愛盲時報 平成29年1月25日(水)第253号 ≪1.謹賀新年 平成二十九年一月≫ ・新年のご挨拶 日盲連会長 竹下義樹  皆さん、あけましておめでとうございます。昨年は一年間、皆さんのご協力のおかげで、日盲連の活動が一定の前進をみたのではないかと思います。  しかし、嫌なこと、つらいこともたくさんありました。昨年の4月には熊本地震があり、そして7月には神奈川県のやまゆり園というところで、重度の障害者の大量虐殺事件が起こりました。 何と言いましても私たちにとって大きなショックは、8月、10月に、東京と大阪で視覚障害の仲間が線路に転落して死亡したことであります。  大きな事故で、仲間の命が失われるということは、私たちが、本当の意味での日本の国がまだ安全ではない、ということを自覚した上で、国や行政に、そして社会の全体に現実を知っていただき、私たち自身もどういう工夫をすれば、安全で安心できる社会生活ができるかを考えなければならない、意識を私たち自身が持ち続けなければならないと思っております。今できる対策、今、私たちの安全を守るにはどうすればいいのか、ということを考え続け、一つ一つ前進を勝ち取ることが問われているのだろうと思います。この一年は、そうした命を守る一年にしていきたいと思っております。  また、昨年は障害者差別解消法が施行されましたが、昨年一年間でどれほどの社会的な変化が起こったでしょうか?率直なところ、大きな変化が起こったとは言えないと思います。その差別解消法を活かすのは私たち自身です。差別解消法に基づく私たちの声が、差別解消法を活かした私たちの活動が、今年も問われていくことになります。 一歩一歩前進することでしか社会は変わりませんが、その手段ともいうべき、武器ともいうべき、法律が与えられたのですから、私たちはさらに工夫していきたいと思っております。  ぜひ、この一年が皆さんにとっても幸せで、そして安心の持てる一年になることを願い、日盲連もその活動を続けることを誓って年頭の挨拶とします。 ・あん摩等法19条の訴訟に一丸となって 副会長 小川幹雄  明けましておめでとうございます。昨年中は皆様には大変お世話になりありがとうございました。今年も宜しくお願いします。  昨年提訴されたあん摩師等法19条を巡る裁判につきまして、皆様には傍聴などご支援をいただいております。  あはき業は400年にわたって先輩達が引き継いでくれた視覚障害者の唯一ともいえる生業です。視覚障害者の経済的・社会的自 立の基盤であり、日盲連を支えてきました。会員一丸となってこの裁判に勝利したいと思いますので、裁判官などに対するはがき陳情、署名活動、募金に引き続きご支援・ご協力をお願いします。 ・年頭のご挨拶 副会長 及川清隆  謹賀新年。全国の視覚障害者の皆様にはお健やかで初春をお迎えになられたこととお喜び申し上げます。昨年中は公私共々大変お世話になりました。本年も昨年同様ご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。  本年の抱負ですが、一つはあはき19条違憲訴訟仙台地裁での国勝訴支援活動に関係団体と強く連携して歩みたいと考えております。二つ目は、法人改革後の日盲連組織が円滑に機能して、日本の視覚障害者における日々の生活の福祉向上が一歩でも、二歩でも、前進するよう、竹下会長を支えて、微力ではありますが努力させていただきたいと思っています。 ・新春のご挨拶 副会長 伊藤和男  明けましておめでとうございます。本年も、どうぞ宜しくお願い申し上げます。  会員の皆様は、どのようなお正月をお迎えでしょうか。私は、例年初日を拝むため、家族と出かけることが通例となっています。ご来光を見ようと集まった人々が発する歓喜の声が、新たな年への希望を全身に吹き込んでくれるような気がしているのです。このような雰囲気の中で迎える正月が本当に好きです。  ところで、今年も、視覚障害者にとって厳しい現実が続きます。日盲連を通じて皆の力を結集し活動して行きましょう。 ≪2.日盲連が新春挨拶のため議員会館を訪問≫  1月10日、日本盲人会連合の竹下義樹会長・及川清隆副会長・橋井正喜常務理事・藤井貢組織部長が、新年挨拶のため東京・霞が関の衆議院議員会館・参議院議員会館を訪問しました。  日盲連顧問 衛藤晟一参議院議員や日盲連女性協議会顧問の髙階恵美子参議院議員をはじめとする36名の議員の事務室を訪ね、昨年一年間の本連合の運動へのご助力について感謝の意を伝えました。  また13日には、竹下会長と三宅隆情報部長が厚生労働省の大臣室を訪問し、塩崎恭久厚生労働大臣と面談を行いました。こちらにつきましては、次号(4月発行・第254号)で詳しくご報告する予定です。 ≪3.『大分・熊本は今』 竹下会長・及川副会長・藤井組織部長、被災地へ≫  熊本地震の発生から8ヶ月を迎えた12月、日本盲人会連合は18日と19日の2日間にわたり、被災地である大分県・熊本県を訪問しました。 【18日】竹下会長・及川副会長、大分へ  初日の18日、大分県盲人協会を訪れた竹下義樹会長・及川清隆副会長を迎えたのは、発災直後に立ち上げられた九州盲人会連合会現地対策本部の本部長を務め、被災状況の調査・当事 者支援という重責を担う大分県盲人協会の衛藤良憲会長と、羽田野廣司副会長をはじめとする協会関係者の方々でした。  懇談の席で衛藤会長からは「日本は災害列島。日盲連もその都度募金を行うのではなく、長期にわたって募金をしながら、プールする体制を作った方がいい」と見解が述べられ、竹下会長も応じる形でその重要性を認めました。 ・「陸の孤島」湯布院  被災者の体験談に続き、衛藤会長は大分県の被災状況を分析した結果として、別府・湯布院が顕著であったことを報告しました。  どちらも福祉避難所は設けられたものの、とくに湯 布院の方は盆地という地理的な条件に加え、観光客数に対し県民の行き来が少ないこと、それゆえに組織に所属していない当事者が多く今回の震災で孤立するケースが目立ったこと、このことを衛藤会長は「陸の孤島」という比喩を用いて課題としました。 他者との繋がりの重要性を再確認  今回の懇談を通して、当事者を繋ぐネットワークとしての組織(当事者団体)の重要性があらためて確認されました。  また、罹災証明として写真や書類の提出を求められるなど「見える」ことが前提となる行政機関の手続きについては、周囲の目を借りることができるか否か、当事者の置かれた環境によって手続きの困難さが大きく異なることが報告され、これらは依然改善が図られない問題点として出席者間で共有されました。 【その他報告事項】 (1)地震保険は基本的に家屋を保証、家財などは契約内容の確認が必要/(2)別府・湯布院は火災の被害はなかった/(3)県全体のライフライン被害は限定的/(4)破損・損壊した写真を役所の担当窓口に提出すると、支援金が即日支給される場合があるなど 【19日】竹下義樹会長と村上芳継会長、熊本の地での再会を喜ぶ  12月19日、竹下義樹会長・及川清隆副会長・藤井貢組織部長は、熊本県視覚障がい者福祉協会を訪問しました。  当日は協会側から村上芳継会長・茂村広事務局長、篠原靜雄点字図書館長が、さらに新城育子前会長、そして被災した当事者20名が出席、歓迎の意を表し熊本の地での再会を喜びました。 ・日盲連・日盲委連名の義援金を贈呈  冒頭、今回の震災における犠牲者に黙祷が捧げられ、竹下・村上両会長挨拶の後、日盲連・社会福祉法人日本盲人福祉員会(※以 下、日盲委)連名による義援金が竹下会長から村上会長に手渡されました。  日本盲人会連合では今年の4月末よりホームページなどを通じ義援金を募り、総額として1000万円を上回るご厚意が寄せられま した。  日盲連から熊本への義援金の贈呈は、4月と9月、そして今回の12月をあわせて計3回となります(※大分へは4月と7月の計2回)。 ・語られる震災の記憶  懇談の席における被災者の声は多岐にわたり、発災時の混乱や恐怖、その後の生活がいかに不便かつ困難なものであったか、いずれも痛ましいものでした。  新城氏は避難所におけるリーダーの重要性についてふれ、震災地支援の経験者が中心となり規律を正すことで避難所の雰囲気が変わることを、自身の体験を例に詳しく語りました。 ・益城町の仮設住宅を訪問  協会を後にした竹下会長・及川副会長・藤井組織部長は茂村事務局長とともに、仮設住宅を視察するために益城町福富に向かいました。  移動時のタクシーの車窓からは、ブルーシートで屋根を覆われた住宅が多数見られました。また、応急処置として部分的に補修された道路には起伏が生じており、移動時には車体が何度も大きく揺れました。  訪問した仮設住宅は、昨年の11月に新築されたという黄色い木造の建物で、周囲には木材の香りが漂っていました。 障害者を対象とするこの仮設住宅は全部で6棟あり、現在4世帯がこの住宅で生活を営んでいます。藤井組織部長は対象を限定することに対し、孤立化の原因に繋がる可能性があるとその危うさを指摘しました。  居住する視覚障害者のN氏(※仮称)は現時点ではそこまでの不便はないと答えたものの、災害救助法により供与期間が定められていることを憂慮し、「退去を命じられ、新たな住宅で構造を覚え直すことが不安だ」とその胸にある不安を打ち明けました。 ≪4.第70回節目の全国盲人福祉大会、伝統と秘境の郷 徳島で5月26日から開催≫  1948年8月17日から18日にかけて、大阪府貝塚市の二色の浜で開催された結成総会を経て、日盲連の歴史はその幕を開けました。そして今年2017年8月、日盲連は結成から70年を迎えます。 節目となる全国盲人福祉大会は、徳島県徳島市にあるホテルクレメント徳島とアスティとくしま(徳島県立産業観光交流センター)を会場に、5月26日から28日にかけて開催されます。詳細は随時、日盲連の刊行物やホームページなどでご案内します。 ≪5.映画『ちょき』、穏やかに過ぎゆく時間の中で。≫ ポットを片手に、おじさんが一人、レトロな街並みを行きます。 一画にある美容室の前に足を止めると、コートのポケットから鍵を取り出しました。看板には、“HATANO”の文字。  妻を五年前に亡くした彼のもとに、かかってきた一本の電話。視力を失った少女との10年ぶりの再会が、おじさんの小さな恋の始まりでした。 監督・脚本:金井純一 出演:増田璃子・吉沢悠・藤井武美・ 和泉ちぬ・広澤草・芳本美代子・小松政夫  映画『ちょき』の舞台となるのは和歌山県。わかやまじゃんじゃん横丁・和歌浦天満宮・マリーナシティや和歌山盲学校、そして交わされる会話は和歌山弁と、まさに和歌山の魅力が凝縮された映画です。アコースティックギターによる抑えめな音色が、素朴な味わいを生んで、石段を叩く石突の音・風や波の音・鳥のさえずりなどを自然と際立たせ、まるで日常にある音さえもBGMの一部のように聴かせてくれます。  映画で多用されがちなBGMによる扇情的な演出、劇的な展開や重い描写もなく、作品全体を”穏やかさ”が包み込みます。この作品にとって、「障害」はあくまで要素であり、メインに描かれているのは人と人の交流です。主演の増(ます)田(だ)璃(り)子(こ)さんの囁くような話し方や、美容師役の吉沢(よしざわ)悠(ひさし)さんとのテンポのよい会話が耳に優しく、時間はゆっくりと流れていきます。  作中ではレコードを聴きながらコーヒーを飲む場面が度々登場しますが、「ちょき」はそんな風に穏やかに過ぎゆく贅沢な一時をじっくり楽しむ映画です。 ・『ちょき』と日盲連がコラボ、15日にトークショーが開催  『ちょき』は、東京では12月3日から16日にかけて、渋谷HUMAXシネマで上映されました。  最終日前日の15日には一夜限定で音声ガイド付きで上映が行われ、終了後『ちょき』と日盲連のコラボ企画≪トークショー?視覚障がい者と楽しむ『ちょき』の世界?≫が開催、弁護士で青年協議会の会長としても活躍する大胡田誠さんと、視覚障害者パソコンアシストネットワーク理事の上田喬子さんが登壇、金井純一監督とクロストークを行いました。 ・『ちょき』をめぐる言葉(舞台挨拶&トークショーから)  盲目の少女を演じる上で難しかった・苦労した点  「目線とかまばたきとか、一番苦労しました。全盲の方と実際にお話をすると、目が合っているように感じるというのか、雰囲気で感じ取る・・・そういうところがあって」(少女役:増田璃子さん)  BGMにアコースティックギターを採用した理由  「映画を撮ったときに、触れたことを感じる楽器、手を、弾いている人を感じる楽器ということでギターがいいかなと」(監督:金井純一さん)  目が見える相手との恋愛で「壁」を感じますか?  「最初は不便があるのだけど、だんだんお互いのやり方が分かってきて、意外と見える見えないというのは壁ではなくて、そこを歩み寄れる2人がいるかどうかが重要なんだなぁと、何となく思うので」(弁護士:大胡田誠さん) 【映画『ちょき』についてのお問い合わせ】 (株)SDP 電話:03-5459-7171 (受付時間:土日祝を除く11:00から18:00) ≪6.ご寄付のお願いについて≫  日本盲人会連合は視覚障害者自身の手で、<自立と社会参加>を実現しようと組織された視覚障害者の全国組織です。  1948年(昭和23年)に全国の視覚障害者団体(現在は、都道府県・政令指定都市61団体が加盟)で結成され、国や地方自治体の視覚障害者政策の立案・決定に際し、当事者のニーズを反映させるため、陳情や要求運動を行っています。 活動内容は多岐にわたりますが、そのために必要な経費の確保は、厳しい財政の中困難を極めています。 視覚障害者福祉の向上を目指し、組織的な活動を維持していくため、皆様からの特段のご厚志を賜りますよう、何とぞ宜しくお願い申し上げます。 ■ゆうちょ銀行 記号番号 00160-5-536104 加入者名 社会福祉法人日本盲人会連合 ■みずほ銀行 店名 高田馬場支店 預金種目 普通 口座番号 2868101 カナ氏名(受取人名) フク)ニホンモウジンカイレンゴウ ※領収証が必要な方、また本連合が振り込み手数料を負担する専用の振込用紙もご用意していますので、ご希望の方はご連絡下さい。【お問い合わせ先】日本盲人会連合 電話:03-3200-0011