1ページ 平成30年度障害福祉サービス等報酬改定に関する意見等 社会福祉法人 日本盲人会連合 2ページ 社会福祉法人日本盲人会連合の概要 1.設立年月日 : 昭和23年8月18日 2.活動目的及び主な活動内容 : 日本盲人会連合は視覚障害者自身の手で、“自立と社会参加”を実現しようと組織された視覚障害者の全国組織です。1948年(昭和23年)に結成された、都道府県・政令指定都市における61の視覚障害者団体の連合体で、国や地方自治体の視覚障害者施策(人権、福祉、教育、職業、環境問題等)の立案・決定に際し、視覚障害者のニーズを反映させるため、陳情や要求運動を行っています。 【主な活動内容】 ・ 全国盲人福祉大会の開催 ・ 情報宣伝活動(月刊の点字情報誌『点字日本』、録音テープ版情報誌『日盲連アワー』、インターネット版情報誌『声のひろば』、墨字版機関紙『愛盲時報』等) ・ 点字図書館、点字出版所、録音製作所、更生相談所の設置運営 ・ 国際交流 ・ 文化、スポーツの振興  等 3.加盟団体数(又は支部数等) : 61団体(平成29年5月時点) 4.会員数 : 延約50,000人(平成29年5月時点) 5.法人代表 : 会長 竹下 義樹 3ページ 平成30年度障害福祉サービス等報酬改定に関する意見等(概要) 1.「自立訓練(機能訓練)」  視覚障害者の歩行訓練・日常生活訓練等を実施する同サービスは、視覚障害当事者のニーズと実施機関の実情と見合っていないことから、安定的なサービス提供が行われず、地域間格差等が発生している。視覚障害者が「いつでも、だれでも、どこでも、同じような質の高い訓練が受けられる」ためには、以下の改善を行う必要がある。 (1)人員配置、報酬を実態に合わせる 視点−1 (2)訪問に関する加算を設定する 視点−2 (3)通所手段の確保を確立させる(同行援護等の利用) 視点−2 (4)自立訓練に繋げる相談支援体制を確立させる 視点−1 2.「同行援護」  視覚障害者の行動を保障する同行援護は、同サービスの開始以降、多くの視覚障害者が恩恵を受けており、今後も継続発展が必要なサービスである。しかし、制度面の諸問題により、同サービスを支える事業所・従業者の負担は大きく、今後、同サービスを継続発展するためには、以下の改善を行う必要がある。 (1)利用者の安全・安心を保障できる報酬単価設定、及び養成研修内容等の見直しを行う 視点−1 (2)利用者ニーズに見合った制度に改める 視点−1・2 (3)運営する事業所・従業者の実情とニーズに見合った制度に改める 視点−1 3.その他の障害福祉サービス  以下のサービスにおいては、視覚障害者の特性が理解されないことから、満足なサービスが提供されていない。そのため、視覚障害者の特性を踏まえた制度等に改善する必要がある。 視点−1・2 (1)居宅介護 (2)共同生活援助(グループホーム)   (3)就労移行支援、就労継続支援 (4)児童発達支援事業 視点について 視点−1  より質の高いサービスを提供していく上での課題及び対処方策・評価方法  視点−2  地域において、利用者が個々のニーズに応じたサービスの提供を受けられるようにするための、サービス提供体制の確保に向けた課題及び対処方策 視点−3  障害福祉サービス等に係る予算額が、障害者自立支援法施行時から2倍以上に増加し、毎年10%近い伸びを示している中で、持続可能な制度としていくための課題及び対処方策 4ページ〜9ページ 平成30年度障害福祉サービス等報酬改定に関する意見等(詳細版) 1.自立訓練(機能訓練) (1)問題点の整理 @自立訓練(機能訓練)の現状 ○ 歩行訓練や日常生活訓練等の視覚障害リハビリテーション(以下、視覚リハ)は、訓練等給付の「自立訓練(機能訓練)」の中に位置付けられたサービスである ○ しかしながら、視覚リハを実施している自立訓練(機能訓練)の事業所は少数であり、全国で体系的に実施されているとは言い難い ○ 従って、利用したくても利用できない状況にあることから、結果的にサービス利用に結びついていない A視覚障害者向けの自立訓練が広まらない背景 ○ 訓練に対する当事者のニーズは少なくはなく、潜在的に訓練を受けたいと思う当事者は多い ○ しかし、同サービスの制度設計は、以下の背景によって実態とかみ合っていない  A 多様なニーズを持つ視覚障害当事者の要望に応えられていない  B 自立訓練(機能訓練)が、肢体不自由者のリハビリテーションを踏まえて制度設計がされているため、視覚障害特有の専門的スキルを必要とする訓練に見合わない部分が多い   ↓ ● 視覚障害者が望む「いつでも、だれでも、どこでも、同じような質の高い訓練が受けられる」状況は確立されておらず、視覚障害者の真の自立は保障されていない (2)意見・提案を行う背景、論拠 @視覚障害者の実態 ○ 視覚障害者の多くが日常生活上の困りごとを抱えていて、改善を希望している 【参考資料 1−(1)】    → 訓練に対するニーズは非常に高い ○ 訓練を受けている視覚障害者の多くは65歳以上 【参考資料 1−(2)】 ○ 訓練は自宅に出向いてくれる、費用負担がない(少ない)ことを希望している  【参考資料 1−(3)】    → 実際の「生活場面」での訓練が必要とされている    → 収入乏しい、複雑な手続きに対応ができない等の理由で、訓練へ簡単にアクセスができない    ※簡単にアクセスができないことの一例 「自己負担「負担上限月額の算定方法」     前年度の収入で判断するため、突然仕事を失った中途視覚障害者は、収入が無いにもかかわらず高額な負担を強いられる場合がある。 ○ 訓練等につながる前は「在宅」で生活している視覚障害者が多い 【参考資料 1−(4)】    → 訓練の繋がり方においても、視覚障害者は他の障害と大きな違いがある    → 訓練事業所が少ないため、自宅から遠方に移動することになり、交通費等の負担が大きい ○ 同行援護が通所に利用できない 【参考資料 1−(7)】    → 移動の訓練を受けたい視覚障害者が、訓練をする場所まで移動することができない @のまとめ ● 視覚障害者は、訓練を受けてQOLを高めるだけでなく、外出時の安全を確保し、自立と社会参加を実現したいと考えている ● しかし、当事者側の事情、訓練事業所側の問題、他制度の問題等で、簡単に訓練を受けることができない状況になっている A訓練事業所の実態 ○ 全国的には自立訓練(機能訓練)は広まっていない     ※参考 視覚リハを実施している自立訓練(機能訓練)の事業所数 17事業所(平成29年)        報酬請求を行っている自立訓練(機能訓練)の事業所数  約190事業所(平成27年)    → 実働をしている自立訓練(機能訓練)事業所の約9%のみしか視覚リハを実施していない    → また、視覚リハを実施している事業所数は、平成18年以降から増加していない ○ 視覚リハは、自立訓練(機能訓練)とは異なる、各地域の自治体の予算(中途失明者緊急生活訓練事業等)で実施されている傾向がある【参考資料 1−(5)】    → 視覚リハの訓練が自立訓練(機能訓練)では実施しずらい状況になっている ○ 自立訓練(機能訓練)以外の訓練では、人員配置に格差があり、地方自治体の財政状況、訓練の必要性に対する自治体の認識の差によって、安定的な運営はなされていない【参考資料 1−(6)】    → 自立訓練(機能訓練)以外も安定的な訓練は実施されていない B訓練事業所 運営上の課題 【参考資料 1−(7)〜(10)】 ○ 視覚リハを実施している自立訓練(機能訓練)は、人員配置基準が実態と合っていない         ア 職員と利用者の比率 → 1:2.5以下で実施している (配置基準は1:6)   イ 看護師の必置    → 実際には看護師がコミュニケーション訓練事業の訓練業務を行っていることが多い ○ 利用者の自宅等への訪問訓練を実施することが困難(人員体制・報酬面からの問題)    → 事業所は利用者が求める訪問訓練に応えたくても応えることができない C新規参入に関する課題 【参考資料 1−(11)〜(13)】 ○ 新たに自立訓練(機能訓練)を行うには、新規参入の壁が大きい    ・自立訓練(機能訓練)の参入要件が厳しい    ・地域の実情と合っていない    ・当事者ニーズとずれがある    → 自立訓練(機能訓練)で視覚リハが普及しない要因である ○ 視覚障害者をサービス対象としていない自立訓練(機能訓練)の事業所では、歩行訓練士等を確保していない   【視覚リハの訓練】    ・視覚障害者への訓練・支援に高度な専門性が必要    ・実際の訓練現場では、視覚リハの養成施設を出た歩行訓練士等が訓練の中心を担っている      → 視覚障害者向けの歩行訓練士が少ないことが影響している    → 歩行訓練士の「資格」を明確化し、数の確保が必要になっている   A〜Cのまとめ ● 視覚リハを行う自立訓練(機能訓練)の事業所は、利用者のニーズに見合ったサービスを提供することができない ● 現状での運営も厳しいことに加え、社会進出を望む視覚障害者のニーズに対応するだけの受け皿が用意できていない   ↓ 【障害福祉サービスにおける課題】  ● 訓練を実施している「事業所の実態」と「サービスの基準」がかみ合っていない ● 「肢体不自由向けの機能訓練」と「視覚障害者のリハビリテーション」を同じサービス内で取り扱っていることが、視覚リハが自立訓練(機能訓練)で安定しない原因となっている (3)意見・提案の内容 ○ 視覚障害者の自立訓練(機能訓練)は、他の障害者の自立訓練とは大きく異なっている ○ そのため、視覚障害者の実態に合わせたサービス提供体制を構築する必要がある @人員配置、報酬を実態に合わせる ア 人員配置 「1:2.5以下」、報酬の上乗せ  視覚リハの実施施設では、安全確保の観点や訓練を受ける当事者の障害と能力に個別性が強いことから、機能訓練で定められている職員数:利用者数1:6よりも手厚い人員配置で対応せざるを得ない実情である。  そのため、視覚障害者の訓練施設については、実態に合わせ人員配置基準を「1:2.5以下」とし、それに応じた報酬の上乗せが必要である。 イ 看護師の必置の免除  機能訓練で配置を義務付けられている看護師については、実際には視覚リハに関わっていなかったり、看護業務よりも訓練業務に多くの時間を費やしている。同様に、作業療法士や理学療法士が関わっている施設もほぼない。  そのため、視覚障害のみを対象としている施設においては、現在の「看護師必置」を免除できるようにすること、並びに機能訓練指導員を歩行訓練士に読み替えることを認めることが必要である。 A訪問に対する加算を設定する  訪問での訓練は、移動に制限のある視覚障害者からのニーズは非常に高い。しかし、訪問での訓練は、実際の生活場面に即した訓練ができるものの、移動時間がかかり非効率になりやすい。  自立訓練(機能訓練)への新規参入を促す意味でも、訪問訓練については、訓練時間に応じた按分をつける必要がある。  例: 30分以下  362単位     1時間未満  724単位     1時間以上 1086単位  また、移動に要する時間に応じた加算をつける等の配慮が必要である。 B通所手段の確保を確立させる(同行援護等の利用)  現在、「通年かつ長期にわたる外出」にあたることを理由に、同行援護での施設通所を認めない自治体が多い。  そもそも、移動が困難な視覚障害者にとって、頼れる家族や友人がいなければ訓練を受ける場所まで移動できないのは非常に大きな矛盾である。  適切な計画のもと、本人が通所できるようになるまでの期間は、同行援護が利用できるようにする必要がある。  そのためには、障害福祉サービス「同行援護」において、制度等の改善が必要である。 C自立訓練に繋げる相談支援体制を確立させる  受障時に地域で生活をしている視覚障害者を必要な訓練等のサービスにつなぐためには、医療機関をはじめとした視覚障害者と出会う人からの相談や紹介が大切である。そのため、適切な情報提供や動機づけ等も対応ができるワンストップの相談窓口が必要である。  また、当事者からは、自立訓練(機能訓練)の基準や報酬の改定だけでは解決できない、緊急性の高いケースへの早期の介入、再訓練等の短期間・限定的な目的への対応、期限を限らない継続的な相談対応等のニーズがある。  このような当事者ニーズに対して臨機応変な対応を図るため、制度の中にどう相談窓口を組み込むかは、別途検討が必要である。   ↓ 【視覚障害者が求める更なる要望】  障害福祉サービスの改善を図るとともに、国が各都道府県に対して「歩行訓練士等の人員配置基準」を示し、確実に全国で「いつでも、だれでも、どこでも、同じような質の高い訓練が受けられる」ようにする 10ページ〜14ページ 平成30年度障害福祉サービス等報酬改定に関する意見等(詳細版) 2.同行援護 (1)問題点の整理(意見・提案を行う背景、論拠) @利用者の安全・安心を保障できる「報酬単価設定及び養成研修内容等」の見直し ア 利用者の安全・安心を保障できる報酬単価の設定 ○ 同行援護としての単価設定  同行援護の本質は、命にも関わる安全の確保に加え、生活において必要な理解、判断、管理に役立つ情報までも提供することである。それには、安全を担保する技術と、視覚障害当事者を理解し尊重した高度な判断力、倫理観に基づいた情報提供が必要である。  しかし、現在同行援護の単価は、「身体介護伴う・伴わない」の基準設定となっており、同行援護の本質に見合っていない。介護保険では、自立支援のための見守りでさえ身体介護としている。  利用者の身体に触れながら、目の代わりとなって安全を確認し、常時必要な情報提供を行う同行援護においては、「身体介護を伴う」以上の単価設定が必要である。    → しかし、実際には、「身体介護が伴わない」として算定されることが多い イ 養成研修・サービス提供責任者に関わる問題 ○ 同行援護の研修  同行援護従業者として活動するために必要な養成研修の一般課程には、公共交通機関の演習が含まれていない。また、一般課程20時間では視覚障害者の支援の基礎を学ぶには時間数が足りない。    → 実際には、一般・応用という区分けによって時間数が短くなっている    → 通信での講義や免除科目の設定があり、受講修了生の資質の低下にも繋がりかねない状況にある ○ サービス提供責任者  同行援護は介護ではないにもかかわらず、サービス提供責任者の要件の一つに介護福祉士等の介護系の資格が必須とされている。    → 事業所を増やすことを阻害している    → 視覚障害者の特性を理解していないサービス提供責任者を生む可能性がある A利用者ニーズに見合った制度 ○ 宿泊を伴う外出      現在の仕組みでは、1日単位での利用に限るとされているため、宿泊を伴う利用ができない。    → やむを得ず宿泊利用を認めている事業所では、報酬が得られておらず、実質的には無償で就労せざるを得ない ○ 車の利用    中山間地域等では公共交通機関が利用できず、外出の際に使える移動手段がなく、結果として外出を諦めている視覚障害者が多い。    → 地方に住む視覚障害者の外出が保障されていない B運営する事業所・従業者の実情とニーズに見合った制度 ○ 利用時間   現在の単価設定では身体介護を伴わない場合は1時間半以上の利用から、また、身体介護を伴う場合は3時間以上の利用から、加算される単価が一律となる設定となっている。     → 実際には、平均では3時間以上を利用する件数が多い    → しかし、現在の単価設定で長時間を利用した場合、収入と支出される経費のバランスがとれない    → つまり、現制度では、長時間の利用は「単価が下がって」しまい、 安定した事業運営ができない ○ 利用者の利用方法   透析のための送り迎え等、20分未満の短時間で終了する場合が多々ある。   目的地まで送り、利用者が用務を終えた以後に迎えに行くといった支援も多数ある。    → 報酬の請求において、20分未満の利用の場合は請求ができない    → 1日2回の利用の場合に、その間の時間を概ね2時間以上あけるという基準があり、利用実態と見合っていない ○ 視覚障害利用者への情報伝達   視覚障害者は通常の文字情報では読めない人が多い。そのため、点字等の様々な媒体による情報提供が必要となる。しかし、そのためのデータ変換にはかなりの手間と時間がかかる。    → 現制度では、これらの事務に対する事務処理加算がない ○ 特定事業所加算   現在の特定事業所加算は介護事業所等を想定したものとなっており、同行援護のみで事業展開している事業所では、加算がほとんどの場合取れない。    → 事業所を増やすことを阻害し、事業所の収益に悪影響を及ぼしている  ↓ @〜Bのまとめ ● サービスを利用する視覚障害当事者、サービスを提供する運営事業者と従業者にとって、安定的かつ発展的な制度となっていない ● 特に、運営事業者側の環境は厳しく、平成29年度末(平成30年3月末)以降で、事業の縮小・廃止を検討する運営事業者が1割存在する 【参考資料 2ー(1)】 ● 利用者の安心・安全を保障する同行援護事業の安定には、同行援護の本質に見合った報酬改定の変更が必要 (2)意見・提案の内容 @利用者の安全・安心を保障できる報酬単価設定  ア 利用者の安全・安心を保障できる報酬単価設定  移動の安全を確認、確保ができない視覚障害者の目の代わりになるガイドヘルパーは、その利用者の命を預かる存在である。また、視覚障害に加え、さらに安全確保しにくい肢体障害、聴覚障害、内部障害を併せ持つ人、及び理解力・判断力・管理力等に支援が必要な精神障害、知的障害、発達障害、認知症を併せ持つ人等については、ガイドヘルパーの技術的にも倫理面も含めた資質において高いスキルが求められる。  現在、同行援護利用者の7割近くが65才以上であり、上記内容も勘案し、「身体介護伴う」以上の単価設定が必要である。 イ 養成研修内容等の見直し ● 同行援護従業者養成研修   時間数は、一般・応用という区分けを無くし、32時間とする。受講修了生の資質の低下にも繋がりかねない通信での講義や免除科目の設定は廃止とする。 ● 事業所におけるサービス提供責任者   資格要件に、「同行援護従業者養成研修32時間修了かつ同行援護に従事した実務経験3年以上」を含める。 A利用者ニーズに見合った制度に改める ● 車の利用   同行援護従業者の運転する車に乗車しての制度利用ができるようにする。 ● 宿泊を伴う業務   宿泊を伴う同行援護を認めるとともに、夜間(寝ている間)についても報酬の対象とする。また、宿泊を伴う援助の場合には、ヘルパーの過度の負担とならないために、複数派遣をも可能なものとする。 B運営する事業所・従業者の実情とニーズに見合った制度に改める  同サービスをより充実させるためには、サービスの現場で問題視されている内容の改善こそが必要である。これらの問題を、制度において解決することで、安定的なサービスが実現できる。 【改善項目】 ● 報酬単価   利用時間の長短にかかわらず単価が下がらないように設定する。 ● 時間設定   報酬の請求において20分未満の利用の場合、請求できないとされているので、1日2回の利用の場合、その間の時間を概ね2時間以上あけるという基準を廃止する。 ● 事務処理加算   視覚障害の利用者に対して、点字やメール配信、その他の音源データや拡大文字による請求明細書等の発行を行っている場合、事務処理加算を設定する。 ● 特定事業所加算   同行援護事業所でも取りやすい方式に改める。 制度の改善を通して、同行援護を支える事業所と従業者を、まずは安定化させる   ↓ この安定化の実現こそ、利用者が安心してサービスを利用するための基礎となる 15ページ〜17ページ 平成30年度障害福祉サービス等報酬改定に関する意見等(詳細版)3.その他の障害福祉サービス  (1)問題点の整理(意見・提案を行う背景、論拠) @居宅介護 ○ 65歳問題 これまで障害福祉サービスの居宅介護を利用していた視覚障害者が、65歳になり介護保険に移行することにより、様々な問題が発生している。  ・視覚障害者の場合、支援区分は低く、低所得者が大半であるにもかかわらず、障害福祉サービスの際に発生しなかった負担が発生する  ・65歳以後でも、障害福祉サービスとして居宅の介護が利用できるにもかかわらず、自治体の無理解により、強制的に介護保険への切り替えが行わる  ・視覚障害者が求める居宅介護は、一般的な介護とは異なる内容が多く、介護保険では対応できない内容が多い(情報提供、代筆代読、等)   → 多くの視覚障害者は、使い慣れた障害福祉サービスの「居宅介護」を今までと同じように利用したい A共同生活援助(グループホーム)  ○ 視覚障害者の特性に対する理解 他の障害者と同居をすると視覚障害者が望むサービスが理解されず、孤立することがある。  ・視覚障害者と他の障害者、または視覚障害者の利用者と施設の職員でコミュケーションが図りづらい(精神や発達障害が多い施設では、例えば、職員の方も精神障害の利用者を基準にコミュニケーションを図るため、視覚障害者との意思疎通が難しいことが多い)   → 職員や施設は視覚障害者の特性を理解しておらず、満足なサービスが提供されていない   → 視覚障害者専用のグループホームを求める声も多く、成功例もある(福井県福井市、等) @+A 視覚障害者が持つ特性が理解されず、サービスが満足に実施されていない B就労移行支援、就労継続支援 ○ 運営上の問題について 食事提供体制加算の廃止(平成30年3月31日)、目標工賃達成加算の要件(工賃実績が前年度以上)等、運営において厳しい要件が多い。   → 支えるべき事業所が経営に苦しい制度設計になっている C児童発達支援 ○ 視覚障害児固有の問題 視覚障害児は、目の見える子に比べて食事動作の獲得に時間を費やす。また、偏食等の問題を抱える子供も少なくない。   → 療育の一環として食事指導に取り組んでいるが、食事提供加算が制度化されていないため、保護者の負担になっている B+C 視覚障害者が持つ特性により、事業所や家族にも負担がかかっている @〜Cのまとめ 視覚障害者の特性が制度等に反映されていないことで、視覚障害当事者、事業所、家族等に負担がかかり、サービスが満足に実施されていない (2)意見・提案の内容 ○ サービスの実施や制度設計においては、視覚障害者の特性を反映した改善が必要である。 @居宅介護 ● 65歳問題を解決し、当事者の希望で障害福祉サービスの「居宅介護」が受けられるようにして欲しい ● 今後の共生型サービスの実施において、視覚障害者の特性を理解した制度設計を行って欲しい A共同生活援助(グループホーム)  ● 視覚障害者を中心とするグループホームの設置が可能となる条件や要件(加算)等を設定して欲しい ● 施設職員等が視覚障害者の特性を理解した上で従事して欲しい B就労移行支援、就労継続支援 ● 食事提供体制加算の廃止の撤回、目標工賃達成加算の要件緩和を行い、視覚障害者に特化した事業所の経営を安定させて欲しい C児童発達支援事業 ● 保護者の負担を軽減し、安心した療育が提供できるようにするため、食事提供加算の基準を追加して欲しい 18ページ〜31ページ 参考資料 1.自立訓練(機能訓練) ※注意 1−(5)以外の資料は、全て次の調査からの資料になる。 厚生労働省 平成28年度障害者総合福祉推進事業 視覚障害者のニーズに対応した機能訓練事業所の効果的・効率的な運営の在り方に関する調査研究事業 なお、1−(5)は、視覚障害者の生活訓練の現状(2016)(日本ライトハウス養成部)からの資料になる。 参考資料1−(1) 障害当事者 : 生活上必要な動作の自立度に対する満足度と改善希望 対象者 : 視覚障害として生活が困難になった10年未満の視覚障害者 225名 @生活上必要な動作の自立度に対する満足度 ・満足 24% ・満足していない 64% ・わからない 10% ・無回答 2% A生活上必要な動作の自立度に対する改善希望 ・改善したい 69% ・改善したくない 18% ・わからない 10% ・無回答 3% ○ 6割以上の視覚障害者が日常生活の改善を希望している  → 訓練に対するニーズは非常に高い 参考資料1−(2) 障害当事者 : 訓練を受けた年齢について 対象者 : 機能訓練実施施設(5施設)と機能訓練以外での視覚リハ実施施設(7施設) ※平成27年度実績 @機能訓練施設 ・59歳以下 62% ・60代 23% ・70代 13% ・80代以上 2% A機能訓練以外の施設 ・59歳以下 46% ・60代 26% ・70代 19% ・80代 9% ○ いずれも60代以上の高齢者が多い(障害者の高齢化)  → 訓練施設への移動が困難と感じる利用者も多い 参考資料1−(3) 障害当事者 : 訓練に対する希望について 対象者 : 全国の視覚障害当事者団体のうち、紹介先で訓練が安心して受けられると回答した団体(51団体) @利用者の要望に合わせて対応してくれる 50件 98% A申込後、すぐに対応してくれる 23件 45% B習得するまで訓練してくれる 37件 72% C訓練する場所が移動しやすい場所にある 19件 37% D利用者の自宅に出向いてくれる 45件 88% E費用の負担がない(少ない) 45件 88% Fその他 0件 0% ○ 当事者団体は「利用者の要望に合わす」「訪問での訓練」「費用負担がない(少ない)」訓練を求めている  → 実際の自立訓練(機能訓練)では実施できていない内容を希望している 参考資料1−(4) 障害当事者 : 訓練を受ける前の生活の場について 対象者 : 機能訓練実施施設(5施設)と機能訓練以外での視覚リハ実施施設(7施設)  ※平成27年度実績 @自宅 98% A病院 1% B施設入所 1% Cその他 0% ○ 98%の視覚障害当事者は、訓練開始時に自宅で生活している  → 病院等からの紹介は少ない  → 視覚障害者は、訓練への繋がりが他の障害と大きく異なっている 参考資料1−(5) 訓練施設 : 視覚障害リハビリテーションの実施施設の状況について 対象者 : 全国の視覚障害リハビリテーション実施施設(81団体) @指定障害者支援施設 13件 18% A視聴覚障害者情報提供施設(点字図書館) 15件 21% B当事者団体 11件 16% C盲導犬訓練施設 7件 10% D指定障害者サービス事業所 6件 8% Eその他 19件 27% ○ 自立訓練(機能訓練)の実施機関(=指定障害者支援施設)は15%未満となっている  → 視覚リハが自立訓練(機能訓練)では実施しずらい状況を示している 参考資料1−(6) 訓練施設 : 人員配置(常勤換算)について 対象者 : 機能訓練実施施設(5施設)と機能訓練以外での視覚リハ実施施設(7施設)  ※平成27年度実績 @機能訓練 ・9名以上 2件 ・6名以上9名未満 3件 A非機能訓練 ・6名以上9名未満 1件 ・3名以上6名未満 2件 ・3名未満 3件 ・未回答 1件 ○ 自立訓練(機能訓練)以外の施設では、1名から8名まで地域差がある  → 自立訓練(機能訓練)以外の訓練も安定的な運営は行われていない 参考資料1−(7) 訓練施設 : 施設運営上の課題について 対象者 : 機能訓練実施施設(5施設)と機能訓練以外での視覚リハ実施施設(7施設)  ※平成27年度実績 @機能訓練 ・利用者の確保が困難 80% ・利用希望者が多すぎて対応が困難 20% ・利用者対応の時間の確保が困難 60% ・専門家の確保が困難 60% ・採算がとれず経営が困難 60% ・ニーズとサービスが不一致 20% ・通所に対する同行援護の利用制限 80% A非機能訓練 ・利用者の確保が困難 0% ・利用希望者が多すぎて対応が困難 42.9% ・利用者対応の時間の確保が困難 57.1% ・専門家の確保が困難 71.4% ・採算がとれず経営が困難 42.9% ・ニーズとサービスが不一致 42.9% ・通所に対する同行援護の利用制限 0% ○ 自立訓練(機能訓練)実施機関の課題     利用者の確保、同行援護の利用制限 ○ 自立訓練(機能訓練)以外の実施機関の課題  専門家の確保 参考資料1−(8) 訓練施設 : 視覚リハ実施施設の実施体制について 対象者 : 機能訓練実施施設(5施設)と機能訓練以外での視覚リハ実施施設(7施設)  ※平成27年度実績 @機能訓練 ・常勤換算職員数(平均)@ 8.3人 ・利用定員(平均)A 18.4人 ・のべ利用者数/244日(平均)B 12.2人 ・職員:利用者(A/@) 2.2人 ・職員:利用者(B/@) 1.5人 A非機能訓練 ・常勤換算職員数(平均)@ 3.7人 ・利用定員(平均)A なし ・のべ利用者数/244日(平均)B 4.0人 ・職員:利用者(A/@) 除外 ・職員:利用者(B/@) 1.1人 ○ 職員と利用者の人員配置比率は、いずれも「1:2.2」以下で運営を行っている         ※制度で人員配置比率は「1:6」 参考資料1−(9) 訓練施設 : 訓練の実施体制について 対象者 : 機能訓練実施施設(5施設)と機能訓練以外での視覚リハ実施施設(7施設)  ※平成27年度実績 @機能訓練 ・歩行 A.職員:利用者が1:1の場合 100% B.職員:利用者が1:複数の場合 0% ・パソコン A.職員:利用者が1:1の場合 0% B.職員:利用者が1:複数の場合 100% ・点字 A.職員:利用者が1:1の場合 40% B.職員:利用者が1:複数の場合 60% ・ADL A.職員:利用者が1:1の場合 100% B.職員:利用者が1:複数の場合 0% ・ロービジョン A.職員:利用者が1:1の場合 80% B.職員:利用者が1:複数の場合 20% A非機能訓練 ・歩行 A.職員:利用者が1:1の場合 100% B.職員:利用者が1:複数の場合 0% ・パソコン A.職員:利用者が1:1の場合 71.4% B.職員:利用者が1:複数の場合 28.6% ・点字 A.職員:利用者が1:1の場合 85.7% B.職員:利用者が1:複数の場合 14.3% ・ADL A.職員:利用者が1:1の場合 85.7% B.職員:利用者が1:複数の場合 14.3% ・ロービジョン A.職員:利用者が1:1の場合 85.7% B.職員:利用者が1:複数の場合 14.3% ○ 歩行、ADL、ロービジョン訓練は安全の確保や個別性の高さから、マンツーマンでの手厚い対応が中心となっている  → 視覚障害者の訓練は「1:複数」の訓練が実施しづらい 参考資料1−(10) 訓練施設 : 自立訓練(機能訓練)事業所における看護師の業務について 対象者 : 機能訓練実施施設(5施設)  ※平成27年度実績 @訓練 481分 50.5% Aその他 472分 49.5% ○ 必置している看護師の業務のうち、5割が訓練業務であった 参考資料1−(11) 訓練施設 : 機能訓練への参入をしない理由について 対象者 : 自立訓練(機能訓練)以外で視覚障害リハを実施している施設(12施設) @施設設備基準を満たしていない 57.1% A人員配置基準を満たしていない 71.4% B採算が見込めない 57.1% C利用期間が実態と合わない 42.9% D利用手続きが実態と合わない 57.1% Eその他 14.3% ○ 人員配置基準を満たしていない、採算が見込めない等、視覚リハを行わない施設は、現状の制度では実施が難しいと回答している 参考資料1−(12) 訓練施設 : 歩行訓練士等養成施設出身者の各訓練への関わり 対象者 : 機能訓練実施施設(5施設)と機能訓練以外での視覚リハ実施施設(7施設)  ※平成27年度実績 @機能訓練 ・歩行 A.養成施設出身者 100% B.その他 20% ・パソコン A.養成施設出身者 100% B.その他 60% ・点字 A.養成施設出身者 100% B.その他 80% ・ADL A.養成施設出身者 80% B.その他 80% ・ロービジョン A.養成施設出身者 100% B.その他 40% A非機能訓練 ・歩行 A.養成施設出身者 100% B.その他 0% ・パソコン A.養成施設出身者 85.7% B.その他 57.1% ・点字 A.養成施設出身者 100% B.その他 57.1% ・ADL A.養成施設出身者 100% B.その他 28.6% ・ロービジョン A.養成施設出身者 71.4% B.その他 0% ○ 歩行訓練士等養成施設出身者が訓練実施の中心的な役割を担っている 参考資料1−(13) 訓練施設 : 機能訓練施設が視覚リハを実施しない理由 対象者 : 視覚リハを実施していない自立訓練(機能訓練)施設(29施設) @サービス対象地域に対象者がにあ、あるいは少ない 9.1% A同じ地域で訓練を実施している施設がある 18.2% B訓練に関する専門性を有する職員がいない 86.4% C経営的に採算がとれない 4.5% Dその他 18.2% ○ 視覚リハを実施しない施設は、訓練に関する専門性を有する職員がいないことで、視覚障害者への訓練が実施できていない 参考資料1−(14) 訓練施設 : 職員の勤務時間における訓練と移動にかかる割合 対象者 : 機能訓練実施施設(5施設)と機能訓練以外での視覚リハ実施施設(7施設)の職員:合計28名職員  ※平成27年度実績 @機能訓練 ・訓練 41% ・移動 5% ・その他 54% A非機能訓練 ・訓練 33% ・移動 16% ・その他 51% ○ 訪問中心に行っている自立訓練(機能訓練)以外の施設の職員は、1日の勤務時間の16%が移動時間になっている ○ 機能訓練施設の職員に比べ、移動の時間が3倍になっている 32ページ 参考資料 2.同行援護 参考資料2−(1) 平成28年 同行援護従業者養成研修の受講状況等調査「平成30年3月31日以降の事業の展望について」 調査 厚生労働省(平成28年度調査) @現行のまま継続 事業所数5598件 割合84.6% A事業規模を拡大 事業所数375件 割合5.7% B事業規模を縮小 事業所数327件 割合4.9% C事業を廃止 事業所数307件 割合4.6% D未定 事業所数11件 割合0.2% 合計 事業所数6661件 割合100% ○ 全国の事業所の約1割(B+C)は、同行援護事業の縮小や廃止を検討しており、 同行援護従業者の安定的な供給が実施できない可能性が伺える ○ 事業の縮小や廃止を検討している事業所は、現状で安定的な収益が確保できていないことが検討理由の1つとして考えられる