厚生労働省 令和元年度障害者総合福祉推進事業 「地域における視覚障害者への代筆・代読支援に向けた調査研究」報告書 抜粋資料(社会福祉法人 日本視覚障害者団体連合 2020年3月) 意思疎通支援事業「代筆・代読支援」先駆的自治体による代表的モデル 1.事業の開始 ・住民からのニーズに耳を傾け、代筆・代読の支援を必要とする視覚障害者等がいれば、代筆・代読支援の開始を検討すべき。 ・先駆的に事業を実施している自治体の実施例等は、事業開始の検討において役立つので活用すべき。 ・障害者のコミュニケーション等を支える法律・条令等があれば、事業開始の後押しになるため、活用すべき。 ・地域生活支援事業のメリットを生かし、地域の実情や利用者のニーズを柔軟に捉え、各自治体に見合った制度設計を行うべき。 2.他サービスとの区分け ・代筆・代読の支援が行える他サービス(同行援護・居宅介護等)とは、制度上は区分けをし、それぞれのサービスにおいて、有効性が高い支援を実施すべき。   例 居宅介護    居宅内での家事援助 等       ↓     代筆・代読支援 居宅内での代筆・代読の支援       ↑     同行援護    外出時の情報提供支援(移動支援) ・これらのサービスの実施においては、同じ支援者がシームレスに、それぞれの支援を実施できることを可能とすべき。 ・これらの他サービスがあることを理由に、代筆・代読支援の利用を抑制するような事由を作ることは好ましくない。 3.対象者のイメージ ・代筆・代読の支援を必要とする視覚障害者を対象とすべき。 ・代筆・代読の支援を必要とする者は、様々な理由で支援を求めている。そのため、個別のニーズを精査した上で、支援対象にするかどうかの判断をすることが望ましい。視覚障害の等級、家族構成、他サービスの利用状況等による画一的な判断は避けるべき。 4.事業所(支援者) ・視覚障害者の支援を行っている居宅介護事業所や同行援護事業所であれば、事業の実施は十分に可能である。 ・最低でもホームヘルパーの資格を持った支援者が必要だが、きめの細かい支援を行うには、視覚障害者の特性を理解した同行援護の支援者が有効となる。 ・円滑な支援を行うためには、現場の支援者と自治体の担当者の間に調整役(ケアマネージャー、サービス提供責任者等)を設けることが望ましい。 5.支給時間、単価 ・支給時間は月5〜10時間程度、週1回程度、1回あたり1〜2時間前後の支援が望ましい。ただし、支給時間の設定は、支援を受ける視覚障害当事者の個別のニーズに対応できるよう、柔軟な設定が求められる。 ・支給時間や単価は、地域の事業所と相談の上、支援者が円滑に派遣できるラインを見据えて設定すべき。 ・事業開始時は小規模の予算で開始し、利用者のニーズに応じて予算規模を可変してくことが効果的。 6.支援内容 ・公的な福祉サービス全般で実施できない内容は支援の対象外にする。また、契約行為、意思を表明する行為は、内容によっては支援の対象外とする。 ・事業所(支援者)と利用者が、代筆・代読支援で「できること/できないこと」を合意した上で、事業が実施されることが望ましい。合意においては資料@の活用が効果的。 ・サービスを利用する視覚障害当事者、支援を行う事業所(支援者)、制度を運営する自治体が、それぞれで工夫しながら、協力的に事業を進めていくことが効果的。   例 当事者 事前に依頼したい内容を準備しておく     支援者 不明確な支援内容があれば、事業所担当者に相談し、判断を仰ぐ     自治体 事業所からの報告をもとに、制度面の調整を定期的に行う 7.資質の向上、支援者の養成 ・支援の質を向上させるため、支援者の養成は積極的に実施したい。そのためには、事業所の独自の努力に頼るのではなく、自治体の積極的な支援のもと、研修会等の開催を行うことが好ましい。 8.周知 ・代筆・代読の支援は、視覚障害者自身も公的な福祉サービスとして支援が受けられることを知らない場合が多い。そのため、自治体や事業所等は積極的な周知を行う必要がある。 ・周知においては、視覚障害者が確認できる方法で、自治体の福祉のしおりやホームページに掲載を行い、定期的な情報提供、視覚障害者への声掛け等を行うことが望ましい。 ・自治体からの情報発信だけでなく、事業所、視覚障害当事者団体、地域の関係機関が一丸となって情報発信を行うことが望ましい。 9.その他 ・実際の代筆・代読支援の支援の様子は、資料Aが参考になる。