9ページ 第2章 弱視者について 11ページ 弱視者の見え方・行動は千差万別 人によって見え方・行動の仕方が違います!  弱視者は、人によって見え方が大きく異なり、ある人にとって見えやすいものが、ある人にとっては見づらいことがある。また、見え方が違うことから、日常生活での行動や困り事も大きく異なると言われており、まさに弱視者の見え方・行動は千差万別である。  本章では、生活に困っている5名の弱視者の見え方や行動を通して、弱視者がどのような存在なのかを紹介する。 1.私の見え方                (1)今の見え方はこうです 【Aさん】  ・全体的に白っぽくぼやけています  ・まぶしいのが苦手です 【Bさん】  ・薄暗い所の方が見やすいです  ・目頭より目じりの方にあるものが見つけやすいです 【Cさん】  ・視野が狭く、筒を覗いて見ている感じです  ・霞みがあり、視力が低く、暗い所が苦手です 【Dさん】  ・進行性で徐々に視力が低下している  ・現在は中心が見えにくく、周辺の視野は残っている 【Eさん】  ・発症後、比較的落ち着いているが、辞書や新聞は目を近づけても見えません  ・さらに、老眼が始まってから、ピントを合わせるのに少しだけ時間を要しています (2)こういう時が見にくいです 【Aさん】  ・よく晴れた日や夕方の西日がきつい時などは見づらいです  ・商品の商品名や値段の文字が小さいと読めません 【Bさん】  ・昼間や明るい所だと見えにくいです  ・自分の正面から近づいて来る人などは見えにくいです 【Cさん】  ・階段の境目はコントラストがないと見えづらいです  ・暗い所から外に出て、急に明るくなると見えづらいです 【Dさん】  ・品物が多く並んでいる店や人が多くいる場所は、目当てのものを探せません  ・商品などで、自分の見やすい位置に近づけることができないと商品名が読めません 【Eさん】  ・黒い文字に比べると青い文字や赤い文字は見づらいです  ・駅の高い位置の路線図、料金表、時刻表は見づらいです (3)こうすると見やすくなります 【Aさん】  ・帽子や手で日差しや照明を隠すと見やすくなります  ・パソコンやスマートフォンの画面は、色を反転し、画面を拡大すると見やすくなります 【Bさん】  ・拡大読書器で白黒反転させると見えやすくなります  ・自分の周りを暗くすると見えやすくなります 【Cさん】  ・サングラスや遮光眼鏡をかけると少し見やすくなります  ・暗い所で携帯電話のカメラを通して見ると、見えやすくなることがあります 【Dさん】  ・スマートフォンとタブレットの拡大機能やカメラ機能、アプリを活用して見やすくしています  ・見たいものに目を近づけると、見えやすくなります 【Eさん】  ・黒い背景で白い文字に変換すると、見えやすくなります  ・明朝体をゴシック体に変換すると、多少、見えやすくなることがあります Aさんは「この文字」(注意:MS明朝26ポイント)が読みやすい。 Cさんは「この文字」(注意:MSゴシック14ポイント・白黒反転)が読みやすい。 Eさんは「この文字」(注意:MSゴシック36ポイント・白黒反転)が読みやすい。 同じ弱視者の中でも、読みやすい文字の大きさや色は異なります。 つまり、弱視者の見え方は「千差万別」です。 14ページ 2.私の日常生活               (1)移動をする時にこれに困ります 【Aさん】  ・電車やバスの行先・時刻表が見づらくて困ります  ・自転車を避けるのが苦手です 【Bさん】  ・明るい場所にある明るい色の柱・壁・床などが見えにくい  ・白杖を持たずに歩いた時、人にぶつかってしまい、トラブルになったことがある 【Cさん】  ・知らない所に行く時、建物など目的地が分かりにくい  ・交差点で信号があるのかないのかが分からない 【Dさん】  ・慣れない駅では、バスやタクシー乗り場が探せない  ・バスの行先表示が見えないため、アナウンスを頼らないと目的のバスに乗れない 【Eさん】  ・昼間の信号は少し見づらいので、周りの人の動きを見て判断している  ・タッチ式券売機では目を近づけて見るため、鼻や指が別のボタンに触れてしまう (2)仕事ではこれに困ります 【Aさん】  ・書類の決められた枠に記入するのが難しいです  ・出張の際の移動には時間がかかってしまう 【Bさん】  ・明るい場所で何かを見たりする作業や移動が困る  ・廊下などですれ違った人が誰だか分からない 【Cさん】  ・事前に資料をもらわないと、会議などで配られた書類やプロジェクターの文字などが読めない  ・外出による移動や視覚を使った判断業務が難しい 【Dさん】  ・講演会や懇親会に参加すると、自分の座る位置や会場の配置が分からず困惑する  ・相手の顔が見えないため、思いがけない所で知り合いに合っても気付かないことがある 【Eさん】  ・透明な飲料水をお酌するのが、どの位注いだか分からない  ・廊下で知り合いと気付かずに無視してしまい、知り合いを不快にさせたことがある (3)買い物ではこれに困ります 【Aさん】  ・パンや総菜などのトングで取る商品は苦手です  ・バイキングや回転ずしなどセルフサービスは苦手です 【Bさん】  ・レジに並ぶ際に自分が並びたい待機列が分からない  ・会計時にお金の判別に時間がかかるので、列の後ろの人が気になる 【Cさん】  ・介助を受けたい時に店員さんが見つけられないことがある  ・お店のどこに置いてあるのかが分からない商品は探すことができない 【Dさん】  ・お店でおすすめ商品や新商品に気が付かない  ・ポイントカードが多くなると、どの店のものか分からなくなる 【Eさん】  ・値札を見る際、生鮮食品に顔を近づけることが少し恥ずかしい  ・レシートをルーペでじっくり見ると、周りからは疑っているように思われてしまう Aさんは、書類の文字が見えづらかったので「部屋を明るくしてください」とお願いしました。 そうしたら、同席をしていたBさんは、途端に書類が見づらくなり、困ってしまった。 Cさんは、銀行までは一人で歩いて行けるが、銀行の申込書類の枠が見えなくて、記入ができませんでした。 Dさんは、銀行まで一人では歩いて行けないが、目を近づければ書類を見ることができました。 Cさんは、Dさんにお願いをして銀行までついて来てもらい、Cさんの代わりにDさんが書類を記入しました。 それぞれ見え方が違うDさんとEさんが、一緒に駅に向かいました。 前から来る人を避けながら改札までは来ることができましたが、改札前で二人の目の前を横切った人はDさんにも、Eさんにも見えず、ぶつかってしまいました。 見え方が違うと弱視者が「できること・できないこと」が異なります。 つまり、弱視者の行動も「千差万別」です。