平成29年3月13日 毎日新聞・日本盲人会連合 視覚障害者の鉄道駅に関するアンケート調査 調査結果 毎日新聞東京本社社会部 日本盲人会連合 【アンケートについて】                                        (1)実施目的 鉄道駅の利用について、全国の視覚障害者が置かれている状況を把握するために実施した。 (2)調査方法 (1)の目的を全国レベルで調査するため、主要都市圏に在住する視覚障害者に対して、以下の方法で調査を実施した。 ・無記名アンケート調査(メール回答) ・対象者数  300名(日本盲人会連合の会員) ・配布地区  東京、大阪、名古屋、札幌、仙台、広島、高松、福岡 ※人口数に応じて各地区での配布数を調整した。 (3)調査期間   平成28年12月8日(木)〜12月16日(金) (4)回収率   222名/300名(74.0%)   (5)回答者の傾向 ・男女比は男性に若干片寄っている(男性67.6%)。 ・視覚障害の程度は全盲者に片寄っており、弱視(ロービジョン)の回答者が少ない(全盲63.5%、弱視32.0%)。 ・単独歩行が出来る視覚障害者からの回答が多いことから、単独で駅利用をしている回答者の回答が多く集まっている。また、一般的には、全盲者が単独歩行する割合は弱視者に比して低いと考えられるが、回答総数に占める単独歩行する全盲者の割合が高くなっている。 ・年齢、職業は視覚障害者の平均に見合った傾向になっている。 (6)調査結果の概要 @駅ホームでの転落について ・回答した視覚障害者の31.5%が駅ホームからの転落経験があった。 ・転落をした時期は大きく差があったが、駅ホームでの設備が充実しはじめた近年でも転落をしている傾向があった。 ・駅ホームからの救出は「駅員や乗客に助けられた(58.6%)」が多いが、「自力で回避(48.6%)」した回答者も多かった。 ・転落した原因は「勘違いをした(72.9%)」や「方向性を失った(52.9%)」など、方向を確認出来ないことが原因となる傾向があった。 ・転落した駅は「いつも利用している駅(72.9%)」で転落をした回答者が多かった。 A駅ホームの安全性の確保について ・安全性の確保に必要な内容は、ホームドアの設置や駅員の増員など「外部的要因」を指摘する回答者(平均77%)が多かった。ただし、歩行訓練のように視覚障害者本人に関わる内容(内部的要因)を指摘する回答者(63.5%)も多かった。 ・ホームドアの設置については「時間をかけすぎている(51.8%)」と思う回答者が多かった。 ・ホーム上で困ることは、「点字ブロックの上に荷物を置く(89.3%)」と「スマートフォンの操作をしている人とぶつかる(79.0%)」が多く、視覚障害者では安全回避が出来ないことに対して不満が強い傾向があった。 ・国や社会全体に対しては、バリアフリーの実現に向けて「何らかの措置や対策を取って欲しい(88.7%)」と思う回答者が多かった。 問1 あなたの個人データに関する質問(件数、パーセンテージの順に掲載)                          (1)性別(回答者:222名) @男性 150 67.6    A女性 71 32.0    無回答 1 0.4    (2)年齢(回答者:222名) @10歳未満 0 0.0    A10〜19歳 0 0.0    B20〜29歳 3 1.3    C30〜39歳 13 5.8    D40〜49歳 35 15.8    E50〜59歳 43 19.4    F60〜69歳 81 36.5    G70〜79歳 43 19.4    H80歳以上 0 0.0    無回答 4 1.8    (3)お住まいの都道府県と市区町村(自由記述) 集計対象外 ・回答率が規定数に満たないため、集計対象外とする。 ・ただし、配布をした各都市からの回答は、各都市別の配布数に見合った割合で回答が回収できている。 (4)職業(回答者:222名) @自営業 68 30.6    A会社員 31 14.0    B学生 4 1.8    C無職 70 31.5    Dその他 49 22.1    無回答 0 0.0    (5)視覚障害の程度(回答者:222名) @全盲 141 63.5    A弱視(ロービジョン) 71 32.0    B色覚障害 2 0.9    Cその他 5 2.3    無回答 3 1.3    (備考)A弱視に回答をした71名の内5名はB色覚障害(4名)とCその他(1名)に複数回答をしていた。この回答者については、A弱視として集計し、B色覚障害とCその他からは除外した。なお、複数回答を含めた場合、B色覚障害は6名(2.6%)Cその他は6名(2.6%)になる。 (6)視覚障害になり、歩行や日常行動が著しく困難になった時期(回答者:222名) @3年以内の間 9 4.1    A3年以上10年以内の間 41 18.5    B10年以上20年以内の間 43 19.4    C20年以上前 109 49.1    D特に困難では無い 19 8.5    無回答 1 0.4    (7)単独歩行の際に主に利用する方法(複数回答可)(回答者:222名) @白杖 163 73.4    A盲導犬 19 8.6    B目視で確認 37 16.7    C単独歩行は出来ない 21 9.5    無回答 0 0.0    問2 鉄道利用に関する質問(件数、パーセンテージの順に掲載)                        (1)鉄道はどの程度の頻度で利用していますか(回答者:222名) @毎日 48 21.6    A1週間に数回 81 36.5    B月に数回 67 30.2    Cあまり利用しない 26 11.7    無回答 0 0.0    (2)鉄道を利用する際に優先する基準は何ですか(複数回答可)(回答者:222名) @駅施設に安全性がある 80 36.0    A駅が混雑していない 46 20.7    B目的地までの到着時間が短いルート 123 55.4    Cその駅や鉄道しか、選択肢はない 126 56.8    Dその他  24 10.8    無回答 0 0.0    (3)駅のホームから転落した経験はありますか。(回答者:222名) @ある 70 31.5    Aない 152 68.5    無回答 0 0.0    (備考) 「@ある」を答えた回答者は設問(4)〜(6)へ 「Aない」を答えた回答者は問3へ             (4)転落された際の状況を具体的に教えて下さい @事故にあった時期(自由記述)(転落経験あり:70名) 最近〜5年前 11 15.7    6年前〜10年前 9 12.9    11年前〜20年前 19 27.1    21年以上前 29 41.4    対象外  2 2.9     無回答 0 0.0    (対象外の内訳)回答者が事故にあった年齢を記載。回数を記載。 A事故にあった場所 集計対象外 ・回答者の97%が実際に転落をした駅名を回答している。ただし、転落時期が古い回答が多く含まれており、事故駅の現在の状況と異なる可能性が高いため、集計対象外とした。 Bどのような怪我を負ったか(自由記述)(転落経験あり:70名) 怪我 なし 29 41.4    軽傷(打撲、擦り傷など) 28 40.0    重症(骨折、靭帯損傷など) 13 18.6    無回答 0 0.0    Cどのような形で助かったか  ※複数回答あり(転落経験あり:70名) @自力での回避 34 48.6    A駅員に救出してもらう 20 28.6    B周りの乗客に救出してもらう 21 30.0     無回答 1 1.4    (備考)設問では複数回答を求めてはいないが、「B周りの乗客が非常ベルを鳴らしてA駅員が救出する」など、駅員と乗客が連携するケース(計6件)があったため、このケースに限り複数回答として集計した。 (5)ホームから転落をした理由を教えて下さい(複数回答可)(転落経験あり:70名) @何らかの理由で方向感覚を失った 37 52.9   A人とぶつかり、進んでいた方向が変わっていた 3 4.3   B勘違いをして踏み外した 51 72.9   C落ちた理由が分からない 3 4.3   Dその他 25 35.7    無回答 1 1.4   (6)転落した駅はどのような駅ですか  ※複数回答あり(転落経験あり:70名) @いつも利用している駅 51 72.9    A初めての駅 9 12.8    Bその他 14 20.0     無回答 0 0.0    (備考)設問では複数回答を求めてはいないが、複数の転落経験がある回答者4名が、@いつも利用している駅とA初めての駅の両方で転落経験があったため、複数回答を行っている。そのため、複数回答可として集計をした。 問3 鉄道の安全対策に関する質問(件数、パーセンテージの順に掲載)                           (1)転落を防ぐため効果的だと思う対策は何ですか(複数回答可)(回答者:222名) @ホームドアの設置 206 92.8    A内方線付き点状ブロックの敷設 148 66.7    B駅員の増員配置 161 72.5    C第三者の声掛けの普及 170 76.6    D自身の注意力を高める(歩行訓練など) 141 63.5    Eその他 39 17.6     無回答 1 0.4    (2)駅での安全確保のため、ご自身で工夫していることはありますか(複数回答可)(回答者:222名) @事前に調べた安全なルートを辿って移動している 114 50.9    A地面の形状、段差、ホーム端を常に確認しながら移動をしている 146 62.5    B周囲の音や人の動きを注意しながら移動している 173 77.2    Cなるべく混んでいる場所を避けて移動している 83 37.1    D分からなくなったら周りの駅員・利用者に助けを求める 144 64.3    Eその他 52 23.2    無回答 3 1.4    (3)国は鉄道各社によるホームドア設置のある駅を2020年までに全国で800駅にしようとしています(現状は665駅)。この国の方針をどう思いますか。  ※複数回答あり (回答者:222名) @800駅では少なく、設置に時間をかけすぎている 115 51.8    A設置目標は少ないが、費用がかかるので仕方がない 71 32.0    Bこれくらいの設置目標が妥当 7 3.2    Cその他  42 18.9    無回答 7 3.2    (備考) 設問では複数回答を求めてはいないが、20名近い回答者が複数回答を行ったため、複数回答可として集計をした。 (4)あなたが移動中に駅を利用する健常者の行動で困ることはありますか(複数回答可)(回答者:222名) @点字ブロックの上に立ち止まったり、荷物を置いたりしている 200 89.3    Aスマートフォンの操作に集中していて、ぶつかってしまう 177 79.0    B助けを求めても、誰も反応してくれない 61 27.2    Cその他 52 23.2    無回答 7 3.2    (5)駅を利用する健常者に対して、視覚障害の特徴で理解してほしいことは何ですか。(自由記述)(複数回答可)(回答数 38名/222名 14.9%) 白杖を持っていることに気付いてほしい 14 36.8    目が見えない・見えづらいことに配慮して欲しい 8 21.1    声のかけ方を工夫して欲しい 6 15.8    誘導の仕方を工夫して欲しい 3 7.9    周囲の音を聞き取りやすくして欲しい 3 7.9    弱視者への配慮をして欲しい 4 10.5    立ち止まっていることに気付かないことを理解して欲しい 1 2.6    (6)バリアフリー社会の実現のため、国や交通機関、社会が今後取り組むべきことはあると思いますか。また、その理由を教えて下さい。 (回答者:222名) @ある 197 88.7    Aない 6 2.7    無回答 19 8.6    「@ある」の理由(自由記述)(回答者:197名) 障害者理解、心の充実 58 29.4 ホームドアの早期設置 36 18.3 駅員等の声掛け、案内の充実 28 14.2 設備のユニバーサルデザイン化 34 17.3 その他 36 18.3 回答なし 46 23.3