19条連絡会ニュース 10その1 発行日:2021年8月10日 発行:あん摩師等法19条連絡会    〒169-8664 東京都新宿区西早稲田2-18-2 日本視覚障害者センター内     電話:03-3200-0011(代表) FAX:03-3200-7755 発行責任者:竹下義樹 (幹事会の開催後に発行) (本号の担当:日視連) 戦いは終盤だが問われているのは今後である あん摩師等法19条連絡会 会長 竹下義樹  平成医療学園グループが、提起したあんま師等法19条訴訟は、いよいよ最高裁での戦いに入りました。昨年12月には、東京高裁及び仙台高裁で国が勝訴し、平成医療学園は上告しましたが、本年2月に大阪高裁で言い渡された判決においても国が勝訴したため、平成医療学園は当然のごとく上告しました。  同種の事件とはいえ、訴訟が別々に提起され、別々の高裁で判決が言い渡された場合は、最高裁での審理や判決も個別に行われることが多いのですが、本件では全ての訴訟において、最高裁第二小法廷が審理を担当し、同時に判決を言い渡すものと思います。最高裁があんま師等法19条を憲法22条違反であると判断する場合は、大法廷に回付ことになると思います。しかし、本件ではこれまでの下級審の判決と同様に、最高裁においても我々の訴えが受け入れられ、国が勝訴するものと確信しています。だからと言って、最高裁での勝訴判決を座して待つわけにはいきません。これまでと同様に最高裁に対して、我々の声を届けるための活動(署名や要請ハガキの提出あるいは街頭宣伝)を続けることが必要です。最高裁ではほとんどの場合、法廷(口頭弁論期日)は開かれませんので、我々の声を黙々と書記官室に届けることになります。  私は、最高裁でも勝訴すると確信していますが、問われるのはそれ以後の戦いだと思っています。  1 平成医療学園(岸野理事長)は、最高裁判決を踏まえて「あはきの将来における進歩・発展にとってこれでよいのか」という主張を与党にはたらきかける可能性があります。そして、あんま師等法19条が制定されてから57年が経過していることをとらえて、法改正に持ち込む可能性があります。その場合、業界がどのような動きになるかも懸念されます。この点では、業界は一枚岩とは言えません。それだけに最高裁判決以後の我々の動きが問われることになります。現時点で、そのことをみんなで考え、将来に備えることが必要です。  2 他方、私達はあんま師等法19条に頼り切っていてよいのでしょうか。また、あんま師等法19条を死守しているだけで、視覚障害者にとっての未来は約束されているのでしょうか。私達自身にとってもそうですが、これからあはき師を目指す(あるいは目指してほしい)視覚障害者に、あはきの将来性や魅力を実感していただくための取り組みこそが問われているのではないのでしょうか。そのことも併せて考えないと、あんま師等法19条はどんどん形骸化していくのはないでしょうか。 ■ 19条連絡会第21回幹事会議事要旨 ■ 日 時:令和3年7月17日(土)     10時30分〜11時30分 場 所:日本視覚障害者センター 2階研修室、オンライン(Zoom) 1.出席者の確認 出席者(敬称略)   日 視 連 竹下、小川、須藤、三宅、逢坂、小柴   日 マ 会 安田、野本   理 教 連 工藤、本田、川又   全 視 協 山城、東郷、藤野、生田目、稲垣、滝   全鍼師会 仲澤、佐々木   関東協議会 鈴木   東北協議会 及川   近畿協議会 辰巳 2.会長挨拶  東京と仙台の訴訟は最高裁第二小法廷で審理される。大阪の訴訟も含めて3裁判を一人の調査官が担当し、統一的な判断がされるものと思われる。最高裁は書面審理のため、弁論は開かれないので、判決までの取組みが課題である。  平成医療学園は、憲法判断を最高裁にさせたことで、政治的な動きに結びつけようとする可能性がある。  最高裁の判決後の対策についても、今後、意見交換をしなければならない。 3.議題 (1)大阪控訴審の結果および経過について  7月9日、大阪高裁202号法廷において判決が言い渡された。傍聴席は36席に絞られ、廊下や外で判決を待つ人が大勢いた。  永井裕之裁判長より、控訴人の請求を棄却、裁判費用は控訴人が負担するという判決が言い渡された。  判決後報告集会を開催。岡田弁護士より、宝塚医療大学の学科新設が認められず、学生の教育を受ける権利を奪っているとの追加の主張があったが、判決では、不認定が大学の研究を禁止するものではないとして、訴えを退けたことが報告された。  記者会見は行わなかったが、裁判所の記者クラブを通じて19条連絡会の声明文を各社にFAXした。 (2)今後の運動について  7月15日現在、日視連で集約した署名筆数の報告。 東京6,496(内点字461)、仙台4,895(内点字481)、大阪4,626(内点字237)。  署名活動について、個人署名は継続して行う。  さらに、団体署名についても取組むべきとの意見があり承認された。  個人署名、団体署名はともに9月末までを締め切りとする。  竹下会長より、9月の中旬ころに大阪高裁から最高裁に裁判が移行する。その頃に、厚労省と意見交換を行いたいとの発言があった。 (3)各団体の取り組みについて 理教連  全国の盲学校に団体署名をお願いしている。全国盲学校PTA連合会と連携し、各校のPTAの団体署名も作成する方向。 理教連加盟校の教職員、生徒の保護者へ個人署名を働きかけている。また、賛同いただけた全国盲学校団体一欄を付けた要請書を、総選挙前に各国会議員に届ける活動を計画中。 日マ会  団体署名、個人署名ともに集中的に活動を行っている。19条のこと知ってもらうために広報や情報提供を行っている。 全視協 署名用紙は、墨字はA4で1枚、点字も1枚で進める。19条ができる時の背景、所得保障等の水準や職域の拡大等が達成されていないこと、また、労働権を出して、憲法違反ではないことを説明し、上告を退けるよう求める内容とした。集まった署名は、毎週、第二小法廷へ届けることを考えている。 全鍼師会  7月末締め切りのアンケート調査があるため、署名活動は8月から取り組んでいく。 日視連  署名の集計、団体署名の文章を作成し発信する。 関東協議会  署名活動の締め切りが9月末と決まったので、再度徹底する。最高裁に向け、なんらかのアプローチを考えていきたい。 東北協議会  個人署名活動は、7月15日をもって、いったん終了。今後については幹事会で相談していく。 近畿協議会  近畿協議会、加盟団体長に署名活動が9月末までになったことをお知らせし、引き続き進めていく。 (4)啓発活動について   (次回ニュースの発行など) 議事要旨作成(案):日視連 19条連絡会ニュース:日視連  ニュースには、竹下会長、各協議会の会長、各団体の代表のコメントを掲載。原稿は、7月末までに事務局へ送付。 (5)その他 次回幹事会:令和3年10月2日(土) 10:30〜 場  所:日本視覚障害者センター2階研修室、オンライン(Zoom) 上告棄却の公正裁判を求めます 一般社団法人全日本視覚障害者協議会 代表理事  山城 完治 (平成学園グループあマ指科非認定処分取消請求上告事件について)  あはき法に視覚障害者であるあマ指師の職業優先を定めた第19条が出来たのは、先の東京オリンビックが行なわれた1964年です。これは、所得保障など福祉施策の向上や職域拡大によって視覚障害者があマ指師関係職種に依存しなくなるまでの「当分の間」とされました。それから57年が経ちましたが、事態は悪化しています。  障害基礎年金が創設されましたが生活できる年金にはほど遠い。特別支援学校(盲学校)等の職業教育は後退しあマ指師関係職種のみとなりました。ハローワークによると、いまだに視覚障害者の5割・重度視覚障害者の7割があマ指師関係職種に就職しているとあります。  視覚障害者であるあマ指師の就労も雇用も壊滅寸前です。あマ指師の資格を持たない無免許業者が放任され、急性外傷の施術を業とする柔道整復師が慢性期の肩こり・腰痛に手を出し、あマ指師開業者の仕事を奪っています。マッサージ診療報酬点数の削除の影響で医療施設への雇用は激減し、介護施設も機能訓練指導員の資格要件の緩和の悪影響が出始め ています。  憲法27条1項は、「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う」と定めて、労働能力と労働意欲を有する労働者(視覚障害者)に対して就労する機会が与えられる権利を保障しています。視覚障害者は、あマ指師関係職種を通して自立し社会に貢献したいと願っています。  最高裁判所は、厚生労働大臣・文部科学大臣が、当該地域の関係団体の意見や審議会の意見を聞いた上で、視覚障害者であるあマ指師の生計の維持が著しく困難とならないようにするため必要があると認めて行なったあマ指師学校・養成施設の非認定処分の取消請求を棄却してください。 在学生・卒業生の職業自立を守るために 日本理療科教員連盟 会長  工藤 滋  理療業は視覚障害者の適職として継承されてきた職業で、視覚障害者の全就職件数に占める割合は常に圧倒的に高く、今も最も重要な職業であると言えます。一方、あん摩師等法19条は、実質的に職業選択の自由が制限されている視覚障害者が、あん摩マッサージ指圧師として生計を立てていくことを保障するために定められた条文です。衛生行政報告例によれば、2018年のあん摩師、はり師、きゆう師の総数に占める視覚障害者の割合は、はり師、きゆう師がそれぞれ12.5%、12.2%であるのに対してあん摩師は22.6%で、あん摩師等法19条がいかに視覚障害者の職業自立を支えてきているかが分かります。  本連盟は、この大切な法律を守るために、2016年に平成医療学園グループが「あマ指師課程非認定処分取り消し訴訟」を起こして以来、一貫して被告の国を支援してきました。東京・仙台・大阪の3地裁での裁判がはじまって以降は、あん摩師等法19条連絡会構成団体と連携して、継続的に署名活動と裁判の傍聴を行ってきたほか、裁判官やマスコミに宛ててのはがき行動、募金活動も展開しました。さらに2019年3月には、全国盲学校PTA連合会と共催で「19条裁判勝訴をめざした衆参全国会議員要請行動」を実施し、ご賛同いただいた北は北海道から南は沖縄までの全国の盲学校PTA一覧を添えて、700人を超える全国会議員に対して公正裁判の要請を行いました。  こうした活動の成果として、すべての地裁、高裁で国勝訴を勝ち取ることができました。しかし、平成医療学園グループはこれらの結果補不服として上告しており、いよいよ裁判は最高裁という最終ステージに上がってきています。  もしも国が敗訴し、晴眼者のためのあん摩師養成学校が自由に作られるようになれば、車を運転でき、事務作業も可能な晴眼者の参入によって、按摩師の働く場は晴眼者に凌駕され、多くの視覚障害者は職業自立が困難になってしまいます。そうならないために、なんとしてもこの裁判には勝たなければなりません。理教連は、在学生、卒業生の職業自立を守り、理療が末永く視覚障害者の職業として維持・発展できるよう、全力で取り組む所存です。みなさん、互いに連携し、協力 し合って、最後までがんばりましょう。 <19条連絡会ニュース 10その2に続く。>