117ページ 第12章 余暇活動 118ページ 第1節 スポーツ 1.現状   視覚障害者スポーツの社会における認知度は、まだまだ低いと思われる。特殊な器具や用具が必要な競技では、限定された場所でしかスポーツができない。また、ランニングなどの一人で取り組むスポーツは、かなりの困難が伴う。さらに、視覚障害ゆえに競技役員(審判員など)を務めることは困難である。 2.到達目標  @ 視覚障害者スポーツ人口の拡大(仲間づくり)。  A 視覚障害者スポーツ情報のまとめサイトの整備。  B 一般のスポーツ施設において、視覚障害者の利用を想定した職員研修の実施。  C スポーツ施設周囲の交通アクセスの整備。 3.具体的方策 (1)短期  @ 視覚障害者スポーツの積極的な情報発信のための仕組みづくりが重要で、個々の競技団体の組織化が進んでいる現在、本連合として視覚障害者スポーツの総合的なポータルサイトを作り、社会と各競技団体との橋渡し役を担う。  A ウォーキングやスイミングなど、個人で取り組める運動を促進するため、各自治体で実施されている「歩こう会」などへの参加体験手記を募って公開する。 (2)長期  @ 本連合加盟団体と地元の大学などが提携して「視覚障害者がスポーツを楽しむためのサポートチーム」を創設する。 4.課題  @ 東京2020オリンピック・パラリンピックの気運が盛り上がっている一方、国内には長きにわたって視覚特別支援学校で実施されてきた球技(グランドソフトボール)があり、これらを含めた視覚障害者スポーツの啓発に向けた取り組みが望まれる。  A 視覚障害者スポーツの最大の弱点は、視覚障害ゆえに競技審判ができないことである。このことを社会にアピールし、競技体験会を通じて審判員の養成に繋げる工夫が必要である。  B 子育て中の女性がスポーツをするための環境整備が望まれる。 119ページ 第2節 文化・芸術 1.現状  時にアートは、言葉や文字とは違う形で、新たな世界観・人間観の形成を促す。また、想像力(イマジネーション)と創造力(クリエイティヴィティ)によって「目に見えない世界」を表現するのがアートであるともされている。視覚障害者にとっての「文化・芸術活動」とは何を意味することになるかについては、ようやく議論が始まり、深められつつあるところである。  一般的には、趣味を共通する仲間によるサークル活動にはじまり、様々なボランティア活動もまた文化活動の一つであるし、専門家による指導や専門的知識の会得を目的とする活動も含まれることになる。本連合は、これまでも文芸大会や音楽家協議会による邦楽演奏会を行ってきたが、近年広がりつつある触察や聴覚を利用したアートの鑑賞や二次元ないし三次元の世界を楽しむ活動は不十分であった。  国は、これまでにも芸術活動への支援として、ボランティア団体ないしは芸術活動を支援する団体に対し、助成金を提供してきた。2018年(平成30年)には「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」が施行された。今後は、東京2020オリンピック・パラリンピックをも絡めて、そうした法律や制度に基づく障害者の参画型の文化・芸術活動が広がるものと思われる。 2.到達目標  @ 視覚障害者であっても参加や鑑賞ができる文化・芸術に関する情報を、全ての視覚障害者に提供されるようにする。  A 個々の視覚障害者が持つ趣味や嗜好を深めたり、広げるための場や支援者をいつでも得られるようにする。  B 視覚障害者の参加や鑑賞を前提とするユニバーサル・ミュージアムを増やす。 3.具体的方策 (1)短期  @ 各地域においてどのようなニーズがあり、どのような活動が行われているかを調査する。  A 様々な文化・芸術活動に関する情報を収集し、本連合加盟団体や会員に情報を提供する。  B 美術作品の制作・鑑賞ができるワークショップを開催したり、視覚障害者による作品や視覚障害者が企画した展覧会を実施する。  C 地域の博物館・美術館との連携事業を企画する。 (2)長期  @ 視覚障害者または視覚障害者を主体としたグループの文化・芸術活動をリードする人材の育成と必要となる費用を支援する。  A 地域の盲人史を発掘・編纂する。  B 弱視者を含む視覚障害者を「触常者化」するプロジェクトを立ち上げる。 121ページ 第3節 旅行 1.現状  旅行は人生において、大きく生活の質を高めるとともに、新たな学びとなり、人として経験値を養うことのできるものである。このことは視覚障害者においても同様である。さらに、絵や写真を見てあらゆる物を知ることが困難な視覚障害者にとっては、実際の場所を訪れ、触れたり、体感することは晴眼者よりも重要なことである。  公益財団法人日本生産性本部余暇創研の「レジャー白書2018」(※1)によると、様々な余暇活動がある中で、国内観光旅行を挙げる者が多く、旅行は2011年(平成23年)以来7年連続の首位となっている。このように多くの国民が旅行を楽しんでいる現状を考えると、視覚障害者にもそのニーズはかなりあるものと推察される。  このようなニーズを叶えるものとして、バリアフリー旅行を専門とした旅行会社の専門部署や、障害者の旅行を支援するNPO法人などが存在する。しかし、これらの会社や団体のような動きはまだ一部であり、もっと利用しやすい状況にならないといけない。  旅行は、衣食住に直接かかわる行為ではないことから軽視される傾向があるが、人間らしく文化的で教養を高めるためには、なくてはならないものと思われる。  旅行という行為は、大変多くの要素を包含しているため、部分的な環境改善や単発的な人的支援のみでは、真の意味での「ユニバーサルな旅行」とはならない。旅行という行為を始めるための「動機づけ」から障壁がある。つまり、「どこかに行ってみたい」と思うには、そのことを何らかの方法で知らなければ「行きたい」という感情は生まれにくい。動機づけを引き起こすための事前情報が少ないことが障壁となっているのである。仮に、「○○に行きたい」と思っても、実際には、どのように、誰と、安全に行けばよいのか、多くのことを調べなければならない。すなわち「単独で行くのか、盲導犬を利用するのか、ガイドヘルパーを利用するのか、友人と行くのか、家族と行くのか」「交通機関の利用はどうすればよいのか」「宿泊はどうすればよいのか」「目的地では自分の望むようなことが可能であるか」「経費はどの程度必要になるのか」など、多くの要素を考えなければならない。そして、これらは全て安全にあるいは安価に運ばなければならない。  旅行が全ての視覚障害者にとって、ストレスなく、実施できれば、本当の社会全体がユニバーサルな世界になっているであろう。 2.到達目標  視覚障害者がいつでも、どこにでも、誰とでも旅行を楽しむ社会を実現する。 3.具体的方策 (1)短期   @ 旅行に行くための情報収集を目的としたパソコン、タブレット、スマートフォンなどの視覚障害者向けIT研修会を各地で開催する。  A 旅行を楽しんでいる当事者の経験談を収集する。  B 全国的に切れ目がなく、24時間体制でガイドヘルパーを利用できる方法について検討する。  C 宿泊業者向けの「視覚障害者対応プログラム」を作成し、施行する。  D 資料館、博物館、動物園、水族館、科学館などに働きかけ、館内案内図やリーフレットの点字化や拡大版を作成する。 (2)長期  @ 旅行会社、公共交通機関、公的施設、宿泊業者などの従業者が、視覚障害者に対する介助法や情報提供の方法を身につける。 4.課題  現在、交通機関の利用において、介助者を伴う場合は、当事者と介助者の両者が割引の適応を受けている。宿泊や各施設の入場料については、どのように考えるとよいのか。また、介助者を伴う飲食代はどのように考えるのがよいのか。社会の理解を含めた検討が必要ではないだろうか。 5.参考資料 (※1)「レジャー白書2018」 https://activity.jpc-net.jp/detail/srv/activity001540.html