愛盲時報 平成28年4月25日(月)第250号 ≪1.新たな体制で新年度へ〜要求実現に向けて〜≫  3月31日、日本盲人会連合の平成27年度第5回・第6回理事会及び定期評議員会が、東京都新宿区のホテルグランドヒル市ヶ谷で開かれました。  平成27年度補正予算・平成28年度事業計画・平成28年度予算書などを審議し、ほぼ執行部提案通り可決されました。 【平成28年度予算】 総計(単位:千円) 28年度予算額:445,106 27年度予算額:477,382 増減:―32,276  また、正副会長候補者選挙(立候補者:会長2名・副会長6名)が執り行われ、開票の結果、会長候補者選挙は竹下(たけした)義樹(よしき)氏が、副会長候補者選挙は小川(おがわ)幹雄(みきお)氏(島根県)・及川(おいかわ)清隆(きよたか)氏(岩手県)・伊藤(いとう)和男(かずお)氏(千葉県)が当選しました。  翌4月1日、TKP市ヶ谷カンファレンスセンターを会場に、平成28年度第1回理事会及び指導者研修会が開かれました。第1回理事会では、理事の互選により会長に竹下氏、副会長に小川氏・及川氏・伊藤氏が、また常務理事として小野(おの)束(つかさ)常務理事が再任されました。  続く指導者研修会では、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課 課長補佐の照井(てるい)直樹(なおき)氏による「障害者総合支援法の改正について」、日盲連同行援護事業所等連絡会から「同行援護事業に関する情勢報告について」の2本の講演を通して、現状の把握など理解を深めました。 ≪2.平成28年度 事業計画【抜粋】≫  主要項目と一部事業には解説文を掲載します。 第T章 組織・団体活動 1.組織・団体活動の強化 (1)ブロック長会議の開催 (2)全国盲人福祉大会における分科会の在り方の検討 (3)加盟団体並びにブロック協議会の強化 (4)法律改正に対する対応  平成28年4月1日より施行される「障害者差別解消法」及び「改正障害者雇用促進法」については、各加盟団体が法の趣旨を理解し、的確に行動できるための情報提供を行う。さらには、「障害者総合支援法」の改正に対し積極的に関与する。  また、差別的取り扱いの是正や合理的配慮が実現しなかった事例については、その実現のために不服申立などを組織的に支援する。 (5)財政基盤の強化 2.新たな分野への対応 (1)弱視者対策 (2)高齢者対策  視覚障害者の7割以上が高齢者であることを踏まえ、視覚障害者向けのデイサービスの拡大や、全ての高齢視覚障害者がグループホームを利用することができるようにするなど、高齢視覚障害者に係わる諸問題を解決するように運動する。 (3)中途失明者対策  各地で対応が遅れている中途失明者に対する教育・訓練事業を、全国で安定的に受けられるようにするため、眼科医・教育機関・施設・当事者団体などの関係団体と協議を行い、ネットワーク化を進める。また、国に対して全国どこででも歩行訓練を含む生活訓練が受けられるようにするための改善を要求する。特に仕事をしていて中途失明者になった者の雇用継続については早急に改善が必要で、どの中途失明者も復職が出来る仕組みを目指す。 (4)教育分野  各地の盲学校(視覚特別支援学校)の理療科の入学者数が減少している状況を踏まえ、理療科教育の在り方や未来のあはき師を安定的に育てていくことを、関係団体と連携して検討する。  また、統合教育の拡大や大学受験などにおける合理的配慮を含む視覚障害者の教育環境の改善策を検討し、国や関係機関に問題解決のための提言を行う。 (5)情報収集・調査活動の充実 (6)相談事業の充実 3.総合企画審議会関連の対応 (1)ロービジョンケアを中心とした眼科医等との連携 (2)弱視者問題懇談会の開催 (3)マラケシュ条約の批准と読書バリアフリー法の制定に向けた取り組み (4)歩行訓練士の在り方に関する検討会の実施  全国どこに暮らしていても適切な生活訓練を含む歩行訓練が受けられる体制を確立することが急務である。そのための関係者による検討会を開催してきたが、本年度は全国の実態の把握と歩行訓練士の配置基準等を設けるための調査研究を行い、国に提言を行う準備をする。 (5)点訳・音訳ボランティア養成事業活性化に向けた対策 (6)就労対策  全ての事業者に対し障害者差別の禁止と合理的配慮の提供を義務付けた「改正障害者雇用促進法」が本年4月から施行されることを踏まえ、これまで以上に、加盟団体及び関係団体との連携を通して視覚障害者の就労が促進されるための働きかけや就労実態の把握が不可欠である。また、個別相談に対応するため、これまでの電話相談を充実・強化し、「雇用問題110番」あるいは「障害者差別ホットライン」といった相談事業を実施する。  重点課題として、ヘルスキーパーの雇用拡大や地方自治体の職員採用試験において点字受験を実施させるなどの取り組みを行う。また、視覚障害者のあはき師以外の就労(いわゆる一般就労)については、就労の促進を進める目的で関係機関との連携の場や研究会を創設する。 (7)あはき問題戦略会議 (8)将来ビジョン検討委員会 (9)バリアフリーの推進 4.改正社会福祉法への対応  施行が迫っている改正社会福祉法へ的確に対応するため、本連合においても法人改革を行い組織強化を目指す。 5.国内及び海外の関係団体との相互交流、協力に関する事業 6.選挙情報への対応 7.各種会議の開催 8.第69回全国盲人福祉大会の開催 9.各協議会の活動 (1)あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師協議会 (2)青年協議会 (3)女性協議会 (4)音楽家協議会 (5)スポーツ協議会 10.ガイドヘルパー支援事業 第U章 日本盲人福祉センターの事業 第1【第2種社会福祉事業】 1.情報提供事業 2.地域貢献活動の実施 3.更生相談所の経営 (1)総合相談 (2)法律相談 (3)生活相談 (4)就労相談  専門相談員による就労継続などに関する相談を毎週火曜日と木曜日に実施する。  相談者が相談して良かったと思える相談となるよう努める。 (5)聞こえにくさ相談 4.点字出版所事業 5.点字図書館事業 第2【公益事業】 1.録音製作所事業 2.用具購買所事業 3.点字ニュース即時提供事業 4.東京都視覚障害者ガイドセンター運営事業 5.東京都点訳・朗読奉仕員指導者等養成事業 6.生活協同組合助成事業  「弱視者の読み書きに関する実態把握のための調査研究事業」として、弱視者の困難さを把握するために当事者アンケートを行う。  また、調査結果は報告書にまとめ、結果を広く周知広報させて、弱視者の読み書きに関する問題点の改善を図る。 7.移動支援従事者研修事業 8.施術者支援事業 9.その他受託事業 (1)啓発用パンフレットの製作 (2)眼科医・支援機関との連携ツールの製作 ≪3.平成28年4月1日から、障害者差別解消法・改正障害者雇用促進法が施行されました。≫ 本項では4月に施行された「障害者差別解消法」と「改正障害者雇用促進法」について、その概要をご説明します。 障害者差別解消法  「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(以下、障害者差別解消法)」は、国連の障害者権利条約の批准に向けて整備が進められてきた国内法の一つで、全ての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現を目的に施行されます。  障害者基本法第4条の「差別の禁止」の規定を具体化するものとして位置づけられていて、行政機関や民間事業者に障害を理由とする不当な差別的取扱いを禁止するとともに、社会的障壁の除去について合理的な配慮を求める内容となっています。行政機関については法的義務となります。民間事業者については合理的配慮を努力義務にとどめていますが、主務大臣は当該事業者に対して助言・指導や勧告を行うことができます。  配慮の具体例や過重な負担の例は、「対応要領(行政機関のガイドライン)」、「対応指針(民間事業者のガイドライン)」で示されます。 改正障害者雇用促進法  「障害者の雇用の促進等に関する法律(以下、障害者雇用促進法)」は、法定雇用率などに代表される雇用義務など「事業主に対する措置」と、職業リハビリテーションなどを通じて就業、自立を支援する「障害者本人に対する措置」を大きな柱とします。昭和35年に施行された後、何度か改正され今日に至ります。  今回の改正で一番大きな点は、「雇用の分野での障害者差別を禁止したこと」「合理的配慮の提供を義務としたこと」「(事業主側に)障害者からの相談に適切に対応するために必要な体制を整備すること」を明文化したことにあります。  民間企業における合理的配慮については雇用促進法において定められ、差別解消法の条文の第三章第十三条には、「行政機関等及び事業者が事業主としての立場で労働者に対して行う障害を理由とする差別を解消するための措置については、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和三十五年法律第百二十三号)の定めるところによる。」とあります。 結びに〜共生社会の実現に向けて  両法の施行により期待されることは、障害の有無にかかわらず全ての国民が共存する社会の実現です。そのために、当事者に必要なことはどのようなことでしょうか。  日本盲人会連合 工藤(くどう)正一(しょういち)情報部長と大胡(おおご)田(だ)誠(まこと)青年協議会長のコメントを掲載します。 ■工藤正一情報部長  「制度ができたからといって、すぐには私たちの生活は変わらないだろう。何よりもまずは人々の差別的な意識が変わらなければならない。そのために、私たちも努力していく必要がある。時には勇気を出して声を上げる必要もある。いずれにしても、どうしようか迷った時には、一人で悩まずに、市区町村窓口をはじめ公的な相談支援機関に先ず相談してみるのがよい」 ■大胡田誠青年協議会長  「障がい者の側も勇気を出して一歩 を踏み出すことが大切だ。人はどうしても失ったものの大きさに目を奪われて、まだ手元にどれだけ多くの可能性が残されているのかを忘れてしまう。でもその可能性を開花させることができれば、その人自身が1つの前例になり、障がい者に対する社会の意識が変わっていく」  ≪4.平成28年度予算が成立≫ 【厚労省障害関係予算】 過去最大規模になる一般会計総額96兆7218億円の28年度予算が、3月1日の衆議院本会議・3月29日の参議院本会議で可決、年度内に成立しました。 厚生労働省の障害保健福祉部予算は、対前年度5.7%増の1兆6375億円、うち障害福祉サービス関係費(自立支援給付費プラス障害児措置費・給付費プラス地域生活支援事業費)は対前年度6.5%増の1兆1560億円となっています。 身体障害関連の主な項目は次の通り。 1 障害福祉サービスの確保、 地域生活支援などの障害児・者支援の推進 1兆6375億円 1−1 障害福祉サービスの確保、地域生活支援等 (1)良質な障害福祉サービス等の確保  9701億円 (2)地域における障害児支援の推進  1458億円(うち障害福祉サービス関係費は1395億円) (3)地域生活支援事業の着実な実施(一部新規) 464億円 (4)障害児・者への福祉サービス提供体制の基盤整備 70億円 (5)障害児・者への良質かつ適切な医療の提供 2301億円 (6)特別児童扶養手当、特別障害者手当等  1603億円 (7)障害児・者虐待防止などに関する総合的な施策の推進  ア.障害者虐待防止の推進「地域生活支援事業(464億円)」の内数  イ.障害児・者虐待防止・権利擁護に関する人材養成の推進(一部新規) 1400万円 (8)重度訪問介護等の利用促進に係る市町村支援 11億円 (9)強度行動障害を有する者の支援を行う職員の育成 「地域生活支援事業(464億円)」の内数 1−2障害児・者の自立及び社会参加の支援等 (1)障害者自立支援機器の開発の促進(一部新規) 1億6000万円 (2)芸術文化活動の支援の推進(一部新規) 1億5000万円 (3)障害児・者の社会参加の促進 27億円 2 障害者に対する就労支援の推進(地域生活支援事業計上分を除く) 10億9000万円 (1)工賃向上のための取り組みの推進  2億3000万円 (2)障害者就業・生活支援センター事業の推進 7億5000万円 (3)農福連携による障害者の就農促進(新規) 1億1000万円 (4)就労支援の充実強化「地域生活支援事業 (464億円)」の内数。 3 東日本大震災からの復興への支援  30億円 (1)障害福祉サービス事業所等の災害復旧に対する支援(復興) 14億円 (2)障害福祉サービスの再構築支援(復興) 3億円 (3)避難指示区域等での障害福祉制度の特別措置(復興) 1600万円 (4)被災地心のケア支援体制の整備(復興) 14億円 ≪5.総務省統計局から感謝状が贈呈されました≫  3月24日、総務省統計局の担当者2名が日本盲人福祉センター内の会長室を訪れ、日本盲人会連合 竹下(たけした)義樹(よしき)会長に感謝状を手渡しました。  今回の贈呈は、昨年の10月に統計局が実施した国勢調査において、日本盲人会連合が点字版・拡大文字版の監修を務めたことに対して行われたものです。  會田雅人(あいだまさと)総務省統計局長名義の文面では、国勢調査を「経済の発展及び国民生活の向上のための最も基本的な情報」とした上で、日盲連の貢献について謝意が伝えられました。  竹下会長は担当者との談話の中で、「当事者として協力できる体制をとることも日盲連の仕事だ」と述べ、今後も当事者団体として協力していくことを伝えました。 ≪6.日盲連点字図書館主催 統一英語点字研修会が開催≫  世界の英語圏主要国が、点字の表記法を統一英語点字(UEB)に移行する中、この新たな表記法が今年度から日本でも順次導入されます。そのような時勢に合わせ、去る2月29日、日本盲人会連合点字図書館が主催する統一英語点字の研修会が、日本盲人福祉センター2階の研修室で開催されました。  社会福祉法人 日本ライトハウス点字情報技術センター所長で、『エッセンシャルガイド 統一英語点字UEBで何が変わるか』の著者でもある福井(ふくい)哲也(てつや)氏を講師に迎えた研修会は、点訳者の関心の高い内容とあり、募集直後から多くの応募が寄せられ、最終的に当初設けられていた60名の定員を大きく上回る84名が参加、3時間におよぶ研修会は盛会の内に幕を閉じました。 ≪7.第69回全国盲人福祉大会(青森大会)開催≫  目的 リンゴの里 ねぶたの里 みちのくは、津軽のここ青森市において、全国の視覚障害者やその関係者が一堂に会し、福祉や職業など私たちを取り巻く諸問題について討議し、視覚障害者の自立と社会参加の促進を図ります。 主催 社会福祉法人 日本盲人会連合 一般社団法人 青森県視覚障害者福祉会 会期 平成28年5月20日(金)〜5月22日(日)  会場 リンクステーションホール青森(青森県青森市堤町一丁目4−1) 電話:017−773−7300    ホテル青森(青森県青森市堤町一丁目1−23) 電話:017−775−4141 お問い合わせ 社会福祉法人 日本盲人会連合 組織部 団体事務局  電話:03−3200−0011 FAX:03−3200−7755 E-mail:jim@jfb.jp 一般社団法人 青森県視覚障害者福祉会  電話 ・FAX:017−783−3447 E-mail:aosiren@aosise.com URL:http://aosikai.web.fc2.com/