愛盲時報 平成28年10月25日(火)第252号 ≪1.安全な移動と歩く権利を求めて 東京メトロ銀座線「青山一丁目駅」の転落事故を受けて≫ T.欄干のない橋」と呼ばれる駅ホーム  8月15日、東京メトロ銀座線青山一丁目駅(東京都港区)で、盲導犬を連れた男性がホームから転落し、電車にはねられ死亡する事故が発生しました。  駅ホームは視覚障害者の間では「欄干のない橋」と呼ばれ、過去にも多くの痛ましい事件が報じられてきました。  今回の事故の現場となった青山一丁目駅は、相対式と呼ばれる構造で、両端に配置されたホームの幅は約3メートルと狭く、点字ブロックの一部にかかる形で柱が並びます。 ―日盲連が事故現場を調査―  19日には、日本盲人会連合の橋井正喜常務理事と藤井貢組織部長が事故現場を調査するため、青山一丁目駅を訪れました。また、この調査には専門家による分析も必要との判断から、東京都視覚障害者生活支援センター所長で歩行訓練士の長岡雄一氏が同行しました。  長岡氏は「音の反響がすごい。電車が両側から入ってくるので、静かになる時間がない。視覚障害の方には負担だと思う。歩行訓練士としては(ホーム端の)点字ブロックよりも、壁側の移動を勧める」と調査を振り返りました。 U.日本盲人会連合の声明文から 『胸のつぶれる思いを抱くとともに、同じ仲間として強い憤りを禁じ得ない』日盲連 竹下義樹会長  日盲連が発表した声明文において、竹下義樹会長は哀悼の意を表し、『無念にも人生を閉じられた仲間の悲しみと痛みを共有し、二度とこのような事故が生じないよう全力を上げて取り組む』ことを宣言しました。  日盲連は関係機関・鉄道事業者に対して、駅ホームからの転落防止のための抜本的な対策を強く求めるとして、13項目におよぶ要望事項を示しました。抜粋してご紹介します。  一、事故原因の究明にあたっては、本人の責任に転嫁しないことを前提に、盲導犬の使用並びに本人の歩行訓練の状況を含め事故原因を深く究明し、今後の施策に生かすこと  一、すべての駅ホームの危険箇所の実態を調査し、危険箇所の優先的な対策を実施し、駅ホームのみならず鉄道駅全体の安全が確保できる対策を行うこと  一、計画対象駅ホームへの転落防止柵の設置を急ぎ、更なる計画拡大を求めること  一、すべての駅ホームに内方線付き点状ブロックを敷設すること  一、駅ホームでの歩きスマホを禁止すること  一、危険に遭遇しようとしている視覚障害者に対する適切な声かけ・援助の仕方について研究し啓発を促進すること  声明文全文は、日盲連のホームページ(http://nichimou.org/)で掲載しています。日盲連の活動なども、こちらで随時お伝えしていますので、どうぞご活用ください。 V.鉄道駅ホームの安全問題意見交換会と記者会見  9月6日には日本盲人福祉センターで、「第1回鉄道駅ホームの安全問題意見交換会」が開催され、その後に設けられた記者会見の席で、竹下義樹会長からこれまでの取り組みについて報告がなされました。盲導犬の利用者による転落死亡事故は、社会にも大きな衝撃を与え、対する報道機関の関心も高く、当日は計11社が参加しました。  また、資料として日盲連と公益社団法人 東京都盲人福祉協会が行った「危険と思われる東京都内の駅ホーム実態調査緊急アンケート」の集計結果が配布されました。  回答者57名が危険だと回答したのは、JR中央線・総武線 飯田橋駅が12%と最多でした。理由として、「ホームが狭く、駅自体がカーブしている。その影響でホームと電車との間が大きく開いている」、「場所によって車両とホームの間と高低差が20センチほどあり気をつけないと足を落としやすい」などがありました。  他の駅としては、JR山手線・中央線 新宿駅(9.6%)、JR山手線 渋谷駅(3.6%)、JR総武線・中央線 御茶ノ水駅(3.6%)、小田急線 新宿駅(3.6%)が挙げられました。また、JR京葉線・山手線 東京駅、JR京浜東北線・山手線 品川駅、都営三田線・新宿線 神保町駅、東急大井町線・池上線 旗の台駅、東武東上線 大山駅、京王線 下高井戸駅(いずれも2.4%)などが続きました。   なお後日、日盲連にJR東日本から「危険と思われる東京都内の駅ホーム」について改良計画について報告があり、飯田橋駅についてはホームを直線区間に移設する工事に着手していることが伝えられました。  また、東京地下鉄株式会社(東京メトロ)からは、「銀座線青山一丁目の転落事故における同種事故防止策の取組み」について報告がなされました。 W.石井啓一国土交通大臣と竹下会長が面談  9月16日、日盲連の竹下義樹会長と藤井貢組織部長が国土交通省(東京都霞ヶ関)の大臣室を訪れ、石井啓一国土交通大臣に要望書と「危険と思われる東京都内の駅ホーム実態調査緊急アンケート」の集計結果を手渡しました。  今回の面談は、事故の発生後、現場に足を運び調査を行った公明党の高木美智代衆議院議員などの働きかけにより実現したものです。  席上、竹下会長は「ホームは危険と隣り合わせ。ホームドアの設置はお金がかかるが、視覚障害者の外出時の安全の確保のためにもホームドアの設置を急いでほしい」と要望し、石井国交大臣からは省内に検討会を設置したこと、そして今年度予算で確保していた約22億円にくわえ、現在開かれている臨時国会に補正予算案として約40億円を計上していること、さらに来年度予算案の概算要求でも約27億円を要望していることが報告されました。さらに、この財源をもとに緊急性の高い駅について優先的に整備を実施し、新たに着手する駅数を5駅から20駅〜30駅へと大幅に増やす計画が示されました。  また、面談終了後は大臣室からエレベーターホールに場を移し、ぶら下がり取材が行われました。ホームドアの設置費用の高額さが普及のネックになっていることについて記者から意見を求められた竹下会長は、「一年間に3,600人を超える人が転落していて、その中で80人が視覚障害者。視覚障害者のためと我々は運動しているが、(ホームドアの設置が)国民全体の安全な鉄道利用に結びつくことを訴えていきたい」と予算化の重要性を訴えました。 コラム〜内方線付き点状ブロック〜  最近、駅のホームで敷設が進んでいる内方線付き点状ブロックとは、どのようなものでしょうか?  これまでの点状ブロックは、足を止めることはできても、ホームの端がどちら側にあるのか判断することが困難でした。内方線付き点状ブロックは、視覚障害者がホームの内側と外側を区別できるように、内側であることを示す一本の線を追加したものです。メリットとして、ホームドアに比べてコストを抑えることができます。 ≪2.時事を読み解く『平成医療学園専門学校訴訟問題と日盲連の動きについて』≫  平成医療学園専門学校が、あはき法19条による養成施設設置の非認定処分は「職業選択の自由に反している」とし、処分の取り消しを求める訴訟を国相手に起こしました。これは学校側の学科新設の申請に対する、医道審議会の判断を不服としたものです。  9月9日には、その皮切りとして第1回口頭弁論が大阪地裁で行われました。また、遡ること5日には、日盲連が主催する「平成医療学園の訴訟に関する第1回対策会議」がホテルグランドヒル市ヶ谷で開かれました。  本件において、日盲連はどのような対策を講じているのでしょうか。竹下義樹会長とともにその動きを牽引する小川幹雄副会長にお話を伺いました。 ―小川副会長、よろしくお願いします。 小川「こちらこそ、よろしくお願いします」 ―医道審議会について伺います。どのような機関なのでしょうか? 小川「法律または政令の定めにより設置された審議会で、医道審議会の中にあはき柔道整復師分科会という部会があります(委員として竹下会長も名を連ねる)。あはきや柔整の認可、あはき師や柔整師の処分を行いますが、昨年あはき課程を新設したいと(複数校から)申請がありました。昨年9月の予備審査、今年の1月の本審査でも委員全員一致で却下されましたが、これに対して平成医療学園が不服を申し出たということです」 ―それが9日の大阪地裁の口頭弁論につながる訳ですね。 小川「そうですね」 ―当日はどのような方々が出席されましたか? 小川「日盲連はもちろんそうですし、日本理療科教員連盟、全日本視覚障害者協議会、大阪北視覚支援学校同窓会の関係者や、京都のあんまマッサージ指圧師会会長さんも傍聴に詰めかけてくださいました。人数は60名くらいだったでしょうか」 ―論点となっているあはき法19条とは、どのような法律ですか? 小川「これは視覚障害者の生業として、江戸時代から400年続いてきたあんま鍼灸業が晴眼者の進出によって職域が侵されてきたということで、昭和39年に日盲連が中心となって働きかけ、つけ加えられた条項です。これは視覚障害者のあんまマッサージ指圧師の生計が著しく困難にならないように、晴眼者の養成施設の新設や定員増を規制することができるという条項です。これまでも養成施設の新増設は却下されています」 ―日盲連はこの問題にどのように関わっていくのでしょうか?小川副会長はどのようにお考えですか?また、竹下会長からどのような指示を受けていますか? 小川「竹下会長と私は同じ考えです。日盲連だけではなく関係団体、理教連・全視協・盲学校のPTA連合会と、被告(国)を支援する組織を立ち上げようと思っています。また、あはき等法推進協議会で、関係団体に呼びかけようと思っています。今考えているのは裁判の傍聴、裁判官・書記官に対するはがき陳情、一般の方に呼びかけての署名活動、(活動資金の)募金を考えています。また、10月14日には関係団体が集まりますので、そこでほかの案が出れば検討したいと思っています」 ―あはき業に携わっている方で、不安を抱えている方も多いと思います。小川副会長から一言いただけませんか? 小川「(今後の動きとして)19条を守ることにあわせ、視覚障害者が晴眼者と競争しても対等に仕事ができるように、合理的配慮、具体的にはヒューマンアシスタント、そういうものの制度化を進めていきたいと思います」  平成医療学園専門学校の訴訟に対する第1回口頭弁論は、9月9日の大阪地裁以降、28日には東京地裁で、翌29日には仙台地裁で開かれました。今後の予定としては、11月9日に大阪地裁で第2回口頭弁論が開催される予定。 今回の訴訟に対する日盲連の取り組みなどについて、詳細は組織部団体事務局(電話:03−3200−0011)まで。 ≪3.日本盲人会連合 本部の人事について≫  本項では、平成28年度の日本盲人会連合の人事についてご報告します(平成28年9月30日現在)。 ・常務理事:橋井正喜(はしい まさき)  この職を傷つけないよう、皆様の足手まといにならないよう努めさせていただきます。どうぞ宜しくお願いいたします。 ・常務理事:相磯義明(あいそ よしあき)  橋井常務理事と力を合わせ、微力ながら会長及び副会長を支えていきたいと思っておりますので、宜しくお願いいたします。 ・総合相談室長:工藤正一(くどう しょういち)  相談業務は福祉の基礎です。新たに設置された総合相談室の室長を拝命し、その責任の重さに身の引き締まる思いです。 ・情報部長:三宅隆(みやけ たかし)  20年余りの点字出版所での勤務経験を生かして、必要な情報をより多くの方々へ利用しやすい媒体で提供をしていくよう努めてまいります。 ≪4.総合相談室が開設≫  日本盲人会連合は、相談事業のさらなる充実・強化を図るため、8月1日付で日本盲人福祉センター内に総合相談室を開設しました。  視覚障害について、中途視覚障害者やその家族が抱える悩み、雇用や子育てに関する相談、差別解消法や同行援護などの法律や制度など、皆様のさまざまな悩みに一緒に向き合います。  皆様からのご相談をお待ちしています。  お問い合わせ:日盲連総合相談室  電話:03−3200−0011  E-mail:soudan@jfb.jp ≪5.全国盲女性・盲青年研修大会が開催≫ 第62回全国盲女性研修大会について  社会福祉法人日本盲人会連合・同女性協議会主催、福岡市視覚障害者福祉協会の主幹による「第62回全国盲女性研修大会」が、8月21日から23日にかけて福岡市で開催されました。関係者600名が参加し、活発な意見交換が行われました。  3日目の式典では、同協議会の顧問である階恵美子参議院議員より祝辞が述べられました。前田美智子女性協議会長は、「人として普通に暮らしたいという願いを諦めずに、共感を求めながら実現していきたい」と挨拶を述べました。 第62回全国盲青年研修大会について  社会福祉法人日本盲人会連合・同青年協議会ならびに公益社団法人千葉県視覚障害者福祉協会・同青年部主催の「第62回全国盲青年研修大会」が、9月3日から4日にかけて千葉県で開催されました。  大胡田誠青年協議会長の「また、元気な皆さんと会い、千葉で熱い時間を過ごすのが本当に楽しみ」との期待に応えるかのように、2日間にわたる研修会には関係者250名が参加、代表者会議や分科会・講演会などを通し結束を高めました。  最後に、来年度開催の鹿児島県の地で再会することを約束し、研修会は盛会にその幕を下ろしました。 ≪ご寄付のお願いについて≫  日本盲人会連合は視覚障害者自身の手で、<自立と社会参加>を実現しようと組織された視覚障害者の全国組織です。  1948年(昭和23年)に全国の視覚障害者団体(現在は、都道府県・政令指定都市61団体が加盟)で結成され、国や地方自治体の視覚障害者政策の立案・決定に際し、当事者のニーズを反映させるため、陳情や要求運動を行っています。 活動内容は多岐にわたりますが、そのために必要な経費の確保は、厳しい財政の中困難を極めています。 視覚障害者福祉の向上を目指し、組織的な活動を維持していくため、皆様からの特段のご厚志を賜りますよう、何とぞ宜しくお願い申し上げます。 ■ゆうちょ銀行 記号番号 00160−5−536104 加入者名 社会福祉法人日本盲人会連合 ■みずほ銀行 店名 高田馬場支店 預金種目 普通 口座番号 2868101 カナ氏名(受取人名) フク)ニホンモウジンカイレンゴウ  ※領収証が必要な方、また本連合が振り込み手数料を負担する専用の振込用紙もご用意していますので、ご希望の方はご連絡下さい。 【お問い合わせ先】日本盲人会連合 電話:03-3200-0011 愛盲時報 平成28年10月25日(火)第252号 終わり