127ページ 第14章 障害の理解と啓発 1.現状  障害者権利条約の設立に伴い、国内法の整備が進み、法的な枠組みが整いつつある。これらの動きに同調して、社会全体は障害者に対する理解が進んでいるように見られ、日常的にも障害者を差別するような言動はほとんど聞かれなくなっている。また、様々なメディアにも障害者が取り上げられることが増え、身近に障害者の存在を意識するように変わっている。さらに、小学校や中学校などにおける「総合的な学習の時間」に様々な障害者を理解するような授業が取り扱われるようになっている。  しかし、現在の社会では、障害や障害者を「知る」という段階にはある程度達しているように思われるが、「理解」という段階、そして、その先にある「支援」という段階にはまだ達していないように思われる。  例えば、障害者は社会的には少数派であるため、障害者一人の状態が、あたかもその障害を代表するような誤解を招くことがある。具体的には、「視覚障害者は、みんな白杖か盲導犬を使用している」とひとくくりに思われたり、「補聴器を使用している聴覚障害者は話すことができない」というように、それぞれの障害者について、出会った障害者が全て同様の障害であるように誤解されていることがよくある。また、はじめに出会った障害者がその障害像をイメージすることもあり、「視覚障害者は、挨拶ができない」「不潔な服装をしている」などの誤ったイメージを喚起させてしまうこともある。  つまり、障害や障害者を「知る」という段階で、このような誤解を生みださないようにすることが、視覚障害者の理解や啓発を進める上で解決すべき課題の一つになっている。 2.到達目標  障害当事者やその家族が、地域社会の中で、自分らしく生活し、自分の障害を意識することなく生活できるような社会を実現させる。 3.具体的方策 (1)短期  @ 視覚障害者の啓発用リーフレットやガイドブックの収集    福祉・教育・医療・労働・民間など様々な団体を対象に、理解啓発活動や事業を行っているが、その実態が把握できていない。このような活動を把握し、障害者について、どのように伝えているかを調べることが重要である。実態把握のためには、各種団体や個人において、作成されたガイドブックやリーフレットを収集し分析することが必要である。  A 視覚障害啓発プログラムの作成    様々な方々に対して視覚障害当事者が啓発を行う場合、どの視覚障害者が啓発を行っても同一内容で進めることができるように啓発プログラムを作成することが必要である。この啓発プログラムは共通性の高い基本的なものとし、実際には、啓発内容を紹介する視覚障害者の経験に基づくことを加えて紹介することが望ましい。 (2)長期  @ 学校教育の充実    義務教育段階において、障害者理解に関する内容を必須のものとして取り上げる。  A 民間や公共施設の研修の充実    新人研修や初任者研修などに障害者理解に関する内容を必須のものとして取り入れる。  B 理解啓発プログラムアドバイザーの新設    様々な場面で啓発に関する研修会を企画する際の講師を支援したり、研修内容に関するアドバイスを行う。  C 視覚障害当事者の意識の高揚    視覚障害者個人が、社会から見られているという意識を持ちつつ、生活することが必要である。誤った障害理解を進めないためにも、個人が意識しなければならない。 4.課題  @ 個人や社会の意識を変えるには、かなりの時間がかかることが予測される。  A 理解啓発の客観的な尺度が難しい。そのため、理解啓発活動の成果を判断しにくい。