社会福祉法人日本視覚障害者団体連合 令和7年度事業計画 (自令和7年4月1日〜至令和8年3月31日) 第T章 組織・団体活動 1.横断的課題に対する取り組み  本連合の1年を通じた活動の中心であり、そして全ての分野に影響する横断的な課題に対する取り組みを最初に掲げる。 (1)視覚障害者の基本的人権の確立に向けた取り組み @障害者権利条約の国内実施と総括所見の具体化  国連障害者権利委員会より日本政府に対して総括所見が令和4年に示されたものの、その後の日本政府の対応は遅く、課題解決の糸口が見つからない状況が続いている。そのため、日本障害フォーラムを中心に、日本の障害者施策の根幹とも言える障害者基本法の改正を求める議論が行われている。同法の改正が実現すれば、障害者権利条約の国内実施と総括所見の具体化が進み、さらには本連合が求める様々な要望の実現に結びつく可能性が高まる。そこで、昨年度、本連合の障害者基本法の改正に向けた基本方針を「障害者基本法の改正に向けた検討」としてとりまとめた。本年度もこの基本方針を基に日本障害フォーラムで行われる議論に参加し、視覚障害者にとって必要な内容を提案する。そして、日本障害フォーラムの一員として、内閣府の障害者政策委員会及び関係する国会議員等に対して同法の改正を強く求めていく。  また、総括所見には、日本の視覚障害者が日常生活を送る上で重要な指摘が多く含まれている。特に「自立した生活及び地域社会への包容(19条)」「教育(24条)」「労働及び雇用(27条)」は視覚障害者にとっても重要であることから、令和5年度より本連合の将来ビジョン推進委員会において、これらの項目の現状と課題の整理を行った。その結果、昨年度、本連合が取り組むべき施策の方向性を「将来ビジョン推進委員会 総括所見に関する検討 最終報告書」にまとめた。本年度は、この報告書を基に、総括所見に示された内容の具体化を求め、国や関係機関に働きかける。 A改正障害者差別解消法の施行に伴う取り組み  令和6年4月より民間事業者による障害者への合理的配慮の提供が義務化された。義務化が開始してから1年経過したが、視覚障害者に対する合理的配慮の提供は遅々として進んでいない。むしろ、社会全体のデジタル化、無人化及び省人化の影響により、視覚障害者が移動すること、情報を得ることがさらに困難になってきている。そのため、本年度は、改正障害者差別解消法の理念を広めるための活動を強め、これらの困難さの解消を目指す。  まず、視覚障害者に対する合理的配慮の提供を進めるためには、全国各地で視覚障害者への理解を広めることが必要である。そのため本年度は、本連合の加盟団体支援プロジェクト委員会が準備を進める人権啓発講演会等に対応する講師の養成事業を具体化し、視覚障害者に対する合理的配慮等を説明できる講師の養成を進める。なお、同事業の詳細は7ページに記載する。  そして、視覚障害者が移動すること、情報を得ることの困難さを解消するためには、具体的な事例の共有を通して、視覚障害者への理解を深めることが必要である。そのため、本連合が平成26年に作成した差別事例集「視覚障害者にとって差別ってどんなこと?」の全面改正を行い、本連合及び加盟団体から全国の自治体や民間事業者等に対して積極的に同事例集の周知を行う。 (2)点字考案200年に関する取り組み @点字による情報保障の確立に向けて  2025年は、ルイ・ブライユが1825年に6点点字を考案し発表してから200年という記念すべき年である。わが国には1890年代に点字が紹介され、以後わが国において、点字は視覚障害児・者の教育の充実や文化芸術の発展に寄与しただけでなく、職業の可能性をも広げてきた。そして、公職選挙法において点字投票が一早く取り入れられ、地方自治法におけるリコール等においても点字署名が有効とされるまでに市民権を得てきた。しかし、今日でも、あらゆる場面において点字による情報保障が視覚障害者に保障されているわけではない。点字による選挙公報は法的には未だ位置づけられてはいないし、出版物の点字化が直ちに実現されるわけではない。障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法が制定された今日においても、点字による情報保障は明確には位置づけられていないのである。  そこで、点字考案200周年の節目にあたり、日本において点字に市民権を与え、視覚障害者に対して常に点字による情報が保障されるために、「日本点字法(仮称)」の制定を含めて法的な位置づけを明確にするための取り組みを進める。 A点字と点図の今後の可能性について  前述したとおり、2025年はルイ・ブライユが点字を考案してから200年という節目の年である。点字は、墨字を使用できない視覚障害者にとって唯一、自由に読み書きができる文字である。この点字が社会に認められることにより、教育を受け、各種資格を取得し、就労や社会参加をすることが可能となった。しかし、文字として公的に認められたわけではなく、様々な制約があり、これらの制約をなくす取り組みが重要である。  学校教育・就労現場や各種手続き及び防災(ハザードマップ等)においては、点字だけでなく、触図といわれる点図を効果的に付加することにより、点字使用者の理解度が高まることが期待されている。例えば、欧米や韓国においては、複数行の点字ディスプレイが開発され、点図を標示することが可能となってきており、特に学校教育の場で活用が進んでいる。我が国においても、そうした最新技術を導入し、広く活用できるシステムの構築が必要であり、速やかに点字の文字としての位置づけを確立する法整備を求める。 (3)情報アクセシビリティのさらなる推進 @障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法の具体化に向けた取り組み  障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法が令和4年に成立し、施行されてから2年が経過した。同法に基づく制度改革は徐々に進展しているものの、一方ではデジタル化やスマートフォンの普及、あるいは店舗の無人化等によって、視覚障害者には新たな情報デバイスないしサービスの利用における困難が生じている。同法によって定められた情報手段ないし媒体の選択権を保障するためには、視覚障害者の特性を十分に理解した上で端末が製作されなくてはならない。また、新たなサービス提供の仕組み作りに当たっては視覚障害者の利用を想定したシステムが考えられるべきである。目まぐるしく社会が進展する中で、視覚障害者が取り残されることがないよう、同法に定められた理念を具体化するための働きかけが必要である。 AウェブやICT機器のバリアフリー化 ア ウェブ関連のバリアフリー化  税務を含む各種行政手続きや司法手続きだけでなく、ネットバンキングやオンラインショッピング等の民間部門においても、ウェブに関連するデジタル化がますます進展を見せている。しかし、そのアクセシビリティの確保・改善は進んでおらず、視覚障害者にとっての障壁はむしろ増大する傾向にある。  そのため本年度は、既に公開されている総務省の「みんなの公共サイト運用ガイドライン」、デジタル庁の「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」の確実な遵守を国や全国の自治体及び司法機関に強く求めていくとともに、民間部門への指導をより強化するよう求めていく。また、掲載資料はPDFのみとすることなく、視覚障害者が内容を容易に把握できるテキストデータ等を併せて掲載するよう求めるとともに、手続きにおいて提出するデータも視覚障害者が作成しやすい形式での提出を受け付けるよう求めていく。  さらに、ウェブ上あるいはLINE等のアプリケーションで行う手続きについて、視覚障害者が円滑に手続きを行えるようにするため、システムの運用の前に視覚障害当事者が検証する機会を求め、利用しにくい場合はその改善を求めていく。併せて、既に稼働しているシステムについても、必要に応じて利用しやすくなるよう改善を求めていく。  なお、金融機関等のウェブサイトについては、セキュリティ強化等によるアクセシビリティの低下が問題となっていることから、国や関係機関に対して、視覚障害者の利便性を損なうことのないシステムや代替手段等を構築・運用することを求めていく。 イ ICT機器のバリアフリー化  スーパーやコンビニ等では省人化や自動化によりセルフレジの設置が進んでいる。また、公共交通機関の券売機、マイナンバーカード関連の端末、各種店舗におけるクレジットカード等の決済や飲食店の注文に関わる端末等でタッチパネル方式が多用されており、視覚障害者には利用が困難である。さらに、今後は無人店舗の増加が予想され、視覚障害者はますます困難に直面すると思われる。  これまで本連合は、視覚障害者も利用できる端末の設置や人的対応を求めてきたが捗々しい進展が見られず、本年度も引き続き国や関係機関に改善を求めていく。その中では、無人店舗であってもバックヤードに人員が配置されることを踏まえ、人的支援に繋がる仕組みを含めて、視覚障害者のアクセシビリティの確保を求めていく。  また、金融機関においては、店舗や有人窓口の廃止が進み、ATMのみを設置する店舗等が増えている。そのため、各金融機関に対して、これら店舗の小規模化が進んでも視覚障害者が円滑に金融手続きを行えるよう、ATMのアクセシビリティの確保及びその操作体験の機会の確保を求めていく。併せて、ATMの操作については、行員等による操作支援が確実に行われるよう求めていく。さらに、ネットバンキングやスマートフォン端末による専用アプリ等のシステム面の改善、人的対応等のソフト面の改善を求めていく。 Bマイナンバーカードに関する取り組み  国は全ての国民にマイナンバーカードが行き渡ることを目指す方針の下で、マイナンバーカードの普及促進に取り組んでいる。また、令和6年12月には紙の健康保険証が原則廃止されたことから、マイナンバーカードとの一本化に向けた取り組みを進めている。しかし、マイナンバーカード及びマイナ保険証は視覚障害者が利用する上で様々な課題があり、その課題解決が求められている。そのため本年度は次の取り組みを進める。  まず、マイナンバーカードの取得や更新においては、視覚障害のある住民に対して、点字を付した封筒での送付あるいは点字や拡大文字での通知文等での連絡、タッチパネル入力を要する窓口での人的対応等、必要な合理的配慮を行うよう、国や地方公共団体に働きかけていく。  次に、住民票等の行政書類を取得する際、視覚障害者が単独でコンビニ等に設置されている端末を音声ガイドやテンキー等で操作できるよう、国や端末を製造するメーカー等に働きかけていく。  さらに、医療機関や調剤薬局でマイナ保険証を使用する際、顔認証による本人確認や、タッチパネルによる暗証番号入力が求められる機器のみが設置されており、視覚障害者が単独で操作できない状態が続いている。そのため、機器に外付けのテンキーや音声読み上げ機能の付加、あるいは弱視者(ロービジョン)が見やすい画面表示等、視覚障害者が単独で操作できるよう、機器の改善を求めていく。  一方で、あはきの施術所においては、マイナンバーカードと健康保険証が一体化することに伴い、令和6年4月より、あはきの療養費を取り扱う施術所には、患者が提示するマイナ保険証をカードリーダーやスマートフォン等で読み取り、ポータルサイトで患者の情報を確認する仕組み(オンライン資格確認)が導入された。本年度は、ポータルサイトの操作性や音声読み上げ機能等について、視覚障害があるあはき施術者の意見等を踏まえ、利用しやすいシステムの提供等を引き続き国に働きかけていく。 (4)日視連加盟団体の組織強化に関する取り組み @加盟団体の事業化の推進、未法人化団体への支援  本連合の加盟団体においては、会員の減少、財政運営の困難、そして役員の担い手不足が共通する課題となっている。これらの課題を解決するためには、本連合の加盟団体が事業化を進めることが重要である。一方で、同行援護等の障害福祉サービスは、一部の地域では事業所の撤退が進んでおり、利用者たる視覚障害者が満足にサービスを受けられないことが問題になっており、本連合の加盟団体が地域のニーズに即した障害福祉サービスを提供することが求められている。そのため、加盟団体支援プロジェクト委員会では、事業化を検討している加盟団体に対して、同行援護事業等の立ち上げに向けた具体的な支援を行い、当該団体が本年度から来年度中に事業を開始することを目指す。  また、本連合全体で事業化を推進するためには、本連合の加盟団体の役員が障害福祉全般に関する知識を身に付ける必要がある。そのため、同委員会がこれらの内容をテーマにしたリーダー研修会を企画し、本年度中に開催する。そして、加盟団体の事務局がノウハウや悩み事を共有し、事務局として必要なスキルを身に付けることが求められていることから、同委員会において加盟団体の事務局向けの研修会を本年度中に開催する。 A人権啓発講演会等に対応する講師の養成に向けた取り組み  昨今、障害者理解を深めるため、全国の自治体や企業、学校では人権啓発講演会や学習会が開催され、各地域の視覚障害者が講演を行うことが増えている。しかし、講師を務める視覚障害者によって話す内容が異なり、場合によっては参加者に誤解を与える恐れがあることが問題視されている。  そのため本年度より、視覚障害に関する正確な講演活動ができる講師を養成するための研修事業を実施する。本年度は、加盟団体支援プロジェクト委員会が作成した研修用のマニュアル及びテキストを基に、加盟団体の役員等向けに研修会を複数回開催する。この取り組みを通して、本連合全体で人権啓発講演会等に対応する講師を増やしていく。  また、各地域で人権啓発講演会等を開催するためには、自治体への働きかけが必要である。そのため、同委員会で自治体等への働きかけ方や効率的な講演活動の方法等を整理し、加盟団体に対して情報提供する。 B法人運営におけるガバナンス・コンプライアンスを学ぶ研修会の開催  社会福祉法の改正や法人改革によって、社会福祉法人や公益社団法人等の民主的な組織運営(ガバナンス)に関する原則が示され、ハラスメントの防止や救済を中心とする社会規範(コンプライアンス)の確立が求められている。障害者団体といえども例外ではない。そのため、組織形態の有無に関わらず、本連合の加盟団体がガバナンスやコンプライアンスを正しく理解し、それを確立することを目指し、加盟団体支援プロジェクト委員会が主体となって適切なマニュアルを作成したり、指導者研修会を実施することが必要である。 2.主要課題に対する取り組み (1)情報保障 @視覚障害者向け選挙公報の制度的保障を求める取り組み  視覚障害者の参政権を保障するためには、選挙公報の点字版・音声版、あるいは拡大文字版の配布が必要最低限の条件である。日本盲人福祉委員会を中心とする視覚障害者選挙情報支援プロジェクトの取り組みによって、国政選挙や最高裁裁判官の国民審査においては一定の改善を実現することができた。しかし、都道府県によっては、国政選挙の選挙区においても点字版の記載内容が不完全であったり、点字版・音声版、あるいは拡大文字版の一部しか実施されていなかったりする。地方選挙に至っては全く配慮されていない場合も数多く見られる。一方で、令和4年度に「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」が施行され、同法を根拠に様々な分野で情報保障が進んでいる。そこで本年度は、同法を踏まえ、国政選挙においてはもちろん、地方選挙であっても、選挙公報が配布される選挙においては必ず点字版・音声版及び拡大文字版が配布されるよう、国や関係する国会議員に働きかけていく。また、選挙公報は公職選挙法が根拠となることから、同法の改正に向けた議論も開始する。 A点訳や音訳を支えるための取り組み  本連合は引き続き、障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法、改正障害者差別解消法等を根拠にして、出版者が活字出版物と同時にアクセシブルな電子書籍を出版することを求めていく。また、アクセシブルな電子書籍の製作を行っている点字図書館等の施設やボランティアグループに対して、出版社からテキストデータを提供する仕組みを構築することを強く求めていく。そして、点字図書館等の施設やボランティアグループの作業を軽減して、視覚障害者が求める媒体がより早く提供できるようになることを目指す。  一方で、人材育成が停滞している点訳者・音訳者等を増員することも喫緊の課題となっており、増員のために必要な施策の拡充や財源の確保等を国や自治体に求めていく。その際、人材の確保策として、これまでのようなボランティアにのみ依拠するのではなく、専門性を高め、有償化をも視野に入れた制度作りを求めていく。  さらに、ニーズが高い専門分野や教育現場における点訳・音訳活動を補うためには、最新技術の導入が必要である。活用を促すため、外国の機器類の輸入や国内における開発と設置に関する支援を国や業界に働きかけていく。その際、視覚障害当事者が使いやすい機器類の使用を求めていく。 B代筆・代読支援の普及に向けた取り組み  視覚障害者が社会参加する上で代筆・代読支援は不可欠であるが、その支援を受ける制度的基盤は必ずしも整っていない。同行援護における代筆・代読支援は在宅で受けることができずプライバシー保護の観点から問題があり、介護保険サービスにおける居宅介護では代筆・代読支援を受けることができない。それに対し障害福祉サービスの居宅介護では、在宅での代筆・代読支援を受けることができるものの、限られた時間内での家事援助等との兼ね合いから実質的に時間の確保が難しい。また、弱視者(ロービジョン)も代筆・代読支援を必要としているが、そもそも上述の制度を利用できないことが多い。一方で、本連合が令和4年度に行った調査によると、自治体が実施する意思疎通支援事業における代筆・代読支援には弱視者(ロービジョン)が利用できるよう制度設定しているところがあり、支援の質を確保するための代筆・代読支援者の養成研修を行っているところもあった。ただ、当該事業の代筆・代読支援を行っている自治体はまだ少数に留まっている。  そこで本年度は、本連合が研究の成果として作成したガイドラインやリーフレットを活用しつつ、加盟団体の協力の下、代筆・代読支援の実施自治体の拡大及びその支援の質の向上を図る。その際、社会のデジタル化の進展に合わせて、書類の代筆・代読だけでなくオンラインの手続きに関わる支援を行える支援者を養成していくことを各行政機関に求めていく。また、被災した場合は、住居地以外の避難先で代筆・代読支援を受ける必要があることから、市町村単位だけでなく都道府県単位で代筆・代読支援の必要性を共有し実施していくことも各行政機関に求めていく。 Cテレビやネットにおける放送のバリアフリー化  本連合は、長年にわたり総務省や各放送事業者に対して、テレビ放送における解説放送の充実、ニュース速報等の字幕テロップの音声化を求めてきた。令和5年度には、総務省において各放送事業者に対する解説放送付与の目標値等を定めた「放送分野における情報アクセシビリティに関する指針」の中間見直しが行われ、数値目標と併せて示された「大規模災害発生時等の対応」では、大規模災害時に留まらず、安全安心を脅かす速報に対応する旨の変更を盛り込んだものが公表された。しかし、放送事業者からは具体的な取り組み事例は示されていない。  本年度も解説放送が付与された番組がさらに増えるよう、総務省並びに各放送事業者に対して働きかけていく。さらに、ローカル局においても解説放送付与番組を増やすことを目指し、NHK・民放キー局の技術提供等、積極的な取り組みを行うよう働きかけていく。一方で、字幕テロップ等の音声化も徐々に増えつつあるが、特に生放送においては十分とは言えず、視覚障害者が他の視聴者と等しく情報を得られていない状況にある。AI技術等の新技術も活用する等、長年にわたり要望し続けている問題が解消される方向に進むよう、引き続き働きかけていく。  また、昨今では、インターネット配信による番組コンテンツも急速に増えている。これらの番組についても視覚障害者がその内容を理解できるようにすることが必要である。しかし現在の放送指針では配信番組に関するものは対象外となっているため、関係省庁に働きかけ、課題解消に当たらなければならない。そこで、総務省並びに各放送事業者に対し、障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法の基本理念にある「障害者でない者が取得する情報と同一の内容の情報を障害者でない者と同一の時点において取得することができるようにすること」を根拠に、配信番組の解説放送の充実、字幕テロップの音声化を強く求めていく。 D日常生活用具及び補装具の価格改定等に向けた取り組み  補装具の支給基準額が令和6年4月に改定されたものの、新しい基準額は全国の視覚障害者にとって満足すべきものにはなっていない。一方で、物価高騰や円安の影響で日常生活用具の価格が高騰している。特に輸入品に頼る拡大読書器は基準額との差が大きくなっている。拡大読書器については、日本眼科医会等の要望活動に協力し、昨年度は本連合の加盟団体が地域の自治体等に基準額の引き上げを求める要望を行ったものの、基準額を上げた自治体はごく少数であった。なお、視覚障害者用ポータブルレコーダーの一部の機種等の価格も高騰しつつあり、拡大読書器以外の日常生活用具の基準額の引き上げを求めることも必要となっている。今後も本連合と加盟団体が協力して、地元自治体に基準額の見直しを強く要望していく。  また、日常生活用具は基準額の問題だけでなく、支給対象範囲の見直しや対象品目の見直しが必要である。新しい機器の開発等により、これまで対象外であったものでも、視覚障害者の生活の質の向上に繋がるものもある。また、障害等級により支給範囲を限定しているものの中には、障害の実態に合わないものもある。特に音声読書器は1級・2級だけとしている自治体が多いが、弱視者(ロービジョン)には活字を読むのが困難な者も多い。そのため、支給対象範囲の見直しや対象品目の見直しも全国の自治体に強く求めていく。 (2)地域におけるリハビリテーション・システムの普及に向けた取り組み @聞こえにくさを抱える視覚障害者に対する支援  目からの情報が入らない・入りにくい視覚障害者にとって耳からの情報が重要であることは言うまでもないが、加齢その他の原因から聞こえにくさを抱える視覚障害者は少なくない。そこで本連合は、過去より聞こえにくさ相談会を開催し、聞こえにくさの原因となる事柄や聞こえにくくなった時に視覚障害者が抱える困難を伝え、適切な補聴器の選択等について助言している。  しかし、補聴器の購入に関する援助については大きな課題がある。障害者総合支援法による補装具費支給制度において、補聴器の支給対象者は両耳の聴力レベルがそれぞれ70デシベル以上の者、または一側耳の聴力レベルが90デシベル以上で他側耳の聴力レベルが50デシベル以上の者とされている。しかしながら、これより軽度の聴覚障害であっても生活のしづらさが生じるのが実態であり、特に耳からの情報を手がかりとする視覚障害者の生活上の困難は大きい。  そこで本年度は、補聴器を必要とする者がそれを入手しやすくなるよう、視覚または聴覚に困難を抱える障害当事者団体と共に補聴器の支給要件の緩和を求めていく。 A各地域での相談支援の充実  治療によって眼の機能の回復が難しい患者や視覚障害が重度化した者が、円滑に社会復帰・社会参加できるようにするための「視覚障害者の地域におけるリハビリテーション・システム」の確立が課題となっている。そして、同システムの確立に向けては、眼科での治療の段階から福祉制度や教育・就労支援機関への橋渡しを行う総合的なシステムの実現が求められている。  そこで本連合では、英国のECLOを参考にしながら、日本においてECLOと同様の相談に当たる「視覚障害リンクワーカー」の役割等を取りまとめた手引きを作成し、昨年度は同手引きに基づきリンクワーカー養成研修を試行的に実施した。また、日本眼科医会の主導により各都道府県で確立されているスマートサイト(視覚障害リハビリテーションネットワーク)の実情と課題を調査し、加盟団体の関わり方を含め、各種支援機関への効果的な橋渡しを実現するには何が必要かを検討してきた。  本年度はこれまでの研究の成果を踏まえて、日本眼科医会(地方にあっては各都道府県眼科医会)をはじめ、日本眼科学会、日本ロービジョン学会等との連携をさらに深めながら、視覚障害リンクワーカーの試行的養成研修の結果を踏まえてそのカリキュラムを整備し、実際に養成研修を実施する。加えて、視覚障害リンクワーカーが活躍する場を確保するため、安定した相談体制を創設・継続するための財源確保等、制度の在り方を検討する。 B視覚障害リハビリテーションの確立  身体障害者手帳の交付を受けている視覚障害者の数は、令和4年12月の「生活のしづらさなどに関する調査」によると、全国で27万3千人(推計値)であるが、この10年間は30万人前後を推移してきた。その一方で、平成19年の日本眼科医会の調査では視覚障害者の数は164万人とされている。しかも、その大半は高齢期を中心とした中途視覚障害者であり、視覚障害者全体の高齢化も進んでいる。そうした状況を踏まえ、中途視覚障害者及び高齢視覚障害者が、地域において生活の質を低下させることなく日常生活が送れるようにするとともに、孤立化や引きこもりを防ぐためにも、かかりつけの眼科から早期に加盟団体に繋がる必要がある。  加盟団体に繋がった高齢視覚障害者及び中途視覚障害者に対しては、よく相談に乗り、適切に対応することが必要であることから、ピアサポートないしピアカウンセリングを含む総合的な支援が必要である。例えば、娯楽や趣味を含む文化活動に参加できる機会を作ったり、歩行訓練や日常生活用具の紹介、スマートフォン等のデジタル機器を使えるようにする等の取り組みが必要である。このような視覚障害リハビリテーションが全ての地域において、自治体によって実施されるよう、加盟団体を中心に中央と地方が一体となって働きかけていく。  一方で、歩行訓練を中心とした生活訓練のさらなる普及に向けた取り組みも必要である。本連合は、「誰もがいつでもどこでも歩行訓練を含む機能訓練ないし生活訓練が受けられるようになること」が必要であると主張してきた。また、近年は、スマートフォンやタブレットを使えるようにするための訓練もそこに含めなければならないと主張している。しかし、残念ながら現時点では歩行訓練等を受けたくても受けられない地域が存在し、しかも高齢視覚障害者及び中途視覚障害者が必要に応じて円滑に訓練が受けられる状態とはなっていない。こうした環境を整えるためには、現在の自立訓練(機能訓練・生活訓練)における歩行訓練の報酬体系の見直しや、これらの訓練を行う事業所の設置基準を変更すること等を国に強く求めていくことが必要である。 (3)外出保障 @鉄道のさらなるバリアフリー化  これまで、本連合は国が進める駅ホームからの転落防止対策、駅の無人化等の施策を進めるための議論に参加してきた。本年度も、全国で視覚障害者の転落事故がなくなり、安全に安心して鉄道が利用できるよう、国や鉄道事業者に対してさらなるバリアフリー化を求めていく。  まず、全国の鉄道駅の半数以上で進んでいる無人化について、視覚障害者も安全に安心して利用するための早急な対策を講じるよう、強く働きかけていく必要がある。令和4年7月に国土交通省より「駅の無人化に伴う安全・円滑な駅利用に関するガイドライン」が示されているものの、視覚障害者が無人化された駅を利用するために十分な内容になっているとは言い難い。そこで本年度は、各加盟団体と共に、国や地方自治体並びに鉄道事業者に対して、ガイドラインを踏まえたハード面・ソフト面の総合的な安全対策を求めていく。また、ガイドラインに盛り込まれていない必要な対策についても加盟団体と共に意見集約し、国に働きかけていく。  さらに、本年度も全ての駅において、駅ホームからの転落防止対策としてのホームドアの設置、内方線付き点状ブロックの設置といったハード面の対策を進め、併せて駅係員等による人的サポートを中心としたソフト面の充実も求めていく。また、視覚障害者も自らの歩行の仕方を見直す機会を持てるよう、日本歩行訓練士会と連携していく。  一方で、ターミナル駅を中心に、鉄道駅から他の鉄道事業者の駅、あるいは鉄道駅から空港窓口までの誘導を断られ、連続した移動支援の確保ができなくなってきている。これは交通事業者が自社のエリアのみに限定した機械的な合理的配慮の発想からくる矛盾であり、動線を考慮した合理的配慮の提供を怠っていると言わざるを得ない。そのため、今も変わらず実施されている事例を基に、視覚障害者が確実に公共交通機関を乗り継ぎながら移動できるよう、国土交通省並びに公共交通機関に働きかけていく。  なお、令和5年3月には、都市部の鉄道事業者においてバリアフリー整備に係る費用を補うための料金値上げが実施され、各鉄道事業者はホームドア設置計画の前倒しを決定する等、制度による前進が見られている。しかし、値上げされたバリアフリー料金の使途については、各鉄道事業者がばらばらに公表しているため、一元的に情報を収集し公表するよう、引き続き国に求めていく。そして本連合は、値上げ分の使途について監視を行い、明確でないもの等に対しては改善を求めていく。 A公共交通機関未整備の地域における移動手段の確保  わが国においては、地方の鉄道やバスの路線が徐々に減便となり、廃線となる地域が広がっている。それは決して過疎化した地域や中山間地域に限られたことではなく、都市部以外の広範囲に及ぶ傾向がある。そうした地域においては、障害者だけでなく、高齢者をも含めた自家用車による移動ができない住民の移動手段が問題となっている。そうした地域の視覚障害者の日常生活や社会参加を可能にするための移動を保障する手段として、ガイドヘルパーの運転による同行援護サービスを制度化したり、ライドシェアを福祉サービスとして導入する等、移動におけるオンデマンドサービスの実現に向けて国に働きかけていくことが必要である。 B道路交通のさらなるバリアフリー化  踏切における安全で確実な横断については、「道路の移動等円滑化に関するガイドライン」に示されている踏切内誘導表示、道路と踏切の境界を示す点字ブロックの設置といった標準的な整備について、本連合は地方整備局も含めた国土交通省の協力も得ながら、各道路管理者並びに鉄道事業者に対して早急な整備を強く求めていく。また、踏切を安心して利用するための意見も収集し、ガイドラインにおける継続的な検討について必要な対策を求めていく。  そして、信号機を始めとする道路横断の安全対策は視覚障害者の移動に不可欠であることから、本年度も継続してこれらの安全対策の徹底を国等に働きかけていく。まず、横断歩道等には音響式信号機とエスコートゾーンの設置を求め、かつ、音響式信号機の稼働停止時間を短くすること、あるいは夜間や早朝は押しボタンの操作によって作動させることを求めていく。また、昨今は歩車分離式信号機やラウンドアバウト等、視覚障害者の安全な道路横断が確保できない仕組みが各地で増えてきており、その多くが地域の視覚障害者の声を聞かずに導入されていることから、これらの方式を導入する際は、必ず地域の視覚障害者の声を聞くことを求めていく。なお、国はスマートフォンで信号の色等を確認できる高度化PICSの設置台数を増やす姿勢を見せている。そのため、このシステムを視覚障害者が安全に安心して利用できるよう、国や関係機関に対する働きかけを強化する。特に、スマートフォンの利用が苦手な視覚障害者に対しては、このシステムの利用方法の講習会を各地で開催することを求めていく。  さらに、道路における視覚障害者誘導用ブロックの設置においては、さらなる推進を求めつつ、不適切な設置の改善、破損や劣化箇所への早期改修等も求めていく。 C同行援護のさらなる充実 ア ガイドヘルパーの確保に向けた取り組み  近年、様々な利用者の要望に沿った同行援護を実施するため、同行援護を担うガイドヘルパーの質と量の確保が課題になっている。そのため、本年度は次のことを中心に活動する。  本連合は、ガイドヘルパーの質を確保するために、国に対して同行援護従業者養成研修カリキュラムの改正を求め、令和7年4月に同カリキュラムが改正された。しかし、研修の講師等が改正した同カリキュラムを正しく理解した上で研修を実施しなければ、ガイドヘルパーの質は向上しない。そのため、同行援護事業所等連絡会の協力を得ながら、改正した同カリキュラムを踏まえた視覚障害者移動支援従事者(同行援護従業者)資質向上研修を開催し、研修に携わる講師の資質向上を目指す。  一方で、ガイドヘルパーの量の確保を行うためには、同行援護の報酬を改善し、安心して働ける環境の構築が必要である。特に長時間の利用になるほど報酬単価が下がる同行援護の基本報酬の在り方を見直すことが必要である。そのため本年度は、同行援護事業所等連絡会と共に、同行援護の長時間利用が多い地域の利用実態の調査等を行い、集められた情報を基に次期報酬改定に向けて国に対して同行援護の報酬単価の改善を求めていく。 イ 視覚障害者ガイドヘルパーの日の普及  本年度も「視覚障害者ガイドヘルパーの日」の普及を通して、同行援護のさらなる発展、同行援護を担うガイドヘルパーの地位向上や人材確保を目指す。  まず、本年度の「視覚障害者ガイドヘルパーの日」記念式典は、令和7年12月3日に京都府で開催し、令和7年度同行援護功労者表彰の表彰式等を行う。なお、昨年度より開始した同行援護功労者表彰は、昨年度の実施状況、本連合の加盟団体及び同行援護事業所等連絡会の加盟事業所の意見等を踏まえ、本年度中に必要な改正を行う。  また、「視覚障害者ガイドヘルパーの日」は、前述の記念式典だけでなく、全国各地で一斉に周知することが必要である。そのため、本連合の加盟団体、同行援護事業所等連絡会の加盟事業所に対して周知用のチラシ等を配布し、独自の周知活動の実施を要請する。 ウ 未解決課題の早期解決  全国の同行援護を利用する視覚障害者からは、様々な課題の解決を求める声が絶えず挙がっている。例えば、自動車の利用については、福祉有償運送、道路運送法における許可又は登録を要しない運送等により、自動車に利用者を乗せて移動する同行援護の事業所が増えてきている。しかし、ガイドヘルパーが自動車を運転している時間は報酬の対象外となることから、この時間を報酬の対象にすることが課題として残っている。この他にも支給量の地域間格差の是正、遠距離や宿泊を伴う同行援護の利用等の解決等が課題として残っている。  これらの未解決課題を早期に解決するためには、課題に関する実態調査や好事例の整理を行い、効果的な改善策の検討を行う必要がある。そして、その結果を取りまとめ、国への要望活動を行うとともに、全国各地に好事例を普及させていく。 Dナビゲーションシステムへの対応  昨今、視覚障害者が移動する際に有用といわれているスマートフォン等を利用した支援システムが開発されており、一部は実用化されている。これらのシステムは、適切に利用することにより視覚障害者の移動を補助するものとして大きく期待される。しかし、システムを利用することで周囲に対する注意が散漫になったり、白杖操作が疎かになったり、あるいは他の歩行者の妨げとなる可能性があり、かえって安全性が損なわれるのではないかという懸念もある。本連合は、いわゆる歩きスマホの危険性を考慮し、これまでの間、歩きスマホの取り締まりを強化することを国等に求めている。しかしながら、前述のシステムを使うことで、視覚障害者自身が歩きスマホと同じ状況になることは本末転倒である。  そのため、ナビゲーションシステムを体系的に整理し、それらを安全に利用するための指針を示すことが必要である。本連合はこれまでにも開発者、利用者、歩行訓練士等との意見交換を行ってきたが、本年度はそれらの関係者の声を取りまとめるとともに、本連合としての指針を公表することを目指す。 (4)就労問題 @一般就労 ア 雇用の質の確立  ハローワークにおける視覚障害者の職業紹介状況を見ると、あはきの就職件数は減少している。それ以外の分野における就職件数は伸びているものの、あはきの減少を補うほどではない。また、毎年6月1日現在の障害者雇用状況及び5年ごとに行われる障害者雇用実態調査の結果を見ても、視覚障害者の雇用は低い水準に留まっていると言わざるを得ない。今後もジョブコーチ支援等の雇用支援策の強化を求め、雇用の量的拡大を追求する必要がある。  その一方で、雇用の量的拡大だけでなく、働く環境の整備、働きがいのある仕事への従事、希望するキャリア形成等の雇用の質を高める必要があるとの声が複数の加盟団体から出ている。また、公務部門で働く障害者については障害者活躍推進計画の作成により雇用の質を高める取り組みが行われており、採用、定着、満足度、計画推進のための体制整備(相談体制等)が評価項目とされている。本連合としては、厚生労働省の「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」等の場を通じて、民間部門においても障害者活躍推進計画を参考にした雇用の質を向上させる取り組みが行われるよう求めていく。 イ 公務員対策  公務部門で働く障害者は、障害者雇用納付金や雇用保険を財源とする障害者雇用支援策の対象外とされている。公的部門は、そうした支援策によらず自ら積極的に働く障害者を支援することが建前になっているが、本連合が開催する公務員交流会では、そうした建前とはかけ離れた実態が多く報告されている。  そのため、今後も継続的に公務員交流会を開催し、そこで示された実態や意見等を踏まえ、把握できた課題や提言を集約する。その上で、関係府省庁(厚生労働省、内閣官房人事局、人事院、総務省)に懇談を申し入れ、公務部門で働く障害者の職場環境の整備、職場における適切な支援、働きがいのある仕事への従事、キャリア形成等が実現されるよう求めていく。 Aあはき ア マイナ保険証に関する取り組み  療養費を取り扱うあはき施術所においては、マイナンバーカードと健康保険証が一体化することに伴い、令和6年4月より患者が提示するマイナ保険証をカードリーダーやスマートフォン等で読み取り、専用のポータルサイトで患者の情報を確認する仕組み(オンライン資格確認)が導入された。さらに、健康保険証の新規発行が廃止された令和6年12月2日以降は、あはき施術所においてもオンライン資格確認が原則義務化となった。一方で、厚生労働省は、施術所の施術者が皆70歳以上又は視覚障害者である場合、施術所の廃止や受領委任払いの廃止を計画している施術所については、オンライン資格確認の義務化の対象外とすることとした。しかしながら、視覚障害があるあはき施術者の事務処理の困難な状況が軽減されたわけではなく、療養費の取り扱いに係る課題は解決されてはいない。  そこで、本連合は、あはき業団体と連携し、オンライン資格確認導入後の療養費に係る手続き等への影響等を踏まえ、国に対して視覚障害があるあはき施術者の意見を踏まえたシステムの提供を引き続き働きかけていく。 イ あはき自営業者に対する支援の拡充に向けた取り組み  令和2年10月から「雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業」がスタートし、視覚障害者が就労に関わる通勤や事務処理の支援を受けられるようになった。あはき自営業者においても同事業の活用が徐々に広まっており、令和6年度第2回全国団体長会議では、同事業を利用するあはき自営業者から保険請求の書類作成、マイナ保険証の資格確認等の活用事例が紹介された。しかし、同事業は地域生活支援促進事業の一つであり、地方自治体が独自の判断で実施することが前提になっていることから、現時点では同事業を実施する自治体は少数である。つまり、同事業が未実施の自治体においては、実施を地域の利用者から働きかけなければならない。  そこで、昨年度末に本連合が実施した重度障害者等就労支援特別事業の事例収集からあはき自営業者の活用事例を整理し、事例集として資料化する。本連合の加盟団体及び地域のあはき自営業者は、自治体に同事業の開始を要望する際に事例集を持参し、自治体との具体的な交渉を行う。それにより、重度障害者等就労支援特別事業を開始する自治体を増やしていく。 ウ あはきと理療科教育の未来を考える懇談会 提言の取りまとめ  盲学校(視覚特別支援学校等)の理療課程に進学する視覚障害生徒数は加速度的に減少し、その存続が危ぶまれている。その結果として、視覚障害あはき師の数は減り続けており、あはき業界における占有率も大きく低下している。しかし、あはきが視覚障害者にとっての適職であり、今後も視覚障害者の職業的自立の重要な分野であることに変わりはない。そのため、本連合では、2年間にわたり、あはき業界や学校関係者が参加する「あはきと理療科教育の未来を考える懇談会」を開催し、意見交換を行ってきた。本年度はその懇談会での意見を踏まえ、現状や課題を報告書としてまとめるとともに、理療教育の存続と若い視覚障害者や中途視覚障害者があはきに魅力を感じ、経済的に自立できる展望を示すための提言を行う。そして、その具体化に向けて運動を展開していく1年としたい。 エ 就労移行支援事業所の立ち上げ  あん摩マッサージ指圧、はり又はきゅうに関連する仕事への就労を希望する視覚障害者に対する専門的な知識及び能力の向上を図ることを目的として、本年度秋に障害福祉サービス就労移行支援事業所の開設を目指す。開設地は、事業所の立地条件等その他の要素を十分に考慮した結果、現在の日本視覚障害者センター内部を改修して利用することにした。指定協議説明会を受講済みであり、指定を受けるための事業計画書(案)の作成及び関連機関との協議を進めながら東京都との個別協議に臨む。 オ 全国あん摩マッサージ指圧コンテストの開催  本連合は一枝のゆめ財団と共催で「第2回あん摩マッサージ指圧甲子園」を令和7年8月24日(日)に開催する。本年度は、昨年度より開始したあん摩マッサージ指圧師を養成する学校・施設の学生を対象とする「あん摩マッサージ指圧甲子園」のみを開催する。あん摩マッサージ指圧師を目指す学生の間に施術者としての技能と態度を磨き合う機運を高めるとともに、当該手技に係る実技教育の一層の向上と国民一般の理解の啓発に寄与することを目的とする。 (5)災害・防災対策 @令和6年能登半島地震に関する対応  令和6年1月に発生した能登半島地震により、石川県、富山県、新潟県を中心に多くの被害が発生した。また、令和6年9月の能登半島豪雨により、石川県ではさらなる被害が発生した。本連合は、これらの災害により被害に遭った視覚障害者が一日も早く生活を再建し、日常生活に戻れるよう、本年度も継続して支援を行っていく。まず、日本盲人福祉委員会の令和6年能登半島地震被災視覚障害者支援対策本部を中心に、該当県の加盟団体と綿密に連携しながら、被災者への支援を行っていく。さらに、障害者全体に関わることはJDF災害総合支援本部と連携し、被災者への支援、国への働きかけ等を行っていく。 A視覚障害者向け災害・防災対策の充実に向けた取り組み  日本列島は、地震による災害だけでなく、台風や豪雨による災害、あるいは大雪による孤立も避けられない。そのため、災害対策は国の基本政策の一つである。その中で、災害における要支援者としての視覚障害者にとって、ハザードマップの音声化等によるアクセシビリティの確保、発災時における情報保障や避難誘導に関する仕組み作り、避難所における適切な支援等の課題が山積している。既に要支援者のための個別避難計画の作成が全ての自治体に求められているにも関わらず、あまり進んでいない実情を踏まえ、視覚障害者とりわけ重度視覚障害者を対象とする個別避難計画の早期作成を国及び自治体に求めていくことが必要である。 (6)教育問題 @総括所見に基づくインクルーシブ教育に関する取り組み  国連障害者権利委員会より日本政府に対して示された総括所見では、教育に対して強い懸念が示されていた。そこで、将来ビジョン推進委員会では、令和5年度より教育分野の検討を行い、視覚障害児・者の教育に関する課題整理を行った。その結果、「将来ビジョン推進委員会 総括所見に関する検討 最終報告書」では、本連合内に「インクルーシブ教育推進懇談会」を設置し、視覚障害児・者にとって有効なインクルーシブ教育の在り方を検討する旨の提案が行われた。そこで本年度は、同懇談会の正式な立ち上げを行い、関係者を交えながら、視覚障害児・者にとって有効なインクルーシブ教育の在り方を議論する。そして、議論の結果は国や関係機関に対する本連合の働きかけに反映させ、我が国におけるインクルーシブ教育の推進を進めていく。 A視覚障害児童・生徒に対するプログラミング教育の充実に向けた取り組み  社会におけるデジタル化の進展を見据えて、学校教育でプログラミング教育が広く行われるようになってきているものの、視覚障害児童・生徒に対するプログラミング教育のノウハウは十分に確立されているとは言えず、実践例も少ない状況である。そこで本連合は、東北学院大学の協力を得て、視覚障害児童・生徒が理解しやすいプログラミング講座を実施することにより、そのノウハウを検討してきた。令和4年度から5年度は、日本語の点字及び拡大文字を貼り付けたブロックを並べることにより、モーターの回転、センサーを利用して光や温度の感知等を行ったが、令和6年度はパソコン上で完結する音楽やゲームの作成を行い、児童・生徒が在宅で受講する場合の可能性と課題も検証した。本年度は、これまでの実践経験を生かして、オンラインによる講座の実施を含め、視覚障害児童・生徒のプログラミング教育のさらなる拡充に取り組む。その際、在宅で受講する場合は児童・生徒のサポート役となる保護者に対しても視覚障害関係の基礎的なICTの活用法を伝えることが重要であることから、保護者への指導も視野に入れた効果的な講座の在り方を検討する。 (7)文化・芸術、スポーツ @第51回全国視覚障害者文芸大会の開催  視覚障害者の文化芸術活動に寄与し、当事者の相互理解と親睦を深めることを目的として、第51回全国視覚障害者文芸大会(短歌、俳句、川柳、随想・随筆)を運営する。なお、同大会の作品集の点字版・音声デイジー版をサピエ図書館に登録し、コンテンツの提供を行う。 A第47回全国視覚障害者将棋大会の開催  本年度も伝統ある全国視覚障害者将棋大会を公益社団法人日本将棋連盟等の協力のもと実施する。時期や場所は未定。 B一般校で学ぶ視覚障害児童・生徒向けのブラインドスポーツ体験会の開催  インクルーシブ教育の推進により、多くの視覚障害児童・生徒が地域の一般校に通い、健常の児童・生徒と共に教育を受けている。しかし、体育の授業については、安全性の観点から視覚障害児童・生徒が参加できず見学になる事例が多い。視覚障害児童・生徒がスポーツ活動を行うことは非常に重要であることから、本連合としては、これらの視覚障害児童・生徒が体を動かすことができるブラインドスポーツを活用すべきと考えている。そのため、本連合は昨年度、文部科学大臣に対して要望書を提出し、地域の一般校に通う視覚障害児童・生徒に対するブラインドスポーツ体験の提供を強く求めた。この働きかけは本年度も行う。  一方で、本連合のスポーツ協議会は、地域の一般校に通う視覚障害児童・生徒に対するブラインドスポーツ体験会の普及を目指しており、昨年度は令和6年11月に滋賀県で「第1回ブラインドスポーツ体験会」を開催した。その結果、体験会の効果的な開催方法を整理することができ、本年度以降も継続して同体験会を開催することを計画している。本連合は同協議会が実施するブラインドスポーツ体験会に協力し、開催地を全国に広げていくことを目指す。 (8)関係団体との連携 @日本障害フォーラムとの連携  日本障害フォーラムは、日本国内の障害関係団体を束ねる唯一の存在として活動している。本連合は引き続き日本障害フォーラムに参加し、障害者基本法の改正に向けた取り組み、次期の総括所見に関する取り組み、令和6年能登半島地震に関する取り組み等に協力する。また、近年、国や関係機関が実施する検討会への委員派遣等の依頼が日本障害フォーラムに届いている。この依頼にも積極的に協力する。 A日本眼科医会、日本ロービジョン学会等との連携  近年、日本眼科医会の主導により、各都道府県でスマートサイト(視覚障害リハビリテーションネットワーク)が確立され、本連合の加盟団体のほぼ全てが参加している。スマートサイトがその効果を発揮するためには、眼科医療、とりわけ眼科におけるロービジョンケアが重要である。そのため、本連合及び本連合の加盟団体は、日本眼科医会(地方にあっては各都道府県眼科医会)をはじめ、日本眼科学会、日本ロービジョン学会、さらには患者団体等との連携を進め、全国でスマートサイトの活性化を図っていく。なお、令和3年より実施している日本眼科医会の役員と本連合の役員との定期懇談会は本年度も開催し、同会との連携を深めていく。 Bその他の団体との連携  視覚障害の関係団体だけでなく、様々な障害当事者団体、関係団体とも連携し、視覚障害を含む障害者全体の福祉向上を目指して活動する。主な団体は以下のとおりである。 ア 日本盲人福祉委員会  ・WBU及びWBUAPに関する取り組み  ・視覚障害者選挙情報支援プロジェクト  ・大災害被災視覚障害者支援対策本部 イ 情報コミュニケーション4団体連絡会(全日本ろうあ連盟、全日本難聴者・中途失聴者団体連合会、全国盲ろう者協会、本連合)  ・情報保障の確立に向けた取り組み  ・関係府省庁の審議会等での連携に向けた協議 ウ 障害者の文化芸術活動を推進する全国ネットワーク  ・障害者芸術全般の取り組み エ あはき等法推進協議会、鍼灸マッサージ保険推進協議会  ・あはき全般に関する各種取り組み オ 東洋療法研修試験財団  ・はり師、きゅう師及びあん摩マッサージ指圧師施術管理者研修実行委員会への委員派遣 カ 国立大学法人筑波技術大学  ・経営協議会への委員派遣 キ 全国社会福祉協議会  ・障害関係団体連絡協議会への委員派遣 ク 日本歩行訓練士会  ・イベント開催の協力 3.ライフステージごとの取り組み (1)視覚障害児及び子育て  こども家庭庁に設置された障害児支援部会に本連合の代表者を派遣することにより、国の障害児施策に対する要望活動を行う。本年度は次のことを中心に活動する。  まず、児童発達支援及び放課後等デイサービスは、視覚障害児童・生徒に特化した事業所が少ないため、これらの事業所を増やすことを目指し、国に対して障壁となる制度の改善を求めていく。なお、本年度は、これらの要望活動を強めるために、視覚障害児童・生徒を持つ親との意見懇談会を開催する。  また、視覚障害児童・生徒を育てる親、または子供を育てる視覚障害者は、様々な支援を必要としているのにも関わらず、その支援は満足なものではない。特に、子供の通園・通学における移動の支援は教育行政と福祉行政に跨ることから、その支援が実施されていない。本年度は、これらの課題の解決を求め、国に対する要望活動を強める。 (2)視覚障害青年  視覚障害青年に関する問題は多岐にわたり、就学や就労、結婚・子育て等のタイミングで個別具体的な問題が発生する。そこで本連合は、これらの問題を解決するためには、視覚障害青年が自ら考えて行動することが必要であると考え、将来ビジョン推進委員会に多くの視覚障害青年を集め、活発な意見交換等を行っている。本年度もこの取り組みを継続し、本連合の活動に視覚障害青年の意見を反映させていく。なお、同委員会では、昨年度にとりまとめた「総括所見に関する検討 最終報告書」に示した事業の実施に向け、本年度は具体的な作業を行う。その中では本連合の将来ビジョンの改正作業、インクルーシブ教育推進懇談会の立ち上げ、就労情報ウェブサイトの立ち上げ等の作業を行う。  また、本連合の青年協議会は、地域で活動する視覚障害青年を増やすため、SNSを活用し、非会員に対して活動内容の周知等を行っている。青年協議会がこれらの活動を推進するために、本連合は青年協議会の取り組みに協力する。 (3)視覚障害女性  近年、視覚障害女性に対する複合差別が浮き彫りになっており、様々な困り事があっても周りに相談できない視覚障害女性が多いことが明るみになった。そこで、本連合の総合相談室では、女性協議会の代表者、専門の弁護士等が女性相談員として相談を受ける「視覚障害女性の相談会」を令和4年度より定期開催している。本年度は同相談会の周知をこれまで以上に広め、全国の視覚障害女性からの相談に対応することを目指す。 (4)弱視者(ロービジョン)  弱視者(ロービジョン)に関する取り組みは、本連合の弱視部会を中心に進めていく。  まず、見えにくいことを打ち明けられない人へ情報を届けるため、本部会の情報を動画配信する試みを進める。また、さらなる情報収集を行うための試みとして、総合相談室において弱視(ロービジョン)相談の開催を検討する。多くの弱視者(ロービジョン)は自身が弱視(ロービジョン)であることを打ち明けることができず、日々の生活に困っている者が多い。そうした弱視者(ロービジョン)の相談に応じ、困り事を集約し、国や関係機関に解決策を働きかける。  さらに本年度も弱視者(ロービジョン)の困り事に関する情報収集を行うため、同部会が主催するオンライン意見交換会や研修会を開催する。本年度は、これまでに情報収集を行っていた移動や情報取得に加え、就労、さらには同行援護や代筆・代読支援といった障害者支援に関する情報収集を進める。同行援護や代筆・代読支援については、弱視者(ロービジョン)自身が制度や仕組みを理解し活用できるような情報提供も行う。なお、オンライン意見交換会や研修会では、より多くの参加者を募り、テーマごとに深い議論を行う。  一方で、加盟団体が弱視(ロービジョン)問題に取り組むことも重要となっている。会員減少が加盟団体全体の共通課題となっている中で、弱視(ロービジョン)の会員を増やすことは必須ともいえる。そこで本年度は、本連合全体で弱視(ロービジョン)に関する取り組みを共有し、各団体の中に弱視(ロービジョン)に関する部会の設置等を推進していく。 (5)高齢視覚障害者及び中途視覚障害者  視覚障害者の約7割は高齢者といわれている。この背景には、視覚障害になる原因疾患が高齢になってから発症する病気が主であることが影響している。つまり、この約7割の中には中途視覚障害者が多く含まれていることになる。そのため、本連合は高齢または中途の視覚障害者に特化した取り組みも行わなければならない。本年度は次のことを中心に活動する。  まず、高齢視覚障害者及び中途視覚障害者が個々人のニーズに合った生活が送れるよう、地域で暮らすために必要な視覚障害リハビリテーションが受けられる環境を構築する必要がある。この中では、視覚障害になったばかりの者がすぐに視覚障害リハビリテーションを受けられるよう、眼科医と地域の視覚障害関係機関が連携すること等を進めていく。  また、高齢視覚障害者及び中途視覚障害者の中には、一人で暮らす者が少なくはなく、これらの者の孤立や引きこもりを防ぐことも求められている。そのため、高齢視覚障害者及び中途視覚障害者に対して、これらの者が参加しやすい演劇・音楽・スポーツ鑑賞等の娯楽に関する情報提供を積極的に行っていく。また、高齢視覚障害者及び中途視覚障害者が演劇・音楽・スポーツ等の活動ができる場を全国各地に作っていくことも必要であるため、関係団体と連携し、活動できる場の創出に向けた検討を開始する。  さらに、養護盲老人ホームを含む地域の老人ホームやグループホームに入居を希望する者が希望に沿った施設に入所でき、安心して生活が送れるよう、国に対して施策の改善を求めていく。 4.関係府省庁の審議会等への出席  関係府省庁が開催する各種審議会に、本連合から委員を派遣し、幅広い視覚障害者の意見を基にした制度改善を求める。主な審議会等は以下のとおりである。 @内閣府  ・障害者政策委員会  ・障害者による情報取得等に資する機器等の開発及び普及の促進並びに質の向上に関する協議の場 A厚生労働省  ・社会保障審議会障害者部会  ・労働政策審議会障害者雇用分科会  ・社会保障審議会医療保険部会あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費検討専門委員会 Bこども家庭庁  ・こども家庭審議会障害児支援部会 C国土交通省  ・移動等円滑化評価会議  ・高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準に関するフォローアップ会議  ・新技術等を活用した駅ホームにおける視覚障害者の安全対策検討会 D文部科学省(厚生労働省)  ・視覚障害者等の読書環境の整備の推進に係る関係者協議会 5.各種会議、行事の開催予定 (1)評議員会  定時 令和7年6月24日 (2)理事会  第1回 令和7年4月24日  第2回 令和7年6月6日  第3回 令和7年6月24日  第4回 令和7年7月  第5回 令和7年11月  第6回 令和8年3月 (3)全国団体長会議  第1回 令和7年5月25日  第2回 令和7年10月  第3回 令和8年2月 (4)全国大会  開催名:第78回全国視覚障害者福祉大会(千葉大会)  期日:令和7年5月25日(日)、5月26日(月)  場所:TKP東京ベイ幕張ホール (5)各協議会等の全国大会・代表者会議 @女性協議会  開催名:第71回全国視覚障害女性研修大会(東海・北信越ブロック 新潟大会)  期日:令和7年9月3日(水)、4日(木)  場所:新潟ユニゾンプラザ、アートホテル新潟駅前 A青年協議会  開催名:第71回全国視覚障害青年研修大会(愛知県大会)  期日:令和7年9月14日(日)、15日(月・祝)  場所:emCAMPUS B音楽家協議会  開催名:第61回全国音楽演奏会並びに第63回音楽家協議会福祉大会  期日:未定  場所:未定 Cあはき協議会  開催名:令和7年度代表者会議  期日:令和7年6月  場所:オンライン及び日本視覚障害者センター研修室 Dスポーツ協議会  開催名:令和7年度スポーツ協議会代表者会議  期日:令和7年6月  場所:オンライン E弱視部会  開催名:令和7年度委員総会  期日:令和7年春、夏  場所:オンライン及び日本視覚障害者センター研修室 (6)文化芸術関連の行事 @第51回全国視覚障害者文芸大会  募集作品:短歌、俳句、川柳、随想・随筆  募集期間:令和7年6月初旬〜7月末 A第47回全国視覚障害者将棋大会  期日:未定  場所:未定 (7)その他  令和7年4月に改正した同行援護従業者養成研修カリキュラムを踏まえ「視覚障害者移動支援従事者(同行援護従業者)資質向上研修」(一般の部、視覚障害当事者の部)を開催する。 第U章 日本視覚障害者センターの事業 はじめに  日本視覚障害者センターでは、点字図書館の運営、点字出版物や録音製作物、各種広報誌による情報提供並びに更生相談等の事業を通じ、全国の視覚障害者に対する第二種社会福祉事業及び公益事業等に取り組んでいく。さらに、厚生労働省や東京都からの受託事業や補助事業のほか、民間団体や企業からの補助を活用して、本センター内事業を効率的に展開し、事業収入の安定化を目指していく。なお、就労移行支援事業所の立ち上げに向けた準備を計画的に実施して今秋の開設を目指していく。 1.情報提供・広報活動 (1)全国の視覚障害者に対し、国内外の障害保健福祉関連情報等を点字版や音声版で広報する。(厚生労働省委託事業) (2)日刊の新聞情報を点字等によりネット回線を用い全国の点字図書館等へ提供する点字ニュース即時提供事業を実施する。(厚生労働省補助事業) (3)愛盲時報、点字日本、日視連アワー、声のひろば等の定期刊行物を継続して発行する。 (4)全国の各自治体広報・議会報、その他点字物や録音物等を製作発行し、引き続き視覚障害者の生活に不可欠な情報の提供に努める。 (5)本センターの事業内容や活動の広範な周知と情報公開を図るために、ホームページの内容の充実と迅速な更新を行う。 (6)国政選挙等では、視覚障害者選挙情報支援プロジェクトと連携し、各媒体での選挙公報(お知らせ版)を提供する。 2.相談事業 (1)全国盲人相談事業(厚生労働省委託事業)では、総合相談、法律相談、眼科相談、聞こえにくさ相談を実施する。 (2)生活相談(同行援護相談、ICT相談、聞こえにくさ相談、障害年金相談)も適宜専門相談員を配置して対応する。 (3)視覚障害女性の相談会(集中相談)を年4回実施するとともに、利用者のニーズ等に応じ適宜対応していく。 (4)視覚障害公務員交流会を年2回実施する。 (5)公益社団法人 NEXT VISIONとの連携による就労相談も引き続き取り組んでいく。 3.養成講習会の開催 (1)東京都委託点訳奉仕員指導者養成講習会を全20回開催する。 (2)東京都委託朗読奉仕員指導者養成講習会を全25回開催する。 (3)東京都委託専門点訳奉仕員養成講習会(英語・理数・楽譜)を各10回ずつ(計30回)開催する。 4.ボランティアの育成 (1)点訳基礎講座及び初級講座を開催する。 (2)音訳者、点訳者、テキストデイジー製作者を対象としたスキルアップ勉強会を開催する。 5.調査研究事業 (1)生活協同組合の社会福祉活動助成事業を受け、「視覚障害リンクワーカーの養成研修カリキュラム作成事業」を行う。 (2)盲学校(視覚特別支援学校等)に通っている視覚に障害のある児童・生徒を対象としたプログラミング講座を東北学院大学と共同で行う。 6.用具購買 (1)災害時に有効活用できる防災用品の販売にあたっては、引き続き充実を図る。併せて、福祉機器展等の出展の機会には、商品を展示するとともに取り扱いの説明を行えるように務める。 (2)弱視(ロービジョン)の利用者を対象とした製品については、文房具を中心とした製品の企画立案及び販売に務める。 (3)用具購買所からの情報発信においては、日視連アワー、JBニュース、点字日本を活用するとともに、新商品についてはSNSの活用やチラシを作成することで、速やかに情報提供が行えるように務める。 7.地域公益活動・地域貢献活動 (1)新宿区内社会福祉法人連絡会と連携を図り、協働で地域公益活動(フードパントリー、オンラインサロン、CSR活動企業との連携、人材の育成)に取り組んでいく。 (2)日視連フェスティバルの実施を通じて、地域住民に還元できる有益な情報を提供していく。 (3)地域の学校や企業等からの要請に応じた福祉等の出前講座に適宜対応していく。 (4)地元戸塚地区との連携に努め、地域活動の行事には積極的に参加し理解を深める。 8.就労移行支援事業所の立ち上げ (1)4月から5月は、関係機関との調整や事業計画書等の必要な提出書類を整備して、公益財団法人東京都福祉保健財団の審査を受審して指定を受ける。 (2)本センターの改修工事及び増築工事に伴う部門の移設等は、工程表を基に計画的に実施する。 (3)新規事業所の職員配置基準に基づく必要な人材の確保(雇用)を行うとともに、規程類の整備、各種書類の整備、新規備品等の調達を行う。 (4)適宜、利用者確保に向けた募集活動(PR)を展開していく。 9.施設等の整備  本センターが築15年を経過し、経年劣化が見られることから、順次設備の修繕を行う。また、ICT環境の進展に関する情報収集に努め、より有効な機器等の整備に努めていく。 10.文化・芸術活動 (1)第47回全国視覚障害者将棋大会を開催する。 (2)第51回全国視覚障害者文芸大会を開催する。 11.防災対策 (1)総合避難訓練を8月に実施するとともに、幅広い災害に対応した内容を加味した取り組みとする。 (2)新規事業所の開設により本センターの防火対象物の区分変更が行われることから、消防署の指導に基づき避難訓練計画を策定する。 12.職員研修 (1)職員研修計画を立案し、各種研修会等に職員を派遣し資質の向上を図る。 (2)視覚障害者の誘導方法、点字基礎講座、社会福祉法人の概要等の新人研修を実施する。 13.健康管理・レクリエーション (1)福利厚生の一環として、定期健康診断を年1回実施する。希望者にはインフルエンザ予防接種の補助を行う。 (2)前年度から開始した職員向けメンタルケア事業を継続し、心身の健康に関する情報提供や相談対応等を行う。 14.各種会議、委員会  以下の会議を実施するとともに、本センター内で実施する事業の活性化を図ることを目的に各種委員会を設置する。  ・センター運営会議(月1回)  ・部長会議(適宜)  ・各種委員会(防災対策委員会、日視連フェスティバル実行委員会)