55ページ 第3節 生活(買い物、契約) 1.はじめに                  日常生活の中でも、弱視者は多くの不便さを抱えており、懇談会を通して、様々な困り事が判明した。  例えば、店舗での買い物を一つとっても、様々な困り事がある。それこそ、商品を探したり値段や賞味期限などを確認することは難しく、店内の明るさや陳列の仕方によってはさらに見づらくなることがある。また、近年増え始めているセルフレジや飲食店の食券券売機、注文用の電子端末などの新たな設備については、画面が見づらかったり、操作方法が分からないなどの問題があり、不便さを訴える弱視者が多い。さらに、店舗での買い物においては、こうした困り事を解決するため、店員の積極的で柔軟な対応が望まれるが、そもそも店員を見つけづらかったり、不適切な対応をされることもあり、困り事を抱えながら生活をする弱視者は多いとされている。  一方、インターネットでの買い物は、自分が必要としている商品をじっくり探すことができ、なおかつ自宅まで配送してくれることから、弱視者の中でも利用する者が増えている。しかし、ショッピングサイトで商品を検索する際の検索ボックスが見づらかったり、購入手続きの途中で画像認証を求められたりと、弱視者特有の困り事が多く、さらなる改善が望まれている。  さらに、懇談会では、契約行為に関する困り事も多く寄せられた。例えば、銀行口座の開設やローンの契約、生命保険などの契約では、書類への記入がそもそも難しく、書くこと・読むことに困っている弱視者が多かった。そのため、少し見えている弱視者でも、行員などに代読・代筆をお願いするのだが、実際には対応してもらえないケースもあり、こちらもさらなる改善が望まれる。  このように、日常生活で弱視者が困っていることは多岐にわたっている。  本節では、日常生活の中でも特に身近で重要な買い物と契約における弱視者の困り事を紹介し、それらを解決するための方法を提案する。 56ページ 2.第3節で紹介される設備や用語について   (1)画像認証・パズル認証  ショッピングサイトやネット決済サービスなどにおいて、不正アクセス防止のために、ログイン時や決済時に視覚に依存する認証方法。画像認証ではゆがんだ文字を読み取って入力することが求められる。パズル認証では、イラストの中の男の子にメガネのアイコンを重ねるなどの操作が求められる。いずれも弱視者には難しい操作になる。 (2)代読・代筆  書面などを読むことができない者、記入することができない者が、自らの意思で他者に依頼し、他者が代わりに書面などを読み上げたり、記入をしたりする行為。視覚障害者においては、日常的な書類から、銀行などの契約書類や利用規約、約款など、様々な用途での利用が求められている。  なお、銀行関連では、金融庁より、金融機関関係団体などに対して「視覚障がい者に配慮した取り組みの積極的な推進について(要請)」(※1)という文書を送付し、この中で視覚障害者に対して代読・代筆を金融機関が規定化し、実施していくことを強く求めている。 (※1)出典情報 http://www.fsa.go.jp/news/22/ginkou/20100826-1/01.pdf 57ページ コラム「日常生活用具給付等事業」「補装具費支給制度」の活用  「視力が落ちて文字の読み書きが難しくなってきた。好きな読書を続けたい」  「今まで使っていた体温計が使えなくなって困っている」  「時計が見づらくなってきた。見やすい時計や音声で時間を知らせてくれる時計はないかな?」  こんなことで困っている場合は「日常生活用具給付等事業」「補装具費支給制度」を活用してみてください。  視覚障害者が使用する機器や製品は一般的に流通しているものが少なく、どうしても高価になってしまいます。そこで購入費を補助する仕組みがこれらの事業や制度になり、障害福祉サービスの1つになります。日常生活用具の給付品目や条件は自治体によって異なりますが、拡大読書器、音声体温計、音声時計・触読時計、音声体重計、血圧計、デイジー機器や点字ディスプレイなど、視覚障害者の生活を助ける便利な用具が対象になっています。また、補装具として白杖や眼鏡、義眼が給付されます。  「こんな製品はないかな」と思ったら、専門の販売店や地域の視覚障害者団体、又はお住いの市区町村の障害福祉担当部署に問い合わせ下さい。  ●専門の販売店の一例 社会福祉法人 日本盲人会連合 用具購買所 電話:03−3200−6422 58ページ 第1項 店舗での買い物 1.店員の対応                          ●困っていること  スーパーなどでは店員が少なくて困る。また、目視では店員と利用客の区別がつきづらい。 事例  商品の場所や値段などが分からない時、弱視者も店員に聞くことがあるが、スーパーなど小売店の店員が少なくて見つけられないことがある。また、店員と利用客の区別がつきづらく、声をかけづらいこともある。なお、一部の家電量販店やコンビニのように、目立つユニフォームを着ているお店では、弱視者が店員を見つけやすくなることがある。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  店員を増やすとともに、見やすいユニフォームやエプロンなどを着用することによって、店員を認識しやすくしてほしい。また、「いらっしゃいませ」などの声かけを積極的にしてほしい。 59ページ ●困っていること  サポートをお願いした店員から、自分の見え方や行動に見合ったサポートが受けられない。 事例  弱視者の場合、本人の視力や見え方の個人差が大きい。また、店内の照明や時間帯などによっても見え方が変わってくる。そのためハード面での対応やマニュアルによる画一的な対応にはどうしても限界がある。そこで、店員からの積極的な声かけやサポートが重要となる。しかし、店員自体が弱視者の支援方法を理解していなかったり、弱視者は「少しは見える=少しはできる」という先入観から、弱視者にとって満足なサポートが実施されないことが多い。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  店員からの積極的かつ柔軟な声かけやサポートをさらに充実させてほしい。また、弱視者を含めた多様な利用客を想定した接遇研修なども充実させてほしい。 ウ 弱視者自身が注意したいこと  困ったことがあれば、恥ずかしがらずに「値札が読めないので、この商品の値段を教えてもらえますか?」「〇〇はどちらにありますか?」など聞くことが大切。店員や周りの人に聞くことによって、大半の困りごとが解決します。 60ページ 2.設備関連  ●困っていること  セルフレジの画面が見づらく、操作方法が分かりづらい。 事例  近年、スーパーなどではセルフレジの導入が増えており、コンビニエンスストアでも導入が進んでいる。しかし、弱視者からは、セルフレジの画面が見づらいことや、操作方法の分かりづらさについての不満が多い。さらに、セルフレジの普及によって店員が減ることも懸念される。弱視者も商品の位置や価格、商品情報などを店員に聞くことがあるため、店員が減ることはとても困る。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  セルフレジの画面のアクセシビリティ向上、操作方法の分かりやすさの向上を進めてほしい。  また、セルフレジの普及に伴い、店員を削減することのないようにしてほしい。 ●困っていること  呼び出しボタンで店員を呼びたいが、使えないことが多い。 事例  スーパーやショッピングモールなどの入口には呼び出しボタンを設置している店舗があるが、その近くに買い物カートや商品などが置かれていて、呼び出しボタンまで辿りつけないことがある。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  呼び出しボタンの前にはカートや商品を置かないように店内のルールを改善してほしい。 イ みんなに知ってほしいこと  弱視者もスーパーやショッピングモールを利用すること、呼び出しボタンそのものの存在などを広く知ってもらい、呼び出しボタンの前にカートなどを置かないようにしてほしい。 61ページ 3.商品探し  ●困っていること  新商品の陳列などにより商品の置き場所が変わるのが困る。 事例  いつも買う商品は場所を覚えておき、その記憶を頼りに買い物をしている弱視者は多い。そのため、棚卸や新商品の陳列などで商品の場所が変わってしまうと、探している商品の場所が分からず、困ってしまう。このことは、弱視者だけでなく一般の利用者にとっても分かりづらい。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  商品の位置が変わっていることの周知や新たな陳列を誰にでも見やすくする配慮がほしい。特に、弱視者にとっては、店内放送や店員さんの声かけなどがあると安心をする。 ●困っていること  パンや総菜、生鮮食品など、商品によっては取りづらいものがある。 事例  弱視者の場合、商品に目を近づけたりルーペで確認することがあるが、商品の種類によっては見づらかったり、取りづらいものがある。特に、パンや総菜など、直接トングで取る商品はとても困る。また、生鮮食品などは周囲の目や食中毒への不安などから、目を近づけて見ることに抵抗を感じる。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  お店の店員に商品を取ってもらうことや商品内容の読み上げなど、店員からのサポートを積極的に行ってほしい。 62ページ 4.値札                            ●困っていること  商品の値札や賞味期限などの商品情報が見づらくて困る。 事例  最近のスーパーでは、商品の値札がデジタル表示になっているため、暗くて見づらいことがある。また、商品の定価とは別に値引きシールが貼られていることがあるが、そのシールが貼られていることが分からなかったり、値引きの内容を見間違えることがある。さらに、目を近づければ値札を見ることができるが、周りから変に思われてしまうと思うと不安を感じる。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  値札などの商品情報や店内掲示について、見やすさの改善を行ってほしい。 イ みんなに知ってほしいこと  弱視者もスーパーやショッピングモールを利用すること、目を近づけて値札や商品情報を見ていることなどを広く知ってもらい、自然なサポートを行ってほしい。 63ページ 5.クレジットカードでの決済                 ●困っていること  決済時のサインをどこに書いていいのかが分かりづらい。 事例  クレジットカードで決済しようとする際、サインを求められることがある。この場合、弱視者にとっては、署名欄の線がハッキリしないことや、署名欄自体が小さいことがあるため、どこに、どのくらいの大きさでサインをすればいいのかが分かりづらい。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  サインする場所を太枠で囲む、あるいは店員が分かりやすく場所を伝えるなどの改善をしてほしい。 ウ 弱視者自身が注意したいこと  店員に対して「どちらにサインすればよいですか?」と聞くことで解決できることがある。また、サインガイドなどのグッズを活用することで、サインがしやすくなるので、利用方法を習得しておくことも大切である。 【参考写真:サインガイド】サインをする場所に置くと、サインをする場所が分かりやすくなり、サインがしやすくなる道具。 64ページ 第2項 飲食店 ●困っていること  タッチパネル式の端末から商品を注文するお店が増えているが、画面が見づらく、操作方法が分かりづらい。 事例  居酒屋や回転ずし店などを中心にタッチパネル式の端末で注文する飲食店が増えている。しかし端末の画面が見づらかったり、操作方法が分かりづらいなど、弱視者にとっては注文しづらくなっている。また、このようなお店では店員の数が少ないことが多く、店員に直接注文すること自体も難しい場合がある。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  注文端末の見やすさ、操作性を改善してほしい。例えば通常の白背景・黒文字の画面に加えて、色を反転した黒背景・白文字の表示モードを設ける、または文字サイズを拡大できるようにするなどのアクセシビリティ機能の実装を検討してほしい。  さらに、スマートフォンから注文できる仕組みなど、ITを活用した注文システムについても検討が望まれる。 65ページ ●困っていること  食券を先に買う場合、操作が分かりづらいため、店員さんにお願いすることもある。ただ、混んでいる場合はお願いしづらい。 事例  食券の券売機は、ボタンが見づらかったり、操作方法が分かりづらいことがある。特に、タッチパネル式の券売機は使いづらいことが多い。そのため、自分の後ろにお客さんが並んでいる時などは焦ってしまうことが多い。また、どうしても券売機の操作が分からない時は店員さんにサポートをお願いするが、お昼時など混んでいる時間帯はお願いしづらい。  これらのことが心理的なハードルとなって、食券制の飲食店の利用そのものを躊躇する場合もある。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  券売機の見やすさ、操作性を改善してほしい。また、スマートフォンから注文できる仕組みなどITを活用した注文システムについても検討が望まれる。こうしたシステムがあれば、自分の見やすい文字の色や大きさで事前にメニューを確認できるのでとても助かる。 イ みんなに知ってほしいこと  弱視者も飲食店を利用すること、目を近づけて券売機を使っていることなどを広く知ってほしい。そして、弱視者に対して自然なサポートを行ってほしい。 66ページ 第3項 自動販売機 ●困っていること  自動販売機の商品は見づらく、判別がしづらい。 事例  自動販売機の商品名や値段などは見づらく、買いたい商品がどこにあるのか分かりづらい。また、欲しい商品と似たパッケージの別の商品を誤って買ってしまうこともある。さらに、比較的新しい自動販売機の中にはタッチパネル式のものがあるが、目を近づけたりルーペで確認しようとした時、誤って他のボタンに触れてしまうこともある。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  自動販売機の見やすさ、操作性を改善してほしい。また、スマートフォンから購入できる仕組みなどITを活用したシステムについても検討が望まれる。 イ みんなに知ってほしいこと  弱視者も自動販売機を利用すること、目を近づけて商品を確認していることなどを広く知ってもらい、自然なサポートを行ってほしい。 ●困っていること  自動販売機は、商品の場所が定期的に変わるので困る。 事例  いつも買う商品は場所を覚えているが、定期的な入れ替えで商品の場所が変わってしまうことがあり、気付かずに別の商品を買ってしまうことがある。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  水は左上と決めるなど、商品の場所を固定してほしい。特に水については、災害発生直後の飲料用、薬の服用などにも必要であるため、合理的配慮の観点からも場所の固定が必要になる。 67ページ 第4項 洋服関連 ●困っていること  洋服のサイズや色の表示は、ブランド・販売店ごとにばらつきがあり、見づらいものが多い。 事例  洋服を購入する際、サイズや色・柄、洗濯方法などを確認するが、これらの情報が記載されたタグの表記方法はブランドや販売店によって異なっている。そのため、いくつものタグをすべて確認しなければならず困ることがある。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  サイズや色・柄、素材、洗濯方法など洋服の購入に必要な情報は分かりやすく表示してほしい。 ●困っていること  どの服が似合うのかが分からないので、店員さんに聞いてしまうことが多い。また、「カジュアル」なのか「フォーマル」なのか、服のTPOが分かりづらい。 事例  細かい柄や色合いが分からないので、どの服とどの服が似合うのか、似合わないのかの判断がしづらい。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  店員から分かりやすい説明や提案をしてほしい。 ウ 弱視者自身が注意したいこと  当事者同士で洋服のTPOやスタイリングについて情報共有する場があるとよい。 68ページ ●困っていること  洋服店でウィンドウショッピングをすることができない。 事例  欲しいものを決めて買いに行くことはできるが、店内を歩きながらのウィンドウショッピングは難しい。店員にサポートをお願いすることはできるが、何か買わないと申し訳ないような気持ちになる。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  一部の大手デパートではコンシェルジュサービスを提供している。このように気軽にウィンドウショッピングができるサービスを普及させてほしい。 ウ 弱視者自身が注意したいこと  店員と仲良くなるとサポートを受けやすかったり、適度に見守ってくれるようになる。また、商品を買わなくても気兼ねなくウィンドウショッピングがしやすくなる。 ●困っていること  洋服を購入した後、色の組み合わせなどのコーディネートを覚えたり管理をすることが大変。 事例  細かい柄や色合いが見えづらくなると、どの服とどの服が似合うのかの判断がしづらくなり、持っている服でも、上手くコーディネートをすることができなくなる。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  持っている洋服を管理したり、コーディネートを提案してくれるアプリや仕組みを開発してほしい。 ウ 弱視者自身が注意したいこと  購入した洋服を色の濃い順に並べて管理する、タグの一部を切るなどのちょっとした工夫で洋服の管理がしやすくなる。また、色を識別して教えてくれるグッズやアプリもある。 69ページ コラム 洋服のコーディネートに役立つツール 洋服の色を知るツールやコーディネートを提案するアプリを使うと、今までよりもおしゃれが楽しくなることがあります。代表的なものを紹介します。 1.色を判別するツール (1)音声色彩判別装置「カラリーノ」  https://rabbit-tokyo.co.jp/caretec#colorino  色を知りたいものの表面に本体を当て、読み取りボタンを押すと、センサーが色を測定して音声で教えてくれる。 (2)さわって色が分かるタグ「いろポチ」  https://iropochi.jimdo.com/  色の相関関係を表した「色相環(しきそうかん)」を基本に、ポチポチと穴で洋服やバッグの色を識別するタグ。 2.便利なアプリ (1)洋服のコーディネートを支援するアプリ「FCSユーザアプリLite」  http://connectdot.jp/FashionCoordinateTag/  持っている服の色や柄、触って分かる特徴などを登録できる。また、洋服のコーディネートを保存したり、その時の感想や家族・友人の評判などをメモとして保存できる。別売りのICタグを使用することで、登録した洋服の情報を簡単に呼び出すことができる。 70ページ 第5項 インターネットでの買い物 ●困っていること  ネットで商品を購入する際、決済時に画像認証があり、弱視者はその画像を見て入力することできず困っている。 事例  ショッピングサイトやネット決済サービスなどにおいて、不正アクセス防止のために、ログイン時や決済時に画像認証やパズル認証といった視覚に依存する認証を求められることが増えている。このような認証では、ゆがんだ文字を読み取ったり、アイコンをドラック&ドロップするなど弱視者には難しい操作が必要となっている。  一方で、視覚障害者に対してこうした認証の代わりに電話などの方法で認証を行っているサイトもあり、これは助かっているという声も報告されている。 ア 制度やルールを変えてほしいこと   視覚に依存しない認証の仕組みを開発・普及してほしい。また、電話など代替手段も併せて提供してほしい。 ●困っていること  ネットショップにおいて、検索で欲しいものを見つけることが難しく、困っている。 事例  ショッピングサイトなどで商品を探す際、サイト内検索を使うことがあるが、検索のためのテキストボックスが小さかったり、商品カテゴリーの選択が難しかったりして、目的のものを見つけるのに大変なことがある。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  検索のための入力をしやすくする、商品の絞り込みをしやすくするなど、ショッピングサイトのアクセシビリティ、ユーザビリティ向上に向けた取り組みをさらに充実させてほしい。 71ページ 第6項 銀行 1.店舗 ●困っていること  行員や警備員にサポートしてもらうことが多いが、誘導やサポートが不適切で困ることがある。 事例  銀行では書類の記入やATMの操作など、弱視者にとって負担となることが多い。そのため、行員や警備員にサポートをお願いすることがあるが、誘導やサポートが不十分・不適切で不快な思いをすることがある。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  銀行内での誘導やサポート方法について、行員や警備員への研修などをさらに充実させてほしい。 ●困っていること  お金を借りるなどの契約行為では書類が多く、記入が大変。 事例  ローンの契約などにおいて、契約書の文字が細かくて読みづらかったり、書類への記入事項が多く、目への負担が大きい。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  記入用紙のレイアウトや枠線を工夫することにより、書類を見やすく、記入しやすくしてほしい。この点は、高齢者などの意見も踏まえて改善を進めてほしい。 72ページ 2.ネットバンク                        ●困っていること  ネットバンクは残高照会や振込などには便利だが、お金を借りることなどの契約については、結局、紙の書類が必要となり、不便を感じている。 事例  カードローンや住宅ローンの契約などを行う際、最初の申し込みは銀行ウェブサイトから行うことができるが、その後、契約書やその他書類が郵送され、記入を求められることが多い。ウェブ上ですべての申し込みが完了できればとても助かる。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  一部の銀行では、カードローンの申し込みなどをインターネット上から行えるので、これをもっと普及させてほしい。また、同時に、ネットバンキングサービス全体のアクセシビリティ向上についても継続して取り組んでほしい。 73ページ 3.代読・代筆                         ●困っていること  銀行で代読・代筆を希望すると、希望する内容ほど対応してくれないことが多く、困っている。 事例  口座を作る時やお金を預ける時は銀行の行員が代筆などを丁寧に対応してくれるが、お金の引き出しやローンの契約では代筆を全く行ってくれないことが多い。   ア 制度やルールを変えてほしいこと  全国の金融機関に対して、金融庁から代読や代筆に関する通達が出されており、原則的には対応することになっているので、これを確実に進めてほしい。 ウ 弱視者自身が注意したいこと  どんな場合に、どこまで代読・代筆が可能なのかを学び、正しい知識を持って交渉することが大切である。なお、簡易裁判所に申し出ることで認められるケースがある。この点は視覚障害当事者にはあまり知られていない。 74ページ 4.ATM                          ●困っていること  タッチパネル式のATMは操作が難しい。 事例  タッチパネル式のATMは、画面が見づらかったり、操作方法が分かりづらい機種がある。特に誤った操作をした場合、元の画面に戻る方法が分からずに混乱をしてしまう。  また、受話器とプッシュボタンのついたユニバーサルデザインのATMが普及しつつある。これは嬉しいことだが、残高照会や引き出しはできるものの振込はできない。そのため、窓口で振り込みを依頼することになるが、必要以上の手数料がかかってしまう。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  タッチパネル式ATMについて、文字色と背景色の組み合わせを変更したり、文字サイズを調整できるようにするなど、アクセシビリティの改善を進めてほしい。 ウ 弱視者自身が注意したいこと  受話器付きのATMの普及が進んでいる。こうしたユニバーサルデザインのATMの操作方法を学び、活用することで、自ら金銭管理を行うことができるようになる。 75ページ 第7項 生命保険 ●困っていること  保険契約を断られたり、不利な契約を結ばされたことがある。 事例  弱視の場合、進行性の病気と判断されることがあり、契約を断られたケースがある。この場合、同じ内容の契約で、全盲の者は進行性ではないと判断され、契約できた事例もある。また、契約はできても、目に関する手術などについては支払がされない保険契約になっていることもあり、不平等に感じることもある。  ア 制度やルールを変えてほしいこと  弱視でも保険契約できるように、保険会社には弱視への理解を深めてほしい。 ウ 弱視者自身が注意したいこと  保険の契約は事前相談が大切。もし、障害の状況などを報告しなかった場合、告知義務違反になることがある。 ●困っていること  契約の際、タブレットを用いた書類記入が難しい。 事例  保険契約の際の記入やサインを外交員が持っているタブレット端末で行うことが増えている。端末が見づらかったり、操作方法が分からないため、外交員に代理で操作してもらったことがあるが、本当に良かったのかと不安が残る。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  タブレット端末や専用アプリのアクセシビリティを改善して、弱視者でも契約手続きができるようにしてほしい。 ウ 弱視者自身が注意したいこと  保険外交員による代筆や代理入力について、保険会社と弱視者の双方が、どこまで支援ができるかを理解しておく必要がある。 76ページ 第8項 契約行為 ●困っていること  契約書の記載欄のレイアウトが分かりづらく、記入ができない。 事例  契約書の記入欄のレイアウトが複雑で、さらに、枠線の色が薄かったり枠線自体が細かったりして、見づらい内容が多い。そのため、どこに何を記入すればよいのか分かりづらいことがある。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  契約書の記載欄のレイアウトを見すくするだけで、自署ができる弱視者は確実に増える。そのため、各種申込用紙や契約書類などは、記入する欄の枠線を太くしたり、記入欄自体を目立つ場所に配置するなどの改善を図ってほしい。