社会福祉法人日本視覚障害者団体連合 令和5年度事業計画 (自令和5年4月1日〜至令和6年3月31日) 第T章 組織・団体活動 1.横断的課題に対する取り組み  本連合の1年を通じた活動の中心であり、そして全ての分野に影響する横断的な課題に対する取り組みを最初に掲げることにする。 (1)国連障害者権利委員会による日本政府に対する総括所見   新型コロナウイルスの感染拡大(パンデミック)の影響を受けて、日本政府が国連障害者権利委員会に提出していた政府レポートに対する審査は令和4年8月に実施され、その後、日本政府に対する総括所見が発表された。そして、令和5年1月になり、外務省による仮訳が発表された。総括所見は多岐にわたっており、障害者権利条約第1条から第33条の全ての項目においてわが国の現状に対する懸念(問題点)や解決すべき方向性(勧告)が示された。差別や合理的配慮等、障害者の全てに共通した一般条項から始まり、視覚障害者にとって重要な情報アクセシビリティや移動の自由等についても重要な指摘がされている。   本連合としては、改めて障害者権利条約及び総括所見を運動を進める重要な指針としながら、全国から寄せられる要求の実現に向けて運動を進めることになる。そのためにこの1年間は、障害者権利条約及び総括所見の理解を深めるための学習を計画する。 (2)情報アクセシビリティの更なる推進   視覚障害者にとって情報保障はあらゆる分野において重要なテーマであり、永久の課題である。日常生活における移動、買い物、通院等のいかなる場面においても情報アクセシビリティが確保されていることが必要であり、教育、就労、娯楽を含む文化芸術活動、スポーツ等の社会参加においても必須なものである。   そのためには、まずは昨年成立した障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法の基本理念にある「できるだけ同一時点で、できるだけ同じ内容の情報を得られるようにする」ことの実現を求め、関係府省庁や関係機関に働きかけていく。また、国は「誰一人取り残さないデジタル化」を進めているが、そうであれば機器やソフトの開発過程の段階から視覚障害者を念頭においたユニバーサルデザイン化が図られ、ICTを含めた機器のアクセシビリティが確保されなければならない。本連合としては、これらの実現に向けてデジタル庁を始めとする関係府省庁、関係機関に対して積極的な働きかけを行う。   そして、これらの働きかけとともに、情報アクセシビリティの更なる推進を図るために、本連合全体で次の取り組みを行う。  @ウェブ関連のバリアフリー化   行政からウェブサイトで提供される情報は、総務省が示している「みんなの公共サイト運用ガイドライン」に則ったウェブアクセシビリティを確保することが必要になるため、同ガイドラインの準拠を国や全国の自治体に強く求めていく。また、掲載される資料は、画像PDFのみとすることなく、視覚障害者も利用できるテキストデータ等を併せて掲載することを求めていく。さらに、ウェブ上で行う手続きについては、視覚障害者が円滑に手続きを行えるようにするため、開設前に視覚障害当事者が確認することを求め、視覚障害者が利用できない場合はその改善を求めていく。   さらに、金融機関等のウェブサイトについては、セキュリティ強化によるアクセシビリティの低下が問題となっている。そのため、国や関係機関に対して、セキュリティを強化する場合は、視覚障害者の利便性を損なうことのないシステム等を構築することを求めていく。  AICT機器のバリアフリー化   スーパーやコンビニ等では省人化や自動化によりセルフレジの設置が進んでいる。また、飲食店でもタッチパネルによる注文端末の設置が進んでいる。これまで本連合は視覚障害者も利用できるセルフレジの設置や人的対応を求めてきたが、未だ改善されていないため、経済産業省や関係機関に引き続き改善を求めていく。なお、セルフレジ等の利用においては、既に視覚障害者個々の工夫により利用している事例も出てきているので、これらの事例を集約し、他の視覚障害者への情報提供、関係各所に要望する際の参考資料として活用する。   また、金融機関においては、店舗や有人窓口の廃止が進み、ATMのみを設置する店舗等が増えている。そのため、各金融機関に対して、これら店舗の小規模化が進んでも視覚障害者が円滑に金融手続きができるよう、ハード面、ソフト面での改善を求めていく。 (3)日視連加盟団体の組織強化に関する取り組み   本連合は加盟団体全体の組織強化を目指し、令和元年度に加盟団体支援プロジェクト委員会を立ち上げ、加盟団体の組織・団体活動に関する課題整理を行った。その結果、令和4年12月に最終報告書をとりまとめ、加盟団体のうち未だ地域のニーズに基づいて事業化ができていない団体が組織・団体活動を活性化するためには、各団体で事業化を推進することが重要であることを提言した。   そこで、本年度はこの提言に基づき、いくつかの加盟団体に対し事業化を推進するための支援を開始する。特に組織・団体活動の基盤が弱く、事業を実施できていない加盟団体に対しては、同委員会が主体となり、各種支援を行う。なお、このような支援は中長期に及ぶこと、さらには事業経営に関する専門的知識が必要となることから、本連合内に専門部署を立ち上げることも検討し、緊密な支援を行っていく。   また、既に同行援護事業や相談支援事業等を実施している団体においても、地域のニーズに応えるため人権啓発、あるいは視覚障害者の理解を促進するための講師を養成する研修の開催を検討する。さらに、事業化の推進を加盟団体全体で広げていくためには、事業運営に有効な情報を共有することが必要になる。そのため、同委員会が主体となり、事業運営に関する情報を収集し、加盟団体に情報を提供する。 2.主要課題に対する取り組み (1)情報保障  @マイナンバーカードに関する取り組み   国は全ての国民にマイナンバーカードが行き渡ることを目指す方針の下で、マイナンバーカードの普及促進に取り組んでいる。また、令和6年秋には紙の健康保険証が原則廃止されることと併せ、マイナンバーカードとの一本化に向けた取り組みを進めている。この一本化が進むと、例えば、療養費を取り扱う施術所においては、マイナ保険証による資格確認が必要となる。そのため、施術所内及び往療における資格確認のシステムの開発メーカー等に対して、システムが視覚障害あはき師にも利用できるものにすることが求められる。一方で、これまでにも視覚障害者が単独でマイナンバーカードを取得または更新手続きをする際の配慮が不足していたり、コンビニ等での住民票やワクチン接種証明書等証明書の自動交付手続きができないといった課題があった。また、カード裏面に記載される点字の誤りについても、地域によってその防止対策を講じている自治体とそうでない自治体に分かれている。   マイナンバーカード、または同カードを介して利用できるサービスは視覚障害者にとっても利用しやすいものでなくてはならない。そのため、本年度も引き続き、課題解決に向けて働きかけをする。昨年度は総務省並びにデジタル庁のヒアリングに参加し諸問題の改善を強く要望したが、本年度も関係府省庁に対して働きかけを強める。  A放送分野における解説放送等の普及を求める取り組み   本連合は、長年にわたり総務省や各放送事業者に対して、テレビ放送における解説放送の充実、ニュース速報等の字幕テロップの音声化を求めてきた。その結果、昨年度、総務省において、各放送事業者に対する解説放送付与の目標値等を定めた「放送分野における情報アクセシビリティに関する指針」の中間見直しが行われ、数値目標と併せて「大規模災害発生時等の対応」については、大規模災害時に留まらず、安心安全を脅かす速報についても対応する旨の変更を盛り込むことになった。   しかし、解説放送においては、NHK及び民放キー局並びに在名・在阪局において、既に「放送分野における情報アクセシビリティ指針」の数値目標を達成しているものの、独立県域局等、各地域における付与率は中間目標値にも及ばない状況となっている。一方で字幕テロップ等の音声化も徐々に増えつつはあるが、特に生放送においては十分とは言えず、視覚障害者が他の視聴者と等しく情報を得られているとは言えない状況にある。   そこで、本連合は総務省並びに各放送事業者に対し、障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法の基本理念にある「障害者でない者が取得する情報と同一の内容の情報を障害者でない者と同一の時点において取得することができるようにすること」を根拠に、解説放送番組の充実、字幕テロップの音声化の更なる拡大を強く求めていく。また、各放送事業者が進めている新技術による解説放送等への取り組みについては、多様な視覚障害者の特性を踏まえた上で積極的に協力する。  B視覚障害者向け選挙公報の制度的保障を求める取り組み   本年度は4月に統一地方選挙が予定されており、総選挙の可能性も取りざたされている。そのため、各地の首長や議員の選挙において、視覚障害者向け選挙公報の製作が必要であることを加盟団体を通じて啓発していくとともに、総選挙が執行されれば、日本盲人福祉委員会を通じて、都道府県選挙管理委員会に選挙公報の点字版等の発行を働きかけていく。   一方で、本連合は、墨字の選挙公報の製作が法律で義務付けられている国政選挙及び知事選挙において、全ての視覚障害の有権者に対して、希望する点字・音声・拡大文字による選挙公報の配布が公職選挙法上の制度として位置付けられるよう強く求めている。本年度においても、視覚障害者向け選挙公報の法制化の実現を目指した運動を強めていく。  C読書バリアフリー法に基づく読書環境の改善   読書バリアフリー法に基づく国の基本計画が策定され、都道府県による基本計画の策定が進められている。しかし、厚生労働省の調査によると、令和4年2月1日時点で基本計画を策定した自治体は、都道府県、政令市、中核市合わせて13件にとどまっている。本連合の加盟団体の働きかけ等によって検討の場が設けられた自治体が増えつつあるが、一刻も早く全ての都道府県で基本計画が策定されなければならない。そのため、加盟団体と協力し、全ての都道府県が基本計画を策定するよう働きかけていく。   また、書物等のテキストデータは、視覚障害者への速やかな提供が求められている。さらに、市販されている電子書籍については、電子書籍自体のアクセシビリティの向上とともに、書籍販売サイトのアクセシビリティも求められている。これらを実現するために、経済産業省を通じて各出版社にもその必要性を働きかけていく。  D点訳や音訳を支えるための取り組み   まず、点訳・音訳等に使用するテキストデータ等を出版社から点訳・音訳関係者に提供されることにより、点訳・音訳の作業が大幅に軽減され、同一時点で視覚障害者が求める媒体で出版物が利用できるようになる。そのため、読書バリアフリー法及び障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法に基づき、その仕組みを構築することを国や関係機関等に求めていく。   一方で、人材育成が停滞している点訳者・音訳者等を増員することも喫緊の課題となっており、増員のために必要な施策の拡充や財源の確保等を国や自治体に求めていく。その際、人材の確保策として、これまでのようなボランティアにのみ依拠するのではなく、専門性を高め、有償化をも視野に入れた制度作りを求めていくことが必要である。   さらに、ニーズが高い専門分野や教育現場における点訳・音訳活動を補うためには、最新技術の活用も求められている。これらの活用を促すため、機器類の開発と設置に関する支援を国や業界に求めていく。 (2)地域におけるリハビリテーション・システムの普及に向けた取り組み  @中途視覚障害者に対する支援   視覚特別支援学校(盲学校)の生徒数は激減しているものの、統合教育を受けている児童・生徒は増えている。また、中途視覚障害者は継続して増えている。そうした実態を踏まえ、視覚特別支援学校(盲学校)を経由しない学生を含む青年層、中高年層の中途視覚障害者が孤立することなく良質な日常生活を送り、就労を含む社会参加を継続できるように支援することが重要である。   そのためには、各地で中途視覚障害者に対する相談支援から福祉制度に結びつけるための仕組み作りが確立されなければならない。補装具や日常生活用具の速やかな給付や歩行訓練等のリハビリテーションが早期に実施されるために、加盟団体が中心となって自治体をも交えた関係機関によるネットワーク化の実現を目指す。  AECLOをモデルとした相談支援の実現   近年、眼科医療において治療による回復が難しいことを告げられた患者が、引きこもりになったり自死を選ぶことが問題となっている。失明告知を受けた患者がこのような選択をすることはあってはならない。そのため、早い段階から患者の相談に応じ、精神面を支え、福祉等の各種支援機関に繋げることが必要となっている。   そのため、これらの問題を解決するために、本連合はイギリスにおけるECLO(Eye Clinic Liaison Officer)をモデルとした支援の実現を目指している。昨年度は、英国におけるECLOの実施内容、日本における眼科医と福祉が連携して相談支援を行っている先駆的事例を整理し、効果的な相談支援の在り方を研究した。そして本年度は、さらに専門性の高い相談支援を担う人材として、医療・福祉・教育・就労の幅広い連携を実現するリンクワーカーの育成について研究し、その成果をガイドラインとして取りまとめる。この取りまとめにより、ECLOをモデルとした支援を日本で実現するために必要な制度や体制を国や関係機関等に提言する。 (3)外出保障  @同行援護の更なる充実  ア 未解決課題の早期解決   同行援護が開始してから10年が経過する中で、運用面における課題や地域間格差が広がっている。本連合は、同行援護をさらに充実させるために、本年度も未解決課題の解決を目指し、国や自治体への強い働きかけを行う。   第1に、支給量の問題については、各地において必要とされる支給量が決定されない場合の対策を検討する。また、不合理な自治体の運用や決定に対しては、地域の視覚障害当事者団体と連携して自治体に対する働きかけを行い、さらに国による指導を求めていく。   第2に、遠距離や宿泊を伴うガイドヘルパーの利用ができない地域がある問題は、同行援護事業所の運営方針に基づくものであることから、その是正は容易ではない。そのため、地域の視覚障害当事者団体が主体となり、自治体を交えた事業所との話し合いにより利用拡大を実現することが必要である。   第3に、ガイドヘルパーの運転する自動車の利用については、現状では国自身がこれを否定している。そのため、本連合と加盟団体が一丸となり、国に対して地域の実情を踏まえた制度改正や報酬改定の実施を求めていく。  イ 同行援護従業者養成研修カリキュラムの改訂   近年、様々な世代、様々な地域の視覚障害者が同行援護を利用するようになったことから、同行援護のニーズは拡大し、そのニーズに合わせた利用が広がっている。しかし、このような利用の拡大において、同行援護の実務を担うガイドヘルパーの養成がそのニーズに追いついていないことが以前より指摘されている。そのため、厚生労働省は、現在のニーズに見合う同行援護従業者養成研修カリキュラムの在り方を検討する目的で、令和3年度に研究事業を行った。その結果、一般課程を現在の22時間から28時間に拡大し、ガイドヘルパーの資質を向上させるべきとの見解が示された。この結果に従い、厚生労働省は同行援護従業者養成研修カリキュラムを改訂する準備を進めている。   そこで、本連合はこのカリキュラム改訂を円滑に進めるため、本年度は同行援護事業所等連絡会と共に次の取り組みを行う。まず、養成研修を行う際に用いられるテキストを全面的に改訂する必要があることから、その改訂作業に協力する。また、改訂後のカリキュラムに沿った養成研修を行うためには、養成研修を担う講師への支援も必要となる。そのため、新カリキュラムに関する視覚障害者移動支援従事者(同行援護従業者)資質向上研修を開催する。  ウ 視覚障害者ガイドヘルパーの日の制定   同行援護が制度化され10年が経過した。その間、同行援護を利用する者は拡大の一途を辿り、現在では視覚障害者の外出を保証する最も重要な制度となった。しかし、同行援護を始めとする視覚障害者の移動を支援する制度は、未だ社会で広く知られていないことから、一部では誤解が生じている。例えば、ガイドヘルパーを連れて病院等を受診することを拒否される等の問題が発生している。また、支給量等に地域間格差があること、ガイドヘルパーの成り手が減少傾向にあること等、様々な課題も累積しており、結果的に移動の支援を必要とする視覚障害者にその支援が行き届かないことも問題となっている。これらの問題を解決するためには、社会に同行援護等の視覚障害者の移動を支援する制度の重要性、そしてこの支援を担うガイドヘルパーの必要性を広く周知することが重要である。   そこで、本連合と同行援護事業所等連絡会は、同行援護制度を創設した改正障害者自立支援法が成立した平成22年12月3日を記念し、本年度中に毎年12月3日を「視覚障害者ガイドヘルパーの日」という記念日に制定することを目指す。また、記念日の制定に伴い、本連合の加盟団体、全国の同行援護事業所等の協力を得て、この記念日を祝い制度の普及と啓発のためのイベントを計画する。これらの周知活動を通して、同行援護等の視覚障害者の移動を支援する制度の理解を促しつつ、制度の更なる発展を目指していく。さらに、その支援者たるガイドヘルパーの地位向上や人材確保も同時に目指していく。  A鉄道の更なるバリアフリー化   昨年度、本連合は国が進める駅ホームからの転落防止対策、駅の無人化等の施策を進めるための議論に参加した。本年度も、全国で視覚障害者の転落事故がなくなり、安全に安心して鉄道が利用できるよう国や鉄道事業者へ、更なるバリアフリー化を求める働きかけを継続する。   まず、駅の無人化への対策が講じられることが急務となっている。国土交通省によると、全国9,000余りある鉄道駅のうち、半数近くの駅で無人化が進んでいる。一方で、令和4年7月には国土交通省より「駅の無人化に伴う安全・円滑な駅利用に関するガイドライン」が示されている。そこで、本年度は各地域において、国や自治体並びに鉄道事業者に対して、このガイドラインを基に、ハード面・ソフト面の総合的な安全対策を求めていく。また、駅の無人化と併せてみどりの窓口等の切符等を購入できる施設がなくなってきている。これに代わるものとして、オペレータと遠隔で対話しながら購入ができる自動券売機が設置されてきたものの、設置台数が少なかったり、その操作方法の十分な周知がされていない。そのため、視覚障害者も確実に操作できる券売機の設置と、その操作方法を体験的に知る機会をも含めた配慮を国や鉄道事業者に求めていく。さらに、ジパングクラブの利用等、直接窓口での利用を想定しているサービスについては、窓口の廃止が進んでも確実に利用できるよう、鉄道事業者に対して改善を求めていく。   一方で、令和5年3月には、都市部の鉄道事業者においてバリアフリー整備に係る費用を補うための料金値上げが実施された。これに伴い、都市部以外の鉄道におけるバリアフリー整備の国の補助率は2分の1に引き上げられる。本連合は、値上げ分の使途について監視を行い、明確でないもの等に対しては改善を求めていく。   さらに、本年度も駅ホームからの転落防止対策について、ホームドアの設置、内方線付き点状ブロックの設置といったハード面の対策を進め、併せて駅係員等による人的サポートを中心としたソフト面の充実も求めていく。また、視覚障害者も自らの歩行の仕方を見直す機会を持てるよう、日本歩行訓練士会と連携していく。  B道路交通の更なるバリアフリー化   まず、踏切における安全で確実な横断については、第76回全国視覚障害者福祉大会(奈良大会)においてシンポジウムを開催し、視覚障害者にとって必要な安全対策、視覚障害者自身ができる対策を協議し、共通理解を確認する。さらに、国より示されている踏切道境界部における視覚障害者誘導用ブロックの設置について、道路管理者、鉄道事業者に強く求めていく。また、踏切内に立ち入っていることを示す設備についても、国の検討会に参加し、できるだけ早期に実現できるよう働きかけていく。   信号機を始めとする道路横断の安全対策は視覚障害者の移動に不可欠であることから、本年度も継続してこれらの安全対策の徹底を国等に働きかけていく。まず、横断歩道等には音響式信号機とエスコートゾーンの設置を求め、かつ、音響式信号機の稼働停止時間を短くすることを求めていく。また、弱視者(ロービジョン)に見やすいLED式信号機の普及も求めていく。さらに、歩車分離式信号機やラウンドアバウト等、視覚障害者の安全な道路横断が確保できない仕組みが各地で導入されており、その多くが地域の視覚障害者の声を聞かずに導入されていることから、これらの方式を導入する際は、必ず地域の視覚障害者の声を聞くことを求めていく。   一方で、国はスマートフォンで信号の色等を確認できる高度化PICSの設置台数を増やす姿勢を見せている。そのため、このシステムを視覚障害者が無理なく利用できるよう、国や関係機関に対する働きかけを強化する。特に、スマートフォンの利用が苦手な視覚障害者に対しては、このシステムの利用方法の講習会を各地で開催することを求めていく。   また、道路における視覚障害者誘導用ブロックの設置においては、更なる推進を求めつつ、不適切な設置の改善、破損や劣化箇所への早期改修等も求めていく。 (4)就労問題  @一般就労  ア 視覚障害者の雇用拡大・就労継続を目指した取り組み   改正障害者雇用対策基本方針及び改正障害者活躍推進計画作成指針が令和5年4月から施行され、さらに今後、民間企業における障害者雇用率の引き上げ、除外率の引き下げが行われる予定となっている。障害者の雇用環境が確実に改善していく中で、視覚障害者の雇用をいかに伸ばしていくかが喫緊の課題である。その中で、視覚障害者の就労継続を支える制度等の拡充も同時に求めることが必要である。   これらを踏まえると、まずは重度障害者等就労支援特別事業の更なる拡大と充実を目指す必要がある。令和2年10月から同事業が開始し、就労に関わる通勤や事務処理においても障害福祉サービスを活用する道が開かれたが、同事業は未だ全国に広がっていない。そこで、実施する自治体を増やすために、引き続き厚生労働省や全国の自治体等から好事例を収集し、集まった情報を基に、本連合の加盟団体が中心となって各地の自治体に同事業の実施を求めていく。また、厚生労働省からも全国の自治体に好事例等の周知を行うよう、働きかけていく。   そして、視覚障害者の雇用拡大・就労継続を求めるためには、本連合自身がこれらの重要性をアピールする必要がある。そこで、視覚障害者の雇用拡大・就労継続に関するフォーラムを開催する。フォーラムの開催を通して、視覚障害者の新規就職のための職域拡大、中途視覚障害者の就労継続、職業訓練やジョブコーチの充実等を目指していく。なお、開催にあたっては、視覚障害者の雇用や就労に関する外部団体と連携を図りながら、日本経済団体連合会(経団連)や労働団体、厚生労働省や高齢・障害・求職者雇用支援機構等にも協力を要請する。  イ 就労問題懇談会の開催   視覚障害者の職業紹介状況を見ると、あはきの就職件数が減少傾向にある一方で、それ以外の分野の就職件数は伸びている。しかし、その伸び率は低く、依然として視覚障害者全体の就労が厳しい状況に置かれていることが分かる。その要因はジョブコーチ支援や能力開発に関する制度があるにもかかわらず、実際には視覚障害者が利用しにくいことが背景となっている。このほかにも様々な要因があり、視覚障害者の就労を伸ばすためには多くの課題が山積している。   そこで、視覚障害者の就労を推進するための改善策を検討するために、これまでにも幾度か開催した就労問題懇談会を継続的に開催し、視覚障害者の就労に関する現状と課題の整理、解決策等を協議する。そして、その検討内容に基づき、関係府省庁に対して視覚障害者の就労を促進するための提言を行う。   また、令和4年の「障害者雇用状況」(61調査)から初めて民間企業の身体部位別状況が公表され、民間企業の視覚障害者の実人員は13,697人(身体全体の5.5%)であること等が明らかになった。しかし、その詳細は不明確な部分が多く、詳しい分析が今後の課題である。本懇談会では、このような視覚障害者の雇用に関する情報の分析作業も行い、要求活動に役立てる。  ウ 公務員による意見交換会の開催   障害者の雇用を推進することは、民間・公務部門を問わず、等しく推進されるべきである。しかし、本来民間に率先垂範されるべき公務部門においては、いわゆる中央省庁における雇用水増し問題を受けて「障害者活躍推進計画」の作成と公表が義務付けられ、その進展が期待されているものの、現実には視覚障害公務員は民間企業のような支援が受けられず、困難を強いられている。   そこで、視覚障害公務員の現状を整理し、問題点や課題を把握するために、公務員の視覚障害者が集まって意見を交換するための意見交換会を開催する。意見交換会の開催により情報を集積し、公務部門における視覚障害者への支援の拡充を国等に求めていく。また、意見交換会の開催に併せ、海外の取り組み等の分析も行い、公務部門の障害者雇用及び就労支援に繋がる事例等を踏まえた改善策を国等に提言する。  Aあはき  ア 諸問題の解決   未だ職業選択の自由が確立していない視覚障害者にとって、あはき業は今なお視覚障害者の職業的自立の重要な職域である。しかし、あはき業には様々な課題が累積していて、その職域を保つことが困難になりつつある。例えば、無資格業者の問題は依然として解決していない。また、国で検討が行われているあはきの広告ガイドラインにおける施術所の名称は、やっと解決の方向性が示された段階である。このような諸問題を解決するためには、引き続き、あはき業団体が緊密に連携し、国に対してガイドラインの早期実現を働きかけるとともに、課題解決に向けた取り組みを強化していく。   また、視覚障害あはき師に対する職業的支援は未整備であり、療養費を取り扱う施術所においては書類作成の支援、往療の際の移動の支援が求められている。さらに、マイナンバーカードと健康保険証が一体化されることを踏まえ、視覚障害あはき師に対する適正な支援も求められることになる。そのための解決策の一つとして、重度障害者等就労支援特別事業を全国で一律に実施することを強く求めていく。本連合と加盟団体は、まずは各地の自治体に対して同事業を実施することを強く求めていく。さらに、国に対しては、各自治体が同事業を実施するために、必要とされる制度の改善及び支援を求めていく。  イ あはきと理療科教育の未来を考える懇談会の開催   視覚特別支援学校(盲学校)における理療科の生徒は激減しており、このままでは視覚障害者のための理療科教育が崩壊する危険性が迫っている。そのため、若い視覚障害者や中途視覚障害者があはきの魅力やあはき業の将来性を実感できるようにすることが重要になっている。   そこで、理療科教育従事者や視覚障害あはき師の将来を危惧する関係者が参加する本検討会を開催する。開催を通して現状の把握、現状に至った要因の分析、将来における理療科教育の体制、視覚障害あはき師に対する支援の在り方等を提言することを目指していく。 (5)教育問題  @GIGA教育支援プロジェクトの立ち上げ   デジタル化が推進される中で、教育の分野でもGIGAスクール構想の施策が進められている。しかし、学齢期の視覚障害児が使いやすい機器やソフトウェアが提供されておらず、デジタル化に対応できない視覚障害児は少なくない。また、これらの機器等を活用するための指導体制が十分ではないこと、保護者等への支援を含めた学外でのICT活用を促す手がかりが十分ではないこと等の様々な課題もあり、視覚障害児に対する支援の在り方を抜本的に考える必要がある。   そこで、これらの課題解決を目指し、関係者が集い、協議を行う場としてGIGA教育支援プロジェクトを立ち上げる。同プロジェクトにより、視覚特別支援学校(盲学校)及びインクルーシブ教育システムの実施校における現状と課題を整理し、関係府省庁に対し必要な支援策を提言する。  A教育と福祉の連携の充実   まず、視覚障害者が子育てを行う場合、通園・通学時に同行援護が利用できないこと、子育てに伴う代筆・代読支援の利用に制限があること等、福祉施策における支援が十分活用できないことが問題となっている。一方で、通園・通学に係る支援となると、視覚障害児を育てる晴眼の保護者に対しても、このような支援が必要になっている。特に、視覚特別支援学校(盲学校)以外で教育を受ける視覚障害児が増えている中で、そうした子供や保護者が点字の読み書きや自力歩行について指導を受ける機会が必ずしも十分ではないため、指導を受ける場に繋げることが必要になっている。本連合としては、これらの課題を解決するためには、教育と福祉の連携の充実が必要と考える。   そこで、まずはこれらの者に対する支援の在り方について、教育及び福祉の専門家の意見、海外の状況を参考にしつつ、日本でどのような支援が必要なのかを検討する。そして、教育と福祉の連携を強化させるため、関係府省庁に対し必要な支援策を提言する。 (6)災害・防災対策   本年度は関東大震災が発生して100年目の年になる。近年になり、視覚障害者の安全を守るために必要な災害・防災対策が進んだものの、関東大震災のような災害が発生した場合、視覚障害者は安全に避難し、安心して避難生活を送れるのだろうか。また、これらの災害に対する防災対策は確実なものになっているのだろうか。そこで、本年度も視覚障害者にとって必要な災害・防災対策を見直しながら、国や各地の自治体に対してその実施を求めていく。   まず、国や各地の自治体が進める災害・防災対策に対しては、依然として進まない視覚障害者向けの福祉避難所の準備、地域に住む各々の視覚障害者のニーズに即した個別支援計画の策定、災害・防災に関する円滑な情報提供を引き続き求めていく。特に、情報提供においては、国土交通省は水害に関するハザードマップのユニバーサルデザイン化を検討しており、近くガイドラインをまとめる予定となっている。視覚障害者がハザードマップを事前に確認できることは非常に重要である。そのため、このガイドラインを基に、各地の自治体に対して視覚障害者が確認できる媒体でハザードマップを発行することを求めていく。また、国土交通省に対しては、水害だけでなく、地震、火山、土砂等のハザードマップについてもユニバーサルデザイン化を進めるよう、働きかけていく。   一方で、視覚障害者自身が災害・防災対策の重要性や、自らを守るための知識が少ないことも課題となっている。そこで、これまでに被災視覚障害者支援研修会等を開催してきた日本盲人福祉委員会と連携し、9月の防災週間を中心に加盟団体向けに災害・防災対策をテーマとしたオンライン勉強会を開催する。勉強会の開催を通して、災害・防災対策の知識を全国の視覚障害者と共有し、知識を基にした各地の自治体に対する働きかけを強めていく。 (7)文化・芸術、スポーツ  @第60回全国音楽演奏会の開催   音楽家協議会が福祉大会に併せて毎年開催する演奏会は、本年度は第60回の節目の年となる。そこで、東京都盲人福祉協会の協力を得て、令和6年3月16日(土)に「第60回全国音楽演奏会」として記念演奏会を東京都中野区で開催する。開催にあたっては、邦楽の演奏者に留まらず、洋楽の演奏者も出演し、視覚障害者による音楽活動の素晴らしさを内外にアピールする。  A視覚障害スポーツの幅広い周知   昨今、パラスポーツという名称が一般化し、多くの障害者がこれらのスポーツを楽しむようになった。その中では、パラスポーツの認知度が高まったこと、さらにはパラスポーツの支援者が増えたことが大きな後押しになっている。一方で、日本で従来楽しまれている視覚障害スポーツは、認知度が低いこと、支援者が少ないことが課題となっている。そのため、スポーツ協議会と共に、視覚障害スポーツの幅広い周知活動を行い、視覚障害スポーツを楽しむ視覚障害児・者と支援者を増やす取り組みを進める。   なお、この周知活動においては、学齢期の視覚障害児、家族、関係者への周知を特に強めていく。昨今、国は共生社会の実現に向けてインクルーシブ教育システムの構築を進めており、その結果、現在では多くの視覚障害児が普通校に通っている。しかし、普通校に通う視覚障害児の実態を調べると、一部の視覚障害児は体育の授業に参加できず、見学になってしまうことがある。視覚障害児であっても学齢期に体を動かすことは非常に重要である。また、視覚障害児が視覚障害スポーツに参加することは、他の視覚障害児・者との接点が生まれ、様々な経験や知識を得ることができる。本連合は、これらのことを踏まえて周知活動を行い、併せて視覚障害児が視覚障害スポーツに参加する上で必要な条件を検討し、その実現を図る。 3.ライフステージごとの取り組み (1)視覚障害児及び子育て   視覚障害の早期発見と早期療育の推進は、その後の矯正視力の確保や適切な教育機会の選択にとって非常に重要である。しかし、視覚障害児やその親に対する医療的ケア、精神面での支え、相談支援等は十分とは言えず、大きな問題となっている。そこで、本年度に新設されるこども家庭庁及び関係府省庁に対して、視覚障害児の早期発見のための効果的な方法の確立、障害が発見された時の保護者に対する相談支援の実施、子供の適切な遊びや学びの実現等を求めていく。医療・福祉・教育の各分野にまたがる支援になるだけに、関係府省庁の連携を強く求めていく。   なお、これらの分野は、本連合自身も詳細なニーズや困り事を整理できていないことから、視覚障害児の療育及び視覚障害者の子育て等に精通した関係者等との意見交換を行い、これらの課題等を整理する。 (2)視覚障害青年   まず、視覚障害青年に関する問題は多岐に渡り、例えば就学や就労、結婚・子育て等が問題として顕在化しているが、これらの問題を整理したり改善策が検討されてきていない。そして、加盟団体においては、会員数の減少や高齢化が進む一方で若い会員が増えず、次世代リーダーの育成が喫緊の課題となっている。このことは加盟団体支援プロジェクト委員会がとりまとめた最終報告書でも言及しており、本連合及び加盟団体全体で解決すべき課題となっている。そこで、本年度は、青年協議会と共に視覚障害青年の意見を積極的に吸い上げ、視覚障害青年に関する問題を整理することを本連合の活動の柱に位置付ける。   まず、本連合の各種委員会や懇談会に視覚障害青年の参加者を積極的に招聘し、情報収集と諸問題の解決に向けた取り組みを行う。特に将来ビジョン推進委員会では、平成30年3月に策定した本連合の将来ビジョンを視覚障害青年が主体となり、国連障害者権利委員会から日本政府に示された総括所見を参考にしながら改訂作業を行う。この改定作業により、本連合の将来ビジョンに、未来ある視覚障害青年の諸問題を解決するための方針を盛り込んでいく。さらに、この作業を通して、視覚障害者の将来像を描けるリーダーを育成する。なお、同委員会以外にも、教育、雇用、弱視(ロービジョン)等の個別の委員会・懇談会にも、視覚障害青年の参加を推進していく。   また、本年度も青年協議会と共に、視覚障害青年が加盟団体の活動に参加できるようにしていく。そのために、視覚障害青年向けのオンライン研修会等を開催する。 (3)視覚障害女性   視覚障害女性の生活文化と地位向上を図ることを目指し、女性協議会と共に諸課題の検討、改善に向けた提案を行う。また、女性が活躍する社会の流れを踏まえ、本連合内での視覚障害女性の参画を拡大するため、女性リーダーを育成し、本連合の運動と事業に視覚障害女性の意見を取り入れていく。   一方で、近年、視覚障害女性に対する複合差別が浮き彫りになっており、色々な困り事があっても周りに相談できない視覚障害女性が増えている。そこで、本連合の総合相談室に女性相談員による女性専用の相談を受ける体制を設け、全国の視覚障害女性から差別に関する相談、さらに子育て、親の介護、老いていく自分等に関する相談に応じていく。   また、安全対策の取り組みも行なわなければならない。特に、防犯対策として、ペンダント型カメラ等の防犯機器の開発を関係機関に働きかけ、防犯機器を日常生活用具に指定することを国や自治体に対して働きかける。 (4)高齢者   新型コロナウイルス感染症の影響は、高齢視覚障害者に大きな傷跡を残している。特に、外出控えによる健康不安、ICT化の進展による環境の変化は、高齢視覚障害者が安心して暮らすための障壁となっている。そこで、高齢視覚障害者の健康と社会生活の充実を促し、併せて生活の利便性を高めるために次の取り組みを行う。   まず、健康増進のための対策として、健康体操や各種レクリエーションにより体力回復を行うことが有効であることから、自治体等へ高齢視覚障害者向けの健康体操や各種レクリエーションの実施を働きかけていく。その際には、地域活動支援センターを活用することも求めていく。また、高齢視覚障害者が地域で安心して暮らしていくためには、生活訓練や歩行訓練といった視覚障害リハビリテーションが必要である。そのため、指導員並びに訓練時間の確保、高齢視覚障害者の特性に配慮したカリキュラムの導入を求めていく。   そして、ICT関連の対策として、高齢視覚障害者向けICT訓練を全国各地で実施することを求めていく。この中では、高齢視覚障害者に向けたカリキュラムの下で、個別学習の形で技術を習得できるような学習機会を確保することも求めていく。また、スマートフォン等の生活必需品が、高齢視覚障害者にとって操作しやすいものになることも必要である。そのため、機器やアプリ開発者に対して、高齢視覚障害者の利用に配慮した機器やシステムの開発を求めていく。   さらに、65歳問題のような継続課題についても、その解決に向けて取り組んでいく。特に、以前より高齢視覚障害者の孤立化の防止を求める声が強いことから、加盟団体と一体となった取り組みを進めていく。一人暮らしの高齢者は孤立しやすく、周りからの声掛けが必要である。そこで、本連合の加盟団体が地域の高齢視覚障害者に対して積極的にアプローチしていく仕組みづくりを検討する。例えば、電話相談を受けたり、安否確認の声掛け、また、交流の場所を用意していわゆる井戸端会議の開催等、様々な試みを実施していきたい。このような試みを実施し、地域の高齢視覚障害者と本連合加盟団体が繋がっていくことを目指していく。 (5)弱視者(ロービジョン)   弱視者(ロービジョン)に関する取り組みは、引き続き、弱視部会を中心に進めていく。   まず、弱視者(ロービジョン)の困り事を整理するため、同部会のメーリングリストやオンライン意見交換会等を通して情報を収集し、集まった情報を資料化する。なお、令和元年度から資料化を進めたことにより、様々な情報が集約できている。そこで、本年度はその資料を有効活用する試みとして、資料を基にした動画の作成及び周知を検討する。また、更なる情報収集を行うための試みとして、総合相談室において弱視(ロービジョン)相談の開催を検討する。多くの弱視者(ロービジョン)は自身が弱視(ロービジョン)であることを打ち明けることができず、日々の生活に困っている者が多い。そうした弱視者(ロービジョン)の相談に応じ、困り事を集約し、国や関係機関に解決策を働きかける。本年度は、移動や情報分野のバリアフリー化に加え、同行援護や代筆・代読支援、さらには重度障害者等就労支援特別事業といった障害福祉サービスを弱視者(ロービジョン)が利用しやすい制度にすることを求めていく。   一方、加盟団体が弱視(ロービジョン)問題に取り組むことも重要となっている。会員減少が加盟団体全体の共通課題となっている中で、弱視(ロービジョン)の会員を増やすことは必須とも言える。そこで、本年度は、本連合全体で弱視(ロービジョン)に関する取り組みを共有化し、各団体の中に弱視(ロービジョン)に関する部会の設置等を推進していく。 4.関係府省庁への審議会等への出席   関係府省庁が開催する各種審議会に、本連合から委員を派遣し、幅広い視覚障害者の意見を基にした制度改善を求める。主な審議会等は以下のとおりである。  @内閣府    ・障害者政策委員会   ・障害者による情報取得等に資する機器等の開発及び普及の促進並びに質の向上に関する協議の場  A厚生労働省   ・社会保障審議会障害者部会   ・労働政策審議会障害者雇用分科会   ・障害者雇用・福祉施策の連携強化に関する検討会   ・社会保障審議会医療保険部会あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費検討専門委員会   ・あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会  B国土交通省   ・移動等円滑化評価会議   ・高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準に関するフォローアップ会議   ・新技術等を活用した駅ホームにおける視覚障害者の安全対策検討会  C文部科学省(厚生労働省)   ・視覚障害者等の読書環境の整備の推進に係る関係者協議会 5.関係団体との連携   視覚障害の関係団体だけでなく、様々な障害当事者団体、関係団体とも連携し、視覚障害を含む障害者全体の福祉向上を目指して活動する。主な団体は以下のとおりである。  @日本盲人福祉委員会   ・WBU及びWBUAPに関する取り組み   ・視覚障害者選挙情報支援プロジェクト   ・大災害被災視覚障害者支援対策本部  A日本障害フォーラム(JDF)   ・障害者全般に関する各種取り組み   ・障害者権利条約に関する各種取り組み  B情報コミュニケーション4団体連絡会(ろうあ連盟、全難聴、盲ろう者協会、日視連)   ・情報保障の確立に向けた取り組み   ・関係府省庁の審議会等での連携に向けた協議  C障害者の文化芸術活動を推進する全国ネットワーク   ・障害者芸術全般の取り組み  Dあはき等法推進協議会、鍼灸マッサージ保険推進協議会   ・あはき全般に関する各種取り組み  E東洋療法研修試験財団   ・はり師、きゅう師及びあん摩マッサージ指圧師施術管理者研修実行委員会への委員派遣  F国立大学法人筑波技術大学   ・経営協議会への委員派遣  G全国社会福祉協議会   ・障害関係団体連絡協議会への委員派遣  H公益社団法人日本眼科医会   ・定期懇談会の開催  I日本歩行訓練士会   ・イベント開催の協力 6.各種会議、行事の開催予定 (1)評議員会   定時 令和5年6月 (2)理事会   第1回 令和5年4月   第2回 令和5年6月   第3回 令和5年7月   第4回 令和5年11月   第5回 令和6年3月 (3)全国団体長会議   第1回 令和5年5月21日(日)   第2回 令和5年10月   第3回 令和6年2月 (4)全国大会   開催名:第76回全国視覚障害者福祉大会(奈良大会)   期日:令和5年5月21日(日)、5月22日(月)   場所:DAIWA ROYAL HOTEL THE KASHIHARA (5)各協議会等の全国大会・代表者会議  @女性協議会   開催名:第69回全国視覚障害女性研修大会 関東ブロック(神奈川大会)   期日:令和5年8月30日(水)、31日(木)   場所:藤沢市民会館  A青年協議会   開催名:第69回全国視覚障害青年研修大会   期日:令和5年9月17日(日)、18日(月・祝)   場所:札幌市身体障害者福祉センター  B音楽家協議会   開催名:第60回全国音楽演奏会並びに第61回音楽家協議会福祉大会   期日:令和6年3月16日(土)、17日(日)   場所:なかのZERO小ホール・東京都内  Cあはき協議会   開催名:令和5年度代表者会議   期日:令和5年6月または7月   場所:オンライン及び日本視覚障害者センター研修室  Dスポーツ協議会   開催名:令和5年度スポーツ協議会代表者会議   期日:令和5年6月   場所:オンライン  E弱視部会   開催名:令和5年度第1回委員総会、第2回委員総会   期日:令和5年4月15日(土)、令和5年夏   場所:オンライン及び日本視覚障害者センター研修室 (6)文化芸術関連の行事  @第49回全国視覚障害者文芸大会   募集作品:俳句、短歌、川柳、随想・随筆   募集期間:令和5年6月1日〜7月31日  A第45回全国視覚障害者将棋大会   期日:未定   場所:未定 (7)その他   「視覚障害者移動支援従事者(同行援護従業者)資質向上研修」は、新型コロナウイルス感染症の状況を見ながら、新規向け研修(一般の部、視覚障害当事者の部)と更新研修を開催予定。 第U章 日本視覚障害者センターの事業 はじめに  日本視覚障害者センターでは、点字図書館の運営、点字出版や録音製作、各種広報誌による情報提供並びに更生相談等の事業を通じ、全国の視覚障害者に対する情報提供事業として第二種社会福祉事業及び公益事業等に取り組んでいく。なお、本年度においては、事業運営上の課題等を探り検討を加えるとともに、さらに事業の効率化を図りながら事業収入の安定化を目指していく。 1.情報提供・広報活動  全国の視覚障害者に対し、国内外の障害保健福祉関連情報等を点字版や音声版で広報する(厚生労働省委託事業)とともに、日刊の新聞情報を点字等によりネット回線を用い各都道府県の点字図書館へ即時提供する(厚生労働省補助事業)。  また、情報メール、愛盲時報、点字日本、日視連アワー、声のひろば等の定期刊行物を継続して発行する。さらに、全国の各自治体広報・議会報、その他点字物や録音物等を製作発行し、引き続き視覚障害者の生活に不可欠な情報の提供に努める。そして、センターの事業内容や活動の広範な周知と情報公開を図るために、ホームページの内容の充実と迅速な更新を行う。  なお、本年度は統一地方選挙が4月に予定されており、視覚障害者選挙情報支援プロジェクトと連携し各媒体での選挙公報(お知らせ版)を提供する。 2.相談事業  全国盲人相談事業(厚生労働省委託事業)では、総合相談、法律相談、眼科相談、聞こえにくさ相談を実施する。随時行っている生活相談(同行援護相談、ICT相談、障害年金相談)も適宜専門相談員を配置して対応する。また、昨年度末に実施した視覚障害女性の相談会(集中相談)を年1〜2回実施するとともに、利用者のニーズ等に応じ工夫を加えることを検討する。そして、公益社団法人 NEXT VISIONとの連携による就労相談も引き続き取り組んでいく。 3.養成講習会の開催  東京都委託点訳奉仕員指導者養成講習会(全20回)、朗読奉仕員指導者養成講習会(全25回)及び専門点訳奉仕員養成講習会(英語・理数・楽譜 各10回)を開催する。 4.ボランティアの育成  ボランティア研修会(1回)、音訳勉強会(全5回)、音訳勉強兼交流会(1回)、音訳ボランティア校正講座(全3回)、サピエ図書館登録音声デイジー製作基準説明会(全2回)を開催する。 5.調査研究事業  情報部を中心に、引き続き地域のリハビリテーション普及に向けた取り組みの一環として、ECLOに関する研究「視覚障害者の早期相談支援のためのリンクワーカー育成に係るガイドライン作成事業」を行う。 6.弱視(ロービジョン)の利用者を対象とした商品の企画販売  用具購買所では、弱視(ロービジョン)の利用者を対象とした製品の企画や販売を拡大し、利用者の利便性向上に努める。 7.地域公益活動  新宿区内社会福祉法人連絡会と連携を図り、協働で地域公益活動(フードパントリー、オンラインサロン、CSR活動企業との連携)に取り組んでいく。地元戸塚地区との連携に努め地域活動の行事には積極的に参加し理解を深める。  また、日視連フェスティバルの実施を通じて、地域住民に還元できる有益な情報を提供していく。さらに地域の学校や企業等からの要請に応じた福祉・人権教育等の出前講座に適宜対応していく。 8.センター組織再編  将来の新規事業に向けて本年中に準備室を立ち上げ、必要な手続きに着手する。  また、現行のセンター内組織に目を向け、効率的で能率的な運用が図れるよう、必要に応じて再編する。 9.施設等の整備  本センターが築15年を経過したため、経年劣化による施設修繕を行う。また、ネット環境が安定するよう適宜改善を図る。 10.文化・芸術活動  第45回全国視覚障害者将棋大会を開催する。視覚障害者将棋の普及や啓発に向けた企画については、引き続き日本将棋連盟等関係団体等との協議を重ねる。  また、第49回全国視覚障害者文芸大会は、短歌、俳句、川柳、随想・随筆の4部門を実施する。 11.防災対策  総合避難訓練を8月に実施するとともに、幅広い災害に対応した内容を加味した取り組みとする。 12.職員研修  職員研修計画を立案し、各種研修会等に職員を派遣し資質の向上を図るとともに、内部研修として視覚障害者の誘導方法、点字基礎講座、社会福祉法人の概要等の新人研修を実施する。 13.健康管理・レクリエーション  福利厚生の一環として、定期健康診断を年1回実施する。希望者にはインフルエンザ予防接種の補助を行う。また、センターに勤務する職員等のレクリエーションや親睦会の機会を提供する。  新型コロナウイルス感染症の対応については、5類感染症に移行することを踏まえながら職員の健康維持に取り組む。 14.各種会議、委員会  以下の会議を実施するとともに、新たにセンター各事業の活性化を図ることを目的に各種委員会を設置する。  ・業務運営会議(月1回)  ・部長会議(適宜)  ・各種委員会(防災対策委員会、日視連フェスティバル実行委員会、業務活性化委員会)