表紙 厚生労働省平成30年度障害者総合福祉推進事業 視覚障害者への代筆・代読支援に関する調査研究事業 報告書(概要版) テキスト版 平成31年(2019年)3月 社会福祉法人 日本盲人会連合 目次 注意 テキスト版には目次を掲載する。 1 はじめに 1ページ 2 事業の概要 2ページ 3 視覚障害者向け代筆・代読支援の現状 3ページ 4 調査結果 視覚障害当事者 9ページ 5 調査結果 自治体 12ページ 6 調査結果 その他 14ページ 7 まとめ 15ページ 【報告書について】 注意 墨字版では裏表紙に掲載を行っているが、編集の都合により目次に掲載をする。 (1)概要版と完全版   概要版は、本連合ホームページに掲載をした完全版の報告書より、掲載内容の要点を中心に掲載を行った。なお、ホームページには完全版の報告書の他、各種データ版を掲載している。    日本盲人会連合ホームページURL http://nichimou.org/ (2)統計データの掲載内容   掲載した統計データにおいて、割合(%)の合計は、四捨五入の都合により100.0%にならない場合がある。 (3)視覚障害者に関する名称の統一   視覚障害の状態を表現するための用語には様々な種類があるが、本報告書では、全盲、弱視、盲ろうという用語を用いた。 1ページ 1 はじめに  視覚障害者が日常生活や社会生活を送る上で、これまでとは異なるニーズが広がりつつある。その中でも、いわゆる「代筆・代読支援」に対するニーズは大きく高まってきている。  これは、視覚障害者の社会参加の広がりの結果であり、代筆に関しては個人認証が重んじられるようになった社会の変化の結果でもある。そのため、居宅介護においてはヘルパーによる代筆・代読支援が位置付けられ、外出時における代筆・代読支援が同行援護における公的な福祉サービスとして明確に位置付けられるようになった。  また、代筆・代読支援は、障害者総合支援法の地域生活支援事業に位置付けられた意思疎通支援事業としても実施できる制度になっている。しかし、意思疎通支援事業「代筆・代読支援」の利用率は低い。代筆・代読に対する視覚障害者のニーズは高いにもかかわらず、利用率が低いという相反する実態がなぜ生じてしまっているのかという疑問が、調査研究の出発点であった。  意思疎通支援事業の代筆・代読支援の利用率が低い原因としては、ICTの急速な進歩によって視覚障害者の代筆・代読のニーズが低下したのではないかという意見もある。しかし、視覚障害者のICTの利用実態や契約などの読み間違いや書き間違いの致命的な場面などを考慮すると、それ以外にも考慮すべき事項があると考えられる。例えば、利用したい時に代筆・代読支援が受けられるかどうかという量の問題、支援者が正確に読み書きができるのかという質の問題、そして、その根底には、支援者を養成するための体制整備などの問題があると考えられる。しかしながら、これらの問題を議論するための実態は十分には分かっていない。  そこで、本調査により、視覚障害者の代筆・代読に対するニーズを改めて調査し、どのような場面で、どのようなサービス提供が必要とされているかを把握する必要がある。また、代筆・代読支援を障害福祉サービス事業所として実施できるようにするための条件を明らかにすることも必要である。更に、視覚障害者が求めている代筆・代読支援を担う支援員の養成の在り方も検討しなくてはならない。それらが体系的に整ってこそ、国や自治体に対し、視覚障害者のための代筆・代読支援を、自治体が実施すべき必須の事業として位置付ける要求が成り立つのである。  本調査はそうした政策提言に向け第一歩を踏み出すものである。本調査にご協力いただいた委員に心から感謝申し上げる。 2ページ 2 事業の概要 1.事業名  厚生労働省平成30年度障害者総合福祉推進事業  「視覚障害者への代筆・代読支援に関する調査研究」 2.事業の目的  視覚障害者が日常生活を送る上で必要な支援である代筆・代読支援について、障害者総合支援法の意思疎通支援事業として代筆・代読支援の実施が自治体において積極的に行われることを目指し、以下の論点について、調査を通して課題整理を行う。   論点@ 視覚障害者に対する代筆・代読支援の提供方法・体制の在り方   論点A 自治体における代筆・代読支援の実施体制の在り方 3.事業内容 (1)検討委員会の設置  上記論点の課題整理を行うために検討委員会を設置し、以下の事項について検討を行う。  @代筆・代読支援の現状  A実態調査の実施内容  B調査結果のまとめ (2)実態調査の実施  検討委員会の検討内容をもとに、以下の調査を実施する。  @視覚障害当事者向け調査  A自治体向け調査 (3)報告書の作成  実態調査の結果と検討委員会での意見を踏まえ、本調査のとりまとめとして報告書を作成する。なお、報告書の作成後は、全国の自治体や視覚障害関係団体に報告書を配布し、調査結果の周知を行う。 4.検討委員会 委員名簿(順不同・敬称略)  中野 泰志  慶應義塾大学経済学部 教授【委員長】  渡辺 哲也  新潟大学工学部工学科 准教授【副委員長】  竹下 義樹  日本盲人会連合 会長  伊敷 政英  Cocktailz(カクテルズ) 代表   田中 伸明  名古屋市視覚障害者協会 会長  棚橋 公郎  視覚障害者生活情報センターぎふ 部長  原田 敦史  全国視覚障害者情報提供施設協会 常任理事  山下 正知  全国盲ろう者協会 常務理事 3ページ 3 視覚障害者向け代筆・代読支援の現状 1.視覚障害当事者の要望  視覚による情報入手が困難である視覚障害者にとって、書類などを「読むこと」「書くこと」は困難を伴う行為であり、社会生活を送る上でこれらの読み書きに対する支援「代筆・代読支援」は必須となっている。近年では、音声パソコンなどにより視覚障害者自らが様々な書類を確認したり、記入することが可能となってきたが、実生活では紙に印刷された書類などが圧倒的に多く、読み書きの支援は必要不可欠である。  そのため、全国の視覚障害当事者が会員となる日本盲人会連合には、代筆・代読支援に関する要望が多く寄せられている。要望は、既存の制度の改善や支援内容の充実を求めるものが中心で、全国から寄せられた声は、同連合が毎年開催を行う全国盲人福祉大会(全国盲人代表者会議)において決議され、その決議内容は国や関係団体へ陳情として提出されている。これらの代筆・代読支援に関する要望を分類すると、大きく(1)国や自治体からの支援に対する要望、(2)事業者からの支援に対する要望に分けられる。  まず、(2)事業者からの支援に対する要望は、金融機関などで申し込みや契約を行う際に代筆・代読支援が受けられないことを発端にするものである。金融機関での代筆・代読支援については、平成22年8月に金融庁より各金融機関に対して「視覚障がい者に配慮した取組みの積極的な推進に係る要請について」(※1)として代筆・代読の支援を要請しているが、依然として視覚障害者に対する支援は進んでいない。これは、事業者側の視覚障害者に対する理解や配慮の問題とされている。  一方で、(1)国や自治体からの支援に対する要望については、長年にわたる要望であり、近年ではその声が強まってきている。要望は@支援の質の向上、A支援の拡大、B制度の整備に分けられる。特に、近年では、本調査の主題とも言える意思疎通支援事業「代筆・代読支援」の充実を求める声が大きく、国や自治体はその要望への対応に迫られている。 【引用】 (※1)金融庁ホームページ「視覚障がい者に配慮した取組みの積極的な推進に係る要請について」https://www.fsa.go.jp/news/22/ginkou/20100826-1.html 2.これまでの代筆・代読支援に関する調査  視覚障害者の代筆・代読支援を求める声を受け、これまで様々な調査などが実施されている。  例えば、平成28年度〜平成29年度には、新潟大学工学部の渡辺哲也准教授による「意思疎通が困難な人に対する人的及びICT技術による効果的な情報保障手法に関する研究」(※2)で、視覚障害者の人的支援サービス利用状況調査が行われている。この調査では、@公的な福祉サービス、A家族や友人などからの支援を調べた内容になり、視覚障害者における代筆・代読の利用率が72.3%との結果が示されている。また、利用頻度を見ると、ほぼ毎日及び週に2〜3回は利用していると回答をした視覚障害者は全体の55.1%との結果が示されている。全盲が比較的多い調査になるが、視覚障害者にとっての代筆・代読支援の必要性が示された調査となっている。  また、平成28年度には、日本盲人会連合による「読み書きが困難な弱視(ロービジョン)者の支援の在り方に関する調査研究事業」(※3)で、弱視者の読み書きに関する調査が行われている。弱視は視覚障害者の約8割とも言われているが、見え方がそれぞれで異なることから、弱視のニーズは多様で、その実態が分かりづらいとされていた。調査結果によると、読むことに困っている弱視は約86%、書くことに困っている弱視は約77%であることが分かった。また、弱視は、対象物を読みやすく・書きやすくするための配慮や工夫を求める一方で、他者に支援を求める声も確認でき、読むことでは28.6%の弱視が代読者の利用を求めていた。  これらの調査結果により、視覚障害者が代筆・代読支援を日常的に利用し、生活になくてはならない存在であることが判明している。また、全盲と比べると代筆・代読支援の必要性が少ないと思われていた弱視においても、代筆・代読支援のニーズがあることが確認でき、視覚障害の程度によってニーズに差がないことも確認ができた。  しかし、両調査とも、アンケートを中心とした調査となること、他の調査と共に代筆・代読に関する調査を実施したことから、視覚障害者の代筆・代読支援のニーズの深層は調べ切れなかった部分もある。また、自治体の公的な福祉サービスとの関連性についても、未整理な部分があり、更なる調査が必要とされている。 【引用】 (※2)厚生労働科学研究費補助金(障害者政策総合研究事業(身体・知的等障害分野))平成28年度〜平成29年度「意思疎通が困難な人に対する人的及びICT技術による効果的な情報保障手法に関する研究」【研究代表者:渡辺哲也(新潟大学 工学部)/平成30年3月】 http://nichimou.org/all/news/secretariat-news/180502-jim/ (※3)「読み書きが困難な弱視(ロービジョン)者の支援の在り方に関する調査研究事業」【日本盲人会連合/平成28年12月】 http://nichimou.org/all/news/secretariat-news/170327-jimu/ 3.代筆・代読支援が可能となる福祉サービス  現在、視覚障害者に対する公的な福祉サービスは障害者総合支援法により実施されており、視覚障害者の代筆・代読支援については、以下の三つのサービスの中で支援を受けることができる。 A 障害福祉サービス @居宅介護 A同行援護 B 地域生活支援事業 B意思疎通支援事業「代筆・代読支援」  @居宅介護とA同行援護は、視覚障害者の中では重要な支援であることから、利用する者が多い福祉サービスとなっている。  @居宅介護については、居宅における家事援助の一環で代筆・代読の支援が行われている。居宅内での日常生活が困難な視覚障害者は居宅介護を利用しており、この福祉サービス自体のニーズは比較的高いものとされている。  A同行援護については、移動時の情報提供として代筆・代読支援が実施されている。視覚障害者にとって移動の支援はもちろん必須だが、移動時の情報提供がなければ安全な移動はできない。そのため、同行援護においては情報提供を重要と考え、支援者の養成において代筆・代読支援を重要視している。 4.意思疎通支援事業「代筆・代読支援」の課題  しかし、B意思疎通支援事業「代筆・代読支援」は、同事業のメニューに含まれているにもかかわらず、実際の実施率は低調となっている。視覚障害者の中でも、意思疎通支援事業に代筆・代読支援があることを知らない者も多く、視覚障害者の代筆・代筆に対するニーズの高さに反比例して、この支援の実施率は低いという、看過できない状況が続いている。@居宅介護、A同行援護と比べ、サービス名に「代筆・代読支援」と銘打っているにもかかわらず、なぜ、実施率は低調なのだろうか。  まず、意思疎通支援事業についての背景を整理すると、この事業は地域生活支援事業の一つになり、地域の事情を踏まえて、自治体の独自の判断でサービスが実施できるものとなっている。実際、意思疎通支援事業に含まれる手話通訳者や要約筆記者の派遣などは、各地域で活発に利用され、意思疎通支援事業自体の実施率は非常に高いとされている。  このような背景があるにもかかわらず、代筆・代読支援の実施率は低調になっている。これまでの間、低調である理由は、自治体側の問題とされることが多かった。例えば、地域生活支援事業であるが故に、視覚障害者のニーズを汲み取らず、一方的にサービスを実施しないのではないかとの指摘があった。また、支援者の養成の面では、手話奉仕員の養成は市町村の必須事業であるのに対し、代筆・代読の支援者の養成は任意事業になっていることから、自治体が前向きな実施を行わないとの指摘もあった。  一方で、自治体側からは、支援方法が明確でないことに加え、視覚障害者からのニーズが整理されておらず、ニーズが分かりづらいとの意見もある。つまり、地域生活支援事業で実施をするためには、支援体制や視覚障害者のニーズの明確化が必要とされている。  意思疎通支援事業「代筆・代読支援」が低調である理由は、自治体側の運用や実施方法に不備があるのか、視覚障害者のニーズが不明確なのか、その理由は分からない。ただし、地域生活支援事業である以上、自治体が視覚障害者のニーズを汲み取った上で必要性を理解し、明確な支援方法や整備された制度があれば、支援は実施できる。そのためにも、低調になっている理由を解き明かす必要がある。 5.同行援護と居宅介護の課題  視覚障害者の代筆・代読支援は、障害福祉サービスにおける同行援護と居宅介護でも実施できることになっている。そして、実際に同行援護と居宅介護を利用して、代筆・代読支援を受ける視覚障害者は多い。  しかし、日本盲人会連合の陳情内容を見ると、同行援護と居宅介護の支援内容に満足していないため、代筆・代読支援の更なる充実を求めているとも考えらえる。同行援護と居宅介護にも何か問題があるのだろうか。以下で整理をする。 (1)同行援護  まず、視覚障害者が代筆・代読の支援を受ける際、その支援者を整理すると、公的な福祉サービスの範疇では同行援護の従事者を挙げる者が多い。前述した「意思疎通が困難な人に対する人的及びICT技術による効果的な情報保障手法に関する研究」では、73.5%の者が同行援護の従事者を挙げており、利用率の高さが伺える。特に、同行援護では、支援者側の努力や理念により、情報提供の重要性がサービスの根幹にあることから、利用者が代筆・代読支援を求めて同行援護を利用しているケースもある。  しかし、同行援護については、視覚障害者の生活にとって重要な支援であることから、様々な要望が多い。その中で、代筆・代読支援については、@支援の質の向上、A同行援護では対応できない支援の拡充を求める声をよく聞く。特にAについては、同行援護が外出時の情報提供になるため、居宅での情報提供ができないことを不満に挙げる者が多く、従来より改善を求める声が多い。 (2)居宅介護  次に居宅介護だが、前述した「意思疎通が困難な人に対する人的及びICT技術による効果的な情報保障手法に関する研究」では、36.1%の利用率に留まり、代筆・代読の支援としては利用率が若干低くなっている。これは、居宅介護自体が「障害支援区分1以上と認定された者」を対象とし、視覚障害単体では認定されづらい背景があり、居宅介護の実際の利用率が低く出ていることが影響していると思われる。  しかし、実際の利用者の声に耳を傾けると、「居宅介護で代筆・代読支援が受けづらい」との声を聞くことがある。例えば、居宅介護では、家事援助が中心であるため、料理や洗濯、掃除など日常生活を支える支援が中心となり、代筆・代読の支援を受ける時間がないとの意見がある。また、居宅介護では、視覚障害者に特化した支援者が少ないことから、同行援護並みに情報提供ができる支援者が少なく、代筆・代読支援自体を実施しない傾向もある。 (3)既存の代筆・代読支援の現状  これらの背景をまとめると、公的な福祉サービスを受ける視覚障害者は「居宅」での代筆・代読支援が満足に受けられていないことが分かった。  同行援護では、居宅はサービスの対象外、居宅介護では実質的に支援が受けられない。つまり、この「居宅」に対する支援を充実させることが、視覚障害者のニーズを満たすために課題となっている。 【3−2 同行援護と居宅介護での代筆・代読支援の整理】 (1)同行援護 @居宅 ・サービスの対象外 A外出 ・情報提供として支援ができる ・支援の質も一定レベルはある (2)居宅介護 @居宅 ・サービスの中で代筆・代読支援ができるとされているが、実際にはあまり実施されていない。 A外出 ・サービスの対象外 6.本年度調査の方向性  本章で示した内容は、本調査の検討委員会において整理をした代筆・代読支援の現状になる。  この整理により、代筆・代読支援は視覚障害者のニーズが高いにもかかわらず、公的な福祉サービスでは、制度面の問題や運用や実施方法の問題などにより、視覚障害者の代筆・代読のニーズを支えきれていない可能性があることが分かった。  まず、障害福祉サービスの「同行援護」と「居宅介護」では、制度上、居宅での支援が行えないため、視覚障害者からの代筆・代読支援のニーズを支えられていないことが課題となっている。一方で、意思疎通支援事業「代筆・代読支援」は、そもそも自治体での実施が低調であり、その理由を探すことが急務になっている。ただし、これらの問題は、制度面の問題、運用や実施方法の問題として片づけるには実態が把握しきれていなく、全容の解明が求められる。  これらの背景を踏まえ、検討委員会では、意思疎通支援事業「代筆・代読支援」を、同行援護と居宅介護が補えない支援、つまり「居宅」での支援に活用するのはどうか、との意見があった。確かに、この部分の支援が行えれば、視覚障害者のニーズを充足させることができる。ただし、意思疎通支援事業でサービスを実施するには、自治体側が視覚障害者のニーズを把握することや、効果的な支援体制を明確にする必要がある。そのため、現在、不明確になっている部分を整理しなくてはならない。  ついては、意思疎通支援事業「代筆・代読支援」の活用を目指し、本年度の調査では、実態が不明確な「(1)視覚障害当事者」と「(2)自治体」に対する実態調査を行うことにした。両調査とも、以下の点を目的に全国規模の調査を行い、全国の実態を把握することにする。 (1)調査1 視覚障害当事者   目的:これまで確認をしてきた視覚障害当事者のニーズ、既存サービスが有する課題の裏付けを行う。 (2)調査2 自治体   目的:福祉サービスにおける代筆・代読支援の実態を把握し、意思疎通支援事業「代筆・代読支援」を活性化させるための要素を探求する。 9ページ 4 調査結果 視覚障害当事者 1.視覚障害者は「読み書き」に困っている  まず、全国の視覚障害者に対してアンケート調査を行った結果、86.4%の者が「読み書きをすることに困っている」と回答した。全盲では90.3%、弱視では80.7%の者が読み書きに困っており、全盲・弱視を問わず、重度の視覚障害者は読み書きが困難であることが判明した。  視覚障害者の読み書きが困難であることは、これまでの寄せられた要望、過去の実態調査でも明らかになっているが、今回の調査でより詳細な実態を掴むことができた。特に、アンケートの自由記述では、読み書きが困難であるために支援の充実を求める声が多く、早急な改善が求められていることが分かった。  障害があるために意思疎通や情報の獲得に差別があってはならない。視覚障害者が困っている「読み書き」をいかに改善するかは社会の責務である。 2.現状の代筆・代読支援への不満  視覚障害者の代筆・代読支援は、公的な福祉サービスとしては、障害福祉サービスの「同行援護」「居宅介護」、意思疎通支援事業「代筆・代読支援」で提供ができるとされている。今回の調査では、68.7%の者が公的な福祉サービスで代筆・代読の支援を受けたことがあると回答し、サービス別の利用率は同行援護が86.6%、居宅介護が43.5%となっていた。特に、同行援護については、移動時の情報提供を重要視していることから、支援者が代筆・代読の技術をある程度は持ち合わせており、視覚障害者にとって価値のある代筆・代読支援の一つとなっている。  しかし、現状の「同行援護」「居宅介護」での代筆・代読支援については、今回の調査により、視覚障害当事者からは不満の声が多いことが改めて判明した。これらの既存のサービスを利用して困ったことや不安になった者は全体で49.0%になり、半数以上の視覚障害者が何らかの不満をもっていると言える。  そして、その不満については、(1)支援の質の問題、(2)制度面の問題を挙げる者が多かった。 (1)支援の質の問題  従来から聞かれる代読の読み上げレベルが低いこと、代筆で記入の間違いがあることなど、支援者のスキル不足を指摘する声が多かった。また、情報漏洩があることや、サービスの無理解による誤った対応があることなど、支援者の職務意識や理解度について問題視する声も確認できた。いずれにせよ、現状の支援者からは、代筆・代読の支援を満足に受けることができないと考える視覚障害者が多い。 (2)制度面の問題  代筆・代読支援を求めても、制度の壁により支援が受けられなかったことに対する不満は多かった。例えば、同行援護であれば、自宅での代筆・代読支援が受けられないこと、居宅介護では、与えられる時間が短いことや、他の重要な支援があることから実質的に居宅で代筆・代読支援が受けられないことが不満になっている。更に、仕事での利用、金融機関などでの利用、専門的な内容の利用など、公的な福祉サービスではカバーできない部分でも代筆・代読支援を求める声は多く、視覚障害者のニーズの幅が広いことから、制度面に不満を訴える視覚障害者も多い。 3.代筆・代読支援の拡充を求める声  視覚障害者にとって代筆・代読支援が必要なこと、そして、現状の代筆・代読支援には不満があることから、その拡充を求める声も大変多かった。  調査では、自由記述欄において様々な意見が寄せられ、主に上記の(1)支援の質の問題、(2)制度面の問題に対する改善を求める内容が多かった。実例を交えながらの切実な改善要望が多く、公的な福祉サービスにおける代筆・代読支援の在り方を問う内容になっている。更に、自由記述の中では、既存のサービスで代筆・代読支援があるにもかかわらず、支援を遠慮してしまうと回答した者がいた。遠慮をする理由は様々であったが、明らかに支援体制の不備による影響と思われる。  はたして、このような現状でよいのだろうか。多くの視覚障害者は、代筆・代読の支援を公的な福祉サービスに期待している。しかし、現状は、視覚障害者のニーズや利便性に寄り添った支援体制にはなっていない。やはり、国や自治体は、視覚障害者が安心・安全に代筆・代読支援が受けられる支援体制を、改めて検討しなくてはならない。 4.代筆・代読支援の潜在的なニーズ  今回の調査においては、読み書きに困っていながら、公的な福祉サービスによる代筆・代読支援を「利用したことがない」と回答した者は全体の30.5%だった。主な理由は家族の支援があるからや、弱視でまだ見ることができるからといった内容だった。  しかし、調査結果を深く分析すると、これらのサービスを利用したことがない者にも潜在的なニーズがあることが分かった。公的な福祉サービスで代筆・代読支援があることを知らなかった者の内、66.9%の者は公的な福祉サービスで代筆・代読支援を受けたいと回答している。また、弱視においては、その者の視力や視野が悪化することを考えると、視覚障害者への代筆・代読支援は必要だと感じる者も少なくはなかった。更に、今回の調査を受けたことで公的な福祉サービスで代筆・代読支援が受けられることを初めて知ったという者さえいた。  今後、視覚障害者の潜在的なニーズの掘り起こしも課題となり、公的な福祉サービスの利用率を高めていく必要がある。 5.代筆・代読支援が「必要」と声を上げる  公的な福祉サービスで代筆・代読支援を利用したことがない者を深く分析すると、これらの代筆・代読支援の必要性に気付いてない視覚障害者も少なくはなかった。  例えば、家族から代筆・代読支援を受けている者は、家族からの支援に満足している傾向があった。しかし、家族がいなくなった場合、誰から支援を受けることを考えているのだろうか。  また、自治体調査に目を向けると、地域の視覚障害の住民から代筆・代読支援を求める声があまり聞こえないとの意見があった。自治体としては、地域からの要望を受けてサービスを実施するという側面があることを踏まえると、この意見は重要だ。確かに、全国の声として代筆・代読支援を求める要望はかなり大きいものとなっているが、その声が、地域のレベルで上がっているかどうかには疑問が残る。特に、地域レベルでは、代筆・代読支援を遠慮してしまう者もいるため、地域で声を出したくても、声を出せない者が存在するかもしれない。  視覚障害者の読み書きの支援が必要不可欠であることは明白である。そのため、その読み書きを公的な福祉サービスの代筆・代読支援で受けられる必要性を、視覚障害者自身が気付き、更にはその必要性を声に出すことが求められる。 6.代筆・代読支援が「利用できること」をいかにして伝えるか  視覚障害者は情報障害とも言われ、公的な福祉サービスの情報などが上手く届かないことがある。例えば、平成28年に日本盲人会連合が行った調査では、中途視覚障害者が公的な福祉サービスを知るまでに5年以上かかったという調査結果がある。また、今回の調査においては、他地域に先駆け、10年近く前より視覚障害者に特化した代筆・代読支援を公的な福祉サービスで実施している地域において、同じ地域に住む視覚障害者の中でその支援を知っている者と知らない者がいることが分かった。  つまり、代筆・代読支援を視覚障害者に広めるためには、視覚障害者への情報提供についても留意する必要がある。 7.実態やニーズの更なる解明  今回の視覚障害当事者調査は、アンケート調査で実施したことにより、代筆・代読支援に関わる視覚障害当事者の実態において明らかにならなかった実態やニーズが多かった。  例えば、既に意思疎通支援事業「代筆・代読支援」を受けている視覚障害者の実態は明確には掴めておらず、更なる調査が必要となっている。また、視覚障害者は、障害の状況や家族構成により、代筆・代読の支援に関するニーズは異なることは分かっていたが、その差異を明確に調べることはできなかった。特に、家族と同居する者と一人で暮らす者との間で、どのようなニーズの差があるかは整理する必要がある。  また、自治体調査に目を向けると、自治体が意思疎通支援事業「代筆・代読支援」を実施するには、視覚障害者のニーズを把握することが重要との意見があった。そのため、今回の調査で確認ができなかった視覚障害者の実態やニーズは、更なる調査が必要である。 12ページ 5 調査結果 自治体 1.意思疎通支援事業「代筆・代読支援」の実施率  調査では、意思疎通支援事業「代筆・代読支援」を実施していると回答した自治体は14自治体、全国平均で1.4%の自治体のみしか実施していないことが分かった。意思疎通支援事業自体は、全国平均で88.5%の自治体が実施しているにもかかわらず、この低調な結果だった。  なぜ自治体は「代筆・代読支援」を実施しないのだろうか。  意思疎通支援事業は地域生活支援事業に含まれ、自治体の判断により設定されたサービスを実施できることになっている。実際に「代筆・代読支援」を実施している14の自治体は、地域性や人口の規模、視覚障害者の数に関係なく、独自の判断で事業を実施している。つまり、自治体の判断次第では「代筆・代読支援」が実施できるのである。  当事者調査から、視覚障害者のニーズが大きいことは分かった。つまり、意思疎通支援事業で実施されないのは、ニーズの低さではなく、制度面に問題があるのだろう。視覚障害者のニーズが届く制度にしなくてはならない。 2.視覚障害者への代筆・代読支援に対する理解の差  視覚障害者の代筆・代読支援は、障害福祉サービスの「同行援護」と「居宅介護」で実施できることになっている。実際にも、視覚障害当事者調査でも示されたとおり、代筆・代読支援を目的としたと思われる視覚障害者の利用率も一定数はある。  しかし、調査では、「同行援護」と「居宅介護」で代筆・代読の支援を行っているかどうかを確認したところ、その支援を「実施していない」や「分からない」といった回答が少なくはなかった。もちろん、実際に代筆・代読支援を行っていなかったことを理由にした可能性はある。しかし、調査を分析する限りでは、同行援護と居宅介護において代筆・代読支援が含まれていることを、自治体側が理解していなかった傾向が読み取れる。更に、自由記述の中では、視覚障害者に対する代筆・代読支援を補完するものとして、自治体の窓口職員や地域のボランティアで対応しているため、その支援が満ち足りているとの回答もあった。これは、公的な代筆・代読支援の意味合いを全く理解していない。つまり、一部の自治体は、視覚障害者が代筆・代読支援を求めているニーズを把握する以前に、その支援の必要性を理解していない。  一方で、視覚障害者の代筆・代読支援のニーズや必要性を理解し、既存の支援に対する問題意識をもつ自治体も少なくはなかった。実際に、視覚障害者からの要望を元に、独自の取り組みとして、前述した地域生活支援事業での実施や、他の福祉サービスでの代筆・代読支援を実施している自治体もある。調査の限りでは、代筆・代読支援について前向きに考えている自治体も多いだけに、更なる支援の拡大を期待したい。  全国の自治体が、視覚障害者への代筆・代読支援に対する理解が不足していると断言することはできないが、自治体間での理解度の差はあることは明白だ。そして、理解度が低い自治体ほど、視覚障害者の代筆・代読支援のニーズを把握しきれていない。 3.意思疎通支援事業で「代筆・代読支援」を行う条件  調査によって、今後、自治体が意思疎通支援事業で「代筆・代読支援」を行うためには、次の条件が必要であることが分かった。 (1)支援を行うための受け皿 ・支援者の確保 ・支援手法の整理(的確な支援、情報漏洩対策など) ・支援者の養成(養成カリキュラムの確立) (2)明確な支援体制 ・支援体制の整備 ・他の福祉サービスとの差別化 ・法制度の整理や予算の確保 (3)その他 ・利用者からのニーズの把握 ・サービスの周知  これらの条件に加え、既に実施している自治体の実例などは、支援を実施する上で参考になるため、成功例を整理して資料化することも重要になっている。 4.実態の更なる解明  当事者調査と同様に、本調査がアンケート調査になるため、自治体の実態について不明確な部分は多い。特に3で示した意思疎通支援事業で代筆・代読支援を実施するための条件面は、具体的な内容の整理が必要となっている。 14ページ 6 調査結果 その他 1.公的な福祉サービスでは対応できない代筆・代読支援の「線引き」  調査では、公的な福祉サービスでは支援が難しい金融機関や医療機関などでの代筆・代読の支援に関する意見もあり、特に視覚障害当事者からは、これらに対する不満や要望が多く寄せられた。これらの支援は、本来、金融機関や医療機関などの事業者側で対応すべきことではあるが、実際に代筆・代読のお願いをしても満足な状況にならないため、様々な不満や要望が寄せられている。そのため、関係する事業者の理解、更には一般社会への理解を向上させる必要がある。  しかし、代筆・代読支援を受ける視覚障害者においては、どこまでが公的な福祉サービスで支援が受けられ、どこまでが公的な福祉サービスで支援が受けられないかを明確に理解しておらず、この理解不足が原因でトラブルになることもある。この理解不足を解消するため、公的な福祉サービスができること・できないことの線引きが必要となっている。 2.安全に代筆・代読支援を利用すための「共通ルール」  同行援護や居宅介護での代筆・代読支援の実施方法をみると、実際には全国統一のルールはなく、支援者と視覚障害者がお互い手探りでベストな支援方法を探しながら、支援を行っていると言われている。そのため、ベストな支援方法が見つからない場合は、結果的に、支援者への不満につながっている部分もある。そのため、一部の支援者や視覚障害の利用者からは、視覚障害者向け代筆・代読支援に関する「共通ルール」のようなものが必要ではないかとの意見があった。例えば、個人情報保護の対応、意思を示す自署の対応、代筆・代読の責任の所在など、後でトラブルに発生しないために支援を行う前に支援者と利用者が確認すべき事項について、ルール化を求めている傾向がある。これらの確認事項をルール化し、支援者と利用者の共通理解にすることは、支援を安心・安全に利用するためにも必要なことである。 3.実際のサービスを提供する支援者(事業所)の実態やニーズ  視覚障害当事者への調査だけを見ると、代筆・代読支援を行う支援者に対する不満が多く散見されるため、支援者側の整備が進んでいないと思われてしまう。  しかし、支援者側の声に耳を傾けると、視覚障害者に対する代筆・代読支援を熱心に取り組んでいる支援者(事業所)は、目的意識をもって支援を行っている。また、支援者側からは、現状の同行援護や居宅介護の中で代筆・代読支援を行うことに限界があるとの意見もある。主な理由は、同行援護は居宅でのサービス提供ができないなどの制度面での課題に加え、報酬面での課題などもあり、支援者側からも支援体制の拡充を求める声は大きい。  意思疎通支援事業で代筆・代読支援を行うことを考えると、支援者側の実態やニーズも整理すべきである。 15ページ 7 まとめ 1.代筆・代読支援に関わる実態とニーズの整理  調査結果や検討委員会での意見などを踏まえ、9〜14ページでは代筆・代読支援に関する実態やニーズについて多角的な考察を行った。ここでは、その実態やニーズを改めてまとめ、全体像について考えてみたい。  まず、視覚障害当事者は、日常生活での読み書きに困っており、代筆・代読支援は生活になくてはならない存在となっている。そして、その困っている状況を少しでも改善させるため、利用しやすい公的な福祉サービスの充実した支援を求めている。つまり、視覚障害者の代筆・代読支援のニーズは非常に高いと言える。  しかし、現在、公的な福祉サービスとして代筆・代読支援を実施している同行援護と居宅介護は、支援の質や制度面に問題があり、結果的に十分な支援を提供していない状況にある。そのため、視覚障害当事者からは、支援の質や支援を支える制度を改善してほしいとの要望が出ており、もっと代筆・代読支援を安心・安全に利用したいというニーズに直結している。  一方で、自治体では、視覚障害者のニーズに応えるため、公的な福祉サービスの中で代筆・代読の支援が用意されている。しかし、実態は、そのニーズに対応した支援が実施されていない。  まず、意思疎通支援事業「代筆・代読支援」については、全国での実施率は1.4%と低調になっている。視覚障害者からのニーズが高いことを踏まえると、自治体に対してそのニーズが届いていない現状がある。また、同行援護・居宅介護での代筆・代読支援については、前述した制度面の問題により支援自体に限界があること、自治体自体が視覚障害者のニーズを上手く把握できていないことが現状の課題である。つまり、公的な代筆・代読支援の問題点の解決、自治体がニーズを上手く吸収できない問題の解決が求められている。  しかし、自治体自体は、障害者に対する支援は前向きに考えている部分もある。そのため、もし、意思疎通支援事業「代筆・代読支援」を新たに開始するのであれば、円滑にサービスを実施するための支援体制などの条件面の整理を求めている。  このような背景があり、視覚障害者が公的な福祉サービスでの代筆・代読支援に満足をしていない状況が生まれている。 2.目指すべき代筆・代読の支援体制  前ページでは、実態調査で見えてきた代筆・代読支援に関わる実態とニーズを整理した。そして、改めて、現在の視覚障害者が置かれている現実に戻った上で、どのようにしたら全国の自治体で意思疎通支援事業「代筆・代読支援」を活発に取り組ませることができるかをまとめてみたい。  まず、視覚障害者が代筆・代読支援を利用する「場所」において、最も利用の要望が高いのは「自宅(居宅)」である。そして、現状の公的な福祉サービスで代筆・代読支援が受けられる同行援護や居宅介護は、この自宅(居宅)での代筆・代読支援が実施しづらい。つまり、この「自宅(居宅)」での代筆・代読支援が、公的な福祉サービスの中で大きな穴になっており、この穴を埋めることが自治体の支援に求められている。  その穴を埋める方策の一つとして、意思疎通支援事業「代筆・代読支援」を、居宅専門のサービスとして実施することが有効と考える。この点は、視覚障害当事者、自治体、そして支援者にとってメリットがある。 (1)視覚障害当事者のメリット  自宅での代筆・代読支援が行われれば、既存の同行援護や居宅介護の一部で実施していた代筆・代読支援を、専門的に受けることができ、ある程度は支援に与えられる時間と質が担保される。  また、意思疎通支援事業であれば、他のサービスとの組み合わせも可能となり、同行援護を利用して買い物をした場合、帰宅後に購入した商品の表示などの読み上げも可能となる。これは視覚障害者にとっては、切れ目のない支援を受けることができ、大きなメリットがある。 (2)自治体のメリット  自治体は、福祉サービスを実施するにあたり、受け皿となる支援者の確保が大事だと考えている。もし、居宅で意思疎通支援事業「代筆・代読支援」を行うのであれば、その支援者は同行援護の従事者を即効性のある支援者として活用できる。また、同行援護の従事者は、ある程度、情報提供の技術があることから、支援の質を保つことができる。また、意思疎通支援事業は他の障害福祉サービスとの組み合わせも可能としていることから、自治体が求める条件面が揃えば、すぐにでも意思疎通支援事業で「代筆・代読支援」が実施できる可能性は高い。 (3)支援者のメリット  居宅で代筆・代読支援ができるのであれば、同行援護や居宅介護の追加サービスとして支援が実施できるので、仕事の効率が良い。特に同行援護においては、支援者の確保が重要な課題となっていることから、仕事の幅を広げ、収入の確保につながる特効薬になる可能性もある。  これらのメリットを踏まえると、居宅で意思疎通支援事業「代筆・代読支援」を行うことは、視覚障害者のニーズを満たす効果がある。そして、自治体でも比較的条件が揃っていることから、サービスは開始しやすく、代筆・代読支援の実施率の改善につながることが期待できる。 【7−2 居宅で意思疎通支援事業「代筆・代読支援」を行うメリット】 1.同行援護 (1)居宅 【現状】サービスの対象外 【メリット】利用者にとってシームレスな支援が可能となる (2)その他のメリット 情報提供としての代筆・代読支援を既に実施しており、一定の支援の質もある 2.居宅介護 (1)居宅 【現状】他の支援があり、代筆・代読支援が実施しずらい 【メリット】追加になるため、代筆・代読の時間が確保できる 3.対象別のメリット (1)利用者(視覚障害当事者) ・居宅での代筆・代読支援が専門的に受けることができる。 ・同行援護の従業者からの支援であれば、外出後に居宅内で発生した代筆・代読支援も受けることができる。 (2)自治体 ・既存の地域資源(同行援護・居宅介護)が活用できる。 ・意思疎通支援事業は他のサービスとの併用も可能。 (3)支援者 ・同行援護や居宅介護との抱き合わせで仕事ができるため効率がよい。 3.調査目的の確認、今後の目標  本調査は、意思疎通支援事業「代筆・代読支援」の実施が自治体において積極的に行われることを目指し、予め設定した論点について、調査を通して課題整理を行うものであった。  論点@とした「視覚障害者に対する代筆・代読支援の提供方法・体制の在り方」については、実態やニーズの確認を行い、現状の提供方法・体制には不満があり、支援の抜け穴になっている居宅での代筆・代読支援の実現、更には支援の質の向上が課題となっていることが整理できた。ただし、多様な見え方や行動がある視覚障害者の個別特性については、未整理な部分が多く、今後の課題となっている。また、視覚障害者自身が、代筆・代読支援のニーズを自治体に的確に伝えることも課題となっている。そして、論点Aとした「自治体における代筆・代読支援の実施体制の在り方」については、更なる調査や課題整理が必要と考えている。特に、今回の調査で分かった自治体がサービスを開始するための条件については、まだまだ不明確な点が多い。更に、自治体の実施体制を考えると、今年度調査ができなかった支援者側の実態やニーズなどの課題整理も必要になっている。  今年度は、実態やニーズの課題整理はできたものの、支援の実施に向けた課題整理は、まだまだ多い。今後は、視覚障害者の実態やニーズの更なる整理、自治体が実施するために必要な条件の整理を行い、意思疎通支援事業「代筆・代読支援」を活性化させるための明確な支援体制などを立案することが必要である。  近い将来に、意思疎通支援事業「代筆・代読支援」が、どこでも、誰でも受けられることを、社会全体で目指す必要がある。 裏表紙 発行 社会福祉法人日本盲人会連合  〒169−8664       東京都新宿区西早稲田2−18−2 TEL 03−3200−0011 FAX 03−3200−7755