愛盲時報 平成29年4月25日(火)第254号 目次  1.『対談』塩崎厚労大臣×竹下会長~2017年、展望を語る~  2.繰り返される悲劇 転落死亡事故、再び~「蕨駅」で~  3.日盲連 平成28年度2大調査事業 報告書まとまる  4.東京2020×日盲連スポーツ協議会~竹下会長&濱野協議会長・大橋副協議会長が虎ノ門へ~  5.東京都点訳・朗読奉仕員 平成29年度指導者養成講習会 受講者募集  6.ご寄付のお願いについて  7.奥付  *見出しの頭には「--(半角で2つ)」の記号が挿入されているので、検索機能を使って頭出しをする際にご利用下さい。  また検索の際、目次でご紹介した数字を続けて半角で入力すると、その項目に直接移動することができます。  (例)1をご希望のときは、「--1(すべて半角)」と入力。 (以下、本文) --1.『対談』塩崎厚労大臣×竹下会長~2017年、展望を語る~ 【写真】平成29年1月13日、厚生労働省大臣室にて記念撮影。塩崎恭久厚生労働大臣(中央)・日本盲人会連合 竹下義樹会長(左)・三宅隆情報部長(右)  平成29年1月13日、日本盲人会連合 竹下義樹会長と三宅隆情報部長が東京・霞が関の厚生労働省大臣室を訪問し、塩崎恭久厚生労働大臣と対談を行いました。両氏を迎えた塩崎厚生労働大臣は、竹下会長と再会を喜び、歓談は笑い溢れるものでありながらも、最後に竹下会長は視覚障害者の抱える諸課題を大臣に力強く訴えました。 ■平成28年を振り返り 竹下会長:大臣、本日はお忙しい中、お時間を頂きありがとうございます。 塩崎厚労大臣:こちらこそ、宜しくお願いします。 竹下:さっそくですが、平成28年は差別解消法などが施行された年です。大臣から所感を頂けますか。 大臣:平成28年を振り返ると、様々なことがありました。 4月には、障害者差別解消法や障害者雇用促進法が施行され、行政機関や事業者などに対し、障害を理由とする差別的取り扱いを禁止したり、障害のある方々への合理的配慮を求めることになりました。  平成18年12月に国連総会で障害者権利条約が採択されてから10年近く経ちましたが、これらの法律の施行は関係する皆様方の努力の成果もあって結実したものと考えており、感慨深く受け止めています。  また、5月には、障害者の方ご自身が望む地域生活の支援や、障害児支援のニーズの多様化へのきめ細かな対応などを行う、障害者総合支援法等の改正法が成立するなど、大きな動きもありました。現在、平成30年4月の施行に向けて、準備を進めています。  一方で、7月、神奈川県の障害者支援施設で多くの障害者の命が奪われるという、大変悲しい事件が起きました。二度とこのようなことが起こらぬよう、差別や偏見のない、全ての人々が、お互いの人格と個性を尊重し合いながら共生できる社会の実現に向けて取り組みを進めていかねばならないと考えています。 竹下:本当にいろいろな出来事がありました。また、昨年は平成医療学園専門学校と宝塚医療大学が、国に対して、あはき法19条による養成施設設置の非認定処分を取り消すことを求める訴訟を起こしました。  今回の訴訟は視覚障害者の実態を無視したもので、日盲連としても国を全力で支えていく所存です。厚生労働省としてどのようにお考えになり、対処していこうとしているのかお伺いします。 【写真】日盲連の活動から(1):10月14日に日本盲人福祉センターで「あはき法19条違憲訴訟に関する対策会議」が開催されました。冒頭で挨拶をする竹下義樹会長。 大臣:あん摩マッサージ指圧師は、古来より、視覚障害者の皆さんにとって重要な職業であると認識しています。このため、あはき法19条において、その職域の優先確保を図ってきました。  特に中途失明者や全盲の方にとっては、職業の選択肢が少ないことから、今日においても、あん摩マッサージ指圧師を選ぶしかない方がいらっしゃると承知しております。  原告は、あはき法19条が職業選択の自由等の憲法違反であるという主張を行っていますが、国としては、あはき法19条の必要性や合憲性について主張していく所存です。 竹下:ありがとうございます。さて、昨年来、視覚障害者の駅ホームからの転落事故が続きました。無念にも人生を閉じられた仲間の悲しみを思い、とても胸を痛めています。視覚障害者の安全な外出のため、障害者の福祉を担当する厚生労働省が行政の中心になって考えてほしいと思います。大臣のお考えをお聞かせ下さい。 【写真】日盲連の活動から(2):8月15日に東京メトロ銀座線青山一丁目駅で発生した盲導犬使用者の転落死亡事故を受けて、日盲連は19日に現地調査を行いました。 大臣:昨年8月に起こった青山一丁目駅のホーム転落事故は、盲導犬を伴っている方でしたが、このほかにも視覚障害者の駅ホームからの転落 事故が起こっていることについては、私も大変、心を痛めています。  ホームドアの設置などハード面の対策はもちろんのこと、緊急時には周囲の適切な声かけも重要です。厚生労働省においても、啓発イベントや政府インターネットテレビで、盲導犬使用者に対して積極的に声かけしてほしい旨を国民の皆様に強くお願いしていますし、東京メトロ等、各鉄道会社でも、ポスターやアナウンスなど積極的に行って頂いております。  一方、視覚障害者の方の外出を支援するサービスである同行援護については、入院中の病院からの外出でも利用できることを明確にするなど、視覚障害者の支援の充実を図りました。  厚生労働省としては障害のある方々について、地域における正しい理解が浸透し、周囲の人々がそっと寄り添うことができるような社会を目指したいと考えております。引き続き皆様の声をよくお聞きしながら、国土交通省をはじめ関係省庁と連携して全力を尽くしていきたいと思います。 ■マラケシュ条約の批准にむけて 竹下:続いて、マラケシュ条約批准にむけて、具体的には読書バリアフリー法・情報コミュニケーション支援法について伺いたいと思います。視覚障害者への情報保障として、厚生労働省は意思疎通支援を含めて今後どのような充実を図っていくお考えでしょうか。 大臣:視覚障害のある方々への情報保障を図ることは大変重要なことであり、そのための施策が多岐にわたっていることから、政府一体となって進めていく必要があると考えております。厚生労働省としても様々な取り組みを進めています。  具体的には、点字刊行物や視覚障害者用の録音物の製作、貸出等を行う「点字図書館」を全国に設置し、また、代筆・代読等による意思疎通支援を実施する等の支援を行っています。  マラケシュ条約については、文化庁を中心に関係団体との意見調整を図り、批准にむけた検討が進められていると聞いております。また、読書バリアフリー法や情報コミュニケーション支援法についても、文化庁をはじめ関係省庁と情報共有しながら、対応を考えてまいります。 ■65歳問題について 竹下:視覚障害者の実態として中途失明者が増えていて、さらに高齢化も進んでいます。障害福祉サービスと介護保険サービスの制度の谷間でトラブルが多い現状を踏まえ、可能であれば65歳前後でも障害福祉サービスを受け続けられるようにしてほしいと望みますがいかがでしょうか。 大臣:現在の社会保障制度の原則として、「保険優先の考え方」があります。この考え方に基づき、障害福祉サービスを利用されている方が65歳になった場合にも、原則として介護保険サービスをまずご利用頂くことになっています。  一方で、こうした「介護保険優先原則」の下では、障害福祉制度と介護保険制度の利用者負担の上限が異なることによって、利用者負担が増加してしまうことや、長年慣れ親しんでいた障害福祉サービスの事業所ではなく、介護保険の事業所を利用することに戸惑いを感じる方もいらっしゃるなどといった課題があります。  こうした課題に対応するため、今般の障害者総合支援法の改正において、一定の要件を満たす高齢の障害者の方に対し、介護保険サービスの利用者負担の軽減措置を盛り込みました。また、平成28年12月9日の社会保障審議会介護保険部会の報告書として、「介護保険サービスの一類型として共生型サービスを位置づけ、障害福祉サービス事業所が介護保険事業所の指定を受けやすくするための見直しを行うことが適当である」といった内容が取りまとめられましたので、これを踏まえ、障害のある方が円滑に必要なサービスを利用できるよう取り組みを進めてまいりたいと考えております。  さらに、「同行援護」等、介護保険サービスには相当するものがない障害福祉サービスについては、65歳以降も障害者総合支援法に基づき給付を受けることができること等を既に自治体に周知しておりますが、引き続き丁寧な説明を行うことで、両制度の関係に対する不安や懸念の解消に努めてまいります。 ■対談、結びにあたり 竹下:最後に大臣から、全国の当事者に一言頂けましたら幸いです。 大臣:視覚に障害のある方々が、安心して行きたい場所へ移動でき、円滑に情報を取得し、また、他者とのコミュニケーションが図れるよう、支援体制を整えることは大変重要なことであり、ハード面だけでなくソフト面からの取り組みも必要だと考えております。  具体的には、外出などの移動を支援する「同行援護」や、文書読み上げ装置等の支援機器の給付、点訳・代読・代筆などを支援する「意思疎通支援」の充実などにより、支援の強化に努めています。  今後とも、視覚に障害のある方々の社会参加と自立に向けて、関係者の皆様のご意見を丁寧にお伺いしながら施策の一層の充実に努めてまいりたいと考えております。 竹下:大臣、本日はありがとうございました。 大臣:こちらこそ、ありがとうございました。 --2.繰り返される悲劇 転落死亡事故、再び~「蕨駅」で~ 【写真】現場を調査する橋井常務理事(中央)  1月14日にJR京浜東北線 蕨駅(埼玉県蕨市)で発生した、盲導犬を連れた男性のホーム転落死亡事故をうけ、18日に日本盲人会連合 橋井正喜常務理事と三宅隆情報部長が調査のため事故現場を訪れました。  2人は調査の中で、実際に男性が利用していた改札からホームへ下りるルートなどを歩き、点字ブロックや周囲の音を確認しました。 【写真】故人に対し黙祷を捧げる橋井常務理事(奥)と三宅情報部長(手前)。多くの報道陣が見守ります。  蕨駅のホームは「島式」と呼ばれる構造で、中央にホームとコンコースをつなぐ上り階段が2か所、「ハ」の字形に配置されています。ホームの両端には、内方線付き点状ブロックが敷設されていて、点字ブロックの状態はよく、十分認識できるものでした。  しかしながら問題点として、宇都宮線・高崎線が通過する際、階段裏の空間では音の反響が大きく、アナウンスなど周囲の音がかき消されることが指摘されました。  毎日新聞と日盲連が実施したアンケート調査では、視覚障害者222人のうち、約31.5%がホームからの転落経験があり、約72.9%が「いつも利用する駅」でと回答しました。「慣れた駅こそ怖い」と橋井常務理事は警鐘を鳴らします。 【参考資料】毎日新聞・日本盲人会連合が共同で実施した「視覚障害者の鉄道駅に関するアンケート調査」の集計結果は、日盲連WEBサイトで公開しています。「法律・制度・資料」のページをご覧下さい。  URL:http://nichimou.org/legal-system-documentation/ 【写真】事故現場となったJR京浜東北線「蕨駅」のホーム --3.日盲連 平成28年度2大調査事業 報告書まとまる ■読み書きが困難な弱視(ロービジョン)者の支援の在り方に関する調査研究事業 (埼玉県民共済生活協同組合・大阪府民共済生活協同組合助成)  日本盲人会連合加盟団体・日本網膜色素変性症協会・弱視者問題研究会などに所属する弱視者1200名にアンケートを行い、回収された704人 (58.7%)の回答を分析し、弱視者が抱える「読み」と「書き」の悩みとその現状・課題などをデータとして集約、報告書にまとめました。  慶應義塾大学教授の中野泰志氏は、障害者支援の要である福祉制度と出会うまでに5年以上かかったと回答した当事者が約25%に上ったことを問題視し、とくに眼病が発症・悪化した際、患者が足を運ぶことが考えられる「眼科医」について、回答率が約13%に止まったことを課題としました。 【写真】サイトワールド 2016で開催されたシンポジウム ■視覚障害者のニーズに対応した機能訓練事業所の効果的・効率的な運営の在り方に関する調査研究事業 (厚生労働省 平成28年度障害者総合福祉推進事業)  機能・非機能訓練事業所および当事者を対象に実施されたアンケート・現地調査などの結果を踏まえ、事業所の現状と課題を整理、視覚障害者への訓練が全国で安定的に実施されるためには何が必要かを分析し、報告書として取りまとめました。  2月に開催されたシンポジウムでは、日盲連 竹下義樹会長が歩行訓練を「自己実現の面で重要」と説くも、基調報告で名古屋市総合リハビリテーションセンター視覚支援課長田中雅之氏から伝えられたのは、人員不足で疲弊した施設と厳しい経営状況、地域間格差に胸を痛める現場の声でした。 【写真】日本盲人福祉センターで開催されたシンポジウムから  両調査の報告書を、日盲連 WEBサイト(http://nichimou.org/)で全文掲載(墨字・点字・音声データ)しています。ぜひご覧下さい! --4.東京2020×日盲連スポーツ協議会~竹下会長&濱野協議会長・大橋副協議会長が虎ノ門へ~  東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会開催に向けて気運が高まりを見せる中、2月14日、日本盲人会連合竹下義樹会長と日盲連スポーツ協議会 濱野昌幸会長・大橋博副会長が要望書を手に、虎ノ門(東京都港区)にあるスポーツ庁と公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会を訪問しました。  要望書では、どのようなことを求めたのでしょうか。各項目について、詳しく解説します。 【写真】大会組織委員会にて。大会エンブレムが立体印刷されたボードを手に記念撮影。左から竹下会長、濱野協議会長、大橋副協議会長。 ■要望書の各項目について 要望1 選手以外の視覚障害者に対し大会への参加と活躍できる機会が与えられることを要望します。  本項では、オリンピック・パラリンピックが観覧型イベントの域を出ていない状況を鑑み、選手以外の視覚障害者を大会の役員・スタッフなどとして、各所で採用することを求めています。 要望2 大会の競技会場において、日本古来の視覚障害者スポーツを紹介する場所が設置されることを要望します。  本項では競技種目には選ばれてはいないものの、多くの視覚障害者に親しまれている、グランドソフトボール・フロアバレーボール・サウンドテーブルテニスといった、日本の視覚障害者スポーツを世界にアピールするために、紹介する特設ブースや体験会などを開催する場を提供するよう要望しています。 ■スポーツ協議会の今後の動きにご注目下さい!  濱野協議会長にとって、省庁などを訪問しての要望活動は初めてのことでした。大舞台で緊張されたとのことですが、できることできないことが明確になったと、次の一歩を踏み出す大きな手応えを得たようです。2020年を目指し、スポーツ協議会の取り組みは続きます。 【写真】濱野協議会長を、竹下会長・大橋副協議会長などベテラン陣がしっかりサポートします。 --5.東京都点訳・朗読奉仕員 平成29年度指導者養成講習会 受講者募集  日本盲人会連合では、東京都の委託による「点訳・朗読奉仕員指導者養成講習会」を実施しています。下記の要領で実施しますので、お知り合いのボランティアなど関係する方々にご案内下さい。宜しくお願いいたします。  対象:点訳または朗読(音訳)の知識と経験があり、受講後、都内で活動できる方。  期間:平成29年7月6日(木)~平成30年2月15日(木)  点訳:全20回-原則(火)の14時~16時  朗読(音訳):全25回-原則(木)の14時~16時  定員:点訳30人、朗読(音訳)20人  申込書請求:5月1日~5月31日(必着)に希望コース名を明記した用紙と、住所・氏名を記入し92円切手を貼った返信用封筒を同封 の上、下記までご郵送下さい。  お申し込み時に課題提出と来館による試験があります。  詳細は、日盲連WEBサイト(http://nichimou.org/)をご覧下さい。 【写真】平成28年度修了生の皆様と記念撮影(上:点訳/下:音訳) 【お申し込み・お問い合わせ先】 〒169-8664 東京都新宿区西早稲田2-18-2 日盲連点字図書館講習会担当 電話:03-3200-6160/FAX:03-3200-7755 --6.ご寄付のお願いについて  日本盲人会連合は視覚障害者自身の手で、<自立と社会参加>を実現しようと組織された視覚障害者の全国組織です。  1948年(昭和23年)に全国の視覚障害者団体(現在は、都道府県・政令指定都市61団体が加盟)で結成され、国や地方自治体の視覚障害者政策の立案・決定に際し、当事者のニーズを反映させるため、陳情や要求運動を行っています。  活動内容は多岐にわたりますが、そのために必要な経費の確保は、厳しい財政の中困難を極めています。  視覚障害者福祉の向上を目指し、組織的な活動を維持していくため、皆様からの特段のご厚志を賜りますよう、何とぞ宜しくお願い申し上げます。 ■ゆうちょ銀行 記号番号 00160-5-536104 加入者名 社会福祉法人日本盲人会連合 ■みずほ銀行 店名 高田馬場支店 預金種目 普通 口座番号 2868101 カナ氏名(受取人名) フク)ニホンモウジンカイレンゴウ ※領収証が必要な方、また本連合が振り込み手数料を負担する専用の振込用紙もご用意していますので、ご希望の方はご連絡下さい。 【お問い合わせ先】日本盲人会連合 電話:03-3200-0011 --7.奥付 愛盲時報 平成29年4月25日(火)第254号 ※この愛盲時報は鉄道弘済会の不動産賃貸事業などの益金等、日本盲人福祉委員会の愛盲シール維持会費の中から贈られた寄付金などで作られたものです。 発行所:社会福祉法人 日本盲人会連合  〒169-8664東京都新宿区西早稲田2-18-2 発行人:竹下 義樹 / 編集人:三宅 隆 電話:03-3200-0011/FAX:03-3200-7755 URL:http://nichimou.org/ Eメール:jouhou@jfb.jp(情報部) 以上で、愛盲時報 平成29年4月25日(火)第254号を終わります。