19条連絡会ニュース 9 発行日:2020年1月10日 発行:あん摩師等法19条連絡会    〒169-8664 東京都新宿区西早稲田2-18-2 日本視覚障害者センター内     電話:03-3200-0011(代表) FAX:03-3200-7755 発行責任者:竹下義樹 (幹事会の開催後に発行) (本号の担当:理教連) 我々の願いが叶えられた あん摩師等法19条連絡会 会長 竹下義樹  2019年12月16日午前11時30分に東京地裁で判決言い渡しが予告されていたが、傍聴者の入場に手間取り、実際の判決言い渡しは12時を過ぎてからになった。 裁判長が、おもむろに「原告の請求を棄却する」と明確に判決を言い渡した時、傍聴席を埋めた我々の仲間は一応に胸をなで下ろした。民事訴訟(行政訴訟も含む)においては、判決は主文のみを言い渡すのが通例である。しかし、今回は、裁判長が、我々の存在を意識してか、判決の理由中の根幹となっている部分を要約して傍聴席に向け説明した。それによると、裁判所は、あん摩師等法19条が、視覚障害者の生活維持を目的としている点において、未だその必要性は失われていないとした。そして、その目的を達成するために、晴眼者のためのあん摩マッサージ指圧師の養成課程の新・増設を制限することは、妥当な方法であると評価した。そして、国会があん摩師等法19条を現時点においても、妥当な規定であるとして維持していることは、立法府としての裁量権を逸脱・乱用しているとは言えないと判示した。その結果として、あん摩師等法19条は、憲法22条に反することはないと結論づけ、原告の訴えを退けたのである。 判決言い渡しが終わった瞬間、私は、あえてルールを無視し、拍手を始めた。すると、傍聴席のほとんどの仲間がそれにあわせて感動の拍手をした。 おそらく、岸野理事長は、東京地裁判決を不服として、控訴するものと思われる。岸野理事長がとことん戦うつもりか否かは、知るところではないが、2020年2月25日の大阪地裁判決及び同年4月27日の仙台地裁判決において、内容が東京地裁判決と同じ内容となった時点で岸野理事長は最終判断をするのではなかろうか。それだけに私達の戦いは、3地裁の判決が出揃うまでが、大山である。 2016年9月から始まった3年あまりの戦いが、判決に大きな影響を与えたことは確かである。常に傍聴席を満席にし、何万筆にもおよぶ署名の提出を通して、届けてきた私達の声は、裁判官の心を打たずにはいられなかったはずである。私達はそのことに確信を持って引き続き頑張っていくことを改めて決意したいと思う。すべての地裁で勝訴判決を得たとしても私達の戦いは終わることはない。平成医療学園が、控訴審での戦いを続けようが諦めようが、私達は引き続きあん摩師等法19条を死守し、あん摩マッサージ指圧業を通じた職業的自立のために、戦いを続けていかなければならない。 ■ 19条連絡会第16回幹事会議事要旨 ■ 日 時:令和元年10月26日(土) 10時30分〜12時30分 場 所:東京都盲人福祉協会2階会議室 1.出席者の確認 出席者(敬称略)   日 盲 連 竹下、小川、須藤、三宅、逢坂、小柴   日 マ 会 野本   理 教 連 栗原   全 視 協 山城、東郷、生田目、 稲垣   全鍼師会 仲澤   東北協議会 及川   関東協議会 鈴木   近畿協議会 辰巳 欠席者(敬称略)   日 マ 会 安田   理 教 連 本田、杉本 2.会長挨拶 東京地裁で9月5日に行われた第14回口頭弁論において結審し、12月16日(月)に判決が行われる。10月11日の大阪地裁でも結審し、判決は、2月25日に行われる。仙台地裁も次回12月2日に結審となる可能性が高く、特に東京の判決内容については要注目である。 この間、原告側の動きにも注意を払う必要があるのではないか。判決次第で原告側が控訴審に出るか、政治的路線に持ち込むかの見極めも必要。12月16日の行動、それまでの運動を議論する必要がある。 3.議題 (1)新たな情勢について 東京地裁:9月5日に結審し、12月16日に判決。 大阪地裁:10月11日に結審し、2月25日に判決。 仙台地裁:次回口頭弁論12月2日。 (2)判決に向けた運動について 東京では、9月5日の結審当日に記者会見と声明の発表、集会を実施したが、12月16日も同様の行動を予定。判決までに記者の関心を高められるよう、事前にレクチャーを行う。判決が言い渡される16日は、記者会見と集会が同時進行するため、役割分担が必要。 (3)各団体の取り組みについて 全視協:結審後横断幕を作成し、東北・近畿にも配布。9月の19日行動は総勢41名中、全視協31名。10月18日は理教連と合わせ21名が参加。 理教連:点字毎日の理療の世界に19条裁判の経過を掲載。あん摩の魅力・やりがいを伝える連載を計画中。 日マ会:6月の総会で、会員へ協力要請。11月19日行動・12月16日の判決に向け、晴眼者の会員に対してもメーリングリストを立ち上げ協力を依頼。 全鍼師会:東北地裁の判決に向け、東京の行動を参考に東北で行動。引き続き晴眼会員への協力依頼も継続。 日視連:署名集約数30000筆間近。東京は、11月末までに全署名を提出予定。 (4)各協議会の取り組みについて 東京:11月19日の街頭宣伝、12月16日の判決集会、判決前の週に事前レクチャーを予定している。 東北:結審が近く、これまでの活動の記録を残すため、マッサージ未来の集約版を発行する計画がある。 近畿:東京の運動を参考に、判決までの期間に何らかのアクションを計画する。 (5)啓発活動について(次回ニュースの発行など) 議事要旨:全視協 ニュース原稿締め切り:12月20日 年内に発送予定 (6)その他 会計:昨年行った決起集会の未払い金があるため、各団体へ分担金の納入を依頼。全幹事団体から納入確認後、未払い金と各協議会への割り当て金(10万円)をお支払いする予定。 ※次回幹事会:令和2年2月8日(土) 10:30〜12:30 場所:日本視覚障害者センター 東京地裁 19条1項は合憲  −傍聴席は判決を拍手で歓迎− 全視協 東郷 進  12月16日、東京地裁前において(あマ指養成施設)非認定処分取消請求事件の判決日となる第15回口頭弁論が開かれました。この傍聴券を求めて推定260人が訪れ、入場処理に手間取ったため、開廷が30分遅れ12時開廷となりました。  冒頭、古田孝夫裁判長が、「主文 原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」と読み上げ、判決理由については、「文章に示したとおり」としつつも、理由の要旨を読み上げ、「あはき法19条1項を適用した本件処分が憲法違反とは言えない」と読み上げると、期せずして傍聴席から拍手が巻き起こりました。  判決直後、記者会見を行い、並行して多くの参加者は裁判所前で勝利集会に参加しました。その後、2時半から19条あん摩師等法19条関東協議会主催の慰労会が高田馬場「居酒屋わっしょい」で催され86人が参加しました。  12月23日開示された裁判記録を閲覧したところ、判決理由は  争点1 憲法22条1項(職業選択の自由)に違反するか……「視覚障害者であるあマ指師の職域を優先し、その生計の維持が著しく困難とならないようにすることを重要な公益と認め、その目的のために必要かつ合理的な措置としてあはき法19条1項を定め、これを今なお維持している立法府の判断が、その政策的・技術的な裁量の範囲を逸脱するもので著しく不合理であるとはいえない。したがって、あはき法19条1項は、視覚障害者以外の者を対象とするあマ指師の養成施設等を設置しようとする者及びあマ指師の資格を取得しようとする視覚障害者以外の者の職業選択の自由を制約するものとして憲法22条1項に違反するということはできない。」  争点2 憲法31条(適正手続きの保障)、同13条(幸福追求権)に違反するか……あマ指師の総数及びあマ指師の養成施設等の生徒の総数のうちに視覚障害者以外の者が占める割合というような重要な勘案事情を例示するなどして、厚生労働大臣等の裁量判断が恣意に流れないようにする配慮がされていることからすれば、同項の規定が処分要件等の曖昧不明確さゆえに憲法31条、13条に違反するということはできない。  争点3 あはき法19条1項を本件申請に適用することが憲法22条1項、31条、13条、14条1項に違反するか……原告は、憲法22条1項、31条、13条に関して適用違憲を主張するが、同主張は、その実質において争点1及び2の法令違憲の主張と同じである。あはき法19条1項が、憲法22条1項、31条、13条に違反しないことは前述のとおりであるから、原告の主張を採用することはできない。また、憲法14条1項(法の下の平等)違反の主張に関して原告が指摘する昭和57年の定員増加の承認(中和鍼灸専門学校)については、本件申請(30名)より少ない10名の定員の増加であったこと、申請に係る専門学校のあはき科の定員20名に対し、その6.5倍から7.6倍もの志願者が過去3年間で毎年存在したこと、当時の中央審議会においても定員増加を認めて差し支えないとの意見であったことなどの当該事案に固有の事情に基づいて承認がされたものと認められるから、これと事情の異なる本件申請に対し、厚生労働大臣が本件処分をしたことが、上記の事案との関係において、憲法14条1項に違反する不合理な差別に当たるということはできない。  結論……「以上のとおり、憲法違反という原告の主張はいずれも採用することができず、あはき法19条1項を適用した本件処分が違法であるということはできない。よって、原告の請求は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。」と記録されています。  なお、平成医療学園横浜医療専門学校(岸野雅方理事長)の控訴は、当日まで行われていません。控訴期限が判決日の翌日から2週間となっていることから、2020年1月7日以降に判明することになります。 ※ 「点民」2020年1月増刊は、本判決の要旨を原文のままお届けします。 あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律 19条訴訟における東京地方裁判所判決に対する声明 あん摩師等法19条連絡会 代表者 竹下義樹  わが国においては、長年にわたりあん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師が、視覚障害者の生業の中心となり、視覚障害者の職業的自立を支えてきました。ところが、戦後に至り晴眼者がこの分野に数多く進出してきたことから、この分野における視覚障害者の職業的占有率が低下し始めたことを受け、視覚障害者の職業的自立を維持する目的で、1964年(昭和39年)にあん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(以下、「あん摩師等法」と略します)が改正され、その19条1項に「当分の間、文部科学大臣又は厚生労働大臣は、あん摩マツサージ指圧師の総数のうちに視覚障害者以外の者が占める割合、あん摩マツサージ指圧師に係る学校又は養成施設において教育し、又は養成している生徒の総数のうちに視覚障害者以外の者が占める割合その他の事情を勘案して、視覚障害者であるあん摩マツサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするため必要があると認めるときは、あん摩マツサージ指圧師に係る学校又は養成施設で視覚障害者以外の者を教育し、又は養成するものについての第二条第一項の認定又はその生徒の定員の増加についての同条第三項の承認をしないことができる。」という規定が設けられ、今日に至っています。 これに対し、平成医療学園グループは、福島県、神奈川県、大阪府及び兵庫県に設置したはり師きゅう師を養成する専門学校ないし大学にあん摩マッサージ指圧師の養成課程を新設するための施設認定請求があん摩師等法19条1項によって厚生労働大臣及び文部科学大臣によって棄却されたことから、2016年(平成28年)7月に認定処分取消訴訟を仙台地方裁判所、東京地方裁判所及び大阪地方裁判所に訴訟を提起しました。 そこで、視覚障害者団体や鍼灸マッサージの職業団体等の関係16団体が結集して「あん摩師等法19条連絡会」を結成し、平成医療学園グループが提起した訴訟は視覚障害者の職業的自立を破壊するものであり、自らの利益のみを図ろうとするものであるとして、その主張の不当性を訴えてきました。平成医療学園グループは、かかる訴訟において、わが国では視覚障害者の職業領域が広がり、あん摩マッサージ指圧師の分野において視覚障害者を特に保護する必要性はなくなったとか、自らの学校経営という営業の自由が侵害されている等と主張し、あん摩師等法19条は憲法22条等に反していると主張してきました。しかし、平成医療学園グループの主張は、わが国において視覚障害者の職業的選択が未だ十分には保障されておらず、極めて狭い範囲でしか就労できていないという視覚障害者の就労実態に反するものであり、今なおあん摩マッサージ指圧師の分野においては視覚障害者の就業を保護する必要性は高く、あん摩師等法19条によって平成医療学園グループの営業の自由が合理的な理由によって制限されているとしても、これまでの最高裁判例等に照らしてもあん摩師等法19条の規定は憲法22条等に反するものではありません。 あん摩師等法19条が制定された1964年(昭和39年)当時のあん摩マッサージ指圧師における視覚障害者が占める割合は60%を超えていましたが、すでに設置されているあん摩マッサージ指圧師の養成施設から輩出される晴眼者が増え続けているため、今日においてはこの分野における視覚障害者の占有率は20%を切る状況となっています。そうした状況の下で、あん摩師等法19条による規制が緩和されるようなことがあれば、さらに晴眼者の占有率が加速度的に拡大し、この分野における視覚障害者の職業的自立は成り立たなくなります。また、あん摩マッサージ指圧師が乱造される事態はこの分野における質の低下を招き、国民の健康被害をも引き起こしかねない事態となります。私たちは、視覚障害を有するあん摩マッサージ指圧師の職業的自立を維持し、この分野における業界の秩序ある発展を期するためにもあん摩師等法19条は維持されるべきであり、国が平成医療学園グループの施設認定請求を棄却したことは極めて妥当なものであるとして、国の立場を支持してきました。 本日、東京地方裁判所が平成医療学園グループの主張を退け国の主張を正当なものとして判示したことは、私たちの切なる願いと合致するものであり、これを高く評価し支持します。私たちは、引き続き2020年(令和2年)2月25日に予定されている大阪地方裁判所における判決及び2020年(令和2年)4月27日に予定されている仙台地方裁判所における判決においても、本日の東京地裁判決と同様私たちの願いと合致する正当な判決が言い渡されることを切望するとともに、平成医療学園グループが本日の東京地裁判決を受け入れ、控訴しないことを強く要請します。 東京地裁の判決を受けて 日視連あはき協議会 前会長小川幹雄 平成医療学園グループが提訴したあん摩師等法19条裁判は、平成28年9月の大阪地裁から始まり仙台、東京と各15回の口頭弁論を終え、東京地裁でこのほど判決があった。  判決は被告の国の完全勝訴となり大変喜ばしい結論になった。  あん摩マッサージ指圧業で職業的自立と経済的自立そして社会参加を実現してきた視覚障害者にとってその判決の行方は重大なものである。  かつて経験したことのない裁判の対応に最初は戸惑ったが、幸いなことに会長が弁護士であったことで裁判に対する日盲連としての取り組みの組織化と運動の内容がスムーズに固まった。  この裁判は視覚障害者の死活問題だけでなく、あはき業界の質の低下を招くものとして業界全体の問題ととらえ、視覚障害者団体とあはき業関係団体に呼びかけて平成28年10月に「あん摩師等法19条連絡会」を結成した。そして運動を迅速に進めるために中央には日視連、全視協、理教連、日マ会、全鍼師会による幹事会と提訴された大阪、仙台、東京には各対策協議会を設けて行動を開始した。  日視連としての運動は口頭弁論の傍聴、はがき陳情、署名活動、それらを支えるための募金活動である。  裁判の傍聴は三つの裁判所全てで毎回傍聴席を埋められたことは各対策協議会の努力と関係者の熱い思いと協力に感謝するばかりである。なお、毎回口頭弁論の後、報告会での岡田、大胡田弁護士の解説も傍聴者には心強かった。  はがき陳情は1万2千セット3万6千枚を印刷して加盟団体の要求に応じて配布した。最終的には初年度で加盟団体61団体全てで行動を起こしてもらった。日視連挙げての取り組みができた。  署名は各加盟団体の活動による署名文を現在三つの裁判所とも3万筆近く各裁判所に送付した。  募金は初年度はほとんどの加盟団体と大会等での募金、個人や外部の協力者か らの浄財で500万円を超す金額が集まった。 裁判は原告の控訴が予定されるので高裁、最高裁と続くであろうが今後も団結して最後まで勝訴を勝ち取るまで頑張りたいと思う。 最新情報(日視連) 1 あはき19条違憲訴訟仙台地裁 第15回口頭弁論  平成医療学園グループの学校法人福寿会・福島医療専門学校が、あマ指師養成課程の新設を国に申請し、非認定処分とされたことで、その処分取り消しを求めて、仙台地裁に提起した裁判の第15回 口頭弁論が、12月2日15時から、101号法廷で開かれた。裁判傍聴には、東北の各県と東京・北関東から、日本視覚障害者団体連合、日本あん摩マッサージ指圧師会、日本理療科教員連盟、全日本視覚障害者協議会、盲学校の同窓会会員など94名が参集(傍聴席は79席)。  裁判では、原告より準備書面の陳述があった。裁判長より「証人の申請は却下す ること。今回を持って終結とすること」が告げられ、判決を4月27日15時と定め、結審した。  その後、記者クラブで記者会見が行われた。会見では、あはき等法19条を守る東北協議会の及川清隆会長、大胡田誠弁護士、日マ会の安田和正会長から、違憲訴訟の経緯や、被告の国を支援している趣旨及び地域社会への今後の影響など、説明があり理解を求める話をされた。質疑応答も行われ、各記者の関心が示された。  並行して、戦勝復興記念館に会場を移動して第14回集会が63名の参加で開かれた。山形県視覚障害者福祉協会の竹田昭博会長の司会で、第18回幹事会報告が各担当幹事から報告された。記者会見後、到着した大胡田弁護士は「この19条が守られないとなると、同じような弱者を救うための法律が全て違憲となる可能性がある。その意味では、裁判は大きい意味がある」などと語られた。最後に福島県の武藤永治総務から、判決までの活動方針である19行動を行うこと、本年中にマッサージ未来6号を発行することが提案され、それを承認し、閉会した。 点字JBニュース 第6828号より 2 あん摩師等法19条訴訟(東京地裁) 原告控訴について あん摩師等法19条連絡会事務局  既にご存じの通り、12月16日東京 地裁の判決において、原告の請求が棄却されました。  その後の控訴の有無について東京地裁に確認したところ、12月26日に控訴していることが確認できました。 以上、ご報告いたします。