愛盲時報 平成30年10月25日(木)第260号 目次  1.読書バリアフリー法の制定を求める院内集会開催  2.日盲連結成の地で70周年記念式典開催  3.日盲連結成70周年記念第64回全国盲女性研修大会報告  4.日盲連結成70周年記念第64回全国盲青年研修大会開催  5.障害者雇用率問題について日盲連が声明  6.下神明駅で転落事故を検証  7.ご寄付のお願いについて  8.奥付  *見出しの頭には「--(半角で2つ)」の記号が挿入されているので、検索機能を使って頭出しをする際にご利用下さい。  また検索の際、目次でご紹介した数字を続けて半角で入力すると、その項目に直接移動することができます。  (例)1をご希望のときは、「--1(すべて半角)」と入力。 (以下、本文) --1.読書バリアフリー法の制定を求める院内集会開催  7月17日、日本盲人会連合、全国盲ろう者協会、DPI日本会議、弱視者問題研究会が主催する「読書バリアフリー法(仮称)の制定を求める院内集会」が東京都千代田区の参議院議員会館で開催され、視覚障害者などの読書困難者、関係者、約160名が参集した。また、超党派の衆参両院議員16名も参加した。  開会に先立ち、日盲連竹下(たけした)義樹(よしき)会長は挨拶の中で、「出版物を直接利用できない、視覚障害者、上肢障害者、寝たきりの方、ディスレクシアといった人たちが、自由に利用できるようになることが必要である。私たちはマラケシュ条約の批准に向けた著作権法の改正による権利制限だけでは不十分であって、読書をあるいは文字を自由に利用して人間としての文化を享受するための読書バリアフリー法の制定を求めている。国会議員の方々により、読書バリアフリー法の動きが大きくなっており現実のものとなりつつある。ここで、この空気をもう一歩広げて推し進めていくため、この集会を通して読書困難者の声を届けたい」と述べた。  集会では、弱問研の宇野(うの)和博(かずひろ)氏より「読書バリアフリー法(仮称)の必要性とこれまでの取り組み」と題した基調報告が行われ、その後、当事者の訴えとして、視覚障害者、上肢障害者、盲ろう者、弱視者、ディスレクシアの方々は、それぞれの立場で読書への思いを述べ、「買う自由」「借りる権利」を実現するための読書バリアフリー法の制定を強く求めた。 --2.日盲連結成の地で70周年記念式典開催  8月18日、「日本盲人会連合結成70周年記念式典・記念シンポジウム」が大阪市淀川区(よどがわく)のメルパルク大阪にて開催され、全国各地から200名が参集した。まず、記念式典が開かれ、日盲連竹下(たけした)義樹(よしき)会長、同笹川(ささがわ)吉彦(よしひこ)名誉会長、同近畿ブロック協議会辰巳(たつみ)寿啓(としひろ)委員長より挨拶があった。また、日本(にっぽん)ライトハウス橋本(はしもと)照夫(てるお)理事長からの来賓挨拶、アートコーポレーション株式会社への感謝状贈呈が行われた。  続いて、広瀬(ひろせ)浩二郎(こうじろう)氏(国立民族学博物館グローバル現象研究部准教授)による「障害者イメージの改変~『目に見えない世界』を切り開く当事者団体の役割~」と題した記念講演が行われ、新しい障害者運動は何をめざすべきなのか話され、「自尊心」「主導権」「持続力」をキーワードとして、当事者団体が果たすべき役割について述べられた。  次に2つのシンポジウムが開かれた。  シンポジウム1では、「日盲連が目指す将来ビジョン」をテーマにパネルディスカッションが行われた。その中で、日盲連将来ビジョン検討委員会で検討を重ねてきた内容をまとめた報告書で整理された項目や諸問題を紹介し、日盲連及び視覚障害者の今後の将来について議論した。  日盲連竹下(たけした)義樹(よしき)会長は、「障害者は自分のハンディを意識してしまう。私たちは自分たちの不利益なことを意識するのではなく、できることを意識することが必要である。健常者に近づく努力をするよりも、視覚障害者が見えなくてもできる、あるいは見えないからこそできることを意識する必要がある。また、障害者権利条約では障害の医学モデルから社会モデルへの変革が必要であると言っているが、そうは言っても私たちの自尊心を傷つけることがあまりにも多いと思われる。この自尊心を傷つけられている状態を回避する、あるいは私たちのプライドを保ち続けられる社会を実現させることが日盲連運動の柱と思われる。このようなことを意識しながらこの3年間、日盲連あるいは視覚障害者の将来のイメージが見えてくるような議論を進めてきた。このシンポジウムで議論してきたものを示しながら、みなさんとともに考えていきたい。」と述べた。  シンポジウム2では、「弱視者(ロービジョン)の抱える困難と社会の変革を目指して」をテーマにパネルディスカッションが行われた。  その中で、日盲連の弱視に関する懇談会で検討し、まとめられた報告書を元に、弱視者の困り事や要望について紹介し、弱視者が暮らしやすい社会の在り方について議論した。  同報告書では、「弱視者からのお願い」として制度やルールを決めるときは弱視者を抜きにしないこと、見えにくいが故の行動に対する理解、弱視者自身が気をつけたいこと、また見えにくいことを訴え、受け入れられる社会を作ることなどが盛り込まれている。また、今後の課題として症状の早期発見、読み書き問題、女性特有の課題について議論が必要であるとまとめている。  同シンポジウムで日盲連竹下(たけした)義樹(よしき)会長より「日盲連が弱視者に関する問題を取り上げないのは、真に視覚障害者問題に取り組んでいるとは言えない。今後、弱視者問題を継続的に取り組む組織を日盲連内に立ち上げる」との決意表明があった。  記念式典・記念シンポジウムは最後に日盲連小川(おがわ)幹雄(みきお)副会長の閉会挨拶があり、盛会裏に終了した。  翌19日は、日盲連結成40周年として建立された日盲連結成の碑が鎮座する大阪府貝塚市(かいづかし)の二色(にしき)の浜(はま)公園を訪れ、真夏の快晴で暑くなっていたものの、心地よい海風の中、将来を見据えている男の子と女の子の石像に触れながら、結成当時に思いをはせ、ともに将来を見据え、この地で再び集うことを願い散会した。 --3.日盲連結成70周年記念第64回全国盲女性研修大会報告  日本盲人会連合・同女性協議会・島根県視覚障害者福祉協会主催による「日盲連結成70周年記念第64回全国盲女性研修大会(中国・四国ブロック島根県大会)」が、8月31日~9月2日に開催され、島根県民会館並びにホテル一畑(いちばた)を会場に視覚障害女性と関係者400余名が参集した。  1日目は常任委員会・全国委員会が行われた。  2日目午前の全国代表者会議では、平成29年度の事業報告・決算・監査報告、平成30年度の運動方針・事業計画・予算はじめ10議題について話し合い、一部次回までの検討を含め承認された。  午後の研修会第1部では落語家(元医師)の春雨(はるさめや)落雷(らくらい)師匠による講演会「健康講話」の演目「目黒(めぐろ)の 秋刀魚(さんま)」で大いに笑った後「笑うことにより免疫力が高まり健康を保てる」と、笑い方を学んだ。  第2部では日盲連結成70周年記念事業として、女性協が実施している「組織活動に関するアンケート調査」の中間報告があった。内容の概要は次の通り。  1.前回調査より女性会員数が減少している  2.同会からの定額の補助がないところがある  3.家庭生活訓練事業を中心とする活動団体が多い  4.加盟団体に占める女性役員数(部長以外)について、0という団体が1割以上ある  5.女性部役員数が少ないところでは、行事を行う時や電話を利用して会議を開いている、など。  また、第3部では、レポート発表・意見交換会が行われた。助言者として日盲連竹下(たけした)義樹(よしき)会長、島根県健康福祉部次長、松江市(まつえし)福祉部障害福祉課長の3氏を招き、「日頃差別を受けたことがありますか?感じたことがありますか?」をテーマに9ブロック9人から次のような発表がなされた。  (1)行政窓口での代筆にまつわること  (2)タクシー料金の多額請求  (3)母親から受けた行動や言動  (4)就職先での言葉で結局は解雇された、など。  会場からも次々と手が上がり、同じ思いを持つ仲間からの発言も多く涙を誘う場面もあったが、一方で「結婚に対して不安があったが、縁を結べそうかもしれない」という喜ばしい話もあった。重いテーマだったが日々の生活の中で、殊に家族から受ける事々など、仲間の集まりだからこそ話せたのではないか、次の展開は運動に力を注ぐことではないかと感じた。  その後開かれた、交流会の席上で、あはき19条裁判カンパ活動が行われ、15万3005円が寄せられた。  3日目は式典と大会議事が開かれ、13項目の決議事項が採択された。 --4.日盲連結成70周年記念第64回全国盲青年研修大会開催  9月16・17の両日、社会福祉法人日本盲人会連合・同青年協議会・一般社団法人奈良県視覚障害者福祉協会・同青年部主催の「日盲連結成70周年記念第64回全国盲青年研修大会」が奈良県橿原市(かしはらし)の奈良県社会福祉総合センターならびにDAIWA ROYAL HOTEL THE KASHIHARAを会場に、全国の盲青年と関係者210名が参集し開催された。  1日目午後から行われた代表者会議では、平成29年度事業報告・決算報告・会計監査報告、平成30年度事業計画案・予算案が審議され、いずれも承認された。その他、昨年度に行った視覚障害のある児童・生徒の基礎データを作成することを目的としたアンケートについて、今年度中に集計と分析を行い取りまとめることが報告された。  また、「中央省庁をはじめとする各行政機関における障害者雇用水増しに関する特別決議」が満場一致で採択された。なお、今年度団体青年部活動助成金については、広島県、堺市さかいし、和歌山県、静岡県、富山県に配分することが報告された。  続いて、来年度札幌市で開催される第72回全国盲人福祉大会に向け、交通問題、バリアフリー・日常生活、職業問題・その他について各分科会で協議され、次の3つの議案を提出することが決議された。  (1)視覚障害者のスムーズな移動を実現するために、交通機関同士のさらなる連携を  (2)ネットバンキングやネットショッピングサイト等のセキュリティーが強化されたサイトへのログイン認証を視覚障害者が単独で容易に行えるよう配慮を  (3)利用者家族へのサービス提供が原則禁止されている同行援護制度、家事援助制度を見直し、子育て中の視覚障害者が、ヘルパー等による十分な支援を受けながら子育てができる制度の整備を。  2日目は、天理(てんり)大学雅楽部による雅楽演奏と楽器に触れる「雅楽に親しむ」と、奈良県立橿原(かしはら)考古学研究所附属博物館に移動し、同博物館学芸員の説明を聞きながら縄文から古墳時代に使われた土器や装飾品に触れる「触って体感考古学」の2つの研修会と、大会式典が行われた。  大会式典では、奈良県視覚障害者福祉協会辰巳(たつみ)寿啓(としひろ)会長の歓迎の挨拶、日盲連竹下(たけした)義樹(よしき)会長、同青年協議会伊藤(いとう)丈人(たけひと)会長の主催者挨拶、奈良県知事・橿原市長等から来賓祝辞などが行われた。  最後に次年度開催の三重県の地で再会することを約束し、盛会のうちに幕を閉じた。 --5.障害者雇用率問題について日盲連が声明  中央省庁や地方自治体などが障害者の雇用数を水増ししていた問題で日本盲人会連合は9月12日、ホームページ上で声明を発表した。  声明文は「中央省庁及び地方自治体等の『官公庁における障害者雇用率問題』について」と題し、「一連の不祥事は、国民の信頼を根底から揺るがすものであり、政府に対して深く反省を求めるとともに、法改正も視野に入れた障害者雇用施策を抜本的に見直し、障害者雇用に真剣に取り組むことを求める。」と訴えるとともに、障害者雇用を真に前進させるために、9項目について提案を行った。一部抜粋して概要を紹介する。 一、真相究明と防止策について  政府は有識者・当事者を含む第三者委員会を設置して、すべての行政機関、立法、司法、地方自治体、独立行政法人の障害者雇用の実態を明らかに。そのうえで、徹底した原因究明と防止策を講じ、厚生労働省のチェック機能の強化、必要に応じて障害者雇用施策の見直しを行うべきである 一、「61(ろくいち)調査」の統計の取り方について  毎年行われている6月1日現在における障害者雇用状況報告(「61(ろくいち)調査」)は、障害の部位別に統計を取るべきであり、障害等級、職種、配慮事項などについても報告を求めるべきである 一、雇用管理や労働環境整備について  真に障害者雇用を促進し、障害者の職場定着を図るためには、雇用管理や労働環境整備に力を入れるべきであり、その担当責任者を明確にし、定期的に各省庁の当該責任者による情報交換会を開催するなどして、その内容を公表すべきである 一、障害者枠採用について  職員採用において、「行政機関の職員の定員に関する法律」(総定員法)の下では、重度障害者はよほど特筆すべき能力がない限り、採用に至ることはないのが現実である。能力のある障害者を率先垂範して登用するためには、総定員に縛られない特別枠(障害者枠)が必要である 一、指導・チェック体制の強化について  点検・指導にあたっては、単に雇用率をチェックするだけでなく、採用方法、中途障害者の継続雇用と支援の内容、合理的配慮の実施状況、研修、広報・啓発などをトータルで行う必要がある。そのためのハローワークなどの関係職員についても、必要に応じて増員すべきである 以上 全文は、日盲連ホームページ(http://nichimou.org/notice/180912-jim/)を参照。 --6.下神明駅で転落事故を検証  日本盲人会連合は9月11日、東急大井町(おおいまち)線「下神明(しもしんめい)駅」において、4日午後に同駅で発生した視覚障害男性が駅ホームから転落し電車に轢かれ死亡した事故を受け、現場検証を行った。  当日は日盲連から佐々木(ささき)宗雅(むねまさ)組織部長、東京都盲人福祉協会から笹川(ささがわ)吉彦(よしひこ)会長及び地元の品川区視覚障害者福祉協会から寺島(てらじま)政博(まさひろ)会長らが参集し、転落現場となった溝の口(みぞのくち)方面行きホームで駅員の説明を受けながら検証した。  同駅は小規模でホームは相対式。上り・下りどちらとも狭隘(きょうあい)な感じではあるが、内方線付き点字ブロック、階段、エスカレーター、エレベーター等、バリアフリーに配慮して設置されているようである。品川視協の会員によると、駅員からの声かけもあるという。 ただし、ホームドアは来年度下期に整備される予定であると聞き、残念な思いを強くした。今回の事故に関して、転落時、白杖を利用していなかったとも伝えられており、日盲連としては改めて会員個々に歩行時の 安全確保に留意することを訴えたい。  この事故を受け、日盲連は、「東急大井町(おおいまち)線下神明(しもしんめい)駅における視覚障害者の転落死亡事故に関する緊急声明」をホームページ(http://nichimou.org/notice/180919-jim/)にて発表した。一部抜粋して概要を紹介する。  去る9月4日午後、東急大井町(おおいまち)線下神明(しもしんめい)駅において、視覚障害の男性が駅ホームから転落し、電車に轢かれ死亡するという痛ましい事故が発生した。  ご遺族には心からお悔やみを申し上げる。それと共に、またしてもという感でこの事実に接しなければならないことに哀しみと無限の憤りを禁じ得ない。私たちは、この3年の間だけでも青山一丁目(あおやまいっちょうめ)駅、河内国分(かわちこくぶ)駅、蕨(わらび)駅、富木(とのき)駅、上新庄(かみしんじょう)駅、保土ヶ谷(ほどがや)駅と、これらの駅で発生した視覚障害者のホームからの転落死による葬列をお見送りしなければならなかったのである。一体、いつまで、何度このような体験をしなければならないのか。鉄道関係者のみならず、全ての国民の皆様に考えていただきたい。  (中略)  鉄道駅ホームからの転落事故は、国、自治体、鉄道事業者、そして駅利用者が努力すれば、必ず無くすことができる事故である。  (中略)  このような後悔はこれを最後にしたい。そのためにも抜本的な安全対策を可及的速やかに講じ、二度とこのような悲惨な事故が生じないよう強く望むものである。  以上声明する。 --7.ご寄付のお願いについて  日本盲人会連合は視覚障害者自身の手で、<自立と社会参加>を実現しようと組織された視覚障害者の全国組織です。  1948年(昭和23年)に全国の視覚障害者団体(現在は、都道府県・政令指定都市61団体が加盟)で結成され、国や地方自治体の視覚障害者政策の立案・決定に際し、当事者のニーズを反映させるため、陳情や要求運動を行っています。 活動内容は多岐にわたりますが、そのために必要な経費の確保は、厳しい財政の中困難を極めています。 視覚障害者福祉の向上を目指し、組織的な活動を維持していくため、皆様からの特段のご厚志を賜りますよう、何とぞ宜しくお願い申し上げます。 ■ゆうちょ銀行 記号番号 00160-5-536104 加入者名 社会福祉法人日本盲人会連合 ■みずほ銀行 店名 高田馬場支店 預金種目 普通  口座番号 2868101 カナ氏名(受取人名)フク)ニホンモウジンカイレンゴウ ※領収証が必要な方、本連合が振り込み手数料を負担する専用の振込用紙をご希望の方は、日本盲人会連合までご連絡ください。(電話:03-3200-0011) --8.奥付 愛盲時報 平成30年10月25日(木)第260号 ※この愛盲時報は鉄道弘済会の不動産賃貸事業などの益金等、日本盲人福祉委員会の愛盲シール維持会費の中から贈られた寄付金などで作られたものです。 発行所:社会福祉法人 日本盲人会連合  〒169-8664東京都新宿区西早稲田2-18-2 発行人:竹下 義樹 / 編集人:三宅 隆 電話:03-3200-0011/FAX:03-3200-7755 URL:http://nichimou.org/ Eメール:jouhou@jfb.jp(情報部) 以上で、愛盲時報 平成30年10月25日(木)第260号を終わります。