令和2年2月25日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 平成28年(行ウ)第187号(第1事件)、同第188号(第2事件) 各非認定処分取消請求事件 口頭弁論終結日 令和元年10月11日 判 決 大阪市北区豊崎7丁目7番17号 原告 学校法人平成医療学園 同代表者理事長 岸野 雅方  東京都千代田区霞が関1丁目1番1号 被告 国 主 文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 第1事件    厚生労働大臣が平成28年2月5日付けで原告に対してした、平成医療学園専門学校(以下「本件専門学校」という。)に係るあん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師(以下、併せて「あはき師」ともいう。)の養成施設の認定申請については、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和22年法律第217号。以下「法」という。)附則19条1項の規定(以下「本件規定」という。)により認定しない旨の処分を取り消す。 2 第2事件  文部科学大臣が平成28年1月29日付けで原告に対してした、宝塚医療大学保健医療学部鍼灸学科(以下「本件学科」という。)に係るあはき師の学校の認定申請については、本件規定により認定をしない旨の処分を取り消す。 第2 事案の概要  本件は、学校法人である原告が、(ア)法2条2項に基づき、@厚生労働大臣に対し、原告の設置する本件専門学校につき、あん摩マッサージ指圧師に係る養成施設についての同条1項の認定申請を、A文部科学大臣に対し、原告の設置する宝塚医療大学の本件学科につき、あん摩マッサージ指圧師に係る学校についての同項の認定申請をそれぞれしたところ、(イ)いずれも、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするため必要があると認められるとして、本件規定に基づき、前記各認定をしない旨の各処分(以下、前記@の認定申請に対するものを「本件第1処分」(第1事件関係)と、前記Aの認定申請に対するものを「本件第2処分」(第2事件関係)といい、これらを併せて「本件各処分」という。)を受けたことから、(ウ)(a)本件規定が曖昧、不明確な文言により学校又は養成施設を新設しようとする者等の職業選択の自由を害するものであり、憲法22条1項等に反し無効であるとともに、(b)本件規定を曖昧、不明確な基準に基づいて適用して本件各処分をしたことが原告の職業選択の自由を侵害し、前記新設を認めた他事例と異なる扱いをするものであり、憲法22条1項等に反するものであるから、本件各処分が違法である旨主張して、本件各処分の取消しを求める事案である。 1 法の定め (1)免許の付与 ア 医師以外の者で、あん摩、マッサージ若しくは指圧、はり又はきゅうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マッサージ指圧師免許、はり師免許又はきゅう師に免許(以下「免許」という。)を受けなければならない(1条)。 イ 免許は、学校教育法90条1項の規定により大学に入学することのできる者で、3年以上、文部科学省令・厚生労働省令で定める基準に適合するものとして、文部科学大臣の認定した学校又は次の各号に掲げる者の認定した当該各号に定める養成施設においてあん摩マッサージ指圧師、はり師又はきゅう師となるのに必要な知識及び技能を修得したものであって、厚生労働大臣の行うあん摩マッサージ指圧師国家試験、はり師国家試験又はきゅう師国家試験に合格した者に対して、厚生労働大臣が、これを与える(2条1項)。 1号 厚生労働大臣 あん摩マッサージ指圧師の養成施設、あん摩マッサージ指圧師及びはり師の養成施設、あん摩マッサージ指圧師及びきゅう師の養成施設又はあん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師(あはき師)の養成施設 2号 都道府県知事 はり師の養成施設、きゅう師の養成施設又ははり師及びきゅう師の養成施設 (2)法2条1項の認定等 ア 法2条1項の認定を申請するには、申請書に、教育課程、生徒の定員その他文部科学省令・厚生労働省令で定める事項を記載した事項を添付して、文部科学省令・厚生労働省令の定めるところにより、これを文部科学大臣、厚生労働大臣又は養成施設の所在地の都道府県知事に提出しなければならない(同条2項)。 イ 法2条1項の学校又は養成施設の設置者は、同条2項に規定する事項のうち教育課程、生徒の定員その他文部科学省令・厚生労働省令で定める事項を変更しようとするときは、文部科学省令・厚生労働省令の定めるところにより、あらかじめ、文部科学大臣、厚生労働大臣又は前記アの都道府県知事の承認を受けなければならない(同条3項)。 ウ 当分の間、文部科学大臣又は厚生労働大臣(以下併せて「文部科学大臣等」ともいう。)は、あん摩マッサージ指圧師の総数のうちに視覚障害者(文部科学省令・厚生労働省令で定める程度の著しい視覚障害のある者をいう(附則18条の2第1項参照)。以下同じ。)以外の者が占める割合(以下「有資格者中割合」ともいう。)、あん摩マッサージ指圧師に係る学校又は養成施設において教育し、又は養成している生徒の総数のうちに視覚障害者以外の者が占める割合(以下「生徒中割合」ともいう。)、その他の事情を勘案して、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするため必要があると認めるときは、あん摩マッサージ指圧師に係る学校又は養成施設で視覚障害者以外の者を教育し、又は養成するもの(以下「晴眼者対象学校等」という。)についての法2条1項の認定又はその生徒の定員の増加についての同条3項の承認をしないことができる(附則19条1項(本件規定))。 エ 文部科学大臣等は、附則19条1項の規定(本件規定)により認定又は承認をしない処分をしようとするときは、あらかじめ、医道審議会の意見を聴かなければならない(同条2項)。 オ なお、附則19条1項(本件規定)及び2項は、昭和39年法律第120号による法の改正により定められた規定である(以下、同改正を「昭和39年改正」という。)。 2 前提事実(争いのない事実、顕著な事実並びに掲記の証拠(枝番の存するものは特記がない限り全枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) (1)原告 原告は、教育基本法及び学校教育法に従い、学校教育を行い、社会に貢献する有徳の人材を育成することを目的とする学校法人であり、この目的を達成するため、宝塚医療大学及び平成医療学園専門学校(本件専門学校)等を設置している。 (2)本件第1処分に至る経緯等 ア 原告は、平成27年9月29日付けで、大阪府知事を通じて、厚生労働大臣に対し、本件専門学校につき、あん摩マッサージ指圧師に係る養成施設で視覚障害者以外の者を養成するものについての法2条1項の認定申請をした。(乙9〜11)  前記認定申請は、大阪府下に所在する本件専門学校に、視覚障害者以外の者を対象としたあん摩マッサージ指圧鍼灸師科(修業年限4年(夜間)、1学年定員30名)を平成28年4月1日付けで新設することを内容とするものであった。(乙9) イ 大阪府知事は、平成27年11月27日付けで、近畿厚生局長に対し、関係団体の意見書を添えた前記アの申請に係る大阪府知事意見書を提出し、同意見書は、厚生労働大臣へ送付された。(乙12) ウ 厚生労働大臣は、平成27年12月18日付けで、行政手続法10条に基づき、関連する公益法人等に対し、前記アの申請に関する意見書の提出を依頼したところ、いずれの公益法人等からも、同申請には反対する旨の意見書が出された。(乙13、14) エ 厚生労働大臣は、平成28年1月4日付けで、医道審議会に対し、前記アの申請について、本件規定により認定しないことについて、法附則19条2項に基づき、意見を求めたところ、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持を著しく困難とならないようにするために必要があると認められるから、同申請に係る養成施設の認定をすべきではない旨の答申を受けた。(乙15〜17) オ 厚生労働大臣は、平成28年2月5日付けで、本件規定に基づき、前記アの申請に係る養成施設の認定をしない旨の処分(本件第1処分)をし、その旨を原告に通知した。(甲1) (3)本件第2処分に至る経緯等 ア 原告は、平成27年10月29日付けで、兵庫県知事を通じて、文部科学大臣に対し、本件学科につき、あん摩マッサージ指圧師に係る学校で視覚障害者以外の者を教育するものについての法2条1項の認定申請をした。(乙23、24)  前記認定申請は、兵庫県下に所在する宝塚医療大学の本件学科(修業年限4年(昼間)、1学年定員60名)において、平成28年4月1日から新たにあん摩マッサージ指圧師の養成を行うことを内容とするものであり、本件学科の入学者は、視覚障害者に限ることとはされていない。(乙23) イ 兵庫県知事は、平成27年12月18日付けで、文部科学大臣に対し、前記アの申請に係る兵庫県知事意見書を提出した。(乙25) ウ 文部科学大臣は、平成27年12月22日付けで、行政手続法10条に基づき、関連する公益法人等に対し、前記アの申請に関する意見書の提出を依頼したところ、いずれの公益法人等からも、同申請には反対する旨の意見書が提出された。(乙26、27) エ 文部科学大臣は、平成28年1月15日付けで、医道審議会に対し、前記アの申請について、本件規定により認定しないことについて、法附則19条2項に基づき、意見を求めたところ、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持を著しく困難とならないようにするため必要があると認められるから、同申請に係る学校の認定をすべきではない旨の答申を受けた。(乙28、29) オ 文部科学大臣は、平成28年1月29日付けで、本件規定に基づき、前記アの申請に係る学校の認定をしない旨の処分(本件第2処分)をした。(甲2) (4)本件訴えの提起等(顕著な事実)  原告は、平成28年7月15日、本件第1処分及び本件第2処分(本件各処分)の取消しを求める訴えをそれぞれ提起し(第1事件及び第2事件)、同年9月9日、両事件の口頭弁論は併合された。 3 争点 (1)本件規定が憲法22条1項に反し無効であるか否か(争点1) (2)本件規定が憲法31条・13条に反し無効であるか否か(争点2) (3)本件規定を適用して本件各処分をしたことが憲法22条1項等に反し違法であるか否か(争点3) 4 争点に関する当事者の主張の要旨 (1)争点1(本件規定が憲法22条1項に反し無効であるか否か) (原告の主張の要旨) ア 判断枠組み  本件規定は、晴眼者対象学校等の新設及びその生徒の定員の増加(以下「新設等」という。)を規制するものであるから、晴眼者対象学校等の新設等をしようとする者や、晴眼者対象学校等においてあん摩マッサージ指圧師となるのに必要な知識及び技能を修得してその免許を受けようとする視覚障害者以外の者のいわゆる狭義の職業選択の自由(憲法22条1項)という重要な権利を侵害するものである。  そして、本件規定は、本件と同様に職業選択の自由を事前規制する法令の合憲性が争われた最高裁昭和45年(あ)第23号同47年11月22日大法廷判決・刑集26巻9号586頁(以下「最高裁昭和47年判決」という。)や最高裁昭和43年(行ツ)第120号同50年4月30日大法廷判決・民集29巻4号572頁(以下「最高裁昭和50年判決」という。)の各事例とは異なり、晴眼者対象学校等の新設等をしようとする者の努力等によっては克服可能なものではない客観的な条件により晴眼者対象学校等の新設等を事前に規制するものである上に、いかなる条件を満たせば晴眼者対象学校等の新設等が認められるのかの基準が曖昧、不明確であることからすると、より厳密に目的と手段の関連性が審査されなければならない。  さらに、@障害者に関係する法律・政策は、近時、障害者が社会生活を送る上で国家の保護を必要とする他者依存的な存在であるという考え方から、障害者への合理的配慮を通じて障害者と非障害者があらゆる場面で同等の条件で競争することができるようにすることを目指すものとなっており、視覚障害者に関しても、あん摩マッサージ指圧師業が最適であるという考えの下でこれを独占させるのではなく、視覚障害者が可能な限りの職業に従事することが可能となるように条件等を整えることが求められていることや、A昭和39年改正においては、本件規定の憲法適合性について何らの検討がされた様子もうかがわれないこと等も、その違憲審査に当たり、十分考慮しなければならない。  以上を踏まえると、本件規定の違憲審査に当たっては、立法目的と手段の関係性について厳格に解されなければならず、具体的には、立法目的に正当性があること、手段が目的を達成するために必要であること、手段に目的達成のための合理性があることの各要件を満たす必要があるというべきである。 イ 立法目的の正当性 (ア)法は、1条に掲げる者(あん摩マッサージ指圧師免許(なお、昭和39年改正前は、あん摩師免許)等を受けた者)以外の者が医業類似行為を行うことを禁止する(12条)一方、法の公布(昭和22年)の際、引き続き3箇月以上医業類似行為を業としていた者であって、法施行の日から3箇月以内に所定の届出をしたものは、同条の規定にかかわらず、なお、一定期間に限定して、当該医業類似行為を業とすることを許容する旨の特例措置を定めていたところ、当該期間限定を撤廃し、当該者に限って無期限で当該医業類似行為を業とすることを許容する旨の法の改正(昭和39年改正の内容の一つ)を行うに当たり、この改正に異議を唱えていた視覚障害者に対する融和策として、晴眼者対象学校等の新設等を規制する本件規定を設けることとしたものであることから、本件規定にいう「当分の間」とは、前記改正後の特例措置の対象者が高齢、死去等により当該医業類似行為を業とすることがなくなるまでの間と解すべきである。  そうすると、昭和39年改正から50年以上も経過した本件各処分時において、「当分の間」が経過したものであることは明らかであって、本件規定の目的の正当性は失われている。 (イ)仮に、「当分の間」とは、当時の厚生省の担当者解説(乙38)のとおり、視覚障害者にあん摩マッサージ指圧師以外の適職が見いだされるか、視覚障害者に対する所得保障等の福祉対策が十分行われるか、又は視覚障害者がその生計の維持をあん摩マッサージ指圧師関係業務に依存する必要がなくなるまでの間、と解すべきであるとしても、昭和39年改正から50年以上経過する中で、次のとおりの変化があったこと等からすれば、当初の立法目的の正当性は失われていると解すべきである。 a まず、障害者の経済状況の変化についてみると、昭和61年の国民年金法等の改正により、保険料の無拠出者に対しても、その拠出者と同額の障害年金が支給されることとなり、障害等級1級又は2級のいわゆる重度障害者の生計を支えるとともに、国や自治体からも特別障害者手当や福祉手当が毎月支給されるほか、様々な税金等の優遇措置やサービスを受けることができるようになっている。 b 次に、視覚障害者を巡る社会事情の変化等についてみると、前記アのとおり、障害者に関係する法律・政策は、近時、障害者が社会生活を送る上で国家の保護を必要とする他者依存的な存在であるという考え方から、障害者への合理的配慮を通じて障害者と非障害者があらゆる場面で同等の条件で競争することができるようにすることを目指すものとなっている。 c そして、視覚障害者のあん摩マッサージ指圧師業への依存の程度の変化等についてみると、平成25年4月に施行された障害者の目常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(以下「障害者総合支援法」という。)においては、障害者の就労促進のため、就労移行支援や就労継続支援のサービスが開始され、視覚障害者についてみても、これを対象とする資格試験の導入等が進むなど、視覚障害者の雇用環鏡や福祉環境は改善し、適職は飛躍的に拡大している。しかも、昭和39年改正以降、眼科治療の進化により、就学期の視覚障害者は減少し、盲学校・視覚障害者特別支援学校の高等部の生徒総数やそのうちあん摩マッサージ指圧師の免許を受けるために必要な課程である学科の生徒数が占める割合が減少しており、事務的職業への就業が増えていること等からすれば、前記依存の程度は低下している。 (ウ)被告は、平成28年度に厚生労働科学特別研究事業として実施されたあん摩マッサージ指圧の受療状況と当該施術所の実態に関する調査研究(乙89。以下「平成28年度調査研究」という。)を基に、立法目的の正当性は本件各処分時においても失われていない旨主張するが、平成28年度調査研究は、本件規定を支持する立場の研究者が、被告の補助金により実施したもので、中立的な立場に基づく研究ではない上に、調査対象は、あん摩師の資格を有しない者が含まれ、あん摩師個人ではなく業者に対してされ、アンケートの回収率は30%を切るなど、標本数が乏しく、その手法も、科学的信頼性、信用性を欠き、調査方法を誤るものになっており、前記正当性を根拠付けるものとはなっていない。 ウ 手段が目的を達成するために必要であるか (ア)視覚障害者の生計の維持という目的を達成するために、本件規定に基つく規制(晴眼者対象学校等の新設等の規制)という手段が必要であるというためには、当該手段に相応の実効性があるといえなければならないところ、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の収入の多寡は、あん摩マッサージ指圧師全体に対する需要の増減に比例するのであって、視覚障害者以外の者であるあん摩マッサージ指圧師の人数の増減とは相関関係がないため、前記手段が目的達成の上で実効性を有しているものということはできない。 (イ)むしろ、視覚障害者の職域を最も脅かす原因は、視覚障害者以外の者であるあん摩マッサージ指圧師ではなく、圧倒的な数の無資格のマッサージ師の急増等によるものであり、とりわけ、大阪府、兵庫県等においては、療術・リラクゼーション店舗数があん摩施術所数を上回っており、特に大阪府、兵庫県はその差が大きいところ、これらの取締りを徹底することこそが重要であって、かえって、本件規定の存在自体により、無資格のマッサージ師の急増等を招いているということができることからすると、本件規定は、視覚障害者の生計の維持という目的達成のためには不必要であり、有害であるとすらいえる。 エ 手段に目的達成のための合理性があるか (ア)手段自体の合理性 a 前記ウのとおり、視覚障害者の生計の維持という目的と、晴眼者対象学校等の新設等を規制する手段との間には、そもそも、合理的な関連性が認められるような立法事実は存在しない。 b また、本件規定が規定されてから50年以が経過したにもかかわらず、視覚障害者の生計の維持が困難であることが継続しているとすれば、本件規定には実効性がなく、視覚障害者が受ける利益が乏しいと考えられる一方、@晴眼者対象学校等の新設等をしようとする者や、晴眼者対象学校等においてあん摩マッサージ指圧師となるのに必要な知識及び技能を修得してその免許を受けようとする視覚障害者以外の者に与える不利益が大きいこと、A晴眼者対象学校等の減少はあん摩マッサージ指圧師の減少を意味し、職としての魅力を失わせるものであること、B障害者の中でも視覚障害者だけを優遇するもので、他の障害者との間で差別を生じさせるとともに、既に晴眼者対象学校等を新設等していた者とそうでない者との間でも差別を生じさせるものであることからすると、本件規定の存在による不利益が大きく、手段の合理性は乏しい。 c そして、視覚障害者の生計の維持という目的の達成のためにとって重要なことは、視覚障害者が職業的に自立することや資質向上が果たされるような環境が整えられることであり、台湾においても、同様の規制について違憲判決がされた後、視覚障害者以外の者の参入を制限する政策から視覚障害者があん摩マッサージ指圧師やその他の職業として働く場を確保する政策に転換して成功していることを踏まえても、視覚障害者が職業的に自立するような政策・立法を行うことにより、前記目的をより良く達成することが可能である。 (イ)本件規定の内容の合理性 a @あん摩マッサージ指圧師の総数のうちに視覚障害者以外の者が占める割合(有資格者中割合)が増加したとしても、あん摩マッサージ指圧師全体に対する需要が増加したならば、増加した視覚障害者以外の者であるあん摩マッサージ指圧師の職域は需要増加分に吸収されるため、必ずしも視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の職域を侵すことにはならないし、A有資格者中割合は、視覚障害者以外の者であるあん摩マッサージ指圧師の数の増加のみならず、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の数の減少によっても増加するところ、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の数の減少は、高齢や死亡による廃業、国家試験の合格率の低下等、様々な要因によって生じ得るため、有資格者中割合が増加したとしても、必ずしも視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の職域を侵すことにはならず、Bむしろ、視覚障害者の職域を最も脅かす原因は、視覚障害者以外の者であるあん摩マッサージ指圧師ではなく、圧倒的な数の無資格のマッサージ師の急増等によるものであることからすると、有資格者中割合の増加と視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の「生計の維持」が脅かされることとの間には関連性がないため、本件規定が有資格者中割合を考慮要素としたことは不合理である。  また、本件規定のうち、あん摩マッサージ指圧師に係る学校又は養成施設において教育し、又は養成している生徒の総数のうちに視覚障害者以外の者が占める割合(生徒中割合)を考慮要素とする点は、生徒中割合が増加すれば、有資格者中割合が増加し、これにより、視覚障害者の職域が侵され、ひいてはその「生計の維持」が脅かされることを前提とするものであるところ、その前提は前記のとおり誤っているから、本件規定が生徒中割合を考慮要素としたことは不合理である。 b また、本件規定は、視覚障害者以外のあん摩マッサージ指圧師の参入を全国一律で規制するものであるところ、地域別にみると、あん摩マッサージ指圧師に占める視覚障害者以外の者の割合が視覚障害者の割合より多い地域と少ない地域がある上に、マッサージに対する需要があん摩マッサージ指圧師以外の業者(無資格者によるものを含む。)に流れている程度にも地域差があること等からすれば、視覚障害者のであるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持の確保のためには、地域ごとの実情に応じ、特にその生計の維持の確保に影響が及ぶ地域においてのみ、施術所の開設を規制するなどの必要な規制をすれば足りるのであって、全国一律に本件規定に基づく許可制を採用することは合理性を欠く。 オ 以上のとおり、本件規定は、目的に正当性があること、手段が目的を達成するために必要であること、手段に目的達成のための合理性があることのいずれの要件を満たさず、憲法22条1項に反し無効である。 (被告の主張の要旨) ア 判断枠組み  本件規定は、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の職域優先を図るという積極的な社会経済政策の実施を目的として、晴眼者対象学校等の新設等を規制することを定めた規定である。そして、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の職域を優先し、その生計の維持が著しく困難とならないようにするため、どのような法的規制措置を講ずることが必要かつ合理的であるかについては、わが国における視覚障害者の人数及び雇用環境、あん摩マッサージ指圧師の人数及び就業状況並びに視覚障害に関する医療の状況等、多方面にわたる複雑多様な事項に関して、現在のみならずその将来予測も踏まえた高度の専門技術的な考察とそれに基づく政策的判断を必要とするものであることからすれば、前記の目的を達成するため、どのような法的規制措置を講ずるかの選択決定は、その性質上、立法府の広範な裁量に委ねられるべきものである。  そうすると、本件規定が憲法22条1項に反して無効であるか否かは、いわゆる明白性の基準、すなわち、立法府がその裁量権を逸脱し、当該法的規制措置が著しく不合理であることが明白であると認められるか否かという基準によって判断されるべきである。 イ 立法目的の正当性  視覚障害者は、その障害のため、法令上、選択できる職業が限られている。また、事実上就業が不可能である者や、就職が困難な者や、就職してもその就業が継続できない者は相当数に及んでいる。障害者の福祉等に関する法令の整備が進められ、視覚障害者の雇用の状況等に一部変化が見られる現在においても、視覚障害者の就業率は低水準で、視覚障害者の多くがあん摩マッサージ指圧師の業務に依存するも、収入が低水準であり、平成28年度調査研究においても、このような状況が確認されている。  以上のことに、視覚障害者は、その障害のために転業が容易でないことも併せ考慮すれば、現在においても、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の職域を優先し、その生計の維持が著しく困難とならないようにする必要があることは明らかである。 ウ 原告の職業選択の自由に対する制限の程度等について (ア)前記イのとおり、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の職域を優先し、その生計の維持が著しく困難とならないようにする必要があるところ、晴眼者対象学校等の新設等を規制する規定を設けない場合、あん摩マッサージ指圧師の総数が著しく増大するとともに同総数のうちに視覚障害者以外の者が占める割合も著しく増大することとなる結果、過当競争による顧客の減少や施術単価の減少等を招くなどし、視覚障害者の生計の維持が著しく困難になることが十分考えられる。そして、前記イの視覚障害者の実情をも踏まえると、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の職域を優先し、その生計の維持が著しく困難とならないようにするためには、現在においても、晴眼者対象学校等の新設等を規制することを可能とする法的措置を設ける必要がある。 (イ)本件規定は、学校法人等が晴眼者対象学校等の新設等をしようとすること自体を全面的に制限するようなものではなく、晴眼者対象学校等の新設等という限られた場面において、本件規定所定の諸般の事情を勘案して、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計が著しく困難とならないようにするために必要があると認めるときに、新設等を許可しないことができる旨規定し、晴眼者対象学校等の新設等を規制する場面は、視覚障害者の限られた職域の中でも特に重要なあん摩マッサージ指圧師の職域を優先し、過当競争によりその生計の維持が著しく困難とならないようにするために必要な範囲に限定されており、本件規定の要件を満たさない場合であっても、一律に新設等を許可しないこととするものでもない。  このように、本件規定は、晴眼者対象学校等の新設等をしようとする者の職業選択の自由に対する制限の程度として大きいものではない。 (ウ)本件規定による職業選択の自由の制限は、永続的なものではなく、「当分の間」という時間的な制限が規定されている。「当分の間」とは、視覚障害者に関し、あん摩マッサージ指圧師以外の適職が見いだされるか、又は視覚障害者に対する所得保障等の福祉対策が十分行われるか、いずれにしても視覚障害者がその生計の維持をあん摩関係業務に依存する必要がなくなるまでの間をいうものと解すべきであり、前記イの立法目的に必要な期間に限定されている。  原告は、「当分の間」とは、医業類似行為の禁止を猶予された者が高齢、死去等により業を行わなくなるまでの間を指すものであり、昭和39年改正から50年以上経過した現在、当分の間は既に経過した旨主張するが、前記イの視覚障害者の実情等を踏まえてされた昭和39年改正の経緯等にそぐわない。 (エ)さらに、法附則19条2項は、文部科学大臣等が本件規定により認定等をしない処分をしようとするときには、あらかじめ、医道審議会の意見を聴かなければならない旨規定しており、同処分の慎重を期するための手続的な担保が設けられている。 (オ)小括  以上のとおり、本件規定による原告の職業選択の自由に対する制限は、現在においても、その立法目的を達成するために必要かつ合理的な範囲にとどまっていることが明らかである。 エ 以上によれば、本件規定による法的措置は、立法府がその裁量権を逸脱し、当該法的規制措置が著しく不合理であることが明白である場合には該当せず、憲法22条1項に反しない。  なお、原告は、晴眼者対象学校等の新設等をしようとする学校法人であり、自らあん摩マッサージ指圧師免許を受けようとする視覚障害者以外の者ではなく、当該者の職業選択の自由に対する侵害を理由として本件規定が無効である旨をいう原告の主張は、原告の法律上の利益に関係のない違法を理由として本件各処分の取消しを求めるものであって、行政事件訴訟法10条1項に反し失当というべきである。 (2)争点2(本件規定が憲法31条・13条に反し無効であるか否か) (原告の主張の要旨)  憲法31条・13条は、許認可に係る行政手続について、当該許認可の基準の明確性を要求するものであるところ、本件規定は、これに基づき認定又は承認をしない場合の要件が極めて曖昧、不明確であり、いかなる場合に当該認定又は承認をしないこととなるのかを全く読み取ることができず、しかも、当該認定又は承認をするか否かは文部科学大臣等の裁量に委ねているのであるから、憲法31条・13条に反し無効である。 (被告の主張の要旨)  漠然不明確な法文の規制立法が憲法に違反するとの理論(明確性の理論)は、表現の自由等の精神的自由を規制する法律に関してのものであり、職業選択の自由、営業の自由等の経済的自由を規制する法律には適用されないというべきである。また、法附則19条2項では、認定又は承認をしない処分をしようとするときはあらかじめ医道審議会の意見を聴かなければならないと定めているところに照らすと、恣意的な運用がされないことが制度上担保されている。  したがって、本件規定が憲法31条・13条によって保障される適正な手続的処遇を受ける権利を侵害する旨の原告の主張は、失当というべきである。 (3)争点3(本件規定を適用して本件各処分をしたことが憲法22条1項等に反し違法であるか否か) (原告の主張の要旨) ア 本件規定自体が合憲であったとしても、本件各処分が憲法上の重要な権利である職業選択の自由を侵害するものである以上、本作規定の適用基準は明確でなければならないところ、どのような基準の下に本件規定が適用されて本件各処分がされたのかが曖昧、不明確であるから、本件各処分は、憲法22条1項、31条・13条に反し違法である。 イ 当時の厚生大臣は、昭和57年、愛知県下に所在する学校法人葛谷学園中和鍼灸専門学校がしたその設置する視覚障害者以外の者を対象とした医療専門課程あん摩・はり・きゅう科(修業年限3年(昼間)、1学年定員20名)の1学年定員を30名に増加させることを内容とする申請を承認(以下「昭和57年承認」という。)しているところ、本件各処分と結論を異にした理由は明らかでなく、本件規定を適用した本件各処分は憲法22条1項、14条1項に反し違法である。 (被告の主張の要旨) ア 憲法22条1項、31条・13条違反の主張について  原告の主張の実質は、本件規定が不明確であるから違憲であるという法令違憲の主張にほかならないところ、かかる主張に理由がないことは前記(2)の被告の主張の要旨において主張したとおりである。 イ 憲法22条1項、14条1項違反の主張について  本件規定については、承認・不承認に係る要件・効果のいずれについても、処分権者たる厚生労働大臣及び文部科学大臣に広範な裁量を与える立法政策が採用されていることは既に主張したとおりであって、本件規定に係る承認・不承認については、法自体が、個別事案ごとの取扱いの相違を当然に予定しているのであるから、本件各処分が昭和57年承認と承認・不承認に係る取扱を異にしたからといって、憲法14条1項に違反しない。  そして、昭和57年承認と本件各処分がされた各時点においては、当然にあはき師業を取り巻く社会・経済情勢等が異なる以上、承認・不承認に係る政策判断が異なり得ることは明らかであって、昭和57年承認がされた案件については、医道審議会が、認めて差し支えない旨答申したのに対し、本件各処分に係る案件ついては、認定すべきでない旨答申がされていたのであるから、各案件について合理的に取り扱われていたというべきであって、憲法22条1項、14条1項に反しない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(本件規定が憲法22条1項に反し無効であるか否か)について (1)判断枠組み ア 憲法22条1項は、狭義における職業選択の自由のみならず、職業活動の自由の保障をも包含しているものと解すべきであるが、職業の自由は、それ以外の憲法の保障する自由、殊にいわゆる精神的自由に比較して、公権力による規制の要請が強く、同項も、特に「公共の福祉に反しない限り」という留保を付している。しかし、職業の自由に対する規制措置は事情に応じて各種各様の形をとるため、その同項適合性を一律に論することはできず、具体的な規制措置について、規制の目的、必要性、内容、これによって制限される職業の自由の性質、内容及び制限の程度を検討し、これらを比較考量した上で慎重に決定されなければならない。そして、一般に許可制は、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業選択の自由そのものに制約を課するもので、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定し得るためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要するものというべきである(最高裁昭和50年判決、最高裁昭和63年(行ツ)第56号平成4年12月15日第三小法廷判決・民集46巻9号2829頁参照)。 イ ところで、憲法が、全体として、福祉国家的理想の下に、社会経済の均衡のとれた調和的発展を企図しており、その見地から、全ての国民にいわゆる生存権を保障し、その一環として、国民の勤労権を保障するなど、経済的劣位に立つ者に対する適切な保護政策を要請していることは明らかであること等に鑑みると、憲法は、国の責務として積極的な社会経済政策の実施を予定しているものということができ、個人の経済活動の自由に関する限り、個人の精神的自由等に関する場合と異なって、前記社会経済政策の実施の一手段として、これに一定の合理的規制措置を講ずることを予定し、かつ、許容するものと解するのが相当である。そして、国は、積極的に、国民経済の健全な発達と国民生活の安定を期し、もって社会経済全体の均衡のとれた調和的発展を図るために、立法により、個人の経済活動に対し、一定の規制措置を講ずることも、それが前記目的達成のために必要かつ合理的な範囲にとどまる限り、許されるところ、社会経済の分野において、法的規制措置の必要の有無や法的規制措置の対象、手段、態様等を判断するに当たっては、その対象となる社会経済の実態についての正確な基礎資料が必要であり、具体的な法的規制措置が現実の社会経済にどのような影響を及ぼすか、その利害得失を洞察するとともに、広く社会経済政策全体との調和を考慮するなど、相互に関連する諸条件についての適正な評価と判断が必要であって、このような評価と判断の機能は、正に立法府の使命とするところであることに鑑みると、社会経済政策上の積極的な目的のための個人の経済活動に対する法的規制措置については、立法府の政策的技術的な裁量に委ねるほかはなく、裁判所は、基本的には、立法府の前記載量的判断を尊重せざるを得ず、ただ、当該法的規制措置が当該目的達成のために必要かつ合理的な範囲にとどまるとの立法府の判断が、その裁量権の範囲を逸脱し、当該法的規制措置が著しく不合理である場合に限って、これを違憲として、その効力を否定することができるものと解するのが相当である(最高裁昭和47年判決参照)。 (2)認定事実  前記前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 ア 昭和39年改正前の国会におけるあん摩業に係る議論等  あん摩業は、古くから視覚障害者にとって最も適当な職業であるといわれてきたが、視覚障害者以外のあん摩師の増加、免許を有しない者の横行、交通量の増大に伴う出張施術の困難さを背景に、視覚障害者であるあん摩師がそれ以外のあん摩師によりその職域を圧迫されているとの問題意識が持たれるようになり、国会においても、次のとおり、同様の問題意識からの質問、指摘等が繰り返される状況であった。(乙38) (ア)昭和27年12月22日、法等の一部を改正する法律案の審議の過程で開催された第15回国会衆議院厚生委員会において、委員から、視覚障害者がそれ以外の者に職を漸次奪われていくような情勢にある中で、経済的に事情の悪い視覚障害者を将来的にどのように救済していくのかと質問がされたのに対し、政府委員は、視覚障害者は社会福祉の見地から重要な対象であるので、十分検討しなければならない旨回答した。また、他の委員からは、あん摩師は視覚障害者が一番多く、しかも一番適切な仕事として細々と生計を立てていることを踏まえ、視覚障害者以外の者であるあん摩師から職域を侵されることのないよう真剣に取り組むべきであるとの意見が出された。(乙30) (イ)昭和30年7月27日、法の一部を改正する法律案の審議がされた第22回国会参議院社会労働委員会において、同法律案の決議に併せて、あん摩師等のうち身体障害者については、法の運営に関して特別な配慮を払うこと等を内容とする附帯決議がされた。同決議に係る附帯決議案を提出した委員からは、その趣旨について、あん摩業等に従事する60%以上が身体障害者であり、法の運営により、その業態が侵されたり、様々な不安が起きたりするようでは目的を達成できないので、特に運営上考慮を払うべきであるという意味である旨の説明がされた。(乙31)  また、昭和30年7月30日、前記法律案の審議がされた第22回国会衆議院社会労働委員会において、委員から、視覚障害者以外の者であるあん摩師が増え、視覚障害者の職業を非常に圧迫しつつあることを黙認することができない旨の指摘がされた。また、同委員会において、同法律案の決議に併せて、あん摩師等の身体障害者については、法の運営上その業態に支障が生じないよう万全の措置を護すること等を内容とする附帯決議がされた。(乙32) (ウ)昭和36年10月17日、法等の一部を改正する法律案の審議がされた第39回国会参議院社会労働委員会において、委員から、「今日の現実の世の中では、あん摩のみがわれわれの生きていく唯一のかてである。したがって、このかての、生きていく道を守ってくれなければ、われわれは死ぬのみだ。」との同委員会における公述人の発言を引用した上で、視覚障害者であるあん摩師の問題は、身体障害者の生活を守る上で非常に重要な問題である旨指摘され、他の委員からは、視覚障害者以外の者を対象とするあん摩師に係る学校及び養成施設の数を制御するのでなければこの問題は解決しない旨の指摘がされた。また、同委員会において、同法律案の決議に併せて、身体障害者であるあん摩師の職域優先確保の特別措置を速やかに講じること等を内容とする附帯決義がされた。(乙36)  また、昭和36年10月24日、前記法律案の審議がされた第39回国会衆議院社会労働委員会において、委員から、視覚障害者であるあん摩師の職域を確立することの努力を速やかに実らせる必要がある旨の指摘がされたのに対し、厚生大臣(当時)も、文部省(当時)との連携を一層良くした上で、視覚障害者の福祉の増進に役立つよう極力努力したい旨の答弁がされた。また、同委員会において、同法律案の決議に併せて、視覚障害者であるあん摩師の職域優先確保のため速やかに法的措置の検討をなすこと等を内容とする附帯決議がされた。(乙37) イ 昭和39年改正の経緯、内容等(乙38〜41) (ア)厚生省は、前記ア(ウ)の附帯決議を受け、学識経験のある者をもって構成するあん摩、はり、きゆう、柔道整復中央審議会(以下「中央審議会」という。)に検討を委ねることとした。  中央審議会は、昭和37年3月〜昭和38年12月、21回にわたり審議を行い、同月16日、厚生大臣に対し、意見書(以下「中央審議会意見書」という。)を提出した。中央審議会意見書は、現在のあん摩師を、慰安、疲労回復等を目的とする施術を行うもの(保健あん摩師)と医師の指示の下に疾病の治療を目的として施術を行うもの(医療マッサージ師)とに分離し、保健あん摩師について、一定地域ごとに、就業保健あん摩師総数に対する視覚障害者以外の者である保健あん摩師数の比率を定め、その比率を上回るときは、施術所の許可制及び就業承認制により、視覚障害者以外の者の就業を抑制する旨の視覚障害者に対する優先措置を講ずることを提案するものである。 (イ)中央審議会意見書を受理した厚生省は、各都道府県及び関係団体に対し、中央審議会意見書に対する意見を文書で求めたところ、関係団体間の意見には全く相反するものも含まれたころから、一定の関係団体の代表者を招集し、昭和39年2月24日、関係団体打合会を開催したものの、当該打合会においても、関係団体の意見は、中央審議会意見書に賛成するものと、保健あん摩師と医療マッサージ師を分離せず、分離したとしても保健あん摩師は視覚障害者にのみ認めるべきであるというものとに分かれ、意見の一致がみられなかったため、内閣が中央審議会意見書に沿った法律案を提出することは断念された。 (ウ)昭和39年6月10日、衆議院社会労働委員会において、昭和39年改正と同内容の法律案を委員会として提出することが決められたが、その際、委員から、当該法律案の趣旨について、あん摩業は視覚障害者にとって古来最も適当な職業とされてきたところであるが、近時、交通難等により、視覚障害者以外の者にその職域を圧迫される傾向が著しい状況に鑑み、あん摩業における視覚障害者の優先措置を講ずることを目的としたものである旨説明がされた。  また、参議院社会労働委員会においても、当該法律案につき、昭和39年6月16日、委員から、前記と同様の趣旨説明がされ、同月23日、全会一致をもって原案のとおり可決されるとともに、視覚障害者の職域優先確保については、施術所の規制等、一層の具体化に努力するとともに、養成所の奨学制度の拡充、生業に対する長期低利融資等、視覚障害者の福祉の向上についても更に格段の努力をするとともに、無免許者の取締りを一層厳にすること等を内容とする附帯決議がされた。  以上のような経過を経て、昭和39年改正に係る法律(昭和39年法律第120号)は、同年6月30日、成立した。 ウ 昭和39年改正後の状況等 (ア)視覚障害者の数 視覚障害者の総数(ただし、18歳以上の者の推計値)は、厚生労働省が数年おきに実施する身体障害者実態調査(実施時において名称は異なる。以下単に「実態調査」という。)の結果によれば、昭和35年には20万2000名、昭和40年には23万4000名になり、その後も概ね増加し、平成18年には31万名となっている。また, 身体障害者手帳交付台帳登載数における「視覚障害」の登載数(18歳未満を含む。)は、昭和35年には18万3530件であったのが、昭和39年には24万0820件と増加し、それ以後も、昭和48年には35万9151件、昭和63年には44万1009件に達するなど平成初頭頃まで増加を続けた後、やや減少したものの、平成26年時点でも34万9328件である。(乙43、44) (イ)視覚障害者の就業率等  実態調査の結果によれば、視覚障害者の就業率等は、次のとおり推移している。(別紙2。乙43、45〜49) a 視覚障害者の就業率は、昭和35年には35.7%、昭和40年には32.0%に低下した後、昭和62年には22.2%に至り、その後、やや上昇した時期もあったものの、平成18年には21.4%となった。他方で、視覚障害者の不就業率は、昭和40年には68%、昭和62年には77.5%に上がり、その後、やや低下したものの、平成18年には73.4%に上昇している(ただし、就業の有無について未回答の者が存在する。)。 b 視覚障害者のうち就業している者の職種に関し、あはき師が占める割合についてみると、昭和40年には25.1%であったが、昭和55年には41.3%まで上昇し、昭和62年には39.6%、平成13年には33.3%、平成18年には29.6%となっている。 (ウ)視覚障害者のあん摩マッサージ指圧師への就業状況等 a 平成17年3月に独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構障害者職業総合センターの発表によれば、あん摩マッサージ指圧師のうち、視覚障害に係る身体障害者手帳所持者と同手帳を所持しない者の比率は、前者が22.4%、後者が77.6%であり、前者に占める障害等級1級又は2級の者の割合は83.8%に達した。(乙51) b また、厚生労働省職業安定局調査における視覚障害者の職業紹介状況についてみると、平成18年度〜平成26年度における重度の視覚障害者に対して紹介した職業のうちあはき師の免許を基礎とした職業が占める割合は70.8〜75.0%となっている。(乙16) (エ)視覚障害者であるあはき師の収入(乙16)  視覚障害者支援総合センターが発表する視覚障害者就労実態調査によれば、平成25年のあはき師の年間収入に関し、視覚障害者以外の者の平均が636.2万円であるのに対し、視覚障害者の平均は290万円であった。  また、視覚障害者であるあはき師のうち、年間収入が300万円以下の者の割合は、前記実態調査によれば、平成25年では約76.3%((87+68+45)÷262≒76.3%)となった。 (オ)あん摩マッサージ指圧師の総数等 a 昭和37年におけるあん摩師の総数(5万1477人)に視覚障害者以外の者が占める割合は40.1%(2万0619人)であったところ、この割合及び視覚障害者以外の者であるあん摩師(あん摩マッサージ指圧師)の総数はおおむね年々増加し、平成26年におけるあん摩マッサージ指圧師の総数(11万3215人)に視覚障害者以外の者が占める割合は77.0%(8万7216人)に至った。(乙16.38) b 昭和39年度におけるあん摩師に係る学校及び養成施設の1学年の定員の総数は3980人であり、このうちに視覚障害者以外の者が占める割合は36.8%(1465人)、視覚障害者が占める割合は63.2%(2515人)であったところ、平成10年度以降におけるあん摩マッサージ指圧師及びあはき師に係る学校及び養成施設の定員の総数は同年の3003人から微減傾向にあり(平成27年度には2706人)、このうちに視覚障害者以外の者が占める割合は平成10年度の40.3%(1211人)からやや増加傾向にある(平成27年度には45.8%(1239人))のに対し、視覚障害者が占める割合は平成10年度の59.7%(1792人)からやや減少傾向にある(平成27年度には54.2%(1467人))。なお、前記各学校のうち、視覚障害者以外の者を対象とするものは存在しない。(乙16、38)  また、視覚障害者以外の者を対象とするあん摩マッサージ指圧師及びあはき師に係る養成施設の平成27年度における定員充足率をみると、あん摩マッサージ指圧師の昼間養成施設の受験者数が定員の149.2%、同夜間養成施設の受験者数の定員の118.6%、あはき師の昼間養成施設の受験者数が定員の202.3%、同夜間養成施設の受験者数が定員の296.6%である。なお、視覚障害者以外の者を対象とするあん摩マッサージ指圧師及びあはき師に係る学校は、平成10年度以降、存在しない。(乙16) (3)検討  本件規定は、晴眼者対象学校等の新設等を規制する、いわゆる許可制を採用するものであって、晴眼者対象学校等の新設等をしようとする者に対し、狭義における職業選択の自由を制約するものであるとともに、晴眼者対象学校等においてあん摩マッサージ指圧師となるために必要な知識及び技能を修得してその免許を受けようとする者に対し、晴眼者対象学校等の新設等がされないことにより、当該修得の機会を事実上制限することを通じて、狭義における職業選択の自由を制約するという側面を有するものである。そこで、以下、本件規定が憲法22条1項に適合するということができるか否か検討する。 ア 立法目的の合理性 (ア)@本件規定は、文部科学大臣等が、晴眼者対象学校等の認定又はその生徒の定員の増加の承認に係る申請(以下「新設等申請」という。)に対し、あん摩マッサージ指圧師の総数のうちに視覚障害者以外の者が占める割合(有資格者中割合)、あん摩マッサージ指圧師に係る学校又は養成施設において教育し、又は養成している生徒の総数のうちに視覚障害者以外の者が占める割合(生徒中割合)、その他の事情を勘案して、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするため必要があると認めるときは、その認定又は承認をしないことができる旨規定していることに加え、A本件規定が定められた昭和39年改正に至る経緯、昭和39年改正の内容等(前記認定事実ア、イ)の諸事情に鑑みると、本件規定は、晴眼者対象学校等の新設等を一定の場合に規制することをもって、かねて多数の視覚障害者が従事してきたあん摩マッサージ指圧師業に関し、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の職域を優先し、視覚障害者の生計の維持が著しく困難となることを回避するという社会経済政策上の積極的な目的から設けられたものであると解される。  そして、視覚障害者は、その障害のため、法令上、選択できる職業が限られ(例えば、医師、歯科医師については、法令上、欠格事由に該当する場合がある。医師法4条1号、同法施行規則1条、歯科医師法4条1号、同法施行規則1条参照)、事実上も、就業が不可能又は困難な職種が相当程度存すると考えられる(例えば、自動車運転免許の取得には、一定の視力を有することが合格基準とされるため(道路交通法施行規則23条等)、視覚障害者は、自動車の運転が必要な職種に就業することは不可能又は困難であるなど、その就業には多数の困難が伴うと考えられる。)ため、昭和39年改正の当時から現在に至るまで、その就業率は、およそ2〜3割と低水準である(前記認定事実ウ(イ)a)一方、視覚障害者のうち就業している者の職種に関し、あはき師が占める割合は、およそ3〜4割程度に及んでおり(同b)、視覚障害者が生計を維持するための手段としてあん摩マッサージ指圧師業が重要な地位を占めていることがうかがわれる。  そうすると、前記のとおりの本件規定の立法目的は、その立法時はもちろんのこと本件各処分時においても、一応の合理性を認めることができるというべきである。 (イ)原告の主張に対する判断 a 原告は、法は、法の公布時以前から医業類似行為を業としていた者のうち所定の要件を満たすものにつき、一定期間に限定して、当該医業類似行為を業とすることを許容する旨の特例措置を定めていたところ、当該期間限定を撤廃する旨の法の改正を行うに当たり、この改正に異議を唱えていた視覚障害者に対する融和策として、晴眼者対象学校等の新設等を規制する本件規定を設けることとしたものであることから、本件規定にいう「当分の間」とは、前記改正後の特例措置の対象者が高齢、死去等により当該医業類似行為を業とすることがなくなるまでの間と解すべきであるとした上で、昭和39年改正から50年以上も経過した本件各処分時において、「当分の間」が経過したものであることは明らかであって、本件規定の目的の正当性は失われている旨主張する。  しかしながら、昭和39年改正に係る法律(昭和39年法律第120号)の制定経緯をみると、@かねて、視覚障害者であるあん摩師がそれ以外のあん摩師によりその職域を圧迫されているとの問題意識が持たれ、国会においても、同様の問題意識からの質問、指摘等が繰り返される状況であり、昭和36年の法等の一部改正時にも、参議院社会労働委員会及び衆議院社会労働委員会において、身体障害者であるあん摩師の職域優先確保の特別措置を速やかに講じること等が附帯決議されるなどしていたところ(前記認定事実ア)、A中央審議会により、あん摩師を保健あん摩師と医療マッサージ師とに分離した上、保健あん摩師について、一定地域ごとに、就業保健あん摩師総数に対する視覚障害者以外の者である保健あん摩師数の比率を定め、その比率を上回るときは、施術所の許可制及び就業承認制により、視覚障害者以外の者の就業を抑制する旨の視覚障害者に対する優先措置を講ずることを内容とする中央審議会意見書が厚生大臣に対して提出されたものの(同イ(ア))、B中央審議会意見書に対する関係団体の意見の一致がみられなかったため、内閣が中央審議会意見書に沿った法律案を提出することは断念されたことから(同(イ))、C衆議院社会労働委員会において、あん摩業は視覚障害者にとって古来最も適当な職業とされてきたところであるが、交通難等により、視覚障害者以外の者にその職域を圧迫される傾向が著しい状況に鑑み、あん摩業における視覚障害者の優先措置を講ずることを目的としたものである旨説明がされた上で、昭和39年改正と同内容の法律案を委員会として提出することが決められ、そして、参議院社会労働委員会においても、当該法律案につき、前記と同様の趣旨説明がされた上で可決されるなどの経過を経て、成立した(同(ウ))というものである。そうすると、昭和39年改正に係る法律(昭和39年法律第120号)により設けられた本件規定は、視覚障害者であるあん摩師(その後の法の改正により、「あん摩マッサージ指圧師」へと改正された。)の職域を優先し、視覚障害者の生計の維持が著しく困難となることを回避する目的で設けられたものいうべきであって(なお、本件規定が原告の主張するような視覚障害者に対する融和策として設けられたものであることを裏付ける客観的かつ的確な証拠はない。)、本件規定にいう「当分の間」とは、視覚障害者に関し、あん摩マッサージ指圧師以外の適職が見いだされるか、又は視覚障害者に対する所得保障等の福祉対策が十分行われることにより、視覚障害者がその生計の維持をあん摩関係業務に依存する必要がなくなるまでの間をいうものと解すべきである。  したがって、原告の前記主張は、本件規定にいう「当分の間」に関する独自の見解に基づくものであって、採用することができない。 b 原告は、仮に、「当分の間」について前記aの説示のとおり解すべきであるとしても、昭和39年改正から50年以上経過する中で、当初の立法目的の正当性は失われていると解すべきであるとし、その根拠として、@障害者の経済状況の変化、A視覚障害者を巡る社会事情の変化等、B視覚障害者のあん摩マッサージ指圧師業への依存の程度の変化等を挙げる。  そこで検討すると、昭和39年改正時と比較すると、前記@に関し、障害者に対する年金制度が拡充されるなど、視覚障害者の生計の維持を支援する制度等が整備されつつあること(甲51、52、73等)、前記Aに関し、障害者総合支援法に基づき、障害者の就労促進のため、就労移行支援や就労継続支援のサービスが開始されるなどすることにより、視覚障害者が適職を得るために必要な基盤整備の一部が一定程度行われていること、前記Bに関し、盲学校・視覚障害者特別支援学校の高等部の生徒総数やそのうちあん摩マッサージ指圧師の免許を受けるために必要な課程である学科の生徒数が占める割合が減少しており、事務的職業への就業が増えていること等(甲19〜37、71等)を指摘することはできる。  しかしながら、他方で、[A]身体障害者手帳交付台帳登載数における「視覚障害」の登載数は、昭和39年以降、平成初頭頃まで増加を続けた後、やや減少したものの、平成26年時点でも、昭和39年当時よりも多く昭和40年代後半と同程度であるなど、視覚障害者数は、本件各処分の頃においても、昭和39年当時を上回っている一方で(前記認定事実ウ(ア))、[B](a)視覚障害者の就業率は、昭和35年に35.7%であったのが、昭和40年に32.0%へと低下した後、昭和62年には22.2%に至り、その後、やや上昇した時期もあったものの、平成18年時点でも昭和40年よりも低い21.4%であり(同(イ)a)、(b)視覚障害者のうち就業している者の職種に関し、あはき師が占める割合は、昭和40年には25.1%であったのが、その後上昇し、平成18年には29.6%となっており(同b)、また、厚生労働省職業安定局調査によれば、平成18年度〜平成26年度における重度の視覚障害者に対して紹介した職業のうちあはき師の免許を基礎とした職業が占める割合は7割を超えるなど(同(ウ)b)、視覚障害者のあん摩マッサージ指圧師業へ依存する程度は依然として高く、しかも、[C]あはき師の年間収入に関し、視覚障害者以外の者の平均が636.2万円であるのに対し、視覚障害者の平均は、その半分以下の290万円である上、視覚障害者であるあはき師のうち、年間収入が300万円以下の者の割合は、約76.3%である(いずれも平成25年の統計による。同(エ))など、視覚障害者であるあはき師の収入は概して低い状況にある。  そうすると、本件各処分時においても、視覚障害者であん摩マッサージ指圧師の職域を優先し、視覚障害者の生計の維持が著しく困難となることを回避するという本件規定の目的の合理性が失われているとまでいうことはできない。  したがって、原告の前記主張は、採用することができない。 (ウ)小括  以上検討したところによれば、本件規定の立法目的は、その立法時はもちろんのこと本件各処分時においても、一応の合理性を認めることができる。  そして、前記(ア)で説示したとおり、本件規定による法的規制措置は、社会経済政策上の積極的な目的から設けられたものであるから、以下、当該法的規制措置が当該目的達成のために必要かつ合理的な範囲にとどまるとの立法府の判断が、その裁量権の範囲を逸脱し、当該法的規制措置が著しく不合理であるか否か検討する。 イ 規制措置の必要性 (ア)前記ア(ア)で説示したとおり、視覚障害者は、その障害のため、法令上、選択できる職業が限られ、事実上も、就業が不可能又は困難な職種が相当程度存すると考えられること、同(イ)で説示したとおり、昭和39年改正時から本件各処分時に至るまで、@視覚障害者の就業率は低いこと、A視覚障害者のあん摩マッサージ指圧師業へ依存する程度は依然として高いこと、B視覚障害者であるあはき師の年間平均収入は視覚障害者以外の者であるあはき師のそれの半分以下であるとの統計があるなど、視覚障害者であるあはき師の収入は概して低い状況にあることが認められる。これらのことに加えて、視覚障害者以外の者であるあん摩マッサージ指圧師の数やあん摩マッサージ指圧師の総数のうちに占める割合がおおむね年々増加していること(前記認定事実ウ(オ)a)、晴眼者対象学校等のうち養成施設の平成27年度における受験者数は昼間・夜間過程のいずれにおいても100%を大きく上回っている状況にあること(同b)等も考慮すると、本件各処分の時点においても、晴眼者対象学校等の新設等につき何らの規制措置が設けられないならば、晴眼者対象学校等の新設等が進み、視覚障害者以外の者であるあん摩マッサージ指圧師が急増し、その結果、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師に関し、既存の職域の縮小、顧客の減少、収入の減少等が生起し、生計の維持が著しく困難となることも十分考えられる。  そうすると、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の職域を優先し、視覚障害者の生計の維持が著しく困難となることを回避する目的達成のために、本件規定による法的規制措置を設けることが必要であるとの立法府の判断が、著しく不合理であるということはできない。 (イ)原告の主張に対する判断 a 原告は、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の収入の多寡は、あん摩マッサージ指圧師全体に対する需要の増減に比例するのであって、視覚障害者以外の者であるあん摩マッサージ指圧師の人数の増減とは相関関係がないため、本件規定に基づく規制が視覚障害者の生計の維持という目的達成の上で実効性を有しておらず必要性に欠ける旨主張する。  しかしながら、あん摩マッサージ指圧師全体に対する需要の増減にかかわらず、視覚障害者以外の者であるあん摩マッサージ指圧師が急増すれば、そのこと自体により、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師に関し、既存の職域の縮小、顧客の減少、収入の減少等が生起することが十分考えられる。  したがって、原告の前記主張は、採用することができない。 b 原告は、視覚障害者の職域を最も脅かす原因は、視覚障害者以外の者であるあん摩マッサージ指圧師ではなく、圧倒的な数の無資格のマッサージ師の急増等によるものであり、しかも、本件規定の存在自体が、あん摩マッサージ指圧師に対する需要に対応できるだけの数のあん摩マッサージ指圧師の養成を阻害し、無資格のマッサージ師の急増等を招いていることからすると、本件規定は、視覚障害者の生計の維持という目的達成のためには不必要であり、有害であるとすらいえる旨主張する。  しかしながら、本件規定に基づき新設等申請に対する不認定又は不承認がされることにより、視覚障害者以外の者であるあん摩マッサージ指圧師の数は抑制されるという事実は認められるものの、当該抑制の事実と無資格のマッサージ師の急増との相関関係を裏付ける客観的かつ的確な証拠はない。また、無資格のマッサージ師の存在が視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の職域を縮小させているという側面は否定できないとしても、当該職域を縮小させ得る要因としては、無資格マッサージ師の存在と並んで視覚障害者以外の者であるあん摩マッサージ師の増加も挙げられるのであって、国が、昭和30年初頭から現在まで、警察当局と連携して、無免許であん摩マッサージ指圧師の業務を行う者に対する指導の強化及び取締りを継続的に行っている(乙16、34、35、42の1〜8)にもかかわらず、視覚障害者であるあん摩マッサージ師は、その収入が概して低いなどの状況に置かれていること(前記(ア))に鑑みると、当該取締り等と併せて、晴眼者対象学校等の新設等を規制する必要性があるとの立法府の判断が著しく不合理であるということはできない。  したがって、原告の前記主張は、採用することができない。 (ウ)以上検討したところによれば、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の職域を優先し、視覚障害者の生計の維持が著しく困難となることを回避する目的達成のために、本件規定による法的規制措置が必要であるとの立法府の判断が、著しく不合理であるということはできない。 ウ 規制措置の合理性 (ア)本件規定は、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするため必要があると認めるときに限って、晴眼者対象学校等の新設等を許可しないことができる旨を規定するものであり、このような法的規制措置は、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の職域を優先し、視覚障害者の生計の維持が著しく困難となることを回避する目的達成のためのものとして、相応の合理性を有する。  そして、あん摩マッサージ指圧師の総数のうちに視覚障害者以外の者が占める割合(有資格者中割合)の変動は、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師が晴眼者対象学校等の新設等に伴って受ける既存の職域の縮小、顧客の減少、収入の減少等の程度にも少なからぬ影響を及ぼすと考えられること、あん摩マッサージ指庄師に係る学校又は養成施設において教育し、又は養成している生徒の総数のうちに視覚障害者以外の者が占める割合(生徒中割合)は、その性質上、有資格者中割合と密接な関係を有すると考えられることからすると、本件規定において、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするために新設等申請に対する不認定又は不承認の必要があるか否かの判断に際しての考慮要素として、有資格者中割合及び生徒中割合が定められていることには、相応の合理性があるというべきである。  また、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするために新設等申請に対する不認定又は不承認の必要があるか否かの判断は、有資格者中割合及び生徒中割合のほか、新設等申請がされた時点における、視覚障害者の総数、視覚障害者に関する雇用環境・医療の状況、あん摩マッサージ指圧師の総数、あん摩マッサージ指圧師業に対する需要、新設等申請に係る晴眼者対象学校等の所在(予定)の地域の社会経済状況等の諸般の事情を専門技術的かつ政策的な見地から総合考慮した上で行われる必要があるものと考えられ、あらかじめこれらの諸事情を具体的に定めておくことはその性質上困難であることからすると、本件規定において、前記判断につき、文部科学大臣等の裁量判断に委ねられていることにも相応の合理性がある。  さらに、本件規定による法的規制措置による職業選択の自由の制約の程度をみると、(@晴眼者対象学校等の新設等をしようとする者に対し、狭義における職業選択の自由を制約するものであるものの、晴眼者対象学校等の新設等を全面的に規制しているわけではなく、新設等申請に対する不認定又は不承認がされるのは、諸般の事情を総合考慮した上で、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするため必要があると認められるときに限定されていること、A晴眼者対象学校等においてあん摩マッサージ指圧師となるために必要な知識及び技能を修得してその免許を受けようとする者に対し、晴眼者対象学校等の新設等がされないことにより、当該修得の機会を事実上制限することを通じて、狭義における職業選択の自由を制約するという側面を有するものの、当該者は、既設のあん摩マッサージ指圧師に係る学校又は養成施設において、当該修得をすることができることに鑑みると、その職業選択の自由の制約の程度は、自ずと限定的ということもできる。  加えて、文部科学大臣等は、新設等申請に対して本件規定に基づき不認定又は不承認としようとするときは、あらかじめ、医道審議会の意見を聴かなければならないものとされており(法附則19条2項。なお、当該意見聴取については、学識経験のある者のうちから厚生労働大臣によって指名された委員で構成され、医道審議会に置かれた分科会の一つであるあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師分科会において、検討の上、意見が述べられる(医道審議会令5条1項、2項)。)、文部科学大臣等により恣意的な判断がされることを回避するための措置が講じられているところでもある。  以上の諸事情を考慮すると、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の職域を優先し、視覚障害者の生計の維持が著しく困難となることを回避する目的達成のために、本件規定による法的規制措置を設けることが合理的であるとの立法府の判断が、著しく不合理であるということはできない。 (イ)原告の主張に対する判断 a 原告は、@あん摩マッサージ指圧師の総数のうちに視覚障害者以外の者が占める割合(有資格者中割合)が増加したとしても、あん摩マッサージ指圧師全体に対する需要が増加したならば、増加した視覚障害者以外の者であるあん摩マッサージ指圧師の職域は需要増加分に吸収されるため、必ずしも視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の職域を侵すことにはならないし、A有資格者中割合は、視覚障害者以外の者であるあん摩マッサージ指圧師の数の増加のみならず、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の数の減少によっても増加するところ、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の数の減少は、高齢や死亡による廃業、国家試験の合格率の低下等、様々な要因によって生じ得るため、有資格者中割合が増加したとしても、必ずしも視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の職域を侵すことにはならず、Bむしろ、視覚障害者の職域を最も脅かす原因は、視覚障害者以外の者であるあん摩マッサージ指圧師ではなく、圧倒的な数の無資格のマッサージ師の急増等によるものであることからすると、有資格者中割合の増加と視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の「生計の維持」が脅かされることとの間には関連性がないため、本件規定が有資格者中割合を考慮要素としたことは不合理であるし、Cまた、本件規定のうち、あん摩マッサージ指圧師に係る学校又は養成施設において教育し、又は養成している生徒の総数のうちに視覚障害者以外の者が占める割合(生徒中割合)を考慮要素とする点は、生徒中割合が増加すれば、有資格者中割合が増加し、これにより、視覚障害者の職域が侵され、ひいてはその「生計の維持」が脅かされることを前提とするものであるところ、その前提は前記のとおり誤っているから、本件規定が生徒中割合を考慮要素としたことは不合理である旨主張する。  しかしながら、まず、前記@の主張につい検討すると、有資格者中割合は、あん摩マッサージ指圧師業に視覚障害者以外の者がどの程度進出しているかを示す指標の一つであって、あん摩マッサージ指圧師業に係る市場を視覚障害者以外の者であるあん摩マッサージ指圧師がどの程度支配しているか、また、その支配の結果、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師に関し、既存の職域の縮小、顧客の減少、収入の減少等が生起するか等を検討するための基礎の一つとなり得るものと考えられるところ、あん摩マッサージ指圧師全体に対する需要の増減にかかわらず、有資格者中割合が増加すれば、そのこと自体により、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師に関し、既存の職域の範囲、顧客の数、収入の多寡等に影響することが十分考えられる一方、原告が主張するように有資格者中割合が増加したとしても、あん摩マッサージ指圧師全体に対する需要が増加したならば、増加した視覚障害者以外の者であるあん摩マッサージ指圧師の職域は需要増加分に吸収されることを裏付ける客観的かつ的確 な証拠はないから、原告の前記@の主張は採用することができない。  そして、前記Aの主張について検討すると、確かに、原告の指摘するように、有資格者中割合は、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の数の減少によっても増加し、また、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の数の減少は、様々な要因によって生じ得るものであるが、そうであるとしても、前記@の主張に対して説示したとおりの有資格者中割合の役割に鑑みれば、本件規定において、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするために新設等申請に対する不認定又は不承認の必要があるか否かの判断に際しての考慮要素として、有資格者中割合が定められていることには、相応の合理性があるというべきであるから、原告の前記Aの主張は採用することができない。  また、前記Bの主張について検討すると、無資格のマッサージ師の存在が視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の職域を縮小させているという側面は否定できないとしても、当該職域を縮小させ得る要因としては、無資格マッサージ師の存在と並んで視覚障害者以外の者であるあん摩マッサージ師の増加も挙げられるところ、この増加に伴い有資格者中割合も変動することに鑑みると、原告の前記Bの主張は採用することができない。  以上のとおり、本件規定が有資格者中割合を考慮要素としたことは不合理である旨の前記@〜Bの主張は採用することができず、また、本件規定が生徒中割合を考慮要素としたことは不合理である旨の前記Cの主張は、本件規定が有資格者中割合を考慮要素としたことは不合理であることを前提とするものであるから、同主張もまた採用することができない。 b 原告は、本件規定は、視覚障害者以外のあん摩マッサージ指圧師の参入を全国一律で規制するものであるが、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持の確保のためには、地域ごとの実情に応じ、特にその生計の維持の確保に影響が及ぶ地域においてのみ、施術所の開設を規制するなどの必要な規制をすれば足りるのであって、全国一律に本件規定に基づく許可制を採用することは合理性を欠く旨主張する。  しかしながら、本件規定も、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするために新設等申請に対する不認定又は不承認の必要があるか否かの判断をする際の考慮要素の一つに、新設等申請に係る晴眼者対象学校等の所在(予定)の地域の実情を含んでいるものと解されるから(前記(ア)参照)、原告の前記主張は、その前提を誤るものであって失当である。  したがって、原告の前記主張は採用することができない。 c 原告は、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持の観点からは、晴眼者対象学校等の新設等を規制するのではなく、視覚障害者の職業的自立や資質向上が果たされるような環境を整えるような政策・立法こそが重要であるから、本件規定による法的規制措置は不合理である旨主張する。  しかしながら、原告の主張するような政策・立法が視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持に資するものの一つであるとしても、どのような政策を選択し、立法を行うかは、立法府に委ねられており、また、これまで検討したところによれば、本件規定による法的規制措置が不合理であるということもできない。  したがって、原告の前記主張は採用することができない。 (ウ)小括  以上検討したところによれば、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の職域を優先し、視覚障害者の生計の維持が著しく困難となることを回避する目的達成のために、本件規定による法的規制措置が合理的であるとの立法府の判断が、著しく不合理であるということはできない。 エ 総括  以上のとおり、本件規定による法的規制措置は、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の職域を優先し、視覚障害者の生計の維持が著しく困難となることを回避する目的達成のために必要かつ合理的な範囲にとどまるとの立法府の判断が、その裁量権の範囲を逸脱し、当該法的規制措置が著しく不合理であるということはできないから、本件規定が憲法22条1項に反して無効であるということもできない。 2 争点2(本件規定が憲法31条・13条に反し無効であるか否か)について  原告は、憲法31条・13条は、許認可に係る行政手続について、当該許認可の基準の明確性を要求するものであるところ、本件規定は、これに基づき認定又は承認をしない場合の要件が極めて曖昧、不明確であり、いかなる場合に当該認定又は承認をしないこととなるのかを全く読み取ることができず、しかも、当該認定又は承認をするか否かは文部科学大臣等の裁量に委ねているのであるから、憲法31条・13条に反し無効である旨主張する。  しかしながら、前記1(3)ウ(ア)で説示したとおり、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするために新設等申請に対する不認定又は不承認の必要があるか否かの判断は、本件規定に明記された有資格者中割合及び生徒中割合のほか、新設等申請がされた時点における、視覚障害者の総数等の諸般の事情を専門技術的かつ政策的な見地から総合考慮した上で行われる必要があるものと考えられ、あらかじめこれらの諸事情を具体的に定めておくことはその性質上困難であることから、本件規定において、前記判断につき、文部科学大臣等の裁量判断に委ねられていることにも相応の合理性があるというべきである。そして、本件規定においては、文部科学大臣等の裁量判断の際の考慮要素の一つとして有資格者中割合及び生徒中割合が明記されており、文部科学大臣等により恣意的な判断がされることを回避するための措程が講じられていることからも、本件規定の要件が曖昧、不明確であることを理由として、憲法31条・13条に反するものであるということはできない。  したがって、原告の前記主張は、採用することができない。 3 争点3(本件規定を適用して本件各処分をしたことが憲法22条1項等に反し違法であるか否か)について (1)原告は、本件規定自体が合憲であったとしても、本件各処分が憲法上の重要な権利である職業選択の自由を侵害するものである以上、本件規定の適用基準は明確でなければならないところ、どのような基準の下に本件規定が適用されて本件各処分がされたのかが曖昧、不明確であるから、本件各処分は、憲法22条1項、31条・13条に反し違法である旨主張する。  しかしながら、原告の前記主張は、実質的には、本件規定の要件が曖昧、不明確であって法令違憲であることを主張するものといわざるを得ないところ、本件規定が、憲法22条1項、31条・13条に反するものではないことは、前記1、2において説示したとおりであるから、これを採用することができない。 (2)また、原告は、当時の厚生大臣は、昭和57年、愛知県下に所在する学校法人葛谷学園中和鍼灸専門学校がしたその設置する視覚障害者以外の者を対象とした医療専門課程あん摩・はり・きゅう科(修業年限3年(昼間)、1学年定員20名)の1学年定員を30名に増加させることを内容とする申請を承認(昭和57年承認)しているところ、本件各処分と結論を異にした理由は明らかでなく、本件規定を適用した本件各処分は憲法22条1項、14条1項に反し違法である旨主張する。  そこで検討すると、【A】(a)本件各処分のうち、本件第1処分は、大阪府下に所在する本件専門学校に、視覚障害者以外の者を対象としたあん摩マッサージ指圧鍼灸師科(修業年限4年(夜間)、1学年定員30名)を新設することを内容とする申請に対してされたものであり(前記前提事実(2)ア)、本件第2処分は、兵庫県下に所在する宝塚医療大学の本件学科(修業年限4年(昼間)、1学年定員60名)において、新たにあん摩マッサージ指圧師の養成を行うことを内容とする申請に対してされたものである上に(なお、本件学科の入学者は、視覚障害者に限ることとはされていない。同(3)ア)、(b)中央審議会から、前記各申請に係る晴眼者対象学校等の認定をすることについて反対である旨の答申がされたのに対し、[B]昭和57年承認に係る申請については、(a)大阪府及び兵庫県とは異なる地域である愛知県下に所在する養成施設(修業年限3年(昼間)、1学年定員20名)の定員を1学年10名ずつ増加させるものにとどまっている上に、(b)当時の中央審議会から、定員増加を承認して差し支えない旨の答申がされたこと(乙87)等、本件各処分に係る各申請とは異なる事情が存した。  そうすると、本件各処分と昭和57年承認とで新設等申請に対する結論を異にした合理的な理由がないものということはできず、本件規定を適用して本件各処分をしたことが憲法22条1項、14条1項に反して違法であるということはできない。  したがって、原告の前記主張は、採用することができない。 (3)以上によれば、本件各処分が違法であるということはできない。 第4 結論  よって、原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第2民事部   裁判長裁判官 三輪方大 〈別紙1〉 指定代理人目録 以上 〈別紙2〉 視覚障害者の就業状況推移 昭和27年〜平成28年 ・視覚障害者の総数(A) ・(参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’) ・視覚障害者の内有職者(B)有職者数 ・視覚障害者の内有職者(B)就業率 ・有職者の内のあはき師(C)あはき関係業務就業者数 ・有職者の内のあはき師(C)、有職者に占めるあはき関係業務の割合 ・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’) ・不就業者の数(D)不就業者数  ・不就業者の数(D)不就業率 ・回答なし(E)回答なしの人数 ・回答なし(E)回答なしの割合 昭和27年 (参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)31.632 昭和28年 (参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)30.304 昭和29年 (参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)31.569 昭和30年 視覚障害者の総数(A)179.000・視覚障害者の内有職者(B)有職者数☆84.130・視覚障害者の内有職者(B)就業率47.0%・有職者の内のあはき師(C)あはき関係業務就業者数☆16.910・有職者の内のあはき師(C)有職者に占めるあはき関係業務の割合20.1%・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)32.410 昭和31年 (参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)32.902 昭和32年 (参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)28.062 昭和33年 (参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)30.221 昭和34年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)160.713・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)30.180 昭和35年 視覚障害者の総数(A)202.000・(参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)183.530・視覚障害者の内有職者(B)有職者数☆72.114・視覚障害者の内有職者(B)就業率35.7%・有職者の内のあはき師(C)あはき関係業務就業者数☆27.548・有職者に占めるあはき関係業務の割合38.2%・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)30.295 昭和36年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)200.971・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)31.140 昭和37年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)213.446・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)30.858 昭和38年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)228.817・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)32.181 昭和39年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)240.820・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)32.748 昭和40年 視覚障害者の総数(A)234.000・(参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)252.736・視覚障害者の内有職者(B)有職者数75.000・視覚障害者の内有職者(B)就業率32.0%・有職者の内のあはき師(C)あはき関係業務就業者数☆18.825・有職者に占めるあはき関係業務の割合25.1%・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)34.382・不就業者の数(D)不就業者数159.000・不就業者の数(D)不就業率68.0% 昭和41年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)263.289・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)33.916 昭和42年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)277.546・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)35.024 昭和43年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)292.443・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)35.253 昭和44年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)304.687・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)35.566 昭和45年 視覚障害者の総数(A)250.000・(参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)315.976・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)35.172 昭和46年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)330.291・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)35.950 昭和47年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)344.812・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)35.533 昭和48年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)359.151・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)36.590 昭和49年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)371.338・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)37.963 昭和50年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)385.661・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)38.029 昭和51年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)392.847・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)38.419 昭和52年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)401.957・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)38.224 昭和53年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)407.150・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)38.889 昭和54年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)415.489・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)39.247 昭和55年 視覚障害者の総数(A)336.000・(参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)421.503・視覚障害者の内有職者(B)有職者数☆89.376・視覚障害者の内有職者(B)就業率26.6%・有職者の内のあはき師(C)あはき関係業務就業者数☆36.912・有職者に占めるあはき関係業務の割合41.3%・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)37.679・不就業者の数(D)不就業者数☆241.920・不就業者の数(D)不就業率72.0%・回答なし(E)回答なしの人数☆5.040・回答なし(E)回答なしの割合1.5% 昭和56年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)426.337・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)38.034 昭和57年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)424.412・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)37.894 昭和58年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)429.847 昭和59年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)434.138・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)37.925 昭和60年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)436.508 昭和61年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)438.795・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)36.564 昭和62年 視覚障害者の総数(A)307.000・(参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)440.046・視覚障害者の内有職者(B)有職者数☆68.154・視覚障害者の内有職者(B)就業率22.2%・有職者の内のあはき師(C)あはき関係業務就業者数☆26.989・有職者に占めるあはき関係業務の割合39.6%・不就業者の数(D)不就業者数☆237.925・不就業者の数(D)不就業率77.5%・回答なし(E)回答なしの人数☆921・回答なし(E)回答なしの割合0.3% 昭和63年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)441.009・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)34.768 平成元年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)440.534 平成2年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)437.887・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)35.144 平成3年 視覚障害者の総数(A)353.000・(参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)435.408・視覚障害者の内有職者(B)有職者数96.000・視覚障害者の内有職者(B)就業率27.3%・有職者の内のあはき師(C)あはき関係業務就業者数31.000・有職者に占めるあはき関係業務の割合32.3%・不就業者の数(D)不就業者数246.000・不就業者の数(D)不就業率69.8%・回答なし(E)回答なしの人数10.000・回答なし(E)回答なしの割合2.9% 平成4年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)431.985・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)35.495 平成5年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)426.571 平成6年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)421.374・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)33.593 平成7年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)418.619 平成8年 視覚障害者の総数(A)305.000・(参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)408.388・視覚障害者の内有職者(B)有職者数80.000・視覚障害者の内有職者(B)就業率26.2%・有職者の内のあはき師(C)あはき関係業務就業者数20.000・有職者に占めるあはき関係業務の割合25.0%・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)33.430・不就業者の数(D)不就業者数212.000・不就業者の数(D)不就業率69.5%・回答なし(E)回答なしの人数13.000・回答なし(E)回答なしの割合4.3% 平成9年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)397.570 平成10年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)398.145・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)27.569 平成11年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)398.212 平成12年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)396.527・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)27.551 平成13年 視覚障害者の総数(A)301.000・(参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)393.870・視覚障害者の内有職者(B)有職者数72.000・視覚障害者の内有職者(B)就業率23.9%・有職者の内のあはき師(C)あはき関係業務就業者数24.000・有職者に占めるあはき関係業務の割合33.3%・不就業者の数(D)不就業者数221.000・不就業者の数(D)不就業率73.4%・回答なし(E)回答なしの人数8.000・回答なし(E)回答なしの割合2.7% 平成14年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)389.508・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)25.950 平成15年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)388.326 平成16年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)389.304・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)25.799 平成17年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)389.099 平成18年 視覚障害者の総数(A)310.000・(参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)389.603・視覚障害者の内有職者(B)有職者数☆66.340・視覚障害者の内有職者(B)就業率21.4%・有職者の内のあはき師(C)あはき関係業務就業者数☆19.637・有職者に占めるあはき関係業務の割合29.6%・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)25.462・不就業者の数(D)不就業者数☆227.540・不就業者の数(D)不就業率73.4%・回答なし(E)回答なしの人数☆16.430・回答なし(E)回答なしの割合5.3% 平成19年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)384.241 平成20年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)382.596・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)25.102 平成21年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)380.811・ 平成22年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)371.700・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)25.224 平成23年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)369.025 平成24年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)363.267・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)25.645 平成25年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)355.957 平成26年 (参考)身体障害者手帳交付台帳登載数(視覚障害)(A’)349.328・(参考)視覚障害者のあん摩師の数(C’)25.999 平成27年 記載なし 平成28年 記載なし ※1)出典:A〜E 厚生省/厚生労働省「身体障害者実態調査」 A’昭和34年厚生省「社会福祉統計年報」、昭和35年〜昭和39年厚生省「社参福祉行政業務報告」 昭和40年〜平成26年 厚生省/厚生労働省「福祉行政報告令」 C’昭和22年〜昭和34年厚生省「衛生年報」、昭和35年〜平成7年厚生省「衛生行政業務報告」、 平成8年〜平成26年厚生省/厚生労働省「衛生行政報告例」 ※2)身体障害者実調査は、以下の点を前提とする調査である。 ・数値は推計値であること。 ・調査対象は18歳以上の者であること。 ・網掛け部分(☆)は推計値の記載がなかったため、「視覚障害者の総数」及び「有職者数」に割合を乗じたものであること。 ※3)「身体障害者実態調査」は、ほぼ5年ごとに実施。 「衛生行政業務報告」及び「衛生行政報告例」は、昭和58年以降、視覚障害者のあん摩マッサージ指圧師に関する調査は隔年となっている。  なお、「衛生行政報告例」の平成22年の調査結果には、東日本大震災の影響により、宮城県が含まれていない。 ※4)「視覚障害者のあん摩師の数」(C’)については、昭和30年より、あん摩の業務に「指圧」を含んでいる。 ※5)AとA’及びCとC’の差異は、A〜E(身体障害者実態査)が推計値であること、AとA’は、Aは18歳以上を対象としているのに対し、A’には18歳未満も含まれていることによるものである。 これは正本である。 令和2年2月25日 大阪地方裁判所第2民事部 大阪 10−214815