23ページ 第1章 政治への参加 24ページ 第1節 選挙権を中心とした参政権の保障 1.現状  わが国では、世界に先駆けて1925年(大正14年)より国政選挙での点字投票が認められてきた。  しかし、それからほぼ1世紀を経た今でも、投票行動の前提となる選挙公報の情報保障には以下の課題が残っている。  @ 現在、国政選挙などでは点字や音声媒体による「選挙のお知らせ」が配布されているが、あくまでもこれは民間の点字出版所などが作成した雑誌を、選挙管理委員会が選挙啓発用に任意で購入し、視覚障害者などに提供するもので、未だに、点字や音声による選挙情報の提供について、一切の法的な裏付けがないこと。  A 点字や音声による「選挙のお知らせ」や、投票所に置かれる候補者名簿の点字版が完成するのが投票日直前のため、期日前投票に間に合わないこと。  B インターネット上に掲載された選挙公報が、視覚障害者には全く読めない画像のみのPDFファイルであること。  C 市町村の首長や議会議員選挙では、点字や音声による選挙公報が提供されないケースが大半であること。  さらに、視覚障害者が投票所に行き、実際に投票を行う際の問題として以下の課題が指摘されている。  D 投票所が駅やバス停から遠く、場所が分かりにくい。また、バリアフリーが不十分であること。  E 投票所に行く際に同行援護を使ってしまうと、サービス時間数の上限の関係で、その他の日常生活に支障が生じること。  F 代理投票は、投票所の職員に依頼しなければいけないが、規模の小さな自治体では投票所職員も顔見知りということがある。このような場合、投票の秘密が十分に守られないのではないかとの懸念があること。 2.到達目標  視覚障害があっても、候補者や政党に関する十分な情報を得た上で投票できる条件を整備する。さらに、投票所へのアクセスについて、視覚障害ゆえの不便をなくす。 3.具体的方策 (1)短期  選挙投票日の同行援護の利用は、通常のサービス支給時間とは別に保障されるよう制度改正を働きかける。  選挙管理委員会のホームページに掲載される選挙公報は、現在の書類を単にスキャンした画像のみのPDFファイルではなく、テキスト情報の埋め込まれたPDFファイルないしテキスト形式など、視覚障害者にも読むことができる形式を掲載するよう働きかける。 (2)長期  点字や音声による選挙情報の提供を行政の法的義務とすべく、公職選挙法の改正を含めた提言を行う。  現在議論されているインターネット投票の制度の導入に際し、視覚障害者が不利を被ることのないよう、選挙前の情報提供の方法や投票に用いられるホームページのアクセシビリティーに十分に配慮するよう働きかけを行う。 26ページ 第2節 被選挙権を含む政治活動の保障 1.現状  視覚障害者の望む政策を実現し、生活の向上を達成するためには、国会議員をはじめとする各段階の議会議員に視覚障害者ないしその関係者が議席を持つことが重要である。  海外では、イギリスのブランケット大臣、アメリカのパターソンニューヨーク州知事など、視覚障害を持つ政治家は必ずしも珍しくはないが、わが国では、旧民主党の堀利和議員以来、視覚障害を持つ国会議員は不在である。 2.到達目標  視覚障害があっても政治家を志し、実際に議会議員として活躍できる社会の実現を目指す。 3.具体的方策 (1)短期  本連合として、視覚障害を持つ現役議員ないし議員を志す者を積極的に支援し、視覚障害者に関する政策の実現に協力してくれるよう働きかける。 (2)長期  視覚障害者が候補者として選挙に出馬する場合、この者を人的・経済的に支援できるよう、社会福祉法人とは別に政治活動を目的とする団体を作り、積極的な資金集めなどができる仕組みを作る。 4.課題  視覚障害者の福祉の増進や政策の実現のためには政治家との協力関係が不可欠である。しかし、本連合会員にはそれぞれの政治信条がある。そのため、本連合が組織として特定の政党や候補者を支援することについては、異なる意見を持つ会員の存在にも配慮した慎重な姿勢が求められることも忘れてはならない。