地域における視覚障害者への代筆・代読支援に向けた調査研究事業 報告書 テキスト版 ※注意 テキスト版では、第3章と第4章の調査結果、資料B、一部の図や表のテキスト掲載は割愛しました。予めご了承ください。 表紙 厚生労働省令和元年度障害者総合福祉推進事業 地域における視覚障害者への代筆・代読支援に向けた調査研究事業 報告書 令和2年(2020年)3月 社会福祉法人 日本視覚障害者団体連合 目次 はじめに 1ページ 第1章 事業概要 3ページ 第2章 調査に向けた論点整理 7ページ 第3章 調査@ 意思疎通支援事業「代筆・代読支援」実施自治体に対する調査 19ページ 第4章 調査A 意思疎通支援事業「代筆・代読支援」未実施自治体に対する調査 55ページ 第5章 調査B 調査@、調査Aに対する追加調査 71ページ 第6章 考察 83ページ 第7章 まとめ 111ページ 資料@ 利用者のしおり 125ページ 資料A 代筆・代読支援 支援の様子 131ページ 資料B 書面調査 調査票 141ページ 【報告書について】 1.データ版の公開  本報告書のデータ版は、本連合のホームページに掲載を行う。墨字版(PDF版)の他に、テキスト版、点字版、デイジー版を掲載する予定となっている。   日本視覚障害者団体連合 ホームページURL http://nichimou.org/ 2.視覚障害者に関する名称の統一  視覚障害の状態を表現するための用語には様々な種類があるが、本報告書では全盲、ロービジョン(弱視)、盲ろうという用語を用いた。 3.調査結果の掲載内容  本報告書に掲載した調査結果は、平成30年度実績を掲載している。なお、一部の回答者からは、令和元年度実績等が示されたが、平成30年度実績と見なして掲載した。 1ページ はじめに  文字による情報伝達量は刻々と増大しており、情報の受発信の困難さは、若き視覚障害者の未来を狭め、高齢の視覚障害者から社会活動の充実感を奪っている。すなわち、これこそが視覚障害者への代筆・代読支援の必要な所以である。ところが、現実はどうか。本連合が平成30年度に実施した実態調査によると、実施自治体の数は極めて少なかった。代筆・代読支援は、障害者総合支援法の地域生活支援事業に位置付けられた意思疎通支援事業として実施できるサービスとなっているのにも関わらず、このような結果となっていた。  この乖離はいったいどこから来ているのか。その答えを見つけ、各自治体が積極的に取り組めるよう、事業の実施方法やその展開を検討したのが本年度の調査研究事業の目的である。解答は見つかったのか。詳しくは本編に譲るとして、ここでは乖離を生じさせている原因と推察される代筆・代読支援の抱える事情を2点掲げ、本編に併せ、自治体並びに視覚障害当事者に再認識を求めたい。  第1は、代筆・代読支援の必要度に個人差が大きいこと。支援を受けている複数の視覚障害者からは極めて高い評価が聞かれる。ただし、惜しむらくは、その良さやサービス自体が知られていないことだ。家族や知人によって読み書きの支援を受けられる者には、相対的に必要度は低くなるとの事情が背景にある。これとて必要な時に必要なだけ受けているわけではない。  第2は、代筆・代読支援が同行援護や居宅介護の狭間のサービスと受け取られていること。両サービスは、いずれも支援者による代筆・代読の支援が含まれている。そのため、これらのサービスを受けている者には、代筆・代読支援が不要との見方も出てきてしまう。果たしてそうだろうか。  代筆・代読支援においては、家族からの支援、同行援護や居宅介護の枠内には収まらない量的・質的な長所のあることを強調し、制度の確立が不可欠であることを訴えたい。そのため、支援が必要な視覚障害者に対して、必要な時間の派遣ができる人的・組織的・予算的な要因を整えることが期待される。本調査はこうした政策提言を内包したものである。  最後に、ご協力いただいた委員に心から感謝申し上げる。 3ページ 第1章 事業概要 1 事業の概要 1.事業名  厚生労働省令和元年度障害者総合福祉推進事業  「地域における視覚障害者への代筆・代読支援に向けた調査研究」 2.事業の目的  視覚障害者への代筆・代読支援は、障害者総合支援法による意思疎通支援事業において市町村が実施できることとなっているが、各市町村での取り組みが低調となっている。そのため、本事業では各市町村が積極的に取り組めるよう、以下の論点について検討を行う。  論点@ 効果的な事業の実施方法の在り方  論点A 効果的な事業展開の在り方 3.事業内容 (1)検討委員会の設置  上記論点の課題整理を行うために検討委員会を設置し、以下の事項について検討を行う。  @代筆・代読支援に関わる現状整理  A実態調査の実施内容  B調査結果のまとめ (2)実態調査の実施  検討委員会の検討内容に基づき、以下の方法で調査を実施する。  @書面調査  Aヒアリング調査 (3)報告書の作成  実態調査の結果と検討委員会での意見を踏まえ、本調査のとりまとめとして報告書を作成する。なお、報告書の作成後は、全国の視覚障害関係団体や関係機関等に報告書を配布し、調査結果の周知を行う。 2 検討委員会の概要 1.委員名簿(順不同・敬称略)  中野 泰志  慶應義塾大学経済学部 教授【委員長】  渡辺 哲也  新潟大学工学部 准教授【副委員長】  竹下 義樹  日本視覚障害者団体連合 会長  伊敷 政英  Cocktailz(カクテルズ) 代表   竹井 智人  我孫子市健康福祉部障害福祉支援課 主査長  田中 伸明  名古屋市視覚障害者協会 会長  棚橋 公郎  視覚障害者生活情報センターぎふ 部長  原田 敦史  全国視覚障害者情報提供施設協会 常任理事  山下 正知  全国盲ろう者協会 常務理事 2.開催日程 第1回委員会 期日:令和元年7月30日 場所:日本盲人福祉センター 研修室 議事:代筆・代読支援の実態に関する検討    実態調査に向けた検討 第2回委員会 期日:令和元年9月6日 場所:日本盲人福祉センター 研修室 議事:調査内容・調査対象の検討 第3回委員会 期日:令和2年1月31日 場所:日本視覚障害者センター 研修室 議事:調査結果の報告    調査結果のとりまとめに向けた検討 第4回委員会(意見交換会) 期日:令和2年2月28日 場所:TKP市ヶ谷カンファレンスセンターホール6C 議事:調査結果のとりまとめの検討    報告書の検討    意見交換会の開催 7ページ 第2章 調査に向けた論点整理 1 平成30年度調査の概要 1.調査事業の背景  視覚による情報入手が困難である視覚障害者にとって、書類等を「読むこと」「書くこと」は困難を伴う行為であり、日常生活を送る上でこれらの読み書きに対する支援「代筆・代読支援」は必須となっている。しかし、全国の視覚障害者からは、自治体の公的な福祉サービスによる支援に不満を持ち、その改善を求める声が多い。特に、全国の自治体が実施する地域生活支援事業の意思疎通支援事業に含まれている代筆・代読支援は、サービスの一つであるにも関わらず、実施している自治体が少ないとされており、その改善が求められていた。  そのため、厚生労働省の平成30年度障害者総合福祉推進事業「視覚障害者への代筆・代読支援に関する調査研究」(※1)において、意思疎通支援事業「代筆・代読支援」に関する調査を実施した。以下では、平成30年度調査において判明した内容等を整理する。   (※1)「視覚障害者への代筆・代読支援に関する調査研究」報告書    http://nichimou.org/all/news/secretariat-news/190409-jim/ 2.公的な福祉サービスと代筆・代読の支援  現在、視覚障害者に対する公的な福祉サービスは障害者総合支援法により実施されており、視覚障害者の代筆・代読の支援については、以下の三つのサービスの中で支援を受けることができる。    A 障害福祉サービス       @居宅介護       A同行援護    B 地域生活支援事業       B意思疎通支援事業「代筆・代読支援」  まず、@居宅介護とA同行援護は、視覚障害者に対する重要な支援であることから、利用する者が多い福祉サービスとなっている。  @居宅介護では、居宅における家事援助の一環で代筆・代読の支援が行われている。居宅内での日常生活が困難な視覚障害者は居宅介護を利用しており、この福祉サービス自体のニーズは比較的高いものとされている。  A同行援護では、移動時の情報提供として代筆・代読の支援が行われている。視覚障害者にとって移動の支援はもちろん必須だが、移動時の情報提供がなければ安全な移動はできない。そのため、同行援護では、利用者への情報提供を重要視しており、支援者の養成において、代筆・代読の支援をカリキュラムに盛り込んでいる。  しかし、利用者の代筆・代読に関するニーズと、@居宅介護とA同行援護の支援内容を照らし合わせると、そこには大きな課題があることが分かった。それは、利用者は「居宅での代筆・代読の支援」を求めているにも関わらず、両サービスでは支援の実施が実質的に難しいことである。  まず、@居宅介護では、実際の利用状況を確認すると、利用者は優先度が高い家事援助に関する支援を依頼しており、代筆・代読の支援を依頼するまでの支給時間が無いことが分かった。また、視覚障害者は、居宅介護の支援区分が他障害より低いことが多いことから、支給時間が少ない、あるいは対象外となっていることも一因となっている。  また、A同行援護においては、外出時の情報提供として代筆・代読の支援を行っているため、居宅での代筆・代読の支援は行うことができない。この点は、利用者からの不満も多く、同行援護のサービス自体を改善してほしいとの声に繋がっている。  そのため、平成30年度調査においては、@居宅介護とA同行援護では実施できない「居宅での代筆・代読の支援」を支える存在として、意思疎通支援事業「代筆・代読支援」の可能性に着目し、調査を実施することになった。 【居宅介護と同行援護での代筆・代読支援の整理】 @居宅介護 居宅:代筆・代読の支援は可能だが、実際は利用が難しい 外出:サービスの対象外 A同行援護 居宅:サービスの対象外 外出:情報提供として代筆・代読の支援は可能 ●当事者のニーズ 居宅での代筆・代読の支援を受けたい!:意思疎通支援事業「代筆・代読支援」では可能ではないか? 3.意思疎通支援事業「代筆・代読支援」の概要  まず、代筆・代読支援が含まれている意思疎通支援事業についての背景を整理すると、この事業は地域生活支援事業の一つであり、地域の事情を踏まえて、自治体の裁量によって事業が実施できるものとなっている。実際、意思疎通支援事業に含まれる手話通訳者や要約筆記者の派遣等は各地域で活発に利用されており、意思疎通支援事業自体の実施率は非常に高いとされている。  このような背景があるにもかかわらず、代筆・代読支援については、以前より自治体での実施率が低調であると指摘されていた。また、実施率の低さが一因となり、同サービスの利用者にあたる視覚障害者がこのサービスの存在自体を知らない傾向があり、そのため、代筆・代読の支援に対するニーズは強いものの、同サービスの開始を求める声に結び付かない流れもあった。  一方で、過去の調査等を整理すると、自治体等からは「視覚障害当事者の代筆・代読の支援に対するニーズが分かりにくい」との意見も寄せられていた。このニーズの不明確さも、同サービスの開始を止めている要因の一つとも考えられていた。  そのため、平成30年度調査においては、視覚障害者と自治体に対する全国調査を実施することで、視覚障害者の代筆・代読の支援に対するニーズと、意思疎通支援事業「代筆・代読支援」の現状を整理することになった。 【障害者総合支援法の給付・事業における意思疎通支援事業】 ※注意 図につき、テキスト版では割愛しました。 4.代筆・代読の支援に対するニーズ  平成30年度調査においては、視覚障害者の代筆・代読の支援に対するニーズを整理する目的で、全国の750名の視覚障害者を対象としたアンケート調査(回答率63.8%)を実施した。以下で主な結果を紹介する。 (1)代筆・代読の支援に対するニーズの高さ  まず、調査対象者には、日常生活を送る上で読み書きに困るかどうかを確認したところ、86.4%の視覚障害者が「読み書きに困っている」との結果が示された。調査結果を全盲とロービジョン(弱視)に分けてみても、極端な乖離は確認できなかったことから、多くの視覚障害者が日常的に「読み書きに困っている」ことが示された。  また、公的な福祉サービスで代筆・代読の支援があることを知らない者に対して、公的な福祉サービスで代筆・代読の支援を受けたいかどうかを確認したところ、66.9%の者が「受けたい」と回答している。さらに、自由回答の記述では、実際に公的な福祉サービスにより代筆・代読の支援を受けている者からは「大変助かっている」との回答もあった。つまり、代筆・代読の支援を「公的な福祉サービス」に求めており、支援によって不満の解消を望んでいることが分かった。 【調査結果:読み書きすることに困ることがあるかどうか】 ※注意 表につき、テキスト版では割愛しました。 (2)代筆・代読の支援の実施状況  そして、福祉サービスの利用状況を確認したところ、同行援護は86.6%、居宅介護は43.5%、意思疎通支援事業は7.5%となり、代筆・代読の支援は、現状では同行援護または居宅介護で受けている可能性が高いことが分かった。  ただし、自由回答の記述を見ると、同行援護や居宅介護による現状の支援に対して、9ページで整理した「居宅での支援が受けられない」ことに不満をもつ回答が目立ち、現状の制度では視覚障害者の高いニーズを支え切れていないことが分かった。また、現状の支援では、支援の質が伴っていないこと、支援ができない条件があること、個人情報の取扱いに不安があること等、様々な課題があり、この課題を改善するために、公的な福祉サービスの充実を求めている意見も確認できた。 【調査結果:読み書きを支援する公的な福祉サービスの利用状況】 ※注意 表につき、テキスト版では割愛しました。 【視覚障害当事者調査に寄せられた自由回答の意見の一例】 @課題:支援の質 ・代読専門の支援者ではないこともあり、漢字が読めなかったり、文書についての理解力が低い人にもお願いしなければならないことがある。【60代、男性、全盲】 A課題:個人情報の取り扱い ・代筆については、個人情報が漏れないかが不安。そのため、積極的には利用したいと思わない。【40代、女性、弱視】 B課題:支援ができない条件 ・必要な時にすぐに頼めないことが困る。【70代以上、女性、全盲】 ・個人情報の問題により、支援者に頼みにくいものもある。家族以外には頼みづらい。【60代、男性、全盲】 ・ 同行援護は外出しないと利用できない。読み書きのみの利用ができない。【30代、女性、全盲】 C要望:公的な支援に対して ・代筆・代読の専用のサービスが手軽に利用できるようにしてほしい。【70代以上、男性、全盲】 ・いつでも必要な時にお願いできる制度にしてほしい。【60代、女性、全盲】 (3)福祉サービスに関する周知の重要性  さらに、読み書きを支援する公的な福祉サービスがあることを知っているかどうかを確認したところ、25.9%の者が「知らない」と回答していた。この中には、日常的に同行援護や居宅介護を利用している者でも、これらの福祉サービスで代筆・代読の支援が受けられることを知らない可能性が含まれている。また、自由回答では「今回のアンケート調査を受けたことで、初めて代筆・代読の支援があることを知った」との回答もあり、改めて地域の視覚障害者への情報伝達が難しいことが分かった。  しかし、これらの者は、実際に支援が行われていることは知らなかったが、公的な福祉サービスで支援が受けられるのであれば、支援を受けたいと考えている。つまり、代筆・代読の支援を受けたいと考えている視覚障害者に対して、これらの福祉サービスの情報が届いていないことに課題があることが分かった。 (4)まとめ  これらの結果を踏まえると、視覚障害者の代筆・代読の支援に対するニーズと課題は、以下の整理をすることができた。視覚障害者の代筆・代読の支援はニーズが高いだけに、公的な福祉サービスで的確な支援を行うことが求められている。  ただし、平成30年度調査は、書面でのアンケート調査であったことから、代筆・代読の支援の満足度や必要性、具体的に希望している支援内容等の整理ができなかった。これらの具体的なニーズについては、自治体調査において課題整理の必要性が指摘されており、さらなる調査が必要となった。 【代筆・代読の支援に関する視覚障害者のニーズと課題】   @視覚障害者は、日常的に読み書きに困難さを感じており、代筆・代読の支援を求めるニーズは高い。   A代筆・代読の支援は、公的な福祉サービスによる支援を期待している。   B現状の公的な福祉サービスによる支援には不満があり、居宅での代筆・代読の支援を求めている。   C代筆・代読の支援が、公的な福祉サービスで受けられることを知らない者も存在するため、周知方法に課題がある。 5.意思疎通支援事業「代筆・代読支援」の現状  平成30年度調査においては、意思疎通支援事業「代筆・代読支援」の現状を整理する目的で、全国の1,747自治体を対象としたアンケート調査(回答率64.9%)を実施した。以下で主な結果を紹介する。 (1)意思疎通支援事業「代筆・代読支援」の実施率  まず、意思疎通支援事業は、地域生活支援事業の中の一つであるため、自治体の裁量によって事業が実施されている。意思疎通支援事業自体の実施状況を見ると、手話通訳者や要約筆記者の派遣事業が中心とされているため、ほぼ全ての自治体が実施しており、平成30年度調査では、88.5%の自治体が意思疎通支援事業を実施していた。ただし、意思疎通支援事業の内訳を見ると、代筆・代読支援を実施していると回答した自治体は僅か14自治体、つまり全国の1.4%の自治体しか実施していないことが分かった。  代筆・代読支援の実施率の低さは以前より認識されていたが、視覚障害者からのニーズが高いにも関わらず、この低さの原因は一体何なのだろうか。既存の同行援護や居宅介護でニーズが補われているからだろうか。この低調さの原因を解明するため、さらなる調査が必要となった。 【調査結果:意思疎通支援事業の実施内容】 ※注意 表につき、テキスト版では割愛しました。 (2)意思疎通支援事業「代筆・代読支援」を実施するための課題 @支援者の確保、支援体制の確立  平成30年度調査では、多くの自治体が代筆・代読支援を実施していないことが予測できていたため、自治体において代筆・代読支援を始めるために必要な条件を確認した。  まず、際立ったのは「支援者の確保(75.9%)」と「実施をする上での明確な支援体制の確立(61.4%)」であった。「支援者の確保」は、福祉サービス全般に言える共通課題で、支援者の成り手が不足している現状を踏まえての回答と考えられる。また、「支援体制の確立」については、実施している自治体が少ないことから、必要とする支援体制が不明確であることを踏まえての回答と考えらえる。この点を鑑みると、「支援者が確保」され、「明確な支援体制」がはっきりとしていれば、代筆・代読支援が実施できる可能性が高いと仮定することができる。さらに、同行援護や居宅介護のように、代筆・代読の支援を行っている既存のサービスがあるため、これらのサービスとの差別化も必要であることも分かった。 【調査結果:意思疎通支援事業で代筆・代読支援を行うために必要な条件】 支援者の確保 75.9% 実施をする上での明確な支援体制の確立 61.4% 支援者の養成方法(カリキュラム)の確立 41.4% 支援を行うことでの情報漏洩対策の確立 16.4% 難しい支援への対応策の確立 14.5% 制度面の整理、予算の確保 1.4% 当事者のニーズの把握 0.7% サービスの周知、啓発 0.7% 当事者からの声がない 0.7% 支援者・事業所の支援体制の整備 0.4% 既存のサービスで足りている 0.3% その他 0.4% 分からない 6.4% 無回答 1.7% A視覚障害者のニーズの整理  また、調査結果をさらに紐解くと、自治体にとっては「当事者のニーズの把握」が重要なことが分かった。この点は、アンケート調査では選択肢の記載がなかったため、数字としては顕著な結果が出なかったものの、自由回答ではその必要性が指摘されていた。特に、「代筆・代読の支援に関する視覚障害者のニーズが分かりにくいため、把握がしづらい」との意見は少なくはなく、さらなるニーズ整理が必要であることが分かった。  さらに、「地域の住民からニーズが挙がってこないため、支援を実施していない」との意見もあった。一見、自治体の後ろ向きな回答と思われるが、裏を返すと、地域の視覚障害者が支援開始の要望を挙げていないために、代筆・代読支援が実施されていないとも言える。つまり、地域において支援が必要であれば、その地域の視覚障害者が声を挙げることが重要であった。 (3)まとめ  自治体調査の結果、意思疎通支援事業「代筆・代読支援」の実施率は、視覚障害者のニーズに比べて著しく低いことが分かった。また、自治体が代筆・代読支援を実施するために解決すべき課題も、一部は整理できた。  しかし、全国の自治体で代筆・代読支援を実施させるためには、課題に関する詳細をさらに整理する必要がある。そのため、さらなる調査研究が必要となった。 【代筆・代読支援を開始するために整理すべき課題】   @支援者の確保    →同行援護・居宅介護の支援者が活用できないか。   A支援体制の確立    →先駆的自治体の実施例を整理して、有効な実施方法等を示すべきではないか。   B視覚障害者のニーズ    →視覚障害者のニーズはさらなる整理が必要ではないか。    →地域の視覚障害者が、サービス開始の要望の声を挙げる必要があるのではないか。 2 令和元年度調査の方向性 1.平成30年度調査のまとめ  平成30年度調査では、まず、視覚障害者が代筆・代読の支援を必要としていることが分かった。その一方で、そのニーズを、公的な福祉サービスでは支え切れていないことが分かった。  その上で、視覚障害者が求めている代筆・代読の支援のニーズを充足するため、以下の提案を行った。  【視覚障害者への代筆・代読の支援を広めるための提案】   @ニーズのある「居宅での代筆・代読の支援」を支えるために、意思疎通支援事業「代筆・代読支援」を活用するのはどうか。   A意思疎通支援事業「代筆・代読支援」の支援者は、地域資源である同行援護・居宅介護の支援者を活用するのはどうか。   B自治体が意思疎通支援事業「代筆・代読支援」を実施するためには、以下の要素をさらに整理する必要があるのではないか。    A 具体的な事業の実施方法    B 具体的な視覚障害者のニーズ   C自治体が意思疎通支援事業「代筆・代読支援」を開始するためには、地域の視覚障害者が要望の声を挙げる必要があるのではないか。  ただし、上記の提案においては、Bのように具体的な内容をさらに整理する必要があるもの、Cのように有効性の実証が必要なものも含まれている。  そのため、これらの課題整理を行うため、令和元年度調査を実施することになった。 2.令和元年度調査の実施内容  令和元年度調査は、全国の自治体において意思疎通支援事業「代筆・代読支援」を実施するために、効果的な「@事業の実施方法」や「A事業展開」の検討が目的となっている。  そのため、平成30年度調査の結果を踏まえ、検討委員会で令和元年度調査の実施内容等を検討した結果、以下の論点整理を行うこととなった。  【令和元年度調査の論点整理】   論点@ 効果的な「事業の実施方法」の在り方        A 具体的な事業の実施方法の整理        B 具体的な視覚障害者のニーズの整理   論点A 効果的な「事業展開」の在り方        C 事業開始のプロセスの整理  そして、上記論点を整理するためには、より具体的な内容を調査することが必要となり、以下の調査を実施することとなった。調査目的、調査方法等については、各調査の概要にその詳細を掲載した。  【令和元年度調査の調査内容】   調査@ 意思疎通支援事業「代筆・代読支援」       実施自治体に対する調査        ・書面調査(自治体)        ・ヒアリング調査(自治体、事業所、当事者)   調査A 意思疎通支援事業「代筆・代読支援」       未実施自治体に対する調査        ・ヒアリング調査(自治体、事業所、当事者)   調査B 調査@、調査Aに対する追加調査        ・ヒアリング調査(自治体、事業所、当事者) 19ページ 第3章 調査@ 意思疎通支援事業「代筆・代読支援」実施自治体に対する調査 ※注意 本章では、調査概要のみ掲載し、調査結果の掲載は割愛した。なお、調査結果は第6章「考察」にとりまとめた。 1−1 書面調査の概要 1.調査目的  意思疎通支援事業「代筆・代読支援」を実施する自治体に対して、実施内容等の調査を実施する。調査を通して、サービスの実施方法、工夫、課題等の整理を行う。 2.調査対象  14自治体   ※平成30年度障害者総合福祉推進事業「視覚障害者への代筆・代読支援に関する調査研究」の調査2【自治体調査】において、意思疎通支援事業によって代筆・代読支援を実施していると回答した自治体。   3.調査方法  検討委員会において検討を行った調査票(141ページ)を使用して書面調査を実施した。 4.調査期間  令和元年10月1日〜令和2年1月31日 5.回収率  11件/14件(78.6%) 6.調査結果の掲載方法 ・本調査は、自治体名を公開することを前提とした調査ではないため、調査対象の自治体には、それぞれ任意のアルファベット名を割り振り、該当地方と市区町村の分類のみを記載した。 ・調査結果を分かりやすく掲載するため、一部の設問は、掲載順序を変更した。 ・書面調査で得られた回答は、一部修正を行った上で掲載した。 ・無回答の設問は空欄とした。 2−1 ヒアリング調査の概要 1.調査目的  書面調査の結果により、効果的な支援方法等によって代筆・代読支援を実施している先駆的自治体に対してヒアリング調査を実施し、支援方法等のさらなる整理を行う。  また、該当自治体において代筆・代読支援を実施する事業所、その支援を受けている視覚障害当事者についても、可能な限りヒアリング調査を実施し、支援方法等の多角的な整理を行う。 2.調査対象  検討委員会での検討の結果、地域特性や人口規模の違いを考慮し、以下の3自治体を対象とした。 関東 B市 132,167人  対象者:自治体、事業所、当事者 関東 D区 64,584人 対象者:自治体 近畿 G市 356,065人 対象者:自治体、事業所 3.調査方法  自治体には書面調査の結果をもとにヒアリング調査を実施した。  事業所と視覚障害当事者に対しては、自治体の書面調査をもとに、調査担当者が個別に質問を用意した上で、ヒアリング調査を実施した。 4.調査期間  令和元年10月1日〜令和2年1月31日 5.調査結果の掲載方法 ・本調査は、自治体名を公開することを前提とした調査ではないため、調査対象の自治体には、それぞれ任意のアルファベット名を割り振り、該当地方と市区町村の分類のみを記載した。 ・事業所と視覚障害当事者の結果については、上記自治体の公開方法に準じて、個人情報等を取り除く形で結果を掲載した。 ・ヒアリング調査によって得られた意見等は、事務局で整理を行い、項目ごとにその意見等を割り振った。 55ページ 第4章 調査A意思疎通支援事業「代筆・代読支援」未実施自治体に対する調査 ※注意 本章では、調査概要のみ掲載し、調査結果の掲載は割愛した。なお、調査結果は第6章「考察」にとりまとめた。 1−1 ヒアリング調査の概要 1.調査目的  調査@「実施自治体調査」の調査結果と比較するため、意思疎通支援事業「代筆・代読支援」を未実施の自治体において、令和2年度以降に同事業を実施予定の自治体に対してヒアリング調査を実施する。また、該当自治体において代筆・代読支援を実施予定の事業所、その支援を受ける可能性のある視覚障害当事者についても、可能な限りヒアリング調査を実施し、実施に向けたプロセスや要望等を確認する。 2.調査対象  検討委員会での検討の結果、地域特性や人口規模の違いを考慮し、以下の2自治体を対象とした。 関東 L区 332,957人 対象者:自治体、当事者 東海 M市 2,317,646人 対象者:自治体、事業所、当事者 3.調査方法  自治体には、調査@「実施自治体調査」と連動した質問票を事前に提供し、その質問票の回答をもとにヒアリング調査を実施した。  事業所と視覚障害当事者に対しては、自治体の書面調査をもとに、調査担当者が個別に質問を用意した上で、ヒアリング調査を実施した。 4.調査期間  令和元年12月1日〜令和2年1月31日 5.調査結果の掲載方法 ・本調査は、自治体名を公開することを前提とした調査ではないため、調査対象の自治体には、それぞれ任意のアルファベット名を割り振り、該当地方と市区町村の分類のみを記載した。 ・事業所と視覚障害当事者の結果については、上記自治体の公開方法に準じて、個人情報等を取り除く形で結果を掲載した。 ・ヒアリング調査によって得られた意見等は、事務局で整理を行い、項目ごとにその意見等を割り振った。 71ページ 第5章 調査B 調査@、調査Aに対する追加調査 1 調査概要 1.調査目的  調査@、調査Aを実施した結果、以下の論点をさらに整理する必要があるため、追加調査として調査Bを実施する。  論点@ 効果的な「事業の実施方法」の在り方   A 具体的な事業の実施方法の整理   B 具体的な視覚障害者のニーズの整理 2.調査対象  調査@と調査Aにおいてヒアリング調査を実施した以下の者を対象とした。また、視覚障害の度合いによる違いも整理するため、視覚障害当事者団体の関係者にもヒアリング調査を実施した。 調査1 実施自治体 関東 B市 対象者:自治体、事業所、当事者 調査2 未実施自治体 関東 L区 対象者:自治体 東海 M市 対象者:自治体、事業所 追加 当事者団体 対象者:当事者(全盲、ロービジョン) 3.調査方法  以下の内容で調査を実施し、発言内容等を調査結果としてまとめた。 (1)代筆・代読支援の実演  論点@−Bを整理するため、代筆・代読支援を利用している関東B市の利用者が、代筆・代読支援の実演を行った。 (2)意見交換の実施  論点@−Aを整理するため、調査対象者との意見交換を行った。 4.調査実施日  期日:令和2年2月28日(金)13:30〜15:30  場所:TKP市ヶ谷カンファレンスセンター ホール6C 2 代筆・代読支援の実演 1.調査の背景  調査を実施する中で、自治体からは「実際の代筆・代読支援がどのように利用されているのか」「どのようなメリットがあるのか」といった意見が寄せられた。これは、本年度調査の論点でもある「視覚障害者のニーズ」の未整理部分であり、調査結果として整理する必要がある。  そのため、実際の代筆・代読支援の利用内容を整理することを目的に、関東B市で実際に代筆・代読支援を利用している視覚障害当事者(男性・70代)に、代筆・代読支援の実演を行っていただいた。実演では、頻繁に利用している「郵便で届いたチラシを読む」、「自治体の申込書を読みながら記入する」の二つが紹介された。そして、実演内容等を整理し、「@具体的な利用内容」、「A利用者の意見」に分け、調査結果とした。  なお、実演内容については、一部の内容を編集し、代筆・代読支援の利用内容を示す資料として、巻末に掲載した。 ●代筆・代読支援の実演内容は、131ページに資料Aとして掲載しました。 2.具体的な利用内容 (1)支援を依頼している内容 ・役所から送られてきた手紙は重要なものが多いので、読んでもらい、記入が必要な部分は代筆を依頼している。 ・クレジットカードの支払い明細を読んでもらい、引き落とし金額、引き落とし日等を確認している。 ・買い物をした後、レシートの読み上げや買ったものの仕分けを依頼することもある。 ・妻は生協を利用していて、注文シートの記入の代筆・代読を依頼している。これは大変助かっている。 (2)支援内容の詳細 ・支援者は、まるで会話をするような、自然な形で代筆・代読の支援を行ってくれる。人によっては代筆・代読支援を朗読のような固いイメージを持っていると思う。ただ、実際は、支援者と上手くコミュニケーションをとりながら支援を受けることが多い。 ・もう一度聞きたいところはお願いすれば読んでくれたり、注意が必要なところはゆっくりと読んでくれる。自分のペースで読んでくれることが助かっている。 ・代筆は重要なことなので、記入内容を丁寧に確認しながら記入してくれる。名前の漢字も一文字ずつ読んでくれ、こちらが確認した後に記入してくれる。 ・支援者によっては、読み間違うことや読めない漢字もある。ただ、その部分が分からなくても、必要な情報はだいたい分かるので、読み上げの精度はそこまで気にしていない。 ・昔は、同行援護を利用している際に外で読んでもらったこともあった。ただ、代筆・代読支援のように、家の中で落ち着いて読んでもらったり、書いてもらったりする方が安心できる。 3.利用者の意見 (1)支援を受けるための工夫 ・代筆・代読の支援を受けていると、実は自分たちでも支援を受けるために工夫することが大切なことに気付く。是非、これは他の方にも真似してほしいので、私の一例を紹介します。 ・支援に来てもらう日は、事前に依頼をするチラシや申請書等を自分で整理しておき、順番に渡せるようにしている。これだと、効率的に時間が使えます。 ・市役所や社協から来る封筒には、手で触って分かるマークがついていることがあり、これがあると事前に「どこから来たか」が分かるので、効率的に支援者に依頼することができます。他の郵便物にも、こういったマークを付けてほしい。 ・生協に注文をする際は、事前に音声版のカタログで商品の目星を付けている。そして、支援を依頼している時は、目星の商品を詳しく読んでもらい、購入すると決めたら、注文票に書いてもらっている。 ・後で提出が必要な申請書等は、封筒に点字を打ったり、目印を付けたりして、自分だけで判別できるようにしている。 (2)支援に対する評価 ・大変助かっていて、今の生活には無くてはならない存在となっている。全盲の夫婦二人で暮らしているので、日常生活は「読めない、書けない」の連続です。そのため、いろいろなことを読んだり、書いたりしてくれて、ほんとうに助かっています。 ・代筆・代読支援を利用していて思うことは、信頼できる支援者がいるからこそ、このサービスがあるのだと思っている。そのため、支援者には大変感謝しています。 ・是非、全国の仲間たちにも、こういった支援が受けられるようになってほしいと思う。 ・いわゆる経済活動については、代筆・代読支援では認められていないので、これは認めてほしい。仕事に関することは、生活に直結するので、是非、検討してほしい。 3 意見交換の実施  代筆・代読支援の実演を行った後に、参加者による意見交換が行われた。当日は、司会が論点を整理しながら調査対象者に意見を求め、調査対象者からの意見は、項目ごとに整理し、調査結果とした。なお、掲載した各意見には、その発言者の立場(自治体・事業所・当事者)を記載した。 1.代筆・代読支援はなぜ必要か (1)利用者が感じている必要性 ・(当事者)自治体からの通知等は、例えば障害年金のように、障害者の生活を支える重要な内容が多い。また、申請の期限が決められているものもあるので、その通知が届いたらタイムリーな対応が求められる。そのため、安心して日常生活を送るためにも、こういった恒久的な支援制度が必要なんだと思う。 ・(当事者)日常生活を送っていると、いろいろな郵便やチラシがポストに入ってくる。それこそ、近所のスーパーの特売のチラシが入ってくるかもしれない。ただ、視覚障害者にはそのチラシを確認することができず、チラシに書かれた特売を逃してしまうことがある。些細なことかもしれないが、健常者と同じような日常生活を送るためにも、代筆・代読支援があるのだと思っている。 ・(当事者)盲学校に通っていたころ、全盲の先輩から「読むこと、書くこと、歩くことができなければ、一人前になれないよ」と言われたことがあった。今思うと、的を得た表現で、こういったことができなければ、一人では生きていけない。そのため、視覚障害者が満足に日常生活を送るためにも、代筆・代読支援のような支援が必要なんだと思う。 ・(当事者)今現在、先駆的に意思疎通支援事業で代筆・代読支援を実施している所でも、実際の利用者は少ないと言わざるを得ない。ただ、実際の利用者の声を聞くと「この制度がないと生活ができない」と言っている。こういった声は、必ず各地域にあるはずだ。視覚障害者の代筆・代読支援に対するニーズは「数」ではなく「深さ」で捉えることが大切だ。 ・(当事者)ICT技術が発達したことで、iPhoneやパソコンを利用すれば、色々なものを読み上げることができたり、入力という形で書けるようになった。ただ、対面で読み書きの支援をしてもらうことと、ICT技術で対応することは、全く別のことだと思う。やはり、人による支援は「できること」の幅が広く、柔軟さもある。こういった良さが代筆・代読の必要性になるのではないか。 (2)視覚障害当事者団体としての必要性 ・(当事者)視覚障害当事者団体にいると、会員から代筆・代読支援を求める声は大きく、どのようにして各地で制度を実現させるかが課題となっている。特に全盲の夫婦や独居の者からの要望は強い。 (3)ロービジョン(弱視)の必要性 ・(当事者)ロービジョンの者は、まず、人によって見え方に差があるため、読み書きの困難さも人によって大きく異なっている。それこそ、拡大読書器を使えば見える者もいるが、文字は見えても文章として理解することが苦手な者もいます。ただ、共通することは、今まで読めたこと・書けたことが、突然できなくなってしまうのが「もどかしい」ことです。この「もどかしさ」に苦しんでいるロービジョンの者は結構いるので、代筆・代読の支援があることは大変助かります。 (4)家族と代筆・代読の支援 ・(当事者)家族に代筆・代読をお願いすることはあるが、内容によっては、お願いしづらい内容も多い。それこそ、クレジットカードの明細は、内容を読まれたら自分の行動追跡をされてしまうような不安があるので、お願いしづらい。やっぱり家族でもプライベートは知られたくない。こういったものこそ、家族ではなく、赤の他人に読んでもらった方が気が楽だ。 ・(当事者)契約行為や申込書の記入は、その契約先の会社の担当者から「家族に書いてもらって下さい」と言われたことがある。ただ、内容によっては、プライベートなことなので、家族にはお願いできないこともある。 ・(当事者)家族といえども、機嫌が良い時もあれば悪い時もある。機嫌が悪い時に読むことをお願いするのは、非常に心苦しい。 2.公的な福祉サービスとしての代筆・代読支援 (1)サービスをスタートさせる ・(自治体)代筆・代読支援のように、他の自治体が実施していないサービスだと、いきなり大きなスタートは切りにくい。最初は小さく始めて、徐々に地域の中で利用者を増やし、サービスを大きくしていく方法が良いかもしれない。 (2)既存サービスとの差別化 ・(当事者)自治体は、他の既存のサービスを優先することがある。ただ、代筆・代読に特化したサービスは、他のサービスとは明らかに分けるべきだと思っている。そのため、他の既存のサービスを優先する等の縛りがあった場合は、実際に運用していく中で問題点を見つけ、上手く解決していくことが必要だ。 ・(自治体)自治体によっては、同行援護や居宅介護を利用していても代筆・代読支援が利用ができるところもある。代筆・代読支援は地域生活支援事業なので、自治体の判断によって利用できるかどうかが決まる。縛りを作るかどうかは自治体次第です。 ・(自治体)サービスの利用に関する縛りを作ると、内容によっては支援者側にも縛りを作ってしまう恐れがある。そのため、上手く支援者が集まらない可能性もある。 ・(自治体)同行援護であれば、外出後に居宅で代筆・代読支援を行うようなシームレスな支援ができるかもしれない。利用者側にも、支援者側にもメリットがあるように感じる。 (3)「できること/できないこと」の線引き ・(自治体)自治体によって考え方が違うが、他のサービスを含めて、「できること/できないこと」の規程を自治体で作ることは少ないかもしれない。公的な福祉サービスとして根本的にできないことは不可だが、自治体側でこういった線引きを作ると柔軟な支援が行えないイメージがある。支援者確保が重要なテーマとなっている現在、制度の柔軟さも必要になっている。 ・(自治体)制度は自治体が作るものと考えられがちだが、代筆・代読支援を見ていると、自治体・支援者・当事者が協力しながら制度を維持発展している部分がある。そのため、自治体が一方的にルールを作るよりも、事業所と利用者が上手く相談しながら「できること/できないこと」を整理した方が効率的だと思っている。 ・(事業所)利用者と契約を結ぶ際、事業所が「できること/できないこと」を説明した上で、契約を結んでいます。このことにより、両者の中で「どこまでの支援ができるか」の理解が生まれ、円滑な支援を提供することができます。 3.代筆・代読支援の実施方法 (1)支援の申込と対応 ・(事業所)週1回の定期利用の方もいれば、ある特定の時期だけ単発的に依頼する方もいる。ただ、単発的な利用は、支援者の予定が入れにくいので、依頼を受けられない時もある。支援者の成り手不足も背景にあるため、定期的な利用以外は受け入れにくい側面がある。 (2)時間数が超過してしまった時の対応 ・(自治体)福祉サービスなので時間数は予め決められているが、年間で予備時間というものがあり、超えてしまった場合はその予備時間で対応してもらうことになる。また、ケースワーカーに相談し、時間の再設定をして時間を増やすこともある。 (3)調整役の重要性 ・(事業所)利用者からは様々なニーズがあり、依頼するタイミングや状況も大きく異なる。そのため、事業所の中で、こういった多様な依頼を調整し、支援者を的確に派遣する調整役の仕事が非常に重要になっている。 ・(事業所)同行援護の仕事をしていると、サービス提供管理責任者は、利用者の好みや支援者の性格まで見て、仕事の割り振りを行っている。代筆・代読支援の現場でも、こういった調整役が必要だと思っている。 ・(事業所)事業所では、利用者と支援者の特徴等を踏まえて、利用者と支援者のマッチングを行っている。結果的に、ある利用者に対して特定の支援者を固定化する傾向を生んでいるが、実際の支援は効率的になる。 4.代筆・代読支援を普及させるための課題・要望 (1)制度の周知・理解 ・(当事者)ロービジョンの者の中では、急に見えなくなってしまう者もいる。こういった者ほど、代筆・代読の支援が必要なのに、こういったサービスの情報が本人に届かない。いかにして、ロービジョンの者に情報を届けるかが課題だと思う。 ・(当事者)家族がいると公的な代筆・代読の支援を求めない傾向も少なからずある。ただ。家族がいても、公的な代筆・代読の支援は必要で、下手したら家族がいたら受けられないと思っている者もいるかもしれない。支援を必要としている視覚障害者が、この支援の重要性を認識することも課題ではないか。 (2)制度の改善 ・(当事者)こういったサービスは、利用を開始するのに自治体に対して色々な書類を書いたりするので、とにかく手間が多い。なるべく簡単に制度が利用できるようにしてほしい。 ・(当事者)日常生活を送っていると、突然、代筆・代読の支援が必要となるケースが多い。そのため、支援の即時性も考えないといけない。福祉サービスの中でも、こういった即時性に対応できる仕組みがほしい。 (3)支援者の確保 ・(当事者)まず、同行援護は支援者の数が足りていないと感じていて、依頼をしたくても同行援護を頼めない時がある。そのため、同行援護の支援者と代筆・代読支援の支援者が一体化できれば、そういった人数的な問題を解決できるのではないか。 ・(自治体)どの福祉サービスにおいても、支援者の確保が大きな課題になっている。新しくサービスを始める上で、この支援者確保の問題が大きな障壁になっている可能性がある。 (4)事業所の姿勢 ・(事業所)福祉サービスを実施する事業所では、利用者の高齢化に伴い、介護保険のケアマネージャーの存在が全般的に重要になっている。代筆・代読支援の仕事をしている事業所でも、これらの者が実際に活躍している。ただ、一般的なケアマネージャーは高齢者のことしか知らず、障害者のニーズを理解していない側面がある。そのため、ケアマネージャーの障害者理解や障害福祉制度の理解を広めることも課題だと思う。 (5)自治体の姿勢 ・(当事者)先駆的に代筆・代読支援を行っている自治体は、色々と工夫をしていて、頑張っている印象をもった。ただ、他の自治体がそこまでの工夫や努力をしてくれるとは、残念ながら思えない。自治体は、新しいサービスにはとにかく消極的なことが多い。こういった姿勢は改めてほしい。 (6)支援内容の線引き ・(当事者)現在の代筆・代読支援は、経済活動やお金に関することは対応ができない。ただ、日常生活を送る上で、これらの支援はやっぱり必要だ。 ・(当事者)契約等の行為は代筆・代読支援では難しいが、その契約を結ぶ側でも、結局は何もできないことが多い。こういった「どうにもできないこと」にこそ、代筆・代読の支援を行ってほしい。 ・(自治体)契約行為は、それこそ行政書士だったり、場合によっては弁護士が対応せざるを得ないと思っている。ただ、この線引きがなかなか分かりにくい。支援内容の整理は必要だと思っている。 (7)視覚障害当事者の要請活動 ・(当事者)その地域の視覚障害者が、代筆・代読の支援について問題意識を持つことが非常に重要だと思う。そして、自治体を説得させるための根拠や知識をもって交渉することも重要だ。我々、視覚障害者自身が行政を説得するための「力」をつけないといけない。 ・(当事者)実際に利用している者の声を聞くと「この制度がないと生活ができない」と言っている。こういった声は、必ず各地域にあるはずだ。未実施の地域の視覚障害者は、こういった声を地域で拾い上げ、自分たちから自治体に要望する必要がある。 ・(当事者)地域の視覚障害者が、それぞれで声を挙げることはなかなか難しい。そのため、地域の団体を中心に結束して声を挙げることが重要だ。そうなると、視覚障害者の当事者団体を全国的に束ねている中央団体の旗振りも大切だ。全国の視覚障害者が一丸となって「代筆・代読支援は必要なんだ」と声を挙げていかないといけない。 83ページ 第6章 考察 1 調査@ 実施自治体 書面調査 1.調査結果について  書面調査は、意思疎通支援事業「代筆・代読支援」の実態を調査するため、代筆・代読支援の実施状況や関連サービス等について調査を行った。特に、代筆・代読支援に関する平均像や課題を整理することを目的とした。  その結果、依頼をした14自治体中11自治体から回答があった。以下では、書面調査から見えた結果概要を整理して掲載する。 【実施自治体 書面調査の結果概要】 1.調査対象の基礎データ (1)人口関連 @視覚障害者の割合 ・どの自治体も平均的な割合を示していた。 (2)福祉サービスの周知方法 @視覚障害者向けの周知の現状 ・発行物、ホームページとも、ある程度は視覚障害者のニーズに沿った媒体が用意されていた。 ・小規模な自治体では、視覚障害者向けの周知方法が用意できず、マンパワーで対応している傾向が確認できた。 A課題 ・情報を必要とする視覚障害者側から情報を求めない限り、情報が入手しづらい状況になっている。 ・自治体で新たなサービスが始まった際、既に身体障害者手帳を取得している者は、自動的にそのサービスの情報を受け取ることが難しい。 (3)当事者や事業所のニーズの把握 @現状と課題 ・自治体の規模により確認方法の差異があるものの、障害当事者に対してニーズの確認を行っていることが分かった。主に障害者計画で定められたアンケート調査等。 ・アンケート調査等が中心のため、全てのニーズを吸収しているとは言い切れない。障害当事者自身が問題意識を持ち、ニーズを挙げる必要がある。 2.意思疎通支援事業「代筆・代読支援」の実施状況等について (1)意思疎通支援事業 全体の実施状況 @予算規模 ・自治体の規模に予算の大きさが比例する傾向があった。 A実施内容 ・意思疎通支援事業の各サービスは、自治体の規模やその地域の地域事情によって実施の有無に差異があった。 ・平成30年度調査において、意思疎通支援事業「代筆・代読支援」を実施していると回答した自治体の中に、他とは違う形でサービスを実施している自治体も含まれていた。 (2)代筆・代読支援の利用実績 @利用者 ・該当地域に住む視覚障害者の1〜3%程度が代筆・代読支援を利用していた。 A支給時間 ・自治体によって差はあるものの、5〜10時間の間が平均的な支給時間と言える。 B予算規模 ・自治体の規模、利用者数と利用頻度によって大きく差がある。 ・平均的な予算は10〜30万円程度。 C対象者の該当要件 ・全体的には障害等級や家族の有無等を要件としない自治体が多かった。 ・一部の自治体は「他のサービスで支援が受けられない者」を対象としていた。この要件からは、@制度の谷間にいる者を対象にしている、A既存のサービスで代筆・代読の支援ができるなら既存を優先する、ことが読み取れる。 (3)代筆・代読支援を開始した経過 @開始時期 ・平成19年〜22年頃からの実施、平成29年頃からの実施に分かれていた。ただし、時期が二つの時期に分かれた理由は分からなかった。 A開始までの経過 B当事者からのニーズ ・地域の視覚障害当事者からの要望があり、視覚障害当事者団体が意見をまとめ、自治体に対してサービス開始の要望を出していた。 ・一部の自治体では「国の法律の開始がきっかけの一つ」との回答もあった。 C当初予算、利用者数等 ・開始時の予算は、他のサービスと比べると比較的低めの規模からスタートしていた。 ・開始以降、@同じ予算額で推移、A下回っている自治体があった。つまり、自治体によっては利用者が拡大していない傾向が読み取れた。 D他サービスとの差別化 ・大半の自治体は、他サービスとの差別化を考えた上で事業を実施していた。 E参考にした資料 ・サービスの開始に際して、先駆的自治体の事例を参考にしていた自治体があった。 ・数珠繋ぎのように、先駆的自治体の事例を参考にしていた流れも確認できた(関東B市→近畿H市→近畿G市)。 (4)現在の代筆・代読支援に対する評価等 @満足度 A満足な支援を与えられているか ・「普通」または「良い」との回答があり、概ねで利用者からは「一定の満足度はある」と認識していた。 B当事者ニーズの反映方法 ・可能な限りニーズを反映する傾向があった。 Cサービス実施における工夫 ・一部の自治体からは「事業者が存続しなければ、サービスが存続できないため、制度面の工夫が必要」と読み取れる回答があった。 D懸案事項 ・単価や上限時間の設定等、事業所が運営できるように制度の調整が必要と回答した自治体があった。 ・実際の利用者が少ないこと(拡大しないこと)を問題視している自治体もあった。 E支援することが「できない」内容 ・公的な福祉サービスで実施不可としている内容(営利目的、公序良俗に反する内容等)は、明確に不可としていた。 ・平成30年度調査において、線引きの必要性を提起した内容(契約や自己意思の表明等)は、一部の自治体は不可としていたが、殆どの自治体では不可と明示していなかった。 Fトラブルの事例 ・地域によって差異があるものの、個別的な事情によるトラブルが多少あった。 G支援者の養成 ・養成の必要性は感じているものの、サービスの実施数が少ないことから、養成の実施までは手が回らない傾向が読み取れた。 H支援者の指名 ・事業所と利用者の間で、どのような支援が行われているかを詳細に把握していない傾向が読み取れた。 I専門性の必要性 ・支援者の要件は、最低でも居宅介護のヘルパーが支援すると考えていた。 ・支援内容の専門性は、専門的な能力よりも「利用者本位に立った支援が大切」と考えていた。 (5)今後の代筆・代読支援の方向性(6)代筆・代読支援に関する課題や要望 @制度の見直A今後の見通し ・「継続する」考えを示した自治体が多かった。 ・一部の自治体は、利用数が伸び悩んでいること等から、改善という意味で見直しを考えている自治体もあった。 B制度を継続させるための要件等 ・既に実施している自治体としては以下の3点が重要であることが分かった。  @サービスの周知  A支援者の確保  B予算の確保(国庫の増額) 3.代筆・代読の支援が行える「他の福祉サービス」について (1)同行援護 @「代筆・代読支援」との住み分け ・同行援護では実施できない「居宅での支援」を住み分けの根拠にしている傾向が読み取れた。 (2)居宅介護 @「代筆・代読支援」との住み分け ・一部の自治体では、居宅介護で代筆・代読の支援が実施できるのであれば居宅介護を優先すべきと考えていた。 (3)その他 @複数のサービスで代筆・代読の支援ができること ・複数の支援方法があることにより、地域で柔軟な支援が実施できることは評価していた。 ・障害者の多様なニーズを目の前にすると、自治体が提供するサービスは「柔軟であるべき」と考えており、地域生活支援事業の良さを生かした姿勢が読み取れた。 2.調査結果から見えた論点とヒアリング調査の実施  前項により、意思疎通支援事業「代筆・代読支援」の実施状況等の平均像と課題は整理することができた。以下では、前項では整理できなかったことを中心に、ポイントとなる論点を整理する。 (1)多様な方法で実施されていた代筆・代読支援  書面調査の結果を全体的に見ると、回答があった自治体では様々な形で代筆・代読支援を実施していることが分かった。以下に特徴的な回答を整理して掲載する。 【代筆・代読支援の実施の有無、特徴的な実施内容】 東北A市 実施 (※1) 関東B市 実施 (※1) 関東C区 実施 ・障害者地域相談支援センターにおいて、相談員が支援を行っている。 関東D区 実施 (※1) 関東E区 実施 ・社会福祉協議会に委託し、ボランティアが支援を行っている。 北信越F町 実施なし ・圏域の障害者相談センターの合同事業として実施している。 近畿G市 実施 (※1) 近畿H市 実施 (※1) 中国I市 実施なし ・地域生活支援事業「移動支援」の一環で実施している。 四国J市 実施 (※1) 四国K町 実施 ・地域に住んでいる全身性肢体不自由者のために実施している。 (※1)同行援護や居宅介護の従業者が、支援者として支援を実施していると思われる自治体。  この調査結果を見ると、代筆・代読支援が自治体の創意工夫によって実施される「地域生活支援事業」の一つであることを改めて痛感する。  まず、「(意思疎通支援事業「代筆・代読支援」の)実施なし」と回答した北信越F町と中国I市は、前ページに示した方法で地域の視覚障害者に対して代筆・代読の支援を行っていた。また、関東C区と関東E区は、支援者として想定していた同行援護や居宅介護の支援者を利用しない方法で事業が実施されていた。さらに、四国K町のように、視覚障害者ではない障害者を対象に支援が行われている自治体もあった。  このように、地域生活支援事業により、地域の実情や利用者のニーズ応じて、各自治体が独自の事業を実施していることが分かった。この点については、地域生活支援事業の利点であることを評価する結果としたい。 (2)代筆・代読支援の支援者  前ページの整理をさらに分析すると、書面調査を実施した半分以上の自治体が、同行援護や居宅介護の支援者を利用してサービスを実施している可能性が高いことが分かった。  平成30年度調査では、代筆・代読支援の実施の有無は確認したものの、どのような支援者が対応しているかは未確認だった。また、本年度調査の書面調査でも、どのような支援者が対応しているかは、明確には尋ねていなかった。しかし、前ページの整理や、他の設問での回答を確認すると、実際の支援は同行援護や居宅介護の支援者が担っている可能性が高いと言える。この点については、ヒアリング調査により、実際の支援内容の整理を通してさらなる実証を行うこととした。 (3)ヒアリング調査で確認すべき論点  本年度調査においては、代筆・代読支援の具体的な実施方法等を整理することが目的となっている。そのため、書面調査によって論点整理を行い、その論点に従いヒアリング調査を実施し、代筆・代読支援の実施方法等の整理を行うことを想定していた。  ついては、本節のまとめとして、書面調査によって整理できた背景と論点を次ページに掲載する。 【実施自治体 ヒアリング調査において確認すべき論点】 1.代筆・代読支援を開始する 01 背景 ・地域の視覚障害当事者や視覚障害当事者団体からの要望により事業を開始した。 論点 ・具体的にはどのような方法で要望を挙げたのか。 02 背景 ・先駆的自治体の資料を参考にして、制度を立案している自治体があった。 論点 ・どのような資料を、どのように活用したか。先駆的自治体の実施例を資料化することは、未実施自治体に対する効果的な資料となり得るのか。 2.代筆・代読支援の運営方法 03 背景 ・支給時間や単価は、自治体によって考え方や内容が異なっていた。 論点 ・支給時間や単価の設定根拠はあるのか。 04 背景 ・支援者の成り手不足が懸念されていた。自治体は、事業所による支援を存続させるために、制度の調整が必要と感じていた。 論点 ・支援者確保、事業所の維持のために行われている方策はどのようなものか。 05 背景 ・同行援護や居宅介護のような類似する福祉サービスを上手く線引きすることで、サービスの個別化を図っていた。一部の自治体では「他の類似する福祉サービスがあれば、そちらを優先する」との要件が設定されており、同行援護や居宅介護を利用する視覚障害者は、代筆・代読支援を利用できない可能性が含まれていた。 論点 ・他の類似する福祉サービスを優先する背景や理由はどのようなものか。 06 背景 ・自治体内での周知不足により、利用者が伸び悩んでいた。自治体からの周知は、利用者の手上げ方式になっており、自治体の課題となっていた。 論点 ・代筆・代読支援を実施している自治体においては、どのような周知対策をとっているのか。 07 背景 ・利用者が少ないこと等により、事業の見直しを考えている自治体があった。事業の存続のためには国庫の安定化等を求める自治体もあった。 論点 ・事業を存続させるためには、何が必要なのか。 3.代筆・代読支援の利用者 08 背景 ・利用者数が視覚障害者の1〜3%にとどまっていた。利用者が拡大しないことを悩んでいる自治体もあった。 論点 ・代筆・代読支援は、実際にはどのような視覚障害者が利用しているのか。利用者数が伸び悩んでいる原因は何か。 4.代筆・代読支援の事業所(支援者) 09 背景 ・同行援護や居宅介護の支援者が実際の支援を行っている可能性が高かった。 論点 ・支援者は、同行援護か居宅介護の支援者なのか。実際にはどのような支援を行っているのか。 10 背景 ・支援の「できること/できないこと」は自治体側では明確に規定していなかった。 論点 ・実際の支援の現場では、どのような線引きや工夫があるのか。 11 背景 ・支援者の養成は、自治体側では前向きに行うことができていなかった。 論点 ・事業所としては、どのような支援者が必要だと考えているのか。事業所側では、支援者に対してどのような養成を行っているのか。 (4)ヒアリング調査の実施方法  前ページに示した論点を追及するために、まずは書面調査の対象自治体の一部にヒアリング調査を実施することとなった。検討の結果、積極的に代筆・代読支援を実施している関東B市、関東D区、近畿G市の3自治体を対象とした。また、論点には地域の事業所(支援者)と視覚障害当事者に確認すべき内容も含まれていることから、該当自治体のこれらの者にもこの論点に準じたヒアリング調査を実施した。さらに、未実施自治体においても、調査結果の比較や更なる論点整理を行うために、ヒアリング調査を実施した。 2 調査@ 実施自治体 ヒアリング調査 1.自治体へのヒアリング調査 (1)調査結果の概要  ヒアリング調査は、意思疎通支援事業「代筆・代読支援」を実施している3自治体に対して実施した。どの自治体も、代筆・代読支援に対して意欲的な姿勢があり、貴重な回答を集めることができた。以下では、前節で示した論点に対して、判明したこと等を整理して掲載する。 【実施自治体・自治体 ヒアリング調査 調査結果のまとめ】 1.代筆・代読支援を開始する 01要望の出し方、受け方 ・団体からの要望を前向きに受け取っていた。 ・障害当事者からのニーズの把握は、自治体の業務の根幹と考えている自治体もあった。つまり、地域の視覚障害者からニーズを挙げることの重要性が示唆された。 02先駆的事例等の資料の活用 ・他自治体の資料は日常的に調べており、事業開始に際して活用していた。 ・実施自治体の事業内容をまとめた資料は、代筆・代読支援が未実施の自治体に対して有効であると読み取れた。 2.代筆・代読支援の運営方法 03支給時間や単価の設定 ・1回につき1〜2時間程度、月5〜10時間が妥当であった。 ・支給時間や単価は、事業を実施する事業所と詳細に相談し、事業所が業務を実施できる内容に調整することが効果的だった。 04事業所(支援者)の確保 ・支給時間や単価の設定を通して、事業所が支援者を確保しやすい環境を作り出すことが効果的だった。 05他の類似する福祉サービスとの関係性 ・他サービスと代筆・代読支援の区分けを行っていた。 ・他サービスを利用していても代筆・代読支援が利用できるとする自治体もあれば、他サービスを優先する自治体もあった。 06福祉サービスの周知 ・視覚障害者に対して効果的な情報提供や周知を行うことは、自治体として大きな課題となっていた。 ・窓口に来た者に対して積極的に声をかけることで、新規のサービス利用に繋がったケースがあった。 07事業存続のために必要な内容 ・事業所(支援者)の確保が重要で、確保に向けた制度の調整を行っていた。 ・地域生活支援事業における国庫の安定化を求める声もあった。 3.代筆・代読支援の利用者 08利用者の要件 ・利用者が広がらない背景 ・障害特性による線引きは特になく、ロービジョン(弱視)の者でも受けられる自治体もあった。家族の有無は判断が分かれていた。 ・利用者からのサービスに対する評価は高いと判断していた。 ・利用者が伸び悩んでいる原因として、周知不足を課題にしていた。 4.代筆・代読支援の事業所(支援者) 09支援者・支援内容 ・個別の実施情況は明確に把握していないものの、事業所の実情に応じて、制度の調整を行っていた。 10支援の線引き、工夫 ・自治体側で支援内容の線引きは行わず、制度の柔軟さを優先していた。 ・支援の線引きは、事業所(支援者)の実際の支援を通して決めた方が良いと考えていた。 11求めている支援者像・支援者の養成 ・支援者は、最低でも居宅介護のヘルパーが必要で、専門性よりも利用者に寄り添った支援を求めていた。 ・養成することの重要さは理解しているが、自治体で養成を実施することは難しかった。 (2)調査結果の詳細 @地域生活支援事業としての実施  代筆・代読支援の実施方法が、地域生活支援事業として、その地域の特性や利用者のニーズによって柔軟に調整されていることが分かった。例えば、関東D区のように手話通訳よりも代筆・代読支援の方が多く実施されていることや、近畿G市のように国からの通知(入院中における意思疎通支援事業)が開始のきっかけだった等、興味深い事例が何点も確認できた。その一方で、実施されている事業において、支援を希望する視覚障害者が利用できない可能性が含まれている点(例:同行援護や居宅介護の利用を優先する)もあり、地域生活支援事業の良い面と悪い面が現れた。 A手探りの事業運営による制度の微調整  代筆・代読支援が全国的に実施されていないことにより、効果的な事業の実施方法がこれらの先駆的な自治体でも把握しておらず、結果的に「手探りで事業を進めている」ことが分かった。特に、支援を担う事業所(支援者)を支えることで、利用者のニーズを補完できると考えていることから、苦慮しながら制度の調整を行っていた。主に1日の対応時間、月の支給時間等の調整を行うことで、利用者と事業所の双方にとってメリットのある内容に微調整を行っていた。その結果、三つの自治体の支給時間は、おおむね1回につき1〜2時間、月5〜10時間の範囲でサービスが実施されていた。 B事業の実施方法の活用  本調査の目的の一つである「事業の実施方法」の整理については、既に事業を実施している自治体にも必要であることが分かった。特に、これらの自治体の共通の悩みは「利用者が拡大しない」ことで、効果的な周知方法を求めている傾向があった。本調査では、実施自治体における事業の周知方法までは整理することができなかったため、今後の検討課題にすることが求められる。 2.事業所へのヒアリング調査 (1)調査結果の概要  事業所へのヒアリング調査は、関東B市と近畿G市の事業所に実施した。両事業所とも、該当地域において代筆・代読支援の中心的な事業所である。以下では、前節で示した論点に対して、判明したこと等を整理して掲載する。 【実施自治体・事業所 ヒアリング調査 調査結果のまとめ】 1.代筆・代読支援を開始する 01要望の出し方、受け方 ・事業の開始時には事業所側から開始の要望は挙げていないが、その後、自治体側からサービス開始に向けた相談や紹介があった。 02先駆的事例等の資料の活用 ・資料を参考に支援方法を学んでいた。 ・福祉に携わる支援者としての基本的な姿勢が重要視されていた。 2.代筆・代読支援の運営方法 03支給時間や単価の設定 ・自治体の要件に従い、サービスを実施していた。 ・大半の依頼は、要件で設定された支給時間内で収まっていた。 04事業所(支援者)の確保 ・支援者の確保に頭を悩ませている事業所もあった。支援者の高齢化等が原因。 05他の類似する福祉サービスとの関係性 ・サービスの線引きが曖昧になっている部分があり、ある程度の線引きが必要との指摘があった。 06福祉サービスの周知 ・地域の視覚障害者が代筆・代読支援を知らなかったり、必要性に気付いていない可能性があるとの指摘があった。 07事業存続のために必要な内容 ・利用者からの希望がある限り、代筆・代読支援を実施していく姿勢があった。 3.代筆・代読支援の利用者 08利用者の要件・利用者が広がらない背景 ・利用者とは、一定の信頼関係を築き、協力しながら友好的な支援を行っていた。 ・利用者が伸びない原因としては、@周知不足、A家族等の支援で補われていることを指摘していた。 4.代筆・代読支援の事業所(支援者) 09支援者・支援内容 ・同行援護や居宅介護の支援者がサービスを提供していた。 ・利用者のニーズに応じて柔軟に支援を行っており、支援内容は多岐にわたっていた。 10支援の線引き、工夫 ・代筆・代読支援において「できること/できないこと」を利用者と共有するため、契約時に支援内容をとりまとめた書類を作り、利用者に理解を促している好事例があった。 ・現場の支援者が困ったこと、判断できないことがあれば、すぐに事業所の担当者に連絡をするようにしていた。また、担当者から自治体に問い合わせることで解決していた。 11求めている支援者像・支援者の養成 ・代筆・代読支援は、専門性よりも、利用者にとって親身な支援が大切だと考えていた。 ・養成や研修等は実施したいと考えているが、効果的な研修はなかなか実施できていなかった。現状は事業所内の情報共有で支援の質を保たせていた。 (2)調査結果の詳細 @支援に対するプライド  まず、自治体の担当者と同様に、事業を真剣に取り組んでいる姿勢があり、プライドを持ってサービスを提供している姿が象徴的だった。特に、代筆・代読支援の専門性に関する質問では、専門的なスキルよりも、利用者の立場に立って親身な支援を重要視していることが、その象徴とも言える。つまり、事業に対する熱意があれば、既存の同行援護や居宅介護の事業所で代筆・代読支援が実施できるとも言える。 A「利用者のしおり」の活用  関東B市の事業所においては、代筆・代読支援における「できること/できないこと」を利用者と共有するため、契約時に利用事項をまとめた「利用者のしおり」を活用しているとの情報提供があった。この点は、自治体側では「線引きがしづらい」との意見があったため、その課題を埋める優れた取り組みの一つと言える。そこで、この「利用者のしおり」は、一部を編集したものを報告書の資料として掲載を行った。 B事業所の担当者(調整役)の重要性  両事業所とも、派遣等の調整を行う事業所内の担当者の重要性を指摘していた。この者は、利用者に対して効率的に支援者を配置すること、現場の支援者からの困り事を解決すること、自治体とのパイプ役になることを担っており、代筆・代読支援においても重要な存在になっていることが分かった。自治体でも、この担当者の存在は重要視しており、他自治体でサービスを実施するにあたってもキーマンとなる可能性はある。 ●「利用者のしおり」は、125ページに資料@として掲載しました。 3.視覚障害当事者へのヒアリング調査 (1)調査結果の概要  視覚障害当事者へのヒアリング調査は、関東B市の代筆・代読支援の利用者に対して実施した。なお、ヒアリング調査の対象者は、調査Bにおいて代筆・代読支援の実演を行っていただいている。そのため、以下では、前節で示した論点に対して、調査Bで判明したことも含めて掲載する。 【実施自治体・当事者 ヒアリング調査 調査結果のまとめ】 1.代筆・代読支援を開始する 01要望の出し方、受け方 ・視覚障害当事者団体の活動により、要望を自治体に挙げていた。 ・市長との定期面会等、自治体側とは一定の信頼関係があった。 02先駆的事例等の資料の活用 ・未実施自治体において、代筆・代読支援のサービスが広まってほしいと考えていた。そのために、こういった資料が必要と認識していた。 2.代筆・代読支援の運営方法 03支給時間や単価の設定 ・与えられた支給時間(月6時間)は有効に利用しており、その内容に満足していた。 04事業所(支援者)の確保 ・支援者の確保が難しいことを感じていた。 05他の類似する福祉サービスとの関係性 ・代筆・代読支援は、居宅でゆっくりと、自分のペースで支援を受けられる点が大変良いと考えていた。 06福祉サービスの周知 ・同じ地域の視覚障害者でも、サービスの存在を知らない者がいるため、周知は必要だと感じていた。 07事業存続のために必要な内容 ・自身の生活になくてはならない存在なので、継続を希望していた。 ・継続のためには、@事業所(支援者)が存続すること、A他の利用者が増えることが大切だと考えていた。 3.代筆・代読支援の利用者 08利用者の要件 ・利用者が広がらない背景 ・全盲の二人暮らしの生活には欠かすことができない存在との意見だった。 ・同じ地域の視覚障害者でも、代筆・代読支援を知らない者がいるため、周知は必要だと感じていた。 4.代筆・代読支援の事業所(支援者) 09支援者・支援内容 ・今の支援者からの支援には満足していた。 ・支援を受ける内容は、日常生活で必要とする内容が中心だった。 10支援の線引き、工夫 ・実際の支援は、支援者と会話をするように、上手くコミュニケーションをとりながら受けていた。 ・代筆・代読支援を依頼する際には、事前に依頼内容を整理しておく等、利用者側でも様々な工夫をしていた。 ・できない支援は事前に利用者が理解しており、トラブルになることは少なかった。 11求めている支援者像・支援者の養成 ・ある程度の専門性は必要だが、それ以上に日常的なコミュニケーション能力、信頼性を重要視していた。 (2)調査結果の詳細 @代筆・代読の具体的な内容  ヒアリングを依頼した視覚障害当事者は、代筆・代読支援を日常的に活用しており、日常では様々な内容の代筆・代読を依頼していた。まとめには掲載できなかった内容としては、郵便物として届いたチラシ、自治体の申請書、生協の申込用紙等、日常的に手にする範囲の内容を依頼していた。また、他自治体でのヒアリングでは、パソコンの入力内容の代筆・代読、写真や絵葉書の代筆・代読等に利用されていることも情報として寄せられた。ここで共通している点は、専門性を有するものではなく、日常的に手にする範囲の書類等の読み書きに集中していることだ。このことが、視覚障害者の代筆・代読支援のニーズの根幹とも言える。 A実際の支援内容  代筆・代読支援の利用者は、支援者に対して高度な支援は要求しておらず、むしろ、日常的なコミュニケーションの延長としての支援を望んでいることが分かった。さらに、居宅内の落ちついた環境で支援を受けることの重要性も指摘しており、代筆・代読支援の優位性を示すこともできた。  なお、具体的な支援内容を明確にまとめることは難しいため、本調査では、実際の支援の様子をまとめた資料を巻末に掲載した。 B代筆・代読支援の必要性  これらの結果を整理すると、代筆・代読支援を必要とする者にとって、このサービスは「なくてはならない」存在であることが分かり、代筆・代読支援のニーズの根拠を示すことができた。  ただし、ニーズがあっても、サービスを開始するためには地域の視覚障害者自らが自治体に出向き、要望を伝えることが必要になっている。ヒアリング調査を実施した関東B市については、もともと視覚障害当事者団体と自治体との関係性があったことに加え、しっかりと「要望を伝えたこと」がポイントだった。他の自治体で開始するにあたっても、この点は見逃すことができない。 ●代筆・代読支援の実演内容は、131ページに資料Aとして掲載しました。 3 調査A 未実施自治体 ヒアリング調査 1.自治体へのヒアリング調査 (1)調査結果の概要  未実施自治体については、事前に該当地域の視覚障害者団体に相談し、既に代筆・代読支援の開始を要望しており、かつ実現の可能性がある2つの自治体を選定し、調査対象とした。なお、両自治体とも、令和2年度より意思疎通支援事業において代筆・代読支援を実施する予定となっている。また、調査については、実施自治体の調査において確認した論点をもとにヒアリング調査を実施した。  以下では、前々節で示した論点に対して判明した内容等を整理して掲載する。 【未実施自治体・自治体 ヒアリング調査 調査結果のまとめ】 1.代筆・代読支援を開始する 01要望の出し方、受け方 ・当事者団体から要望があり、この要望がきっかけとなり検討を進めた。 ・要望と共に、自治体が必要となる資料(先駆的自治体の実施例、視覚障害者のニーズ等)の情報提供があり、これが役に立った。 02先駆的事例等の資料の活用 ・先駆的自治体の実施例、視覚障害者のニーズは、制度の立案作業において、非常に役立つ資料だった。 ・資料とは異なるが、障害者を支援する法律や条令も後押しする材料となった。 2.代筆・代読支援の運営方法 03支給時間や単価の設定 ・先駆的自治体の実施例を参考に、上限支給時間、単価設定を割り出すことを行っていた。 ・制度の詳細内容は、サービスを提供する事 業所と相談しながら決めようとしていた。 04事業所(支援者)の確保 ・制度の立案作業の時点で支援者の確保が必要だった。 05他の類似する福祉サービスとの関係性 ・他サービスとの区別は必要と考えていた。 06福祉サービスの周知 ・事業開始時の周知の必要性は強く認識しており、利用者を集めることも必要だった。 07事業存続のために必要な内容 ・事業開始時に必要なことは@実際の支援方法の整理、A支援者の確保、B必要な予算の裏付けを行った上で、C他事業との区別することが重要だった。 ・まずは小さくスタートして、事業を実施しながら、必要な部分を修正していくイメージが強かった。 3.代筆・代読支援の利用者 08利用者の要件 ・利用者が広がらない背景 ・利用者を明確に定めてはいないが、他の福祉サービスを受けられない者を想定している自治体があった。 4.代筆・代読支援の事業所(支援者) 09支援者・支援内容 ・日常生活レベルでの支援を想定していた。 10支援の線引き、工夫 ・支援者の要件を厳しくすると、支援者が集まらない可能性があると感じていた。 ・代筆・代読支援で「できること/できないこと」の線引きは、自治体側ではなく事業所側で考えた方が良いとの考えだった。 11求めている支援者像・支援者の養成 ・同行援護や居宅介護の支援者を活用しようと考えていた。 ・自治体の規模が大きいところでは、支援者の養成も含めた制度設計を検討していた。ただし、規模の小さな自治体では、養成は難しい可能性が高い。 (2)調査結果の詳細 @自治体内での了解、先駆的自治体の資料  両自治体は、共通の課題として「新規サービスの開始を、どのようにして自治体内部で了解をとるか」を挙げていた。特に財務部門との折衝は重要で、未実施の自治体としては、この了解をとるために「このサービスに関する効果的な資料が必要」と考えていた。この点を踏まえると、調査結果としてまとめた内容の大半はこの了解作業のために必要な事項であり、主に本調査の論点である「事業の実施方法」の具体的な内容を求めていた。  なお、本調査で得られた調査結果の一部として、先駆的自治体の実施例を紹介したところ「大変参考になる」との評価があった。また、その実施例は、詳細な内容でなくとも該当自治体の要件にアレンジすることは可能だった。実際に、東海M市は、別自治体の支給時間と人口数(障害者数)から、おおよその支給時間と利用者数、さらには必要な予算を割り出している。つまり、先駆的自治体の実施例は、ポイントだけ絞っていても利用価値があった。 A地域の視覚障害当事者からの要望  東海M市については、開始を要望した視覚障害当事者団体から各種の資料提供を行っている。この点は、自治体からは高評価があり、特に「ニーズ」の部分が助かったとの回答があった。この点も自治体内の了解作業において重要で、他部署に対して障害者のニーズを理解してもらうことは難しいことが背景としてあり、自身の言葉でニーズを伝えられる視覚障害当事者の存在は大きかったようだ。しかし、言葉でニーズを伝えることには限界がある。そのため、このニーズを資料化することも必要となっている。 B障害者を支援する法律や条令  両自治体とも、障害者の支援に関する法律や条令をきっかけの一つとしていた。関東L区は実施予定の障害者の意思疎通支援に関する条例、東海M市は令和元年6月に成立した読書バリアフリー法がきっかけだった。他の自治体においても、このような法律や条令がきっかけであったと回答していたことから、代筆・代読支援を実施するための後押しをする材料になり得るかもしれない。 2.事業所へのヒアリング調査 (1)調査結果の概要  未実施自治体では、東海M市から代筆・代読支援の開始に向けて相談があった事業所に対してもヒアリング調査を実施した。なお、事業所としても、開始に向けた様々な情報を必要としていたことから、お互いが情報提供を行うような形でヒアリング調査を実施することとなった。  以下では、前々節で示した論点に対して判明した内容等を整理して掲載する。 【未実施自治体・事業所 ヒアリング調査 調査結果のまとめ】 1.代筆・代読支援を開始する 01要望の出し方、受け方 ・地域の視覚障害当事者団体より相談があった。事業所としても必要性を感じていたので、開始の要望を出していた。 02先駆的事例等の資料の活用 ・代筆・代読の支援に関する研修資料は確認したが、実際の実施内容の資料はあまりなく、事業開始のために必要としていた。 2.代筆・代読支援の運営方法 03支給時間や単価の設定 ・先駆的自治体が事業所のことを考えて時間数を変更していることは、効果的な取り組みと考えていた。 04事業所(支援者)の確保 ・支援者の確保はもちろんだが、支援の調整をする担当者への支援(予算化)を求めていた。 05他の類似する福祉サービスとの関係性 ・代筆・代読支援は、視覚障害者の代筆・代読の支援に特化した制度になることを期待していた。 06福祉サービスの周知 ・利用者に情報が届かない現状を認識しており、地域の眼科を含めた関係団体からの周知が重要と考えていた。 07事業存続のために必要な内容 ・支援者への報酬に加え、事業所への予算、研修への予算が必要と考えていた。 ・支援者の確保と養成は開始前に整理する必要があると認識していた。 3.代筆・代読支援の利用者 08利用者の要件 ・利用者が広がらない背景 ・地域の視覚障害者に周知をして、まずは利用者を揃えることが大切だと考えていた。 4.代筆・代読支援の事業所(支援者) 09支援者・支援内容 ・対面朗読で行われている日常的な支援が必要と感じていた。 10支援の線引き、工夫 ・支援者の要件を厳しくすると、支援者が集まらない可能性があると感じていた。 ・代筆・代読支援における「できること/できないこと」の線引きは、先駆的自治体での取り組み(事業所と利用者が合意すること)が有効と考えていた。 11求めている支援者像・支援者の養成 ・同行援護や居宅介護の支援者を活用しようと考えており、対面朗読のボランティアでは対応が難しいと考えていた。 ・養成の重要性は強く認識していた。ただし、手探りで始めるため、どのような養成にするかは検討中だった。 (2)調査結果の詳細 @対面朗読と代筆・代読支援  調査対象の事業所は、視覚障害者情報提供施設も運営していることから、施設内で対面朗読を実施している。そのため、視覚障害者への代筆・代読の支援については理解があり、開始予定の代筆・代読支援について、大きな期待を寄せていた。  この期待については、利用者に対する支援の質が向上すること、支援の分業化に期待することを理由としており、代筆・代読支援が開始することで、対面朗読の活性化に繋がる部分もあると考えていた。代筆・代読支援では本の読み上げが難しいことから、他のサービスとの分業化は、視覚障害当事者にとってメリットがあると思われる。 A支援者の養成〜先駆的自治体の資料  調査対象の事業所は、既に事業開始に向けて自治体から相談を受けている中で、支援者の養成も依頼されており、これが事業所内での課題となっていることが分かった。  まず、事業所としては、同行援護または居宅介護の支援者が対応すべきと考えているが、一定の養成は必要と考えていた。しかし、既存の代筆・代読の支援に関する養成マニュアルはあるものの、自治体が実施するサービスと見合うかどうかは未知数で、今後の事業の進め方について頭を悩ませていた。  そのため、実施自治体の実例を紹介した中では、関東B市の事業所が活用していた「利用者のしおり」に強く興味を示していた。対面朗読を実施していることから、代筆・代読支援における「できること/できないこと」の線引き、そして利用者との合意は、以前から課題として認識があったと思われる。その点を解決できる方策として、このしおりの活用に期待を寄せていた。 B視覚障害者への周知  代筆・代読支援の利用者を広めるためには、多くの自治体からは「地域の視覚障害者への周知が重要」と指摘されていた。また、事業所や視覚障害当事者からも指摘されており、いかにして代筆・代読支援を知ってもらうかが、大きな課題となっている。  この点は調査対象の事業所からも指摘があり、周知においては医療機関や訓練機関からの周知が必要ではないかとの意見があった。公的な福祉サービスの周知には様々な課題があり、過去の調査でも、ロービジョン(弱視)の者や、受障直後の者に情報を届けることは困難と指摘されていた。そのため、新たな利用者を獲得するためには、やはり地域全体での周知が必要であり、その効果的な方法も検討する必要がある。 3.視覚障害当事者へのヒアリング調査 (1)調査結果の詳細  未実施自治体では、関東L区と東海M市の視覚障害当事者団体の役員に対してヒアリング調査を実施した。ただし、調査の時間が短かったことから、概要は掲載せず、調査結果の詳細のみを掲載する。 @視覚障害当事者団体からの要望〜情報提供  両団体とも、地域の視覚障害者の声を集約し、自治体に対して要望を行った結果、代筆・代読支援の実施が実現することとなった。自治体調査の結果でも分かるように、地域生活支援事業は、地域のニーズがあって初めて実施できることを考えると、やはり地域の視覚障害当事者からの要望は「実施に向けた一番のきっかけ」になることが分かった。  また、東海M市の役員は、要望と共に様々な情報提供を行い、さらに自治体担当者と緊密な相談を行いながら、実施まで漕ぎつけることができた。情報提供においては、@先駆的自治体の実施例、A代筆・代読支援に対する視覚障害者のニーズを提供しており、新たにサービスを開始する自治体においては、視覚障害当事者からの情報提供が効果的であることが分かった。 A支援内容、対象者  両団体とも、日常レベルの支援を求めており、おおよその支援時間も月に5〜10時間のイメージがあった。実施自治体の実例を知らずとも、肌感覚でこの時間イメージがあったことから、根拠がある数字になるのかもしれない。  また、両団体とも、代筆・代読支援の対象者は、全盲で独居または盲世帯をイメージしている一方で、ロービジョン(弱視)の者も必要としていると考えていた。例えば、制度の狭間で同行援護や居宅介護が受けられない者は、なにも代筆・代読の支援が受けられないことになる。これらの狭間には、ロービジョン(弱視)の者が該当することが多いことから、対象者の要件設定が殆どない代筆・代読支援をロービジョン(弱視)の者の支援に活用することは、メリットが十分にあると言える。 3 調査B 調査@、調査Aに対する追加調査 1.追加調査の意図  追加調査は、調査@と調査Aで確認できなかった部分、さらなる情報が必要だった部分を求めて、ヒアリング調査を実施した。そのため、本章の調査@と調査Aの調査結果のまとめでは、追加調査で得られた情報も加味して、調査結果を掲載した。以下では、調査Bで得た情報の中で、調査@、調査Aの考察では紹介できなかった調査結果を掲載する。 2.ニーズの可視化  視覚障害者にとって、代筆・代読支援のニーズを言葉にするのは簡単だが、いざ整理をすると難しい内容であった。そのため、ニーズは未整理となっており、要望を出してもなかなか自治体がサービスを開始しない要因の一つと考えられていた。特に、実際の自治体の担当者からは「どのような内容の代筆・代読の支援を求めているか不明確」との指摘があり、ニーズの可視化が必要となっていた。そこで、このニーズの可視化を行うために、追加調査として代筆・代読支援の実演を行った。その結果、代筆・代読支援の実演を通して、支援の現場を初めて見た自治体担当者からは「代筆・代読支援の必要性が明確に理解できた」との意見があった。改めてニーズの可視化は重要であることが分かった。 3.視覚障害者の「個人のニーズ」による支援の必要性  これまで、ロービジョン(弱視)の者や家族の支援がある者のニーズは、一定数は存在していると考えていたが、全盲の者よりは低いとの認識だった。しかし、これらの者にも代筆・代読支援のニーズがあることが分かった。そのニーズの詳細を分析すると、それぞれの個別事情によるところが多かった。つまり、視覚障害の程度や家族の有無によって必要性を判断するのではなく、その視覚障害者個人のニーズによって必要性を考えることが大切であった。また、自治体はこれらのニーズを数で判断し、その数の多さによって支援を実施するかどうかを判断しがちだ。しかし、本年度調査を実施した限りでは、利用者の支援に求める必要性は高く、自治体は必要性の深さで判断すべきではないかと感じてしまう。これらを踏まえると、支援の必要性は「個人のニーズ」によって判断すべきであり、自治体での代筆・代読支援の利用者を決める際の指針にすべきではないか。 111ページ 第7章 まとめ 1 調査結果と課題  本年度調査では、全国の自治体において意思疎通支援事業「代筆・代読支援」を実施するために、効果的な「@事業の実施方法」と「A事業展開」の検討が目的となっている。  そのため、以下の論点整理を行うために各調査を実施した。   論点@ 効果的な「事業の実施方法」の在り方        A 具体的な事業の実施方法の整理        B 具体的な視覚障害者のニーズの整理   論点A 効果的な「事業展開」の在り方        C 事業開始のプロセスの整理  まず、本節では、代筆・代読支援に関わる自治体、事業所(支援者)、視覚障害当事者における調査結果を整理し、その上で見えた課題を整理する。さらに、次節以降では、課題を踏まえた各論点に対する効果的な方策を提案する。 1.自治体 (1)調査結果 @事業開始 ・事業を開始するためには、自治体内で了解をとる作業が必要となっている。そのためには、整理された「事業の実施方法」と「視覚障害者のニーズ」が必要だった。 ・事業を開始するためには、先駆的自治体の実施例を参考にすることが効果的だった。 A事業内容 ・地域資源である同行援護や居宅介護の支援者を活用することで、事業の実施は可能だった。 ・地域で支援が必要な人数・時間数からスタートし、支援の実施状況に応じて制度の内容を修正する方法が効果的だった。 ・同行援護や居宅介護等の他サービスと区別しながら、地域や利用者の実情に応じて、柔軟に支援していくことが大切だった。 ・自治体、事業所(支援者)、視覚障害当事者が連携しながら、制度の調整を図ることが大切だった。 B問題点 ・対応できる事業所(支援者)が少なく、利用者のニーズに見合った支援が実施できていない地域があった。 ・代筆・代読支援の利用者数が伸び悩んでいる自治体もあった。 ・自治体からの情報提供(周知)に限界があり、事業の情報を地域の視覚障害者や事業所に上手く伝えることが難しかった。 (2)課題 ・代筆・代読支援を開始するためには、地域住民の声をもとに、効果的に事業を実施するための様々な事例(実施方法、当事者ニーズ等)を活用することが必要ではないか。 ・事業実施のために必要な事例(実施方法、当事者ニーズ等)は、先駆的自治体の実施例等を整理し、資料化することが必要ではないか。 ・事業に関する効果的な周知方法を整理し、自治体等が積極的に周知を行うことが必要ではないか。 2.事業所(支援者) (1)調査結果 @開始 ・自治体と事業所が相談しながら、事業の制度設計を立案するのが効果的だった。 A事業内容 ・時間数は、事業所側の運営面を考慮して1回につき1〜2時間、月5〜10時間とするのが妥当だった。 ・現場の支援者と利用者を支えるため、事業所側の調整役の存在が重要だった。調整役が存在することで、事業が円滑に進む可能性が高い。 ・実際の支援においては、同行援護の研修等に含まれる視覚障害者への理解・コミュニケーション力(情報提供の正確さ)等が求められていた。専門性よりも基礎力の方が重要だった。 ・代筆・代読支援で「できること/できないこと」の判断は、自治体の意向を汲んで、事業所が利用者との相互理解の元で取り決めておくことが有効だった。 B問題点 ・支援者の成り手が不足しており、通年的な課題となっていた。 ・支援者の人材確保、資質向上のための養成は、事業所の自主努力に任されていた。 ・養成のために必要な研修内容は、全国的に統一した養成カリキュラムが必要とされていた。 (2)課題 ・自治体が設定する時間数や単価は、事業所が円滑に運営することを踏まえた設定が必要ではないか。 ・事業所(支援者)が利用者への支援を行う際は、代筆・代読支援における「できること/できないこと」の整理、その内容の相互理解が必要ではないか。 ・支援者の人材確保・資質向上のために、支援に関する研修の在り方を検討していく必要があるのではないか。 3.視覚障害当事者 (1)調査結果 @事業開始 ・事業を開始させるためには、熱意のある視覚障害当事者及び当事者団体が、自治体に対して代筆・代読支援の開始を要望することが必要だった。 ・要望と共に、代筆・代読支援の「先駆的自治体の実施例」と「視覚障害者のニーズ」を情報提供することが効果的だった。 ・支援を支える事業所(支援者)と連動した要請活動も効果的だった。 A事業内容 ・サービスの利用者は各地域ともまだ少数であったが、その者の必要性に応じた柔軟な支援を受けており、利用者からの満足度は非常に高かった。 ・支援を円滑に利用するためには、利用者自身も知識を持ち、工夫しながら支援を依頼することが効果的だった。 B問題点 ・支援を希望する視覚障害者は幅広く、ロービジョン(弱視)の者、家族と同居の者等も必要としていた。 ・支援を希望しているが、結果的に支援が受けられない者も多く存在した。主な問題点は、自治体の周知不足により情報が届かないこと、制度上の制限があること、支援者が少ないことだった。 (2)課題 ・未実施の自治体においては、地域の視覚障害者自らが、支援を開始するための要請活動を行う必要があるのではないか。 ・支援を円滑に利用するために、利用者自身が支援内容を把握し、支援を受けるための工夫を身に付けることが必要ではないか。 ・視覚障害当事者の幅広いニーズに応えるため、自治体は柔軟な制度設計、事業に関する周知等が必要ではないか。 2 代筆・代読支援を推進するためのモデル  まず、論点@の効果的な「事業の実施方法」の在り方では、具体的なサービスの実施方法の整理と、具体的な視覚障害者のニーズの整理を行うこととした。そこで、本節では、前者の「実施方法の整理」について考えてみたい。    調査の結果、代筆・代読支援を推進するためには、先駆的自治体の実施例を参考にすることが効果的であることが分かった。  先駆的自治体では、必要に応じて実施例を探り、地域の実情に合わせて制度を立案していた。未実施の自治体においては、事業を開始するためにその実施例を必要としており、実際に実施例を参考にすることで、事業を開始した自治体もあった。そして、地域の視覚障害者が自治体に要求活動をする上でも、この実施例は必要とされていた。さらに、この実施例は、先駆的自治体においても、利用者の拡大のために必要としていた。  つまり、先駆的自治体の実施例は、全国で代筆・代読支援を推進するための重要なツールとなっていた。  そこで、本調査で整理した先駆的自治体の実施例を「代表的モデル」として提案する。この「代表的モデル」の活用により、全国の自治体で代筆・代読支援が開始されること、実施している自治体でさらに事業が拡大することを期待する。 意思疎通支援事業「代筆・代読支援」先駆的自治体による代表的モデル 1.事業の開始 ・住民からのニーズに耳を傾け、代筆・代読の支援を必要とする視覚障害者等がいれば、代筆・代読支援の開始を検討すべき。 ・先駆的に事業を実施している自治体の実施例等は、事業開始の検討において役立つので活用すべき。 ・障害者のコミュニケーション等を支える法律・条令等があれば、事業開始の後押しになるため、活用すべき。 ・地域生活支援事業のメリットを生かし、地域の実情や利用者のニーズを柔軟に捉え、各自治体に見合った制度設計を行うべき。 2.他サービスとの区分け ・代筆・代読の支援が行える他サービス(同行援護・居宅介護等)とは、制度上は区分けをし、それぞれのサービスにおいて、有効性が高い支援を実施すべき。   例 居宅介護    居宅内での家事援助 等       ↓     代筆・代読支援 居宅内での代筆・代読の支援       ↑     同行援護    外出時の情報提供支援(移動支援) ・これらのサービスの実施においては、同じ支援者がシームレスに、それぞれの支援を実施できることを可能とすべき。 ・これらの他サービスがあることを理由に、代筆・代読支援の利用を抑制するような事由を作ることは好ましくない。 3.対象者のイメージ ・代筆・代読の支援を必要とする視覚障害者を対象とすべき。 ・代筆・代読の支援を必要とする者は、様々な理由で支援を求めている。そのため、個別のニーズを精査した上で、支援対象にするかどうかの判断をすることが望ましい。視覚障害の等級、家族構成、他サービスの利用状況等による画一的な判断は避けるべき。 4.事業所(支援者) ・視覚障害者の支援を行っている居宅介護事業所や同行援護事業所であれば、事業の実施は十分に可能である。 ・最低でもホームヘルパーの資格を持った支援者が必要だが、きめの細かい支援を行うには、視覚障害者の特性を理解した同行援護の支援者が有効となる。 ・円滑な支援を行うためには、現場の支援者と自治体の担当者の間に調整役(ケアマネージャー、サービス提供責任者等)を設けることが望ましい。 5.支給時間、単価 ・支給時間は月5〜10時間程度、週1回程度、1回あたり1〜2時間前後の支援が望ましい。ただし、支給時間の設定は、支援を受ける視覚障害当事者の個別のニーズに対応できるよう、柔軟な設定が求められる。 ・支給時間や単価は、地域の事業所と相談の上、支援者が円滑に派遣できるラインを見据えて設定すべき。 ・事業開始時は小規模の予算で開始し、利用者のニーズに応じて予算規模を可変してくことが効果的。 6.支援内容 ・公的な福祉サービス全般で実施できない内容は支援の対象外にする。また、契約行為、意思を表明する行為は、内容によっては支援の対象外とする。 ・事業所(支援者)と利用者が、代筆・代読支援で「できること/できないこと」を合意した上で、事業が実施されることが望ましい。合意においては125ページの資料@の活用が効果的。 ・サービスを利用する視覚障害当事者、支援を行う事業所(支援者)、制度を運営する自治体が、それぞれで工夫しながら、協力的に事業を進めていくことが効果的。   例 当事者 事前に依頼したい内容を準備しておく     支援者 不明確な支援内容があれば、事業所担当者に相談し、判断を仰ぐ     自治体 事業所からの報告をもとに、制度面の調整を定期的に行う 7.資質の向上、支援者の養成 ・支援の質を向上させるため、支援者の養成は積極的に実施したい。そのためには、事業所の独自の努力に頼るのではなく、自治体の積極的な支援のもと、研修会等の開催を行うことが好ましい。 8.周知 ・代筆・代読の支援は、視覚障害者自身も公的な福祉サービスとして支援が受けられることを知らない場合が多い。そのため、自治体や事業所等は積極的な周知を行う必要がある。 ・周知においては、視覚障害者が確認できる方法で、自治体の福祉のしおりやホームページに掲載を行い、定期的な情報提供、視覚障害者への声掛け等を行うことが望ましい。 ・自治体からの情報発信だけでなく、事業所、視覚障害当事者団体、地域の関係機関が一丸となって情報発信を行うことが望ましい。 9.その他 ・実際の代筆・代読支援の支援の様子は、131ページの資料Aが参考になる。 3 視覚障害者のニーズの整理  次に、論点@の効果的な「事業の実施方法」の在り方で示した、具体的な視覚障害者のニーズの整理について、本節で考えてみたい。  まず、視覚障害者のニーズの整理を必要としていたのは、自治体の担当者だった。理由は、要望を受けた際に「代筆・代読で何をしてほしいか」や「どのくらいの必要性があるか」が不明確と考えているからである。また、自治体内で事業の開始に向けた了解作業を行う際に、他部署の担当者、特に障害福祉と離れた担当者への説明において、この視覚障害者のニーズを説明するのが難しいとの意見もあった。つまり、自治体として必要なもののは「整理された視覚障害者のニーズ」だった。  一方で、視覚障害者にそのニーズを問いかけると、その者によって内容の差があることに気付かされる。例えば、支援を受けたい内容はその者によって大きく異なっている。しかし、意見を整理すると、以下の方向性が見えてくる。  @支援の必要性   ・書類等を読むこと、書くことができない者にとっては、この支援がなくてはならない存在となっている。  A支援を受けたい内容   ・日常的に手の届く範囲にあるチラシや申込書等、自身の日常生活において読み書きが必要とされる内容への支援を希望している。  これらを整理すると、本調査では視覚障害者のニーズを言葉として整理するのではなく、可視化できる資料にすることが重要と判断した。そのため、本報告書の概要版として、視覚障害者のニーズ等の整理を行ったリーフレットを作成した。特に、見開きページにおいては、視覚障害者のニーズをまとめた他に、公的な福祉サービスにおける代筆・代読の支援の課題をまとめた。  このリーフレットの活用を通して、代筆・代読支援の必要性を広めていきたい。データ版は本連合のホームページに掲載しているので、是非、活用してほしい。 ●リーフレット、報告書の掲載先 日本視覚障害者団体連合 http://nichimou.org/ 4 効果的な「事業展開」の在り方  最後に、論点Aの効果的な「事業展開」の在り方について、どうしたら意思疎通支援事業「代筆・代読支援」が開始され、どうしたら効果的に利用されるかを考えてみたい。  まず、事業開始のきっかけは、どの自治体も「視覚障害当事者からの要望」であった。特に、次年度より開始予定の自治体の動きを見ると、当事者側からの熱意のある要望に加え、本章第2節で示した「先駆的自治体の代表モデル」と、本章第3節で示した「視覚障害者のニーズ」を同時に情報提供することが効果的だった。また、実際に自治体内で立案作業を進める中では、自治体と地域の視覚障害当事者が協力し合うことも重要だった。  その後、自治体内で立案作業を行う中では、「先駆的自治体の代表モデル」を参考に、地域の実情に応じて制度を立案していくことが求められる。その際、利用者となる地域の視覚障害者の状況を見つつも、事業を実施する地域の同行援護や居宅介護の事業所との調整が重要になる。事業を実施する事業所が上手く稼働することを念頭に、膝を突き合わせた相談と調整が必要となる。  そして、事業を実施する事業所では、支援者の確保と養成が必要になる。支援者は同行援護の従業者、または居宅介護のヘルパーで対応は可能だが、視覚障害者の特性を理解した支援が求められるため、この部分は支援者に対して養成を行いたい。また、実際の支援を行う中では、利用者と支援者が信頼関係が結ばれることが重要である。その上で、事前に「できること/できないこと」を合意することや、不明な点があれば自治体に相談する等、双方で工夫することで支援の円滑化が図られる。  これらの事業展開は、次ページに一覧表としてまとめた。視覚障害当事者、自治体、事業所(支援者)が一体となり、お互いが「協力」「信頼」「相談」で結ばれながら、事業を展開していくことが重要となっている。  そして、未実施の自治体において事業を開始するために最も重要なのは、地域の視覚障害者が支援開始の要望を自治体に挙げることである。そのためには、本報告書の要点をコンパクトにまとめた、第3節のリーフレットを活用してほしい。 【効果的な「事業展開」のイメージ図】 1.行動 (1)視覚障害当事者 ・自治体に対して「代筆・代読支援」の開始を要望する。 ・要望と共に   @先駆的自治体の代表的モデル   A視覚障害者のニーズ  を情報提供することが効果的。 (2)自治体 ・先駆的自治体の代表的モデルを参考にしながら、地域に合った制度を検討する。 ・同行援護や居宅介護の事業所と相談しながら、円滑なサービス提供が可能となる制度を立案する。 (3)事業所(支援者) ・同行援護における代筆・代読の支援方法などを参考にしながら、支援者の確保と養成を行う。 ・代筆・代読の支援で「できること/できないこと」を整理し、視覚障害当事者と合意の上で支援を行う。 2.協力関係 (1)視覚障害当事者と(2)自治体の相互矢印:本音を出し合い、時に協力し合う関係が大切! (2)自治体と(3)事業所(支援者)の相互矢印:困ったことがあれば相談! (3)事業所(支援者)と(1)視覚障害当事者の相互矢印:お互いを信頼しながらサービスを実施する! 125ページ 資料@  利用者のしおり 効果的な支援を実施するために、事業所と利用者で取り交わす書類の一例 【資料について】 ・意思疎通支援事業「代筆・代読支援」を実施している事業所が実際に使用している書類を、本報告書用に編集した上で掲載する。 ・●は該当自治体や事業所の情報が記載される箇所になる。 ・太い罫線は、利用者や事業所が記入を行う箇所になる。  ※注意 テキスト版では★印で記入箇所を示した。 利用者のしおり 代筆・代読支援者派遣事業 (利用者)★以下記入箇所   住 所                   氏 名           印       電 話                 (署名代行者)   住 所                       氏 名           印  続柄       電 話                     令和  年  月  日★ここまで (サービス提供事業者)     事業者名 ●●●●●●●●     代表者名 ●●●●●●●●     所在地 ●●●●●●●●     電話 ●●●●●●●●     FAX ●●●●●●●●     メール ●●●●●●●●    この「利用者のしおり」は、当事業所の利用にあたり、理解していただく必要がある内容を記載しています。  本書を2通作成し、利用者・事業者が各1通ずつ保有するものとします。 1.サービスの内容  当事業所は、●●市●●●●事業の委託を受け、制度の趣旨に基づき代筆・代読支援者派遣事業を実施しています。 (1)業務内容  @公的機関(またはそれに順ずる機関)からの郵送物や資料等の代読  A公的機関(またはそれに順ずる機関)への申請等に対する代筆  B生活上必要不可欠な説明書等の代読  Cその他、上記作業に対して障害者が情報をストックするために必要な支援(資料の整理、テープや録音機器への情報吹き込み、代筆作業の確認 等) (2)業務の対象とならないもの  @小説の代読  A勉強のための資料の代読  B自分の経済活動に関する代筆・代読  Cその他、当事業所では以下の業務は行えません   ・契約締結に関わる署名代筆   ・宗教活動・政治活動に関する内容   ・家庭内の仕事(洗濯や掃除等)に関わる内容 等 2.サービスの支給量  ●●市が決定した決定内容の範囲内でサービスの提供を行います。   1回あたり ●時間上限  月●回まで 3.サービスの利用料金及び利用者負担額 (1)報酬額  開 始〜1時間   ●●●●円  1時間〜2時間   ●●●●円 (2)あなたの利用者負担 ★以下記入箇所   費用区分      円       %   上限額       円★ここまで  ※注意  決定時間を超えた場合には、決定内容における報酬額を実費でいただきます。 4.利用料金の支払い方法  料金・費用は1ヶ月ごとに計算します。利用の翌月にご請求し、集金させていただきます。 5.事業実施区域  ●●市全域 6.営業時間 (1)事業所営業日/受付時間  月曜日〜金曜日 8時30分 〜 17時00分  ※注意 祭日及び12月29日〜1月3日までは除く (2)サービス提供日/提供時間  月曜日〜日曜日 8時30分 〜 17時00分  ※注意 12月29日〜1月3日までは除く 7.申込方法  事業所の担当までご連絡ください。支援者の日程を調整の上、派遣を行います。 8.利用の中止、変更、追加  利用予定日の前に、利用者の都合によりサービス利用を中止又は変更することができます。この場合には、サービスの実施日の前日17時までに事業者に申し出てください。  利用予定日の前日までに申し出がなく、当日になって利用の中止の申し出をされた場合、取消料として以下の料金をお支払いいただく場合があります。  ・利用予定日の前日までに申し出があった場合  無料  ・利用予定日の前日までに申し出がなかった場合 1,000円  ※注意  サービス利用の変更・追加は支援者の稼動状況により利用者が希望する時間にサービス提供ができないことがあります。その場合は、他の利用可能日時を提示する他、他事業所を紹介する等、必要な調整を行います。 9.その他 (1)申請書類の代筆は、説明内容を十分にご理解された上で、申請意思の表明を受けて行う行為です。また、本事業での代筆は、公的機関に提出する申請書等に対して行う事業であり、いわゆる契約(物品売買・財産に関すること等)を締結するための「署名」代行は業務対象外です。 (2)代筆・代読を支援する上で問い合わせが必要な場合、ご自宅の電話・パソコン等を使用させていただきます。 (3)依頼の内容が事業の対象とならない場合、その内容をお断りすることがございます。また、訪問した際、支援者が依頼内容について不明な点があった場合は、事業所に確認をとることがあります。 (4)この業務に付随する郵便物のポスト投函がある場合、派遣時間内であれば対応いたします。なお、市役所等への提出代行は行えません。 (5)この業務を提供する上で知り得た事項を、正当な理由なく他に漏らすことはありません。 10.問い合わせ等  この事業について、ご質問、ご不満やご要望がある場合は下記にお問い合わせください。 (1)サービス提供事業者「●●●●●●●●」  担当者  ●●●●●●●●  電 話  ●●●●●●●●  受付時間 毎週月曜日〜金曜日 8時30分〜17時00分 (2)行政機関受付窓口  担当者  ●●市役所 ●●課 ●●担当  電 話  ●●●●●●●●  受付時間 毎週月曜日〜金曜日 8時45分〜17時15分 以上になります。 131ページ 資料A 代筆・代読支援 支援の様子 【資料について】 ・74ページで紹介をした代筆・代読支援の実演内容を、本報告書用に編集した上で掲載する。 ・●は、自治体名や個人名等が記載されている箇所になる。 【会話における記載内容について】 ・漢字の読み仮名の確認等があった部分     ・読み仮名を「( )」の中に記載した。 ・会話の中で笑い声になった部分     ・会話の最後に「(笑)」と記載した。 ・相手に問いかけをしている部分     ・会話の最後に「?」と記載した。 ・会話に詰まったり、途中で会話が遮られた部分     ・「・・・」と記載した。 ・内容を一部省略した部分     ・「〜省略〜」と記載した。 ・動作に関する説明     ・【 】の中に記載した。 1 郵便で届いたチラシを読む <約10分> (ヘルパー)  本日、代筆・代読をさせていただきます、ヘルパーの●●と申します。本日はよろしくお願いします。 (利用者)  こちらこそ、よろしくお願いします。早速、この封筒の中を読んでいただけませんか。 (ヘルパー)  分かりました。一つ目は、封筒に「●●●市社会福祉協議会」と書いてあります。これはお開けしてよろしいでしょうか。 (利用者)  社協からの郵便でしたか。では、お願いします。 (ヘルパー)  はい、開けさせていただきます。  中には、A4の用紙が入っていて、両面に印刷されています。催しのご案内のようです。では、表面から読まさせていただきます。  まず、「●●●市社会福祉協議会 第7回 健康と福祉のつどい」と書いてあります。右側には、イメージキャラクターの「にちまる君」が描いてあります。四角いロボットのような姿で、ほっぺは赤くて可愛いです。そして「みんなのまちで安心して暮らし続けるために」という表題があり、日時が令和2年2月28日・・・ (利用者)  2月28日ですか? (ヘルパー)  はい、そうです。2月28日の金曜日です。  そして、時間が9時40分からになっております。会場が●●●市民プラザ、弥生会館の3階となっています。入場は無料です。  そして、次の段には「講演@」とあって、会場はホールで、10時から11時30分まで「イキイキ体操で健康寿命を延ばそう」という講演があるそうです。「講演@」は定員200名で、講演のタイトルの下には「明るい毎日を送るための体作り」と書いてあり、右側に講師の先生のお写真があります。 (利用者)  健康は大切だね(笑) (ヘルパー)  そうですね、大切ですよ(笑)  そして、先生のお名前は・・・これはなんて読むんでしょう、なんとかが丘病院・・・ (利用者)  鶯が丘(うぐいすがおか)? (ヘルパー)  あっ、鶯が丘(うぐいすがおか)です。失礼しました。  そして、お話をして下さるのは、鶯が丘病院リハビリテーション所長の●村●平先生です。理学療法士だそうです。 (利用者)  ありがとうございます。大切な部分は点字でメモさせてもらいますね。 (ヘルパー)  どうぞ、メモが必要な部分があれば、聞き返してくださいね。  そして、その下には「講演A」として、会場はホールで、14時30分から15時30分まで「健康のための資産活用」という講演があるそうです。講師は・・・ (利用者)  資産活用?(笑)  健康のためには資産は必要なんだろうな・・・どんな話をするんだろう? (ヘルパー)  参加者には「暮らしの便利帳」をプレゼント!と書いてあります。それ以外は書いてないので、ちょっと分かりません。ただ、資産活用は大切なんでしょうね(笑)  そして、お話をいただく方のお名前は、ABCファイナンシャル営業部の●縣●子(●がた●こ)様だそうです。  この下の左側には「ホール」と書いてあって、全体の予定が書いてあります。9時15分から15時30分の間に、色々な催しがあるようです。  〜省略〜  そして、14時から14時30分が「フラダンス」で、14時30分から15時30分が「講演A」です。先ほどの資産活用ですね。 (利用者)  なるほど・・・ (ヘルパー)  そして、この右隣には「D棟」と書いてあって、12時から15時30分の間に、健康相談や血管年齢測定、骨健康測定・・・ (利用者)  これは興味あるから点字でメモらせてね。 (ヘルパー)  はい、分かりました。では、この部分は詳しく読みましょうか。 (利用者)  お願いします。 (ヘルパー)  D棟では、12時から15時30分で、健康相談、血管年齢測定、骨健康測定、頭の元気度測定があります。血管と骨健康は先着70名、頭の元気度は先着30名と書いてあります。  そして、9時15分から受付で整理券を配布すると書いてあります。この部分は、イメージキャラクターの「にちまる君」が元気に踊りながらコメントしています(笑) (利用者)  ありがとう。これは行きたいから、朝早くに出かけないといけないね。 (ヘルパー)  はい、そうですね。そして、一番下には、主催のことが書いてあり、●●●市社会福祉協議会のことが書いてあります。お問合せ先や電話番号が書いてあります。 (利用者)  その部分は大丈夫です。社協の番号は知っています。 (ヘルパー)  分かりました。ここまでが表面です。裏面は、会場の市民プラザの案内図が書いてあります。 (利用者)  そこは読まなくても大丈夫ですね。市民プラザは行ったことがありますから分かります。 (ヘルパー)  分かりました。では、このチラシはここまでになります。 (利用者)  ありがとうございました。このチラシは、これで大丈夫です。では、次の書類をお願いします・・・ 2 申込書を読みながら記入 <約10分> (ヘルパー)  次は市役所さんの書類で、「●●●市 視覚障害者向け代筆・代読サービス 利用申請書」と書いてあります。どうやら、代筆・代読支援や同行援護等の申込に関する書類のようです。 (利用者)  これは私たちにとっては必要なものだからね・・・ただ、この書類は毎年読んでもらったり、書いてもらったりするのが大変なんですよ。申し訳ないけど、内容を読んでもらいながら、必要なところは記入してもらってもいいですか? (ヘルパー)  はい、大丈夫ですよ。では、読み始めますね。  まず、最初に、申請者のお名前や生年月日、住所と電話番号等の個人情報が既に印刷されています。個人情報なので、お間違えがないか、確認していただいてよろしいでしょうか。 (利用者)  はい、お願いします。読んでいただいて大丈夫です。 (ヘルパー)  では、読みますね。●山三郎、昭和23年1月16日生まれ。間違えないですか。 (利用者)  はい、大丈夫です。間違えないです。 (ヘルパー)  ありがとうございます。この下には、住所や電話番号、障害支援区分が印刷されています。順番に読んでいきますね。 (利用者)  はい、ここは詳しく、ゆっくりと読み上げてください。 (ヘルパー)  分かりました・・・  〜省略〜 (ヘルパー)  印刷されている内容は以上です。 (利用者)  ありがとうございました。私の内容が間違えなく記入されていました。 (ヘルパー)  そして、この下には「申込内容」とあり、希望するサービスにチェックを入れる箇所になります。内容は「代筆・代読支援」「同行援護」「居宅介護」「対面朗読」「その他」となっています。最後の「その他」は、その内容を記入する場所もあります。  今回は、どの内容にチェックを入れますか。 (利用者)  これは、代筆・代読に関するものだから、「代筆・代読支援」に記入をお願いします。同行援護も頼んでいるけど、これは他の申請書で書いた記憶があります。 (ヘルパー)  分かりました。では「代筆・代読支援」の左にあるチェックボックスにレ点を記入しますね。  もし、同行援護のことが不安であれば、市役所の担当の方に確認してくださいね。  そして、この下には「上記内容を申請いたします。」と書いてあって、記入欄があります。 (利用者)  あっ、たぶん、認めの名前等を書いて、印鑑を押すところですよね? (ヘルパー)  はい、そうです。では、読みながら必要な場所には記入させていただきますね。まず、記入日を書くところです。ここは今日の日付を書いてもよろしいでしょうか? (利用者)  はい、お願いします。 (ヘルパー)  では、書きますね・・・次は、名前の記入になっています。ここはお名前を書いてもよろしいでしょうか。 (利用者)  はい、お願いします。 (ヘルパー)  では、お名前を書きますね。●の「●」、富士山の「山」、漢数字の「三」、太郎や次郎の「郎」です。「郎」は右側が月ではなく、おおざとの方でよろしいでしょうか。 (利用者)  はい、そうです。 (ヘルパー)  では、書きます・・・次に印鑑です。印鑑をお借りできますか? (利用者)  はい、では、この印鑑でお願いします。 【利用者:印鑑を手渡してヘルパーの方に差し出す】 【ヘルパー:利用者の印鑑を受け取る】 (ヘルパー)  ありがとうございます。では、押しますね。  はい、押しました。印鑑をお返しします。手を失礼します。 【ヘルパー:利用者の手に印鑑を置くように渡す】 【利用者:印鑑を受け取ったことを確認する】 (利用者)  ありがとうございます。印鑑を受け取りましたよ。  では、次をお願いします。 (ヘルパー)  次は、個人番号を記入する欄があります。ここは私ではちょっと書けません。 (利用者)  はい、そうですよね。分かっています。書類を持っていった時に役所の方に書いてもらうか、子供が近々帰ってくる日があるので、その時にでも書いてもらいます。 (ヘルパー)  ありがとうございます。  では、これで以上です。残りの必要な部分を書いていただければ、市役所に提出できると思います。 (利用者)  ありがとうございます。大変助かりました。 (ヘルパー)  では、大切な書類なので、封筒にいれてお返ししますね。 【ヘルパー:封筒に入れて、利用者の手に渡す】 【利用者:封筒を受け取る】 (利用者)  確かに受け取りました。これは大切な書類だから、封筒に点字でメモをしておこう。大変助かりました。 141ページ 資料B  書面調査 調査票 ※本章は、参考資料のため、割愛をしました。予めご了承ください。 裏表紙 【発行】               社会福祉法人日本視覚障害者団体連合(旧 日本盲人会連合)  〒169−8664       東京都新宿区西早稲田2−18−2 TEL 03−3200−0011 FAX 03−3200−7755