17ページ 第3章 弱視者の日常 19ページ 第1節 移動全般 1.はじめに                  視覚障害者にとって、大きな困り事の1つは「移動」である。  視覚障害者は、目視での確認ができないまたは確認がしづらいため、移動の様々な場面で困ることが多く、移動をしやすくするための改善を求める声は多い。一方で、移動に関するバリアフリーは着実に進展しており、ハード面でのバリアフリー化、周りからの声かけなどのソフト面での支援が増えており、少しずつ移動での困り事は改善され始めている。  しかし、弱視者においてはこのバリアフリー化の恩恵を十分に受けられず、実は困っていることが多いと言われている。  例えば、弱視者は見え方の個人差が大きいため、「何が一番見えやすいか」は人によって大きく異なっている。バリアフリー化を受けて、駅で行先を示す看板や時刻表などが設置されるようになったが、弱視者においては、その看板が見えやすい者もいれば、逆に見えにくいと感じる者もいる。また、周りの人からのサポートについては、一部の弱視者は白杖を持たないことがあるため、周りから視覚障害者と認識されず、お願いをしても理解されないことがある。  このようなことがあるため、弱視者は自分から周りの人にお願いができず、結果的にその困り事を抱えてしまうことがある。  弱視者は、自分にとって見えやすい環境であれば1人で移動することができるが、見えにくい環境では途端に移動ができなくなってしまう。つまり、移動をすることの困難さが弱視者それぞれによって異なることから、ハード面・ソフト面での支援を多様化せざるをえない。しかし、現在の支援には、弱視者の多様性は考慮されておらず、結果として弱視者の困難さだけが残されてしまう。  この困難さを除去するためには、社会全体が弱視者の行動や困り事を理解し、その困り事に対する積極的な支援が必要である。  そこで本節では、弱視者が移動において「困っていること」を紹介し、どのようなことを改善してほしいのかを提案する。 20ページ 2.第1節で紹介される設備や用語について   (1)音響式信号機  交差点で、メロディーや鳥の鳴き声(ぴよぴよ、かっこうなど)が流れる信号機を利用したことがあるだろうか。これらの音の出る信号機は「音響式信号機」と呼ばれている。音が鳴っている間は信号が青であることを意味し、音が鳴っていない間は赤信号を意味している。視覚障害者はこの音を頼りに横断歩道を渡るため非常に大切な存在である。 (2)点字ブロック(視覚障害者誘導用ブロック)  点字ブロックは、正式には「視覚障害者誘導用ブロック」と呼ばれている。これは、視覚障害者が安全に移動をするための重要な「道」になり、道路だけではなく、駅や施設などの様々な所に敷設されている。また、近年では横断歩道に敷設された点字ブロック(エスコートゾーン)も増えてきている。  なお、点字ブロックには大きく3つの種類がある。視覚障害者の誘導を目的とした線状ブロック、注意喚起を目的とした点状ブロック、そして主に駅ホームの端に敷設されている内方線付き点状ブロックの3種類になる。 (3)白杖(はくじょう)  白杖は、正式には「盲人安全つえ」と呼ばれている。視覚障害者が白杖を使う理由としては、杖先での安全確認があり、例えば、階段を下りる時は、階段の深さや位置を確認するなど、自分の進む方向の安全を確認するために利用をしている。また、白杖を持つことで周りから視覚障害者と認知されることも機能の1つである。  なお、移動方法や白杖の使い方により、白杖の種類は大きく異なっており、視覚障害者は自分に合った白杖を選んで利用をしている。例えば、安心して歩きたい場合には直杖と呼ばれる1本の棒状の杖を使い、外出頻度が高い場合は折りたたみ可能な白杖を使う者が多い。また、足元や障害物の確認は特に必要ではないが、周囲に視覚障害があることを伝えたい場合には細身で軽いシンボルケーンを利用する者もいる。さらに、体を支えながら歩行をする者向けの白杖(身体支持併用杖)もあり、視覚障害者のニーズや用途に合わせて様々な種類がある。 (4)歩行訓練  視覚障害者は、目から得られる情報を収集しながら歩くことが困難である。そのため、音や匂いや日差しなど、目で確認する以外の感覚を駆使して情報を収集し、安全確認や方向確認をしながら歩行している。  ただし、こういった歩行は1人では修得が難しいことから、歩行訓練と呼ばれる訓練を受ける者も多い。歩行訓練は、専門の訓練士が、その者の見え方や特性、要望を考慮した上で、最適な移動方法や移動技術を指導している。 (5)スマートサイト(ロービジョンネットワーク)  視覚に障害を負うと、様々な支援や訓練などが必要になるが、視覚障害に関する情報はなかなか入手が難しいため、支援や訓練などに辿りつかないことがある。そのため、視覚障害者に必要とされる支援や訓練などに関する情報を集めたインターネットの情報サイトやチラシが活用されている。これらはスマートサイトと呼び、ワンストップで情報が集められることから活用が進んでいる。  なお、近年では、この考えがさらに進み、地域の眼科医や福祉団体、訓練機関などが連携し、地域での視覚障害者支援をワンストップで行うことを目的とした地域組織が作られている。これらの組織もスマートサイトと呼ばれ、ロービジョンネットワークとも呼ばれている。 22ページ 第1項 信号機、道路 1.信号機                            ●困っていること  信号機の表示が見づらい時がある。 事例  信号機の表示は、信号機の高さや表示位置などによって見づらいことがある。また、時間帯や天候、電光看板など周囲の環境、当事者の視力や見え方によっても、その見やすさは変化する。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  近年、弱視者の見やすさに考慮して、低い位置に設置された補助信号機も増えてきている。設置においては、弱視者の意見を考慮した上で見やすさを意識した信号機の設置を進めてほしい。  また、普段から使っているスマートフォーンなどを用いて信号の色を確認できる仕組みがあれば利用をしたい。 【参考写真 低い位置に設置された補助信号機】目を近づけて見ることができる 23ページ 2.交通弱者用の音声・音響案内                ●困っていること  信号機の音声・音響案内は、情報の伝え方が不十分・不適切なことがあり、不安や危険を感じることがある。 事例  信号機の音声・音響案内は弱視者も適宜利用している。しかし、「ぴよぴよ」や「かっこう」の音だけでは、青信号があとどのくらい続くのか分からなくて困ることがある。このような音声・音響式信号機は、弱視者にとっては情報が不十分な場合もあり、弱視者は不安や危険を感じながら移動をしている。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  現在の信号の色と、それがどのくらい続くのかを伝えるような信号機にしてほしい。 ●困っていること  近隣住民の苦情などにより、夜間帯は音声・音響案内が利用できなくなっている。 事例  多くの自治体では、近隣住民の苦情などにより、夜間帯の音声・音響式信号機の音が鳴らないように設定されている。しかし、夜間帯の人が少ない状況では、弱視者は信号が青か赤かを周りの人に聞くことが難しくなり、勘に頼って横断歩道を渡ってしまうことがある。 イ みんなに知ってほしいこと  地域において、視覚障害者が生活を送る上で音声・音響案内が重要なことをもっと知ってほしい。そのため、地域の商店街や町内会などが連携して、周知をしてもらいたい。 24ページ 3.点字ブロック、道路を歩くこと                ●困っていること  一部の点字ブロックは、摩耗によって色が落ちていたり壊れていることがあり、不便や危険を感じながら利用をしている。 事例  弱視者も点字ブロックを適宜利用しており、初めて訪れる場所では非常に頼りにしている。特に、弱視者の場合は、点字ブロックの突起だけでなく「色」も重要な手掛かりにしている。しかし、摩耗による退色や破損によって点字ブロックが見づらくなることがあり、弱視者は不安や危険を感じている。さらに、ここ最近は、周囲の景観に合わせた色の点字ブロックが敷設されることもあるが、これらは大変見づらいものが多く、困ることが多い。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  当事者の意見を踏まえた上で点字ブロックの色を決めてほしい。また、摩耗したら必ず補修を行ってほしい。 ウ 弱視者自身が注意したいこと  点字ブロックの敷設や補修は、地元の警察などに対して当事者の指摘や要望がないと実施しないことが多い。そのため、当事者側から要望を積極的に訴える必要がある。 コラム ともに歩く「同行援護」  同行援護は、外出や買い物、通院などに不便を感じている視覚障害者に対して、移動中や外出先での視覚情報の提供や誘導、代読・代筆などを含む必要な援護を行うサービスであり、視覚障害者が外出する際の強い味方です。  視力が落ちてくるとまずは外出することが怖くなると言われています。ただ、同行援護を利用することでこれまでと同じように外出を楽しむことができます。なお、同行援護の利用は自治体によって条件が異なりますので、詳しくはお住いの市町村や同行援護の事業所へお問い合わせください。 25ページ 第2項 電車・駅 1.案内表示                           ●困っていること  古い駅では依然として案内表示が見づらい。 事例  新しい駅の案内表示は、黒背景に白文字に表示するなどの見やすさが考慮され、掲示位置も目線の高さを意識した位置になっている。これはとても使いやすい。しかし、古い駅や乗降人数の少ない駅ではこうした改良が遅れており、案内表示が見づらい状況が続いている。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  国や鉄道会社は、古い駅や乗降人数の少ない駅についても、案内表示の見やすさや掲示位置について検討し、高齢者や訪日外国人などの意見も集約した上でさらなる改善を進めてほしい。 ●困っていること  地下鉄のホームで行先案内を探すのに時間がかかり、電車に乗れないことがあった。 事例  弱視者が電車を利用する際、行き先や電車の種類(各駅停車・快速・急行など)、時刻表を確認することに時間がかかり、困ることが多い。一方で、一部の駅のホームドアには、電車の種類や行き先を示した電光掲示板が試験的に設置されているものもある。これは、弱視者にも見やすい表示や掲示位置になっており、便利に活用している弱視者もいる。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  国や鉄道会社は、電車の種類や行先などの表示について、高齢者や訪日外国人などの意見も集約した上でさらなる改善を進めてほしい。 26ページ 2.音声・音響案内                     ●困っていること  駅構内の音声・音響案内の音が小さかったり、反響して聞き取りづらいことがある。 事例  弱視者は、その本人の視力や見え方、周囲の明るさや混雑状況などによって、駅構内での案内表示が見づらいことがある。そのため、弱視者も音声・音響案内を頼りにしているが、音量や音質、反響などによって聞き取りづらいことがある。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  鉄道会社は、音声案内の音量、音質、内容、タイミングなどを、全ての利用者が確認しやすい内容に改善してほしい。 コラム 駅員介助で不安を解消  見えづらくなると、「駅のホームを一人で歩くのは不安」や「乗り換えのルートがよく分からない」など、駅を利用することに様々な困り事が発生します。  このような時は駅員さんに「介助」をお願いしてみましょう。例えば、「△△駅で乗り換えて★★駅まで行きたいのですが」とお願いすると、駅員さんに誘導をしてもらえます。また、降りる駅にも連絡してくれてホームから改札まで案内もしてくれます。必要な援助を適切に受けることで不安を解消し、安心して移動ができるようになります。困ったことがあれば、改札の駅員さんに声をかけてみましょう。 27ページ 3.駅の無人化                         ●困っていること  ホームドアの設置が進む一方で、一部の駅では駅員や有人改札が減っていて困る。 事例  自分が乗る電車を確認したい時や駅構内で迷った時などは、駅員のサポートが非常に頼りになる。しかし、駅員や有人改札が減っていて、サポートを依頼できないことがある。ハード面での安全対策が進んでも、駅員による声かけやサポートの重要性は変わらない。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  駅員や有人改札は減らさないでほしい。 ●困っていること  駅員の呼び出しボタンが使いづらい。 事例  無人の改札などでは、駅員を呼び出すボタンや装置があるが、その設置場所や使用方法が分からないことがある。また、呼び出した後も、駅員の説明や指示が不十分でよく分からないことがある。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  呼び出しボタンの位置が分かるように、ボタンの見やすさを向上させ、音声案内を付与するなどの改善を行ってほしい。また、応対する駅員には、視覚障害者への情報提示の仕方(クロックポジションなど)について学ぶ機会を持ってほしい。 28ページ ●困っていること  駅に関する情報をICTなどで対応することが増えてきている。しかし、視覚障害者向けのアクセシビリティが十分確保されていないため、実際には利用ができないことが多い。 事例  無人駅などの駅員がいない駅を初めて利用する際、あらかじめ駅構内図や乗車位置などの情報を、鉄道会社のウェブサイトから入手して活用していることがある。しかし、ウェブサイトのアクセシビリティが不十分なために、音声読み上げや文字の拡大をしても、ページの移動が出来ず、弱視者が目的のページに辿りつけないことがある。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  鉄道会社のウェブサイトや、乗換案内アプリなどのアクセシビリティ向上を進めてほしい。 29ページ 4.駅の設備                          ●困っていること  駅の改札では、役割が違う改札(ICカード専用など)が混在しており、改札の直前にならないと違いが分からず、スムーズに改札を通ることができない。 事例  駅の改札機は、ICカード専用・入口専用・出口専用など役割が違う改札が並んでおり、改札のすぐ近くまで行かないと区別できない。そのため、改札のすぐ近くまで行って、自分が通りたい改札機とは違う改札機だった場合は、隣の改札機へ確認しながら移動をしなければならない。その際、周りの人への迷惑になっているのではないかと不安な気持ちになる。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  ICカード専用改札、入口専用・出口専用改札など役割の違う改札に対して、改札機そのものの色を変える、入口専用と出口専用でタッチした際の音を変えるなど、利用者が判別しやすい内容にしてほしい。 ●困っていること  階段の始まりや境目が分からず、踏み外したりつまずいたりすることがある。 事例  弱視者の視力や見え方、周囲の明るさや混雑状況によって、駅構内の階段の段差が見えづらいことがある。そのため、階段の始まりと終わりが分からずに階段を踏み外してしまい、転倒してしまうこともある。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  階段の段鼻に色づけを行うことは、階段の始まりや境目を判別しやすくなるので、普及を進めてほしい。なお、配色は周囲の色とのコントラスト比によって決めてほしい。 30ページ 第3項 鉄道駅の安全対策 1.駅ホームでの危険体験について               ●困っていること  ホームの内側は人が多く、目視で安全確認が難しくなるので、つい人がいないホームの端を歩いてしまう。 事例  駅ホームの内側には多くの乗客がいたり、ベンチや自動販売機、ごみ箱、売店などが点在している。そのため、弱視者は、これらの人や障害物にぶつからないようにするため、ホーム端を歩くことがあり、実際に危険な思いをした弱視者も存在する。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  ホームドアの設置やホーム端を見やすくする塗装、内方線付き点状ブロックの整備など、ホーム上の安全対策をさらに進めてほしい。 ●困っていること  駅ホームを歩く時、ホームドアがあると思い込んでしまうことがあり、怖い思いをした。 事例  初めて利用した駅で、ホームドアがあると思い込んでしまい、危うく落ちそうになった。また、ホームの片側にのみホームドアが設置されている駅では、両側にホームドアがあると思い込んでしまうことがある。なお、一部の駅では、片側にのみホームドアが設置されていることをアナウンスしていて助かっている。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  ホームドアの設置状況について構内アナウンスを行い、さらに、ウェブサイトなどでも周知をしてほしい。 31ページ ●困っていること  ホームの際(きわ)が目視で確認できない駅が多い。 事例  駅ホームの中央付近には乗客やベンチなどがあるため、必然的にホーム端を歩くことが多くなっている。その場合、ホームの端を目で見て認識することになるが、見づらいホーム端が多く、不安や危険を感じている。なお、一部の駅では、ホームの端が確認しやすい色で塗装されており、助かっている。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  ホーム端にも、階段の段鼻と同じ考えで色を付けてほしい。暗い駅ほど効果がある。また、内方線付き点状ブロックについては、摩耗や汚れにより、地面との色が見分けづらい時があるため、運用方法を改善してほしい。 【参考写真 見やすい段鼻】 階段の段鼻には黄色の塗装が施されている。地面の色との対比(コントラスト)が生まれ、弱視者は目視しやすくなる。 32ページ 2.視覚障害者への声かけ・誘導について                    ●困っていること  駅員や一般客からの声のかけ方や誘導方法が適切でないことがあるため、不快な思いをすることもある。しかし、声をかけてくれた人のことを思うと注意することができない。 事例  駅構内で移動などに困っている視覚障害者に対して、声をかけてもらい、誘導してもらえることが増えている。これは大変助かっているが、無言で肩をたたかれたり、腕や白杖を引っ張られたりして怖い思いをすることがある。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  車両内の液晶画面で、視覚障害者の声かけ方法や誘導方法を手短に紹介するのはどうか。見ている乗客が大変多いので、自然と誘導方法を身につけてくれるのではないか。 ウ 弱視者自身が注意したいこと  誘導の仕方が違う場合は、誘導が終わった後に「ありがとう」の言葉と共に誘導方法を紹介したリーフレットを渡して、もっと誘導が上手くなってもらう啓発をしたらどうか。 ●困っていること  弱視者は、自分から声を上げて助けを求めることに抵抗を感じる者が多い。 事例  弱視者の多くは人に支援依頼することに慣れていない。周囲の目を気にしたり、障害に対する受容ができていないために、自分が困っていることを上手く伝えられないことが多い。 ウ 弱視者自身が注意したいこと  助けを求めることで安全に移動することができる。困ったことがあれば、恥ずかしがらずに助けを求めよう。 33ページ 第4項 視覚障害者の歩行 1.白杖での歩行                       ●困っていること  白杖=全盲というイメージが社会全体に根付いている。弱視者も白杖を使うということがなかなか理解されていない。 事例  白杖を使用している弱視者が電車内などでスマートフォンを操作していると、「あの人、本当は見えているんじゃないの?」などと疑われることがある。 イ みんなに知ってほしいこと  弱視者も白杖を持って歩行していることを広く知ってほしい。 ●困っていること  白杖を持たないで歩行する弱視者は、トラブルや事故に巻き込まれることがある。 事例  弱視者の中には、「弱視であることが発覚すると仕事に支障がある」「周りの人からの偏見が気になる」などの理由で白杖を持たない者もいる。しかし、白杖を持たないで歩行をしたことで安全確認が不十分となり、周囲の人に気付いてもらえず人と接触するなどのトラブルや事故に遭遇することがある。 ウ 弱視者自身が注意したいこと  白杖を持つと、足元や周囲の障害物を確認できたり、視覚障害者であることを周りの人に知らせて様々なサポートを受けることができる。また、視覚障害者が白杖を持たないことにリスクがあることを知ってほしい。例えば、交通事故にあった時、白杖を持っているのと持っていないのとでは、事故の判断や保険金の支給額に違いが生じる場合がある。弱視者も安全が第一。少しずつでも白杖を持って歩くことができるようにしたい。 34ページ 2.歩行訓練など                         ●困っていること  自己流で歩行をしているため、歩くことに不安がある。 事例  視覚障害者が安全に歩く方法を身につけるためには、歩行訓練を受けることが有効とされている。  しかし、弱視者の中には、歩行訓練という制度そのものを知らない者もいて、結果的に自己流で歩いていることがある。この背景には、歩行訓練に関する情報が多く発信されていないこと、弱視者がその情報に上手く辿りつけないことなどがあり、弱視者が歩行訓練に容易に繋がることが求められている。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  医療と福祉をつなぐ眼科医や自治体には、視覚障害者に対して歩行訓練があることを積極的に案内してほしい。また、視覚障害者への支援に有効性があるとされるスマートサイトを活用し、困っている弱視者へ情報が届くようにしてほしい。 コラム 歩行訓練で自信がついた!  歩行訓練とは、白杖を使った歩行の仕方、電車・バスなどの利用方法、今の視力を生かした歩き方などについて指導するものになります。  病気の進行などによって視力が落ちてきた弱視者は、それまで自己流で歩いていたため、歩くことに不便や不安を抱えています。しかし、歩行訓練を受けて白杖の正しい使い方や安全確認の方法を知ることで、安全な歩行手段が得られ、自信をもって歩けるようになると言われています。  また、歩行訓練によって歩くことに自信がつくと、パソコン訓練などの他の訓練にも意欲的に取り組むようになるなどの例があり、生活そのものへのモチベーションが上がるとされています。歩行訓練は視覚障害者を勇気づける訓練とも言えます。 35ページ ●困っていること  地域で視覚障害者に係わる団体や機関がどこにあるか分からず、視覚障害者の生活を豊かにする有益な情報が得られなかった。 事例  地域によっては、視覚障害者協会や点字図書館などがあり、視覚障害者に対して有益なサービスの提供や情報発信などを行っている。  しかし、弱視者はこれらの団体や機関が地域にあることを知らないため、自治体の福祉サービスに関する情報など、視覚障害者にとって有益な情報が得られないケースがある。 ア 制度やルールを変えてほしいこと  視覚障害者自らが情報を入手するのは難しいため、これらの団体や機関が積極的に情報発信を行う必要がある。また、視覚障害者への支援に有効性があるとされるスマートサイトを活用し、困っている弱視者へ情報が届くようにしてほしい。 コラム 視覚障害者の頼れる団体「日本盲人会連合」  日本盲人会連合(通称:日盲連)は、全国の視覚障害当事者を主体とする61団体により構成され、視覚障害者福祉の向上を目指し、組織的な活動を展開している社会福祉法人です。  以下のホームページでは、視覚障害者に便利な様々な情報、全国の加盟団体の情報が掲載されています。ご活用ください。