社会福祉法人日本視覚障害者団体連合 令和6年度事業報告書 (自令和6年4月1日 至令和7年3月31日) 第1 組織・団体活動  1.横断的課題に対する取り組み (1)視覚障害者の基本的人権の確立に向けた取り組み @障害者基本法の改正に向けた取り組み  国連障害者権利委員会より日本政府に対して総括所見が令和4年に示されたものの、その後の日本政府の対応は遅く、課題解決の糸口が見つからない状況が続いている。そのため、日本障害フォーラムを中心に日本の障害者施策の根幹とも言える障害者基本法の改正を求める議論が行われている。同法の改正が実現すれば、障害者権利条約の国内実施と総括所見の具体化が進み、更には本連合が求める様々な要望の実現に結びつく可能性が高まる。そのため、本年度は障害者権利条約及び総括所見、障害者基本法の改正に関わる活動を強めた。  まず、令和6年6月に全日本ろうあ連盟、全日本難聴者・中途失聴者団体連合会、全国盲ろう者協会、本連合が参加する情報コミュニケーション4団体連絡会として、内閣府の障害者政策委員会に対して要望書を提出し、わが国が障害者権利条約及び総括所見を履行するために、障害者基本法の改正に向けた議論等を同委員会で行うことを求めた。なお、日本障害フォーラムとしても障害者基本法の改正を同委員会に求めており、同委員会に対する提案等を行うべく継続的に議論を行っている。  また、昨年度より開始した本連合の障害者基本法の改正に向けた基本方針をまとめる作業は、障害者基本法の改正に向けた意見懇談会において検討を進めた。その結果、令和6年10月に「障害者基本法の改正に向けた検討」として、本連合の障害者基本法の改正に向けた基本方針を取りまとめた。なお、日本障害フォーラムにおける障害者基本法の改正に向けた議論では、この基本方針を基に視覚障害者にとって必要な内容を提案している。  さらに、総括所見については、令和5年度より本連合の将来ビジョン推進委員会において、「自立した生活及び地域社会への包容(19条)」「教育(24条)」「労働及び雇用(27条)」の現状と課題の整理を行い、令和6年7月に本連合が取り組むべき施策の方向性を「将来ビジョン推進委員会 総括所見に関する検討 最終報告書」としてまとめた。 A改正障害者差別解消法の施行に伴う取り組み  改正障害者差別解消法が令和6年4月より施行されたことを踏まえ、令和6年度事業計画では、本連合が平成26年に作成した差別事例集「視覚障害者にとって差別ってどんなこと?」の全面改正を行うことを計画していた。しかし、本年度は改正に向けた準備のみに留まり、具体的な作業は次年度に行うことになった。なお、差別事例集の発行費用を確保するため、2025年度ヤマト福祉財団助成金(障がい者福祉助成金)に申請し、令和7年3月に助成の決定を受けた。  また、厚生労働省の令和6年度障害者総合福祉推進事業「身体障害者補助犬法の効果的な普及・啓発に関する調査研究」に協力し、視覚障害者が安心して盲導犬を利用できるよう、同事業に対して様々な提案を行った。 B日本点字法の制定に向けた取り組み  本連合は、本年度の陳情項目の1つに「視覚障害者に対する情報保障として、点字を恒久かつ全面的に保障するため、「日本点字普及法」(仮称)を制定すること」を掲げ、内閣府に陳情を行った。  実は、点字を公式文字として認めさせる動きは、明治42年(1909年)に、杉亨二、山岡熊治、森恒太郎(森盲天外)、桑田鶴吉、高岡清次によって、「点字公認に関する請願書」が提出されたことから開始している。しかし、この請願書は最終的に同年12月の閣議決定において、「点字は盲教育の為に設けられたる特別の符号に過ぎずして、一般に慣用する国語に非ず。(中略)此の如きは、現今文運の状態に照し、不必要の事と思考す」として、極めて不当な理由で却下されている。  本連合は、110数年前の歴史に学びつつ、点字の文字としての公的位置づけを求めて、運動を強めていかなければならない。当面の目標としては、点字の選挙公報を選挙管理委員会の責任で作成し配布すること、点字による公的手続き(行政・金融機関等)を可能とするシステムを構築すること、インクルーシブ教育における点字利用の児童・生徒に対する点字教科書等の保障を実現すること等である。 (2)情報アクセシビリティの更なる推進 @障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法の更なる推進  視覚障害者にとって障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法は、点字、音声及び拡大文字といった媒体での情報を獲得し、あるいは発信する上で重要な理念を定める法律であるが、その法律が個々の制度の運用や法改正に当たり、どれだけ遵守されているかは疑問である。テレビ放送において字幕の音声化が遅々として進んでいないし、出版物がタイムラグのない状態で点字本や録音図書として提供される環境は整っていない。また、行政手続きを始めとする様々な申し込み等において、点字での申請や代筆等を適宜受けることができていないという現実もある。つまり、この法律を梃子として前進させるための仕組づくりが遅れているのである。  本連合が情報アクセシビリティを求める際には、常にこの法律を引用し、あるいは指摘して、そこで掲げられている理念が実現されることを求めてきた。本連合も参加する情報コミュニケーション4団体連絡会でも議論し、統一要求も行った。しかし、本年度中にこの法律の真価が発揮されるという現実を見ることはできなかった。この法律に定められた理念が実践されていないことを踏まえ、今後はその改善を求める仕組みを実現するための運動を更に強めることが必要である。 AウェブやICT機器のバリアフリー化  国を挙げてのデジタル化が進む中で、様々な機関からの情報提供においてウェブ等の活用が一層進んでおり、アクセシビリティに関する指針に即したウェブサイトが増えている。しかし、行政機関等のホームページの多くがPDFによる情報提供を行う等、依然として視覚障害者が情報を取得しにくい状態になっている。  そこで本連合は、関係府省庁への陳情においてウェブアクセシビリティの確保を更に促進すること、また、ICT機器を利用した行政手続きが視覚障害者も容易に行えるよう改善すること、機器やシステムの開発段階から意見を聴取することを引き続き求めた。加えて、金融機関に対しては、金融庁が主催する意見交換会を通じて、ATMやネットバンキング等について視覚障害者の立場から改善を求めた。  一方で、厚生労働省の働きかけにより音声式のパルスオキシメーターの開発が着手され、その開発業者との意見交換を行った。また、障害者差別解消法の改定により合理的配慮の提供が民間部門でも義務化されたことを受けて、クレジットカード会社、廃品処理等を扱うリサイクル業者、あるいは薬の配送・管理業者等から情報提供や手続きの在り方に関して相談を受け、助言した。  しかし、セルフレジやキャッシュレスの決済システムについては、多くの場面で改善が見られないのが現状である。今後も機会を見て視覚障害者の立場から改善を求めていく。また、視覚障害者個々人の工夫によりICT機器やシステムを利用している事例を取りまとめるには至らなかった。今後、事例の取りまとめとその活用を図る。  なお、新たな動きとして障害者・障害児の福祉等関連情報データベースのデータを匿名化した上で研究目的の団体に提供するためのガイドラインの作成が行われた。本連合は厚生労働省並びにこども家庭庁に対し、データ提供の申請手続き及び提供されるデータ形態が視覚障害者も利用しやすいものとなるよう意見を提出した。  また、出版企業及びABSC(アクセシブル・ブックス・サポート・センター)から要請があり、出版・図書館・大学等の関係者に対して、本連合の職員が視覚障害者のICTの活用方法及びウェブのアクセシビリティと読書環境に関するプレゼンテーションを行った。 B行政・司法手続きのバリアフリー化  令和5年6月に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」に基づき、自治体の行政手続きの効率化と国民の利便性向上を目指し、関係府省庁と連携して行政手続きのオンライン化を推進している。これらを踏まえ、本連合は関係府省庁に対して陳情を行ったものの、大きな進展は見られなかった。  また、司法手続きのバリアフリー化については、本連合の代表者が令和5年3月に対応したヒアリングでの意見を踏まえ、令和6年9月に民事司法の在り方に関する法曹三者連絡協議会・障害者司法アクセスWGが「ウェブ会議における障害者への配慮について」を取りまとめた。なお、刑事訴訟における司法手続きについては、令和5年4月に法務省法制審議会に本連合で取りまとめた要望書を提出している。 (3)日視連加盟団体の組織強化に関する取り組み @加盟団体の事業化の推進、未法人化団体への支援  本連合の加盟団体の中には法人格を取得していない団体、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス等の事業を事業主体として実施していない団体がいくつかある。法人格を取得していない団体は、結成から今日までの経緯の中で身体障害者団体の視覚障害者部会といった組織形態を維持しなければならない事情があったり、会員数そのものが極端に少ないため、法人化という議論にまで至らない団体もいくつか存在している。そうした団体に対しては、3年ないし5年をかけて、組織の自立性や独立性を強めるためにどのような組織運営が必要か、会員獲得や事業化が可能であるかを検討することを促していく。  また、本年度は組織・団体活動の強化や事業化を目指す団体との懇談の中で、小地域でのイベントの開催や交流の場を作り出すこと、同行援護等の地域の視覚障害者の利便性向上に繋がる障害福祉サービスを実施することを対象団体に提案し、現会員の帰属意識や新たな会員獲得に向けた取り組みを後押しした。  さらに、高知県における新たな組織(高知ビップライフ会)の立ち上げに協力し、同会は令和6年12月に本連合へ加盟した。同会に対しては、今後は法人化に向けた支援を検討し、法人格を取得することによって、地域に存在感をアピールできる事業の実施を具体化させる。 A人権啓発講演会等に対応する講師の養成に向けた取り組み  昨今、障害者理解を深めるため、全国の自治体や企業、学校では人権啓発講演会や学習会が開催され、各地域の視覚障害者が講演を行うことが増えている。しかし、講師を務める視覚障害者によって話す内容が異なり、場合によっては参加者に誤解を与える恐れがあることが問題視されていることから、本年度は加盟団体支援プロジェクト委員会において、人権啓発講演会等に対応する講師の養成に向けた取り組みを開始した。  本年度は、本連合が開催する研修会の実施内容の検討、研修会で使用するマニュアル及びテキストの準備を行った。また、各加盟団体が地域からの要請により対応している人権啓発講演会等の実施状況を確認するため、加盟団体に対してアンケートを行った。さらに、令和7年2月に開催した令和6年度第3回全国団体長会議では、「人権啓発講演会等に対応する講師の養成について」を議題とし、本連合が開催する研修会の実施内容、マニュアル及びテキストの内容等について議論を行った。その結果、多くの加盟団体より賛同が得られ、次年度に研修会を開催し、次年度版のマニュアル及びテキストを発行することを決めた。 B法人運営におけるガバナンス・コンプライアンスを学ぶ研修会の開催  本年度は、本連合の加盟団体が公益的事業運営主体として、あるいは公的支援を受ける団体として、社会的な信頼を維持するために必要とされているガバナンスやコンプライアンスが実現できているかを検証するための資料作り及び加盟団体に対する研修会の実施を目指したが、それらを具体化するには至らなかった。なお、本年度は、社会福祉法人や公益社団法人または公益財団法人のためのガバナンスコードやコンプライアンス規則に関する資料収集を行い、次年度に研修会の開催等を具体化するための準備等を行った。 2.主要課題に対する取り組み (1)情報保障 @マイナンバーカードに関する取り組み  昨年度に引き続き、マイナンバーカードに一体化された健康保険証(以下、マイナ保険証)を視覚障害者が利用することを踏まえ、端末機器のアクセシビリティを確保すること、そのアクセシビリティが確保されていないのであれば人的支援を必ず用意すること等を国や自治体等に強く求めた。  このことは、あはき業に従事する視覚障害者にも関わるため、今後も強く求めていく必要がある。特に、医療機関や調剤薬局に設置されている顔認証付きカードリーダーについては、顔認証による本人確認やタッチパネルによる暗証番号入力が求められる機器のみが設置されており、視覚障害者が単独で操作できない状態が続いている。そのため、顔認証付きカードリーダーに音声読み上げ機能やテンキーを付加すること、弱視者(ロービジョン)が見やすい画面表示にすること等を引き続き求めていく。  なお、療養費を取り扱う視覚障害あはき師のオンライン資格確認に関する具体的な取り組みは「(4)就労問題 Aあはき」に記載する。 A視覚障害者向け選挙公報の制度的保障を求める取り組み  衆議院議員総選挙や参議院議員通常選挙における選挙公報の点字版、録音版及び拡大文字版は「選挙のお知らせ」として必ず発行されるようになっているが、未だに視覚障害者に全戸配布されるには至っていない。地域によっては簡略版が配布されていたり、拡大文字版が配布されていない場合もある。また、知事選挙や自治体議員選挙における選挙公報に至っては、点字版、録音版及び拡大文字版が配布されていない地域が多い。こうした状態をなくし、視覚障害者に安定的に選挙公報が点字版、録音版及び拡大文字版として配布されるようにするためには、公職選挙法そのものに点字版等が位置づけられるか、同法の施行規則等において点字版等の配布に関するルールが明記されることが必要不可欠である。本連合は、そのことを繰り返し総務省に求めてきたが、実現するには至らなかった。この問題を解決するためには、法改正に向けて国会に対する請願を検討することも必要である。 B点訳や音訳を支えるための取り組み  点訳・音訳活動の多くは、ボランティアによって担われているのが現状であり、そのボランティアの高齢化が急速に進行している。また、講習会を開催しても新たなボランティアが得にくい状況である。そこで、ボランティアの負担軽減等により、点訳・音訳活動を支えていくことが必要である。  まず、令和7年4月より読書バリアフリー法に基づく第2期基本計画が始まることから、活字本のテキストデータを出版社や公共図書館等から提供してもらい点訳活動の負担を軽減すること、インターネットの大容量送信サービス等の利用により音訳活動を支えるシステムの構築を進めていくことが必要である。なお、本年度は、経済産業省及び出版社との協議を重ね、読みやすい電子書籍・テキストデータの提供について、本連合の意見を伝え、前向きに取り組むことを確認した。  一方で、点訳者・音訳者等を増員することも喫緊の課題となっていることから、増員のために必要な施策の拡充や財源の確保等を国や自治体に求めた。人材の確保については、これまでのようなボランティアにのみ依拠するのではなく、専門性を高め、有償化をも視野に入れた新たな制度作りを求めていくことが必要である。また、専門分野や教育現場における点訳・音訳活動を補うためには、海外の最新機器の導入や国内における技術革新が必要であり、視覚障害当事者が使いやすい機器類の開発が必須である。これらの諸課題について、今後も国や業界団体に支援や配慮を求めていく必要がある。 C代筆・代読支援の普及に向けた取り組み  代筆・代読支援は、同行援護事業あるいは居宅介護事業の中でも行われているが、プライバシーを保つことのできる自宅において必要な時間を確保することに課題がある。一方で、そうした課題の解決になりうる意思疎通支援事業の代筆・代読支援を実施する自治体は少数に留まっている。そこで、本連合が受託した厚生労働省の令和4年度障害者総合福祉推進事業「視覚障害者の代筆・代読の効果的な支援方法に関する調査研究」の成果を踏まえて、厚生労働省への陳情及び厚生労働大臣との新春対談において、意思疎通支援事業の代筆・代読支援の拡大への取り組みを引き続き求めた。  また、金融機関の窓口における代筆・代読支援の拒否の事例が継続して見られることから、金融庁への陳情及び金融庁主催の意見交換会において、代筆・代読支援の周知徹底、支援が拒否された場合の相談体制の充実を求めた。  なお、震災や豪雨災害のためやむを得ず居住地を移転した場合、市町村単位での代筆・代読支援だけでは行政手続きに支障をきたすことから、より広域の都道府県単位での対応を求める声が挙がっている。一部の地域において支援者の養成研修を含めた対応を試みる県があることを手掛かりとして、今後、加盟団体と協力しつつ取り組みを図っていく。 Dテレビやネットにおける放送のバリアフリー化  本連合は、長年にわたり総務省や各放送事業者に対して、テレビ放送における解説放送の充実、ニュース速報等の字幕テロップの音声化を求めている。総務省においては、各放送事業者に対する解説放送付与の目標値等を定めた「放送分野における情報アクセシビリティに関する指針」の中間見直しを踏まえた改正指針を令和5年度に公表している。しかし、本年度中に本指針に関する取り組みの進展は見られなかった。そのため、本指針を踏まえ、引き続き総務省や放送事業者に向けて働きかけていく必要がある。  さらに、外国語やプライバシー保護のための変声によるインタビュー等に付与されている字幕テロップの音声化は、一部の情報番組で行われるようにはなったが、ほとんどの番組では実現されなかった。引き続き、障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法の基本理念に基づく要望を具体的なニーズとともに示していく必要がある。  なお、AIを利用した解説放送に関する各放送事業者での取り組みについては、本連合も協力し、意見を伝えるとともに、今後も引続き協力することとなっている。 (2)地域におけるリハビリテーション・システムの普及に向けた取り組み @高齢視覚障害者・中途視覚障害者に対する支援  高齢化あるいは病気により視力が低下し、見えにくさが増したり、失明した場合に、日常生活における生活の質を確保するためには、拡大読書器の使用や歩行訓練等の視覚リハビリテーションを受けることが必要であることがほぼ浸透してきた。しかし、視覚リハビリテーションが受けられない地域が未だに多数存在するし、見えにくさが増すことで日常生活に困難を抱える人が、既に実施されている視覚リハビリテーションに辿り着くことができない場合も多い。そのため、本連合は、全ての地域で視覚障害者が視覚リハビリテーションを受けられるようにするため、厚生労働省に対し歩行訓練士の配置基準を設定すること等を求めた。  また、医療と福祉の連携を実現するために、イギリスのECLOを模範として日本版ECLOともいうべき視覚障害リンクワーカーの養成や配置に向けて調査研究を行った。今後は、国に対し視覚障害リンクワーカーの制度化を求めるとともに、本連合として養成のための研修を企画したり、日本眼科医会等と連携して全国の眼科クリニックの理解を得るための活動を進めていくことになる。 A各地域での相談支援の充実  本連合は、令和4年度以降、失明の可能性の告知を受けた患者に対する医療段階からの早期相談の在り方について研究しており、本年度は生活協同組合の社会福祉活動等助成事業の助成金を受けて「効果的なリンクワーク実現のための視覚障害者支援ネットワーク構築事業」を行った。具体的には日本眼科医会の主導により各都道府県で確立されているスマートサイト(視覚障害リハビリテーションネットワーク)を参考に、各地域における早期相談のための関係支援機関の連携について現状と課題を調査し、効果的な連携の在り方に関して好事例を踏まえた提言を行った。  一方で、実践面では慶応大学病院の要請を受けて、昨年度作成した視覚障害リンクワーカーの手引きに基づいた試行的な視覚障害リンクワーカー養成研修を実施した。視覚障害者2名を含む6名が同研修を受講し、令和6年7月以降、慶応大学病院において患者への相談に当たっている。本連合は、この相談担当者との意見交換会を通じて効果的なリンクワークに関して考察する手がかりを得た。  なお、次年度以降、医療・福祉・教育・就労の各専門家の協力を得ながら、試行的研修の結果を踏まえて養成研修のカリキュラムを設定し、本連合として養成研修を実施するとともに、加盟団体の協力の下、研修を受けた視覚障害リンクワーカーの活動の場の確保についての取り組みを進める。さらに、視覚障害リンクワーカーの必要性を引き続き国や自治体に訴え、その制度的な位置づけの確立と必要な財源確保を模索する。 B歩行訓練等を受けやすくするための取り組み  全国のどこで生活していても、そしていつでも、歩行訓練や日常生活ないし補装具の訓練等を受けられるようにするため、厚生労働省に対して歩行訓練士の配置基準の制定を求めた。また、歩行訓練を行う自立訓練(機能訓練・生活訓練)における報酬単価の引き上げを日本歩行訓練士会と連携して厚生労働省に働きかけた。しかし、本年度はこれらの前進は勝ち取ることができなかった。 (3)外出保障 @鉄道の更なるバリアフリー化  視覚障害者が安全に安心して鉄道を利用できるよう、本年度もハード面とソフト面でのバリアフリー化に向けた要望活動を強めた。特に、鉄道駅の半数余りを占める無人化された駅は、全国の視覚障害者の鉄道利用にとって深刻な課題であるため、国土交通省の検討会を中心に、早急な安全対策を講じるよう、次の働きかけを行った。  まず、次年度以降に取りまとめられるバリアフリー法に基づく基本方針の改正について、乗降客数に囚われない、最低限の安全対策を基本として盛り込むよう働きかけた。次年度の早い段階で基本方針が示されることとなっているため、引き続き国に対して、この要望を基本方針に盛り込むことを求めていく必要がある。  次に「新技術等を活用した駅ホームにおける視覚障害者の安全対策検討会」では、各鉄道事業者から、転落防止のための監視システムや援助依頼するための申し込みサイトの整備等、取り組み事例が紹介されている。本連合としても、加盟団体を中心に情報収集した上で、更なる改良に向けて意見を述べる必要がある。また、同検討会においては、駅を利用する視覚障害者自身も歩行技術の確認をするための「歩行訓練プログラム」についても検討を行っている。次年度以降に公表される本プログラムを参考に、各地域でも取り組めるよう、日本歩行訓練士会と連携して取り組む必要がある。  さらに、窓口の廃止に伴う遠隔オペレーターとの対話式券売機や、QRコードによる乗車券導入等についても、視覚障害者も確実に利用できるよう、鉄道事業者に対して要望した。 A道路交通の更なるバリアフリー化  踏切における安全で確実な横断については、令和6年1月に改正された「道路の移動等円滑化に関するガイドライン」に基づき、各地域において道路管理者並びに鉄道事業者に対して要望活動を行った。踏切内誘導表示や境界部の視覚障害者誘導用ブロックの敷設については、早期に各地域で進展するよう、より一層の働きかけが必要となる。  一方で、信号機を始めとする道路横断の安全対策は視覚障害者の移動に不可欠であることから、本年度も継続してこれらの安全対策の徹底を国等に働きかけた。まず、歩車分離式信号機やラウンドアバウト等、視覚障害者の安全な道路横断が確保できない仕組みが各地で導入されており、その多くが地域の視覚障害者の声を聞かずに導入されていることから、これらの方式を導入する際は、必ず地域の視覚障害者の声を聞くことを求めた。しかし、地域によって連携状況が異なっているため、次年度以降も、警察庁や各都道府県警に対して引き続き強く要望する必要がある。なお、本年度も横断歩道等には音響式信号機とエスコートゾーンを設置すること、音響式信号機の稼働停止時間を短くすること、夜間や早朝は押しボタン操作によって音響式信号機を作動できるようにすることを求めた。 B同行援護の更なる充実 ア ガイドヘルパーの確保に向けた取り組み  ガイドヘルパーの質を確保するために、本連合が国に対して同行援護従業者養成研修カリキュラムの改正を求めてきた結果、令和7年4月に同カリキュラムが改正されることになった。そのため、本年度は厚生労働省と連携しながら、改正に向けた準備を進めた。まず、同行援護従業者養成研修テキストを改正後の同カリキュラムに準拠させるため、本連合及び同行援護事業所等連絡会が中心となり、同テキストの新版の編集に協力した。また、本連合が開催する視覚障害者移動支援従事者(同行援護従業者)資質向上研修では、改正後の同カリキュラムを踏まえた研修を行った。  一方で、ガイドヘルパーの量の確保を行うためには、同行援護の報酬を改善し、同行援護の従業者が安心して働ける環境の構築が必要である。特に長時間の利用になるほど報酬単価が下がる同行援護の基本報酬の在り方を見直すことが必要であることから、本年度も引き続き、厚生労働省に対して同行援護の基本報酬の見直しを求めたが、実現には至らなかった。  なお、厚生労働省の令和6年度障害者総合福祉推進事業「訪問系サービスの養成研修のオンライン実施に関する調査研究」に協力し、ガイドヘルパーの質と量を保つために必要な研修の方法等を提案した。 イ 視覚障害者ガイドヘルパーの日の普及  同行援護制度の理解と従事するガイドヘルパーを確保することを目的とした記念日「視覚障害者ガイドヘルパーの日」を普及させるため、本年度は次の取り組みを行った。  まず、本年度の記念式典を令和6年12月3日に東京都千代田区のアルカディア市ヶ谷で開催し、記念式典の終了後には市ヶ谷駅前において同記念日の周知のためのチラシとポケットティッシュを配布した。また、同記念日に賛同する本連合の加盟団体は、令和6年10月〜12月にかけて独自の周知イベントを開催、または自治体等が開催するイベントでの周知活動等を行い、視覚障害者ガイドヘルパーの日を全国で周知することができた。  なお、本年度より同行援護功労者表彰を設け、本年度の記念式典で表彰した。本年度の受賞者はガイドヘルパー部門11名、事業所部門5事業所、指導者部門1名となり、同行援護事業の模範となる者・事業所を周知することができた。 ウ 未解決課題の早期解決  同行援護のサービス提供責任者の資格要件を緩和することについては、厚生労働省との協議の結果、令和7年4月より同行援護従業者養成研修の一般課程を修了した者の中で、視覚障害者等の介護の実務経験を積んでいることを条件に、サービス提供責任者に従事できる旨の通知の改正が行われた。  しかし、全国の同行援護を利用する視覚障害者から寄せられる課題の解決を求め、厚生労働省に陳情を行ったが、多くの課題は解決することができなかった。特に、自動車の利用については、福祉有償運送、道路運送法における許可又は登録を要しない運送等により、自動車に利用者を乗せて移動することができるようになったことを踏まえ、ガイドヘルパーが自動車を運転している時間を報酬の対象にすることを厚生労働省に強く求めたが、本年度中に実現させることはできなかった。また、支給量の地域間格差の是正、遠距離や宿泊を伴う同行援護の利用等の課題も解決する必要がある。これらの課題を解決するためには、全国の利用状況等を整理し、エビデンスに基づいた陳情を行う必要がある。 (4)就労問題 @一般就労 ア 視覚障害者の雇用拡大に向けた取り組み  令和6年4月より障害者の法定雇用率が2.3%から2.5%に引き上げられ、さらに令和8年7月には2.7%になる予定である。また、本連合が要求し続けてきたことが実を結び、障害者雇用納付金に基づく職場介助者に係る助成金において、あはき等の非事務職への支援が事務職と同水準に拡大された。こうした制度面の改定は視覚障害者の雇用拡大に効果を発揮するものと期待されるが、従来の障害者雇用状況やハローワークの職業紹介状況を見ると視覚障害者の雇用は低い水準に留まっている。そこで、制度の改定が実際に雇用の拡大に繋がるよう、厚生労働省の労働政策審議会障害者雇用分科会や今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会において、視覚障害者の立場からジョブコーチによる支援の充実等を求めた。  なお、本年度は就労問題懇談会を開催しなかったが、前述の厚生労働省の会議に先立って関係者間で情報交換・意見交換を行い、各種の雇用事例あるいは実態調査や行政通知文書を踏まえて、視覚障害者団体としての意見の取りまとめを行った。 イ 視覚障害者に対する雇用支援策の拡大  視覚障害者の中には、雇用された後において、視覚障害者用情報処理機器等の整備や職場介助者の配置(環境整備)、ジョブコーチや雇用管理サポーターによる支援、キャリア形成のための研修や訓練の受講等について職場の理解が得られず、十分な能力の発揮ができない状況に置かれている人が少なくない。そうした現状の改善を関係府省庁への陳情において訴えたが、具体的な改善に繋がっていない。  一方で、雇用の量的拡大だけでなく質の向上を求める声が加盟団体から挙がっており、厚生労働省が設置した今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会の議題にも雇用の質が掲げられている。視覚障害者の雇用に対応できるジョブコーチ等の支援人材が不足している現状を踏まえ、その人材の育成や広域で活動できるようにするための制度改正を求めてきたところであるが、今後も雇用の質という観点から、雇用支援策の拡大を引き続き求める必要がある。  また、本連合に寄せられる個別の相談に対応する形で、必要に応じて雇用支援機関であるハローワークや障害者職業センターに協力を求めてきたが、そうした機会を通じて雇用支援策が実効性ある形で活用されるよう、今後も取り組みを続ける。 ウ 公務員対策  令和7年2月に本年度の公務員交流会を開催した。働く視覚障害公務員や就労支援者等41名の参加を得て、様々な実情や意見を聴取した。また、交流会に参加できなかった視覚障害公務員も含めてアンケートを実施し、現状と課題の把握・分析を行った。その結果、公務部門は民間部門に率先して障害者雇用に取り組むとの建前が必ずしも実践されておらず、障害者活躍推進計画が作成されているものの、障害者納付金や雇用保険を財源とする各種支援策を活用できないことから不利な状況に置かれているケースが少なくないことが分かった。今後は本連合が把握した現状と課題を踏まえて、関係府省庁への陳情において公務部門で働く視覚障害者の状況の改善を求め、複数の関係府省庁と本連合が一同に会して意見交換を行う場を設定する等、より効果的な要求の在り方を模索する必要がある。 Aあはき ア マイナ保険証に関する取り組み  療養費を取り扱うあはき施術所においては、マイナンバーカードと健康保険証の一体化に伴い、マイナ保険証によるオンライン資格確認の仕組みが令和6年4月から導入された。さらに、令和6年12月2日以降、従前の健康保険証の新規発行が終了することに伴い、療養費を取り扱う施術所はオンライン資格確認の導入が原則義務化となった。これにより視覚障害施術者の事務処理がより一層煩雑なものとなることが予想されるため、本連合はあはき業団体と連携し、オンライン資格確認導入後の療養費に係る事務処理について、国に対して視覚障害施術者の意見を踏まえたシステムの提供を求めたが、大きな進展は見られなかった。  一方で、国は、施術所の施術者が皆70歳以上又は視覚障害者である場合、オンライン資格確認の導入の義務化の対象外とすることを決めた。しかしながら、あはき療養費における支給申請書の様式やスマートフォンによるオンライン資格確認の操作性に関しては課題もあり、引き続き改善を求めていく必要がある。 イ あはき自営業者に対する支援の拡充に向けた取り組み  令和2年10月から「雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業」がスタートし、自営業従事者を含めて就労に関わる通勤や事務処理においても障害福祉サービスを活用する道が開かれた。しかしながら、本連合が政令指定都市、中核市、東京都特別区の計137自治体を対象に行った令和5年度のアンケート調査によると、事業実施に向けて準備している自治体を含めて実施自治体が66自治体に留まっており、事業の拡大が課題であることが明らかになっている。  そこで、この調査結果を令和6年度第2回全国団体長会議で報告するとともに、同事業の拡大に向けて働きかける素材として、視覚障害者の事業の活用事例集を作成することを目指し、加盟団体に協力を求め、本年度末までに12事例を収集することができた。今後は収集した事例に関してインタビューを行い、事業の活用に関わる課題も含めた詳細な資料を作成する。さらに、加盟団体と協力しながら、各地域で自治体に働きかけて事業の拡大を図り、あはき自営業者等の視覚障害者が働きやすい環境の整備を目指す。 ウ あはきと理療科教育の未来を考える懇談会 提言の取りまとめ  中途視覚障害者や若い視覚障害者の中で職業としてあはきを選ぶ人が減少し、盲学校(視覚特別支援学校等)の理療科に進学したり、視覚障害者のための養成施設に入所する人が激減していることを踏まえ、学校関係者を含めた有識者によって構成される「あはきと理療科教育の未来を考える懇談会」を立ち上げて2年余りにわたり議論を重ねてきた。そして、令和7年3月までに一通りの意見交換を終え、報告書をまとめる段階に入った。今後は各委員の意見を踏まえた最終報告書を調えて、次年度に関係者に配布する予定である。そして、最終報告書を踏まえて、次年度は本連合としての理療科の改革や中途視覚障害者や若い視覚障害者があはきに魅力を感じることができる条件を提案することになる。 エ 障害者就労移行支援事業所の立ち上げ  新規事業所の開設については、現在の地価の高騰や事業所の立地条件を勘案し、さらに令和6年4月報酬改定による定員の見直し等、総合的に判断した結果、日本視覚障害センターの内部を改修し、新規事業所を開設することとした。次年度中に事業所を開設するべく、障害者福祉サービスとして東京都の指定を受けるための準備を進める。 オ 全国あん摩マッサージ指圧コンテストの開催  本連合は一枝のゆめ財団と共催で「第3回全国あん摩マッサージ指圧コンテスト2024」を令和6年8月25日に開催した。  コンテストは、施術者のプロフェッショナリズムの醸成と日本の伝統医療を継承発展させる土壌の形成を図るとともに、あん摩マッサージ指圧教育の一層の向上に寄与することを目的に、過去2回と同様の一般の部の競技に加え、新たにあはき師を養成する学校・施設の学生を対象とする学生の部の競技である「第1回あん摩マッサージ指圧甲子園」を開催した。開催当日は、一般の部に29人(うち視覚障害者22人)、学生の部に24人(うち視覚障害者11人)が競技に参加した。 (5)災害・防災対策 @令和6年能登半島地震に関する対応  令和6年1月に発生した能登半島地震により、石川県、富山県、新潟県を中心に多くの被害が発生した。また、令和6年9月の能登半島豪雨により、石川県では更なる被害が発生した。本連合は、これらの災害による被災視覚障害者が一日も早く生活を再建し、日常生活に戻れるよう、本年度も継続して支援を行った。  まず、日本盲人福祉委員会の令和6年能登半島地震被災視覚障害者支援対策本部を中心に、該当県の加盟団体と綿密に連携しながら、被災者への支援を継続した。なお、同委員会が呼びかけた被災視覚障害者義援金は、本連合の加盟団体からの協力もあり、令和7年3月末までに総額1,854万8,359円が寄せられ、被害に遭った視覚障害者へ配布した。  さらに、障害者全体に関わることは日本障害フォーラムのJDF災害総合支援本部と連携し、被災者への支援、国への働きかけ等を行った。令和7年1月に開催したJDF能登半島地震支援センターの報告会では、被害にあった地域の視覚障害者を代表し、被災県の加盟団体の代表者が発表を行う等、能登半島地震における視覚障害者支援の教訓を生かす試みを行った。 A視覚障害者向け災害・防災対策の充実に向けた取り組み  視覚障害者を含む要支援者のための個別避難計画の作成が全ての自治体に求められているにも関わらず、あまり進んでいない実情を踏まえ、本連合は引き続き視覚障害者、とりわけ重度視覚障害者を対象とする個別避難計画の早期作成を国及び自治体に求めた。なお、本連合の代表者が日本障害フォーラムの代表として、内閣府が主催する令和6年度個別避難計画推進全国協議会に出席し、この内容を国に要望している。  また、全国社会福祉協議会・障害関係団体連絡協議会の「避難生活における障害のある方の困りごとに関する研究」に本連合の代表者を派遣し、検討に参加した。その結果、公表された報告書に視覚障害者の避難生活における課題や解決策についての意見を盛り込むことができた。また、同協議会主催の第2回セミナーにおいては、令和6年能登半島地震による視覚障害者の被災状況や復興状況について、被災県の加盟団体より発表が行われた。  一方で、災害における要支援者としての視覚障害者にとって、ハザードマップの音声化等によるアクセシビリティの確保、発災時における情報保障や避難誘導に関する仕組み作り、避難所における適切な支援等、解決すべき課題は多い。これらの課題解決を求め、本年度も関係府省への陳情を行ったが、課題の解決には至らなかった。 (6)教育問題 @視覚障害児童・生徒に対するプログラミング教育の充実に向けた取り組み  学校教育においてプログラミング教育が広く行われるようになってきているものの、視覚障害児童・生徒に対する当該教育は十分に行われているとは言えない。そこで本連合は、東北学院大学の協力を得て、視覚障害児童・生徒が理解しやすいプログラミング講座を実施することにより、その教材及び内容の在り方を検討してきた。昨年度までは日本語の点字あるいは拡大文字のシールを貼り付けたブロックを並べることでプログラミングを行う方法を採用してきたが、本年度はパソコンやタブレット端末上で作業を完結させる方法に切り替えた。このことにより、本連合のセンターに来所せずオンラインにより自宅で受講する可能性が開かれ、8名の受講生のうち実際に自宅で受講した児童・生徒が半数であった。今後はそのノウハウを生かして、必要に応じて保護者を対象に指導することを含め、遠方での受講を検討し、地域によらず希望者が受講できることを目指す。  また、令和6年8月に本連合の代表者が文部科学大臣に面談し、視覚障害児童・生徒のプログラミング教育の充実等を要望した。今後も陳情等の様々な場を通じて視覚障害児童・生徒の教育の充実を求めていく。 A通園・通学の支援の実現  「雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業」により通勤の支援がスタートしたが、その一方で学校教育等に係る通園・通学(以下「通学等」)の支援は未実施である。視覚障害児童・生徒の安全安心な通学等は教育を受けるための不可欠な要素である。また、保護者が視覚障害者である場合にも通学等の支援が必要である。そこで、文部科学省並びに厚生労働省への陳情において、困難な現状を伝えた上で教育施策と福祉施策の連携による通学等の支援を実施するよう求めたが、未だ実現に至っていない。両省に跨る案件であることの難しさはあるが、今後も引き続き国に対して粘り強く要求していく。 Bインクルーシブ教育を受ける視覚障害児童・生徒への専門的支援の実施  視覚障害児童・生徒が一般校で教育を受けるインクルーシブ教育が徐々に増えつつあるが、それが適切に行われるためには、教育を受ける基盤となる点字・拡大文字の読み書きに係る訓練に加えて、自立生活のための歩行訓練等も不可欠である。  本年度、本連合はインクルーシブ教育を受ける生徒の保護者の相談を受けて、保護者、生徒が在学する学校の関係者、点字出版部門の職員、視覚障害教育の専門家が一同に会する相談会を開いた。その結果、教科書等の点訳の在り方、試験の在り方、視覚障害生徒をサポートする人員の配置等について保護者、学校側、点字出版部門それぞれの立場と認識があり、点訳や人員配置についてはその実現可能性を踏まえてインクルーシブ教育の在り方を考える必要があることが明らかになった。加えて、通学を含む学校生活に不可欠な歩行訓練に関する保護者の意識や訓練機会の持ち方もインクルーシブ教育を支える重要な要素であることが分かった。また、本連合のスポーツ協議会は、インクルーシブ教育を受けている視覚障害児童・生徒を対象とするブラインドスポーツ体験会を、本年度は滋賀県で開催した。今後は、これらの具体的な相談や体験会から得られた知見を踏まえた上で、盲学校(視覚特別支援学校等)のセンター的役割の充実、教科書等教材の作成体制の整備、教育施策と福祉施策の連携等を国に対して求めていく。  なお、本連合の将来ビジョン推進委員会は、国連障害者権利委員会の日本政府に対する総括所見を踏まえ、「インクルーシブ教育推進懇談会」を設置し、わが国でインクルーシブ教育の推進を目指すことを検討した。同懇談会は次年度の立ち上げを目指している。 (7)文化・芸術、スポーツ @第50回記念全国視覚障害者文芸大会の開催  第50回記念全国視覚障害者文芸大会は、短歌、俳句、川柳、随想・随筆の4部門を実施した。また、50周年記念行事として「短歌・俳句・川柳に親しむつどい」を開催した。  第50回記念全国視覚障害者文芸大会では、全国から短歌44人(130首)、俳句38人(112句)、川柳44人(132句)、随想・随筆19人(19編)の応募があった。なお、本大会の作品集のコンテンツ利用数は、点字版が延べ18、音声デイジー版が延べ436であった。  「短歌・俳句・川柳に親しむつどい」は、日本視覚障害者センター研修室において、令和7年3月5日に、オンラインを含めて計31名の参加者で開催した。各部門の審査員が講師となり、各部門の特徴についての解説、文芸に関する講演が行われた。 A第46回全国視覚障害者将棋大会の開催  本年度は、日本将棋連盟が創立100周年を迎えた年であることから、将棋大会の開催に加え、天童市を含め各団体の協力を得て各種イベントを含めた大会の開催を予定していた。しかし、開催当日に天童市が警報レベル4の豪雨に見舞われたため、参加者の安全確保を踏まえ、開催日当日に急遽中止とした。なお、講演会、女流棋士による指導対局、初心者将棋教室、将棋駒協同組合による駒展示会等、可能な範囲でイベントを実施した。 B一般校で学ぶ視覚障害児童・生徒向けのブラインドスポーツ教室の開催  インクルーシブ教育の推進により、多くの視覚障害児童・生徒が地域の一般校に通い、健常の児童・生徒と共に教育を受けている。しかし、体育の授業については、安全性の観点から視覚障害児童・生徒が参加できず見学になる事例が多い。視覚障害児童・生徒がスポーツ活動を行うことは非常に重要であることから、本連合は、これらの視覚障害児童・生徒が体を動かすことができるブラインドスポーツを活用することを目指している。そのため、本年度もスポーツ協議会と共に関係府省庁への働きかけ等を行った。  まず、令和6年8月に、文部科学大臣に対して要望書を提出し、地域の一般校に通う視覚障害児童・生徒に対するブラインドスポーツ体験の提供を求めた。その後、スポーツ庁の担当者との意見交換を行い、ブラインドスポーツ体験を提供するイベントの開催方法等の整理を行い、その開催方法を全国に周知する必要があるとの意見で一致した。  そのため、本連合のスポーツ協議会は、令和6年11月に滋賀県で「第1回ブラインドスポーツ体験会」を開催し、体験会の効果的な開催方法等を整理した。同体験会ではサウンドテーブルテニス、ブラインドテニス、ボッチャ、フライングディスクの4競技を体験する機会を設けた。なお、スポーツ協議会は、次年度以降も継続して同体験会を開催することを計画していることから、本連合はこの取り組みに継続して協力する。 3.ライフステージごとの取り組み (1)視覚障害児及び子育て  こども家庭庁に設置されたこども家庭審議会障害児支援部会に本連合の代表者を派遣し、国の障害児施策に対して視覚障害児・者の要望の一部を盛り込ませることができた。特に、児童発達支援及び放課後等デイサービスは、視覚障害児童・生徒に特化した事業所が少ないため、同サービスを実施する事業所の担当者、同サービスを利用する親の意見を基に、これらの事業所を増やすことを目指し、国に対して障壁となる制度の改善を求めた。  ただし、視覚障害児童・生徒を育てる親、または子供を育てる視覚障害者が求めている子供の通園・通学における移動の支援は、教育行政と福祉行政に跨ることから、支援を実現させることができなかった。この課題の解決は次年度以降も継続し、課題の早期解決を目指す。 (2)視覚障害青年  将来ビジョン推進委員会での取り組み、青年協議会での取り組みを中心に、視覚障害青年に関する活動を進めた。  将来ビジョン推進委員会では、令和6年7月に「総括所見に関する検討 最終報告書」を取りまとめ、同報告書に記載したインクルーシブ教育推進懇談会の立ち上げ、就労情報ウェブサイトの立ち上げ等に向けた作業を行った。また、平成30年に制定した本連合の将来ビジョンの修正作業も開始した。将来ビジョンについては、視覚障害青年の意見を踏まえ、本連合及び視覚障害者の将来を見据えた内容に修正を行っている。  また、青年協議会では、地域で活動する視覚障害青年を増やすため、SNSを活用し、非会員を含めた全国の視覚障害者に対して活動内容の周知等を行っている。本連合は、青年協議会がSNSで発信する情報を、本連合のSNSでリポストする等、青年協議会の周知活動に協力した。 (3)視覚障害女性  近年、視覚障害女性に対する複合差別が浮き彫りになっており、様々な困り事があっても周りに相談できない視覚障害女性が増えている。そのため、「視覚障害女性の相談会」を本年度は4回開催し、女性協議会の代表者、専門の弁護士等が相談員として相談を受けた。 (4)弱視者(ロービジョン)  弱視者(ロービジョン)に関する取り組みは、本年度も引き続き、弱視部会を中心に進めた。  まず、弱視者(ロービジョン)の困り事を整理するため、同部会のメーリングリストやオンライン意見交換会等を通して情報を収集し、資料化のために集まった情報を整理した。また、同部会では、これまでに公表したリーフレットや資料集を基にした新たな情報発信の方法として、動画を活用した情報発信について検討を続けている。本年度は、同部会で作成したリーフレット「見えにくいことははずかしいことではありません!」を基とした動画の内容や作成方法について検討を行った。ただし、本年度中に動画を完成することができなかったため、次年度の早い時期の完成を目指す。また、本年度も弱視(ロービジョン)に関する研修会の地域開催を実現することができなかった。同研修会は次年度以降開催できるよう、引き続き検討する。 4.国内及び海外の関係団体との相互交流、協力に関する事業 (1)府省庁や関係機関への協力  内閣府、厚生労働省、国土交通省、文部科学省、こども家庭庁等の関係府省庁の審議会等に代表者を派遣し、視覚障害者の立場から意見を述べ、要望の実現に努めた。また、令和6年7月より流通が開始した新紙幣について、財務省並びに国立印刷局の協力を得て、新紙幣の流通前に本連合のブロックごとに実物に触れられる説明会を開催した。さらに、交通事業者83社局及び障害者団体を含む10団体が実施する「声かけ・サポート」運動の周知活動に協力した。 (2)国際交流  日本盲人福祉委員会を通してWBU(世界盲人連合)及びWBUAP(世界盲人連合アジア太平洋地域協議会)に代表者を派遣し、世界の視覚障害者と交流し、福祉に関する情報収集、各種活動を行った。本年度は、令和6年4月に「アジア太平洋の視覚障害者の今 〜 WBUAP2023年中期総会 報告会 〜」をハイブリッド方式で開催し、最新の国際情勢について意見交換を行った。また、令和7年8月に第15回WBUAPマッサージセミナー、令和7年9月に第11回WBU総会が開催されることから、令和7年3月に令和7年度第1回国際委員会を開催し、参加者や参加方法等の調整を行った。  また、令和6年10月にイタリアで開催した「G7 包摂と障害に関する担当大臣会合」に、日本障害フォーラムの代表として本連合の代表者が参加し、日本の障害者の現状等を発言した。 (3)障害者団体及び福祉関係団体との連携  視覚障害者の福祉向上のため、関係する障害者団体や福祉関係団体と連携した。  まず、様々な障害者団体が集う日本障害フォーラムに対して、3役会議、代表者会議、幹事会、政策委員会、災害総合支援本部等に本連合の役員を派遣し、日本障害フォーラムの活動に広く協力した。なお、政策委員会は本連合の組織部が引き続き事務局を担当している。  また、全日本ろうあ連盟、全日本難聴者・中途失聴者団体連合会、全国盲ろう者協会との間で「情報コミュニケーション4団体連絡会」を引き続き開催し、視覚障害者及び聴覚障害者に関わる共通の課題について議論を行った。  さらに、全国社会福祉協議会の障害関係団体連絡協議会、日本身体障害者団体連合会の中央障害者社会参加推進協議会、あはき等法推進協議会、鍼灸マッサージ保険推進協議会、障害者の文化芸術活動を推進する全国ネットワーク、障害者放送協議会等に参加した。 5.全国視覚障害者福祉大会の開催  本年度の全国大会「第77回全国視覚障害者福祉大会(熊本大会)」は、熊本県視覚障がい者福祉協会の協力のもと、令和6年6月2日、3日に熊本県熊本市で開催した。  本年度の全国大会は、令和元年に開催した第72回全国盲人福祉大会(札幌大会)以来、5年ぶりにリアル開催として行った。その結果、九州盲人会連合会の加盟団体等の協力もあり、2日間で延べ1,000名の参加者を集めることができた。また、2日目の全国大会(大会式典・大会議事)はYouTubeによるライブ配信を行い、本大会に参加できなかった全国の会員や関係者の多くが視聴した。  なお、本年度の全国大会では、団体提出議案に関する分科会をリアル開催にしたことから、令和7年4月に各分科会の座長、助言者、事務局で事前打ち合わせを行い、各分科会に提出された議案の事前整理を行った。その結果、全国大会で開催した団体提出議案に関する分科会では、各議案に関して熱心な議論を行うことができた。 6.各種会議等の開催 (1)評議員会  定時 6月25日 日本視覚障害者センター、オンライン (2)全国団体長会議  第1回 6月 2日 ホテルメルパルク熊本  第2回10月28日 日本視覚障害者センター、オンライン  第3回 2月10日 日本視覚障害者センター、オンライン (3)理事会  第1回 4月23日 日本視覚障害者センター、オンライン  第2回 6月10日 日本視覚障害者センター、オンライン  第3回 8月 1日 日本視覚障害者センター、オンライン  第4回12月 6日 日本視覚障害者センター、オンライン  第5回12月18日 書面開催  第6回 3月27日 日本視覚障害者センター、オンライン (4)監事監査  監事監査 6月10日 日本視覚障害者センター、オンライン  中間監査11月21日 日本視覚障害者センター、オンライン (5)正副会長会議  第1回 4月 8日 日本視覚障害者センター、オンライン  第2回 6月10日 日本視覚障害者センター、オンライン  第3回 7月31日 日本視覚障害者センター、オンライン  第4回10月31日 日本視覚障害者センター、オンライン  第5回12月 9日 日本視覚障害者センター、オンライン  第6回 3月 4日 日本視覚障害者センター、オンライン 7.各協議会の活動 (1)あはき協議会 @代議員会   第1回 6月28日 日本視覚障害者センター、オンライン A常任委員会  第1回 2月26日 日本視覚障害者センター、オンライン B全国委員会  第1回 3月24日 日本視覚障害者センター、オンライン (2)青年協議会 @常任委員会  第1回 4月10日 オンライン  第2回 5月 7日 オンライン  第3回 8月 2日 オンライン  第4回 9月15日 大阪コロナホテル  第5回 9月19日 オンライン  第6回 9月22日 オンライン  第7回10月21日 オンライン  第8回 2月 8日 オンライン  第9回 3月23日 オンライン Aブロック推進委員会  第1回 4月19日 オンライン  第2回 8月29日 オンライン  臨時10月 9日 オンライン B代表者会議  第1回 7月13日 オンライン  第2回 9月15日 大阪コロナホテル、オンライン C社会対策研修会  第1回12月 7日 オンライン D第70回全国視覚障害青年研修大会(大阪市大会)  期日 9月15日〜16日  会場 大阪コロナホテル、オンライン (3)女性協議会 @正副会長会議  第1回 3月22日 電話会議 A常任委員会  第1回 6月19日 電話会議  第2回 9月 4日 レクザムホール  第3回 9月28日 電話会議  第4回10月20日 電話会議  第5回11月22日 日本視覚障害者センター  第6回12月27日 電話会議  第7回 3月12日 日本視覚障害者センター  第8回 3月13日 日本視覚障害者センター  第9回 3月23日 電話会議 B全国委員会  第1回 9月 4日 レクザムホール  第2回 3月12日 日本視覚障害者センター C全国代表者会議  第1回 9月 4日 レクザムホール  第2回 3月13日 日本視覚障害者センター D第70回記念全国視覚障害女性研修大会(中国・四国ブロック 香川大会)  期日 9月4日〜9月5日  場所 レクザムホール (4)音楽家協議会 @正副会長会議  第1回12月 7日 岐阜ワシントンホテルプラザ  第2回 3月18日 日本視覚障害者センター A常任委員会  第1回12月 7日 岐阜ワシントンホテルプラザ  第2回 3月18日 日本視覚障害者センター B第62回音楽家協議会福祉大会  期日 3月18日  場所 日本視覚障害者センター C第24回全国障害者芸術・文化祭「清流の国ぎふ」文化祭2024 第9回清流ふれ愛コンサート  期日 12月8日  場所 岐阜清流文化会館 (5)スポーツ協議会 @常任委員会  第1回 4月20日 福島県点字図書館  第2回 6月22日 神奈川ライトハウス  第3回11月 7日 オンライン  第4回 3月15日 神奈川ライトハウス A幹事会  第1回 4月21日 福島県点字図書館、オンライン B代表者会議  第1回 6月22日 神奈川ライトハウス、オンライン Cブラインドスポーツ体験会  期日 11月23日  会場 滋賀県立障害者福祉センター 第2 日本視覚障害者センターとしての事業の実施   本年度、日本視覚障害者センター(以下「当センター」という)では、厚生労働省や東京都からの委託または補助事業のほか、民間団体や企業等の補助を活用しながら次の事業を実施した。点字図書館や点字出版所、録音製作所の運営を行いながら、全国の視覚障害者に対し各種広報誌等による情報提供を行っている。また、更生相談事業を通じて、多くの視覚障害者の声を傾聴し各種事業に反映させている。さらに、本年度は、就労移行支援事業所の立ち上げに向けて具体的な取り組みを展開した。 1.情報提供・広報活動 (1)情報部  厚生労働省の補助事業として、日刊点字新聞「点字JBニュース」を本年度は第7,867号から第8,108号まで計241回発行した。なお、掲載記事は2,468本提供した。また、点字JBニュースの実施機関への実施状況及び課題に関する調査を実施した。  さらに、電話ナビゲーション、愛盲時報、点字日本、日視連アワー等の活用とともに、「公式アカウント X(旧Twitter)」を開設して本連合の活動、全国の加盟団体の活動、国の施策等を紹介した。これらの媒体を通じ時々の情勢に応じた本連合の考えも表明し、視覚障害への理解と啓発に努めた。また、提供した情報を蓄積・管理し、問い合わせに応じて必要な情報を提供した。なお、声のひろばは、日視連アワーの7月号から1つのコーナーとして情報の提供を開始した。  また、本年度は、視覚障害者選挙情報支援プロジェクトと連携し、第50回衆議院議員総選挙及び都道府県知事選挙(岡山県知事・富山県知事・山形県知事、福岡県知事、秋田県知事)の拡大文字版の選挙公報(選挙のお知らせ)を提供した。 (2)点字出版所  厚生労働省委託広報誌「点字厚生」(年6回・計15万部)、「ワールド・ナウ」(年2回・計600部)を発行した。  全国の各自治体広報誌(8自治体10種)、議会報(7自治体)についても予定どおり発行した。製版は8,200枚、印刷は163,500枚であった。  令和6年10月の第50回衆議院議員総選挙では、視覚障害者選挙情報支援プロジェクトの一員として、選挙のお知らせの製作等に参加した。また、港区長選挙のお知らせ、前橋市議会議員選挙のお知らせも発行した。製版は240枚、印刷は87,960枚であった。  本連合及び関連団体の会議資料や調査報告書を製作し、また鉄道会社の運賃表や触知案内板の監修を行った。製版は1,351枚、印刷は231,252枚であった。  電子入札の契約等のために、登録等事務手続きを行った。  講習会、研修会の講師依頼、自治体や企業からのヒアリングやモニターの依頼に対応した。  点字製作に係る機材のメンテナンス及び修理を行った。  生活に役立つ書籍(料理レシピ本)を点訳し出版することを目的にした図書製作は、本年度完成し、販売を開始した。 (3)録音製作所  定期刊行物として日視連アワーを毎月1回発行し、隔月で声の広報「厚生」を制作した。  加盟団体向けに本連合会長による中央情勢報告(講演)を収録したCDを制作し、情報提供した。  令和6年10月の第50回衆議院議員総選挙では、音声版選挙情報支援プロジェクトの一員として衆議院比例代表東京ブロックのマスター音源を制作した。  自治体委託の音声版広報誌は16自治体から委託を受け、28種制作した。  公共空間案内用音声を含む年間制作数は、マスター制作数1,212、コピー数21,966であった。  カセットテープ版制作終了に向けて各方面への働きかけを行った。  新規音訳者4名を受け入れ、制作体制の強化を図った。また、長年使用してきたスタジオのレコーダーが使用不能となり、臨時の機材を補填し、急場を凌いだ。 (4)点字図書館  次の定期刊行物及び図書の提供を行った。 @自館製作図書数  点字図書 22タイトル 81巻  音声デイジー図書 18タイトル 96時間25分  テキストデイジー図書 11タイトル A郵送貸出図書・利用者数  点字図書 1,629タイトル 4,315巻 1,231人  音声デイジー図書 16,959タイトル 16,967人 Bサピエコンテンツデータ利用数  点字図書 261タイトル 延べ1,105人  音声デイジー図書 3118タイトル 延べ13,587人  テキストデイジー図書 129タイトル 延べ1,176人 C定期刊行物録音版貸出数  声の広報「厚生」(年6回) 1,541  日視連アワー(年12回) 6,462  声のひろば(年6回) 22 D点字図書館ニュース発行数(年4回)  音声デイジー(貸出) 2,528  点字版(配布) 1,329  墨字版(配布) 576 2.相談事業  本年度は、昨年と同様にオンライン面談を取り入れ、日々の生活相談を始め、法律、眼科、聞こえにくさ相談、ICT相談、同行援護相談、視覚障害女性の相談等、事業計画どおりに相談事業を実施することができた。なお、相談内容は多岐にわたり、相談員が対応して解決できない部分は、専門家に繋ぐように心掛けた。本年度の相談件数は、病気健康等1,148件、修学・就労122件、年金・社会保険475件、移動等330件、その他(法律含む)105件の合計2,180件であった。そのうち、ICT相談は290件、同行援護相談は83件、女性相談は30件であった。  また、視覚障害公務員交流会は年2回の開催はできなかったが、昨年と同様に1回開催した。参加者の多くは喜んでおり、改めて視覚障害公務員の要求実現の運動の必要性を認識した。 3.養成講習会の開催  東京都の委託事業である養成講習会は、点訳奉仕員指導者養成講習会を全20回、3名、音訳奉仕員指導者養成講習会を全25回、10名、専門点訳奉仕員養成講習会を各10回(計30回)開催した。なお、専門点訳奉仕員養成講習会の内訳は英語4名、触図5名、コンピューター4名であった。  また、点訳奉仕員指導者養成講習会修了者研修会(22名)、音訳奉仕員指導者養成講習会修了者研修会(25名)を開催した。 4.ボランティアの育成  音訳ボランティア基礎講座を12回開催し、計9名が受講した。また、音訳勉強会を2回開催し、計11名が参加した。 5.調査研究事業等 (1)ECLO・リンクワーカー関連  生活共同組合の社会福祉活動助成事業による「効果的なリンクワーク実現のための視覚障害者支援ネットワーク構築事業」を行った。患者やその家族らに対して早期介入・早期支援を行っている富山大学病院、国立成育医療研究センター等の医療機関、日本歩行訓練士会や盲学校(視覚特別支援学校等)等へのヒアリングを実施し、患者が早期に福祉や教育等に繋がり、社会参加に繋がるようなネットワークを検討した。なお、同事業の検討委員会を3回開催し、報告書の作成を進めた。  また、昨年度実施した「視覚障害者の早期相談支援のためのリンクワーカー育成に係るガイドライン作成事業」の調査結果を、第25回日本ロービジョン学会学術総会及び第22回日本福祉心理学会にて発表した。 (2)プログラミング教育関連  盲学校(視覚特別支援学校等)に通っている視覚障害児童・生徒を対象としたプログラミング講座を東北学院大学と共同で行なった。全国盲学校長会の協力を得て、全国から8名の参加があり、オンラインと当センターを会場にして、3つの講座を行なった。1つ目は変数と条件分岐を利用し音符を組み合わせて音を鳴らすプログラム、2つ目は変数、条件分岐に加え乱数を用いたプログラム、3つ目は変数、条件分岐、乱数に加え、配列を用いたプログラムの作成の講座を開催した。 (3)調査への協力  国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の助成で行われる慶應義塾大学の調査研究事業「視覚障害者における就労支援のニーズ実態調査と日本版リエゾンシステム導入の有効性の検証及び開発」に協力した。加盟団体の会員を対象にアンケートを行い、結果を取りまとめた。取りまとめた結果は、中間報告として第22回日本福祉心理学会において、ポスター発表を行った。  また、順天堂大学の調査研究事業「視覚障害者の社会参加を見据えた住居支援方法についての検討」に協力し、加盟団体の会員を対象にアンケートを行った。  さらに、TOTO(株)の「外出先でのトイレ利用状況に関するアンケート調査」、岩手県立大学の「視覚障害者交通行動アンケート調査」に協力した。 (4)その他  公益社団法人NEXT VISIONと共催で「第六回神戸発、視覚障害者雇用の未来を考えるフォーラム」を令和6年11月23日に開催した。「産業医との付き合い方、相談の仕方」をテーマに、3名による就労体験発表とシンポジウムを行った。 6.用具購買所 (1)弱視(ロービジョン)の利用者を対象とした製品の企画及び販売拡大  本年度は十分な取り組みができなかった。そのため、次年度以降も利用者の利便性の向上に向けた取り組みを行う。 (2)防災用品の販売拡充  令和6年1月の能登半島地震から防災用品についての問い合わせが増えたことから、防災用品の販売拡充に力を入れ取り組んだ。これまでの視覚障害者用オリジナル防災用品セットと防災用ベストに加えて、新たに防災用折りたたみヘルメット、簡易浄水器、防災用ポータブルトイレ、簡易トイレセットの取り扱いを開始し、販売を行った。 (3)2024年度版商品カタログ  令和6年4月に墨字版を発行し、デイジー版と点字版のカタログも発行した。カタログ発行後は、市区町村に1,987件、日視連加盟団体及び関連団体に132件、合計2,119件に墨字版のカタログを発送した。なお、個人からの問い合わせに対しては、商品カタログの墨字版、デイジー版、点字版を希望に応じて配布している。また、本連合のホームページに商品カタログのPDF版を掲載し、活用できるようにした。 7.地域公益活動  新宿区内社会福祉法人連絡会の構成団体として、本年度の8月と12月にフードパンドリーを実施し、当センターで食品を集め、提供した。当センター職員やボランティア、近隣の住民から食品を集めて寄付をした。  また、地域住民との交流、本連合の活動の紹介を目的とした「日視連フェスティバル2024」を令和6年10月19日に当センターで開催した。なお、10月27日に第50回衆議院議員総選挙が決定したことにより、選挙の対応に当たるため、当初の開催内容の一部を変更して実施した。開催当日の来場者は58名であった。 8.当センターの組織再編  新規事業所は、事業所の立地条件等、その他の要素も十分に考慮した結果、現在の当センターの内部を改修し、当センター内に設置することにした。令和7年2月に開催された指定協議説明会を受講済し、開設までのスケジュールを策定し、東京都の指定を受けるための事業計画書(案)の作成及び関係機関との協議等を進めた。  なお、新規事業開設に当たり、新規事業部門をどの部門(組織)に位置づけるかは、未だ検討途上にある。また、令和7年10月を目途に職員採用を進めている。 9.施設等の整備  令和6年7月に3階、9月に2階のエアコンが動作不良による確認点検を行った。また、8月にPAS(地絡継電装置付高圧気中負荷開閉器)の設置、11月に2階女子トイレの壁の修繕を行った。なお、エアコンについては助成金の申請を行い、助成が決定次第、全館清掃を行う予定である。  パソコン関連では、当センター内のパソコンにインストールされているセキュリティソフトのサポートが令和7年3月末で終了することに伴い、同ソフトの更新を行った。また、令和7年10月に、Windows10のサポートが終了することを踏まえ、当センター内でWindows11への移行に関する購入希望アンケートを行った。また、当センター内のネットワーク環境の安定化を図るため、LAN回線の契約の変更を検討した。 10.文化・芸術活動 (1)全国視覚障害者将棋大会  山形県天童市のほほえみの宿滝の湯で開催する予定であった第46回全国視覚障害者将棋大会は、豪雨の影響で中止となった。大会は中止としたものの、山形県在住の参加者、天童市の地域住民、山形県に前泊した参加者等、来場した人を対象に、日本将棋連盟の本田小百合女流棋士による指導対局、学校教育アドバイザーの安次嶺隆幸先生による講演、初心者将棋教室、山形県将棋駒協同組合の将棋駒の展示会等の将棋の普及イベントを行った。  また、本年度は、視覚障害将棋の審判方法等に関する動画を作成し、日本将棋連盟の山形県支部及び天童支部に提供し、視覚障害将棋の理解・啓発に努めた。 (2)全国視覚障害者文芸大会  第50回記念全国視覚障害者文芸大会は、全国から短歌44人(130首)、俳句38人(112句)、川柳44人(132句)、随想・随筆19人(19編)の応募があった。入賞作品には、日視連会長賞のほか、短歌の第1位に厚生労働大臣賞、俳句の第1位に文部科学大臣賞、川柳の第1位にNHK会長賞、随想・随筆の第1位に東京都知事賞がそれぞれ贈られた。なお、文芸大会作品集のコンテンツ利用数は、点字版が延べ18、音声デイジー版が436であった。  また、本年度は、同大会が節目の50回目の開催を迎えたことから、令和7年3月5日に「短歌・俳句・川柳に親しむつどい」と称し、記念イベントをハイブリッド形式で開催した。 11.防災対策  総合避難訓練を令和6年8月9日に実施し、実際の避難の際に支障が無いように取り組んだ。 12.職員研修 (1)内部研修  新採用職員のための研修、点字教室(読み方教室、基礎編、実践編)を実施した。 (2)外部研修等  以下の外部研修等に参加した。 ・日本ロービジョン学会 5月24日〜26日 ・音声版選挙公報製作プロジェクト全施設向け研修会 5月26日 ・音声版選挙公報製作プロジェクトマスターデータ製作施設向け研修会 6月21日 ・全国視覚障害者情報提供施設協会 新任管理者研修会・通常総会、施設長研修会 6月27日〜28日 ・全国視覚障害者情報提供施設協会 サピエ研修会 7月4日〜5日(オンライン) ・関東甲信越地区朗読録音奉仕者感謝の集い 9月5日 ・視覚障害リハビリテーション研究発表大会 9月22日〜23日 ・全国視覚障害者情報提供施設協会 全国大会 10月10日〜11日 ・日本盲人社会福祉施設協議会 全国大会 11月28日〜29日 ・定額減税セミナー 5月9日 ・令和6年度廃棄物管理責任者講習会 10月4日 ・公正採用人権啓発推進研修会 1月27日 13.健康管理・レクリエーション  年に1回の定期健康診断及びインフルエンザ予防接種の補助を行った。また、忘年会を開催し、職員の親睦を図った。その他、メンタルヘルス事業の一環として、随時職員の相談対応を行った。 14.各種会議、委員会 (1)業務運営会議の開催 毎月第2火曜日(8月を除く)  4月9日、5月14日、6月11日、7月9日、9月11日、  10月8日、11月12日、12月10日、1月14日、  2月12日、3月11日 (2)新規事業説明会(全職員対象)  3月11日 15.参考 令和6年度職員在職者数(令和7年3月31日現在) ・総務部 4名 ・事業部 7名(嘱託1名、パート1名を含む) ・組織部 4名 ・情報部・相談室 7名(嘱託3名、パート1名を含む) ・情報ステーション 20名(嘱託1名、パート1名を含む) ・出向 2名(日本盲人福祉委員会) ・合計 44名(男性20名・女性24名) ※前年比マイナス1名(退職)、休職者2名(1名復帰、1名継続)