5ページ 第1編 わが国の視覚障害者と日盲連 7ページ 第1章 わが国の視覚障害者 1.視覚障害の定義  わが国では、身体障害者福祉法に基づき1級から6級の障害認定を受け、身体障害者手帳の交付を受けた者を視覚障害者としている。視覚障害は、視力障害と視野障害に分けられる。視力等級は、最も適正なレンズを装着して測定した矯正視力によって判定する。例えば最も軽い6級の視力障害は、良い方の眼の矯正視力が0.3以上0.6以下で他眼の矯正視力が0.02以下となっている。視野測定には、ゴールドマン視野計ないしは自動視野計のうちいずれかを用いる。ゴールドマン視野計は視野の角度を求めるもの、自動視野計では両眼開放エスターマンテストと10−2プログラムの双方で測定し、視認できた点数を数える。例えば4級の場合、前者では周辺視野角度の総和が左右眼それぞれ80度以下となる。もう一つでは、両眼開放視認点数が70点以下となっている。  現在、身体障害者手帳を所持している視覚障害者は、31万2千人とされている(※1)。一方、日本眼科医会は、アメリカの視覚障害の基準である良い方の目の視力が0.5未満の者は、わが国には164万人はいると推計している(※2)。このように、実際には目の不自由さを感じている者が大変多いと考えられている。 2.全盲と弱視(ロービジョン)  全盲とは、全く物が見えず光も感じない状態である。それ以外の状態が弱視である。全盲ではなくとも、それに近い状態であれば社会生活を送るにはとても不自由である。弱視は、眼疾患などにより視力などが回復しないほどの障害を受け、日常生活などに支障をきたしている状態である。  全盲者・弱視者の不自由さを軽減するために、歩行などのリハビリテーションを受けやすくする方策が必要である。生活地域で受けたい時に受けられることが理想であるが、現実は必ずしもそうではない。生活地域の近くに視覚障害リハビリテーションが可能な機関や人材は多くない(※3)。この状況は、障害者権利条約が求めている居住地域での早期リハビリテーションと違いがあるため、解消する必要がある。 3.見え具合  まず、弱視者の見え方にはいろいろある。視力障害は、矯正眼鏡を用いても低視力の状態である。視野障害は、見えている範囲である視野に障害を来した状態である。視野障害には、求心性視野狭窄、中心暗点など見え方に違いがある。眼球には、眼底に中心窩という視力が最も高い部位がある。周囲から視野が欠損していき中心窩のあたりが保たれている状態が求心性視野狭窄で、比較的視力は高い。一方、中心暗点は中心窩のあたりが障害された状態で、周辺視野はある程度保たれているが視力は低い。周辺視野での物の認識がある程度可能なため大きな物については比較的分かりやすい。慣れた道などは歩けるが、低視力のため文字を読むには大きく拡大する必要がある。  なお、多くの晴眼者は「視覚障害者は全盲」と捉えている傾向がある。2016年(平成28年)の厚生労働省の調査(※1)では1級の視覚障害者は38.1%になる。仮に身体障害者手帳1級の者を全盲だとすると、それ以外の等級は約61.9%であるため全盲者は少ない。全盲者は少なく弱視者が多いこと、そして、その見え方も様々であることを晴眼者に周知する必要がある。  また、弱視者のニーズを明確にし、それを公表し、社会にアピールすることも必要である。本連合がまとめた「弱視に関する懇談会・報告書」(※4)や当事者団体がまとめている資料の収集、あるいは本連合が行った調査研究の結果などを基にした集大成も試みられるべきである。  さらに、視覚障害者の中では、身体障害者手帳に該当せずとも見えづらさを感じている者も多い。先述したように日本眼科医会の調査結果では、アメリカの視覚障害の基準である良い方の目の視力が0.5未満の者は、わが国には164万人はいると推計している(※2)。さらに、片眼や眼球使用困難者、羞明、色覚障害などを有している者も存在している。見えづらさによる不自由さを来している者たちのニーズの把握や支援の在り方も検討されるべきである。 4.中途視覚障害者  現在、日本は超高齢社会となっている。視覚障害者の場合、68.9%が65歳以上である(※5)。他の身体障害者も同様に60%代後半から70%代後半である。身体障害者の場合は、高齢者の割合が非常に高いことが分かる。以上から、中途視覚障害者が多く、高齢時での受障が予想される。  視覚障害は情報障害とも言われている。そのため、中途視覚障害者に対する情報保障が最重要課題である。視覚障害者がどのような自立生活を送っているかを知り、現に存在するリハビリテーションや支援策などの福祉制度、相談機関での相談業務など確実に提供することが必要不可欠である。本連合の2016年(平成28年)の調査結果(※6)によっても、中途視覚障害者が5年以上にわたって福祉制度(補装具や日常生活用具など)を知らなかったと述べている。特に高齢中途視覚障害者の場合は、情報が行き届いていない可能性が高い。情報提供の方策の検討をすべきである。  また、眼科医療との連携強化も課題である。日本各地で眼科医が中心となり、日本版のスマートサイトが作成されている。それには、相談窓口や訓練施設などの情報が書かれている。眼科医は視覚障害の患者にそのパンフレットを渡し、患者はそこに書かれた窓口に直接連絡を取って相談するというものであり、現在、多くの都道府県で実施されている。スマートサイト(ロービジョンケアネットワーク)が進展し、窓口への相談が増えると、日常生活用具や補装具、リハビリテーションなどの情報不足が解消に向かうであろう。眼科医療との連携も強化すべきである。 5.重複障害者  視覚障害者の中には、他の障害も併せ持つ者もいる。施設などを利用している視覚障害者のうち、高齢者施設以外の施設では知的障害が最多で、高齢者施設では聴覚障害であった(※7)。視覚障害と聴覚障害のある盲ろう者に関する全国調査(※8)では、盲ろう者数は13,952人であった。障害程度別の割合は、高い順に視覚障害の1級が28.0%、2級が27.3%、聴覚障害は6級が34.9%、2級が22.2%となっていた。これらの調査によると外出時の安全性、外来者を知らせるチャイムや電話の音に気づきにくいなど日常生活面での不自由さ、選挙立候補者について情報が得にくいなど権利面でも不自由さを感じている者もいた。  これらの視覚障害と他の障害を併せ持つ者については、重複障害者一般を論ずるのではなく、視覚障害を伴う重複障害者に特有なニーズの把握が必要である。聴覚障害や知的障害などのある者が、情報入手の中心をなす視覚に障害をもつことによって生ずる発達の困難さ、日常生活及び社会生活における困難さ、重複障害の発生順によるニーズの違いなど、具体的な調査が必要である。 6.視覚障害の社会モデル  わが国においては、一定の視力障害や視野障害のある者を身体障害者福祉法に基づく視覚障害者と認定している。しかし、前述のように、視覚障害によって日常生活や社会生活に支障のある者は、手帳交付の対象者に限定されるものではない。アメリカのように自動車免許の取得が不可とされている良い方の視力が0.5未満の者、片眼の者、羞明や眼球使用困難者など特別なニーズのある者についてその症状や社会生活・日常生活、就労などにおける困難さを調査し、その結果により視覚障害者としての位置付けや判定基準を検討すべきである。それにより障害者権利条約の視点に立って障害者を定義づけることができ、社会の在り方を検討する上でも、このような枠組みを法的制度によって明確にすることが必要である。  そのためには、医学的な根拠と社会生活・日常生活などにおける困難さを加味したものをベースに、福祉サービス提供の基となる視覚障害の認定基準が作成されるべきである。その際は、WHO基準を参考にするほか、国際基準となっているFVS(※9)などが検討されるべきである。  さらには、上述のように、各年代別視覚障害者や重複障害者の日常生活ないし社会生活などの状況調査を行い、結果により対策を検討すべきであろう。 7.参考資料 (※1)厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部「平成28年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)結果」 2018年(平成30年) https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/seikatsu_chousa_h28.html (※2)公益社団法人日本眼科医会「日本における視覚障害の社会的コスト」 2009年(平成21年) https://www.gankaikai.or.jp/info/kenkyu/2006-2008kenkyu.pdf (※3)社会福祉法人日本ライトハウス養成部「視覚障害者の生活訓練実施機関の現状」 2018年(平成30年) http://www.lighthouse.or.jp/yosei/yoseibu.html#kikan (※4)社会福祉法人日本盲人会連合「見えづらい・見えにくい人のくらし 弱視に関する懇談会 報告書」 2018年(平成30年) http://nichimou.org/all/news/secretariat-news/190122-jimu/ (※5)(※1)の資料を基に算出をした。 (※6)社会福祉法人日本盲人会連合「読み書きが困難な弱視(ロービジョン)者の支援の在り方に関する調査研究事業」 2016年(平成28年) http://nichimou.org/all/news/secretariat-news/170327-jimu/ (※7)中西勉、清水朋美、林知茂、遠藤律子「全国の障害者支援施設等を利用している視覚障害者の眼疾患や視機能について」 2017年(平成29年) http://www.rehab.go.jp/achievements/japanese/34th/19.pdf (※8)全国盲ろう者協会「厚生労働省 平成24年度障害者総合福祉推進事業 盲ろう者に関する実態調査報告書」 2013年(平成25年) http://www.jdba.or.jp/db/report/h24/h24-mourou-singleyears-zittai.pdf (※9)FVS:Functional Vision Scoreの略。米国医学会が推奨する視覚障害の評価法。視力と視野を統合してスコア化ができ、QOLと関連づけた評価ができるとされている。 12ページ 第2章 視覚障害者に係わる法律 1.現状  視覚障害者に密接に関係する法律としては、以下のようなものを挙げることができる。まずは法律の現状を概観する。 (1)障害者権利条約  日本は2014年(平成26年)に障害者権利条約を批准し、世界で141番目の締約国となった。  この条約では、障害者の人権及び基本的自由の保障、個人の尊重を目的とし、締約国が講ずべき様々な施策が定められている。 (2)障害者基本法  この法律は、障害者の自立及び社会参加の支援などの施策の基本的理念、国及び地方公共団体の責務、施策の基本となる事項を定める法律である。  近年の改正では、2011年(平成23年)に、社会モデルに立脚し障害者の範囲が拡大され、合理的配慮の義務付けの規定が盛り込まれた。 (3)障害者差別解消法  障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生することのできる社会を実現することを目的に、行政機関及び民間事業者に対して障害を理由とする不当な差別的取り扱いを禁止し、障害者に対する合理的配慮提供義務を定めた法律。2016年(平成28年)4月に施行された。  もっとも、規定の文言上、間接差別を十分に規制できないのではないかとの疑問が投げかけられており、さらに、民間事業者の合理的配慮が努力義務とされていることから、実効性に疑問があるとされている。さらに、実際に差別などが起こった場合の相談体制、紛争解決の仕組みが未整備であり、法施行後も、差別を受けても泣き寝入りを強いられるケースが少なくない。 (4)障害者虐待防止法  障害者に対する虐待を、身体的虐待、精神的虐待、性的虐待、ネグレクト、経済的虐待と分けて定義し、家族、擁護者、福祉施設職員、障害者の雇い主に対して虐待を禁止する法律。2012年(平成24年)10月に施行された。同法では、市町村虐待防止センター、都道府県権利擁護センターの設置が義務付けられ、相談、権利擁護に当たるとされている。  課題としては、学校及び病院という最も虐待が起こりやすい構造にある場が同法の対象外とされていることである。 (5)障害者雇用促進法  従来、法定雇用率制度、納付金制度、特例子会社制度による障害者雇用の拡大を図るというのが同法の主要な内容であったが、2016年(平成28年)4月より、雇用における障害者への差別禁止、事業者による合理的配慮提供の義務付けの規定が盛り込まれた。  課題は、法定雇用率制度が、単なる数合わせになってしまい、実際に雇用されたとしても、やりがいをもって働けていない視覚障害者が少なくないこと、雇用主に合理的配慮の考えが浸透しておらず、適切な配慮を受けられない視覚障害者が少なくないことである。 (6)身体障害者福祉法  身体障害者手帳の交付など、身体障害者に対する福祉制度の基本となる法律。  課題としては、現在の視力や視野を基準に視覚障害を認定する方法では障害等級に該当しないが、瞼のけいれんなどにより、実生活で大きな支障を感じている眼科疾患の患者がおり、これらの者が福祉サービスの基本となる障害者手帳を取得できないことである。 (7)障害者総合支援法  同行援護や家事援助など、障害者の福祉サービス給付の根拠となる法律。  課題は、いわゆる65歳問題(65歳を過ぎると居宅介護のサービスの切り下げが起こったり、自己負担の増加が起こるという問題)、同行援護のサービス時間数の不足、サービス提供事業者が都市部に偏在しており地方では自分の望むサービスが十分に受けられないことなどがある。 (8)バリアフリー新法  交通機関や不特定多数の者が使用する建物のバリアフリー化を促進することを定めた法律。具体的な基準は同法に基づいて作成されるガイドラインで規定されている。  課題としては、バリアフリー新法に該当しない小規模な駅のバリアフリーが遅れていることがある。また、あくまで行政法規であるため、同法を根拠に、視覚障害者が行政や事業者に対し個別の交差点などに視覚障害者誘導用ブロック、音響式信号機、エスコートゾーンの設置を要求することはできないことも課題である。 (9)身体障害者補助犬法  行政機関や事業者に対し、盲導犬などの補助犬の交通機関や宿泊施設、飲食店などへの同伴を拒んではならないと定めた法律。  しかし、依然として飲食店などにおける入店拒否は後を絶たず、法律の実効性に疑問が投げかけられている。 (10)マラケシュ条約(著作権法の改正)  この条約は、2013年(平成25年)にWIPO(世界知的所有権機関)で採択され、日本は2018年(平成30年)4月に国会で承認し、10月1日から締約国になった。同条約は、点訳・音訳、テキストデータ化などを著作権者に無許諾で行えるよう権利制限規定を設けること、点訳図書などを国境を超えてやりとりする制度を整備することなどを求める条約である。わが国では、同年5月の著作権法の改正によって視覚障害者以外の読書困難者にも電子図書が利用できるようになった。  しかし、サピエ図書館、公共図書館、国会図書館、学校図書館などのネットワーク化は不十分であったり、出版図書のテキストデータなどの利用、さらにはそのテキストデータによって点訳、音訳、拡大文字化などの拡大も求められている。そのため、本連合では、これらの課題を解決するために読書バリアフリー法(仮称)の制定を求める運動を行っている。 2.法律のあるべき姿  「Nothing us without us.(私たち抜きに私たちのことを決めるな)」や障害者に対するあらゆる差別の禁止など、障害者権利条約の理念を国政の隅々にまで行き渡らせる必要がある。  そのため、視覚障害者が尊厳をもって生活できるように、法制度を整備するよう運動を行うことが求められる。上述した各法律の課題について、新たな立法や法律改正を含め、次のように積極的な社会的政治的運動を行うべきである。 (1)短期の方策  障害者権利条約の完全履行を実現するため、視覚障害者の視点から、現在、JDF(日本障害フォーラム)が中心となって進めている政府報告書に対するパラレルレポート作成に積極的に関与する。  また、現在、政府の各審議会などに本連合の役員が出席しているが、本連合として、政策全般にわたる理解を深め、政策提案ができる常設的なシンクタンクを設置するべきである。 (2)長期の方策  いわゆるパリ原則に則った政府から独立した国内人権機関の設置を求め、国会議員などに働きかけを行う。 16ページ 第3章 日本盲人会連合(日盲連) 1.日本盲人会連合の歩み  日本盲人会連合(以下、本連合)は、「盲人の文化的、経済的向上と社会的地位の躍進を図り、進んで平和日本建設のため、真に人道的使命に立脚し、社会公共のために寄与せん」とする理想を掲げ、1948年(昭和23年)8月18日に結成した。結成大会は、大阪府下、南海電鉄沿線二色の浜(にしきのはま)の海浜砂丘に立つ大阪府海洋道場において開催し、全国9地域の盲人団体と盲人施設の代表70余人が集い、本連合が結成された。初代会長に大会発起人代表を努めた岩橋武夫氏が就任し、本部事務所を大阪のライトハウス内に置いた。  以降、1955年(昭和30年)に鳥居篤治郎氏、1963年(昭和38年)に金成甚五郎氏、1972年(昭和47年)に高尾正徳氏、1980年(昭和55年)に村谷昌弘氏、2000年(平成12年)に笹川吉彦氏が会長に選任され、2012年(平成24年)より竹下義樹氏が7代目会長を努めている。  結成大会で決められた定款は、6章35条からなり、その組織は各都道府県の盲人団体と盲人施設などが加入できるものとし、目的は、本連合を組織する各団体間の連絡融和を図り、盲人文化の向上と盲人福祉の達成に貢献することとし、社団法人化を目標とした。  当時の本連合は、社会福祉施設も会員として加入していた。しかし、視覚障害者自身の団体と視覚障害者のための援護団体とはその性格が異なることから、それぞれが分離・独立して発展した方が視覚障害者の福祉拡充に良いと判断され、1953年(昭和28年)に日本盲人社会福祉施設協議会(以下、日盲社協)が本連合から分離し独立した。  1964年(昭和39年)、本部事務局を大阪から東京に移し、当時の東京ヘレン・ケラー会館の事務所を借りた。その後、1966年(昭和41年)に、旧日本盲人福祉センターがあった国鉄東京鉄道管理局職員宿舎「銀嶺荘」の買収を前提とした賃貸契約を結び、建物の内部改造工事に着手。3月に竣工し、点字出版事業、更生相談事業、盲人用具斡旋販売事業を開始した。そして、1970年(昭和45年)に建物取り壊しと旧日本盲人福祉センター建設に着手し、建設計画を決議してから8年が経った翌1971年(昭和46年)5月に地下1階地上3階建ての施設が竣工落成した。  また、1966年(昭和41年)6月に、本連合は厚生大臣から障害者団体として初めての法人格取得となる社会福祉法人の認可を受け、名実ともに任意団体から法人格を持った団体に脱皮し、今日の基礎を築いた。  旧センター落成から30余年が経過した2003年(平成15年)、事業の発展により施設は狭隘となり、建物の老朽化も進み耐震性にも問題があったことから、2004年(平成16年)からセンター移転の検討が始まり、2007年(平成19年)8月より建設着手、2008年(平成20年)5月に旧センターの2倍の敷地に、1.5倍の鉄筋3階建ての現日本盲人福祉センターが完成し、視覚障害児・者の新たな福祉活動の拠点として存在している。  本連合の歩みを振り返ると、視覚障害者の自立と社会参加の向上のための活動が中心であり、1949年(昭和24年)の身体障害者福祉法成立、1964年(昭和39年)のあん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律の改正、1986年(昭和61年)の障害基礎年金制度実施、1993年(平成5年)の国連アジア太平洋障害者の10年の実施などを実現させてきた。また、交通問題、災害対策、雇用問題をはじめとする諸問題にも積極的に取り組んできた。そして、現在も、全国61の都道府県・政令指定都市の視覚障害者団体、青年、女性、あはき、音楽家、スポーツの協議会と連携し、新たな課題解決も含め、視覚障害者の自立と社会参加の向上のために活動を続けている。 2.日本盲人会連合の役割  本連合は、都道府県または政令指定都市に点在する61の視覚障害当事者団体により構成され、視覚障害者福祉の向上を目指し、組織的な活動を展開している。各団体には、地域の視覚障害者が会員として入会し、地域で福祉向上のための活動を行っている。そして、地域では解決できない諸問題などについては、中央機関にあたる本連合に意見や要望が寄せられ、全国の視覚障害者の総意により国などへの要求活動を行っている。つまり、日本盲人会連合、日本盲人会連合加盟団体、日本盲人会連合会員が一体となることで、本連合の運動が成立している。 (1)日本盲人会連合本体の役割と機能  @ 全国の視覚障害者運動の中心としての活動。     ・国や関係機関への陳情、検討会などへの参加     ・声明や要望書などの発出  A 視覚障害者の中央機関としての活動。     ・情報発信機関     ・シンクタンク、調査・研究機関     ・サービス提供機関     ・相談機関 (2)日本盲人会連合加盟団体の役割と機能  @ 地域での運動(地域の視覚障害者の拠点としての役割)。  A 地域での情報発信。  B 地域でのサービス提供。  C 地域内での関連機関との連携。  D 日本盲人会連合との連携。 (3)日本盲人会連合会員の役割  @ 団体活動への参加。  A 意欲的な社会参加。  B 互助の精神(相互の支えあいと仲間づくり)。 3.日本盲人会連合の課題 (1)組織力強化  本連合は、1948年(昭和23年)に結成以来、47都道府県・政令指定都市に結成された視覚障害者団体をその傘下に加え、最大時で加盟団体所属会員は5万人と称されるほどのわが国を代表する視覚障害者団体(視覚障害者のナショナルセンター)に成長してきた。ところが、近年は加盟団体に所属する会員が激減し、概ね身体障害者手帳の交付を受けている視覚障害者の約1割を組織できているにすぎない状態となっている。  今後は、どのような働きかけによって若手の視覚障害者を会員として招くことができるかを検討するとともに、弱視者の会員を迎えるための工夫が必要である。また、中途視覚障害者や高齢視覚障害者をもターゲットとした会員拡大を検討することも必要である。そのことは、「ひとりぼっちの視覚障害者」をなくしていく運動であると同時に、私たちの声を社会に反映させるためには必要不可欠な取り組みである。  併せて、運動を支えるための財源を確保するためにも、地域の視覚障害者が求める福祉事業を自らが実践し、財源の確保にも努力しなければならない。さらに、視覚障害者の自立や医療の充実を目指す団体などとの連携を広め、視覚障害者運動全体の先導的役割を担う組織に発展していくことが求められている。 (2)団体名の在り方  本連合は、結成以来、日本盲人会連合(日盲連)の名称で活動してきた。その結果、「日盲連」の名称は社会的に認知され、行政や政界においても障害者団体の中心的存在として、大きな位置付けを受けている。  他方、差別用語が厳しく指摘されるようになる中で、「盲(めくら)」を含む単語がほとんど使われなくなったことや、全盲以外の視覚障害者をも包含する名称が一般的に使用されるようになり、今日においては「盲人」の名称はほとんど使われなくなっている。本連合の61加盟団体の中では、多くの団体が名称を変更し、現在、団体名に「盲人」の名称を用いている団体は4団体、残る57団体は「視覚障害」または「視力障害」の名称を用いている。  そうした流れを受けて、加盟団体から本連合に対して名称変更の声が頻繁に申し立てられるようになり、2007年(平成19年)から2011年(平成23年)にかけて改名検討委員会を設置して検討を行った。さらに、2013年(平成25年)の第66回全国盲人福祉大会(福井大会)の代表者会議においては、名称変更が決議されるに至っている。  2018年(平成30年)は、本連合の結成70周年の節目の年である。時代の変化や弱視者などの組織化をも念頭に置いた名称の変更を検討することが必要となっている。そこで、可及的速やかに名称変更に関する結論を出し、新名称を決定することが必要である。