2020年2月25日 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律19条訴訟における大阪地方裁判所判決に対する声明 あん摩師等法19条連絡会 代表者 竹下義樹  わが国においては、長年にわたりあん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師が、視覚障害者の生業の中心となり、視覚障害者の職業的自立を支えてきました。ところが、戦後に至り晴眼者がこの分野に数多く進出してきたことから、この分野における視覚障害者の職業的占有率が低下し始めたことを受け、視覚障害者の職業的自立を維持する目的で、1964年(昭和39年)にあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律(以下、「あん摩師等法」と略します)が改正され、その19条1項に「・・・当分の間、文部科学大臣又は厚生労働大臣は、・・・視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするため必要があると認めるときは、あん摩マッサージ指圧師に係る学校又は養成施設で視覚障害者以外の者を教育し、又は養成するものについての・・・認定又はその生徒の定員の増加についての・・・の承認をしないことができる。」という規定が設けられ、今日に至っています。 これに対し、平成医療学園グループは、福島県、神奈川県、大阪府及び兵庫県に設置したはり師きゅう師を養成する専門学校ないし大学にあん摩マッサージ指圧師の養成課程を新設するための施設認定請求があん摩師等法19条1項によって厚生労働大臣及び文部科学大臣によって棄却されたことから、2016年(平成28年)7月に認定処分取消訴訟を仙台地方裁判所、東京地方裁判所及び大阪地方裁判所に提起しました。 そこで、私たちは、「あん摩師等法19条連絡会」を結成し、平成医療学園グループが提起した訴訟は視覚障害者の職業的自立を破壊するものであり、自らの利益のみを図ろうとするものであるとして、その主張の不当性を訴えてきました。平成医療学園グループは、かかる訴訟において、あん摩師等法19条は憲法22条等に反していると主張してきました。しかし、平成医療学園グループの主張は、わが国において視覚障害者の職業的選択が未だ十分には保障されておらず、今なおあん摩マッサージ指圧師の分野においては視覚障害者の就業を保護する必要性は高く、これまでの最高裁判例等に照らしてもあん摩師等法19条の規定は憲法22条等に反するものではありません。 あん摩師等法19条が制定された1964年(昭和39年)当時のあん摩マッサージ指圧師における視覚障害者が占める割合は60%を超えていましたが、すでに設置されているあん摩マッサージ指圧師の養成施設から輩出される晴眼者が増え続けているため、今日においてはこの分野における視覚障害者の占有率は20%を切る状況となっています。そうした状況の下で、あん摩師等法19条による規制が緩和されるようなことがあれば、さらに晴眼者の占有率が加速度的に拡大し、この分野における視覚障害者の職業的自立は成り立たなくなります。また、あん摩マッサージ指圧師が乱造される事態はこの分野における質の低下を招き、国民の健康被害をも引き起こしかねない事態となります。私たちは、視覚障害を有するあん摩マッサージ指圧師の職業的自立を維持し、この分野における業界の秩序ある発展を期するためにもあん摩師等法19条は維持されるべきであり、国が平成医療学園グループの施設認定請求を棄却したことは極めて妥当なものであるとして、国の立場を支持してきました。 本日、大阪地方裁判所が昨年12月16日の東京地裁の判決と同様に、平成医療学園グループの主張を退け国の主張を正当なものとして判示したことは、私たちの切なる願いと合致するものであり、これを高く評価し支持します。