厚生労働省平成29年度障害者総合福祉推進事業 視覚障害者が日常生活を送る上で必要な支援に関する 調査研究事業 ----- 報告書(概要版)----- 平成30年(2018年)3月 社会福祉法人 日本盲人会連合 目次                           はじめに 1 調査事業について 2 調査1 訓練施設向け調査 調査結果と分析 3 調査2 視覚障害当事者向け調査 調査結果と分析   2−1 訓練施設につながるまでの経緯に関する調査   2−2 訓練前後の生活の変化に関する調査 4 調査3 訓練紹介機関向け調査 調査結果と分析 5 調査4 訓練内容の詳細に関する調査 調査結果 6 考察 7 まとめ 報告書(概要版)について                  ●概要版では、報告書に掲載をした「分析」「考察」「まとめ」を中心に掲載を行いました。 ●概要版における「調査結果と分析」では、報告書に掲載をした調査結果と分析内容の要点のみを掲載しました。 ●全ての調査結果や資料が掲載された報告書は、本連合のホームページに掲載しております。 社会福祉法人日本盲人会連合 ホームページURL http://nichimou.org/ はじめに  残念ながら、視覚障害者が交通事故に巻き込まれたり、鉄道駅ホームから線路に転落したりする事故が続いています。視覚障害者誘導用ブロックの敷設、横断歩道における音響式信号機とエスコートゾーンの設置、駅ホームの内方線付き点状ブロックの設置など、私たちの要求に基づく安全対策が広がってきましたが、それだけでは事故はなくなりません。視覚障害者の外出時における安心安全は永久の課題であることは承知していますが、それでも自らの安全をより確実にしていくには今後どのような対策が必要なのでしょうか。国や事業者に対して、ハード面の改善や視覚障害者への声掛けを市民に訴えることも重要ですが、それだけでは十分とは言えないように思えます。  私たちは、単独で外出する場合と同行援護事業を利用したガイドヘルパー(介助者)を伴った外出を選択することができます。単独で外出する場合にも、白杖を使用した単独歩行と盲導犬を伴う外出が考えられます。そうした外出手段は、それぞれの視覚障害者が自由に選択できることが前提となっていますし、さらには外出の目的や外出先によっては、その手段を使い分けることも必要になります。ただし、歩行訓練などを受けて単独で外出できる能力を身に付けていることが、そうした手段を選択できるための前提となります。  ところが、残念ながら、国の制度としての歩行訓練を含む機能訓練事業所があまりにも少ないため、全国のどこに暮らしていても、そして、いつでも希望さえすれば歩行訓練を受けることができる環境が整っているとは言えません。私たちは、十分な歩行訓練を受けてこそ、最低限の自らの安全を確保し、外出の自由を獲得することができるのです。国は、これまで以上に視覚障害者が歩行訓練を受けやすくするため、2018年4月から障害福祉サービス事業において、機能訓練事業所だけでなく生活訓練事業所でも歩行訓練が受けられる体制を作ろうとしています。このことは視覚障害者にとって朗報であり、今後すべての都道府県において、最低でも1ヶ所以上の歩行訓練を実施している事業所を作ることが必要です。歩行訓練の重要性を眼科医や自治体の関係者などに十分に理解していただき、視覚障害者自身も歩行訓練を受けることの重要性を再認識することが必要です。本連合としても、歩行訓練を必要とする視覚障害者が訓練に結びつくシステムの確立に向けて取り組む所存です。  昨年に引き続き調査研究にご協力いただいた大倉元宏先生をはじめとする委員の方々に感謝申し上げるとともに、この調査結果が前述した歩行訓練の重要性を眼科医や自治体に理解していただき、視覚障害者自身が歩行訓練の有用性を再認識し、歩行訓練を受ける動機となることを期待します。 1 調査事業について                   1.事業名  視覚障害者が日常生活を送る上で必要な支援に関する調査研究事業 2.事業の目的 視覚障害者が自立した生活や社会参加を行うためには、生活訓練(歩行訓練)などの自立に必要な訓練が安定的に実施されることが重要である。 しかし、障害福祉サービスとしての「自立訓練(機能訓練)」においては、視覚障害者を主たる対象とする事業所数が少なく、視覚障害者に対して全国均一で安定的な訓練事業が実施されていない。一方、近年では十分な歩行訓練を受けられなかった視覚障害者が、外出時に交通事故などの被害に遭うケースが増えている。そのため、視覚障害者からは、安心して訓練が受けられる体制を求める声が多い。 以上の現状を踏まえ、平成28年度には「視覚障害者のニーズに対応した機能訓練事業所の効果的・効率的な運営のあり方に関する調査研究事業」として、訓練を実施する事業所と視覚障害当事者への調査を行った。調査の結果、様々な課題や問題点が見つかる中で、訓練を必要とする視覚障害者に対して、地域の中で訓練に結びつけていく連携体制がないことが判明した。また、受け皿となる訓練事業所については、障害福祉サービスで実施すべき内容の整理、訓練や支援の具体的な効果などについて、さらなる調査が必要との指摘を受けた。 本事業では、昨年度事業において判明した課題の解決を中心に、各調査の実施を通して次の論点整理を行い、視覚障害者が日常生活を送る上で必要な支援である生活訓練(歩行訓練)について研究をする。  論点@   訓練を受ける視覚障害者への効果的な訓練体制のあり方  論点A   視覚障害者を訓練に効果的につなげる支援体制のあり方 3.調査の概要 (1)調査1 訓練施設向け調査    調査名  施設基本情報に関する調査    調査方法  アンケート調査     調査期間  平成29年10月13日〜11月20日    対象  視覚障害者向け訓練実施施設 23施設           (機能訓練10施設、非機能訓練13施設)    回収率  100.0%(回答数:23件) (2)調査2 視覚障害当事者向け調査    調査名  調査2−1 訓練施設につながるまでの経緯に関する調査          調査2−2 訓練前後の生活の変化に関する調査    調査方法  アンケート調査     調査期間  平成29年10月13日〜12月15日    対象  訓練を受講した視覚障害者 各約115名    回収率  調査2−1 95.6%(回答数:110件)          調査2−2 88.7%(回答数:102件) (3)調査3 訓練紹介機関向け調査    調査名  視覚障害者を訓練につなぐ相談支援に関する調査    調査方法  アンケート調査    調査期間  平成29年11月16日〜12月15日    対象  視覚障害者を訓練につなげる可能性のある機関          5業種 約870機関    回収率  46.7%(回答数:406件)      ※注意 一部の対象業種では、メール配信による無作為のアンケート配布を行ったため、対象機関数、回収率は予測値になる。 (4)調査4 訓練内容の詳細に関する調査    調査名  視覚障害当事者の訓練経過に関する調査    調査方法  訓練実施機関の訓練担当者からのレポート提出    調査期間  平成29年10月24日〜平成30年1月31日    対象  視覚障害者向け訓練実施施設 3施設    回収率  100.0%(回答数:3件) 4.検討委員会 委員名簿(順不同・敬称略)  大倉 元宏  成蹊大学理工学部システムデザイン学科 教授(委員長)  竹下 義樹  日本盲人会連合 会長(副委員長)   神屋 郁子  大分県盲人協会 歩行訓練士  工藤 正一  日本盲人会連合 総合相談室 室長  田中 雅之  名古屋市総合リハビリテーションセンター 視覚支援課 課長  谷 映志   国立障害者リハビリテーションセンター学院         視覚障害学科 主任教官  長岡 雄一  東京視覚障害者生活支援センター 所長  仲泊 聡   理化学研究所 多細胞システム形成研究センター         網膜再生医療研究開発プロジェクト 研究員   松下 昭司  日本ライトハウス 養成部 指導員・指導者養成課程教官  吉野 由美子 視覚障害リハビリテーション協会 会長 2 調査1 訓練施設向け調査 調査結果と分析           1.機能訓練と非機能訓練の違い 【1−1 職員の配置状況】 訓練実施者数(平均)             機能訓練  7.2名  非機能訓練  2.8名 歩行訓練実施者数(平均)           機能訓練  4.9名  非機能訓練  2.4名 訓練実施者数に占める正職員の割合(平均)   機能訓練 87.5名  非機能訓練 64.9% 歩行訓練実施者数に占める正職員の割合(平均) 機能訓練 95.8名  非機能訓練 71.0% ●職員の配置・待遇面では機能訓練の方が優位にある。 【1−2 施設の実績状況】 利用定員なしの施設割合            機能訓練 10.0%  非機能訓練 76.9% 年間の利用者数制限なしの施設割合       機能訓練 80.0%  非機能訓練 84.6% 年間の訓練回数制限なしの施設割合       機能訓練 90.0%  非機能訓練 53.8% 1日あたり利用者数(平均)          機能訓練 10.2%  非機能訓練  1.6名 実人数(年間・平均)             機能訓練 42.0%  非機能訓練 114.8名 利用頻度(1週間あたり・平均)        機能訓練  2.6%  非機能訓練  0.8回 ●利用者の実人数:非機能訓練が機能訓練の3倍近い利用者に訓練を実施していた。 ●利用頻度:機能訓練が非機能訓練の3倍以上の回数を実施していた。 【1−3 紹介経路】 医療機関     機能訓練 14.8名  非機能訓練 10.6名 行政機関     機能訓練 11.2名  非機能訓練 12.5名 当事者団体    機能訓練  3.8名  非機能訓練  8.2名 相談支援機関   機能訓練 18.6名  非機能訓練 11.0名 介護保険関係   機能訓練  1.0名  非機能訓練  3.1名 個人       機能訓練 10.5名  非機能訓練 27.5名 ●機能訓練:非機能訓練と比べると、相談支援機関と医療機関からの紹介の割合が高い。 ●非機能訓練:個人からの紹介が多いのが特徴的。また、機能訓練と比べると、当事者団体、介護保険関係からの紹介の割合が高い。 【1−4 対応できない条件】 15歳未満                      機能訓練 90.0%  非機能訓練  7.7% 2年半を超える訓練                 機能訓練 70.0%  非機能訓練  0.0% 身体障害者手帳未所持                機能訓練 50.0%  非機能訓練  7.7% 急激に視力低下した方の入院から在宅復帰までの訓練  機能訓練 40.0%  非機能訓練  0.0% 片道50km以上または1時間半以上かかる方への訓練 機能訓練 30.0%  非機能訓練 15.4% 県外での訓練                    機能訓練 30.0%  非機能訓練 46.2% 2週間以内に訓練開始                 機能訓練 30.0%  非機能訓練  0.0% フルタイムで就労                  機能訓練 30.0%  非機能訓練  0.0% 医療機関に出向いての相談対応・訪問訓練       機能訓練 20.0%  非機能訓練  0.0% 頻度の低い訓練                   機能訓練 10.0%  非機能訓練  0.0% 県外に在住                     機能訓練  0.0%  非機能訓練 38.5% 数回で終了する訓練                 機能訓練  0.0%  非機能訓練  0.0% 復職・一般就労の準備訓練              機能訓練  0.0%  非機能訓練  0.0% 復職・一般就労に向けた就労支援           機能訓練  0.0%  非機能訓練  7.7% 高校・大学・盲学校在学中              機能訓練  0.0%  非機能訓練  0.0% 盲学校進学準備                   機能訓練  0.0%  非機能訓練  0.0% 相談支援事業所との連携による支援          機能訓練  0.0%  非機能訓練  0.0% ケアマネ(介護保険)との連携による支援       機能訓練  0.0%  非機能訓練  0.0% ●機能訓練:15歳未満や手帳未所持などの「制度上の制約」で実施できない内容が多い。 ●非機能訓練:機能訓練ができない条件を柔軟に対応していた。 【1−5 平成28年度の「対応実績あり」】 復職・一般就労の準備訓練              機能訓練 100.0%  非機能訓練  81.8% 相談支援事業所との連携による支援          機能訓練 100.0%  非機能訓練 100.0% 復職・一般就労に向けた就労支援           機能訓練  90.0%  非機能訓練  9.0% 県外に在住                     機能訓練  80.0%  非機能訓練  45.5% 盲学校進学準備                   機能訓練  80.0%  非機能訓練  63.6% フルタイムで就労                  機能訓練  50.0%  非機能訓練 100.0% 数回で終了する訓練                 機能訓練  50.0%  非機能訓練  90.9% 片道50km以上または1時間半以上かかる方への訓練 機能訓練  50.0%  非機能訓練  72.7% 県外での訓練                    機能訓練 40.0%  非機能訓練  36.3% 医療機関に出向いての相談対応・訪問訓練       機能訓練 40.0%  非機能訓練  72.7% ケアマネ(介護保険)との連携による支援       機能訓練  40.0%  非機能訓練  81.8% 頻度の低い訓練                   機能訓練  30.0%  非機能訓練  81.8% 高校・大学・盲学校在学中              機能訓練  30.0%  非機能訓練  45.5% 2週間以内に訓練開始                 機能訓練  20.0%  非機能訓練  81.8% 身体障害者手帳未所持                機能訓練  10.0%  非機能訓練  45.5% 急激に視力低下した方の入院から在宅復帰までの訓練  機能訓練  10.0%  非機能訓練  8.1% 15歳未満                      機能訓練  0.0%  非機能訓練  45.5% 2年半を超える訓練                 機能訓練  0.0%  非機能訓練  54.5% ●機能訓練:就労や進学など、多くの訓練回数や集中的な訓練が必要とする条件に対応していた。 ●非機能訓練:多くの条件に対応し、対応実績の平均実施者数でも機能訓練を上回る。非機能訓練で対応できている条件は、機能訓練の制度上の課題と視覚障害者特有のニーズを表している。 2.同じ地域(都道府県内)での機能訓練と非機能訓練の比較 【1−6 同じ地域における条件による利用可否】 15歳未満  地域A 機能× 非機能×  地域B 機能× 非機能△  地域C 機能〇 非機能〇 身障手帳未所持  地域A 機能△ 非機能〇  地域B 機能× 非機能△  地域C 機能〇 非機能〇 医療機関に出向いての相談・訓練  地域A 機能〇 非機能〇  地域B 機能× 非機能〇  地域C 機能〇 非機能〇 片道50km以上または1時間半以上かかる方  地域A 機能〇 非機能〇  地域B 機能× 非機能〇  地域C 機能〇 非機能〇 県外に在住  地域A 機能〇 非機能〇  地域B 機能〇 非機能△  地域C 機能△ 非機能△ 数回で終了  地域A 機能〇 非機能〇  地域 機能B△ 非機能〇  地域C 機能〇 非機能〇 フルタイムで就労中  地域A 機能△ 非機能〇  地域B 機能△ 非機能△  地域C 機能〇 非機能〇 高校・大学・盲学校在学中  地域A 機能△ 非機能〇  地域B 機能〇 非機能〇  地域C 機能〇 非機能〇 2年半を超える訓練  地域A 機能△ 非機能△  地域B 機能× 非機能△  地域C 機能〇 非機能〇 急激に視力低下した方の入院から在宅復帰までの支援  地域A 機能〇 非機能〇  地域B 機能× 非機能△  地域C 機能〇 非機能〇 ●地域A:機能訓練と非機能訓練を実施している施設の距離が近いこともあり、重なる部分もあるが、それぞれの特徴を生かして、比較的条件による住み分けが進んでいる様子が伺える。 ●地域Bと地域C:機能訓練で対応ができない(しにくい)条件を、非機能訓練がカバーするという形で住み分けを行っていた。 3.ロービジョンケア(ネットワーク)の状況について 【1−7 ロービジョンケアの実施状況】 ロービジョンケア実施医療機関              あり 20件 87.0%  なし  3件 13.0% 医療従事者向けリーフレット               あり 11件 47.8%  なし 12件 52.2% 支援者向けリーフレット                 あり 12件 52.2%  なし 11件 47.8% 患者・視覚障害者向けリーフレット            あり 16件 69.6%  なし  7件 30.4% 患者紹介・返書のための様式・ツール           あり  5件 21.7%  なし 18件 78.3% 医療機関・従事者向けの研修・講習会の実施        あり 18件 78.3%  なし  5件 21.7% 相談支援専門員やケアマネを中心とした研修・講習会の実施 あり  9件 39.1%  なし 14件 60.9% その他                         あり  3件 13.0%  なし 20件 87.0% ●ロービジョンケア実施医療機関は各地域で増え始めているが、医療機関との連携のためのツールが不足している現状が伺える。 ●医療機関に比べると、相談支援専門員やケアマネへの対応が遅れている結果も伺える。 3 調査2 視覚障害当事者向け調査 調査結果と分析        2−1 訓練施設につながるまでの経緯に関する調査 1.視覚障害者から「医療機関」への相談 【2−1−1 医療機関からの情報提供の内容】 身体障害者手帳の申請方法      49.1% なし                30.0% 補装具や日常生活用具の品目     21.8% 受けられる福祉サービス       16.4% 訓練施設や訓練の内容        15.5% 補装具や日常生活用具の申請方法   14.5% 障害年金              14.5% 生活上の困りごとの相談窓口     10.0% その他                5.5% 無回答                2.7% ●情報提供を受けていない者が3割に及んでいた。 ●「訓練施設や訓練の内容」などの具体的な相談先への紹介は2割を切っていた。 【2−1−2 医療機関から紹介された機関】 役所(福祉課)              41.8% なし                   37.3% 訓練施設                 17.3% 盲学校                  11.8% 当事者団体                10.9% 用具等の販売業者              9.1% 点字図書館・視聴覚障害者情報提供施設    8.2% 他の医療機関                5.5% 相談支援事業所(障害福祉)         4.5% 介護保険関係機関              3.6% その他                   3.6% 無回答                   2.7% ●4割近くの視覚障害当事者が、医療機関からはどこへも紹介されていなかった。 ●医療機関は、何をするにも「まずは役所を紹介し、そこから適切なところに紹介してもらえる」と考えている。または、役所以外を知らない医療関係者が多いことが推測される。 2.視覚障害者から「役所」への相談 【2−1−3 役所からの情報提供の内容(身体障害者手帳の申請時)】 身体障害者手帳の申請方法      55.5% 受けられる福祉サービス       47.3% 補装具や日常生活用具の申請方法   33.6% 補装具や日常生活用具の品目     32.7% 障害年金              23.6% 生活上の困りごとの相談窓口     20.0% なし                20.0% 訓練施設や訓練の内容        13.6% その他               11.8% 無回答                0.0% ●視覚障害当事者が役所からの説明をしっかりと受けていない印象が強い。 ●役所での対応が制度・手続きの話にとどまっており、それぞれの困りごとに合わせた生活相談までは対応していない実態が伺える。 【2−1−4 役所から紹介された機関】 なし              53.6% 役所(福祉課)         15.5% 訓練施設            11.8% 相談支援事業所(障害福祉)   11.8% 用具等の販売業者        10.9% 情報提供施設           9.1% その他              7.3% 当事者団体            6.4% 盲学校              4.5% 医療機関             2.7% 介護保険関係機関         2.7% ●「なし」が5割以上で、視覚障害者が求める訓練等の機関についての情報提供は、役所からはほとんど行われていない。 ●紹介された個別データを分析すると、7〜8割以上の当事者は、実際に紹介先に相談をしており、役所において「適切な情報提供」があれば、訓練施設につながる可能性が高い。 3.視覚障害者が訓練につながった背景 【2−1−5 紹介元の割合】 個人       17% 医療機関     15% 相談支援機関   15% 行政機関     14% 当事者団体     9% 福祉施設      8% その他      22% ●「医療機関」「行政機関」「相談支援機関(障害)」「個人」が2割前後で比較的多い結果となっていた。 ●どこの機関からも情報を受け取れなかった当事者は、結果的に「個人」に聞いて初めて訓練を知った可能性が高い。 ●訓練を受けようと思ったのは「自己判断」になり、最終的には自分で考え、決断して訓練を受けた視覚障害当事者が多かった。 【2−1−6 訓練施設に行こうと思った理由】 自分が困りごとを解決したいと思った     47.3% 友人や知人に勧められた            9.1% 家族に勧められた               7.3% 医者に勧められた               5.5% ケアマネや相談支援員に勧められた       4.5% 医者以外の病院関係者に勧められた       3.6% 白杖などの用具を購入した時に勧められた    2.7% 訓練施設の職員と会う機会があった       2.7% 【2−1−7 訓練の情報を「どの段階」で教えてもらえるとよいか】 眼科で見え方の改善が見込めないと言われたとき   65.5% 行政機関で身障手帳の申請をしたとき        42.7% 行政機関に相談や手続きに行ったとき        33.6% 行政機関で身障手帳を渡されたとき         32.7% 眼科で身障手帳の取得を勧められたとき       30.0% 仕事の継続が困難となり産業医と面接するとき    26.4% その他                      11.8% 無回答                       2.7% ●多くの視覚障害当事者は、医療機関・行政機関において、適切なタイミングで情報提供をしてほしいと考えていた。 【2−1−8 手帳取得から相談につながるまでの期間】 全体  1年未満 21.8% 1年以上2年未満  8.2% 2年以上3年未満  3.6% 3年以上10年未満 24.5% 10年以上 22.7% 相談後、手帳取得(更新) 14.5% 無効回答 4.7% 機能  1年未満 28.0% 1年以上2年未満 10.0% 2年以上3年未満  2.0% 3年以上10年未満 26.0% 10年以上 18.0% 相談後、手帳取得(更新) 16.0% 無効回答 0.0% 非機能 1年未満 16.7% 1年以上2年未満  6.7% 2年以上3年未満  5.0% 3年以上10年未満 23.3% 10年以上 26.7% 相談後、手帳取得(更新) 13.3% 無効回答  8.3% ●全体では、3年以上経過して相談につながった視覚障害当事者が約45%もおり、手帳取得(最終更新)後に相談につながるまでに相当の時間がかかっていることが分かった。 ●機能訓練:1年未満につながった視覚障害当事者が多い。 ●非機能訓練:10年以上経過してつながった視覚障害当事者が比較的多くなっていた。 【2−1−9 相談から訓練開始までの期間】 全体  1ヶ月未満 20.0% 1ヶ月以上3ヶ月未満 29.1% 3ヶ月以上6ヶ月未満 16.4% 6ヶ月以上12ヶ月未満 10.9% 12ヶ月以上 18.2% 無効回答 5.4% 機能  1ヶ月未満 8.0% 1ヶ月以上3ヶ月未満 30.0% 3ヶ月以上6ヶ月未満 24.0% 6ヶ月以上12ヶ月未満 20.0% 12ヶ月以上 16.0% 無効回答2.0% 非機能 1ヶ月未満 30.0% 1ヶ月以上3ヶ月未満 28.0% 3ヶ月以上6ヶ月未満 10.0% 6ヶ月以上12ヶ月未満 3.0% 12ヶ月以上 20.0% 無効回答 9.0% ●全体では、1ヶ月未満で訓練を開始したのは2割であったが、1年以上経過して訓練を開始した視覚障害当事者が2割程度いた。訓練開始までに時間がかかりすぎている感は否めない。 ●非機能訓練:機能訓練より早く訓練を開始できている割合が高い。 2−2 訓練前後の生活の変化に関する調査 1.訓練内容の実態 【2−2−1 実施した訓練】 歩行訓練           全体 84.3%  機能 93.5%  非機能 76.8% パソコン訓練         全体 59.8%  機能 84.8%  非機能 39.3% 点字訓練           全体 43.1%  機能 71.7%  非機能 19.6% ADL訓練          全体 49.0%  機能 78.3%  非機能 25.0% ロービジョン訓練       全体 26.5%  機能 39.1%  非機能 16.1% PC以外の機器の操作訓練   全体 50.0%  機能 71.7%  非機能 32.1% その他            全体 24.5%  機能 34.8%  非機能 16.1% 無回答            全体  2.9%  機能  0.0%  非機能  5.4% ●機能訓練:実施割合は歩行訓練が9割以上、パソコン訓練が8割以上になり、全般的に機能訓練の方が訓練の実施割合が高い。 ●非機能訓練:歩行訓練の実施割合は7割以上だが、それ以外の訓練は4割以下となっていた。 【2−2−2 各訓練の平均回数】 歩行訓練           全体 25.9回  機能 33.4回  非機能 18.3回 パソコン訓練         全体 58.3回  機能 82.1回  非機能 16.1回 点字訓練           全体 52.7回  機能 66.2回  非機能 12.3回 ADL訓練          全体 19.4回  機能 24.5回  非機能  6.4回 ロービジョン訓練       全体  9.7回  機能 12.2回  非機能  3.9回 PC以外の機器の操作訓練   全体 14.5回  機能 20.1回  非機能  4.6回 その他            全体 63.2回  機能 93.7回  非機能  2.1回 <注意>「その他」について 1つの回答施設が感覚訓練などを「その他」の訓練として計上していたため、その影響で回数が多くなっている。その施設を除いた「その他」の訓練の平均実施回数は27.5回になる。 ●全体では、パソコンと点字の平均訓練回数は50回以上、歩行訓練は26回であった。 ●非機能訓練:全般的に機能訓練よりも平均訓練回数が少ない。 【2−2−3 訓練期間の分布】 1ヶ月未満     機能  0件  非機能  0件 1〜3か月     機能  2件  非機能 13件 4〜6か月     機能  7件  非機能  8件 7〜9か月     機能 10件  非機能 10件 10〜12か月   機能  6件  非機能  6件 13〜18か月   機能 13件  非機能  3件 19〜24か月   機能  5件  非機能  3件 25か月以上    機能  3件  非機能  5件 無回答       機能  0件  非機能  8件 ●機能訓練:3か月未満で終了しているのは5%未満、半年以内で2割強、1年以内で5割強が終了していた。機能訓練の方が全般的に訓練期間は長めになっていた。 ●非機能訓練:無回答を除けば、3ヶ月未満で終了しているのは3割弱、半年以内で4割強、1年以内で8割弱が終了していた。一方で10年近く訓練している場合も確認できた。 2.訓練前後の変化 【2−2−4 用具や機器、福祉サービスの利用状況の変化】 携帯電話・スマートフォンの使用   訓練前 75.5%  訓練後 88.2% インターネットの利用        訓練前 39.2%  訓練後 68.6% パソコンの使用           訓練前 38.2%  訓練後 68.6% 遮光レンズの使用          訓練前 37.3%  訓練後 61.8% 音声時計の使用           訓練前 33.3%  訓練後 52.9% 「適切な」白杖の所持        訓練前 32.4%  訓練後 91.2% 録音機器の使用           訓練前 30.4%  訓練後 71.6% 同行援護の利用           訓練前 27.5%  訓練後 57.8% 拡大読書器の使用          訓練前 22.5%  訓練後 32.4% 日中サービスの利用         訓練前 20.6%  訓練後 43.1% 点字を書く道具           訓練前 19.6%  訓練後 42.2% ピンディスプレイの使用       訓練前  4.9%  訓練後  9.8% ●訓練開始前に5割を超えていたのは「携帯電話・スマートフォンの利用」だけになり、必要な用具などが必要とする人に届いていない可能性が伺える。 ●白杖の所持・同行援護の利用などの歩行手段、録音機器・パソコン・点字を書く道具などの文字処理手段もアップ率が高い。これらは訓練のニーズが高いと言える。 【2−2−5 訓練前に「できない」「不満足」と回答した割合が高い項目】 (訓練前「どちらかといえばできない」「できない」、訓練前「不満」「やや不満」の順に記載) A 屋外のよく知っている場所の移動    「できない」 45.1%  「不満」 50.0% 初めての場所や不慣れな場所の移動   「できない」 75.5%  「不満」 74.5% 交差点横断や信号判断         「できない」 57.8%  「不満」 61.8% 公共交通機関の利用          「できない」 52.0%  「不満」 54.9% 混雑した場所の移動          「できない」 67.6%  「不満」 67.6% 夜間の移動              「できない」 71.6%  「不満」 69.6% B 書類を読む              「できない」 66.7%  「不満」 71.6% 新聞・雑誌・書籍を読む        「できない」 68.6%  「不満」 65.7% メモをとる(録音等含む)       「できない」 49.0%  「不満」 56.9% 文章を書く              「できない」 51.0%  「不満」 52.0% メールを書く             「できない」 45.1%  「不満」 49.0% ホームページを見る・検索する     「できない」 56.9%  「不満」 57.8% C 料理をする              「できない」 41.2%  「不満」 47.1% 趣味・余暇活動を楽しむ        「できない」 41.2%  「不満」 44.1% 仕事をする              「できない」 49.0%  「不満」 46.1% 他の視覚障害者との交流        「できない」 52.9%  「不満」 44.1% ●上記の「移動関連(A)」、「読み書きおよびパソコン関連(B)」、「社会参加関連(C)」は、視覚障害による困難度が高く、現状への不満も強い項目であり、以降で深く分析をする。 【2−2−6 訓練前後での「できる」「どちらかといえばできる」の変化】 A 屋外のよく知っている場所の移動   訓練前 52.9%  訓練後 91.2% 初めてや不慣れな場所の移動     訓練前 23.5%  訓練後 53.9% 交差点横断や信号判断        訓練前 41.2%  訓練後 82.4% 公共交通機関の利用         訓練前 46.1%  訓練後 82.4% 混雑した場所の移動         訓練前 30.4%  訓練後 63.7% 夜間の移動             訓練前 25.5%  訓練後 52.0% B 書類を読む             訓練前 27.5%  訓練後 41.2% 新聞・雑誌・書籍を読む       訓練前 25.5%  訓練後 49.0% メモをとる(録音等含む)      訓練前 45.1%  訓練後 69.6% 文章を書く             訓練前 42.2%  訓練後 69.6% メールを書く            訓練前 49.0%  訓練後 73.5% ホームページを見る・検索する    訓練前 36.3%  訓練後 57.8% C 料理をする             訓練前 52.0%  訓練後 62.7% 趣味・余暇活動を楽しむ       訓練前 52.9%  訓練後 78.4% 仕事をする             訓練前 40.2%  訓練後 46.1% 他の視覚障害者との交流       訓練前 37.3%  訓練後 81.4% ●不満などがある項目は、全体的に訓練後は「できる」に変化しており、A群とC群は高く、B群は低かった。特にA群の移動関連はアップ率も高い。 【2−2−7 訓練前後の「満足」「どちらかといえば満足」の変化】 A 屋外のよく知っている場所の移動    訓練前 48.0%  訓練後 85.3% 初めての場所や不慣れな場所の移動   訓練前 24.5%  訓練後 61.8% 交差点横断や信号判断         訓練前 36.3%  訓練後 73.5% 公共交通機関の利用          訓練前 43.1%  訓練後 77.5% 混雑した場所の移動          訓練前 30.4%  訓練後 66.7% 夜間の移動              訓練前 27.5%  訓練後 58.8% B 書類を読む              訓練前 32.4%  訓練後 41.2% 新聞・雑誌・書籍を読む        訓練前 28.4%  訓練後 54.9% メモをとる(録音等含む)       訓練前 37.3%  訓練後 66.7% 文章を書く              訓練前 41.2%  訓練後 66.7% メールを書く             訓練前 45.1%  訓練後 74.5% ホームページを見る・検索する     訓練前 35.3%  訓練後 63.7% C 料理をする              訓練前 46.1%  訓練後 60.8% 趣味・余暇活動を楽しむ        訓練前 50.0%  訓練後 74.5% 仕事をする              訓練前 43.1%  訓練後 54.9% 他の視覚障害者との交流        訓練前 45.1%  訓練後 78.4% ●2−2−6と同様に、満足度は上がり、A群の移動関連のアップ率は目立っていた。 ●B群の「書類を読む」だけは満足度が5割を切っていたが、パソコン関係の内容はアップ率が高い。 【2−2−8 訓練前後の生活の変化(機能訓練と非機能訓練の比較)】 家事や身の回りのことなど自宅のなかで自分でできることが増えた  機能訓練 56.5%  非機能訓練 16.1% 読書ができるようになった                    機能訓練 65.2%  非機能訓練 25.0% 視覚障害に対する受け止め方が変わった              機能訓練 80.4%  非機能訓練 55.4% 今後の目標がみつかった                     機能訓練 69.6%  非機能訓練 44.6% できないことに対する考え方や工夫の仕方が身についた       機能訓練 91.3%  非機能訓練 67.9% 自分でできること・できないことの判断ができるようになった    機能訓練 71.7%  非機能訓練 50.0% 困ったときに相談できる仲間ができた               機能訓練 69.6%  非機能訓練 50.0% 自分で情報収集ができるようになった               機能訓練 60.9%  非機能訓練 42.9% 情報発信ができるようになった(メール、SNS、ブログ、投稿など) 機能訓練 41.3%  非機能訓練 25.0% 移動の安全性が向上した                     機能訓練 87.0%  非機能訓練 73.2% 気持ちが前向きになった                     機能訓練 80.4%  非機能訓練 67.9% 趣味や余暇活動が充実した                    機能訓練 47.8%  非機能訓練 35.7% 家の中のものを自分で管理・把握できるようになった        機能訓練 30.4%  非機能訓練 19.6% 外出の頻度があがった                      機能訓練 67.4%  非機能訓練 60.7% 一人で歩ける場所ができた・増えた                機能訓練 67.4%  非機能訓練 64.3% 行動範囲が広がった                       機能訓練 65.2%  非機能訓練 62.5% 定期的な外出先ができた                     機能訓練 65.2%  非機能訓練 62.5% なし                              機能訓練  0.0%  非機能訓練  3.6% その他                             機能訓練 17.4%  非機能訓練 10.7% ●技術的な変化だけでなく、精神面の変化も大きいことが分かった。 ●機能訓練と非機能訓練との比較では、全項目において機能訓練の方が回答者の割合が高くなっていた。集団での訓練、回数の多い訓練による効果と考えられる。 4 調査3 訓練紹介機関向け調査 調査結果と分析     1.調査対象の整理 【3−1 視覚障害者を取りまく環境 イメージ図】 グループA 医療機関  ・対象:@医療機関(眼科)  ・受障したての視覚障害者とのつながり:一番最初に相談をすることが多く、近い存在  ・他グループとのつながり:B 相談支援:あまり接点がなく、つながりが細い               C 視覚障害者系:あまり接点がなく、つながりが細い               D 役所:手帳の交付等でつながりが太い  ・訓練施設とのつながり:接点が少なく、距離感があり、つながりは細い グループB 相談支援機関  ・対象:A相談支援事業所  ・受障したての視覚障害者とのつながり:地元の役所等に相談があった場合、相談先として紹介されるケースが多く、比較的近い  ・他グループとのつながり:A 医療機関:あまり接点がなく、つながりが細い               C 視覚障害者系:視覚障害に特化した施設は地域にないため、つながりが細い               D 役所:障害福祉サービスの相談等でつながりが太い  ・訓練施設とのつながり:地域にないため、距離感があり、つながりは細い グループC 視覚障害者系機関  ・対象:B視覚障害者の当事者団体      C視覚障害者向け情報提供施設      D視覚特別支援学校  ・受障したての視覚障害者とのつながり:地域に数が少ない、存在が知られていないことなどから、距離がある  ・他グループとのつながり:A 医療機関:あまり接点がなく、つながりが細い               B 相談支援:あまり接点がなく、つながりが細い               D 役所:近くの役所はつながりが太いが、遠い役所はつながりが細い  ・訓練施設とのつながり:視覚障害者系として情報を共有しており、距離感は近く、つながりも太い ●受障した直後の視覚障害者、各グループ、訓練施設との「距離感」と「つながりの太さ」を整理した上で以下の対象設定を行った。     グループA 医療機関        @医療機関(眼科)     グループB 相談支援機関        A相談支援事業所     グループC 視覚障害者系機関        B視覚障害者の当事者団体、C視覚障害者向け情報提供施設        D視覚特別支援学校 ●調査3では、このイメージを踏まえつつ、「医療機関、相談支援機関、視覚障害者系機関が連携できれば、地域に住む視覚障害者を円滑に訓練につなげることができるのではないか」という仮説を立て、調査を行った。 ●回答の傾向(注意点) A 医療機関   視覚障害者支援の研修を受講した医療関係者を対象に調査を行ったことから、全国の医療機関(眼科)と比べ、視覚障害者支援に対して理解がある眼科医からの回答を多く含んでいる。 B 相談支援機関   相談支援機関対象者の配布方法により回答数に地域差が出ており、やや中山間地域に偏った回答になっている。 2.視覚障害者からの相談 【3−2 視覚障害者からの相談の有無】 全体          ある  91.9%  ない  8.1% @医療機関(眼科)   ある  96.0%  ない  4.0% A相談支援事業所    ある  78.4%  ない 21.6% B当事者団体      ある  98.0%  ない  2.0% C情報提供施設     ある  96.7%  ない  3.3% D視覚特別支援学校   ある 100.0%  ない  0.0% ●全体平均は約92%、対象別でも高い数字を示しており、これらの機関では、日常的に視覚障害者からの相談があることが分かった。 ●A相談支援事業所については「相談あり」が78%と他の対象よりも少なくなっているが、本来はもっと少ない可能性も考えられる。 【3−3 視覚障害者からの相談内容(全体平均)】 見えにくさの改善   55.2% 治療方法       36.7% 日常生活の改善    73.2% 仕事全般       38.9% 読み書き       64.9% 歩行手段       49.1% 福祉制度の利用    82.0% 心理的サポート    39.7% 教育         39.9% その他        16.9% ●全体を平均すると「福祉制度の利用」(82%)と「日常生活の改善」(73%)は、A相談支援事業所以外で軒並み高い数字を示した。視覚障害者の相談が多岐に渡ること、そして、日常生活で困ることについては改善を求めて相談を行っていることが分かった。 ●設問項目の「歩行手段」は、歩行訓練と同行援護も含んだ設問ではあるが、B当事者団体では87%を示したのに対し、@医療機関では47%、A相談支援事業所では22%となり、訓練に関する相談は対象によって大きな差があることが分かった。 3.紹介の実態 【3−4 各対象 紹介先機関の紹介率】 @医療機関(眼科)   可能 54.7%  不可能 45.3% A相談支援事業所    可能 67.0%  不可能 33.0% B当事者団体      可能 54.5%  不可能 45.5% C情報提供施設     可能 60.6%  不可能 39.4% D視覚特別支援学校   可能 51.7%  不可能 48.3% 訓練実施機関      可能 61.7%  不可能 38.3% その他         可能 14.2%  不可能 85.8% ●相談を受け、自らの機関で支援ができない場合、他機関を紹介することが「できる」と回答した機関は平均96%であったが、紹介先を個別に確認すると、全体平均ではそれぞれ50〜60%台の紹介率になっていた。 ●グループ別に分析すると、それぞれの紹介先の傾向が異なっており、以降で深く分析をする。 【3−5 @医療機関 紹介先機関の紹介率(グループA 医療機関)】 @医療機関(眼科)   可能 65.3%  不可能 34.7% A相談支援事業所    可能 72.9%  不可能 27.1% B当事者団体      可能 49.2%  不可能 50.8% C情報提供施設     可能 66.1%  不可能 33.9% D視覚特別支援学校   可能 67.8%  不可能 32.2% 訓練実施機関      可能 63.6%  不可能 36.4% その他         可能  5.9%  不可能 94.1% ●他のグループに比べて「B当事者団体」への紹介が低い結果となっていた。治療中の患者をC視覚障害者系機関に紹介することに抵抗があり、なかなか紹介しづらいとの意見もあった。 ●各機関との距離感とつながりの細さを裏付ける結果になっていた。 【3−6 A相談支援事業所 紹介先機関の紹介率 (グループB 相談支援機関)】 @医療機関(眼科)   可能 39.2%  不可能 60.8% A相談支援事業所    可能 51.9%  不可能 48.1% B当事者団体      可能 35.4%  不可能 64.6% C情報提供施設     可能 38.0%  不可能 62.0% D視覚特別支援学校   可能 24.1%  不可能 75.9% 訓練実施機関      可能 36.7%  不可能 63.3% その他         可能 25.3%  不可能 74.7% ●平均よりマイナス10〜20%の値を示し、C視覚障害者系機関への紹介は特に低かった。自由回答では「視覚障害者向け施設が地域にないため、紹介ができない」との意見があった。 ●各機関との距離感とつながりの細さを裏付ける結果になっていた。 【3−7 B当事者団体 紹介先機関の紹介率 (グループC 当事者系団体)】 @医療機関(眼科)   可能 55.1%  不可能 44.9% A相談支援事業所    可能 71.4%  不可能 28.6% B当事者団体      可能 67.3%  不可能 32.7% C情報提供施設     可能 83.7%  不可能 16.3% D視覚特別支援学校   可能 73.5%  不可能 26.5% 訓練実施機関      可能 71.4%  不可能 28.6% その他         可能 16.3%  不可能 83.7% ●平均よりプラス10〜20%の値を示し、他の視覚障害者系機関である「C情報提供施設」「D特別支援学校」、さらに「訓練実施機関」へのつながりは高かった。 ●視覚障害者から受けた相談は、関係する機関へ的確につないでいることが分かった。 【3−8 各対象 訓練実施機関への紹介率】 @医療機関(眼科)   可能 63.6%  不可能 36.4% A相談支援事業所    可能 36.7%  不可能 63.3% B当事者団体      可能 71.4%  不可能 28.6% C情報提供施設     可能 70.2%  不可能 29.8% D視覚特別支援学校   可能 76.4%  不可能 23.6% ●C視覚障害者系機関のBCDは軒並み70%以上の紹介率であった。 ●「@医療機関」は63%、「A相談支援事業所」においては36%となっており、A医療機関、B相談支援機関が訓練施設とつながりが細いことが示された。 【3−9 各対象 紹介先の安心度】 @医療     安心 80.5%  普通 18.6%  不安 0.8%  無回答 0.0% A相談     安心 46.8%  普通 43.0%  不安 8.9%  無回答 1.3% B当事者    安心 61.2%  普通 30.6%  不安 6.1%  無回答 2.0% D特別支援   安心 69.1%  普通 18.2%  不安 5.5%  無回答 7.3% C情報提供   安心 61.4%  普通 35.1%  不安 3.5%  無回答 0.0% ●安心として取れる「安心」「やや安心」の平均が65%となり、安心して紹介をしているとは言いきれない結果であった。 ●A相談支援事業所は「安心」「やや安心」が46%、「普通」は43%、「やや不安」「不安」は9%になり、他よりも「不安」に近づいた回答になっていた。 4.地域での連携 【3−10 各対象 地域での連携体制の有無】 @医療     ある 66.1  ない 22.6  分からない 11.3% A相談     ある 50.0  ない 22.4  分からない 27.6% B当事者    ある 60.0  ない 30.0  分からない 10.0% C情報提供   ある 62.3  ない 32.8  分からない  4.9% D特別支援   ある 69.1  ない 29.1  分からない  1.8% ●50〜70%は連携体制があると回答をしていた。 ●「分からない」との回答は、A相談支援事業所の27%、他の対象でも5〜10%になり、連携体制の意義が上手く伝わっていないことも感じられる結果になっていた。 【3−11 連携を必要とする理由(グループ別)】  A医療機関(n=123)  B相談支援(n=110)  C視覚障害者(n=163)  自らの機関では支援に限界がある      A医療機関33件 26.8% B相談支援12件 10.9% C視覚障害者28件 17.1% 支援の専門性が確保できる         A医療機関21件 17.1% B相談支援10件  9.1% C視覚障害者28件 17.1% 支援の効率性が良くなる          A医療機関14件 11.4% B相談支援 0件  0.0% C視覚障害者22件 13.4% 視覚障害者の特性を考慮すると必要     A医療機関10件  8.1% B相談支援12件 10.9% C視覚障害者25件 15.3% 本人のために必要             A医療機関 7件  5.7% B相談支援10件  9.1% C視覚障害者 9件  5.5% 地域性の問題を解決できる         A医療機関 3件  2.4% B相談支援18件 16.4% C視覚障害者 6件  3.6% ※連携自体への意見(期待、要望など)   A医療機関22件 17.9% B相談支援17件 15.5% C視覚障害者26件 15.9% ●連携を必要とする背景や考え A 医療機関   視覚障害者の特異性があるため自らの機関では対応ができないが、視覚障害者(患者)のことを思うと、しっかりとした支援は行いたいという意識がある。さらに、連携によって生まれる専門性や効率性に期待をしている部分もある。 B 相談支援機関   地域性の問題(社会資源の少なさ)が理由になっており、広域での連携体制を作ることで解決できると考えている。また、障害の区別にかかわらず、その障害者のために地域で何とかして支援を行いたいという、相談支援本来の職務精神も読み取れる。 C 視覚障害者系機関   B当事者団体、C情報提供施設、D特別支援学校の中で多少の差はあるものの、支援の専門性と効率性の確保に加え、視覚障害者の特異性を理由に挙げている傾向が読み取れる。これは、視覚障害者に近い立場だからこそ、その特異性を理解していることの表れであり、その特異性をカバーするために、連携の必要性を感じている。 ●訓練紹介機関は、自らの機関で対応できない場合、連携をすることで、支援の専門性や効率性を確保し、視覚障害者の特性と地域性の問題をカバーできるものと期待している。 5.視覚障害者支援の困難さ 【3−12 各対象 視覚障害者の支援で困る内容】 @医療機関(眼科)  情報提供ができないこと 37.%1  慣れた職員がいないこと 25.0%  特になし 31.5% A相談支援事業所  情報提供ができないこと 25.9%  慣れた職員がいないこと 37.9%  特になし 31.0% B当事者団体  情報提供ができないこと 10.0%  慣れた職員がいないこと 14.0%  特になし 48.0% C情報提供施設  情報提供ができないこと  1.6%  慣れた職員がいないこと  4.9%  特になし 57.4% D視覚特別支援学校  情報提供ができないこと  3.6%  慣れた職員がいないこと  3.6%  特になし 85.5% ●@医療機関、A相談支援事業所の「特になし」の回答は、それぞれ30%前半になり、これらの機関は、視覚障害者の支援に困難さを持っていることが分かった。 ●この結果は、支援を行う側がハード面とソフト面で視覚障害者の特性に対応ができていないことを示しており、視覚障害者支援自体が特異的な存在であることを裏付ける結果とも言える。 6.訓練施設に求めること ●全体平均ではそれぞれ30〜40%は何らかの具体策を求めており、訓練に期待する部分は大きいと考えられる。 ●A医療機関は自らの仕事へのフィードバックや紹介した患者の立場を優先する傾向が強く、具体的には「訓練内容の紹介」や「研修会の開催」、さらに「自宅への訪問」などが他の対象よりも回答率が高かった。 ●アンケートの自由記述を含めると、回答者の中には「訓練自体がどのようなものか分からない」ことを理由に情報が欲しいと考えている傾向も確認できた。 5 調査4 訓練内容の詳細に関する調査 調査結果       報告書では、各調査対象施設より提供を受けた資料をもとに、調査事務局で文章整理を行い、レポート資料として調査結果を掲載した。また、調査終了後、担当した3名の歩行訓練士に対して、座談会形式でインタビューを行い、その内容も掲載した。  概要版では、インタビューで確認できた、歩行訓練士が日々感じている課題などの意見を掲載する。 1.訓練全般について ●訓練を行うことで利用者のスキルはもちろん、意欲も向上していくため、どの訓練を、どう進めるかといった目標設定は大切である。しかし、その目標設定を行うための相談(アセスメント)の時間は限られていて、回数制限がある地域では、十分に聞き取る時間や訓練をする時間がないこともある。 ●歩行訓練士がしっかりと、その人に合った効果を出せる訓練形態を考えて訓練を行うことが大切で、回数制限などある地域には、他県の様子や訓練の必要性を行政などに働きかけていくことも必要かもしれない。 ●地域での視覚障害の専門職としての役割を果たさなければならないが、訓練だけでない業務も兼務しているとなかなか動けない。 ●機能訓練事業所での制約により訓練を受けにくい地区は、非機能訓練でカバーできるようにするなど、両方の訓練が各県に最低1つずつくらいあるのが理想的だと思う。 ●訪問訓練は、自分が最も必要と思える場所(=自宅)での訓練になり、本人の意欲も高まりやすい。一方、自宅周辺の移動に抵抗があると、訪問による指導は実施しづらい。また、他人が訪問してくることへの周囲の目を非常に気にする場合もある。 2.機能訓練について ●週に複数回の利用ができること、複数の訓練に取り組むことができることで、集中して訓練の習得ができる。しかし、現在の人員配置を考えたとき、必ずしも集中的に訓練を受けることができるとは言いづらい。 ●当事者同士が話す機会があり、動機づけが当事者間で行われることは有効になっている。多くの利用者が同じ場所に会することに非常に意味があると考えている。 ●1日数十分程度の訓練を受けるため、訓練施設に通所することについては、本人の抵抗が無いとは言い切れない。事前に了解を取っていても、実際に苦情が出ることもある。 3.非機能訓練について ●期間や回数の制限があるところもあり、短い期間、少ない回数で実施しなければならない。そのため、視覚障害当事者のニーズに応えるのが難しい場合もある。 ●訪問をするのに片道2時間かかる地域もあり、効率的ではないことも多い。 ●他の視覚障害者と出会う機会が無いため、交流の場があったほうが望ましいが、なかなか実施できない。実施している非機能訓練事業所もあるので、交流の機会を作る必要性は常に感じている。 ●盲ろう者や高次脳機能障害など視覚以外の障害もある場合、その障害特性から、定着を図るために毎日繰り返しをする訓練が良いが、週1回程度しか訪問することができず、上手く対応できていない。 ●訓練の利用料は、ほとんどの訓練が無料のことが多いが、地域差がある。 ●訓練開始までの手続きが割と容易になっている。 ●相談支援事業所の介入がないことで、地域支援の一環でのサービス担当者会議などに入ることが少ない。その一方で、接点がないため、相談支援事業所に視覚リハを知ってもらうことは課題になっている。 ●訓練を進める上では、目標設定や訓練における様々な工夫をしたいが、歩行訓練士が1人で職場の相談体制や訓練体制を維持するので、思うような訓練ができず、利用者に対して申し訳ないと思う部分がある。 ●サービスを提供する職員(歩行訓練士)は、ほとんどが1人職場になっている。歩行訓練士には、歩行訓練以外のスキルを持つことに加え、訓練だけではない様々な相談にも対応しないといけない。それを考えると、職員のスキルの向上は必須。初任者は機能訓練で経験を積んで、その後に非機能訓練に移るという交流も必要ではないか。 6 考察                         1.視覚障害者の日常生活や社会参加での困難さと訓練による効果  今回の調査2−2では、訓練を終了した(見込み含む)視覚障害当事者に対し、@訓練前後の用具・機器などの使用状況の変化、A訓練前後の技術面・満足度の変化、B訓練前後の自覚的な生活の変化の3つについて調査をした。  Aでは、「(単独で)できるか、できないか」とその状況に対する「満足度(納得度)」という2つの指標で日常生活や社会生活のおける困難度を評価した。  その結果、以下の移動に関する6項目、読み書きおよびパソコンなど機器の操作に関する5項目、参加などに関する4項目において、視覚障害による困難度が高く、現状への不満も強い傾向にあることが確認された。  A 移動に関する項目   ・屋外のよく知っている場所への移動   ・初めての場所や不慣れな場所への移動   ・交差点横断や信号判断   ・公共交通機関の利用   ・混雑した場所への移動   ・夜間の移動  B 読み書きおよびパソコンなど機器の操作に関する項目   ・書類を読む   ・新聞、雑誌、書籍を読む   ・メモを取る   ・メールを書く   ・ホームページを見る、検索する  C 参加などに関する項目   ・料理をする   ・趣味・余暇活動を楽しむ   ・仕事をする   ・他の視覚障害者との交流  実施した訓練では、歩行が8割以上、パソコンが約6割、機器の訓練が約5割となり、上記の15項目に概ね対応した内容となっていた。  これら15項目について、訓練を受けた後の単独での可否、満足度において、ほとんどの項目で改善が見られる結果となっており、訓練の有効性が示されたと考える。特に歩行訓練については、歩行訓練を受けた回答者の割合が高かったことも影響しているだろうが、訓練全体の振り返りの中でも、訓練前と比べ「移動の安全性が向上した」「外出の頻度があがった」「一人で歩ける場所ができた・増えた」「行動範囲が広がった」など移動や外出に関する回答をした者の割合が6割以上であった。  また、「余暇・趣味活動を楽しむ」や「他の視覚障害者との交流」が他の項目同様に改善していることや、全体の振り返りの中で、「定期的な外出先ができた」と回答した者も6割を超えていることから、訓練後の生活を豊かにするための支援についても貢献できていると言えるのではないだろうか。  一方、15項目の中で、訓練終了後も「できる」「満足」の割合が5割を切っていたのは「書類を読む」「新聞、雑誌、書籍を読む」「仕事をする」であった。  「書類を読む」「新聞、雑誌、書籍を読む」については、訓練メニューにもある内容であるため、そこが十分改善されていないのは訓練実施側の課題であると言える。医療機関でのロービジョンケアとの連携も含め、改善を図る必要がある。また、「仕事をする」についても、就労支援については、視覚リハが十分対応できていない長年の課題である。まずは新規就労よりハードルの低い復職が確実にできるよう、離職前の早いタイミングで訓練機関につながる流れを作ることが重要であると考える。  さらに、全体の振り返りの中で、「できないことに対する考え方や工夫の仕方が身に付いた」「気持ちが前向きになった」「視覚障害に対する受け止め方が変わった」などの回答率が6割以上あったことは、訓練による効果は、技術的な面だけでなく、精神面の変化にも影響を与えることを示唆している。これは、多くの歩行訓練士が視覚障害者の支援をする上で、特に重要と考えている部分ではないだろうか。  そして、白杖をはじめとした用具や機器、福祉サービスの利用状況についても、訓練を受けた後は大きく改善していた。使用法や利用法の訓練を含めた訓練施設のサービスは、視覚障害者の生活状況に大きく影響を与えている結果となっていた。ただ、白杖や遮光レンズのような補装具、拡大読書器や音声時計のような日常生活用具については、本来は訓練施設につながるより前にもっと情報提供が受けられていてもおかしくないものではないだろうか。  以上のことから、視覚障害者リハビリテーションは、生活技術の向上、精神的課題の改善・克服、用具や機器、サービスの利用、地域生活の充実など、視覚障害者の日常生活・社会生活に関する幅広い領域について貢献できていると言える。 2.訓練の実施状況と障害福祉サービスとして求められる訓練内容 (1)機能訓練事業所と非機能訓練事業所の比較  結果および分析からは、機能訓練事業所と非機能訓練事業所の特徴は以下のように言える。  ●機能訓練事業所   ・職員体制は比較的充実しており、1日の受け入れ人数が多く、利用できる頻度も高い。   ・通所と入所が中心のため、複数同時の訓練が可能。   ・一定回数以上の訓練が訓練効果を高める結果も出ている。   ・通所や入所により、「困ったときに相談できる仲間ができた」という点は大きい。結果として、「視覚障害に対する受け止め方が変わった」や「気持ちが前向きになった」などの精神面での変化は、機能訓練事業所で訓練を受けた視覚障害者の方が回答率も高くなっていた。   ・定員はあるものの、利用人数や回数は(法定期間以外の)制約はない。   ・手続きが煩雑で開始までに時間がかかること、制度上の縛りがあり、対応できない条件が複数あること、通所が中心のため交通機関の乏しい地域では利用者を集めにくいなどの課題がある。   ・急激な視力低下で生活全般に支障をきたしている視覚障害者や、復職や盲学校進学の準備など、期間やメニューの上で集中的な訓練を必要とする視覚障害者に適した訓練と言える。  ●非機能訓練事業所   ・今回の調査では、盲導犬協会、視聴覚障害者情報提供施設、民間企業など、様々な形態の施設への調査を行ったが、概ね傾向は似ていた。   ・職員数は全般的に少なく、訪問中心で対応しているため、1日に対応できる人数は少なく、利用できる頻度は低い。   ・利用条件については、機能訓練事業所よりも制約が少なく、視覚障害者にとって移動面・金銭面の負担がない(少ない)訪問で対応していることなどから、対応している実人数は機能訓練事業所よりも大きく上回っている。   ・利用開始までにかかる期間は、機能訓練事業所よりも全体的に短い。   ・緊急性の高い訓練希望者や高齢視覚障害者、公共交通機関が発達しておらず地域に点在している視覚障害者に対応するには、このスタイルでないと難しい。  また、今回の調査では、機能訓練事業所と非機能訓練事業所が両方ある地域や、機能訓練事業所の中で機能訓練以外の方法で訓練を行っている事業所についても分析を行った。  地域差は多少あるものの、対象者やサービス内容が被る部分はあっても、機能訓練事業所は集中的な訓練を必要とする視覚障害者に対して訓練を行い、非機能訓練事業所は訪問での訓練や柔軟な対応を行うことで、ある程度の住み分けができているように見える。機能訓練事業所に視覚障害者のニーズに応えられない利用上の制約がある以上、機能訓練事業所と非機能訓練事業所が各地域にあること、もしくは機能訓練事業所が非機能型の訓練も実施していることが理想である。  ただし、現状では全国で視覚リハを実施している事業所・機関は約70か所しかなく、さらに機能訓練事業所と非機能訓練事業所が両方ともあるのは11都道府県のみである(*1)。そのため、現状では、サービス内容として重複せざるを得なくなっている。この原因は、そもそもの絶対数が足らず、地域では訓練を必要とする視覚障害者が、必要な内容・量の訓練が受けられない状況にあると考えられる。さらに、全く訓練施設がない都道府県が7か所もある(*2)。特に訓練施設がない都道府県の視覚障害者が視覚リハを受ける権利の保障は急務である。  (*1)視覚障害者の生活訓練実施機関の現状(日本ライトハウス/2017年)  (*2)青森県、岩手県、山形県、新潟県、群馬県、和歌山県、奈良県 (2)視覚障害者のニーズと機能訓練のサービス上の制約  今回設問に挙げた利用条件の中で、機能訓練事業所が対応不可・困難としている条件は以下の7項目があった。   @15歳未満   A身体障害者手帳未所持   B2年半を超える訓練   C2週間以内に訓練開始を希望   D片道50km以上または1時間半以上かかる者への訓練   Eフルタイムで就労中   F高校・大学・盲学校在学中  数の多寡はあるものの、いずれも非機能訓練事業所では対応実績がある利用条件である。機能訓練事業所で対応できておらず、非機能訓練事業所で対応できている条件が、制度上の課題や他の障害とは違う視覚障害者のリハビリテーションのニーズを表しているのではないだろうか。これらの項目は、以下で詳しく考えてみたい。 @15歳未満  本来は視覚特別支援学校が対応すべきであろう。ただ、歩行訓練の専門家がいない視覚特別支援学校、自立活動の時間の制約で自宅周辺や通学など必要な内容の訓練ができない視覚特別支援学校では、訓練施設との連携が必要なのではないだろうか。 A身体障害者手帳未所持(指定難病除く)  急激な視力低下などにより、すでに生活上の困りごとが生じている場合には、申請段階であっても訓練を受けられる体制が必要なのではないだろうか。手帳に該当するかどうかというロービジョン者の場合は、ロービジョンケアのできる医療機関との連携も必要となるだろう。 B2年半を超える訓練  動機付けや習得に時間のかかる高齢者や心身の状態が安定しない者などが対象だろうか。機能訓練で規定された期間内の目標達成ができなかった場合は、地域の別の機関(サービス)で継続できることが望ましい。 C2週間以内に訓練開始を希望  受給者証の準備ができれば可と回答している機能訓練事業所は複数あったが、その実績はゼロであった。すでに受給者証を所持している利用希望者であれば間に合う可能性があるが、新規で取得する者では難しい。緊急性の高い視覚障害者については、後追いの発行を認めるなどの柔軟な対応が求められる。 D片道50km以上または1時間半以上かかる者への訓練  遠距離の訪問訓練については、採算性の問題で実施しづらくなっている。都市部から離れれば離れるほど、訪問訓練のニーズは高くなっていく。今後、新規参入の促進や既存の施設の経営安定により視覚リハが全国どこに住んでいても受けられるようにするためには、施設数を増やすか、訪問訓練に対する単価の上乗せもしくは加算は必要である。 Eフルタイム就労中 F高校・大学・盲学校在学中  市町村判断によりこれらの条件で訓練ができない場合がある。日中参加している場所があるならば、そこでの合理的配慮の中で対応ということが理由であろうが、訓練で自身のできることを増やすことと合理的配慮は全く別のことである。特に進行性の眼疾患を抱えている視覚障害者においては、相当きつい思いをしながら無理をして職業生活や学校生活を続けている者も多いのではないかと考える。在職中・在学中であっても、必要な訓練を受けられる制度設計となることが望ましい。 Gその他(備考)  非機能訓練事業所では、「2週間以内に訓練開始」と併せて「数回で終了する訓練」の実績の多さが際立っていた。これも機能訓練事業所で対応できない内容ではないが、数回の訓練のために煩雑な手続きをしてもらうのは躊躇われる。そのニーズが機能訓練の中で対応すべきものかどうかも含め、さらに詳細な訓練内容の調査が必要である。 3.訓練に効果的につなげる支援体制のあり方 (1)視覚障害者から見た「つなぎ」に関する現状と課題  調査2−1において、現在訓練を受けており、比較的最近になり訓練施設につながった視覚障害者を対象に、主に医療機関や役所からの情報提供や関係機関の紹介状況などの現状や要望に関する調査を行った。その結果から、視覚障害者側から見た「訓練へのつなぎ」に関する現状と課題について考察する。 @医療機関からの「つなぎ」  今回調査対象とした施設では、約9割が「ロービジョンケア実施医療機関」が地域にあると回答し、約8割が「医療機関・従事者向けの研修・講習会の実施」をしていると回答しており、医療機関との連携状況では比較的恵まれた地域と言える。  それにもかかわらず、調査2−1の結果からは、「身体障害者手帳の申請方法」の情報提供を約5割の者のみが受け、それに関連して、役所を紹介されるケースが約4割であったものの、何も情報をもらえなかった者が約3割、関係機関を全く紹介してもらえなかった者が約4割という結果となっていた。また、訓練施設や生活上の困りごとに関する相談窓口には2割弱の者しか紹介をしてもらえていなかった。それ以外の「視覚特別支援学校」「当事者団体」「用具の販売業者」「介護保険関係機関」「相談支援事業所」については、さらに直接的な紹介は少ない結果となっていた。  一方で、多くの視覚障害者は「医療機関(眼科)で見え方の改善が見込めないと言われたとき」に情報提供して欲しいと考えている。また、紹介を受けた者は、実際にその関係機関に行っている割合は高く、適切な情報提供があればつながる可能性は高くなっていた。  全国から毎年100名を超える眼科医が「視覚障害者用補装具適合判定医師研修会」を受講し、ロービジョンケアを実施する眼科医が増えたり、地域ごとのスマートサイトができ始めるなど、医療機関と訓練施設との連携は年々強化されてきているはずだが、まだ広がりに欠けるのか、あるいは上手く機能していないのか、今回の結果からみると、現状では医療機関からは役所への流れが主流となっていた。 A役所からの「つなぎ」  役所については、医療機関からは「制度やサービスの相談窓口」として期待されていた。そして、視覚障害者からは「行政機関で身体障害者手帳の申請をしたときに情報提供が欲しい」との回答が4割を超えており、医療機関と同じく、紹介を受けた視覚障害者の多くは、実際にその関係機関に行っていた。  ただ、調査結果からは、役所が窓口である「受けられるサービス」についての情報提供が5割以下、「補装具や日常生活用具」についても約3割程度しか情報提供されていなかった。さらに、「何も情報をもらえなかった」という者も約2割いた。そして、関係機関の紹介については半数以上の者が「どこも紹介してもらえていない」という結果となっていた。  この結果からは、役所が「生活上の困りごとに対する相談窓口」としては機能していないこと、情報が受け取りにくい障害である視覚障害者に対して、合理的配慮のもとの情報提供がなされていないことが疑われる。  結果として、訓練の必要性がある視覚障害者で、手帳取得から1年以内に訓練につながった者は2割以下になり、訓練施設につながるまでにかなりの時間を要する現状となっていた。 (2)相談を受ける側から見た「つなぎ」に関する現状と課題  調査3では、医療機関(眼科)、相談支援事業所、視覚障害者の当事者団体、視覚障害者向け情報提供施設、視覚特別支援学校など、相談を受ける側から見た現在の対応状況についての調査を行った。その結果から、訓練へのつなぎに関する現状と課題について考察する。 @医療機関(眼科)  視覚障害者から「日常生活の改善」「読み書き」「福祉制度の利用」など、生活上の困りごとに対する相談を受けているという回答が7割を超えていた。また、対応できる支援では、主たる業務である「眼の治療」や「ロービジョンケア」以外に、「補装具や日常生活用具の紹介」や「福祉制度・サービスの紹介」も8割以上が対応していると回答していた。なお、訓練を直接実施している機関も1割弱あった。また、紹介先については、当事者団体へは紹介率5割とやや低めとなっていたが、その他の関係機関へは概ね紹介率7割となっていた。  ただし、今回の調査対象は「視覚障害者用補装具適合判定医師研修会」を受講された眼科医で、さらにアンケート自体に協力をしたことを考えると、眼科医の全国平均と比べ、視覚障害者の支援に対する意識の高い集団であったとも言える。この点を考慮して分析する必要はある。 A相談支援事業所  視覚障害者からの相談を受けることが「ある」と回答した割合は約8割であった。そのうち、業務の中心である「福祉制度の利用」については9割が相談を受けていると回答していたが、「日常生活の改善」は4割強、「歩行手段」「読み書き」「仕事」については2割前後となり、生活上の困りごとの相談については回答率が低くなっていた。対応できる支援では、「福祉制度・サービスの紹介」が9割以上である一方、「補装具・日常生活用具の紹介」は4割以下となっていた。紹介先については、全般的に概ね紹介率4割から5割で、視覚特別支援学校へは紹介率3割弱と低めであり、視覚障害者系機関とのつながりは弱い結果となっていた。また、「視覚障害者への対応に慣れた職員がいない」との回答も4割あった。 B視覚障害者の当事者団体  視覚障害者からの生活上の困りごとの相談は、「福祉制度の利用」と「日常生活の改善」は9割以上、「歩行手段」と「読み書き」は7割以上の団体が相談を受けていた。対応できる支援でも、「補装具や日常生活用具の紹介」と「福祉制度・サービスの紹介」は9割以上など、今回の調査対象の中で最も支援の対応率が高かった。なお、歩行訓練以外の訓練も6割以上が直接実施していた。そして、紹介先については、概ね紹介率7割以上だが、医療機関への紹介は他と比べ低めになっていた。 C視覚障害者向け情報提供施設  生活上の困りごとの相談については、情報提供施設という施設の業務と関係の深い「福祉制度の利用」と「読み書き」が7割以上と高くなっていた。「日常生活の改善」についても6割以上になっていた。  対応できる内容でも、「補装具や日常生活用具の紹介」と「福祉制度・サービスの紹介」は8割以上と高くなっていた。歩行以外の訓練を実施している施設も7割以上あった。紹介先については、概ね紹介率6割以上であり、やや低めだった。これは、自施設で訓練を行っていることの影響もあるだろう。なお、医療機関への紹介は3割弱と低くなっていた。 D視覚特別支援学校  本業である「教育」についての相談が9割以上であった。ただ、生活上の困りごとについても、「日常生活の改善」と「読み書き」などの相談を7割以上が受けていた。対応できる支援としては、「補装具や日常生活用具の紹介」と「福祉制度・サービスの紹介」は9割前後、「歩行以外」の訓練を実施しているとの回答も7割弱あった。紹介先については、概ね紹介率7割以上で、当事者団体への紹介はやや低めとなっていた。  今回の調査対象の中では、概ねどの機関も自機関だけでできることは限られており、他機関との連携は重要だと考えていた。ただ、自由記述の中では、「身近な地域にあって欲しい」という回答が多く含まれており、物理的な距離がある=絶対数が少ない現状を表している。  相談支援事業所のみは、視覚障害者支援の専門機関ではないため他機関とは状況が違うが、概ねどの機関でも、視覚障害者の生活上の困りごとに関する相談を高い割合で受けており、それに合わせた対応もしている現状が伺える。  また、BCDの視覚障害者系機関は相互の情報を持っている。そのため、どこかにつながれば、それぞれの機能に対して必要な対応が期待できたり、適切な別の機関を紹介してもらうことができるのではないだろうか。ただ、視覚障害の専門支援機関ということを考えると、相談対応や他機関への紹介がもっと高い回答率でもおかしくはない。  また、調査3の調査対象となった機関のほとんどが、訓練施設に対して「広報啓発の強化」を一番に求めていた。それだけ訓練施設の情報が、これらの機関を含む一般の人たちへは伝わりにくい状況があるということだろう。 (3)まとめ  視覚障害者にとって、医療機関や役所は一次的な相談窓口と認知されており、最も身近でつながりやすい所と言えるだろう。そのため医療機関から役所という流れは作りやすく、視覚障害者を訓練に抵抗感なく導きやすい。ただ、現状では、役所においては、視覚障害者個々の生活相談にまでは対応できておらず、そこから適切な機関につなげていくことは難しい。スマートサイトなどにより、医療機関から直接関係機関につなぐ流れも出てきているが、現状では、十分機能している地域は少ない。そこで課題になっているのは専門性を求められる視覚障害者のアセスメントを「どこで誰がするか」ではないだろうか。  他の障害分野では生活全般のアセスメントを相談支援事業所が行っている。一方で視覚障害者の支援や連携を行うことは、そもそもの絶対数が少なく、サービス等利用計画に落とし込む必要のない非機能訓練で行われていることもあり、相談支援事業所と視覚障害の専門機関はやや遠い存在となっていると言える。特に相談支援事業所のサービス提供エリアに訓練施設などがない場合には、さらに遠い存在になっているだろう。ただ、一度でも視覚リハの対象者やその効果が認知されれば、相談支援事業所がアセスメントなどを行いやすくなり、地域で埋もれている視覚障害者の掘り起こしの役割を担うことが期待できる。  一方で、視覚障害者系機関同士は連携がとれており、高い割合でそれぞれの機関・団体が専門的な相談にのれているという結果ではあったが、実態はどうであろうか。ここでもアセスメントの力量は求められる。また、各機関からの情報(広報)不足もあり、視覚障害者にとっても、医療機関・役所からも、視覚障害者系機関は少し遠い存在となっている現状が伺える。  7 まとめ                         1.視覚障害者へのリハビリテーションの実施体制のあり方  地域で生活している視覚障害者は、移動や外出、文字処理、情報収集や発信、社会参加など、社会生活上の多くの困難や受障をしたことに対する精神的な課題を抱えており、それを解決したいと願っている。訓練をはじめとした、視覚障害者へのリハビリテーションは、それら幅広い領域の課題克服に大きな貢献をしていることが今回の調査で明らかとなった。  機能訓練事業所と非機能訓練事業所では、実施している訓練内容に大きな違いがあるわけではなく、その提供方法、提供回数、利用の制約の有無の違いが大きい。今回の調査結果からは、訓練は、一定回数以上あると、より技術的・精神的に与える影響は大きく、また、他の視覚障害者と訓練を通して時間を共有することで精神面に与える影響は大きくなっていた。そうした意味では、特に急激に視力低下が進行した視覚障害者、就労や進学を目指す視覚障害者、重度の視覚障害者など、生活全般にわたって困難を抱えている者にとっては、通所・入所で行っている機能訓練事業所の存在意義が大きい。ただ、移動することに支障が出てくる視覚障害者にとっては、公共交通機関の発達していない地域だと、身近な地域に施設がなければ、通所すること自体が困難である。一方で、現状ではそこまでの数の施設はないため、多くの地域の非機能訓練事業所では訪問を中心とする訓練が行われている。生活空間や実際に使用する場所での訓練の必要性については、知的障害や発達障害、高次脳機能障害などでも謳われている。機能訓練においても、訪問訓練に対する加算は検討されてもよいのではないだろうか。  そして、機能訓練事業所と非機能訓練事業所が両方ある、あるいは機能訓練事業所でそれ以外のサービスを行っている施設では、主に利用の制約に当てはまる視覚障害者への対応や、経営的な問題から訪問を機能訓練以外で行うといった「使い分け」を行っている。非機能訓練事業所では数回で終わる訓練も多数行っているなど、人生のライフステージの様々な局面で視覚障害になった者は、それだけ訓練に対するニーズも幅広いと言えるのではないだろうか。そこに対応するには、本来は機能訓練事業所と非機能訓練事業所が役割分担をしながら地域に共存するのが理想と言える。例えば、機能訓練の制約上対応できないニーズは非機能訓練事業所で対応するなどが考えられる。  平成30年度施行の障害福祉サービスの報酬改定では、「生活訓練」でも視覚障害者への訓練が行えることとなった。これにより、機能訓練(視覚障害)の現場で、実際にはその本来の業務を行っていない看護師・セラピストの必置が免除されるなど、専門職の人員配置基準の課題はクリアされた。ただし、経営面・利用者確保の面では、安定的に運営するための条件はクリアされていない。例えば、実際の視覚障害者向け訓練の実態に合わせた職員配置基準(職員:利用者=1:2.5以下)と実態に見合った報酬の上乗せがないこと、居住地による格差が出ないよう同行援護での通所を可能にすること、訪問訓練が可能となるよう中山間地以外でも距離に応じた訪問訓練加算を付けることなどについては、未解決のままである。この状況で、果たして新たに視覚リハを行うと手をあげる機関は出てくるだろうか。  障害者総合支援法において、他の障害に対するリハビリテーションサービスはすべて訓練等給付の中に入っている。視覚障害者向け訓練においても、他の障害とこの点を共通にしておくことは、次のような重要な意味があると考える。それは、今後の制度改革の際に検討の土俵に必然的に上がるようになること、請求実績という形で実績(ニーズ)が厚生労働省に伝わること、サービス提供やそこに至るプロセスが他の障害とかけ離れないこと、一定の基準以上の訓練計画や記録の作成を求められることなどにより、サービスの質を保たれることである。  ただ、もし視覚障害者向けの機能訓練・生活訓練の制度設計において、上述の条件が他の障害との兼ね合いの中でクリアできないのであれば、特に交通機関の発達していない地域では、民間施設で視覚リハを実施していくことは経営的に難しいだろう。そうなると、公的機関でサービス報酬によって一部経費を賄いつつ、都道府県等の委託事業として助成金を受けて運営する以外は難しいのではないだろうか。  つまり、視覚障害者へのリハビリテーションの実施体制において、望ましいあり方は、住んでいる地域に関係なく、訓練が必要な者に視覚リハを受けられる権利を保障することではないだろうか。少なくとも、現在訓練施設が存在しない都道府県に対しては、訓練施設等が設置されるよう、国からの行政指導を行うべきである。 2.訓練施設につなぐための支援体制のあり方  多くの視覚障害者にとって、最もつながりやすい存在は「医療機関」と「役所」であり、ここでは、補装具や日常生活用具、障害福祉サービス、訓練施設などの情報提供が行われることが望ましい。ただ、そのためには、十分な時間をとって聞き取りを行うアセスメントが必要だが、専門性が求められ、日常業務の中で対応することは時間的にも難しいのが現状であろう。さらに医療機関・役所と訓練施設・視覚障害者系機関とのつながりが弱いことも今回の調査で明らかとなった。  このつながりの弱さを解決するため、各地で様々な試みが行われている。  医療従事者や役所では、アセスメントの時間をとることやその専門性の確保が難しくなっている。相談に来た視覚障害者に必要な情報が何かを調べるために、簡単な聞き取りを行うことで最低限必要な情報提供の内容が分かる「簡易アセスメントツール」があり、これは有効かもしれない。また、視覚障害者やその家族などが必要な情報を分かりやすくするため、視覚障害者に関係する内容だけを集めた「福祉のしおり(簡易版)」を役所に置くことも有効かもしれない。  そして、医療ソーシャルワーカーがいない、または関係が薄い眼科において直接相談を受けようとするならば、相談にのれる視能訓練士の育成が鍵となるだろう。中間型アウトリーチとして、歩行訓練士や当事者団体が医療機関に出向いて相談に応じている地域も出てきており、その有効性は認められているが、効率的な運用方法の検討やその人件費をどこから捻出するかは課題である。  また、スマートサイトとして、その地域の相談機関の配布用リストを作成したり、ワンストップの相談窓口を指定している地域も出てきている。相談機関のリストは、多すぎると結局どこにつなげばいいのかという声が多いため、ワンストップの相談窓口を作ることが望ましいだろう。それをどこが担うか、その人件費をどう確保するかは課題である。  相談支援事業所を持っている訓練施設もある。実際に相談支援専門員からつながっているケースは他地域と比べかなり多くなっている。  各地の視覚障害者をとりまく環境は、医療機関や訓練施設の配置状況、地形や交通網など地域特性がある。そのため、上記のような先駆的な取り組みをしている地域の調査を行い、その課題と解決策を考え、様々な状況に対応出来るよう、複数のモデルを作っていくことが必要となるのではないだろうか。  訓練施設・視覚障害者系機関側の課題としては、今以上に関係機関同士の連携や相互の情報提供を強化し、どこかにつながったら、必ずアセスメントを行い、適切な機関につなげるようになることは必須である。ただし、視覚障害者系機関の職員や当事者が必ずしも相談支援のスキルを勉強しているわけではない。全国視覚障害者情報提供施設協会がその研修を始めたように、職員の相談対応やアセスメント能力に対するスキルアップは必要である。  また、相談支援事業所や介護保険の包括支援センターを積極的に活用し、ケースを通した連携によって視覚障害者支援の輪を広げていくことも大事ではないだろうか。社会資源がないことや連携がとれていないことを「地域の課題」として挙げること、医療機関や相談支援事業所からの紹介があったときに適切に対応すること、その結果をきちんとフィードバックすることなどを通して、次の紹介につなげていくことが求められる。