表紙 日本視覚障害者団体連合 弱視問題対策部会 弱視者の困り事 資料集 第3号<追加版> (令和2年11月発行) 【目次】 1 新型コロナウイルスの影響で困ったこと 1ページ 2 参考資料 新型コロナウイルスに関する要望書 10ぺージ 【資料集について】  弱視者(ロービジョン)が日常生活を送る上で抱えている困り事は大変多い。本資料集は、同部会の委員より寄せられた弱視者(ロービジョン)の困り事に関する意見等を整理したものである。なお、第3号で掲載した事例の一部は、本連合が開設した「新型コロナウイルス・緊急ホットライン」に寄せられた意見、またその意見を元に作成した要望書より抜粋した内容も含まれている。要望書については、参考資料として掲載する。 【追加版について】  令和2年10月3日に開催した「令和2年度委員総会」において、新型コロナウイルスの影響で困ったこと」をテーマにした意見交換会を開催した。追加版では、意見交換会で出された意見を追加掲載する。 1ページ 1 新型コロナウイルスの影響で困ったこと ※掲載内容について  困り事の事例を集める中で、委員等から好事例も何点か寄せられた。そのため、本章に掲載する事例の中で、好事例と思われるものは、掲載事例に(良かったこと)と記載した。 1.買物での困り事 (1)お店の入り口  ・薬局の店頭や店内で、マスクの入荷状況が表示してあるのかどうかが分からない。そのため、入荷状況を店員に聞きたいが、店員には聞きづらい。  ・スーパーのカゴの置き場所が突然別の場所になってしまい、探すのに苦労した。  ・消毒ボトルが白いものは実は困る。例えば、お店の壁が白かった場合、その消毒ボトルが見えにくくなってしまい、探すのに苦労したことがある。  ・店舗の入り口等に置いてある消毒ボトルは、お店によって置く位置が異なるので分かりづらい。また、そのボトルが手で押すタイプか、足で踏むタイプかが分かりづらい。  ・お店に入って手指を消毒した後、視覚障害者はすぐに白杖を持って移動することになる。少し気になるのは、白杖が不衛生とは言いづらいが、白杖を持つことで手や指の衛生が保てているかどうか不安になる時がある。 (2)品物等を探すこと  ・3月〜4月は、ドラッグストアの開店前に20人が並び、開店と同時にマスク等が棚から消えていた。弱視(ロービジョン)の私は、妻の車で5〜6軒回りましたが、出遅れて買えなかった。  ・お店でマスクを購入したいが、どこに置いてあるか分からず、迷っている間になくなってしまい、購入できなかった。  ・弱視者(ロービジョン)なので、スーパー等で品物を確認する際、目に近づけたり、触ったりして確認することが多いのだが、こういう確認をしていると、周りからの目が気になることが多い。そして、コロナ禍では、さらにその目が気になり、品物の確認が難しくなってしまった。  ・コンビニやスーパーでは、これまで視覚障害者が単独で買い物に出かけても、店員が手伝ってくれていたが、コロナ禍では、本部から指示が出ているからなのか、サポートを拒否されたことがあり、買い物ができず困った。 (3)レジの待機列  ・会計等で並ぶ時、前の人との距離が分かりにくい。また、足元のマークが見えない時は、わざと余分に距離を取って並んでいます。  ・スーパーのレジの待機列で、距離感が分からないので何となく間隔を空けて並んでいたら、他のお客さんに割り込みされてしまった。ただ、自分からその人に注意することができず、少し残念な思いをした。  ・お客さんが並んでいる待機列が分かりづらいので、その列に衝突してしまったことがある。  ・レジの待機列が分からなくなり、割り込んでしまうことがある。 (4)お会計  ・スーパーのレジは、透明なシートで覆われていて、店員もマスクをしているので、店員が話している内容が聞こえづらい。特に金額がいくらなのかの声が聞こえづらい。  ・今まではお釣りの渡し方は手渡しだったが、トレーで渡す方法になったことで、お釣りを取るのが大変になった。また、トレーにお釣りの取り残しがないか不安になることもある。  ・お釣りをトレーで渡されることが増え、何度か取り忘れそうになった。そのため、最近は電子マネーで支払うようにしている。  ・クレジットカードやポイントカードは、今までは店員に渡せば良かったが、ここ最近、自分で読み取り機械を操作する方法に変更されたので、大変困っている。自分では上手く読み取らせることができない。  ・レジ袋が廃止になり、自分でマイバック等に入れるようになったが、買ったモノを全て入れられたかどうか不安になる時がある。 (5)ネット通販等  ・ネット通販を利用していたが、自分で注文や送金処理ができないので、これまではお客様センターに代わりに対応してもらっていた。ところが、コロナの影響で電話対応する人がいなくなってしまい困っている。  ・視力が落ちて、歩行訓練を受けようと考えていたが、訓練が受けられず家から出られない日々が続いていた。そのため、飲食は出前のアプリを使って届けてもらっていました。  ・(良かったこと)コロナで外出を控えるようになり、ネット通販を利用するようになった。注文の操作は難しい部分もあるが、外へ移動しなくても自宅に届けてくれることもあり、助かっています。 2.情報や読み書きでの困り事 (1)テレビやインターネットの情報  ・テレビでコロナ関係のニュースが流れても、字幕スーパーが読めないので困っている。  ・テレビのニュースでは「詳しくはこちらにお問合せ下さい」といった形で、映像を見ることを前提とした情報の伝え方をして困る。音声で読み上げてほしい。  ・自治体からの様々な情報を知りたく、自治体に問い合わせたが「ホームページを見てください」の一言だった。そのホームページは複雑で分かりづらいものだった。 (2)書類の読み書き  ・特別定額給付金の申請書は、自治体から郵送で届いたことが確認できないし、自分では記入できないので、困ることだらけです。  ・(良かったこと)特別定額給付金の申請において、自分では記入ができないことを区役所に相談したら、区の地域センターで障害者や高齢者への代筆を行ってくれることを教えてくれた。そして、そこに代筆をお願いし、無事に申請することができた。こういった支援は助かります。 3.移動での困り事 (1)道路での移動  ・ここ最近、交差点では、青信号に変わるのを待っている人が散らばって立っているため、その付近で待機している人がどこで立っているかが分かりにくくなった。駅前の大きな交差点等では、その人達に衝突しそうになったこともあり、今まで慣れていた場所でも、ゆっくりと慎重に歩くことが必要になってしまった。  ・今までは、一般の方の声かけを頼りにすることで、一人でも外出できていたが、ソーシャルディスタンスが叫ばれるようになってから、声をかけてくれることが非常に少なくなり、生活しづらくなってしまった。 (2)鉄道での移動  ・鉄道駅での駅員や利用者からの「声かけ」「見守り」が減り、鉄道駅での移動が以前より不安になっています。  ・公共交通機関に乗る時は、乗客が少ない時間や空いている車両を選んで乗っている。例えば、学生の登下校時間は意識して外すようにしている。  ・吊革や手すりは基本的には利用しなくてもよい時間に乗るようにしている。もし、使わないといけない時は、人が持ちそうな部分をわざとよけて持ちます。 (3)同行援護を利用しての移動  ・同行援護を利用して買い物に行きたかったが、緊急事態宣言の期間は同行援護がほとんど利用できなかった。特に、食料品等の生活必需品を買いに行けなかったことには困ってしまった。  ・直接介助者に触ることを拒否されたことはないが、相手の声を頼りに、なるべく介助者に触らずに移動しています。  ・不特定多数の人が利用する電車での移動は不安がある。そのため、同行援護で車の利用を求めたが、認められなかった。  ・4月〜5月は、世の中の動きが全体的に止まってしまい、希望していた歩行訓練が受けられなかった。また、同行援護も使えなかったので、家にいるしかなかった。 4.医療や衛生対策に関する困り事 (1)医療機関への移動  ・過疎地なので、ほとんどの方は自分で自家用車に乗って病院へ行っています。そうなると、私は家族の運転する車を利用せざるを得なく、色々な不安があります。また、公共交通機関やタクシーを利用するにしても、咳症状が出ていたりすると、乗っていいのかどうかが不安です。  ・(良かったこと)コロナ感染の疑いがある人の中で、弱視(ロービジョン)であることを保健所に伝えたら、保健所が車を出してくれた事例を聞いた。 (2)病院内での支援  ・普段なら病院への通院は一人で行っていますが、院内の移動だけは不安があります。コロナ禍でも、院内の移動は医療スタッフがサポートしてくれるのだろうか。  ・ニュースでコロナの軽症者はホテルに隔離されると聞いた。もし、視覚障害者がホテルに隔離された場合、しっかりとしたフォローがあるのかどうかが心配だ。このような視覚障害者には、ホテル内で様々な情報提供、移動の支援が必要だと思う。 (3)衛生対策  ・会議や通院等、外出先で消毒器具が設置してあるところでは、必ず消毒を実行しています。自宅玄関にも消毒器具を置いて帰宅時に利用しています。  ・出先だと消毒器具がどこに置いてあるか、どのような方法でプッシュするのかが分からない時がある。  ・会議や勉強会で外食が必要な時は、三密を避けることはもちろん、できる限り短時間で食事を済ませ、マスクを装着するようにしている。外での飲酒は慎んでいます。  ・勤め先の上司がマスクもせず大声でしゃべっていることがある。万が一感染したらどうしようと思うと、はらはらしています。 5.仕事での困り事 (1)労働環境の変化  ・仕事がテレワークになったことで、困った事があっても相談できる相手が周りにいなくなってしまった。  ・テレワークにはメリットとデメリットがあると思う。メリットは移動しなくて良いことで、視覚障害者の困り事の一つが解決される。デメリットは一人で仕事をしないといけないので、同僚とのコミュニケーションが取りづらいことです。  ・盲学校の理療科の先生もテレワークをしていて、色々と大変な思いをしていることを聞いた。  ・テレワーク化に伴い、自宅のPC環境を整えたり、エアコンや椅子を購入する等、作業環境の整備をするのに費用がかかった。  ・在宅勤務と出社を組み合わせる勤務になった。ただ、出社すると、手すり等への接触やソーシャルディスタンス確保の困難さがあるので、コロナ感染の不安がある。  ・現在、在宅勤務をしているが、だんだんと目が見づらくなってきた。在宅勤務の影響があるのかもしれない。そのため、会社からは、移動することで事故があったら大変なので、在宅勤務を継続する提案があった。本当は会社に行きたいが、自分の安全のこともあるので、在宅と出勤を組み合わせるような形で働いている。  ・(良かったこと)勤務先の感染防止対策の一環で、職場の車で送迎してもらっています。これは助かっています。  ・(良かったこと)会議・セミナー等がオンライン開催になったことで、移動がなくなり、時間や場所の制約が緩和され、新たな交流が始動した。 (2)パソコンやネットの利用  ・テレワークの推進により、オンライン会議や社内システムの活用が進んでいるが、視覚障害者が利用できる状態ではないため、仕事が進まない。  ・コロナ以降、テレワークに関する困り事をよく聞いていて、会社の社内システムに入れない、その社内システムがスクリーンリーダーに対応していない等の相談を受けている。こういった人は、仕事ができず、家にいるだけになっている。 (3)仕事量の変化  ・あはきの仕事の依頼が全くなく、収入が断たれ困っている。緊急事態宣言が終わった後も、お客さんがしばらくは来ないのではないかと心配している。一度離れたお客さんを戻すことはなかなか難しい。  ・ヘルスキーパーとして入社したが、コロナ騒ぎが出て以降、マッサージの仕事が接触業務ということで、暫定的にパソコン業務に配置転換された。慣れない仕事なので、不安でしかない。  ・職場が一時的に休業となり、自宅待機となったが、このまま会社に戻れるかどうか、心配になっている。  ・治療院を経営しているが、常連のお客さんが利用してくれているので、治療院の方は売り上げが戻ってきています。ただ、老人施設でも施術をしているが、施設に一切入れず、この部分は売り上げが全くなく、困っています。 (4)体調の変化  ・自宅でのテレワークが続いたことで、運動不足のため睡眠が浅くなる等、体調に変化が生じた。自分に関しては、早朝の散歩で運動不足を解消した。  ・今回のコロナの一件で困っているのは、高齢のあはき師の中で、仕事がなくなったことをきっかけに引退する人が増えていることです。視覚障害であはきの仕事を辞めたら、途端に体を動かさなくなり、本人のQOLが下がるのではないかと不安になり、仕事を続けるよう、説得したこともあります。 6.ICT化に関する困り事 (1)高齢者とICT  ・コロナ以降、会議がオンラインになり移動の負担が減ったり、買い物がネットからできたり、良い部分もあると思う。ただ、パソコン等を使うとなると、利用できない方、特に高齢の視覚障害者が置き去りになってしまう。こういった方には何らかの支援が必要だと思う。  ・地元のロービジョンネットワークがオンラインでの研修会を開催しようと動いているが、ICT機器等が苦手な高齢の参加者が多く、開催するのに工夫が必要となっている。例えば、Zoomが使えない人が何人か集り、誰かが接続するZoomに相乗りするような方法を考えている。 (2)学生とICT  ・大学のオンラインの授業システム(LMS:学習管理システム)に困っている弱視(ロービジョン)の学生が多い。これらのシステムは、基本的なアクセシビリティが悪く、例えば、レポートの提出等が難しいと言われている。アメリカは、こういったシステムにもアクセシビリティを求めているのに、日本は全く対応されていないので、もっとアクセシビリティを高めることが必要だと感じている。  ・オンラインでの授業が一般化したことで、改めて「指示語問題」が視覚障害者を悩ませている。例えば、オンラインの授業で、画面上に資料を掲示し、ポインターを説明したい箇所に移動させ、「ここに書いてあるとおり」といった形で説明する者がいて、視覚障害の学生にはその内容が理解できないことがある。画面全体を見ながらでないと内容が理解できない授業もあり、授業の進め方については様々な課題がある。  ・オンラインの活用が進んでいることを踏まえると、視覚障害者自身がICTスキルを予め学んでおくことが必要だと思います。そのためには、ICTが苦手な高齢者だけでなく、若い視覚障害者への支援も必要だと思います。  ・(良かったこと)オンラインの授業が中心になったことで、移動の困難さがなくなったと答える学生もいた。学校までの通学、学校内での移動等、今まで授業を受けるために頑張って移動していたことから解放され、勉学に集中できるようになったことは、良いことなのかもしれない。  ・(良かったこと)オンラインの授業が増えたことで、授業で使う資料がデータで手に入る機会が増えてきた。今まで、紙で渡されることが一般的だったのに、このような流れになったことは、視覚障害の学生にとってはプラスかもしれない。  ・(良かったこと)オンラインの授業システムは、大半のものが録画されていて、一定の期間はその録画を見ることができるようになっている。聞き逃した部分を再確認できたりするので、実は学生にとってはメリットがある。 (3)課題解決に向けた動き  ・ICTについては、視覚障害者ができないことに注目が集まるが、工夫をすればできることもあると思う。例えば、特別定額給付金の申請を、全盲の人が一人でオンライン申請したという事例がある。こういった好事例も整理する必要はあるのかもしれない。  ・色々な話を聞かせていただき、改めて「具体的な事例」を出すことが重要だと気付きました。例えば、視覚障害者にとってテレワークは良い点も悪い点もある。そういった事例を出すことで、解決策が見いだせるのかもしれない。 7.その他 (1)イベントの開催  ・視覚障害者が集まる研修会を自治体の施設で開催しようと思い、施設の窓口に相談したら断られてしまった。視覚障害者が集まると3密に繋がるというのが理由だった。他の地区でも断られたケースがある。  ・視覚障害者向けのコロナに関する研修会を開こうと思い、自治体の障害福祉担当に講師として来てもらおうと相談したら、あまり良い返事がなかった。結果的に来てもらうことにはなったが、コロナ禍での安全対策を学ぶ内容なので、自治体が協力的でなかったことは残念だ。 (2)施設の入所者  ・高齢者施設等の入所者は、現在、施設の職員等が同行することができず、実質的に外出することができずに困っている。一人で動ける弱視者(ロービジョン)でも、郵便局に行って代筆をお願いしたら断られたケースがあった。移動はできても、どうしてもできないこともあり、どうやったら支援をしてくれる人と移動ができるかが課題だと感じている。 10ページ 2 参考資料 新型コロナウイルスに関する要望書 ※掲載内容について  掲載した要望書は、日本視覚障害者団体連合が新型コロナウイルスに関する視覚障害者の要望等をとりまとめ、令和2年4月〜7月の間に国等に提出したものである。本資料においては、一部を編集し、要望事項のみを掲載する。 1.視覚障害全般に関する要望書  提出日:令和2年4月22日  提出先:厚生労働省、文部科学省 (1)衛生用品の入手について  @ 視覚障害者及び視覚障害者を支援する者に対して、当面の間、日常生活を送る上で必要な衛生用品(マスク・消毒用アルコール等)を優先的に入手・購入できる施策を要望します。 (2)あはき(あん摩マッサージ指圧・はり・きゅう)業について  @ 視覚障害あはき業者が、あはき業にとって必要不可欠な備品(マスク・消毒用アルコール等)を、優先的に入手できる施策を要望します。  A 仕事が激減し生活に困窮するあはき業の視覚障害者に対して、明確な所得補償を行うための救済措置を要望します。 (3)同行援護について  @ 病院への通院や生活必需品の買い物等、必要に迫られて同行援護を利用する場合、確実に同行援護が利用できるよう、地域内でヘルパーの調整、柔軟な支援方法(車両の利用等)の実施、マスクの優先配布等の実施を要望します。  A 同行援護事業を継続させるため、事業所の経営安定化に向けた支援策の実施を要望します。また、事業所の休業等による従事者の大幅な収入減少に対しては、明確な所得補償を行うための救済措置を要望します。  B 各事業所では、ヘルパー自身が新型コロナウイルスの感染を恐れて業務に従事できない旨の訴えが寄せられています。緊急時の対応として、事業所が利用者の通院介助を車で行った場合や利用者のニーズに基づいて買物等の代行をした場合にも、何らかの手当(謝金)を支給することを要望します。 (4)視覚障害者への情報提供について  @ 新型コロナウイルスに係る次の情報は、必ず視覚障害者も入手できる方法(点字、音声、拡大文字、テキスト等)で情報提供されることを要望します。   ・国や自治体からの各種情報(例:通知等の内容、休業補償等の申請方法、施設の休館情報 等)   ・マスコミからの各種情報(例:TVの緊急速報や字幕スーパー、解説で使用する図や表の内容 等)   ・販売店からの各種情報(例:マスク・消毒用アルコール等の販売情報、営業時間の変更 等) (5)新型コロナウイルスに関連する視覚障害者への支援について  @ 医療機関に入院した視覚障害者に対しては、様々な情報提供の支援に加え、施設内での移動や行動の支援等が行われることを要望します。  A 独居等の視覚障害者が新型コロナウイルスの感染の疑いが生じた場合、単独では移動ができないことから、自宅でのPCR検査の実施、円滑な医療機関への移送等、視覚障害者に特化した柔軟な支援が実施されることを要望します。 (6)盲学校(視覚特別支援学校)について  @ 盲学校(視覚特別支援学校)に在籍する生徒の個別事情を勘案し、柔軟な支援の実施を要望します。 2.国や自治体等の各種支援策(特別定額給付金、持続化給付金等)に対する要望書  提出日:令和2年5月14日  提出先:総務省、経済産業省、厚生労働省 (1)情報の周知方法について  @ 視覚障害者への情報提供は、その者が必要とする媒体(点字、音声、拡大、テキスト等)を、その者自身で選択できる方法であることが望ましい。そのため、各種支援策の情報の周知、さらに送付する書類においては、それぞれの視覚障害者のニーズに応じた情報提供を実施してください。  A 上記の視覚障害者に特化した媒体は、情報発信元の自治体のホームページ等において、視覚障害者がアクセスしやすい方法を講じた上で掲載してください。  B 書類を送付する封筒には、視覚障害者が郵便物の選別をするために、内容及び発信元を点字と拡大文字で表記してください。点字が読めない視覚障害者も、点字があれば自治体からの重要な郵便物だと分かります。 (2)申請に関する支援について  @ 送付された書類の内容確認、書類への記入、書類の提出等は、視覚障害者が単独で対応することは難しく、申請作業には様々な支援が必要となります。そのため、公的な福祉サービスによる支援(同行援護、居宅介護、代筆・代読支援等)が確実に受けられるようにしてください。それが困難な場合は、自治体職員による支援または各種相談所による支援等により、視覚障害者が確実に申し込みができる支援体制を確立してください。  A 視覚障害者の中には、インターネットを利用できない、前年度の収入を調べることができない等、その者によって様々な個別事情があります。そのために、各種支援策を申請できない者もいます。したがって、申請を行う視覚障害者の個別事情を勘案し、窓口での柔軟な対応や要件の緩和を実施してください。  B 視覚障害者の中には、案内が届いたことに気付かない、申請書類が複雑であったため書類作成ができない等により、各種支援策への申請を断念する者もいます。そのため、未申請の視覚障害者を作らないためにも、国と自治体の責任で、これらの者に対する積極的な情報提供や個別の声掛け、申請に向けた支援を実施してください。 3.バリアフリー全般に関する要望書  提出日:令和2年6月23日  提出先:自由民主党ユニバーサル社会推進議員連盟 (1)バリアフリーの推進に対する要望  @ 各地域で開催する同法に関わる協議会は、視覚障害当事者が必ず参加し、視覚障害者の実情や要望を反映させる仕組みになることを要望します。  A 弱視者(ロービジョン)に対するバリアフリーを推進し、誰でも見やすい配慮が盛り込まれた整備計画の推進を要望します。  B 屋外でのバリアフリー整備において、移動の連続性を念頭においた整備計画の推進を要望します。  C 視覚障害者誘導用ブロックは、屋外での更なる敷設を行うとともに、建物内においてもJIS規格に準拠したブロックの敷設を行うことを要望します。  D 既存の視覚障害者向けバリアフリー設備が正しく機能するよう、全国で該当設備に対する維持と補修が実施されることを要望します。  E 鉄道駅の旅客施設や各種公共施設等の施設内の案内について、視覚障害者の移動を保障するため、触知案内図の設置及びインターネット等での情報開示の徹底を要望します。 (2)新型コロナウイルスに関連する要望  @ 3密(密閉、密集、密接)回避の推進により、密接しながら視覚障害者の移動を支援する同行援護が利用しづらくなっています。そのため、同行援護における密接が不自然ではないことを全国民に周知することを要望します。また、安定的に同行援護が利用できるよう、衛生用品の優先配布、事業所への支援等を要望します。  A 視覚障害者は人との距離感を保つことが難しく、スーパーのレジや駅の窓口等で発生する待機列に距離を保って並ぶことが困難です。そのため、待機列を示す線の工夫、待機列に並ぶ視覚障害者への支援を要望します。  B 視覚障害者への情報提供は、当事者が希望する媒体を選択できることが大原則であり、点字版、音声版、拡大文字版、テキストデータ版が作られることが望ましい。そのため、国や自治体から発出される新型コロナウイルス関連の情報は、この考えのもとで情報提供を行うことを要望します。  C テレビ放送における新型コロナウイルスのニュースにおいて、説明で使用する図や表の詳細は音声で説明されません。また、リモート出演者の声が聞き取りづらい場合、字幕によって補足を行っていますが、その字幕の音声化がありません。そのため、これらの音声読み上げの充実を要望します。また、ニュース速報の字幕の音声化、外国語放送の吹き替え等の充実も要望します。 (3)鉄道駅の安全対策に対する要望  @ 視覚障害者が安全に鉄道駅を利用できるよう、ホームドア整備計画の更なる推進を図るとともに、視覚障害当事者が参加する新型ホームドアの開発を要望します。  A 駅員や乗客からの声かけ・見守り運動を更に推進し、視覚障害者が安全に鉄道駅を利用できる環境が作られることを要望します。特に、新型コロナウイルスの影響により、駅員や乗客からの声かけが減っています。  B 一部の鉄道駅で進められている無人駅化を改め、視覚障害者の安全確保のために該当駅での人員配置を要望します。  C 一部列車で利用されているドア開閉ボタンについて、ボタン位置の把握のため、音声案内等が整備されることを要望します。 (4)道路の安全対策に対する要望  @ 音響式信号機の24時間作動、または、信号機の色が確認できる代替手段の確立を要望します。  A 音響式信号機の押しボタンは、誰もが使いやすい規格に全国統一されることを要望します。  B スマートフォンを利用して信号機の色等を音声で確認するシステムは、視覚障害者が確実に利用できる仕様になることを要望します。また、同システムを利用する視覚障害者に対して、使用方法の講習等の実施を要望します。  C 全てのハイブリッド車及び電気自動車等の静音車に対して、車両接近通報装置の搭載と使用の義務化を要望します。 4.あはきに関する要望書  提出日:令和2年7月8日  提出先:厚生労働省 (1)あはき業にとって必要不可欠な物品(マスク・消毒用アルコール等)を、優先的に入手できるようにしてください。 (2)各自治体が実施する休業補償においてあはき業が休業要請の対象外であったとしても、感染拡大防止の見地あるいは顧客の減少からやむを得ない事情で休業したあはき業者に対しては、休業補償と同等の支援を行ってください。 (3)各種支援策(持続化給付金、休業補償等)の申し込みに関し、申請手続きの援助、申請手続きのための移動の支援、及び受付窓口における柔軟な対応を行ってください。 (4)中長期的に収入が減少した視覚障害あはき師に対して、継続的な経済支援を行ってください。 (5)訪問型施術所等に雇用されている視覚障害あはき師が不当な取扱いを受けたり、窮地に追い込まれることがないよう、該当する施術所等に対する支援とともに、本人に対する柔軟な支援を行ってください。 (6)企業等にヘルスキーパーとして雇用されている視覚障害あはき師の雇用環境がこれ以上厳しくならないよう、該当する企業等に対する支援とともに、本人に対する柔軟な支援を行ってください。また、ヘルスキーパーの一層の雇用促進を図ってください。