愛盲時報 平成30年04月25日(水)第258号 目次  1.厚生労働大臣対談1月に 加藤厚労大臣と竹下日盲連会長  2.平成30年度予算が成立【厚労省予算 障害保健福祉関係】  3.平成30年度東京都点訳・朗読奉仕員指導者養成講習会受講者募集  4.シンポジウム 視覚障害者の生活訓練(歩行訓練)のあり方を考える開催  5.ご寄付のお願いについて  6.奥付  *見出しの頭には「--(半角で2つ)」の記号が挿入されているので、検索機能を使って頭出しをする際にご利用下さい。  また検索の際、目次でご紹介した数字を続けて半角で入力すると、その項目に直接移動することができます。  (例)1をご希望のときは、「--1(すべて半角)」と入力。 (以下、本文) --1.厚生労働大臣対談1月に 加藤厚労大臣と竹下日盲連会長  加藤(かとう)勝信(かつのぶ)厚生労働大臣にご多忙の中、お時間を割いていただき今年の1月に新春対談が実現致しました。竹下(たけした)義樹(よしき)日本盲人会連合会長が障害者施策等についてお話を伺いました。 「意思疎通支援」における「代筆・代読」について  竹下日盲連会長(以下、竹下):日頃、視覚障害者の福祉の充実にご尽力いただき、ありがとうございます。今日は、インタビューの機会をいただいたことに御礼申し上げます。若干のお時間、宜しくお願い致します。最初に、「意思疎通支援」における「代筆・代読」は、視覚障害者の生活の質の向上、また社会参加には欠かせないものとなっております。厚生労働省としての今後の取り組みについてお考えをお聞かせください。  加藤厚労大臣(以下、大臣):視覚障害のある方にとってのコミュニケーションをどう図っていくかという大変重要な課題であり、そういった意味で、代筆代読はコミュニケーションを支援するための重要な手段であると思っています。現在、地域生活支援事業の中の意思疎通支援事業として、市町村が実施できることにはなっております。しかし、実態を見ると、代筆代読の支援方法、また、支援者養成の仕組みというものが十分確立されていないということで、各市町村においては代筆代読の提供に積極的に取り組みづらい状況もあるのではないかと考えています。実際、整備状況等も決して高くないというのが現状であると認識しています。代筆代読の支援事業をしっかり確立していくために、どうやっていくのか、日本盲人会連合はじめ、視覚障害関係団体からもお話を聞き、実態をしっかり把握して、必要な対応を検討させていただきたいと思っております。 「視覚障害認定基準の障害等級」について  竹下:「身体障害者福祉法」における「視覚障害認定基準の障害等級」について、これまでは視力の等級基準が「両眼の視力の和」により認定されておりました。昨年、厚生労働省におきまして「よい方の眼」を基準に認定するという議論がなされております。ぜひ議論された方向性を望みますが、大臣のお考えをお聞かせください。  大臣:日本眼科学会や日本眼科医会から、現行の認定基準である「両眼の視力の和」という形は、医学的に意味が無い、国際的にも用いられていない基準であって、良い方の眼の視力を認定基準にするべきだという指摘を受けておりました。これを受け、厚生労働省では、この基準の見直しについて、専門性、客観性を確保するため、竹下会長にもご参加いただきました有識者検討会において、医学的な専門的な立場から、また当事者団体からのヒアリングなどを踏まえ検討を行っていただきました。そして、昨年末、これまでの「両眼の視力の和」から「良い方の眼の視力」をベースに視力障害の有無や程度を判定する等の見直しを行うことが適当という報告書がまとめられました。この見直しは皆様方のご要望に沿ったものだと認識をしております。今後、パブリックコメントなど必要な手続を経た上で、この認定基準の見直しをしていくということになります。円滑に施行ができるよう、当事者の方々、医療機関、自治体にも十分に周知を図っていきたいと思っております。 視覚障害者の特性に配慮した就労支援について  竹下:「障害者雇用促進法」における「障害者法定雇用率」が来年度より2.2%に引き上げられ、実雇用人数も伸びてきています。しかし、ハローワークにおける職業紹介・就職状況の統計によると、残念ながら視覚障害者の就職状況は停滞している現状にあります。この点を改善するためにも、視覚障害者の特性に配慮した支援を行うことにより、一般就労が促進されるような仕組みづくりについて、大臣のお考えをお聞かせください。  大臣:障害のある方々の雇用の促進には、これまでも努めてきておるところでありますが、促進にあたっては、障害の状況によった特性というものに応じた対応を図っていく必要があると考えております。例えば、ハローワークにおいて、視覚障害に特化したマニュアルや事例集等を企業に周知する。また、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が、視覚障害者の作業を容易にするため、拡大読書器や画面読み上げソフトなどの機器を無料で貸し出す事で、視覚障害がある方がその資格や能力を活かせる職種に就職できるよう、支援を進めてきているところです。さらに現在、同機構において、視覚障害者の雇用の実状、およびモデル事例の把握に関する調査研究を実施していただいており、これらを踏まえて就職に向けた関係機関の連携、あるいは、中途視覚障害者の雇用継続支援といったモデル的な好事例の収集等、行っていきたいと思っております。いずれにしても、こうした研究成果も含め、視覚障害者の雇用の促進をしっかり図っていきたいと思います。視覚障害者の方の職業紹介状況、件数は減少していますが、これは、視覚障害者の人数自体が減少しているということも挙げられており、就職率そのものは上昇傾向にあるのではないかと思っています。いずれにしても、今、申し上げたような形で、より就労促進が図っていけるように、あるいは、就労を継続していただけるように、我々もしっかりと支援をしていきたいと思います。 無資格類似業者の問題及び受領委任制度について  竹下:視覚障害者の職業は、これまであん摩マッサージ指圧・はり・きゅうが中心となっておりました。今後も続いていくと考えられることにより、この分野での視覚障害者の職業的自立のための対策が必要です。特に無資格類似業者の問題、保険取扱い拡大における受領委任制度の早期実現、またこの制度における視覚障害施術者の取扱いへの配慮について、大臣のお考えをお聞かせ下さい。  大臣:あん摩マッサージ指圧師については、昔から視覚障害者にとって重要な職業と位置づけておりますし、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律の第19条において視覚障害施術者の取り扱いへの配慮として、その職域の優先確保を図るとされています。引き続き、法律に基づいて、職域の優先確保を図っていくことが、まずは重要だと思っております。そういった意味からも、資格を持たないにもかかわらずマッサージ等を行っている、いわゆる無資格類似業者については、都道府県等に対して指導等を行うよう要請をしています。また、今後、広告についてのガイドライン作成などの対策なども実施をしていきたいと考えております。さらに、いわゆる、あん摩マッサージ、はり、きゅうの療養費については、不正対策とあわせて、受領委任制度による指導監督の仕組みを導入すべきという報告書が去年の3月に専門委員会から出されたところであり、平成30年度中に実施できるよう、専門委員会での議論を進めております。 同行援護の報酬単価見直しについて  竹下:同行援護について、これまで、身体介護を、伴う・伴わないという枠がありました。これが実態に合わないということで、その類型を一本化して、視覚障害者の介助に見合った報酬単価を設定してほしいとお願いしてきました。ぜひ来年度の実現を要望します。更に、重度視覚障害の重複障害者が同行援護を受ける際の加算も含めた十分な体制を整備していただきたい。大臣のお考えをお聞かせください。  大臣:視覚障害の方が安心して外出できる環境は活動していくための基盤であり、同行援護は、大変大事なサービスだと思っております。今お話しがありましたように、平成30年度の障害福祉サービス等報酬改定、これは、具体的にはこれから見直しをしていく、議論をしていくわけでありますが、その方向性としては、まず、視覚障害者の移動を支援する際には、これまで身体介護を伴う場合と、伴わない場合と2つに区分けをしていましたが、これを一本化していくということ。それから盲ろう者通訳介助員が支援を行った場合とか、障害支援区分が一定以上の方を支援した場合には加算をしていくといった方向で見直しを検討していきたいと思っております。 駅ホームの安全対策及び歩行訓練士による訓練制度の拡大について  竹下:駅ホームにおける安心安全対策ということでは、ホームドアの設置、乗務員や駅員、他の利用客からの声かけが非常に重要となっています。これらに加えて、視覚障害者自身も歩行能力を高めることも重要と考えています。視覚障害者の歩行能力向上のため、歩行訓練士によるさらなる訓練制度の拡大について、大臣のお考えをお聞かせください。  大臣:私の地元は岡山なのですが、実は、岡山は点字ブロックがスタートした所でもあります。今お話しがあったように、駅のホーム等からの転落防止のための整備を、ハード面からしっかり図っていく必要があると思います。また、近くで見ている乗客の方が、危なそうだったら声かけをする、手助けをする、そういった社会にしていくことは、共生社会の実現という意味においても非常に大事なことだと思います。その上で、歩行訓練の機会をどう確保し、また、視覚障害者の方の歩行能力をどう向上させていくのかというご視点からのお話しだと思います。現在、視覚障害のある方に対する歩行訓練は、看護職員を必置とする機能訓練として実施されており、かなり使い勝手が悪いという声もお聞きをしております。平成30年度の報酬改定に向けて、日盲連からのご要望もございますので、看護職員の配置を要しない生活訓練としても実施できるよう、検討しております。これにより、視覚障害のある方への歩行訓練が、より行われやすくなっていくのではないかと思っております。また、歩行訓練士の養成についても、現在実施している教育内容をいかに充実していくのかということについて、しっかりと取り組んでいきたいと思っております。歩行訓練の充実、また、歩行訓練士の方の養成とその質の向上を通じ、視覚障害のある方が、より外出しやすい環境を作っていきたいと思います。 --2.平成30年度予算が成立【厚労省予算 障害保健福祉関係】  平成30年度予算が、成立した。一般会計の総額が97兆7128億円で、過去最大を更新。社会保障費は32兆9732億円と17年度比4997億円増えた。厚生労働省が公表している18年度予算のうち、障害保健福祉部予算は、対前年度6.6%増の1兆8648億円、うち障害福祉サービス関係費(自立支援給付費+障害児措置費・給付費+地域生活支援事業費等補助金)は対前年度9.1%増の1兆3810億円。身体障害関連の主な項目は次の通り。 1 障害福祉サービス等の確保、地域生活支援などの障害児・障害者支援の推進1兆8419億円 1.障害福祉サービス等の確保、地域生活支援等 (1)良質な障害福祉サービス、障害児支援の確保  ア.障害児・者に対する良質な障害福祉サービス、障害児支援の確保1兆3317億円 (うち障害児支援関係2320億円)  イ.障害福祉サービス等報酬改定(改定率+0.47%、2015年度±0%) (2)地域生活支援事業等の拡充(一部新規)493億円 (3)障害福祉サービス提供体制の整備(社会福祉施設等施設整備費)72億円 (4)障害児・者への良質かつ適切な医療の提供2452億円 (5)特別児童扶養手当、特別障害者手当等1637億円 (6)障害児・者虐待防止、権利擁護などに関する総合的な施策の推進  ア.障害者虐待防止の推進「地域生活支援事業等(493億円)」の内数  イ.障害児・者虐待防止・権利擁護に関する人材養成の推進1400万円  ウ.成年後見制度の利用促進のための体制整備「地域生活支援事業等(493億円)」の内数 (7)重度訪問介護等の利用促進に係る市町村支援10億円 (8)強度行動障害を有する者の支援を行う職員の育成「地域生活支援事業等(493億円)」の内数 (9)医療的ケア児に対する支援(一部新規)1億8000万円 (10)共生社会の実現に向けた取組の推進  ア.『心のバリアフリー』を広める取組の推進「地域生活支援事業等(493億円)」の内数  イ.障害福祉従事者等に対する共生社会の基本理念の普及啓発(新規)900万円 (11)主任相談支援専門員(仮称)の養成等(新規)1400万円 (12)重度訪問介護利用者の大学等の就学支援(新規)「地域生活支援事業等(493億円)」の内数 (13)障害者施策に関する調査・研究の推進4億円 2.障害児・者の自立及び社会参加の支援等 (1)芸術文化活動の支援の推進2億8000万円、うち「地域生活支援事業等」7100万円(4500万円)ほか (2)障害者自立支援機器の開発の促進(一部新規)1億5000万円 (3)障害児・者の社会参加の促進28億円 (4)失語症者向け意思疎通支援者の養成(新規)「地域生活支援事業等(493億円)」の内数 2 障害者に対する就労支援の推進12億円(地域生活支援事業等計上分を一部除く) (1)工賃向上等のための取組の推進「地域生活支援事業等(493億円)」のうち9000万円 (2)障害者就業・生活支援センター事業の推進「地域生活支援事業等(493億円)」のうち8億2000万円 (3)農福連携による障害者の就農促進「地域生活支援事業等(493億円)」のうち2億7000万円 (4)工賃等向上に向けた全国的支援体制の構築(新規)1200万円 3 東日本大震災及び熊本地震からの復旧・復興への支援22億円 (1)障害福祉サービス事業所等の災害復旧に対する支援(復興)5500万円 (2)障害福祉サービスの再構築支援(復興)2億1000万円 (3)帰還困難区域等での障害福祉制度の特別措置(復興)1500万円 (4)被災地心のケア支援体制の整備(一部復興)19億円 --3.平成30年度東京都点訳・朗読奉仕員指導者養成講習会受講者募集  日本盲人会連合では、東京都の委託による「点訳・朗読奉仕員指導者養成講習会」を実施しております。下記の要領で実施いたしますので、お知り合いのボランティアなど関係する方々にご案内いただけますと幸いです。 対象:点訳、または朗読(音訳)の知識と経験があり、受講後、都内で活動できる方。 期間:平成30年7月3日(火)~平成31年2月 12日(火) 点訳(全20回)原則木曜日の14時~16時 音訳(全25回)原則火曜日の14時~16時 定員:点訳30人、朗読(音訳)20人 申込書請求:4月25日~5月25日(必着)に希望コース名を明記した用紙と、住所・氏名を記入し92円切手を貼った返信用封筒を同封の上、下記まで郵送ください。申込時に課題提出と来館による試験があります。詳細は、日盲連WEBサイト(http://nichimou.org/)をご覧ください。 申込み・問い合わせ先: 〒169-8664 東京都新宿区西早稲田2-18-2 日本盲人会連合点字図書館講習会担当 (電話03-3200-6160) --4.シンポジウム 視覚障害者の生活訓練(歩行訓練)のあり方を考える開催  日本盲人会連合主催、シンポジウム「視覚障害者の生活訓練(歩行訓練)のあり方を考える2018」が、3月4日、TKP神田駅前ビジネスセンターにおいて開催され、全国から関係者ら約70名が参加しました。日盲連は、厚生労働省平成29年度障害者総合福祉推進事業「視覚障害者が日常生活を送る上で必要な支援に関する調査研究」を受託し、平成29年度事業として視覚障害者が日常生活を送る上で必要な支援である生活訓練(歩行訓練)に関する全国調査を実施。シンポジウムでは、調査結果(中間報告まとめ)を受けて、2つの論点「訓練を受ける視覚障害者への効果的な訓練体制のあり方」「視覚障害者を訓練に効果的につなげる支援体制のあり方」について登壇者の方々がそれぞれの立場から、現状と課題、思いなどを語られました。  日盲連竹下義樹会長は、平成30年度施行の障害福祉サービスの報酬改定で、生活訓練でも視覚障害者への訓練が行えるようになったことに触れつつ、訓練を受け、質の高い日常生活・社会生活が送れる環境作りのために調査が活かされることを期待する旨述べました。名古屋市総合リハビリテーションセンター視覚支援課長田中(たなか)雅之(まさゆき)氏は基調報告で、訓練の有効性、機能訓練・非機能訓練の比較、訓練施設に繋げる情報提供等、支援のあり方について各施設の連携、対応状況と課題、強化すべき点について分析・提言を行いました。  3月末、調査結果の報告書がまとめられ発行されました。報告書の内容は日盲連WEBサイト(http://nichimou.org/)で、概要版及び全体版の墨字(Word版・PDF版)を掲載しています。点字版、デイジー版、テキスト版については完成次第、掲載いたします。ぜひ、ご活用下さい。 --5.ご寄付のお願いについて  日本盲人会連合は視覚障害者自身の手で、<自立と社会参加>を実現しようと組織された視覚障害者の全国組織です。  1948年(昭和23年)に全国の視覚障害者団体(現在は、都道府県・政令指定都市61団体が加盟)で結成され、国や地方自治体の視覚障害者政策の立案・決定に際し、当事者のニーズを反映させるため、陳情や要求運動を行っています。 活動内容は多岐にわたりますが、そのために必要な経費の確保は、厳しい財政の中困難を極めています。 視覚障害者福祉の向上を目指し、組織的な活動を維持していくため、皆様からの特段のご厚志を賜りますよう、何とぞ宜しくお願い申し上げます。 ■ゆうちょ銀行 記号番号 00160-5-536104 加入者名 社会福祉法人日本盲人会連合 ■みずほ銀行 店名 高田馬場支店 預金種目 普通  口座番号 2868101 カナ氏名(受取人名)フク)ニホンモウジンカイレンゴウ ※領収証が必要な方、本連合が振り込み手数料を負担する専用の振込用紙をご希望の方は、日本盲人会連合までご連絡ください。(電話:03-3200-0011) --6.奥付 愛盲時報 平成30年04月25日(水)第258号 ※この愛盲時報は鉄道弘済会の不動産賃貸事業などの益金等、日本盲人福祉委員会の愛盲シール維持会費の中から贈られた寄付金などで作られたものです。 発行所:社会福祉法人 日本盲人会連合  〒169-8664東京都新宿区西早稲田2-18-2 発行人:竹下 義樹 / 編集人:三宅 隆 電話:03-3200-0011/FAX:03-3200-7755 URL:http://nichimou.org/ Eメール:jouhou@jfb.jp(情報部) 以上で、愛盲時報 平成30年04月25日(水)第258号を終わります。