読を行っている。 (1)対象者 身障手帳1・2級、愛の手帳1〜3度、脳性麻痺、進行性筋萎縮症の方 (2)派遣回数 月20時間 (3)対象となる範囲 保護者または家族が、病気、その他やむを得ない事情や、家族の休養・社会参加等で、一時的に障害者(児)の介護ができない場合、介護人を派遣するか、介護人宅に障害者を預かり介護します。 (4)対象となるもの 身のまわりの世話、生活必需品などの買物、病院への付添い等 ※身のまわりの世話の中に、代筆・代読支援が含まれる 5 事業所を対象とする調査の結果と要点  同行援護事業・居宅介護事業を行う事業所のアンケート調査では、71事業所に調査票を配布して17事業所から回答を得た。 回答数が少数であるため、必ずしも全体的な特徴・傾向を反映するものとなっているとは限らないが、一つの参考材料として結果を記す。 (1)代筆・代読支援を行っている事業の種類 問1 貴事業所において視覚障害者向けの代筆・代読支援をどの事業で実施していますか。また、行っている支援に○をつけてください。(複数回答可)  各事業種類について代筆のみ、代読のみ、代筆・代読の両方の3つの欄を設けて○をつけてもらったが、いずれにおいても代筆・代読の両方が選択された。 <結果と要点>  同行援護事業における代筆・代読支援は全部の事業所で実施しているが、意思疎通支援事業で実施している事業所はなかった。 表13 代筆・代読支援を行っている事業の種類 選択肢 事業所数 構成比(%)の順 意思疎通支援事業 0(0.0) 移動支援事業 4(23.5) 同行援護事業 17(100.0) 居宅介護事業 9(52.9) 実施していない 0(0.0) 全体 17(100.0)    (2)意思疎通支援事業の代筆・代読支援を行うこととなったきっかけ 問2 問1で「1.意思疎通支援事業において代筆・代読支援を実施している」と回答された事業所にお伺いします。実施することとしたきっかけは何ですか。(複数回答可) <結果と要点>  意思疎通支援事業を実施する事業所がなかったため、この設問に回答する事業所はなかった。  参考まで選択肢を掲げておく。 ・障害当事者からの要望に対応した ・自治体が予算化した ・意思疎通支援事業の一つとして(当然のこととし)実施した ・ケアマネジャーなどからの包括的な支援計画 ・その他    (3)代筆・代読支援を行う上での制度的工夫(複数事業の組合せなど) 問3 同行援護事業は外出先、居宅介護事業は自宅で代筆・代読支援ですが、視覚障害者(利用者)からは両方の支援を切れ目なく受けることができれば利便性が高まるとの声があります。そうした声に対応するため何か工夫していますか。 <結果と要点>  「特に工夫はしていない」が最多で47.1%で、その次が「両方の事業を組み合わせて同じヘルパーが支援」23.5%である。 表14 代筆・代読支援を行う上での制度的工夫(複数事業の組合せなど) 選択肢 事業所数 構成比(%)の順 ガイドヘルパーが居宅で代筆・代読支援を一定時間行う 2(11.8) 両方の事業を組み合わせて同じヘルパーが支援 4(23.5) 特に工夫はしていない 8(47.1) そもそも代筆・代読支援の実績がほとんどない 0(0.0) わからない 0(0.0) その他 2(11.8) 無回答 1(5.9) 全体 17(100.0)    (4)代筆・代読支援にかかわる課題 問4 代筆・代読支援を行っている上での課題または行っていないことの課題はなんですか。(複数回答可) <結果と要点>  最多は「支援者の確保」の52.9%であり、次いで「支援者のスキル」と「利用者のニーズを汲み取ること」が同率の41.2%であった。 表15 代筆・代読支援にかかわる課題 選択肢 事業所数 構成比(%)の順 支援者の確保 9(52.9) 支援者のスキル 7(41.2) 利用者のニーズを汲み取ること 7(41.2) 代筆・代読ができる範囲が明確でない 6(35.3) その他 0(0.0) 全体 17(100.0)    (5)複数の事業において代筆・代読支援を行う上での課題 問5 複数の事業において視覚障害者への代筆・代読支援を行うことについて、課題と思うことは何ですか。(複数回答可) <結果と要点>  最も多いのは「支援を行う際のプライバシー保護(情報漏洩対策)」(9件・52.9%)だが、次いで3項目「支援者の確保」、「支援者のスキル不足」、「契約書等取り扱いが難しい資料への対応」はいずれも8件であった。支援者に求められる資質について課題と感じている事業所が一定数あることが分かる。 表16 複数の事業において代筆・代読支援を行う上での課題 選択肢 事業所数 構成比(%)の順 支援を行う際のプライバシー保護(情報漏洩対策) 9(52.9) 支援者の確保 8(47.1) 支援者のスキル不足 8(47.1) 契約書等取り扱いが難しい資料への対応 8(47.1) 支援事業を維持するための財源の確保 6(35.3) 違う事業なので報酬の請求が複雑 4(23.5) 利用者が増えない 3(17.6) わからない 0(0.0) その他 0(0.0) 全体 17(100.0)    (6)代筆・代読支援に関する意見、国や自治体への要望 問6 視覚障害者への代筆・代読支援に関してご意見及び地方自治体、国等に求めることがありましたらご記入ください。(自由記述) <結果と要点>  以下に回答のあったものを掲載する。 1.自治体が財政難等で地域生活支援事業の「意思疎通支援事業」には積極的な取り組みがなされない場合、事業所でサービス提供が可能であっても支援の幅が広がらない。同行援護は制度上、居宅で代筆・代読支援を行えないことから対応したくてもできない状況で苦慮している。現在は玄関先で郵便物等の簡単な説明のみの短時間対応で、利用者にとっても充分な支援が受けられていない状況である。早急な自治体支援への取り組みと同行援護サービス支援内容の拡大への検討を求めます。 2.室内での代読代筆の希望が多いが、対応できるヘルパーが少ないため、同行援護での室内の代読代筆ができるようになると良いです。対応ヘルパーが少ない理由としては、居宅介護の資格取得に費用と時間がかかることも大きいと思います。費用の補助や代読代筆のみの限定資格の設定、取得手段簡略化などがあるとよいです。 3.同行援護サービスだけの利用者に対する代筆・代読する場所や時間等の配慮をしてほしい。 4.同行援護事業においても、利用者の要望に応じて居宅でも代筆・代読ができるように制度改革が必要。 5.契約書などが非常に難しい。請求書が障害によって煩雑なので一元化してほしい。公文書は必ず点字、拡大文字で用意してほしい。地域生活支援事業での意思疎通支援として、代筆・代読に予算をつけてもらいたい。 6.福祉サービスとして代筆・代読に特化した支援事業となるよう希望します。財産に関わること・契約に関わること等の対応での代筆者の責任に帰するリスクが大きい場合は、行政や専門機関での対応が必要だと思います。利用者のニーズの把握が不明確な為、単独での代筆・代読支援は行われておらず、意思疎通支援事業の一部として捉えている。今後の自治体の動向を見極めながら対応したい。 第4章 ヒアリング調査結果 自治体ヒアリング調査結果 【対象】  令和元年度以降に意思疎通支援事業を開始した自治体及び先駆的な取り組みをしている自治体 【実施方法】  対面及びオンライン 【調査内容】 ○代筆・代読支援について  実施の経緯、実施方法と工夫、人材の養成、オンライン(リモート)を活用、課題、視覚障害当事者または事業所から要望、他の地域においても代読・代筆支援を実施していくための方策 実施日 A市 12月8日 B市 1月17日 C区(社会福祉協議会) 1月27日 D区 2月7日 1 A市 ヒアリング結果  意思疎通支援事業における代筆・代読支援 (1)代筆・代読支援を実施することとなった経緯・きっかけ・大変だったこと ○きっかけ  令和3年6月の第2回定例議会において代筆・代読支援事業が必要との意見が出されたことがきっかけ。コロナの影響で鍼灸マッサージの事業運営が厳しくなったことにともなう生活資金借り入れ、コロナのワクチン接種の予約など、手続きをするのに代筆・代読支援が必要との視覚障害者の意見が市議会で述べられた。 ○大変だったこと  制度設計をするに当たり参考になる先行事例があまりなく、最初から制度設計をしなければならなかった。ただ、他の自治体が既に実施していることは事前の調査で把握していた。 ○視覚障害者との協議  制度設計に当たっては、視覚障害者福祉協議会と協議を重ねた。 (2)代筆・代読支援の実施方法  時間や対象者、利用できる・できない範囲や申請方法等 ○利用時間  1日2時間まで、月当たり6回まで支援を受けることができることとした。月当たり最大で12時間。1回当たり2時間というのは、ヘルパーが実際に支援できる時間の限度がその程度と考えたものであり、月当たり6回というのは、週に1回は支援を受けられるようにして、時期によっては週2回必要なこともあると考えて6回にした。 ○対象者  市内に住民登録があり、視覚障害を原因として障害者手帳を交付されているもの。障害程度の等級は問わない。見えづらさにいろいろ種類があり、支援が必要なのは全盲の人に限らないと考えて等級は問わないこととした。  手帳は持っていないが見えづらいという人(介護保険対象の高齢者)も代筆・代読支援を受けられるかと事業所から問い合わせをもらうことがあるが、今のところ手帳所持者に限定している。所持していない人もとなると際限なく広がってしまうのではないかと懸念する。 ○支援を受けられる場所  基本的には居宅だが、病院や役所等、支援が必要になる場所でも利用できるようになっている。 ○利用できる内容  趣味・教養を目的とした代筆・代読を対象外にしたのは、生活に必要な最小限の情報の保障を前提に考えたため。趣味・教養まで入れると際限なく広がってしまうのではないかと懸念した。ただ、どこまで対象範囲とするかは、今後、支援のニーズを踏まえて検討したいと考えている。 ○事業所の選定  同行援護事業または居宅介護事業で既に認定されている事業所、あるいは、市長が特別に認める事業所が選定の対象とされる。同行援護事業または居宅介護事業で既に認定されている事業に声をかけて、手を挙げてくれたところに事業を行ってもらっているのが現状。 (3)代筆・代読支援の実施の工夫  制度の周知方法、事業所の報酬単価 等 ○支援制度の周知方法  障害福祉のしおり(SPコード付き、そのほか音声媒体もあり)に制度を記載しているほか、市のホームページにも掲載している。自立支援に係る会議等で代筆・代読支援の記載を含むパンフレットを配布したことはある。市の広報紙には、制度スタート時に載せた。その後は載せていない。  市役所の窓口で、手帳交付時に案内する場合、いろいろな制度を説明するので代筆・代読支援を細かく説明することはできない。資料を手渡して、気になることは後で電話等にて問い合わせて下さいと伝えている。そのほか、相談支援センターなどの相談機関・施設でお知らせすることはあると思う。視覚障害者福祉協議会にも相談活動をお願いしており、周知してもらっている。 ○報酬単価の設定  手話通訳に係る報酬単価と横並びの形にした。 ○利用登録手続き  @役所に来所した視覚障害者には職員が書類の代筆を行い、事業所とも連絡して手続きを進める。  A電話で申込があった場合は職員が申請書を代筆し、事業所とも連絡して利用者に事業所を紹介し、利用者と事業所が円滑に連絡を取り合えるよう図る。  B事業所から連絡があった場合は、既に事業所と利用者の間には関係が成立しているので、それを活かして手続きを進める。  C役所に代理人が来所した場合、代理人に書類を代筆してもらって手続きを進める。代理人には利用者との関係性が分かる書類を示してもらい、代理人の連絡先等を申請書等に記載してもらう(その記載欄が設けてある)。 (4)代筆・代読支援を実施するための人材の養成 ○代筆・代読支援者であるための条件  現在、同行援護従業者の養成研修を受講している人が代筆・代読支援を行うこととしている。 ○今後に向けての検討  代筆・代読支援者としてのスキルを向上させるための研修を考えたい。代筆・代読に特化した内容にしたいと考えている。カリキュラムをどうするかなど検討中。研修を行うとすれば市が実施する形になると思う。  今のところ、同行援護の研修を受けていることを前提に考えており、それと無関係な人(代筆・代読支援のみやりたいという人)への対応は考えていない。ただ、仮に代筆・代読支援の利用者が増えて支援者が不足するという事態が生じたときは、考えることになるかと思う。 (5)パソコンやスマートフォン等のオンライン(リモート)を活用した代筆・代読支援の実施の有無 ○リモート支援への考え方  オンラインによるリモート支援は、現在、実施していない。リモート支援だと代筆は困難。代読についても読む箇所を視覚障害者が指定する必要があり難しいのではないか。  ただ、やってほしいという意見があり、具体的に「こうすれば可能」という提案があって、実際にできそうであれば検討することになると思う。 ○リモート支援に係る手続き  行政手続きそのものというより、通信環境やリモート支援を行うための機器の装備が可能かといったことが気になる点。  手話通訳の場合、たとえば、コロナに感染した人に対してはタブレットを貸与してリモート支援を行っている。そうしたことも参考にはなると考える。 (6)代筆・代読支援を行う上での課題 ○課題と感じていること  @支援者の養成(今は少ない現状。高齢者が多い実態)  A事業所の確保(代筆・代読支援に手を挙げてくれる事業所が少ない。(現在:5事業所)  B利用者が少数(利用登録者は32人)  C利用者のニーズの把握(ニーズに応じて制度を使いやすくなるように改めたい)  D効果的な周知方法の検討(ラジオの活用等を含む)  周知について、視覚障害者本人以外に周囲の人に伝えることによって、視覚障害者に知らせてもらうという形もあるとの指摘があり、市として参考にしたいとのことだった。 (7)代筆・代読支援について、視覚障害当事者または事業所から要望がありますか。 ○周知に関する要望  視覚障害による手帳所持者全員に情報提供してもらいたいとの要望。ただ、費用面で難しい。 ○障害者手帳を所持していない人からの要望  手帳は持っていないが支援を受けたい。今のところ手帳所持者に限定。 (8)他の地域(市町村)でも意思疎通支援において代読・代筆支援を実施していくための方策 ○代筆・代読支援の必要性の認識  先ずは、自治体、事業所、利用者の各々に支援の必要性を認識してもらうことが大事。 ○新聞で取り上げてもらったことの波及効果  制度をスタートさせたとき、地元の新聞に取り上げてもらった。それを読んだ多くの市町村から問い合わせをもらった。 《同行援護事業・居宅介護事業》 (1)同行援護で外出する前後に自宅での代筆・代読支援を特例的に一定時間認めていますか ○同行援護との連携  同行援護事業では居宅内での代筆・代読は認めていないが、玄関先での支援はダメとはいっていない。事業所が同行援護事業と代筆・代読支援事業の両方を行う場合は、同じヘルパーが居宅内での支援を行えると考えている(制度上、請求手続きは別になってしまうが、実質的には連続した支援が可能)。 ○居宅介護との連携  家事援助等に時間を割り当てるため代筆・代読に時間をかけられない場合、これも同行援護と同じように連携を考えられる。 (2)代筆・代読支援について、視覚障害当事者または事業所から要望がありますか  視覚障害者の側から特に要望はない。既に述べたが、居宅介護の事業所から障害者手帳を所持していない人の代筆・代読支援の利用について問い合わせがあった。 2 B市 ヒアリング結果  意思疎通支援事業の代筆・代読支援 (1)代筆・代読支援を実施する上で大変だったことはなんですか (実施要綱の作成・事業所選定等) ○代筆・代読支援の実施要綱は、手話通訳者や要約筆記者の派遣の実施要綱を参考に作成した。なお、代筆・代読支援事業を実施すると検討した当初から、視覚障害者情報提供施設への委託を想定していた。 ○代筆・代読支援事業を実施する上で、代筆・代読の支援の範囲をどこまでにするのかを決めるのが大変だった。委託先と相談しながら支援の範囲等も決めていった。 ○1回2時間、月10時間を限度として、事業を実施している。この時間数等については、先駆的に代筆・代読支援に取り組まれていた自治体を参考にした。自治体には、電話して事業の内容を確認した。 ○代筆・代読支援者の報酬は、1時間1,500円に設定している。この単価は、手話通訳者の報酬単価を参考にした。手話通訳者へは2千円の報酬を設定している。手話通訳者になるには、約1年間かけて勉強し、難しい試験も受けることを考えると2日間の研修で修了する代筆・代読支援者が同額だと公平性にかけると思い、1,500円に設定している。報酬単価を検討する際にも、市の身体障害者福祉連合会と意見交換を重ねた。 ○代筆・代読支援の事業を開始した時に、どれだけのニーズがあるのかを把握できなかったため、利用者の対象範囲を広げると支援者の方が追いつかないと思い、対象者を絞って実施している。障害福祉サービス(同行援護・居宅介護等)を受けられない人達を対象に事業を実施してきた。 (2)代筆・代読支援者の養成研修を同時に始めた理由を教えてください ○障害福祉サービス(同行援護・居宅介護等)とはまったく別の事業として、事業を設計したので、まずは代筆・代読支援者の養成を行うこととした。支援者を一定数養成(確保)して登録してもらってから支援者を利用者宅へ派遣する制度となっているため、養成研修から始めた。養成研修は4月から、派遣は9月からスタートさせた。 ○ガイドヘルパー及びホームヘルパーとは別に支援者と考えた場合、担える人材がいなかったため、養成研修を行うこととした。 ○視覚障害者への代筆・代読支援のため、その専門性に特化した方法を学ぶことの必要性・重要性は理解していた。 ○2日間の代筆・代読支援の研修を受講すると市長名の修了証がもらえる。その修了証も受講者のモチベーションにつながっているように思う。 (3)代筆・代読支援の利用者を増やすための取り組みと今後の方針を教えてください(利用対象者の拡大等) ○障害福祉サービス(同行援護・居宅介護)を受けていない人を対象として事業を実施しているが、障害福祉サービスを受けている人からも意思疎通支援の代筆・代読支援を受けたいという要望が多く、今後対象者を広げて行きたいと考えている。 ○昨年度末の利用者登録が16人、支援実績が32回(43時間)であった。なお、代筆・代読支援員の登録は48人。市のホームページや市の広報紙には情報を掲載しているものの、利用者が少ない。今後の周知方法についても検討する。 (4)視覚障害者への代筆・代読支援を行っている上での課題はありますか(利用者、支援者(事業所)の課題及び国に求めることを含む) ○代筆・代読支援の利用実績が増えないことが課題。また、今後対象者を広げていくことは検討しているものの、対象範囲を広げるかについては難しい。パソコンやスマートフォンの画面の代読やインターネットショッピングの手続き等のニーズがあるがそれに応えるのは難しいように思う。 ○地域生活支援事業として、国からも補助金をもらって事業を実施できているので、特に国への要望はない。 (5)代筆・代読支援を実施する自治体が少ない原因及び他の地域でも広げていくための手がかりを教えてください ○何よりも地域の視覚障害者が代筆・代読支援を必要としているというニーズを自治体に伝える必要がある。自治体で視覚障害者のニーズを把握していないと意思疎通支援事業の代筆・代読支援の予算請求ができない。障害者団体との意見交換の場等で、ニーズを伝えて行く必要があると思う。市に、長年視覚障害者の情報提供に努めてきた情報提供施設があったことが、事業を実施できた大きな要因だと思う。 (6)視覚障害当事者または事業所から要望を受けることがありますか。ある場合はその内容を教えてください ○対象者の範囲を障害福祉サービスの利用者へも広げることや、パソコンやスマートフォンを使用したオンラインの代筆・代読支援の要望がある。 3 C区 ヒアリング結果 (1)「視覚障害者の情報・コミュニケーション支援事業」として代筆・代読支援を実施した経緯(きっかけ)・大変だったこと ○平成22年4月1日からこの事業を開始している。区の施策として、社協が委託を受けて実施してきている。事業を開始する時に携わった職員がいないため、具体的なことはわからない。ただ、当時、区で視覚障害者への情報保障と考えた時に、ボランティアがいる社協に委託することになったようだ。A4半分ほどの実施要綱しかないが、事業の目的として、「視覚障害者の自立及び社会生活の参加を促進するため、ボランティアによる情報収集及び代読・代筆サービス等を行う」と記載されている。 ○社協にボランティアはいるが、視覚障害のある方々への代筆・代読のノウハウが当時あったわけではなく、事業を開始しながら、視覚障害者への代筆・代読を学んできた。 (2)代筆・代読支援を利用できる範囲及び利用できない範囲 ○社協で利用の手引で規定している。 @利用できること  ・区の広報紙等の代読  ・郵便物の仕分け  ・手紙や年賀状等の代筆・代読  ・旅行のパンフレットの収集及び代読  ・日常生活の支援(チラシ・広告、回覧板、生協の注文書) A利用できないこと  ・小説や本の代読  ・銀行の口座の開設手続き等  ・買い物への同行 ○対象者  区内在住の視覚障害者(身体障害者手帳をお持ちの方)  等級は1〜6級のすべての人を対象としている ○利用時間  1回あたり2時間、月10時間を限度  平成27年度に、要綱を改定している。利用時間を月8時間から10時間とした。 ○場所  要綱で自宅等となっている。自宅以外の場所としては、視覚障害者の団体の事務所で代筆・代読支援を受けることもできる。なお、働いている人の職場で支援を求められたことはない。職場では、同僚の人等が代筆・代読をしてくれているように思う。 ○利用者  20代、30代、40代、50代、60〜80代とまんべんなく利用者登録している。しかし、実際に利用されているのは60〜70代の方が多い。広報紙の代読、郵便物・書類の整理を求められる人が多い。 (3)代筆・代読支援を実施する上での工夫  他の地域と比較して代筆・代読支援を利用する方が多いため、事業の周知方法及び支援を行う上で工夫していること 等 ○区の広報紙、障害者の手引、ボランティアセンターだよりに事業の内容を掲載している。 ○以前、同行援護事業も社協で行っていた。その時の利用者の口コミ等で事業を知っていただいている人が多いように思う。 ○視覚障害者から利用の申込を社協に電話してもらう。その後、社協の職員がご自宅へ訪問し、事業の説明、代筆・代読を希望される内容等を聞き取り、申込書の代筆を行う。利用の決定がおりてからボランティアを紹介する。2回目以降については、利用者とボランティアが直接、日程調整等を行う。社協としては、月末に、ボランティアから実施報告をもらう。 ○情報収集も一つの事業の目的としているため、利用者から調べ物を頼まれることもある。その際には、ボランティアのスマートフォン等で調べ物をして、情報提供しているようだ。利用者のパソコンの操作をボランティアが手伝うことは今まで聞いたことがない。 ○他の地域の社協で同じような視覚障害者への代筆・代読支援の事業を行っているということは聞いたことがない。ただ、事業ではなく、相談支援活動の中で、当たり前のように代筆・代読しているのではと推測する。 ○代筆・代読支援の利用者数が他地域と比較しても、多いとのことだが、実際にはもっと必要としている視覚障害者はいるのだと思う。社協としてもそのあたりのニーズが把握できていない。 (4)ボランティア講習会(養成)の内容  カリキュラム及び対象者について ○養成研修とボランティアのスキルアップ(フォローアップ)研修の2つの研修を行っている。 @養成研修 ○3つの事項を中心に講師の先生に講義してもらっている。「視覚障害について」、「視覚障害者とのコミュニケーションの取り方」、「代筆・代読支援を行う上での留意事項」。 ○講師は、この事業の利用者や区の視覚障害者団体の代表や会員にお願いしている。視覚障害のある方からお話をしてもらっている。半日のコースで演習(実技)は設けていない。 ○テキスト等も特に作成してはいない。講師の方にお任せするような形で実施している。 ○養成研修を受けるのは毎回10人程度。受講していただいたすべての人がボランティア登録をしてくれるわけではない。 ○新型コロナウィルス感染防止のため、ここ3年間は養成研修を実施できていない。今年度末に行う予定で進めている。 Aスキルアップ(フォローアップ)研修 ○区の障害福祉課の職員、点字図書館の職員等の方々に講師をお願いしている。 ○開催時期については明確に決まっていない。春か冬で年に1回開催している。 Bボランティアの登録数 ○令和3年度末に、18人のご参加をいただいている。その18人で人数が少なくて困るというようなことは今のところない。 ○スキルアップ(フォローアップ)研修の他にボランティアの交流会を開催し、情報交換の場を設けている。 ○ボランティアとして活動してくれている人の多くは60代〜70代の方が多い。長年にわたり活動してくれている方も多い。 (5)ボランティア(支援者)の報酬(交通費)等の有無 ○ボランティアへの報酬と交通費の両方ともお支払いしていない。今のところ、利用者の自宅へ公共交通機関を使用しないで(自転車でいける)訪問できるボランティアに支援をしてもらっており、交通費はかかっていない。 ○ご自宅の近くにボランティアがいない利用者が1人いる。その方への支援は、社協の職員が訪問して代筆・代読支援を行っている。 ○ボランティアの皆さんは、報酬はいらないと言ってくれている。 (6)事業実施における自治体の補助の有無 ○区から補助金をもらっている。補助金額は事業を開始した平成22年から変わっていない。「ボランティアの養成研修の費用」、「活動に当たる消耗品費用」、「ボランティア保険」等に主に使用している。 (7)代筆・代読支援を実施している上での課題 ○あまりこの事業を知られていないように思う。もっと多くの人に知ってもらうこと及び視覚障害者のニーズを把握することが必要だと思う。 ○意思疎通支援事業の代筆・代読支援として実施することも今後事業の安定化に必要なのかも知れない。ただ、民間(事業所)でその支援を担う場合には社協が行うかは今のところなんとも言えない。 4 D区 ヒアリング結果 (1)意思疎通支援事業の代筆・代読支援を実施することとなった経緯・きっかけ・大変だったことはなんですか ○視覚障害当事者団体からの要望があったこと。令和2年4月に「障害者の多様な意思疎通の促進に関する条例」が施行されたことが、意思疎通支援事業の代筆・代読支援を始めるきっかけになったと思う。 ○代筆・代読支援の制度設計で利用時間等の上限や委託料(報酬)の金額を定めるのに苦労したと前任から聞いている。予算については割と厳しく制限されて事業が開始した。報酬単価が高くないため、事業所の確保が難しかったようだ。 ○区としては1〜2つの事業所に委託するのではなく、各地域の複数の事業所に委託したいと考えている。しかし、報酬の単価が低いため、事業所の利益を考えるとなかなか実施していただける事業所が見つからない。 ○令和5年度に報酬も若干ではあるが、上げることができる。報酬が少ないがために代筆・代読支援が広がっていかないということであれば、もう少し、報酬を上げることを検討しなくてはいけないかと思う。 ○現在約30人の利用登録があるが、想定していたよりも多い。利用登録していただいている方々の多くは身体障害者手帳を所持している。しかし、地域包括支援センターにも周知をお願いしている関係で高齢者(見えにくくなってきた)の登録も若干ある。高齢者のニーズもあると感じた。 (2)対象者は障害者手帳の取得の有無は問わないとした理由を教えてください ○手話通訳と要約筆記の支援者派遣についても数年前に、身体障害者手帳を所持しているという条件を撤廃している。そのこともあり、代筆・代読支援においても身体障害者手帳の所持を条件としないこととした。 ○身体障害者手帳を取得できない人達で、意思疎通に困っている人達も多い。その方々にも支援を利用していただければと思っている。 (3)代筆・代読支援の実施に関してどのような工夫をされていますか。  制度の周知方法、事業所の報酬単価 等 ○地域包括支援センターの担当者会議でも代筆・代読支援を広報していることもあり、ケースワーカーからつながって申請していただける方も数名いる。また、視覚障害当事者団体が周知・広報していただいているので利用者が増えている。 ○区の視覚障害者協会からの上限時間を増やしてほしいという要望を受けたこと。また、月に2時間という上限を使いきる方々が一定数いる。そのような要望や実績を踏まえて、令和5年度から時間を増やすこととした。 (現)1回あたりの上限時間  1時間 → (変更) 2時間 (現)1ヶ月あたりの上限・回数 2回  → (変更) 8時間 (4)代筆・代読支援を実施するための人材の養成をどのようにお考えですか ○令和5年度から代筆・代読支援者の養成研修を行う予定である。視覚障害者当事者団体へ委託する予定で相談している。今のところ、年に1回、6時間のカリキュラムで実施を検討している。前半の3時間を視覚障害についての理解(講座)、後半3時間は代筆・代読の技術(演習)を予定している。講師等の選定についても視覚障害者福祉協会にお願いする予定。 ○視覚障害当事者団体の音訳ボランティアさんからも受講したいという声があるときく。また、ホームヘルパーも代筆・代読に関する研修を受けないので、ホームヘルパーにも受講してもらえたらと思う。また、区の職員も代筆・代読の理解及び啓発のため、研修を受けられたらと思う。 (5)今後パソコンやスマートフォン等のオンライン(リモート)を活用した代筆・代読支援の実施の可能性はありますか。 ○オンラインで代筆・代読支援という発想がなかったため、障害福祉課内で検討したことがなかった。先日、視覚障害当事者団体の会長からオンラインでの代読のニーズもあると聞いた。また、区内にある民間の会社で、オンラインで代読サービスを実施しているところがあると紹介されたので、意見交換や情報収集から始めたい。 ○オンラインで代読支援を行うことは、可能かも知れないが、その支援のために利用者または事業所にパソコンやスマートフォンを寄与するということについては無理だと思う。 ○区でも実績報告書の押印を無くす方向で動いており、オンライン支援を行った際に、電子的な記録を残す方法があればいいと思う。また、手話通訳を遠隔で行っているので、参考にできると思う。 (6)代筆・代読支援を行う上での課題及び視覚障害当事者または事業所から要望がありますか。 ○代筆・代読支援の事業所を増やすこと。そして、そのための報酬をあげることが喫緊の課題だと思う。 ○利用上限時間に対する要望があったため、前述のように利用時間を拡充した。 ○代筆・代読支援の周知方法が課題である。同行援護利用者や身体障害者手帳の1級・2級の方々に一斉に案内を郵送しようとしたが、点字が必要か、拡大文字でいいのか等もわからず出せていない。4月以降は利用時間等も変わるので、案内を出したいと思う。 (7)他の地域(市町村)でも意思疎通支援において代読・代筆支援を実施していくための方策 ○自治体が進んで考えて実施することは難しいと思う。視覚障害者または当事者団体から要望がないと自治体は動けない。また、制度設計の段階から当事者団体との意見交換をしていくことが重要だ。 ○東京23区や近隣の市から、代筆・代読支援の実施方法等について問い合わせが数件ある。そのように少しずつではあるが、実施を検討している自治体があるように思う。 5 ヒアリングの結果の整理(補足)  ヒアリングの結果及びアンケートに回答していただいた自治体に電話で簡易的な聞き取りを行った。  意思疎通支援事業の代筆・代読支援の実施を検討する自治体の参考になるようその概要を示す。 <概要>  @委託先、A実施内容、B報酬単価、C利用対象、D利用範囲 なお、報酬単価については確認できない自治体もあった 1.全体 (1)ニーズの把握  代筆・代読支援を実施するにあたり、多くの自治体で視覚障害者のニーズを確認している。その確認方法は、視覚障害者団体や情報提供施設(点字図書館)との意見交換を重ねてニーズを把握した自治体が多くあった。また、地域の障害者の代表、障害当事者、福祉、保健、教育、就労などの障害福祉関係者及び事業者等で構成される協議会において意見交換をしたところもあった。地域に住んでいる身体障害者手帳を所持している視覚障害者へアンケート調査を行ったところは確認できなかった。 (2)実施要綱の作成  意思疎通支援事業の支援者派遣を定めている実施要綱では、手話通訳者、要約筆記者等、代筆・代読支援者等の派遣に関する内容を一緒に掲載している自治体、各支援者派遣に関する実施要綱を別々に作成している自治体があった。なお、別々に定めている自治体では代筆・代読支援者の派遣に関する実施要綱を制作するにあたり、すでに実施している「手話通訳者派遣事業」を参考にされている。 (3)意思疎通支援条例  自治体において意思疎通支援に関する条例が制定されたことが、代筆・代読支援を実施したきっかけだった自治体があった。 (4)対象者  地域の実情及び利用者のニーズに合わせて柔軟な支援が行われている。 ○身体障害者手帳(視覚障害)を持っている方を対象にするケース。 ○視覚障害により筆記や文字などを読むことに不便を感じている方(障害者手帳の所持は問わない)を対象とするケース。 ○居宅介護(家事援助のみ)または同行援護の支給決定を受けていない方を対象とするケース。 (5)支援者 ○ガイドヘルパー・ホームヘルパー。 ○代筆・代読支援従事者養成研修の修了者。 ○社会福祉協議会。  等の地域の人材を活かして行われている。 (6)報酬  1,000円〜2,000円の間で行われている。  手話通訳者派遣と比較して報酬単価を算定している自治体があった。手話通訳者派遣の報酬と同額にしている自治体や、手話通訳派遣の報酬の3/4の基準としている自治体があった。 (7)各自治体の実施例 A市 @委託先  視覚障害者情報提供施設(点字図書館) A実施内容  支援者養成研修、支援者派遣 B 報酬単価  1時間 1,500円(別途交通費実費支給)  手話通訳者派遣の3/4 C利用対象(抜粋) ・身体障害者手帳の交付の有無にかかわらず視覚に障害を持ち、自ら筆記や文字等を読むことが困難な者 ・居宅介護(家事援助に限る)又は同行援護の支給決定が行われていない 者 D利用範囲 ○市・区役所・学校等公的機関の手続きに関連する事柄 ○受診又は相談等医療に関する事柄 ○その他地域生活を営むうえで必要不可欠な事柄 等 B区 @委託先  同行援護事業所、居宅介護事業所 A実施内容  支援者派遣 B報酬  1時間 2,000円 C利用対象 ・区内に在住で視力による理由から、文字等の読み書きをすることが困難である者(障害者手帳の取得の有無は問わない) D利用範囲 ・対象者が生活するにあたり必要となる申込書等の代筆 ・郵便物、新聞及び雑誌、取扱い説明書等の代読 等 C市 @委託先  同行援護事業所、居宅介護事業所 A実施内容  支援者派遣 B報酬  1時間 3,600円(別途交通費として500円支給)  手話通訳士派遣と同額 C利用対象 ・市内に居住する視覚障がいにより身体障害者手帳の交付を受けた字の読み書きが困難な者 ※年齢・身体障害者手帳の等級による利用制限はない D利用範囲 ・公的機関またはそれに準ずる機関からの郵送物等、金融機関、医療、福祉施設への申請等、公的行事や地域における各種行事への申込、社会の出来事や生活情報を知るための新聞等、日常の買い物に関する折り込みチラシ等、電化製品等の取扱説明書 等 D市 @委託先  同行援護事業所 A実施内容  支援者派遣 B報酬単価  0.5時間 1,000円 C利用対象  市在住の視覚障害その他の障害のため文字の読み書きが著しく困難な方 ※現在:利用者の全員が同行援護事業所の利用者登録をしている D利用範囲 ・公的機関等からの郵便物や資料等の代読 ・生活上必要不可欠な説明書等の代読 ・公的機関又はそれに準ずる機関への申請等に対する代筆 等 E市 @委託先  同行援護事業所、居宅介護事業所 A実施内容  支援者派遣 B報酬単価  0.5時間=814円  1時間=1,527円 ※根拠  所要時間30分未満 80単位  所要時間30分以上1時間未満 150単位  単位数に10.18円を乗じて得た額 C利用対象  視覚障害その他の障害のために字の読み書きが困難な者 D利用範囲 ・公的機関又はそれに準ずる機関からの郵便物、資料等の代読 ・生活上必要不可欠な説明書等の代読 ・公的機関又はそれに準ずる機関への申請等に係る代筆 ・その他、対象者が情報を確保するために必要な資料の整理、確認 等 ※利用者(対象者)の居宅又は入院先の医療機関において行う F市 @委託先  同行援護事業所、居宅介護事業所 A実施内容  支援者派遣 B報酬単価  0.5時間=1,050円  1時間=1,960円 C利用対象  単身またはこれに準ずる身体障害者手帳1級を所持する在宅の視覚障害  者 ※他の制度で同様のサービスを受けることができるときには利用できない。 D利用範囲  特に制限していない G市 @委託先  社会福祉協議会 A実施内容  支援者派遣・養成研修(社協) ※2年に1度の研修  聴覚・視覚の研修を交互に開催 B報酬単価  1回 1,800円 ※時間に関係なく、1回あたりの報酬 C利用対象 視覚障害者で身体障害者手帳の交付を受けた者、又は身体障害者手帳の交付対象者に準ずる視覚障害を有する者 D利用範囲 郵便物、カタログ、パンフレット等の日常生活において必要とする情報を得るための文章の読み書き 等 H市 @委託先  指定障害福祉サービス事業者  (居宅介護事業に係る指定を受けているものに限る) A実施内容  支援者派遣 B報酬単価 ○代筆・代読支援事業を単独  0.5時間未満=1,050円  0.75時間未満=1,520円  1.0時間未満=1,960円 ○居宅介護等の前後で代筆・代読  0.5時間未満=525円  0.75時間未満=760円  1.0時間未満=980円 C利用対象 視覚障害者、知的障害者又はその他の障害のために字の読み書きをすることが困難な者 D利用範囲  郵便物、官公署・金融機関・病院・福祉施設への申請、公的行事や地域における各種行事の申込、電化製品等の取扱説明書、日常の買い物に関する新聞広告 等 I市 @委託先  市通訳者等登録台帳に登録するものとする。 ○県手話通訳・要約筆記認定者又は協力員登録者 ○視覚障がい者等関係団体の推薦を得た通訳者等 ○介護福祉士の資格を持つ者 ○介護職員基礎研修修了者 ○居宅介護従事者養成研修修了者 ○視覚障害者移動介護従事者養成研修修了者 ○市が実施する代読代筆養成研修修了者 A実施内容  支援者派遣・支援者養成研修 B報酬  1時間=2,000円  30分未満の端数を生じる場合 1,000円 ○移動手当 1時間あたり 1,000円 ○交通費  自ら運転する自動車を利用する場合、公共交通機関を利用する場合 ⇒ 合理的に算出 C利用対象  視覚障害者、聴覚障害者等で社会生活を営む上で著しく支障があり、通訳者の派遣が必要であると市長が認めた者 D利用範囲  健康管理、公的行事の申込、職業相談、学校教育・社会教育 等 代筆・代読支援従事者養成研修を実施している団体 【対象】  代筆・代読支援従事者養成研修を行っている団体 【実施方法】  対面及びオンライン 【調査内容】 〇研修を始めた経緯、実績、効果 〇他の地域においても広げていくための方策 〇視覚障害者へ代筆・代読支援が効果的に行われるための方策 実施日 A団体 11月17日 B団体 11月30日  C団体 12月1日 1 A団体 ヒアリング結果 (1)代読・代筆支援者(従事者)養成研修を始めた経緯  目的、対象、カリキュラム内容(制定の留意点を含む) 等 ○ホームヘルパーからは、居宅で代筆・代読がうまくできないという声。  利用者からは、ホームヘルパーに代筆・代読を依頼しても、「個人情報なのでできません」というように断られてしまうことがあるとの声を聞いた。  そのようなことを受け、代筆・代読支援の理解と支援者の養成をした方がいいと思い、養成研修を始めた。 ○同行援護従業者養成研修で、代筆・代読に関する講座を行っている。さらなる代筆・代読支援に関する知識やスキルを得るための研修が必要だと思い実施した。 ○養成研修テキストは、「同行援護従業者養成研修テキスト」を参考に作成した。 ○講師は2人、視覚障害者と晴眼者のペアになることが望ましい。なお、座学を視覚障害者が担当し、演習(実技)を晴眼者が行うことが望ましい。どのようにして読むか、書くのかについては原本の墨字の書類と代筆・代読の結果を比較して適切かどうか確認する必要がある。そのため、晴眼者にも講師として加わってもらうことが望ましい。 ○養成研修の受講生の募集については、点字図書館、県内の同行援護・居宅介護の事業所にお知らせしている。また、社会福祉協議会や県内の各市の広報に掲載してもらっている。 ○座学は主に下記の内容について研修している。 ・視覚障害者に対する福祉サービス ・視覚障害の概念、定義、視機能 ・視覚障害者が居宅内でどのような生活を送っているか ・視覚障害になる病気・疾患 ・弱視(ロービジョン)の特性  ・先天性・中途失明の心理 ・居宅内で行う業務、特に代筆・代読の制度とその利用 ・従事者の倫理(気をつけること)、個人情報の取り扱い等 ・パソコンの利用における支援 ・代筆・代読支援の従事者として知っておくべきこと ・代筆・代読支援に従事する時に持参するもの(ボールペン・定規) なお、パソコンの利用における支援とは、視覚障害者がパソコンを操作している様子を横で確認し、操作方法をアドバイスすることを中心に講義している。 (2)代読・代筆支援者(従事者)養成研修の実績  何人くらい受講、どういう人が受講されているのか ○4年前から養成研修を開始している。年1回〜2回開催し、現時点で 6回の養成研修を行い、約80人が修了している。なお、受講者が多いと細かいところが確認できないため、各回の受講人数は10人〜16人までとしている。 ○受講者が少ない時は8人という時もあったが、応募がないということもなく、実施できている。また、依頼があれば講師として出向いて研修を行うことがある。その際は依頼先の要望に応じて講義時間を決めている。市の音訳ボランティアの会や、自治体職員を対象に実施した。自治体の窓口で視覚障害者が代筆・代読を依頼したとき、円滑に支援できるようにするため自治体職員には是非研修を受けてもらいたい。 ○ホームヘルパー、ガイドヘルパー、同行援護事業所・居宅介護事業所のサービス提供責任者、点訳・音訳のボランティアを主な受講対象としている。研修を始めた当初は、ホームヘルパーやガイドヘルパーの申込が多かったが、最近ではボランティアの申込も多い。また、点訳や音訳に携わっていない社会福祉協議会のボランティアの申込も一定数ある。晴眼者で見えていれば代読・代筆ができると思っていたようだが、実際は違うということに気がつき、文章の読み書きについて学びたいと思って応募されてくる方が多い。 (3)代読・代筆支援者(従事者)養成研修の効果  支援者の質の確保の観点で重視する事柄  受講生の反応、感想含む ○ホームヘルパー等が代筆・代読支援をする際に、養成研修を受講したことを利用者に伝えると、利用者の安心につながり印象がいいと聞く。 ○ホームヘルパー等が養成研修を受けると代読のスキルが向上すると利用者から聞くことがある。例えば、行政からの手紙を代読する際には、養成研修を受ける前は、日付からすべて読み上げていたが、受講後は必要と思われる要点を絞って読み上げてくれるようになった。また、いきなり封書の中身を読むのではなく、どこから来たものかを最初に読み上げるようにすることによって、限られた時間の中で読む必要のあるものをより多く把握できるようになった。 (4)他の地域においても養成研修を広げていくための方策 ○全国で養成研修を広げていくためには、講師として活動していく人の養成研修(資質向上研修)を実施し、講師を増やすとともに、その質を担保しなくてはいけない。なお、講師は福祉制度に精通するとともに、代筆・代読に関する事例を多く持っていることが求められる。 ○市区町村の地域生活支援事業において、「手話奉仕員養成研修」は必須事業となっているものの、点訳と音訳、代筆・代読の「奉仕員養成研修」は任意事業である。手話奉仕員と同じように必須事業にすれば代筆・代読支援従事者の養成研修を実施する自治体も増えるのではないか。 (5)視覚障害者への代筆・代読支援の課題  自治体、国に求めることを含む ○代筆・代読支援に係る報酬単価を一定水準以上にして仕事としての収入になるようにしないと、支援者が増えず、事業の広まり・継続につながらないように思う。少なくとも、1時間あたり1,500円〜1,700円は必要だと思う。 ○代筆・代読支援の制度があることを自治体が利用者に伝えていないため、制度を知らない視覚障害者も多い。視覚障害者への情報提供の方法を検討し、伝わるようにしていただきたい。 ○居宅介護の対象外になってしまい、代筆・代読支援を受けられない人も多い。地域生活支援事業の意思疎通支援事業としての代筆・代読支援を各地域で実施していく必要があると思う。 ○オンラインで代読支援をすることは、移動のコストを抑制できるなどのメリットはあるが、書類が支援者の手元にない場合、視覚障害者が読んでもらう必要のある箇所を探し当てるのが難しいなどスキルの面でもハードルが高い。また、手続き面では、代読支援を実施した後にサービス提供の実績記録票を記載する必要があるので難しいと思う。 ○代筆・代読をどのように頼んでいいのかを理解していない視覚障害者も多いように思う。代筆・代読支援を効果的に受けるには、支援者への依頼方法についても周知して行く必要がある。 ○弱視(ロービジョン)者は拡大読書器等を使用して読み書きしている。  しかし、拡大読書器を使用しても、読み書きが難しい弱視(ロービジョン)者の代筆・代読支援を考えていく必要もある。 (6)視覚障害者へ代筆・代読支援が効果的に行われるための方策 ○居宅介護(家事援助)では、掃除、洗濯、食事作り・後片づけを優先せざるを得ないため、代筆・代読(郵便物等の確認)に時間を割くことが難しいと利用者から聞く。家事援助とは別項目で代筆・代読支援の支給を決定していただきたい。 ○地域生活支援事業の意思疎通支援事業で代筆・代読支援を実施する自治体が増えない要因として、居宅介護で代筆・代読支援を受けることができるので、改めて意思疎通支援での実施は必要ないと考えている自治体が多いように思う。居宅介護の対象外となる人達も代筆・代読支援を受けられるようにするため、また、必要としている時に必要とする代筆・代読支援を受けられるようにするために、意思疎通支援事業においても実施が求められていることを自治体に訴えていかなくてはいけない。 2 B団体 ヒアリング結果 (1)代読・代筆支援者(従事者)養成研修を始めた経緯  目的、対象、カリキュラム内容(制定の留意点を含む) 等 ○地域生活支援事業の意思疎通支援事業として代筆・代読支援ができないものかということが全国的に話題となっており、実施したいと思ったのがきっかけである。 ○代筆・代読の支援として、居宅介護、同行援護があるなかでその狭間を埋めるものとして意思疎通支援事業の代筆・代読支援サービスを実施したいと思っている。従事者養成と、派遣事業の開始をセットでできないだろうかと自治体に働きかけた。その結果、養成研修は実施することができたが、意思疎通支援事業の代筆・代読支援を始めるところまでは至っていない。代筆・代読支援を実施するには、視覚障害者のニーズがどれだけあるかという点と、従事者の確保はどうすればできるのだろうかという2つの課題があるように思う。 ○代筆・代読の養成研修は、代筆・代読の支援者の確保という点だけでなく、ホームヘルパー・ガイドヘルパーの代筆・代読に関する資質向上(スキルアップ)研修を目的にすることで自治体の理解を得ることができた。 ○視覚障害者が「いつでも、どこでも、だれでも」代筆・代読支援が受けられる環境(体制)が大事だと思う。その意味でもホームヘルパー、ガイドヘルパー以外の方々にも範囲を広げている。 ○自治体の障害福祉課が積極的に代筆・代読従事者の養成研修のPRをしてくれている。例えば、広報紙への掲載、同行援護事業所、居宅介護事業所、各市町村へメールで情報提供している。こちらも同行援護従業者養成研修を修了された方々や高齢者施設(盲養護老人ホーム)等への案内を出している。 ○県の事業として行う代筆・代読従事者の養成研修では補助金を受けて無料で実施している。市の場合は、一定の補助をいただき残りは協会が負担している。 ○代筆・代読支援者の養成研修については他県の視覚障害者福祉協会が実施しているテキストを参考に行っている。演習については、職員2人が入る。視覚障害のある講師の補佐役の職員も1人入り、4人で行っている。 ○代筆・代読の演習の部分は、職員が見本を示して、受講者2人1組で行い、その後振り返る。演習に多くの時間をさきたいので、2日間での開催とした。 ○主な講座の内容 ・1日目  「視覚障害の理解と情報コミュニケーションの配慮」 2時間  「視覚障害児・者の心理と、障害福祉サービスについて」 2時間  「代筆・代読従事者の業務」 2時間 ・2日目  代筆の実際(演習) 3時間  代読の実際(演習) 3時間  なお、演習は回数を重ねて少しずつ変えている。  視覚障害者へ適切な代筆・代読支援をすることの難しさを実際に体験していただくことを目的としている。 (2)代読・代筆支援者(従事者)養成研修の実績  何人くらい受講、どういう人が受講されているのか ○代筆・代読養成  市:平成30年度〜 5回(のべ 61人)  県:令和2年度〜 3回(のべ 39人)  8回講座を開催。あわせて100人が修了。 ○100人の内訳は下記  ホームヘルパー(39人)、ガイドヘルパー(19人)、団体・施設職員(9人)、相談支援専門員(6人)、盲養護老人ホーム等の高齢者施設職員(4人)、その他(23人) <その他の方々> 主婦、ボランティア、看護師、会社員、自治体職員、民生員、教員、保育士、社会福祉協議会の職員等 ・ホームヘルパーやガイドヘルパーが多いのは、スキルアップということも関係しているように思う。 ・同行援護・居宅介護事業所に勤務していない人(その他)も多く受けてくれていることは、今後意思疎通支援事業で代筆・代読支援が始まった時の担い手になってくれるのではないかと期待している。 (3)代読・代筆支援者(従事者)養成研修の効果  支援者の質の確保の観点で重視する事柄 (受講生の反応、感想含む) ○視覚障害者(利用者)から直接感想をいただいたことはない。この研修に職員も受講させているが、受講した職員の代筆・代読のスキルは格段に上がっている。研修を受ける前は、どのように代筆・代読していいのかがわからず、皆自己流で行っていたが、今は適切に代筆・代読をしてくれている。  (代読:要点を整理して読み上げ、代筆:書いたことの報告 等) ○受講者からは、実際に代筆・代読の演習を体験するとその難しさがわかったというような声がある。 ○2日間で研修を行うがそれだけでマスターするには難しいように思う。  研修が終わった後でも、テキストを読み返すようにお願いをしている。 (4)他の地域においても養成研修を広げていくための方策 ○地域生活支援事業において代筆・代読支援者の養成が必須科目になることも必要だとは思うが、必須、任意にかかわらず、自治体が必要性・重要性を理解してくれれば、予算化してくれる。自治体への働きかけ、連携が重要ではないだろうか。 ○代筆・代読支援者の養成研修を実施している団体等のネットワークがあるといいと思う。養成研修の内容や課題等を共有し、お互いの研修にブラッシュアップできるような体制があるといい。また、新たに研修を実施したいという団体からのお問い合わせもこのネットワークで受けることができれば広がっていくのではないか。新たに実施したいというところがカリキュラムのことを聞いてきたら情報提供したい。各地域がそれぞれテキストやカリキュラムを作成することは大変であるし、各地域でまったく違う内容の研修が行われることは望ましくない。 ○代筆・代読支援者の養成研修は、その都度外部から講師を招くというよりも、地域で講師を担う方がよい。そのための講師の養成も必要だと思う。 ○県の共生社会づくり条例でも代筆・代読が明記されている。そのことを踏まえ、今後、県内の各地域でも養成研修が実施されること。また、意思疎通支援事業の代筆・代読支援が実施されることを期待している。 (5)視覚障害者への代筆・代読支援の課題  (自治体、国に求めることを含む) ○「地域における読書バリアフリー体制強化事業」、「障害者ICTサポート総合推進事業」等の事業のように一定の補助を国がしてほしい。そうすれば代筆・代読支援を実施する自治体も増えるように思う。 ○同行援護事業所、居宅介護事業所等も代筆・代読養成研修を受講した従事者を一定数配置している場合には加算をつける仕組みがあれば、代筆・代読支援者養成研修が各地域で行われ、受講する人が増えるのではないか。 ○聴覚障害者協会が派遣センターを担い、手話通訳の派遣を行っている。代筆・代読の支援者の派遣については、そのような形ではなく、同行援護のように地域でより多くの事業所に実施してもらうことがいいのだと思う。そのための体制づくりも必要だと思う。 ○意思疎通支援事業で代筆・代読支援を実施しない自治体の多くは予算がないからではないか。国の方で、意思疎通支援で代筆・代読を始めれば、実績に応じて補助するなど、予算措置を講じてほしい。 ○協会に来られた視覚障害者が代筆・代読を希望すれば、職員が無料で代筆・代読をしている。現実はそういうことをしている当事者団体がいっぱいあると思う。希望される方々に実施するのであれば、協会として無報酬では限界がある。 ○同行援護事業を利用している視覚障害者が多く、意思疎通支援事業の代筆・代読との組み合わせがいいのではないか。外出時の代筆・代読については同行援護事業で行い、買い物で帰ってきた時などに意思疎通支援事業の代筆・代読支援が利用できることが望ましい。  居宅介護でも代筆・代読は認められているが、代筆・代読支援に当てられる時間がない。 ○自治体が地域生活支援事業の意思疎通支援事業で代筆・代読支援を始めない理由として、国が求める代筆・代読支援と異なってしまうことを懸念し、慎重になっているのではないか。代筆・代読支援はこういうことだという見本(例)を示してほしい。 (6)視覚障害者へ代筆・代読支援が効果的に行われるための方策 ○ZoomとSkypeを使用してオンラインで代読することを試みた。今後オンラインでの実施ということも必要だと思う。また、オンラインでの活用の場合は、代筆については課題があるように思う。 ○地域生活支援事業の意思疎通支援で代筆・代読支援を実施することは柔軟性があると思う。また、居宅介護と同行援護を組み合わせることも効果的な方策だと思う。 3 C団体 ヒアリング結果 (1)代読・代筆支援者(従事者)養成研修を始めた経緯  目的、対象、カリキュラム内容(制定の留意点を含む) 等 ○市で意思疎通支援事業の代筆・代読支援とその支援者の養成を始める予定と聞いて、法人内で議論し、実施するに至った。 ○市が発行している広報紙で養成研修の募集をしている。その募集を見て応募された方々が養成研修を受講している。18歳以上であれば年齢制限は設けていない。また、性別についても募集の段階では問わない。ただ、視覚障害者のご自宅に伺って代筆・代読を行うので、移動に問題が無い方及び読み書きに問題がないことは条件としている。 ○養成研修の応募は市の広報紙でしか行っていないが、それでも募集人数より多く応募がある。ガイドヘルパー・ホームヘルパーの資格を有していても研修において免除科目はない。全員一緒のカリキュラムを受講している。 ○代筆・代読支援者の養成研修は2日間で行っている。1日目は主に座学(演習も若干あり)、2日目は演習を行っている。演習においては、「封筒の宛名書き」、「アンケート調査の代筆・代読」、「郵便物の仕分け」、「イベント情報の代読」を2人1組になりロールプレイングで学んでいる。1日5時間で2日間の合計10時間の研修を行っている。 ○講師は、視覚障害当事者と歩行訓練士2人で行っている。 (2)代読・代筆支援者(従事者)養成研修の実績  何人くらい受講、どういう人が受講されているのか ○代筆・代読支援者の養成研修を実施した初年度(令和2)は2回、昨年度(令和3)は1回行い、54人が受講した。そのうち47人が代筆・代読支援者として登録されている。なお、今年度は来週行う予定だが、20人の定員のところ41人の応募があった。 ○代筆・代読支援者の養成研修を受講される方の9割くらいは女性である。年齢としては、60代〜70代が中心となっている。30代の若い方からも応募はあるが、その数は少ない。ガイドヘルパーの資格を持っている人が3分の1いるが、定年後の社会貢献がしたいとか、子育てが一段落したというような方が多い。また家族・親戚に視覚障害者がいるためという方もいる。 ○代筆・代読支援者の派遣の実績は初年度(令和2)、10月〜3月の間に27回の派遣。昨年度(令和3)は32回、今年度は11月の段階で65回派遣している。  コロナの影響で利用することを控えている人やまだまだ代筆・代読支援の制度を知らない人が多いのかも知れない。 ○利用者の登録数は、現在14人。令和3年は16人、令和2年は14人。 ○利用者のうち、弱視(ロービジョン)は3分の1。なお、本年度利用登録されている14人中実際に利用しているのは、4〜5人。 ○行政から依頼を受けて、出張して研修を行うこともある。その場合は、先方の時間にあわせている。なお、ボランティア団体からの依頼は今のところない。 ○福祉サービスを知らない人が代筆・代読支援の利用者登録をした背景には、眼科のケースワーカーからの紹介、地域包括支援センターの職員からの紹介があったようだ。 ○初回の研修を終えた方に対し、支援員登録説明会を開催し、実際の活動及び手続についての説明を行っている。この説明会には同法人の情報文化センター見学会を組み込み、代筆・代読以外の場面や社会資源、情報にも触れている。また、支援員にご登録いただいた方向けに、フォローアップ研修と称して勉強会を開いた。約20人のご参加をいただき、実際の支援で依頼された内容の紹介を交えた演習、支援活動に出られた支援員との情報交換などを行った。実働に出ていただけていない方も多数いるが、受講者の反応もよく、こういった場は今後も必要と感じている。 (3)代読・代筆支援者(従事者)養成研修の効果  支援者の質の確保の観点で重視する事柄  (受講生の反応、感想含む) ○受講者の感想として、同行援護従業者養成研修を受けているが、知らないこと・初めて聞いたことが多いや、支援方法のイメージがわいた等の意見があった。 ○利用者からは、自宅に届いた書類の代読(整理)がスムーズになったという声。福祉サービスを知らなかったが代筆・代読支援を利用するようになり、他の福祉サービスを知ることができた等の声が寄せられた。 (4)他の地域においても養成研修を広げていくための方策 ○自治体に代筆・代読支援の必要性・重要性を理解してもらうことが求められている。視覚障害当事者団体として訴えていく必要がある。 (5)視覚障害者への代筆・代読支援の課題  (自治体、国に求めることを含む) ○市では同行援護を利用している人は意思疎通支援事業の代筆・代読支援の対象外となっている。 同行援護を利用している人から、代筆・代読支援を受けたいというニーズが多いことや、福祉サービスと意思疎通支援事業を組み合わせることによってメリットがあるので、利用者の範囲を広げてほしいという要望があった。 ○意思疎通支援事業の利用者が増えた場合、今いる職員では足りないと思う。自治体に人件費も担保していただき、体制を整えたい。 ○緊急(急ぎ)で代筆・代読支援を希望する方もいる。特に、その人が利用登録していない場合は対応が難しい。利用者登録・支給決定等を市に協力いただいて、どんなに急いでも1週間はかかる。急ぎの対応について課題がある。 ○代筆・代読支援者として登録していただいている方々、全員に活動の機会があるわけではない。もっと利用者を増やしていくことが必要だと思う。 ○代筆・代読支援者の派遣の報酬(事務手数料)も上がればいいと思う。 ○パソコンやスマートフォンを利用したオンラインによる代読・代筆支援が今は認められていない。視覚障害当事者からはニーズがあるので認めてほしい。 (6)視覚障害者へ代筆・代読支援が効果的に行われるための方策 ○居宅介護では、代筆・代読支援をしてもらう時間がない。同行援護を利用しての代筆・代読に関しても書類を読んでもらう時間はない。その制度の狭間として、意思疎通支援の代筆・代読が役割を果たせるのではないか。 4 ヒアリングの結果の整理(補足)  代筆・代読支援従事者養成研修を実施している3団体の取り組みを整理する。 (1)講師 A団体 ○座学 視覚障害者 ○演習 同行援護従業者養成研修指導者 B団体 ○座学 視覚障害者 ○演習 視覚障害生活訓練等指導者(歩行訓練士) C団体 ○座学 視覚障害者 ○演習 視覚障害生活訓練等指導者(歩行訓練士)  視覚障害の特性や心理等の座学は、視覚障害者の講師が担っている。代筆・代読の演習は、同行援護従業者養成研修の指導者や視覚障害生活訓練等指導者(歩行訓練士)が担っている。 (2)日数(時間)、研修費(テキスト含む)及び自治体からの補助の有無 A団体 1日間 合計8時間 4,000円 補助なし B団体 2日間 合計12時間 無料 補助あり C団体 2日間 合計10時間 1,000円 補助あり  研修日程としては、受講希望者の参加しやすさに配慮して1日で行うケース、実習に時間をかける形で2日間行うケースの2パターンがあった。  また、自治体の委託を受けて実施している団体や団体が独自に実施しているところがあった。団体が独自に実施している場合は、出張して研修を行うことが可能。 (3)養成研修カリキュラムの主な項目  3団体ともにおおむね共通のカリキュラムで研修が行われている。A団体が先駆的に代筆・代読支援従事者養成研修を始めた。その際に作成したテキストをB団体及びC団体が参考にして研修を実施しているためである。 @講義形式の解説  ○視覚障害者にかかわる福祉制度   ○視覚障害者の現状  ○代筆・代読支援従事者の倫理  ○代筆・代読支援従事者の業務 A実習部分  実習は講義で取り上げた内容を確認しながら次のような方法で実施。  ○支援者役と視覚障害者役の両方を経験  ○代筆・代読の実習  ○備品の利用  ○必要となる基礎知識の確認 <参考:B団体で行われている養成研修の主な内容> 1.講座 (1)視覚障害者の現状 @視覚障害者とは、A視覚障害者認定基準、B視覚障害のある人の数(県内)、C視機能の理解、D視覚障害に伴う日常生活への影響、E社会的不利を取り除く、Fバリアフリー社会を目指す 等 (2)視覚障害者(児)の心理 @先天性視覚障害者の心理、A中途視覚障害者の心理、B職場での心理、C障害の受容、D家族の心理、E視覚障害者の人間関係 等 (3)障害福祉サービス  @介護給付、A訓練等給付、B児童、C相談、D地域生活支援事業 等 (4)代筆・代読支援従事者の業務 @代筆・代読の制度、A意思決定支援、B従事者の倫理、C個人情報の取り扱い、D代筆・代読を依頼する書類、Eパソコン利用における支援、F従事者として知っておくと便利なこと、G従事者の装備品 等 2.演習 (1)代筆の実際 @代筆の基礎知識、A代筆するものの確認、B代筆の際の配慮、C代筆の仕方、D代筆の応用、E代筆後の最終確認、F代筆と代理人、G代筆できない書類、H自筆での署名 等 【演習】 @ハガキの宛名の代筆、Aアンケートの代筆、B宅配便の代筆、C印鑑の押印、D住民票写等交付請求書、Eサインガイドで署名 等 (2)代読の実際 @代読の基礎知識、A代読の留意点、B代読する時の配慮、Cどのようにして読むか、D自宅で読むもの、E高度な代読支援 等 【演習】 @レシートの代読、Aパンフレット(宅配コーヒー)の代読、B市民 フォーラム案内の代読、C医薬品の効能書きの代読 等 (4)代筆・代読支援従事者に求められるスキル  研修を通して、代筆・代読支援従事者が学び、求められるのが下記の6つのことである。  @視覚障害の理解(障害特性や心理等)  A本人の自己決定・人権尊重  B信頼関係の構築  C守秘義務  D代筆のスキル  E代読のスキル <参考> 代筆・代読支援従事者の持ち物の例 ○筆記用具 ○定規 ○付箋紙 ○朱肉 ○サインガイド ○バインダー   等 B団体において受講者に配布 <参考> 視覚障害生活訓練等指導者(歩行訓練士)とは  目の不自由な人が杖を使って安全に歩行できるよう、歩行訓練を指導するほか、点字やパソコンを使って他人とコミュニケーションをとったり、調理・掃除・食事など日常生活に必要な動作・技能の指導を行ったりする専門職である。  厚生労働省の認定資格で、日本ライトハウス視覚障害生活訓練等指導者養成課程、国立障害者リハビリテーションセンター学院視覚障害学科を修了することが条件となる。 ○福祉医療機構のホームページから抜粋 https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/fukushiworkguide/jobguidejobtype/jobguide_job55.html 居宅介護及び同行援護事業所(団体) 【対象】  意思疎通支援事業の代筆・代読支援を実施している事業所  居宅介護及び同行援護において代筆・代読支援を行っている事業所・団体 【実施方法】  対面及びオンライン 【調査内容】 (1)意思疎通支援事業で代筆・代読支援を実施している  実施の経緯、利用者を増やすための取り組み、オンライン(リモート)の活用、効果的に支援が行われるための手がかり、支援を行っている上での課題、他の地域(市区町村)でも意思疎通支援において代読・代筆支援を広げていくための手がかり (2)居宅介護・同行援護で代筆・代読支援を実施している  意思疎通支援の代筆・代読支援のニーズ、派遣事業及び従事者養成研修の実施意欲、オンライン(リモート)の活用、同行援護及び居宅介護での代筆・代読、視覚障害者への代筆・代読支援の要望 実施日 A事業所 12月7日 B事業所 12月26日 C事業所 1月5日 D事業所 1月6日 E事業所 1月6日 F事業所 1月11日 G事業所 2月2日 1 A事業所 ヒアリング結果(意思疎通支援事業を実施) (1)代筆・代読支援を実施することとなった経緯・きっかけ・大変だったこと ○4〜5年前から自治体に意思疎通支援の代筆・代読支援を実施してほしいと要望していた。障害福祉部の部長と課長との意見交換を重ね、代筆・代読の必要性を理解してもらったことが始まったきっかけだと思う。 ○都道府県で「意思疎通支援条例」が制定されたことも市が実施したきっかけになったと思う。 ○代筆・代読支援事業を実施するにあたり、自治体と何度も意見交換をした。代筆・代読支援のニーズや同行援護では外出先の支援に限られること、居宅介護では他の支援が優先され、代筆・代読支援が足りないことを説明し、理解してもらった。 ○コロナ禍で、国の給付金申請書や、ワクチンの申込等は、視覚障害者にとって読み書きしづらいものであった。その結果、視覚障害者への代筆・代読支援の重要性を自治体に理解してもらうきっかけになったように思う。 (2)代筆・代読支援の利用者を増やすための取り組み ○代筆・代読支援の利用率は低い。代筆・代読支援があることを知らない視覚障害者が多いように思う。また、代筆・代読支援があることを知っていてもどのような支援が受けられるのかを把握していないため、自分には必要がないと思っている視覚障害者も多い。そのため、本協議会の広報で、代筆・代読支援の内容についても配信している。 ○居宅介護事業所の責任者及び所属しているホームヘルパーが、代筆・代読は居宅介護の中でできるので、改めて意思疎通支援事業で行う必要はないと思っている人が多い。代筆・代読支援を広げていくには事業所の理解も必要なので、市内の同行援護事業所・居宅介護事業所で構成する連絡協議会を立ち上げた。約30ヶ所が入っている。4月、6月、12月に意見交換をしている。また、6月の意見交換の際は市の出前講座を行い、障害福祉部の課長・主査から代筆・代読支援の説明をしてもらった。 ○代筆・代読支援を受けることができる対象者を当初市は全盲だけと想定していた。弱視(ロービジョン)にも代筆・代読支援は必要と訴え、身体障害者手帳の等級を問わないことになった。しかし、身体障害者手帳がなくても対象とすることは難しいように思う。 ○市は「趣味・教養を目的とした代筆・代読」を利用できないこととしている。本を読んでほしいというようなニーズが多く、認めてもらうように交渉したが、無理だった。市としては、趣味等も認めると多くの申込があり、対応しきれないと考えているようだ。現時点では、本の代読を希望される方は点字図書館の対面朗読サービスを受けている。ただ、点字図書館へ行かなくてはいけないため、自宅で読んでほしいというニーズが多い。 (3)パソコンやスマートフォン等のオンライン(リモート)を活用した代筆・代読支援の実施の有無 ○パソコンやスマートフォンを利用しての代筆・代読支援は現在認められていない。利用者の横に支援者がいて、画面を読み上げることは認められている。市は広いので、オンラインでの代筆・代読支援を認めてもらいたい。 ○オンラインで代筆・代読が認められない理由の一つとして、利用実績書を記載することだと言われている。市の場合だと、利用実績書への利用者の捺印・サイン等は不要で完了報告ができるので、市がオンラインの利用を認めてもらえればできるように思う。 ○利用者が広い地域に散在しており移動に時間と費用がかかること、また冬期には雪のため移動が難しくなる場合があることから、リモート支援が可能になればヘルパーと視覚障害者の双方にメリットがあると思う。その場合、ヘルパーにも視覚障害者にもICTのスキルが求められるため、それが課題になると思う。 (4)視覚障害者へ代筆・代読支援が効果的に行われるための手がかり ○来年度、市で代筆・代読支援者の養成研修を実施する予定と聞いている。養成研修を実施し、支援者が増えれば効果的に代筆・代読支援が行えるように思う。なお、研修は1日で、午前中に座学、午後に演習を行う予定。 ○代筆・代読において、どのようなことを依頼できるのか、できないのかがわかりにくい。支援方法の例を示しながら周知していくことが必要だと思う。例えば、料理のレシピの本は代筆・代読支援ではなく点字図書館のサービスということになるが、見えていたころに自分でメモしておいたレシピであれば、図書ではないので代筆・代読支援の対象になるなど。 (5)視覚障害者への代筆・代読支援を行う上での課題  自治体、国に求めることを含む ○聴覚障害者に手話通訳が必要なように、視覚障害者に代筆・代読支援が必要であることを自治体に理解してもらいたい。 ○同行援護・居宅介護では代筆・代読のニーズを汲み取れないことがあることを理解してもらいたい。 ○市の場合、意思疎通支援の代筆・代読支援の報酬単価は同行援護・居宅介護と比較すると2〜3割ほど高い。他の地域においても、報酬単価を高く設定してほしい。 (6)他の地域(市区町村)でも意思疎通支援において代読・代筆支援を広げていくための手がかり ○市で代筆・代読支援を実施した際に、色々な市町村から問い合わせがあったと聞く。各都道府県で1ヶ所でも意思疎通支援事業で代筆・代読支援を行えば、周辺の自治体の参考になると思う。 2 B事業所 ヒアリング結果 (1)同行援護での買い物等の後、居宅で代筆・代読支援をすることがありますか。 ○私は相談支援をしているが、高齢の単身者へ、こうして連続してサービスを受けられるように話をし、計画を立てている。しかし、現実の問題として、同行援護(ガイドヘルパー)と居宅介護(ホームヘルパー)の両方の資格を有しているヘルパーが少なく対応が難しい。 ○居宅介護は、料理・掃除・洗濯等に時間を多く割いてしまうことや代筆・代読がきっちりと仕事の範囲として明確にされていないため、視覚障害者への代筆・代読の必要性及び重要性を理解していないヘルパーが多いように思う。 ○同行援護従業者養成研修では、代筆・代読について学ぶが、介護職員初任者研修においては代筆・代読を学ぶことがない。介護職員初任者研修においても代筆・代読を学ぶカリキュラムにしたほうがいい。 ○居宅介護の家事援助(料理・掃除・洗濯等)とはまた別に代筆・代読の時間を支給してもらうことができれば、居宅で代筆・代読支援を受けたい人達のニーズもある程度満たせるのではないか。 (2)同行援護で代筆・代読を実施する際の課題を教えてください。 ○家に届いた郵便物を持ち出し、外で代筆・代読を行うことがある。その際の場所の選定が難しい。喫茶店や図書館に行って代筆・代読を行うことが多いが、利用者のプライバシーを守らなければならないので神経を使う。年金のお知らせや株価の配当等の金銭に関係するものについては特に扱いにくい。また、同行援護の本来の趣旨と違ってしまうように思う。 (3)居宅介護で代筆・代読を実施する際の課題を教えてください。 ○居宅介護で、料理や掃除をしてもらうと時間があっという間に過ぎてしまう。郵便物を読んでほしいと用意していても、その時間がない。また、ホームヘルパーによっては小さい字・難しい字が読めないという方や、どのように代読していいかわからないという方も多い。 ○手紙の代読や代筆だけでなく、パソコンで表示されている画面を読み上げることや、パソコンの入力を手伝ってほしいという視覚障害当事者ニーズもあるかと思う。ただ、現状ではホームヘルパーとして従事する方も高齢者が増えているため難しいように思う。ホームヘルパーがパソコンスキルも学べるようにしてほしい。 (4)自治体が地域生活支援事業の意思疎通支援事業で代筆・代読支援を実施する場合、実施したいと思いますか。その理由も教えてください。 ○視覚障害者にとって代筆・代読支援は絶対に必要だから、同行援護・居宅介護の事業所は実施せざるを得なくなるだろう。 (5)代筆・代読支援者(従事者)の養成研修が地域で行わる場合、従事者に受けてもらいたいと思いますか。その理由も教えてください。 ○代筆・代読支援には、一定のスキルが必要だから、養成研修を受ける必要があると思う。 (6)今後、パソコンやスマートフォン等のオンライン(リモート)を活用した代筆・代読支援が実施されるとすれば、事業所としてどのように思いますか。 ○パソコン、スマートフォンなどの基礎も代筆・代読支援者の養成課程に入れる必要があると思う。 ○代筆・代読支援とパソコンのスキルを持った専門性の高いヘルパーに対する報酬はどのようにするのか課題がある。あまり報酬が低いと担い手がいない。 ○パソコン等を利用してリモートで代筆・代読支援を行った場合にも、支援の実績をきちんと事業所が把握すれば、オンラインでの支援も可能だと思う。 (7)視覚障害者への代筆・代読支援が広がっていく上で、国や自治体に求めることはなんですか。 ○意思疎通支援事業の代筆・代読支援を実施する自治体がすぐに増えることは期待できないと思う。まずは、居宅介護のなかで「代筆・代読支援」のサービスを位置づけ、代筆・代読支援に適切に応じることができるようにホームヘルパーを養成することが必要ではないか。 ○意思疎通支援事業で、代筆・代読支援を行う場合は、同行援護従業者養成研修のように、「意思疎通支援従事者養成事業」のカリキュラムを作成し、ヘルパーに資格を取得させることが重要だと思う。 ○ろう者の手話通訳のように、視覚障害者には代筆・代読支援が必要だということを自治体の職員に理解してもらいたい。 ○意思疎通支援事業の代筆・代読支援を事業所としても魅力あるような報酬単価にしないと担い手がいないように思う。 ○代筆・代読支援は比較的短時間で終わることが予想される。支援時間だけを報酬の対象としたのでは、ヘルパーも事業所も支援事業に取り組むのが費用面で難しい。利用者の家に訪問するまでの往復時間も支援実績に含めるとか、交通費(実費)の補助も検討してほしい。 ○同行援護、居宅介護、地域生活支援事業(意思疎通支援)等の制度を知らない当事者が多いように思う。自治体で改めて周知・徹底してほしい。 ○晴眼者の家族がいる視覚障害者は、代筆・代読をしてもらえるため、居宅介護や意思疎通支援事業の制度をあまり利用しないかと思うが、家族に頼らず、制度を利用できることを意識してほしい。 3 C事業所 ヒアリング結果 (1)視覚障害当事者団体として、自治体に意思疎通支援事業の代筆・代読支援を実施するように要望したことがありますか。ある場合は、その時の自治体の反応を教えてください。 ○昨年4月、市と意見交換した。その時、雇用と福祉の連携による重度障害者等就労支援特別事業と、意思疎通支援事業の代筆・代読支援を市として実施してほしいと要望した。 ○市としては重度障害者等就労支援特別事業の方は実施することとしたが、代筆・代読支援は未だ実施に至っていない。その背景には代筆・代読に対するニーズがどれくらいあるか分からないということがある。ニーズがはっきりしない以上、当面は居宅介護や同行援護の代筆・代読支援で対応したいというのが市の答えだった。 ○4月の意見交換会の際、音訳ボランティア団体の代筆・代読支援を受けていた視覚障害者にも参加してもらい、支援が必要であることを伝えてもらった。音訳ボランティア団体側も、ボランティアの高齢化で支援者のリタイアがあり、行政で対応してくれればありがたいとの声があった。ただ、他の視覚障害者からは代筆・代読支援に関する要望があまり出てこない。同行援護や居宅介護の代筆・代読支援で足りているのではないかと思われる。事業の予算を付けてもらっても、利用者が少ないと事業として成り立たない。 ○視覚障害者の代筆・代読支援に対するニーズは、弱視(ロービジョン)者よりも全盲の人の方が高いと思う。特に独居の人は家族の支援を受けるわけにいかないのでニーズがあると思うが、現段階でそうした人からの要望が特には出てきていない。 (2)自治体が地域生活支援事業の意思疎通支援事業で代筆・代読支援を実施する場合、事業所として実施したいと思いますか。その理由や実施する際に課題となることがあれば教えてください。 ○当初、意思疎通支援事業の代筆・代読支援をやりたいと思ったが、しばらく様子を見ていると、あまりニーズが出てこないようなので今のところは事業所として取り組む状況にはない。意思疎通支援の代筆・代読支援を始めた事業所と意見交換をしたが、利用者が伸び悩んでいると聞いている。やはり「必要だ」との声が出てこないと事業として乗り出しにくい。 ○同行援護事業を実施しているので、もし同行援護の延長線上に代筆・代読支援が位置づけられるのであれば手を上げたいと思う。あるいは、同行援護と居宅介護の両方をやっている事業所もあるので、そうしたところが代筆・代読支援に取り組むというのも一つの方法だろうと思う。ただ、代筆・代読支援のみ事業として行うのは、現状では難しいと考える。 ○報酬単価について具体的にどの程度が適当かをいうのは難しい。同行援護事業は、コロナの影響で厳しい時期もあったが、どうにか赤字にならずに行っている。代筆・代読支援に特化した事業を新たにスタートさせるとなると今のスタッフでは厳しいと思うが、新しいスタッフを雇うことができるかというと、利用者が少数だと厳しい。税金からの支出なので報酬単価を上げてもらうのも難しいのではないかと思う。 ○視覚障害者の代筆・代読に対するニーズが高いのであれば採算が合うかどうかに関係なく実施すべきだと思うが、あまりニーズが上がってこない状況で、やはり実施が難しいと考える。 (3)代筆・代読支援者(従事者)の養成研修が地域で行われる場合、従事者に受けてもらいたいと思いますか。その理由も教えてください。または、養成研修の実施を協会として考えていますか。 ○養成研修を行ってほしいという声がかかったら是非やりたいと思う。 (4)今後、パソコンやスマートフォン等のオンライン(リモート)を活用した代筆・代読支援が実施されるとすれば、事業所としてどのように思いますか。 ○中途聴覚障害者向けの要約筆記の状況をみていると、オンラインでの支援が行われている。代筆・代読支援でもオンラインで行う可能性はあると思う。 ○ヘルパーにも利用者にもICTのスキルを身につけてもらう必要があるが、同行援護の利用予約は基本的にメールのやりとりで行っており、ICT利用の素地はあると思う。難しいこともあるかもしれないが、それなりの研修を行えばオンラインでの支援も可能だろうと思う。 ○利用実績の記録において記録書に捺印する方式を採っているが、オンラインにする場合は別の方式を採用する必要がある。ただ、工夫の仕方はあると思う。 ○タブレットやスマートフォンを市が貸与するといったことがあれば、オンライン支援がやりやすくなると思うが、そこまで市に取り組んでもらうためには、やはりニーズがあることを示すのが先ずは必要になる。 (5)同行援護での買い物等の後、居宅で代筆・代読支援をすることがありますか。  例:買ってきたものを冷蔵庫へ整理するなど、または郵便物の仕分け等を短時間で応じている等 ○家の中に入って買い物の整理等をやることはない。玄関先で郵便物等を読むことはある。病院の待合時間を利用して書類などを読んでもらうといったこともあると聞く。その際、書類の内容によってはプライバシーが保護されないのではないかとの指摘があるかもしれないが、今のところ利用者からプライバシーの問題を指摘されたことはない。 (6)同行援護で代筆・代読を実施する際の課題を教えてください。 ○同行援護の場合、厳密には家に入ってからの支援は行えない。ただ、玄関先で実績記録表に捺印してもらうことがある。本当は家に入ってからの支援も弾力的に認められればいいと思う。 ○ほとんどガイドヘルパーは代筆・代読支援を適切に行うことができると思っているが、全てのヘルパーがそうだとはいえないのでスキルアップの研修は必要だと思う。 ○プライバシーの保護が重要だと思う。ヘルパーとの1年に1回の契約更新のときに「ちゃんとプライバシーに配慮してください」と念押ししている。 (7)視覚障害者への代筆・代読支援が広がっていく上で、国や自治体に求めることはなんですか。 ○ニーズの把握、代筆・代読支援の有効性を行政と利用者の双方にアピールする必要がある。 ○市は、他の政令市が実施しているかどうかを意識する。自治体間のネットワークを良い方向で生かしていければと思う。 ○読書バリアフリー法にしても、障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法にしても、それら法律が一人一人の視覚障害当事者にとって何をもたらすのか、どのように生活が改善されるのかがなかなか見えてこない。それが分かるようにアピールすることが大事だと考える。 4 D事業所 ヒアリング結果 (1)視覚障害当事者団体として、自治体に意思疎通支援事業の代筆・代読支援を実施するように要望したことがありますか。  ある場合は、その時の自治体の反応を教えてください。 ○県内の市町村すべてではないが、意思疎通支援事業の代筆・代読支援を実施してほしいと要望している。各市では、県内のどこの自治体も実施していないので、実施に足踏みしているようだ。全国では実施している自治体があることを紹介しても反応は良くない。 ○県へ要望しても、居宅介護で代筆・代読が実施できているので、意思疎通支援事業の代筆・代読支援を行う必要はないのではないか。居宅介護で代筆・代読支援が受けられることを周知・徹底し、支援を受ける人を増やしたほうがいいのではないかと言われてしまう。 (2)県内の自治体が地域生活支援事業の意思疎通支援事業で代筆・代読支援を実施する場合、視協も実施したいと思いますか。その理由や実施する際に課題となることがあれば教えてください。 ○意思疎通支援事業の代筆・代読支援のみでは視協として実施することは難しいと思う。同行援護事業を行っているので、同行援護と意思疎通支援を組み合わせることで実施できるかと思う。 ○同行援護で外出する前後で、居宅内で意思疎通支援を受けることができるような、連続しての支援。また、居宅介護で家事援助を受けて、代筆・代読を別時間で行うための、意思疎通支援を受けるなど連続した支援が実現しやすいのだと思う。一方で、障害福祉サービスを受けられない(対象外)の人もいるため、意思疎通支援の代筆・代読ではその人達へも支援できるような仕組みも求められる。 (3)代筆・代読支援者(従事者)の養成研修が県内で行われる場合、従事者に受けてもらいたいと思いますか。その理由も教えてください。  または、養成研修の実施を視協で考えていますか。 ○同行援護従業者の養成研修の追加研修という形であれば実現できるように思う。また、従事者にも研修を受講してもらいたいと考えている。 (4)今後、パソコンやスマートフォン等のオンライン(リモート)を活用した代筆・代読支援が実施されるとすれば、事業所としてどのように思いますか。  例:従事者のスキルや機器(PC等の問題) ○今後、代読支援として有効だと思う。その一方で、ガイドヘルパーやホームヘルパー及び利用者も高齢者が多い。ICT機器を使いこなせるのか等の不安がある。 ○オンラインで代筆・代読等の支援を行った場合、サービス提供を確実に行ったという証明をどうしていくのかが課題がある。今、利用者に確認し、捺印してもらっているので、オンラインではその報告が難しい。そのあたりも検討が必要に思う。 (5)同行援護での買い物等の後、居宅で代筆・代読支援をすることがありますか。  例:買ってきたものを冷蔵庫へ整理するなど、または郵便物の仕分け等の短時間で応じている等 ○同行援護で、居宅内で代筆・代読支援をすることはない。制度的に認められていないので、県視協としても行っていない。また、あまり件数はないが、郵便物を外出先に持参し、代筆・代読を行うことはある。 (6)同行援護で代筆・代読を実施する際の課題を教えてください。 ○金融機関等で、ガイドヘルパーの代筆を求められることがある。ガイドヘルパーとしても、金融関係の代筆は躊躇するので、金融機関の行員が代筆・代読することを徹底してほしい。 (7)視覚障害者への代筆・代読支援が広がっていく上で、国や自治体に求めることはなんですか。 ○県は、東部・中部・西部と地域を分けることができる。その各地域で行政(自治体職員)が代筆・代読の支援を行えば、ある程度の視覚障害者からの代筆・代読支援に関するニーズに対応できるのではないか。職員が自宅へ訪問して、代筆・代読支援を行えば、それほど経費もかからないようにも思う。 ○意思疎通支援事業では、手話や要約筆記が目立っており、視覚障害者への代筆・代読支援についてはあまり必要性・重要性を自治体職員に認識してもらえていないように思う。その理解・啓発が必要だと思う。  また、居宅介護のホームヘルパーも代筆・代読に関して、知識が少ないため、その理解・啓発にも努めていきたい。 ○居宅介護で代筆・代読支援を受けられることを知らない視覚障害者も多いように思う。その要因として、ケアマネジャーが理解していないのだと思う。その理解・啓発も必要だと思う。 5 E事業所 ヒアリング結果 (1)視覚障害当事者団体として、自治体へ意思疎通支援事業の代筆・代読支援を実施するように要望したことがありますか。ある場合は、その時の自治体の反応を教えてください。 ○市に対して意思疎通支援事業としての代筆・代読支援を要望した。年度当初(5月ころ)、要望書を持って市と懇談会を行った。しかし、市から前向きな答えはなく、実施されないまま今に至っている。 ○市としては、同行援護事業や居宅介護事業で代筆・代読支援を行えることになっており、その支援を利用すればいいのではないかという反応だった。 ○同行援護では外出先での代筆・代読であり、居宅で支援を受けられないこと、家事援助の中で代筆・代読支援を受けようと思っても時間が足りなく、また、ホームヘルパーが代筆・代読支援のための研修を受けておらず的確に支援を行えるかは疑問。そのことも市に伝えたが理解してもらえなかった。 ○代筆・代読支援に特別なノウハウなどは必要なく、晴眼者であれば誰でもできると、行政の職員は考えているように感じられる。そこを変えていく必要がある。 (2)市が地域生活支援事業の意思疎通支援事業で代筆・代読支援を実施する場合、視協も実施したいと思いますか。その理由や実施する際に課題となることがあれば教えてください。 ○可能であれば事業所として実施したいと思う。ただ、現段階では代筆・代読支援を事業として行うだけの体制を整えるのが難しい。 ○代筆・代読支援を求める声が利用者から出てきてはいないが、声は上がっていなくても実際にはニーズがあるのだと考えている。それに応ずるために、将来的には事業所として取り組みたい気持ちはある。 ○現在、同行援護事業を事業所として実施しているが、それだけでは事業の運営が厳しいというのが実態。意思疎通支援事業としての代筆・代読支援が適正な報酬体制に支えられるものであるなら、取り組みたいと思う。 (3)代筆・代読支援者(従事者)の養成研修が市で行われる場合、従事者に受けてもらいたいと思いますか。その理由も教えてください。または、養成研修の実施を視協で考えていますか。 ○代筆・代読支援を行うためには、それなりのノウハウや守るべきルール(プライバシー保護等)があると思うので、養成研修が行われれば従事者に受講してもらいたいと思う。 ○養成研修の実施主体になることについては、可能であればやりたいと思うが、現実問題として講師役になる人材の確保が難しい。研修を実施するための環境を整備できればという条件付きだが、やりたいとは思う。 ○養成研修を受講した場合、何らかの資格が与えられるようになればと思う。公認の資格であることが望ましいが、そこまでいかなくても資格として一定程度認められるようになれば、代筆・代読支援には専門のノウハウや資質が必要であることを示すことができる。行政に対して代筆・代読支援の必要性をアピールする一つの材料になると考える。 ○日本視覚障害者団体連合が、代筆・代読支援者及び講師の養成研修に取り組んでもらいたい。 ○手話通訳者や要約筆記者の養成研修は実施している自治体が多いが、代筆・代読支援について目を向けるところが少ない。 ○同行援護の場合でいうと、市では社会福祉協議会に対してガイドヘルパーの養成研修を行うよう要望していたが、養成研修どころか同行援護事業そのものもやめてしまった。考えられない状況だと思っている。同行援護の研修は県の所管なので、市ではなく県に対して視障協も養成研修を行いたい旨を申請しているが、なかなか認めてもらえない状況である。 ○同行援護従業者養成研修の際は、中央法規出版の「同行援護従業者養成研修テキスト」を使用している。代筆・代読支援者養成についても公式なテキストが求められる。 (4)今後、パソコンやスマートフォン等のオンライン(リモート)を活用した代筆・代読支援が実施されるとすれば、事業所としてどのように思いますか。 ○オンラインによる代筆・代読支援があれば便利になる面はあると思う。ただ、視障協が事業所としてそれに取り組むことについては課題が多く、現実には難しいと考える。 ○オンラインによる支援を行うだけのスキルを持ったスタッフがいない。また、オンラインで使用するパソコンやLAN環境等の設備が整っていない。 ○視覚障害者の側にもスキルを持っている人は少ないと思う。 ○同行援護の場合、支援の実績記録書に捺印してもらっている。オンラインの場合は捺印が難しくなるので工夫が必要になると思う。 (5)同行援護での買い物等の後、居宅で代筆・代読支援をすることがありますか。 ○同行援護は、あくまで外出先での支援なので家に帰ってから居宅で支援するということはない。現場では、もしかすると玄関先で買い物の品物を整理して伝えるといったことはあるかもしれないが、家にあがり込んで冷蔵庫に入れるといったことはないだろうと考える。代筆・代読についても、やはりやっていないと思う。やっているという話を聞いたことはない。 ○自宅に戻ってからの支援も欲しいという意見は、現場では出ているのではないかと思うが、事業所にそうした意見が寄せられることはこれまでなかった。 ○同行援護で多少でも居宅での支援が認められるようになれば、ヘルパーがそれに対応することは可能だと思う。制度的に認められていないのでやってないだけである。 (6)同行援護で代筆・代読を実施する際の課題を教えてください。 ○金融機関や役所の窓口でガイドヘルパーに代筆をお願いする場合、代筆者の氏名や住所を記入するよう求められることがある。また、ガイドヘルパーの身分を示す証明書の提示を求められることもある。手続きの主体は視覚障害者なのでそこまでする必要はないと考えるが、実際にはそうしたことを求められる。そうすると、何か問題があった時に代筆者が責任を問われてしまうのではないかという心配が起きて、ヘルパーも代筆に抵抗感を覚えるだろうし、お願いする視覚障害者側も遠慮してしまうところがある。 ○本来は金融機関や役所の職員が代筆すべきところであるが、現場の窓口では代筆を求められることがある。書類を家に持ち帰って代筆してもらう場合は代筆者の氏名を書かなくても受け付けられるが、窓口だとそうはいかないというのは、おかしな話である。 (7)視覚障害者への代筆・代読支援が広がっていく上で、国や自治体に求めることはなんですか。 ○行政側の代筆・代読支援に対する認識を改めてもらう必要がある。しかし、要望書とそれに付随する資料を提出しても、人事異動によって担当職員が交代すると、それが引き継がれていない。行政の姿勢を改めてもらいたい。 ○要望を伝える懇談会に参加する視覚障害者が、特定のメンバーに固定されがち。もっと多くの視覚障害当事者が声を上げていくことも必要。 ○アンケート調査等によって障害者側のニーズを把握する必要がある。事業を実施する前提には、やはりニーズがこれだけあるというのを示す必要がある。また、代筆・代読支援の必要性を理解してもらうための啓発資料もあればと思う。 ○代筆について、契約書類や一定額以上の金銭管理にかかわるような書類だと、何かトラブルがあったとき責任問題が生ずる可能性がある。代筆・代読支援でどこまで支援するのが適当か、金融機関や役所の窓口で対応すべきこととの住み分けなど、ある程度 整理が必要ではないか。 ○代筆・代読支援の内容について、趣味・娯楽は支援の対象外としている自治体もあるようだが、図書を読んでもらうことについては図書館で対応してもらえるものの、代筆・代読支援においても一定時間内であればあまり制約を設けずに支援してもらえるというようにすれば、利用者増につながるかもしれない。 ○代筆・代読支援に当たるヘルパーの養成研修を確立することも支援を広める上で有効だと思う。 ○昨年10月に、市が障害者総合支援計画を策定するためアンケート調査を行った。無作為抽出された障害者の中に視覚障害者が200人いた。市内にもっと多くの視覚障害者がいるはずで、そのニーズや意見を政策や制度に反映させられればと思う。 6 F事業所 ヒアリング結果 (1)視覚障害者の当事者団体として、自治体に意思疎通支援事業の代筆・代読支援を実施するように要望したことがありますか。ある場合は、その時の自治体の反応を教えてください。 ○6〜7年前から代筆・代読支援を実施するように市へ要望している。市の身体障害者団体連合会に所属している10の障害者団体の意見・要望をとりまとめて市に陳情している。その後、各障害者団体と市の障害福祉課で意見交換が行われる。意見交換を行って市の担当者は、代筆・代読支援の重要性については理解を示しているように伺える。しかし、ニーズが把握できない。また県内であまり実施例がなく、市が率先して行うにはハードルが高いと言われる。 ○市から代筆・代読支援に関するニーズを把握するために、当事者アンケートを実施してほしいと要請を受けた。協会としては大規模なアンケートの実施は予算面及び対象者の選定(会員外)は難しく、視協のメーリングリストや電話での聞き取りをとおしてまとめ、市に提出した。その後は、特に事業実施に向けて進んでいない。 ○アンケート及び聞き取りでは、書類の代筆・代読のニーズのほか、パソコンやスマートフォンの画面の代読あるいは操作のフォローを受けたいというニーズは多かった。弱視の方も同様なニーズがあったため、代筆・代読及びパソコンの利用に関しては視覚障害の程度にかかわらず必要な支援だと改めて感じた。 ○居宅介護の代筆・代読支援によって視覚障害者のニーズに応えられるのではないかというのが市の考え方。しかし、居宅介護における代筆・代読支援は簡易なものが想定されており、それでは不十分だと主張してきた。結果、それを受けて市では家事援助における代筆・代読支援が拡充され、週に1回30分、代筆・代読の支援のみ受けられるようになった。 (2)市が地域生活支援事業の意思疎通支援事業で代筆・代読支援を実施する場合、市視協(事業所)としても実施したいと思いますか。その理由や実施する際に課題となることがあれば教えてください。 ○市で意思疎通支援事業が行われれば、事業を実施したいと思っている。一方で、従事者を確保できるかが課題になると思う。本事業所では同行援護・居宅介護のヘルパーは職員になる。人件費(報酬)も高くなければ従事者が集まらないように思う。また、ホームヘルパー、ガイドヘルパーの両方の資格を持っていても、居宅内の支援はあまりしたくないというヘルパーもいる。代筆・代読支援が報酬面及び仕事面で魅力あるものにしていかないといけないと思う。 (3)代筆・代読支援者(従事者)の養成研修が市で行われる場合、従事者に受けてもらいたいと思いますか。その理由も教えてください。または、養成研修の実施を視協で考えていますか。 ○市内の支援者(従事者)を養成する研修であれば実施したいと考えている。県視覚障害者福祉協会が作成した養成研修のテキストを参考に実施する等、県と連携をしながら進めたいと思う。一方で養成研修を担った場合、講師として担当できる人が1人または2人くらいしかいない。講師の養成も必要不可欠に思う。 ○視協で養成研修を実施した場合、市内または近隣の自治体を対象にした研修としたい。講師が全国の自治体に出向いて研修を行うことは難しい。 (4)今後、パソコンやスマートフォン等のオンライン(リモート)を活用した代筆・代読支援が実施されるとすれば、事業所としてどのように思いますか。 ○市の中央図書館では、来館型の対面朗読に加え、新たに遠隔コミュニケーションアプリ(Zoom)を使用したオンラインによる対面朗読サービスを行っている。それは、あくまで希望の図書資料の代読(私信は除く)を対象としているのでうまくいっているように思う。視覚障害者が手元の資料を代読してほしいという場合には、当事者の方にもそれなりのスキルが求められるため、まだまだ難しいように思う。 ○ガイドヘルパー及びホームヘルパーの資格をもっている人で、パソコンやスマートフォンに詳しい人もいるが少ないように思う。ほとんどが操作になれていない人ではないか。視覚障害者(利用者)及び支援者ともに、パソコンやスマートフォンのスキルが必要だと思う。 (5)同行援護と居宅介護で代筆・代読を実施する際の課題を教えてください。 ○ホームヘルパーとして従事している人の多くは、家事等は得意であっても代筆・代読を苦手とする人が多いように思う。その理由として、研修の内容に代筆・代読が含まれていないからだと考えられる。どのように代読していいのか、またどの範囲まで代筆していいのかを知らない従事者が多い。 ○同行援護従業者養成研修とプラスして、代筆・代読支援従事者の研修を行ったほうがよいと思う。代筆・代読支援の従事者だけを募った場合応募(担い手)が少ないように思う。 ○移動支援事業で通勤・通学の移動の支援を行っている。しかし、朝が早く短時間の支援であること、また夕方・夜には帰りのサポートもあることから担当してくれるガイドヘルパーが少ない。支援時間が短くても、利用者宅及び目的地、そしてヘルパーが一度自宅へ戻る時間等を鑑みれば、多くの時間を要している。実際の支援時間以外での報酬体系も考えていく必要があると思う。 ○福祉・介護職員等の処遇改善に係る加算がついているが、報酬加算をさらに考えてほしい。市に限らず、全国的に事業所の運営が成り立たなくなってくるように思う。 ○居宅での代筆・代読支援として、自治体は手紙の読み書き、購入したものの整理(冷蔵庫)等の簡単な代筆・代読を想定している。しかし、視覚障害当事者は、もっとプライベートなことや専門的なことを期待しているように思う。もっとプライベートなことにも代筆・代読支援が広がれば、おのずと利用者も増えるように思う。 ○スキャナーを使用して、文字を読み取り読み上げる機器や、眼鏡に装着するもの、またアプリ等、AIを活用したものが増えてきている。またこれからも技術の発展とともに増える気がする。しかし、やはり人に代読してもらうほうがより正確であり、自分の知りたいことが知れると思う。機器は一定の役割を果たすかもしれないが、機器を開発すれば視覚障害者のニーズが満たされるという考えはやめてほしい。あくまで、人による代筆・代読支援が重要だと思う。 (6)視覚障害者への代筆・代読支援が広がっていく上で、国や自治体に求めることはなんですか。 ○自治体が定める「障害者計画」に代筆・代読支援を明記してほしい。 ○「障害者による情報の取得および利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律」(いわゆる、障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法)が公布・施行されたのだから、視覚障害者への情報保障として代筆・代読についても重要である認識をもってほしい。 ○視覚障害者に対する代筆・代読支援についての自治体の認識が不十分。家事援助にともなうもの(商品パッケージやチラシなど)とか手紙類等の処理しか念頭にない。もっと広い範囲をカバーするものだと認識してもらうよう周知が必要。 7 G事業所 ヒアリング結果(意思疎通支援事業を実施) (1)意思疎通支援事業の代筆・代読支援を実施することとなった経緯・きっかけ・大変だった(従事者・利用者の確保等)ことは何ですか。 ○区では障害者のコミュニケーション支援整備に関して、特に聴覚障害者団体を中心に、区への要望が数年来盛んに行われていた。区は令和2年4月1日に意思疎通に関する条例を整備し、その中に視覚障害者の代筆・代読支援も含まれた。そのことにより、意思疎通支援事業の代筆・代読支援が他自治体より早めに実施されたと思う。 ○また、日本視覚障害者団体連合、東京都盲人福祉協会の情報共有の中で、意思疎通支援の代筆・代読支援の全国的な進捗状況を把握できた。区視覚障害者福祉協会の会長が障害者自立支援協議会等の場で、障害福祉課に代筆・代読支援の実施を要望してきた。障害福祉課の職員の中に、代筆・代読支援の必要性に理解を示す人がいて、比較的早くの実現に至ったのではないかと思う。 ○区では、身体障害者手帳を取得していなくても、代筆・代読支援を利用できる。高齢に伴い、視力低下等による理由から、文字等の読み書きをすることが困難である方が対象となる。 ○区では、対象者が生活するにあたり必要となる申込書等の代筆及び郵便物、新聞及び雑誌、取扱い説明書等の代読が認められており、代筆・代読の範囲の制約は少ない。 (2)代筆・代読支援の利用者を増やすためにどのような取り組みをされていますか。 ○事業所の同行援護・居宅介護の利用者及び視覚障害者福祉協会の会員に対して代筆・代読支援の周知を行った。利用者は現在約30人。代筆・代読支援が始まって徐々に増えてきた。 ○利用者の9割が事業所の利用者である。残り1割が、視覚に障害の無い高齢者だ。 ○視覚に障害の無い高齢者がこの代筆・代読支援を知ったのは、中野区の広報やホームページを見たのだと思う。 (3)視覚障害者への代筆・代読支援を行っている上での課題は何ですか。また、自治体(区)、国(厚生労働省)に求めることがありますか。 ○区の代筆・代読支援の時間は、1回につき1時間、月に2回まで認められている。利用者からも1回に利用できる時間及び月の回数についても増やしてほしいというニーズがある。 ○代読・代筆支援の1時間だけのためにヘルパーを派遣することは、事業所として調整が難しい。利用者様にはできる限り同行援護とセットで利用してもらっている。 ○現在の制度上、同行援護を利用して外出する前後に居宅内での意思疎通支援事業の代筆・代読の支援が認められている。しかし、同行援護と同行援護との間に意思疎通支援の代筆・代読支援を挟むことができないことから代筆・代読支援を挟むことを制度上認めてほしい。 ○区の報酬から代筆・代読の支援者への時給及び交通費を支払うと事業所としての利益はあまりない。現在の報酬では、事業所としてのメリットが少なく、むしろリスクがかさむことで、事業所の運営上は困難な状況である。代筆・代読支援の単独でのサービス提供でも可能なだけの、充分な報酬をいただきたい。なお、今は、代筆・代読支援が区で始まったばかりであることや、視覚障害のある方々への重要な支援だと事業所としても考えているので、利益はないものの、支援を行っている。 ○代筆・代読支援をしているのが同行援護従業者(ガイドヘルパー)の資格を持っている人達なので、外出時の代筆・代読も日頃から行っていたため、意思疎通支援の代筆・代読支援を始めた時に問題やヘルパーさんの戸惑いはなかった。ただ、英語の本・雑誌を代読してほしいという利用者もいるので、そういう場合には英語の堪能なヘルパーにお願いをしている。 ○区では意思疎通支援(代筆・代読支援)や移動支援等の地域生活支援事業の場合は、請求を区役所へ持参または郵送することになっている。障害福祉サービス(同行援護・居宅介護)も行っているので、月末及び月初までは事業所として忙しい。請求業務をオンラインで行える等の簡素化をしてほしい。 ○区では、代筆・代読支援者の養成研修を行うことを計画されている。養成研修が行われれば、音訳のボランティアさんにも受講してもらい、支援者が増えることが期待できる。また、養成研修は区から委託を受けてこちらが実施したい。 ○代筆・代読支援の利用者から予約が入ると、それを区の担当者へ電話で連絡する形になっている。恐らく事業を開始して1年目なので、区として、どういう利用状況なのかを把握したい為だと思う。ただ、こちらとしては、頻繁に区へ連絡しなければいけないため、煩雑になってしまう。 (4)パソコンやスマートフォン等のオンライン(リモート)を活用した代筆・代読支援が実施されるためには何が必要だと思いますか。 ○利用者のパソコンやスマートフォン等のICT機器のスキルを上げることが必須だと思う。文字やその場の光景を巧みに撮影し、双方で疎通ができることが必要になり、それに見合うだけの簡単かつ安価な機材提供を社会制度の中で整備してもらうことを望む。 ○同行援護のサービス提供の報告については、利用者の印鑑を必要としない方向になろうとしている。ただ、意思疎通支援事業では、利用者の印鑑が必要である。オンラインで代読支援を行った場合に報告が難しい。 (5)他の地域(市区町村)でも意思疎通支援において代読・代筆支援を広げていくための手がかりはなんだと思いますか。 ○視覚障害当事者の熱い声(要望)が必要だと思います。自治体に対して、代筆・代読支援が本当に必要なサービスであることを、地元の当事者団体を通して熱烈に要望し続けるのがいいかと思います。また、朗読ボランティアグループや音訳点訳ボランティアとのネットワークを構築し、その方々をも巻き込んでの活動を行うのもいいのかもしれません。さらには、そのような方々とのネットワークの中で、オンラインやリモートでの支援をも見据えた準備を整備する必要があると思います。 8 ヒアリングの結果の整理(補足)  代筆・代読支援従事者養成研修を実施している7事業所(団体)の取り組みを整理する。なお、視覚障害者団体が行っている事業所を中心にヒアリングを実施した。その一部を整理した。   (1)意思疎通支援事業の代筆・代読支援の実施  意思疎通支援事業の代筆・代読支援を実施するにあたり、何度も自治体の担当者と団体とで意見交換がされている。意見交換の場では、代筆・代読支援が視覚障害者に必要不可欠であることを伝え、自治体に理解してもらい事業の実施に至ったようである。  一方で、視覚障害者団体として、自治体に意思疎通支援事業の代筆・代読支援を実施してほしいと要望をしても、居宅介護や同行援護で行われている代筆・代読で十分であること、地域に住む視覚障害者の代筆・代読支援のニーズが把握できないとして、実施に至らない自治体があった。 (2)代筆・代読支援従事者養成研修の実施  現在、代筆・代読支援従事者養成研修が行われているところはなかった。一方で意思疎通支援事業において、代筆・代読支援者の派遣を行っている事業所において、令和5年から自治体の委託を受けて代筆・代読支援従事者養成研修を行うことも確認できた。  また、多くの地域で代筆・代読支援従事者の養成研修の実施を求める声があり、その一部では養成研修を開催したいという意欲的な団体もあった。 (3)オンラインによる代筆・代読支援  オンラインによる代筆・代読支援は視覚障害者と事業所の両方にメリットがあることが確認できた。その一方でオンラインを実施するにあたり、双方のスキルが必要であることを懸念していること。また、支援が終わった後に実績記録を作成するが、その記録がオンラインでの支援では証明できないといった声があった。 (4)意思疎通支援の代筆・代読支援を広げていくこと  意思疎通支援事業の代筆・代読支援を各地域において、実施していくには視覚障害者が必要としていることを自治体に理解してもらうことが何よりも大切だという声が多くあった。  地域生活支援事業の意思疎通支援事業で代筆・代読支援が行われていない地域での取り組みで下記のことが確認できた。なお、この事業に対する自治体の補助はない。 コラム4:点字図書館(独自の支援) @実施方法 県内の東部・中部・西部に視覚障がい者支援センターを設置し、各種相談に応じ、代筆・代読支援のニーズをくみ取り、対応 A実施内容 支援者の派遣(相談支援員) B報酬 職員のため報酬なし(この事業に関する) C利用対象 県内在住の身体障害者手帳を有する視覚障害者で、家族等での  代筆・代読が困難な方 D利用範囲 公的機関またはそれに準ずる機関からの郵便物、生活上必要不可欠な説明書等、公的機関またはそれに準ずる機関への申請、点字図書館が必要と認めた書類 E利用時間 1回あたり60分 1ヵ月あたり 原則2回まで コラム5:音訳ボランティア団体の独自支援 @実施方法 ・対面朗読 急いで情報を知りたい方や、リーディングを聞きながら点字で資料を作りたい方に訪問型 対面朗読。医療機関の承諾が得られれば院内での支援も可能。 A実施内容 支援者の派遣(朗読ボランティア) B費用 1回あたり500円(交通費充当) C利用時間 1回につき2時間 第5章 考察 考察  これまで述べてきたアンケート調査やヒアリング調査及び検討委員会で指摘された意見を基に、視覚障害者の代筆・代読支援にまつわる現状と課題を整理した。 (1)視覚障害者の読み書きにかかわるニーズ  先行研究及びヒアリングの結果から、多くの視覚障害者が日常生活において郵便物、イベントの案内、薬や家電製品の説明書、病院の問診票、公的機関から送られてくる書類等の読み書きに困っており、代筆・代読支援を必要としていることがわかる。  それは、いわゆる全盲の視覚障害者に限らず、弱視(ロービジョン)の視覚障害者も同様である。拡大読書器やルーペ等の補助具を利用して読み書きする場合、全体を把握することが難しく、要領よく内容を読み解くことや目的の箇所を探し出すのに時間がかかり、集中力が求められるため疲労感も大きくなる。また、署名等の記入欄が狭くわかりにくいため自署が難しい。視覚障害の程度にかかわらず、代筆・代読支援のニーズは高い。  自治体を対象とするアンケート調査の結果をみると、意思疎通支援事業において代筆・代読支援を実施しているところはごく少数にとどまっており、手話通訳や要約筆記の実施状況と大きな隔たりがある。  障害者が自ら意思決定することは、その生活の維持・向上と社会参加にとって不可欠であるが、意思疎通はそれを支える重要な要素である。聴覚障害者が円滑な意思疎通のために手話通訳や要約筆記を必要とするように、視覚障害者には代筆・代読支援が不可欠である。  しかしながら、そのことが自治体や事業者に十分に理解されていない。また、視覚障害当事者も、その重要性を理解していない状況になっている。視覚障害者が代筆・代読支援を必要としていることをより広く周知するよう図るべきである。 (2)代筆・代読支援に関する理解不足とその是正  アンケート調査とヒアリング調査の結果からも、視覚障害者への代筆・代読支援について理解不足があることが分かった。主には次のような内容である。視覚障害者への代筆・代読支援がより広く、また、適切に実施されるためには、こうした理解不足を是正する必要がある。 <理解不足と思われる例> ○晴眼者の同居者がいれば読み書きしてもらえるため代筆・代読支援は必要ない。 ○眼が見えていれば誰でも代筆・代読ができ、特別なスキルは必要ない。 ○視覚障害者の代筆・代読支援に関するニーズがあまりない。  自治体が代筆・代読支援を実施している場合でも、晴眼者の同居者がいると支援サービスの利用が制限される制度設定になっているケースがあるが、例え家族であっても個人的な内容を知られたくないという視覚障害当事者の声を踏まえた設定が必要である。  さらに、代筆・代読支援を効果的に行うには、支援者には支援方法を知ってもらう必要がある。目の前の書類を単純に読めばいいというものではない。必要な箇所がどこかを視覚障害者が判断できるようにするには工夫が必要であり、代筆に当たっても、黙って書き込んだのでは視覚障害者が不安に感じるため何を書き込むかを説明しながら進める必要がある。  その他にも、支援に当たって必要になる基礎知識、用具等があり、何より相手と信頼関係を築くこと、個人情報の保護や守秘義務を遵守することなどの心構えを持つことが求められる。 (3)意思疎通支援事業における代筆・代読支援に関する理解の促進  視覚障害者の代筆・代読支援を整理すると、障害者の福祉施策は障害者総合支援法に基づいて実施されており、障害者支援の大きな枠組みとしては次のものがある。 ・市町村の創意工夫により利用者の状況に応じて柔軟に実施できる地域生活支援事業 ・個々の障害程度や勘案すべき事項(社会活動や介護者、居住等の状況)を踏まえて、個別に支給決定が行われる障害福祉サービス その中で、代筆・代読支援にかかわるものとして次のものがある。 ・地域生活支援事業における意思疎通支援事業 ・個別給付の居宅介護事業(家庭内での代筆・代読支援) ・個別給付の同行援護事業(外出先での代筆・代読支援)  地域生活支援事業は必須事業と任意事業に分類されているが、意思疎通支援事業は必須事業であり、代筆・代読支援はその枠組みに位置づけられている。手話通訳、要約筆記もその中にある。  今回の調査で行った様々な聴き取りにおいて、必須事業である意思疎通支援事業の一つに代筆・代読支援があることを認識していないケアマネジャー(介護支援専門員)、相談支援専門員、自治体の担当者、そして視覚障害当事者が一定数いることもわかった。  意思疎通支援事業において、聴覚障害者への手話通訳者及び要約筆記者の派遣は必須事業になっているものの、視覚障害者への代筆・代読支援は任意事業であるといった理解不足もみられた。  また、代筆・代読支援について、家庭内では居宅介護事業で行えば足りるという理解不足もみられた。しかしながら、居宅介護の家事援助等においては調理や掃除等が優先され、指定の利用時間内では代筆・代読に十分な時間を割けないのが実情である。  視覚障害者の代筆・代読支援に関するニーズは高い。ただ、公的な代筆・代読支援についての視覚障害者の理解が十分でないため、「必要だ」との声が上がりにくい、あるいは諦めているなど、ニーズとして上がりにくい要因がいくつか考えられる。  視覚障害者への代筆・代読支援が福祉施策の中でどのように位置づけられているか、また、意思疎通支援事業における代筆・代読支援の必要性について更なる理解の促進が図られるべきである。その場合、視覚障害当事者にもそうした情報が適切に提供されるよう配慮することも必要である。  そうしたことからも視覚障害者のニーズの把握に当たっては、単に必要かどうかを尋ねるのでなく、代筆・代読支援がどのようなものなのか、適切な情報提供・説明を行いながら把握する必要がある。    (4)居宅介護事業・同行援護事業における代筆・代読支援の課題  同行援護事業及び居宅介護事業において、その支援の一部として代筆・代読支援が実施されていることは既に述べたが、その利用にはいくつか課題があることが分かった。それを整理し、意思疎通支援事業の代筆・代読支援が必要であることを改めて確認したい。 @支援対象者の範囲  障害福祉サービス等の対象者は、原則として、身体障害者手帳の交付を受けた者、あるいは、障害支援区分の認定を受けた者や同行援護アセスメント調査票による判定を受けた者であって、一定の基準に該当する者とされている。  そのため、見えにくさを抱える弱視(ロービジョン)の中には、居宅介護事業・同行援護事業の対象外と認定されてしまい、結果として代筆・代読支援を利用できない者がいる。  一方、自治体の創意工夫により利用者の状況に応じて柔軟に実施できる地域生活支援事業の一つである意思疎通支援事業では対象者を幅広く設定することができる。実際、支援の必要性で判断し、障害者手帳を所持していない弱視(ロービジョン)も対象に含めている自治体がある。 A障害程度による支援の制限  支援の対象者と認定された場合であっても、障害支援区分の認定や同行援護アセスメント調査票による判定の結果によって、支援を利用できる時間が違ってくるという実態がみられる。障害の程度が低めに評価されると利用時間が短くなる。  しかしながら、支援に必要な時間は全盲か弱視(ロービジョン)かによるとは限らない。むしろ、個々人の代筆・代読支援のニーズによるものといえる。  意思疎通支援事業は、定められた認定方法に基づくものではないため支援の時間を弾力的に設定することが可能である。 B居宅介護事業における代筆・代読支援の制約  上述のように、障害支援区分は、アセスメントによる評価を基に決定される。その判定において、身体障害者手帳(視覚障害)が1級または2級等の重度でも、支援区分が低く算定されてしまうことがあるため、居宅介護を受けられる視覚障害者が限られる。また、弱視(ロービジョン)は支援区分に該当しない。  そして、居宅介護を受けられたとしても、支援区分が低いため、支援の支給時間が少ないことも問題としてあげられる。視覚障害者にとっての居宅介護は、家事援助の中で行われており、調理・清掃・身辺整理・洗濯・買い物等が中心であり、指定の利用時間内で代筆・代読支援のために時間を確保することは実質的に難しく、そのニーズを満たすことができない実態がみられる。  代筆・代読支援のための時間を居宅介護の利用時間に加えて増やす自治体が、少数ながらあり、居宅介護事業を受けている視覚障害者にとってそれも一つの対応方法であるが、多くの視覚障害者が居宅介護を受けられないことを鑑みると代筆・代読支援を目的とする意思疎通支援事業を実施することがニーズに応える有効な方法といえる。 C同行援護事業における代筆・代読支援の制約  同行援護事業は、視覚障害者が安心して安全に外出するために重要な制度であり、多くの視覚障害者が利用している。この同行援護は、移動を支援するだけでなく外出先での情報の提供等も行うものとなっており、代筆・代読支援が可能である。ただ、あくまで外出先での代筆・代読支援が対象であり、居宅での支援は認められていない。  そのため、居宅介護事業や意思疎通支援事業を利用できない視覚障害者が郵便物等を外出先に持ち出して、同行援護事業を利用して代筆・代読支援を受けるという実態がみられる。  その場合、プライバシーにかかわる書類を扱うとなると個人情報の保護の面で不安がある。そもそも、自宅で代筆・代読支援を受けたいというニーズを満たすことにはならない。  また、外出する前後において家庭内で代筆・代読支援を受けたいというニーズに応えるためには、意思疎通支援事業と同行援護事業との組み合わせが求められる。 (5)ニーズに応える効果的な代筆・代読支援とするために必要な要素  意思疎通支援事業における代筆・代読支援についてもいくつか課題がみられた。視覚障害者のニーズに、より的確に対応するためにはその解決が求められる。 @代筆・代読支援で扱うものの範囲  ヒアリングの結果等では、意思疎通支援事業の代筆・代読支援で扱うものの範囲として、公的機関またはそれに準ずる機関からの郵送物、公的な行事や地域における各種行事への申込、買い物に関する折り込みチラシや電化製品等の取扱説明書といった、生活や社会参加に必要な最小限のものとしている自治体が比較的多くみられた。そのため政治活動、宗教活動、趣味・娯楽を対象外としているところも少なくない。  一方で視覚障害者のニーズとしては、趣味や教養に関する代筆・代読支援に対するニーズは高い。そうした要素も生活の質を高め、社会参加の幅を広げるためには必要といえる。自治体の中には代筆・代読支援で扱うものの範囲に特に制限を設けていないところもあった。今後、意思疎通支援事業の代筆・代読支援を広げていくためには、趣味や教養に関する代筆・代読支援にも範囲を広げることが有効である。  また、金銭管理にかかわるものについては代筆・代読支援者の責任が問われる可能性があることから慎重に扱うべきであるとの意見が少なくない。ただ、小額の振込用紙等の代筆・代読支援については視覚障害者のニーズが高い。どの範囲まで扱うのが適当か、その目安を示す必要はあるが、一律に制限するのではなく一定程度柔軟に考える必要がある。 A代筆・代読支援者の確保  意思疎通支援事業の代筆・代読支援の担い手をみると、同行援護事業所のガイドヘルパー、居宅介護事業所のホームヘルパー、自治体や団体が実施する代筆・代読支援従事者の養成研修の修了者、点訳や音声訳のボランティアなど、地域の様々な人材が支援に当たっている。つまり、既存の同行援護事業所、居宅介護事業所、社会福祉協議会、視聴覚障害者情報提供施設等が事業者として支援を担っている。  アンケート調査の結果では、代筆・代読支援者の確保が課題であるとの回答が多かったが、まずは既存の施設・団体の理解を得て担い手を確保することが考えられる。  あわせて、意思疎通支援事業の代筆・代読支援が継続的に事業として成り立つよう、一定の報酬単価の水準、あるいは報酬加算を求める声があったこと、居宅介護事業所・同行援護事業所が支援を担う際には、事務手続きに係る負担が大きくなるため、その簡素化やデジタル化による簡便化を求める声があったことを付記しておきたい。 (6)代筆・代読支援者の養成研修  ヒアリングの結果、代筆・代読支援者の養成研修がいくつかの地域で実施されていることが分かった。  研修の実施主体:養成研修は、自治体が視覚障害関係の施設・団体に委託または助成することで実施している場合と、施設・団体が独自に実施している場合がある。  研修のスケジュール設定:養成研修のスケジュール設定については、受講者が日程を確保しやすくなるように、1日(8時間)で実施する場合、代筆・代読の実習の時間を増やし、2日間(10時間または12時間)で行う場合がある。  研修の受講者:同行援護事業所・居宅介護事業所に所属するガイドヘルパーやホームヘルパー、社会福祉協議会や視聴覚障害者情報提供施設に登録するボランティア、そのほか視覚障害者の家族や一般の主婦・会社員等々幅広い人々が受講している。また、自治体の要請を受けて職員向けに研修を実施する場合もある。代筆・代読支援者の養成という範囲を超えて視覚障害者の情報保障にも寄与しているといえる。  代読の支援に当たっては、目の前の書類を単純に読めばいいというものではなく、必要な箇所がどこかを視覚障害者が判断できるようにするには工夫が必要である。代筆の時も、黙って書き込んだのでは視覚障害者が不安に感じる。何を書き込むかを説明しながら進めるなど様々な工夫が必要である。 研修カリキュラムの主な内容 1.講義形式の解説 ・視覚障害者にかかわる福祉制度 ・視覚障害者の現状(視力・視野・色覚、生活面の困りごとと工夫等) ・代筆・代読支援者の倫理(人格の尊重、信頼関係構築、プライバシー保護等) ・代筆・代読支援者の業務(読み書き・捺印、パソコンやスマートフォン利用における支援等) 2.実習:講義で取り上げた内容を確認しながら次のような方法・内容で実施 ・支援者役と視覚障害者役の両方を経験 ・備品の利用 ・必要となる基礎知識の確認 (7)意思疎通支援事業の代筆・代読支援を実施する自治体の拡大  意思疎通支援事業の代筆・代読支援を実施する自治体は少数にとどまっているが、未実施自治体が事業を開始するためには以下で示すことがヒントになると思われる。 @自治体が地域生活支援事業を行ったきっかけ  地域生活支援事業の意思疎通支援事業の代筆・代読支援を始めたきっかけとしては次のようなものがみられた。 ・意思疎通支援事業の具体例の1つに代筆・代読支援が含まれていた。  厚生労働省等の公的機関が発出する文書に代筆・代読支援が明記されていることの影響は軽視できない。  また、自治体が自ら策定した共生社会づくり条例や障害者の意思疎通に関する条例あるいは障害者福祉計画に視覚障害者への代筆・代読支援が明記され、それが根拠となったケースもある。 ・地域の視覚障害者団体等からの要望があった。  障害当事者が声を上げることの大切さがうかがえる。 ・他の地域で先駆的に行っている事例を参考にした。 A意思疎通支援事業の代筆・代読支援の実施に至らない理由  視覚障害者団体が意思疎通支援事業で代筆・代読支援を行ってほしい旨を要望しても、具体的にどれくらいのニーズがあるかを把握できないことや、県内の他の地域で実施していないので先行して実施することにためらいがあることが分かった。  障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するという障害者総合支援法の趣旨に照らせば、必ずしも量的なニーズの把握にこだわるのではなく、視覚障害者団体との意見交換等を参考にすべきである。 B意思疎通支援事業の予算  地域生活支援事業である意思疎通支援事業の実施には、予算確保の課題があることが分かった。市町村が地域生活支援事業を実施する場合、その費用のうち、国は100分の50以内、都道府県は100分の25以内を補助することができることとされている。つまり市区町村は25%を負担することとなる。  そうした予算的な事情の下で、市区町村が進めていく上で財源の確保が難しいという意見や、量的にニーズが多いと認められるものを優先して実施せざるを得ないという意見がある。予算がないことを理由に事業を実施しなくてもいいということでは決してないため、地域生活支援事業の必須事業を予算的な理由で実施できない自治体に対しては更なる予算措置が必要といえる。    (8)オンラインの活用  ヒアリングの結果からは、視覚障害者がパソコンやスマートフォンを活用して読み書きする場合にオンラインで代筆・代読支援を受けたいというニーズが多いことが分かった。  オンラインによる代筆・代読のリモート支援が行われれば、代筆・代読支援者が視覚障害者の自宅を訪問するための時間とコストを節約できる。  また、公共交通機関があまり利用できない地域において、あるいは冬期の積雪等による移動困難地域においても支援が可能となる。視覚障害者にとってもすぐに読んでほしいものや短時間で済むものを依頼しやすいという声があり、意思疎通支援事業の代筆・代読支援の在り方の一つとして検討する価値がある。なお、聴覚障害者の要約筆記等については、オンラインで行っている自治体があった。  一方、アンケート調査で意思疎通支援事業の代筆・代読支援を行っていると回答した自治体のうち、オンラインによる代筆・代読支援を行っているところはなかった。  ヒアリングの際、オンラインによる支援についてはいくつか課題の指摘があった。視覚障害者と代筆・代読支援者の双方が、パソコンやスマートフォンを持っていること、インターネットを利用できる環境にあること、活用のためのスキルを身につけていることが必須条件であり、それらを懸念する意見である。  また、代筆・代読支援を行ったあと、その実績記録書を作成するに当たって、慣習として利用者の押印が必要とされるが、オンラインによる支援の場合は捺印ができず、支援をおこなった証明が難しいのではないかとの声があった。これについては捺印を省略可能としているところもあったことからすると、必ずしも解決できない課題とはいえない。  そのほか、民間企業において、スマートフォンのアプリを利用して、オンラインでオペレーターとつながり、スマートフォンのカメラで映し出されるものをオペレーターが説明するというサービスを行っている企業がある。そのような取り組みを参考にしながら意思疎通支援事業においてもオンラインを活用した支援が行えないかを検討する必要がある。 第6章 提言 提言  視覚障害者が自ら意思決定し、日常生活を円滑に送り、社会参加するためには代筆・代読支援が重要である。そして、考察で示したとおり、障害福祉サービスの同行援護・居宅介護の代筆・代読支援だけでは十分に視覚障害者の代筆・代読に対するニーズを満たせてはいない。そこで、視覚障害者への代筆・代読支援が効果的に行われるためには地域生活支援事業における意思疎通支援事業の役割が大きい。  自治体が地域生活支援事業における意思疎通支援事業の代筆・代読支援を実施し、読み書きに困っている視覚障害者が代筆・代読支援を受けられる体制が構築されるよう提言する。 (1)意思疎通支援事業における代筆・代読支援の周知・徹底  地域生活支援事業の実施要綱においては、市町村必須事業が規定されており、意思疎通支援事業はその内の1つである。また、意思疎通支援事業では、障害特性に応じた様々な支援が想定されており、視覚障害の場合は「代筆、代読」等が明記されている。  市区町村が意思疎通支援事業で、代筆・代読支援を実施していない背景には、代筆・代読支援が必須事業の1つとして知られていないことが大きい。意思疎通支援事業が必須であり、その中に代筆・代読支援が含まれていることを周知・徹底することが必要である。 (2)視覚障害者のニーズの把握のための地域の視覚障害者団体等との連携  地域生活支援事業で行う事業は、必須事業と任意事業を合わせるとその数は多く、支援対象も多岐に渡る。そのため、市区町村が事業を実施する際は、地域に住む障害者のニーズが高く必要性に迫られているとの声が届いているものから優先的に実施している傾向がある。代筆・代読支援が多くの自治体で行われていない背景には、視覚障害者が代筆・代読支援を必要としているとの声が自治体に届いていないことが大きい。  代筆・代読支援を事業として実施させ改善を促していくには、視覚障害者の声は大切である。視覚障害者は、サービスを利用する立場であると同時に、事業の開始・改善を促す主体者として声を上げていく必要がある。  一方、自治体が地域に住む視覚障害者のニーズを把握する場合、障害者側から声が上がるのを待つだけでなく、地域にある視覚障害者の福祉団体や点字図書館等の支援団体との意見交換の場を設け、視覚障害者の代筆・代読支援のニーズを把握することが求められる。 (3)法制度における意思疎通支援事業の重要性の高まり  令和4年5月に「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」が公布・施行された。また、令和5年2月に開催された厚生労働省の社会保障審議会障害者部会において議論された、自治体が第7期障害福祉計画を策定する際の基本的な指針には、障害者等による情報の取得利用・意思疎通の推進が必要であり、障害特性に配慮した意思疎通支援や支援者の養成等の促進を図るための取り組みを実施することが必要であると明記された。法制度において代筆・代読支援を含めた意思疎通支援の重要性が近年ますます高まっている。  そのことからも、視覚障害者が情報を収集し、自ら意思決定できるよう、地域生活支援事業における意思疎通支援事業の代筆・代読支援を各地域において実施することが求められる。 (4)意思疎通支援に関する条例の制定  障害の有無にかかわらず、共に生きる社会を目指して、障害者の意思疎通が重要であることを踏まえ、意思疎通支援に関する条例を制定した自治体がある。また、その意思疎通支援条例において視覚障害者への代筆・代読支援を明記し、それに基づいて事業を開始した自治体があった。  条例の制定はゴールではなく、条例を踏まえ支援を充実する必要があることから、条例を制定している各市区町村においては、意思疎通支援事業を実施することが求められる。  また、条例が未制定の各市区町村においても、意思疎通支援に関する条例を定めることが求められる。 (5)意思疎通支援事業において代筆・代読支援を実施する意義  居宅介護や同行援護を行えば視覚障害者に対する代筆・代読支援は十分であるという解釈は誤った解釈であり、意思疎通支援事業における代筆・代読支援の実施が必要である。  居宅介護や同行援護の中でも代筆・代読支援が行われているものの、それらの事業では代筆・代読支援が主たる要素ではなく、あくまで家事援助や移動の支援がメインであり代筆・代読の支援は副次的である。また、障害支援区分や同行援護アセスメントの認定が必要であり、読み書きに困っているすべての視覚障害者がその支援を受けられるわけではない。  それに対し、地域生活支援事業では、対象者や実施内容は自治体の裁量に任されており、地域の実情や利用者のニーズをもとに柔軟に制度設計し、代筆・代読支援に特化して実施できるため、読み書きに困っている視覚障害者を代筆・代読支援の利用対象者とすることができる。  そのため、読み書きに困っているすべての視覚障害者を支援するには、意思疎通支援事業における代筆・代読支援の実施が重要である 。 (6)居宅介護・同行援護と意思疎通支援の連続した実施  居宅介護の家事援助において、代筆・代読支援が行われているが、調理、清掃、洗濯、買い物等が中心であるため、指定の時間内で代筆・代読支援を行うことは難しい。  また、同行援護は外出支援であるため、居宅内では代筆・代読支援は行えず、郵便物等を持ち出して、外出先で代筆・代読支援を受けるという場合が少なからずみられるが、個人情報の保護の面から不安がある。  そうした実情があるため、居宅介護事業や同行援護事業と組み合わせる形で連続して意思疎通支援事業の代筆・代読の支援を受けたいという視覚障害者のニーズが高い。  一方、居宅介護事業所及び同行援護事業所からは、代筆・代読支援は1回あたり短時間で終わることが多いため、その支援だけを単独で行うことは運営上難しく、居宅介護や同行援護と連続する形で意思疎通支援事業の代筆・代読支援を実施することが求められている。 (7)代筆・代読支援に関する柔軟な制度設計  晴眼の同居者がいれば代筆・代読支援が必要ないという解釈は誤りであり、晴眼者と同居している場合は支援の対象外とする制度設計は望ましくない。  また、代筆・代読支援が必要な分野は個々人によって多様である。公序良俗に反するなど社会通念上不適当なものを対象外にするといった一定の制約はやむを得ないとしても、趣味・教養等は対象にするなど柔軟な制度設計が求められる。  更に、近年はパソコンやスマートフォンを利用する視覚障害者が増えているが、その画面表示を把握できないため読んでもらいたいとのニーズが高まっている。紙媒体の代筆・代読に限らずデジタル媒体での支援も必要である。  以上のような実態を踏まえて、意思疎通支援事業における代筆・代読支援の制度設計に当たっては柔軟性と継続性を踏まえた運営とすることが求められる。事業運営の面では、継続的に事業が成り立つよう、一定の報酬単価を確保することが求められる。 (8)オンラインを活用した代筆・代読支援の実施  意思疎通支援事業の代筆・代読支援を効果的に実施するには、オンラインでの代筆・代読が有効な手段である。視覚障害者にとっては短時間の代筆・代読でも頼みやすいこと、支援者にとっては移動にかかる時間と費用の削減が期待される。  オンラインで代筆・代読支援が行われるためには、視覚障害者と代筆・代読支援者の双方がパソコンやスマートフォンを持っていること。インターネットを利用できる環境にあり、双方が活用のための一定のスキルを身につけていることが挙げられる。  パソコンやスマートフォンが視覚障害者にも利用しやすいものとするとともに、操作方法を学べる環境を整えることが求められる。 (9)代筆・代読支援の拡充  現在、代筆・代読支援は、制度上、自立支援給付である居宅介護と同行援護、地域生活支援事業である意思疎通支援事業において実施されている。  量的確保という視点で考えると、全国に事業所がある居宅介護と同行援護において代筆・代読支援が実施される必要があるが、調査の結果を踏まえると、通常の家事援助や移動支援に加え、代筆・代読支援を行うことの負担に鑑み、その負担に見合った報酬について検討すべきである。  そうすることで、各地の事業所のホームヘルパーやガイドヘルパーなどに理解が広がり、代筆・代読支援の担い手を確保することが可能となる。  さらに、前述のとおり、読み書きの支援を求めている全ての視覚障害者のニーズを踏まえ、全国の自治体において、意思疎通支援事業として代筆・代読支援が実施されることが必要である。 第7章 ガイドライン・リーフレット 視覚障害者向け代筆・代読支援ガイドライン 社会福祉法人日本視覚障害者団体連合 令和5年3月 1.はじめに  このガイドラインは、厚生労働省令和4年度障害者総合福祉推進事業として実施した「視覚障害者の代筆・代読の効果的な支援方法に関する調査」で得られた結果を基に作成しました。 (1)ガイドラインの目的  このガイドラインは、福祉制度を担当する自治体の方、代筆・代読支援を実施する事業者の方、また、視覚障害当事者の皆さんに次のことをお伝えする目的で作成しました。 @代筆・代読支援が視覚障害者の日常生活や社会参加にとって重要な支援であること A代筆・代読支援が効果的に行われるためにニーズの把握が必要なこと B実際に代筆・代読支援が行われるようにするための制度設計や支援者養成研修の在り方   代筆・代読支援が更に広がり、効果的に実施されるための参考資料としてこのガイドラインを活用していただければ幸いです。 (2)代筆・代読支援の意義・必要性  日常生活や社会参加のためには様々な意思決定が必要になります。そのためには必要と思われる情報を取得し、それを取捨選択しなければなりません。 しかし、多くの情報が視覚的に得られるようになっているため、視覚障害者には大きなハンディキャップがあります。また、自らの意思決定を表示するためには書類等に記入する機会も多くありますが、これにも困難が伴います。 つまり、視覚障害者の日常生活や社会参加にとって代筆・代読支援はとても重要な要素です。  近年は視覚障害者の読み書きを支援するICT機器やソフトウェアの開発が進んできていますが、それらを駆使したとしても、日常生活に必要な様々な文書を効率的に読むのは大変な作業です。 また、書式が印刷された用紙に記入することも難しい作業です。代筆・代読を支援してもらえるととても助かります。  また、晴眼者と同居している視覚障害者は、その同居者に手助けしてもらえるかもしれませんが、遠慮があったり時間が合わなかったりすることはよくあります。 たとえ家族であっても、個人的な内容を知られたくないということもあります。そして、一人暮らしの視覚障害者は手助けしてもらうこと自体が思うようにできません。  代筆・代読支援は、視覚障害者の日常生活や社会参加にとって重要な支援になっています。 また、代筆・代読支援を行う上でニーズを把握することが重要です。全盲の方だけでなく、弱視(ロービジョン)の方にとっても読み書きは大変なので、地域の視覚障害者のニーズを的確に把握して、代筆・代読支援が効果的に実施されるよう、自治体において制度設計を行う必要があります。事業開始後に内容改善することも重要です。  一方、代筆・代読の支援方法を理解することも大切です。目の前の書類を単純に読めばいいというものではありません。 必要な箇所がどこかを視覚障害者が判断できるようにするには工夫が必要です。代筆の時も、黙って書き込んだのでは視覚障害者が不安に感じます。何を書き込むかを説明しながら進める必要があります。 また、代筆・代読支援で出来ること・出来ないことを視覚障害者と支援者の双方が知っておく必要もあります。    (3)代筆・代読支援に関する最近の動向  代筆・代読支援を含めた意思疎通支援の重要性は近年ますます高まっており、新たな法律の施行等が行われており、主に次のものが挙げられます。 @第208回通常国会において「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律(以下、障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法)が成立し、2022年(令和4年)5月25日に施行されました。同法では、全ての障害者が、あらゆる分野の活動に参加するためには、情報の十分な取得利用・円滑な意思疎通が極めて重要であり、日常生活・社会生活を営んでいる地域にかかわらず等しく情報取得等ができるようにすることとされています。 A「障害者総合支援法改正法施行後3年の見直しについて〜社会保障審議会障害者部会報告書〜」が2022年(令和4年)6月13日に出され、その中で代筆・代読に関する効果的な支援に資するための調査研究を実施し、必要な支援が提供されるような運用の見直しについて検討する必要があるということが盛り込まれています。 B2023年(令和5年)2月27日に厚生労働省の社会保障審議会障害者部会(第135回)が開かれ、「障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針」改正後全文が出されました。 この指針において、令和6年度から令和8年度までの第7期障害福祉計画及び第3期障害児福祉計画の作成または変更に当たって即すべき事項を定められています。  その中で、第7期障害福祉計画において、障害者等による情報の取得利用・意思疎通の推進の取り組みが必要であると示されました。都道府県・市区町村において、障害特性に配慮した意思疎通支援や支援者の養成等の促進を図るため、次のような取り組みを実施することが必要であると明記されました。 ○障害特性に配慮した意思疎通支援(手話通訳、要約筆記、代筆・代読、触手話や指点字等 )のニーズを把握するための調査等 ○ニーズに対応した支援を実施するために必要な意思疎通支援者の養成 ○意思疎通支援者の派遣及び設置を実施するための体制づくり(都道府県による広域派遣や派遣調整等を含む) ○遠隔地や緊急時等に対応するためのICT機器等の利活用 C障害者がそれぞれの障害の特性に応じた意思疎通手段により情報を取得し、円滑に意思疎通ができる環境づくりを推進していくため、条例を定めた自治体があります。 「多様な意思疎通の促進に関する条例」、「障害者の意思疎通に関する条例」等の条例を定め、視覚障害者が日常生活又は社会生活を営む上で代筆・代読支援が必要だと明記されています。 条例が制定されたことにより意思疎通支援事業の代筆・代読支援を実施したという自治体もあります。 2.視覚障害者の困りごとと支援の必要性  厚生労働省の2018年度(平成30年度)障害者総合福祉推進事業として日本視覚障害者団体連合が行ったアンケート調査によると、479人の回答者の中で全盲の人の約9割、弱視(ロービジョン)の人の約8割が読み書きに困ると回答しています。  困りごとの具体例として、たとえば次のようなことがあります。 ○自宅に届いた郵便物を確認できない。また、書類に記入して返信しなければならない場合、その記入ができない。 ○請求書、領収証、レシートを確認できない。  生活を営む上で金銭の管理は不可欠。  レシートが割引券を兼ねている場合があるが分からない。 ○回覧板を読むことができない。 ○広告の特売品を知りたいがチラシなどを読めない。 ○イベントや催し物の内容がわからないので申し込めない。 ○薬や家電製品等の説明書及び注意書きが読めない。 ○子どもが通う保育園や学校からの便りやお知らせが読めない。  書類に記入して返す必要があっても対応できない。 ○健康診断や病院受診の際の問診票が書けない。 ○年末調整や確定申告等の税金にまつわる書類を書けない。 ○アンケートに回答したいと思ってもその読み書きができない。 ○たまった書類の仕分け(要るものと不要なものの整理)ができない。  全盲の人だけでなく、多くの弱視(ロービジョン)の人も困っています。 ○一般的に普及している大きさの文字を読むことができない。 ○拡大読書器やルーペを使用しても文章の全体把握が困難。  時間もかかる。 ○拡大読書器やルーペを使用して読むことは疲れる。 ○各種の契約書類を自筆で書くことが困難。記入欄の罫線や枠が見にくいなど、どこに記入したらいいか分からない。  細かくみれば更にいろいろな困りごとがありますが、いずれも生活を維持し社会参加を実現する上で解決しなければならない課題です。代筆・代読支援によってそれらを解決することが不可欠です。  また、紙に書かれたもののほか、パソコンやスマートフォンでオンラインの手続きをする場合、スクリーンリーダー(画面読み上げソフトウェア)で読み上げない場面があって困るという話も聞きます。  社会全体のデジタル化の中で、オンラインショッピングやネットバンキングもそうですが、いろいろな行政手続きもオンライン化が増えつつあります。  視覚に障害があっても支障なくオンラインの手続きが行えるようになっていることが理想ですが、現実はそうなっていません。代筆・代読支援が不可欠です。    3.代筆・代読支援の基本  ここでは代筆・代読支援の際に心がけてほしいこと、効果的な支援を行う上で留意してほしいことなどを記します。 (1)支援の際に心がけてほしいこと A.視覚障害についての理解  視覚障害というと全く見えない状態(全盲)をイメージしがちかもしれませんが、弱視(ロービジョン)の状態の人も多くいます。  見え方も様々です。光の認識も難しい、明るいか暗いかが分かる、目の前の手の動きや指の数が分かる、拡大すれば墨字(点字ではない一般の文字)を読める、視野が狭く見たいものを見ることができない、色の識別が難しい等々。  見え方によって効果的な対応方法が違ってきます。音声で伝えることが中心になりますが、弱視の人には大きな文字でメモを書いて示すことが有効な場合もあります。  また、デジタル化に伴うオンラインの手続きを支援するためには、パソコンやスマートフォンの基礎知識に加えて、視覚障害者のICT活用に関する基本的な知識・理解が必要になります。 B.自己決定の尊重  代読の際は、何を読むか、どの部分を読むかを障害者本人に確認して判断してもらうようにします。  代筆に当たっては、障害者本人が自署を希望する場合があるので意向を確かめた上で行います。 自署できるかどうかは、見え方だけに左右されるものではありません。全盲の人でも署名欄がわかれば自署できる場合がありますし、弱視の人でも自署が難しい場合があります。 C.個人情報の取扱い  代筆・代読支援では個人情報を扱うことが少なくありません。知り得た個人情報を他の人に伝えることがあってはなりません。守秘義務を厳守します。  個人情報は、氏名・性別・生年月日・住所・年齢・職業・続柄等のほか、個人の身体・財産・職種・肩書き等の属性に関する判断や評価を表す全ての情報をいいます。  また、代筆の際に必要となる個人情報は、本人に提供してもらうようにします。家族等から情報を提供してもらう必要がある場合でも、本人の意向を確認した上で行います。 D.人格の尊重と信頼関係  支援の際は障害者本人の人格の尊重を忘れないようにします。たとえば、慣れ親しんできたとしても「○○ちゃん」と呼んだり、子ども扱いするような言い方は慎みましょう。  家庭を訪問する場合、障害者本人はもとより、同居者がいる場合はその人たちとも信頼関係を築くことが大切です。適切な挨拶やコミュニケーションを心がけましょう。 E.福祉制度などやその手続きに関する基礎的理解  役所から送られてくる書類を適切に伝え、また、必要に応じて代筆する場合、その内容を理解しているかどうかは、無駄なく支援できるかどうかに大きくかかわってきます。  内容を理解できれば、そのあらましを説明して障害者本人が読むべき箇所を判断する手助けができますが、内容が分からないまま読もうとすると、単純に冒頭から読み進めようとしがちで時間がかかってしまいます。  その意味で、年金や福祉サービスに関する基礎的な知識、あるいは医療や税金などについても常識的な範囲の知識を持っておくことが大事です。    (2)効率的な代読支援  郵便物は、差出人によって中身を読む必要があるかどうか判断できる場合があります。まず、どこから来た郵便物かを伝え、中身を読むかどうかを障害者本人に確認します。  郵便物の中身などの書類を読む場合、単純に冒頭から読み始めるよりも、見出しなどを手がかりにして全体として何が書かれているかを伝え、どの箇所を読み上げたらいいか、障害者本人に確認しながら読み進めます。そうすることにより、例えば定型的な挨拶文等をスキップして効率的に読み進めることができます。  ただし、勝手に判断するのではなく、障害者本人の判断を確認しながら進めることが大切です。    (3)正確な読み書きと配慮  代筆・代読支援では、正確な読み書きが求められます。必要に応じて辞書で確認するなどが有効です。書籍としての辞書以外にスマートフォンで調べることもできます。持ち運びに便利です。  代筆に当たっては、間違いのないようにするため、メモ用紙等に下書きをしてから正式な書類に書くようにすることも有効です。また、書いた後に確認することも重要です。メモ書きは、個人情報保護の観点から適切に破棄します。  代筆する内容については、逐次、障害者本人に確認しながら行いましょう。正確に行うという意味もありますが、沈黙していると障害者側が不安に感じます。  なお、代わりに捺印する場合、何のための捺印を行うのかを説明しながら行うようにします。    (4)文字の大きさや種類、写真や図表等の説明  字面を追って読むだけでなく、場合によっては大きな文字で書かれていることや太字で書かれていることを説明すると、文書の意図が伝わりやすくなります。  写真やイラスト、あるいは図表についても説明が求められる場合があります。そうした文字以外の説明にも一定程度慣れておく必要があります。    (5)視覚障害者に提供するメモ書き  買い物した食品の消費期限や賞味期限などは、視覚障害者が読める点字や拡大文字でメモしておくと便利です。  支援者が読み上げて視覚障害者が点字でメモする、あるいは、支援者が点字を書ける場合は点字のメモを作成することで便利になります。 更に最近では、ICチップや専用のシートなどに音声を吹き込み、専用の機器で音声を確認できる装置も出ています。それらICチップやシートを紙パックなどに貼り付けておくと識別しやすくなります。 紙パックの牛乳やジュースなどはパックを触っただけでは識別できませんから便利になります。  弱視の人向けにメモを書く場合は、人によって読みやすい文字の大きさや色が違いますので、どのようにしたらいいかを障害者本人に確認するようにします。    (6)支援者の装備品  筆記用具としては鉛筆、ボールペンのほか、冠婚葬祭にかかわる代筆に当たって筆ペンがあると便利なことがあります。  健康診断の問診票などは、ボールペンでなく鉛筆で書くよう求めるものがあります。修正液、修正ペン、消しゴムもあると便利です。  また、メモ用紙があると下書きなどで用いることができます。  眼鏡がないと代筆が難しい場合は、必ず持っていきましょう。  定規、スケール、辞書やスマートフォンに入っているアプリなども役立ちます。 4.福祉施策における代筆・代読支援に関する制度と課題  代筆・代読支援は、障害者総合支援法に基づく以下のサービスとして実施することが可能です。 @意思疎通支援事業(地域生活支援事業) A居宅介護事業(個別給付事業)※家事援助 B同行援護事業(個別給付事業)  以下では意思疎通支援事業を中心に、代筆・代読支援がどのように実施されているかなどを記します。 (1)意思疎通支援事業における代筆・代読支援  地域生活支援事業の意思疎通支援事業は必須事業です。代筆・代読支援は、この意思疎通支援事業の一つに位置づけられています。他に手話通訳、要約筆記などが挙げられています。  市町村の創意工夫により利用者の状況に応じて柔軟に実施することが可能であり、自治体が実施要領を定めて行います。 A.支援の対象者  身体障害者手帳(視覚障害)を所持している人を対象としている自治体がある一方で、手帳を所持していない人でも見えにくさを抱える人を対象としている自治体があります。その場合、医師の判断や診断書等をもとに支援が必要か判断する必要があります。  意思疎通支援では、自治体が柔軟に対象者を定めることができるため、弱視なので読み書きに困っているが、障害支援区分が低いため、居宅介護(家事援助)や同行援護が受けられない人達を対象にして支援することが可能です。そのため、様々な見えにくさを抱える人のQOL(生活の質)を維持するという意味では、多くの代筆・代読に関するニーズに対応できる意思疎通支援事業の実施が望まれています。 B.代筆・代読支援を担う事業所・支援者  事業所として想定されるのは、同行援護事業所、居宅介護事業所、社会福祉協議会、視聴覚障害者情報提供施設等です。  支援者としては、ガイドヘルパーやホームヘルパーの養成研修を受講した人、また、代筆・代読支援従事者養成研修を行っているところではその修了者が担い手になっています。 C.代筆・代読支援の時間 ○1回あたりの支援時間:上限0.5時間〜2時間 ○1ヶ月あたりの支援時間:上限5時間〜12時間  ただし、1ヶ月あたりの上限を設けず、支援計画によるという自治体もあります。 D.支援に関する報酬単価  代筆・代読支援に関する報酬単価は様々ですが、同じ意思疎通支援事業に含まれる手話通訳や要約筆記の報酬単価と横並びで設定している自治体が比較的多いようです。そのほか、それらを参考にしつつも独自に定めているところもあります。  いくつか具体例を挙げると次のとおり。 ○1時間当たりで設定している場合:2,000円、1,500円(交通費は別途支給)など。 ○0.5時間及び1時間当たりで設定している場合:約800円・1,500円、約1,000円・2,000円など。  その他、時間に関係なく1回当たり1,800円と定めている自治体もあります。    (2)居宅介護事業及び同行援護事業における代筆・代読支援 A.居宅介護事業における代筆・代読支援  居宅介護事業は、障害者個々人の障害状況に応じて給付が行われる個別給付事業の一つです。居宅において入浴、排せつ及び食事等の介護、調理、洗濯及び掃除等の家事並びに生活等に関する相談及び助言その他の生活全般にわたる援助を行いますが、その中に代筆・代読支援も含まれています。  ただ、居宅介護(家事援助)においては調理・洗濯・掃除等が優先され、指定の利用時間内では代筆・代読に十分な時間を割けないのが実情です。  また、支援の担い手であるホームヘルパーの研修において、視覚障害者のための代筆・代読支援が十分に取り上げられていないといった課題があります。  代筆・代読支援に時間を割けないという課題に対しては、居宅介護の枠内においてその支援の時間を増やして対応している自治体があります。既支給決定時間に加えて、代筆・代読支援にかかる時間を上乗せする形です。 B.同行援護事業における代筆・代読支援  同行援護事業は、障害者個々人の障害状況に応じて給付が行われる個別給付事業の一つです。視覚障害により移動に困難を有する障害者に対し、外出時に同行し、移動に必要な情報を提供するとともに、移動の援護その他について外出時の必要な援助を行うものです。移動を支援するだけでなく情報の提供等も行うこととされており、代筆・代読支援もその中に含まれています。  ただし、同行援護事業は外出時の支援であるため、居宅で代筆・代読の支援を行うことは認められていません。代筆・代読支援を実施できるのは外出先ということになります。  外出先に郵便物等の書類を持ち出して読み上げてもらう場合、個人情報の保護に不安があります。  また、居宅介護事業の場合と同じように、支援の担い手であるガイドヘルパーの研修において、代筆・代読支援が必ずしも十分でないといった課題があります。    5.代筆・代読支援者の養成研修  代筆・代読支援者の養成研修は、神奈川県視覚障害者福祉協会が先駆的に実施しました。また、そのカリキュラムを参考にして他の地域で実施されている例があります。  内容を大枠で分類すると、視覚障害や福祉制度等について解説する講義形式の部分と、実際に支援を行う場を設定して代筆・代読支援を経験してもらう実習の二つがあります。  実習は2人・1組になり、1人が支援者役、もう1人はアイマスクをして視覚障害者役になって行い、交代してそれぞれを経験する形で行うことが多いようです。  研修の日程としては、受講希望者の参加しやすさに配慮して1日で行うケース、実習に時間をかける形で2日間行うケースの2パターンがあります。  参考まで、以下に養成研修カリキュラムの主な項目を列記します。 (1)講義形式の解説 @視覚障害者にかかわる福祉制度  ○意思疎通支援事業  ○地域生活支援事業における他の支援事業  ○福祉制度にかかわる法律  ○障害者手帳、支援区分、障害年金 A視覚障害者の現状  ○視力、視野、色覚  ○視覚障害にかかわる疾患  ○視覚障害者の障害程度別・年齢階層別の状況  ○生活面の困りごとと工夫 B代筆・代読支援従事者の倫理  ○意思決定支援が必要な場面  ○意思決定支援の基本的原則  ○人格の尊重、挨拶、信頼関係構築、プライバシー保護 C代筆・代読支援従事者の業務  ○前提としての福祉制度や金銭管理にかかわる基礎的知識  ○書類の読み上げ  ○代筆・自署・捺印  ○パソコン・スマートフォン利用における支援  ○従事者が持っていると便利な備品  ○視覚障害者が識別できるマークが付いている物品に関する知識 (2)実習部分  実習は講義で取り上げた内容を確認しながら次のような方法で実施。 @支援者役と視覚障害者役の両方を経験 A代筆・代読の実習 B備品の利用 C必要となる基礎知識の確認    6.おわりに  これまで述べてきたように、視覚障害者は読み書きに関して様々な困りごとを抱えています。そして、それらを解決することはQOL(生活の質)を維持・向上させ、社会参加を実現する上で不可欠です。  代筆・代読支援は、それら困りごとを解決する有効な手段です。是非多くの自治体及び事業所の方々に取り組んでいただき、制度的基板に支えられる形で代筆・代読支援が行われるようにしていただきたいと思います。  また、視覚障害当事者の方々には読み書きにかかわる困りごとについて諦めずに、支援が必要であると声を上げてほしいと思います。そうすることが自らの可能性を広げることにつながります。  そうした関係各位の取り組みに、このガイドラインが参考になれば幸甚です。是非ご活用下さい。  最後に、このガイドラインの作成に当たって、「視覚障害者の代筆・代読の効果的な支援方法に関する調査研究」の検討委員会の方々、アンケート調査にご協力いただいた自治体並びに事業所の方々、ご意見をお聞かせいただいた視覚障害当事者の方々に多くのご協力をいただきました。深く感謝申し上げます。 《日本視覚障害者団体連合》 (表紙) 厚生労働省令和4年度障害者総合福祉推進事業 視覚障害者への代筆・代読支援 厚生労働省令和4年度障害者総合福祉推進事業  このリーフレットは、厚生労働省令和4年度障害者総合福祉推進事業の「視覚障害者の代筆・代読の効果的な支援方法に関する調査研究」の結果を元に、各自治体において視覚障害者への代筆・代読支援の普及を図り、代筆・代読支援が効果的に行われることを目的に作成したものです。 ※本事業の報告書は、本連合のホームページ(http://nichimou.org/)に掲載されています。 (見開き左) 自治体の皆様へ 視覚障害者の日常生活における読み書きを支援するため、代筆・代読支援を実施していますか? 意思疎通支援事業の代筆・代読支援の実施を求める視覚障害者の声 〇居宅介護(家事援助)において代筆・代読支援を受けることができるが、調理や掃除を優先してお願いするので代筆・代読をしてもらう時間がない。 〇同行援護では、外出先での代筆・代読支援なので、手紙や資料等を代筆・代読してもらうには個人情報が洩れる可能性があるので心配。 〇家族がいれば、家族に代筆・代読してもらえるが、いない時が多い。また、たとえ家族でもあっても個人的な情報を読んでもらうことにためらいがある。 〇拡大読書器やルーペ等を使用して、読み書きしているが、全体や必要な部分を把握するのに時間がかかり難しい。また、眼が疲れる。 〇弱視なので読み書きに困っているが、障害支援区分が低いため、居宅介護(家事援助)の制度で代筆・代読が受けられない。 〇移動すること自体が大変なので、できることなら自宅で代筆・代読支援を受けたい。 地域の視覚障害者のニーズを把握してください!! 障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法が令和4年5 月25 日に公布・施行されました! 全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的として、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策を総合的に推進することが明記されています。 視覚障害者にとって、代筆・代読により情報の取得・発信・意思疎通支援の重要性が法制度の上でも増しています。 https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/jouhousyutoku/pdf/jouhou_gaiyo.pdf (見開き右) 意思疎通支援事業の代筆・代読支援の実施のお願い  視覚障害者にとって代筆・代読支援を受けることは社会参加する上で必要不可欠です。居宅介護や同行援護においても、代筆・代読支援を受けることは可能ですが、障害支援区分等の条件があります。  しかし、地域生活支援事業の意思疎通支援事業として実施する場合には、地域の実状に応じて、見えない・見えにくいことで読み書きに困っている人の支援を行うことができます。  ぜひ、意思疎通支援事業での代筆・代読支援の実施をお願いします。 POINT 市区町村で行う地域生活支援事業の中で、意思疎通支援事業は「必須事業」に位置付けられています。また、手話通訳者、要約筆記者、代筆・代読等の意思疎通を支援する者の派遣等を行うことが明記されています。 POINT  既に、意思疎通支援で代筆・代読支援をおこなっている自治体では、視覚障害者団体等との協議を重ねて、地域の特性や利用者の状況に合わせながら柔軟に実施されています。また、同時に実績や利用者のニーズを把握しながら、利用時間や範囲等を増やす等の制度をブラッシュアップする取り組みも行われています。まずは始めることが重要です。 POINT  弱視(ロービジョン)の方も、読み書きに困っています。ほとんどの文字が小さい、罫線や枠などが薄い等の理由で自分だけでは読み書きが難しく、代筆・代読支援を求めています。 POINT  ガイドヘルパー、ホームヘルパー、自治体や団体が実施する代筆・代読支援従事者養成研修の修了者等が代筆・代読支援にあたっています。 自治体の実施例等の詳細はホームページに公開されている報告書を御覧ください。 (裏表紙) 視覚障害者は読み書きで困っています!! 国連の権利条約や障害者差別解消法においても障害者が自ら意思決定することが重要だとされています。そのため、視覚障害者が困っている読み書きの支援が不可欠です。 □ どこからの郵便物なのかわからない、郵便物が読めない □ どれが重要な書類なのかわからない □ 回覧板の内容が読めない □ イベントや催し物の内容がわからないので申し込めない □ 薬や家電製品等の説明書及び注意書きが読めない □ 子どもが通う学校からの便りやお知らせが読めない □ 子どもの習い事の申請が難しい □ レシートが整理できない □ スーパー等の広告やチラシがわからない □ 病院の問診票が書けない □ 自治体の申請・届け出書類が書けない 意思疎通支援の代筆・代読支援の他に、同行援護(外出時の支援)、居宅介護(家事援助の一環)で代筆・代読の支援が行われています。 発行 令和5年(2023 年)3月 社会福祉法人日本視覚障害者団体連合 住所 〒169−8664 東京都新宿区西早稲田2−18―2 電話 03-3200-6169 ファックス 03-3200-7755 ホームページ:http://nichimou.org/ 奥付 視覚障害者の代筆・代読の効果的な 支援方法に関する調査研究事業 ― 報告書 ― 【発 行】2023年(令和5年)3月  社会福祉法人日本視覚障害者団体連合  〒169−8664 東京都新宿区西早稲田2−18−2  TEL 03−3200−6169  FAX 03−3200−7755