愛盲時報 平成29年10月25日(水)第256号 目次  1.平成29年度日盲連調査事業、取り組み進む 日生具給付と補装具支給の実態に迫る  2.『就任のご挨拶』事業部長 逢坂忠  3.相談室、開設から1年迎える  4.映画『もうろうをいきる』が伝えたもの~指で奏でる人と人のつながりの記録~  5.鹿児島で盲青年研修大会が開催、次期協議会会長に伊藤氏決まる  6.ご寄付のお願いについて  7.奥付  *見出しの頭には「--(半角で2つ)」の記号が挿入されているので、検索機能を使って頭出しをする際にご利用下さい。  また検索の際、目次でご紹介した数字を続けて半角で入力すると、その項目に直接移動することができます。  (例)1をご希望のときは、「--1(すべて半角)」と入力。 (以下、本文) --1.平成29年度日盲連調査事業、取り組み進む 日生具給付と補装具支給の実態に迫る  視覚障害者向けに製作された録音図書(デイジー図書)の再生機、測定した数値を音声で伝える血圧計、 触って時刻を知ることができる触読式の腕時計など、視覚障害者にも使いやすいように配慮された日常生活用具(以下、日生具)が、 さまざまなメーカーから販売されています。  これら日生具は品目や対象者などが指定され、地域に住む視覚障害者に提供されていますが、 各自治体の裁量により、給付内容に地域格差が生じている現状があります。  日本盲人会連合は平成29年度の調査事業として、中央共同募金会・全国労働者共済生活協同組合連合会の助成を受け、 「視覚障害者のための日常生活用具と補装具の給付及び貸与の実態調査事業」を実施しています。  自治体・当事者・メーカーおよび販売店を対象に行ったアンケートを集計し、視覚障害者のニーズについて整理するとともに、 現行制度の問題点を明らかにします。また、この統計データをもとにした、制度改善にむけた今後の働きかけについて提案を行います。  委員名簿(順不同)  委員長:中野泰志氏 慶應義塾大学教授  委員:荒川明宏氏 (福)日本盲人社会福祉施設協議会 用具部会長/株式会社ラビット代表取締役社長  奈良里紗氏 視覚障がい者ライフサポート機構“viwa”代表  畑岸和男氏 有限会社ジオム社 代表取締役社長  郷家和子氏 帝京大学医療技術学部視能矯正学科 非常勤講師  日本盲人会連合 竹下義樹会長・橋井正喜常務理事・藤井貢組織部長・三宅隆情報部長・守屋智恵職員  具体的な活動として、これまでに2回の委員会と1回の作業部会を開催、また第2回委員会ではメーカー・販売店へのヒアリングも実施しました。 サイトワールド2017でシンポジウムを開催  日本最大級の視覚障害者向けの福祉機器展「サイトワールド」は、今年も11月1日~3日にかけて、 東京都墨田区錦糸町駅前にある丸井錦糸町店8・9階のすみだ産業会館サンライズホールを会場に開催されます。  最終日の3日には、「視覚障害者のための日常生活用具と補装具の現状と課題に関するシンポジウム」が企画されています。 調査事業の経過報告として、アンケートの中間報告およびヒアリングの結果から見えてきた課題を検証するとともに、 パネルディスカッションでは「日常生活用具給付等事業」と「補装具費支給制度」のあり方について討議します。 会場は9階の会議室1・2で、時間は10:30から12:30までを予定しています。  委員一同、皆様のご参加をお待ちしています。 “Nothing About Us Without Us”、日生具・補装具の制度は皆様の制度です。 慶應義塾大学教授 中野泰志氏  「国連で障害者の権利に関する条約が議論されているときに、Nothing About Us Without Us (私たち抜きに私たちのことを決めるな)というアピールがなされたことは、皆様ご存じのことだと思います。  日生具・補装具は、障害がある人たちが、障害のない人たちと同じように生活し、社会に参加するための重要な制度です。 この制度を良くしていくためには、当事者の声こそが大切です。   一人一人の声は小さいかもしれませんが、声を集めることから社会の改革ははじまります。日盲連に一人でも多くの当事者の声を届けてください」 --2.『就任のご挨拶』事業部長 逢坂忠  9月1日より事業部長に就任しました逢坂忠(あいさか ただし)と申します。どうぞ宜しくお願いいたします。  私は昭和57年4月から平成29年3月までの35年間、 国立視力障害センターや国立障害者リハビリテーションセンターで理療の教官として勤務しておりました。  この紙面では自己紹介を兼ねてセンターの理療教育について述べさせていただきます。理療教育は視覚に障害がある方を対象に行っており、 あん摩マッサージ指圧師及びはり師・きゅう師の資格を取得し、就労につなげることが目的です。国立のセンターでは学生のことを利用者といいます。  センターの利用者の多くは中途失明者であり、30歳代・40歳代の方々です。近年は、年齢層が高いこととともに、 聴覚や高次脳機能障害などを重複する方や、糖尿病などの病気を併せ持つ利用者が増えています。  資格試験が平成5年から国家試験になったことで資格の取得率が低くなっています。また、臨床能力(あはきの技術)の低下も指摘されており、 放課後の時間などを活用して受験指導や実技指導を行い、課題の解決を図っています。  視覚障害者を取り巻く諸問題においても、あはきに関するものがあります。これまでの経験を活かし、日盲連の活動を推進してまいります。  事業部の活動としては、東京ガイドセンター、リセット(東京体育館マッサージルーム)、ロービジョンキットの貸出、用具購買所などの業務があります。 事業部長としては、事業部の業務の充実を図ることが重要な課題と考えます。引き続き皆様のご協力をいただきますよう、宜しくお願いいたします。 --3.相談室、開設から1年迎える  昨年度、中途失明者などの個別相談に柔軟に対応できるよう、相談事業の強化を求めた竹下義樹会長の下、正副会長会議を経て、 日本盲人会連合に総合相談室が誕生しました。そして今年の8月、総合相談室は開設1年を迎えました。 平成29年10月時点の委嘱相談員は17名で、 社会保険労務士や歩行訓練士など各分野のプロフェッショナルたちが登録されています。  工藤正一室長はこの1年を「想像以上にさまざまな相談があった」と笑います。 「ワンストップの窓口となっている自信がある」と一定の手応えを感じているようですが、 「眼科医との連携が十分でないこと」などの課題も認識しているようです。  「さっきの相談の内容なんだけど・・・」、受話器を置いた後に相談員の間で意見交換を行うこともあります。  受けた相談は事例別に分類され、関係部署間で共有されます。 委嘱相談員 相沢保さんに聞く  総合相談室開設時より、雇用・就労関係に詳しいアドバイザーとして、工藤室長たちとともに相談に応じている相沢保さん(晴眼)。 ハローワークに長らく勤務した経歴を有し、現在は障害者の自立支援などに尽力されています。 ―日盲連のような当事者団体に、相談室が立ち上がった意味は大きいと思いますか? 相沢さん「思います。自分の障害のことをわかってくれる、それが相談の入り口です。 最初の信頼関係ができないと、ステップアップしていくことはできません」 ―とくに深刻だと思う相談内容は? 相沢さん「中途失明ですね。30代~50代の方が見えなくなった不安、生活の不安、仕事が続けられない不安、 支援や訓練につながっていくまで、何年も何人もの人の手を借りなくてはならないと思うのですが、そこの部分が一番大事だと思います」 ―就労問題に明るい相沢さんですが、働き手として大切なことは何だと思いますか? 相沢さん「学校教育の中では、労働法関係の勉強はしないですよね。働いている人の最低限の権利、権利を守るための法律・根拠、 そういったものを皆様にもっていてほしいなと思います」 ―相談員として心がけている点はありますか? 相沢さん「私たちも相談を通して、当事者が何に困っているのかを勉強しています。 どういう支援をしたらいいか気づくことができるなど、相談は一方的なものではなくて、相談者から私たちが学ぶものです。 次の制度改正に必要なものを考えていく、日盲連が政策提起するために現場の生の声を拾うことが私のミッションだと思っています」 相談室をご利用の皆様へ.. ・電話による相談:月~金曜日(年末年始は除く) ・来所による面接相談:原則として予約制です。 ・相談時間:午前は10時から12時、午後は1時から4時までです。 ・その他:毎月1回、テーマを決めてホットライン(集中電話相談)を開設しています。 過去に実施したテーマは、中途視覚障害者問題・子育て&教育・雇用&就労・障害年金などがあります。専門相談員が対応いたします。 ・注意事項:フォローアップのために、連絡先を伺うことがあります。内容によっては、回答にお時間をいただくこともあります。予めご了承ください。 皆様からのご相談、お待ちしています。 お問い合わせは、下記連絡先までどうぞ。 電話:03-3200-0011/Eメール:soudan@jfb.jp --4.映画『もうろうをいきる』が伝えたもの~指で奏でる人と人のつながりの記録~ 西原監督、盲ろうの世界にふれる  今年の夏、盲ろう者7人のありのままの日常を撮影したドキュメンタリー映画『もうろうをいきる』が、 ポレポレ東中野(東京都中野区)での上映を皮切りに、7都府県で順次公開されています。 本作には東京大学先端科学技術研究センター教授で全盲ろうの福島智さんも出演し、全国盲ろう者協会や東京盲ろう者友の会などが制作に協力しています。  監督の西原孝至さんは現在33歳、学生団体SEALDsの活動を追った『わたしの自由について~SEALDs2015~』で注目を集めた若手映画監督です。  この映画の撮影にかかわるまでは、盲ろうの世界を知らなかったという西原監督は、コミュニケーションの豊かさに驚いたといいます。 「盲ろうの人たちが日々どのように生活をされているのか、丁寧に撮影していけばいい映画になると思った」と述べています。  撮影を開始した昨年の7月に、相模原市緑区の障害者施設「津久井やまゆり園」で、元職員により入所者19人が殺害、27人が負傷する事件が起こりました。 元職員の価値観に反感を抱いた西原監督は、生きていること自体を祝福する映画にしようと決意します。 障害とともにいきること~姉と妹のエピソード~  津久井やまゆり園の事件発生から1年が過ぎ、被告(元職員)と新聞社との書簡のやりとりが公開されました。 しかしながら、被告の考え方は「意思疎通がとれない障害者は生きていてもしかたがない」など逮捕時のものと依然変わりはありません。  福島さんは、本作が「相模原の事件へのアンチテーゼのメッセージをもっている」と述べています。  5人目の盲ろう者として、本編に出演したのは貝島麗奈さんでした。貝島さんは、生後まもなく病気で盲ろうとなり、 あわせて発作を伴うてんかんを患っているため、一般的な意思の疎通は困難な状態です。現在は、父と母と妹の4人で暮らしています。  妹の優紀さんは「(姉が)私のことを妹と思っているか分からないけど、姉妹というよりは、一緒に生きているって感じがありますね」 「自分たちのペースで、一緒に楽しく過ごせる時間が作れたらいいなと思います」とインタビューに答えています。 優紀さんはバリアフリーに関心を持ち、現在大学でデザインを学んでいます。  障害者が不幸を生むという被告の考えに対して、福島さんは彼女の言葉を引用して反論します。 貝島さんが本当に不幸を生み出しているのか、麗奈さんを中心に家族の愛情が生み出されているとし、 「不幸しか生み出さないと言っている、人間の不幸とは何なのか」と問いかけます。  ぼくが光と音を失ったとき  そこには言葉がなかった  そして世界がなかった  ぼくは闇と静寂の中でただ一人  言葉をなくして座っていた  ぼくの指にきみの指が触れたとき  そこに言葉が生まれた  言葉は光を放ちメロディーを呼び戻した  ※引用:福島智著『ぼくの命は言葉とともにある』(致知出版社)  映画『もうろうをいきる』、スクリーンに映し出されているのは「盲ろう」という障害とともに生きる人々が、 指などでコミュニケーションを取りながら、周囲の人々とつながろうとする姿です。  生きるということはどういうことか...人とのつながりなくしては生きていくことができない私たちに、映画は静かに語りかけてきます。 --5.鹿児島で盲青年研修大会が開催、次期協議会会長に伊藤氏決まる  8月26、27の両日、鹿児島県の鹿児島市勤労者交流センター(よかセンター)・鹿児島東急REIホテルを会場に、 日本盲人会連合青年協議会などが主催する「第63回全国盲青年研修大会」が開催され、全国から約170名が参集しました。  本大会では平成29年度事業計画案・予算案が審議され、また視覚障害のある児童・生徒の基礎データを 作成することを目的としたアンケート調査の実施についてなどが報告されました。 今期で任期を終える大胡田誠協議会長の後任を決める選挙が執り行われ、次期会長には伊藤丈人氏(東京都)が選出されました。 ― 伊藤丈人氏の挨拶から ー  70年の伝統で視覚障害者の福祉は進んでいますが、新しい問題も起こってきています。  楽観視できない厳しい状況の中で、一生懸命青年協議会の組織として、またこの世代の視覚障害者として、 また次の世代につなげていけるように頑張っていきたいと思います。 --6.ご寄付のお願いについて  日本盲人会連合は視覚障害者自身の手で、<自立と社会参加>を実現しようと組織された視覚障害者の全国組織です。  1948年(昭和23年)に全国の視覚障害者団体(現在は、都道府県・政令指定都市61団体が加盟)で結成され、 国や地方自治体の視覚障害者政策の立案・決定に際し、当事者のニーズを反映させるため、陳情や要求運動を行っています。  活動内容は多岐にわたりますが、そのために必要な経費の確保は、厳しい財政の中困難を極めています。  視覚障害者福祉の向上を目指し、組織的な活動を維持していくため、皆様からの特段のご厚志を賜りますよう、 何とぞ宜しくお願い申し上げます。 ■ゆうちょ銀行 記号番号 00160-5-536104 加入者名 社会福祉法人日本盲人会連合 ■みずほ銀行 店名 高田馬場支店 預金種目 普通  口座番号 2868101 カナ氏名(受取人名)フク)ニホンモウジンカイレンゴウ ※領収証が必要な方、本連合が振り込み手数料を負担する専用の振込用紙をご希望の方は、日本盲人会連合までご連絡ください。 (電話:03-3200-0011) --6.奥付 愛盲時報 平成29年10月25日(水)第256号 ※この愛盲時報は鉄道弘済会の不動産賃貸事業などの益金等、 日本盲人福祉委員会の愛盲シール維持会費の中から贈られた寄付金などで作られたものです。 発行所:社会福祉法人 日本盲人会連合  〒169-8664東京都新宿区西早稲田2-18-2 発行人:竹下 義樹 / 編集人:三宅 隆 電話:03-3200-0011/FAX:03-3200-7755 URL:http://nichimou.org/ Eメール:jouhou@jfb.jp(情報部) 以上で、愛盲時報 平成29年10月25日(水)第256号を終わります。