(講演要旨) 第2回点字考案200年記念事業「記念講演会&シンポジウム」 米国における点字製作の最新事情:デジタル時代の点字 2022年12月10日 フレドリック・K・シュローダー博士 点字は、活字に匹敵する唯一の完全な双方向型識字媒体である。 19世紀における米国の点字は統一されておらず、「ニューヨーク・ポイント」と「アメリカン・ブレイル」の2つが主流だった。 1930年代初め、米国議会図書館が標準英語点字2級を採用したことで、米国ではこの点字が唯一の点字コードとして認知されるようになった。 米国の主な点字製作会社は次の通りである。 APH(アメリカン・プリンティング・ハウス・フォー・ザ・ブラインド)、 クローバーヌーク・センター点字印刷所、および NBP(ナショナル・ブレイル・プレス)などがある。 現在、点字印刷物の製作と流通は減少し、点字電子データの流通が増加している。 今年初め、NLS(連邦議会図書館・視覚障害者及び印刷物利用障害者のための全国図書館サービス)は、「点字オンデマンド」サービスを開始した。利用者が点字の本をリクエストすると、点字用紙に印刷して本人に郵送される。 インターネットの普及と点字端末の登場により、情報へのアクセスは飛躍的に拡大した。NLSでは、利用者が希望すれば、点字端末を無料で提供している。 そして、マラケシュ条約がある。この条約には2つの主要な条項がある。1つは、視覚障害者のための本をもっと作るよう各国に求めること、もう1つは、加盟国が、アクセシブルな書籍を利用することを互いに承認するというものである。 マラケシュ条約により、図書館はすでに点字の電子データを他の図書館と共有し始めている。しかし、発展途上国では視覚障害者が利用できる図書館を持たないため、図書館相互の資料交換の恩恵を受けられないでいる。私たちは、画一的な配布システムにより、最も困窮している視覚障害者が点字にふれる機会から排除されることを許してはならない。