愛盲時報 平成28年1月25日第249号 ≪1.新春対談 塩崎恭久厚労大臣・竹下義樹日盲連会長≫  平成27年12月7日、東京・霞ヶ関の厚生労働省大臣室にて、塩崎恭久厚生労働大臣と竹下義樹日本盲人会連合会長による新春対談が行われました。  今年4月から施行される、 障害者差別解消法・ 改正雇用促進法などを中心に、大臣のお考えを伺いました。  塩崎厚労大臣:明けましておめでとうございます。  竹下日盲連会長:明けましておめでとうございます。  大臣、昨年の5月には、第68回の全国盲人福祉大会の岐阜大会にお出まし頂き、どうもありがとうございました。大臣に出席頂いたお陰で、皆様本当に喜んでくれました。  大臣:そうですか。それはありがたいことです。  竹下:ありがとうございました。  ところで、今年の4月からは、「障害者差別解消法」が施行されるわけですが、施行されることによって視覚障害者の生活がどういうふうに変わるのだろうかということを我々は期待しているのと、また行政は施行に向けてどういう準備を行っているのか、少しお聞かせ頂ければありがたいと思います。  大臣:国連の障害者権利条約の発効自体は、実は2008年だったのですけど、我が国は2013年の12月に国会で条約締結を承認して、それは国内の法制がいろいろ手筈が整ったと、こういうことで批准が可能になったわけでありますけど、今年4月から障害者差別解消法が施行になるということで、政府全体の方針として基本方針を昨年2月に閣議決定いたしました。  その後、各省庁が職員向けの対応要領とか、所管事業者向けのガイドラインの策定をして、準備を今鋭意進めているところでして、特にガイドラインにおいては各分野における合理的配慮をどうするのかということが例として示されていて、できる限り分かりやすく国民の皆様に周知していかないといけないので、事業者の皆様にも認識と理解を深めていただくことが重要で、その上でどのような配慮が求められ、実際に何ができるのか、相互にお話し合いをする中で、障害者の自立と社会参加が更に進んでいくということが実現していけばなと、こういうことで政府をあげて準備をしているところでございます。  これまで以上に合理的配慮をすることに法律でなったわけでありますので、視覚障害者に関しては特に点字、あるいは音声とか拡大文字とか情報保障への配慮をしっかりやるということ、職員研修の実施などの取り組みをできるとこからどんどんやっていくことで、厚生労働省としても各省庁を含め政府全体、そしてまた民間の皆様にも働きかけているというところでございます。  竹下:ありがとうございます。期待しています。  また、今年の4月から障害者雇用促進法の改正されたものが施行されることになっています。我々にとっては働く場でどういう合理的配慮が促進されるかを、大いに期待しているわけでありますが、この点についてもまた大臣のお考えをお聞かせ願えればと思います。  大臣:これも先ほどの差別解消法と同時に、合理的配慮をしっかりとやっていかないといけないということになっておりますので、25年の6月に改正され、この 4月から施行される障害者雇用促進法の中で、障害者に対する差別の禁止と合理的配慮の提供義務を定めております。 施行に向けて、募集や採用に関して、障害を理由に差別をしてはいけないということを定めた障害者差別禁止指針を策定しております。また、募集・採用時には応募しやすい配慮をするということ、あるいは採用後は仕事をしやすいような配慮をすることなどを定めた合理的配慮指針を策定しています。  全ての事業主を対象に、これらの周知を図ることが大事な、施行に向けての道筋だと思いますので、障害者の雇用が進むように、さらに徹底を図っていきます。  竹下:我々の仲間も大いに働く意欲を持って、こういう配慮が進むことを期待しておりますので、宜しくお願いします。  それとですね、昨年は「障害者総合支援法」の見直しが一年ほどかけて検討されたわけでありますが、検討結果を教えていただきたいのと、それと特に我々が外出の際に一番利用しております同行援護事業につきましては、通勤・通学や入院時の利用に制約があるために、皆様からこの部分での改善を求めることが強いわけですが、この点についての大臣のお考えをお聞かせ願えますでしょうか。  大臣:障害者総合支援法は、もともとは障害者自立支援法が自公政権の時代にできて、経緯があってこういう形で総合支援法になりましたけど、3年後の見直しというものが入っていて、それがちょうど今回通常国会に提出する法案という形で出てくるということになっています。  去年ずっと各団体等々からお話しなどをお聞きして、ご意見を頂戴して、何が抜けているのか、もともと宿題になっているものもありましたから、そういうことについて一つ一つ答えを出していこうということで、最終的には法案の形にするために、まだ少し議論を深めないといけない部分があろうかと思いますし、そういったところについてはさらに与党ともよく議論して、最終的な形を作っていきたいというふうに思っております。  その中で、今お話しがあった通勤・通学に関する同行援護を含む移動支援、これが一番視覚障害者の皆様方から言われるご要望ですよね。このことについては、ニーズが大変あることはよく分かっているわけでありますが、一方で合理的配慮ということも同時にやっていかなければいけないということで、大学とかあるいは学校、それから企業、そういったところでの配慮をどのようにしていくのかということも考えなければいけないので、同時にいろんなことを考えていかないといけないと思っていますが、ニーズが強いということはよく分かっております。  今回の社会保障審議会障害者部会の議論では、いろいろな議論が行われましたけれども、学校や企業としっかりと連携した上で、福祉として何ができるか検討することや、地域生活支援事業というのが既にありますが、この活用などをきちんと進めて行くことが重要じゃないかということで、いずれにしても引き続き検討していかないといけないと思っています。  今般の制度見直しにおいて、医療機関における入院をしている間の外出とか外泊とかの際に、同行援護が利用できるように、そこのところを明確にするということを考えていまして、今後ともこういった形での必要不可欠なものについてしっかりと対応していきたいと思っております。  竹下:ありがとうございます。  ご存じの通り我々の仲間は、一番鍼灸マッサージのあはきの仕事に就いているものが多いわけですが、この分野での業権擁護をどうしていくかということが今非常に課題になっておりまして、仕事を安定的に続けていくためにどうしたらよいかということについて、少し大臣のお考えをお聞きしたいのと、特に無資格者の問題がこの間大きな課題になっていること、柔道整復師などによる不正請求なども業権擁護の点から問題になっているかと思うのですが、この点について厚生労働省のお考えを教えて下さい。  大臣:はい。私の地元でも無資格者問題についてはご指摘があって、懸念が強いということはよく認識をしておるところでありまして、無資格者対策については、地元の都道府県、それと警察などと連携をするということが大事な手順だろうと思うんですね。  これは、昨年3月に、全国医政関係主管課長会議を開きまして、都道府県から課長さんたちに来てもらって、各都道府県に対して、無資格者への指導をしっかりと、よりしっかりとやれということと、指導を行っても改善がみられない場合には、やっぱり悪質なわけですから、それについてはやはり警察と連携をしっかりとやると、これを厳格にやっていくよということをですね、都道府県からもしっかりメッセージと行動で示してもらいたいということをお願いをしたところでありまして、今後とも行政機関と、都道府県とよく連携をして、この問題には目を凝らしていきたいというふうに思っています。  今の柔道整復師の不正請求問題・療養費払いについて、不正請求の事実がもしあるならば、報道ベースで今そういうことになっている訳でありますけども、事実が確認されれば厳正に対処するというのが当然であって、療養費の支払いというのはしっかり適切にやってもらわないと困るので、その辺は徹底していきたいと思っています。 竹下:ありがとうございます。  今年から無資格者対策の一つとして、厚生労働大臣免許保有証というものを出して頂くことになったわけですが、我々の希望を受け入れて頂いたことに感謝申し上げます。ぜひ、これからもこういう動きが広がるように、我々も頑張っていきたいと思っておりますので、この点もまた宜しくお願いします。 大臣:はい。ネームプレートが昨年9月にあん摩マッサージ指圧、鍼・灸の関係団体において申請受付というのが始まって、今年の3月に発送がネームプレートについては行われるということなので、国家資格の免許保有者であるということを明示したネームプレートが届くということになるわけで、東洋療法研修試験財団において保有証の作成の検討を重ねて、これまで来てもらいましたから、これがしっかり発送されて、皆様にお付け頂くことによって、一般の人が免許を持っている人とそうじゃない人と峻別ができるようにしていきたいと思いますので、これで一歩前進することを期待したいと思います。 竹下:最後に今年の抱負を大臣から、読者あるいは我々会員の仲間に抱負をお聞かせ願えればありがたいと思います。 大臣:さっきも申し上げたように、障害者総合支援法という名前になりましたが、最初は自立支援法で、タックスペイヤー(納税者)になるというような障害者の思いもあの当時からあって、できる限り自分の能力いっぱいいっぱいに、働けるときには働くというような中で、障害者への福祉サービスも充実するということを考えた法律でした。  その結果として総合支援法に変わりましたが、その施行から3年が経ったということで見直しをするということで、私はいつも言っているのですが、日本の障害者施策は課題がたくさんあると、国際的に見てもですね、決して胸を張れる状態にまでは到達していないと思っていますので、この見直しの作業を含めて、より良い障害者施策のために我々は力を入れていかないといけないんじゃないかというふうに思っています。  私も地元では言ったのですが、随分いろいろな要望を地元で聞いて、それをいってみれば全国の政策として活かすということを私はやってきましたが、ニーズがいろいろあるのと困っていることがいろいろあって、それをどうきめ細かく聞いて、それで制度を直していくかということがとても大事だと思っています。それが一人一人の生活にあった、杓子定規な制度で十分自分の生活に合った良いサービスとして活きてこないようなものがときどき見られるので、そういうこともちゃんと応えられるように、ニーズにあったものをきめ細かく、いつも制度改正をしていくという心がけが必要なんじゃないかと思っています。  ノーマライゼーションという言葉を使うようになって久しいわけでありますけど、これはいつも私が言っているのは「心の中のノーマライゼーション」をしないとですね、制度ばかりいったってダメなんです。制度を作るのは人間ですから。人間の「心の中のノーマライゼーション」というものが行われない限りはだめなので、それは実は健常者にはなかなか分からない時が間々あるので、そういうことをしっかりと把握するためにも、絶えずコミュニケーションをよくして、障害をお持ちの方々とよく対話をしながら、そのニーズをちゃんと取り入れてですね、制度化していくということをさらに心がけてOECDの中でも後ろから数えた方が早いので、頑張らなきゃいけないんじゃないかというふうに思っています。 竹下:どうもありがとうございます。期待しております。 大臣:どうもありがとうございました。 ≪2.謹賀新年2016年 正副会長挨拶≫ 【新年のご挨拶】 会長 竹下義樹  皆さん、あけましておめでとうございます。  2016年、平成28年は、皆さんにとってどういう年になるでしょうか。日盲連も、この1年間が充実した活動になるように、皆さんと共に頑張っていきたいと思っております。  さて、この2016年を迎えるにあたり、昨年を少し振り返ってみたいと思います。  昨年は、なんといいましても「障害者総合支援法」の見直しが、1年にわたり、国において検討されたことが重要だろうと思います。昨年12月14日に最後の審議会が行われ、ほぼ見通しがつきました。我々にとって十分なものとはならなかったというふうに思っております。まず、なんといいましても、我々は同行援護の事業が、どれだけ我々の使いやすいものになるか、私たちが望んでいる改革がどこまで進むかということが中心だと思うんですが、この部分について、私が望んだものとは残念ながらならなかったと反省しております。  ただ、入院中の視覚障害者が、外出・外泊時に同行援護事業が使えるようになることが、まず大きな前進になるだろうと思っております。また入院中の視覚障害者が色々と不自由をしたり辛い思いをすることが多いわけでありますが、この入院中の視覚障害者が、代筆・代読などの意思疎通支援事業が使えるようにはなるだろうとは思っております。  そしてもう一つの問題は、入院中では残念ながらホームヘルパーの利用が実現しなかった事は、非常に残念であります。それに対し、私たちがもう一つ同行援護事業で望んでいたのは、通勤・通学への適用であります。この部分については、少し前進はすると思いますが、全面的な適用にはならなかったというふうに反省しております。通勤・通学の訓練という場面では適用されることになるかもしれませんが、全面的な通勤・通学への適用にはならなかったということが、非常に残念でなりません。  しかし、この「障害者総合支援法」の見直しの論議の過程の中で、私たちの声を十分に伝えるべく努力はしましたので、今後も引き続きこの改正、あるいは改善に向けて、さらには全国の格差がなくなるように努力を続けることが必要だと思っております。  この2016年は、私にとっては65歳という高齢者に入ることにもなりました。視覚障害者の7割が 65歳以上と言われております。 そうしてみますと、私たちは高齢者問題というよりも、視覚障害者の福祉そのものが、高齢者問題と重なってるということになるのではないかと思っております。65歳=高齢者ということではなくて、70になろうが、80、90歳だろうが、私たちがどれだけ生きがいをもって社会の中で生き続けられるか、そのためには、何が必要かということが、これからも、みんなと一緒に考えていかなければなりません。 65歳になって、引退するということではなくて、65歳 70歳になっても生きがいをもち続けることができるために、我々はどういう福祉を望み、そしてどういう対策やどういう活動が保証されねばならないのかということについても、この1年間考えてみたいと思っております。  さて私自身は、4年間、日盲連の会長として活動してきました。その中で、皆さんの声をどれだけ国の制度に反映できたか分かりません。この4月には「障害者差別解消法」が施行される訳でありますが、それによってこの国がどう変わるかを皆さんと共に見続けていきたいと思っております。 【年頭のご挨拶】 副会長 鈴木孝幸  皆様、新年明けましておめでとうございます。  今年は「申年」です。私ごとで恐縮ですが、年男でございます。と言うことは「還暦」となります。昔は60歳と言えば「年寄り」と思っていましたが、今では現役世代と言っても過言ではないと考えています。  この4月からは差別解消法が施行されますが、この法律によって私たちの生活がどう変わるか、またどのように変えて行かなければならないかを考えています。これまでの目標であった、「住みやすい社会を追求すること」「自らの人生を意識し、自己実現を図ることのできる環境の整備を進めて行くこと」など、引き続き運動を展開する必要性があります。 そのためにも組織活動を根本にし、目標を具現化すべく今年も運動を進めてまいります。  組織の強化を図るには、個々の団体が運動できるような環境を整備することも必要なことだと考えております。特に市町村の団体を育てていかなければ組織の強化はできません。また、一人一人の会員を大切にすることが組織を強化することであり、自己実現にもつながることだと考えています。一人の当事者の声を聞く、そして激励していく、更にはその声を展開し全国の視覚障害者が良い方向に向けていく事が必要なのです。今年もしっかり尽力しますのでご協力をお願いします。 【平成28年新年のご挨拶】 副会長 衛藤良憲  日本盲人会連合会員の皆様におかれましては、2016年のうららかな新春を迎えられたこととご推察いたします。  本年は「合理的配慮」を主体とした「障害者差別解消法」が本格施行されるという、記念すべき年の幕開けです。  また来年は、日盲連設立70周年という節目の年に当たります。  この記念すべき年に役員をさせていただいていることの意味を深く考えると同時に議論し、ともに行動を起こしましょう。私も少しでも全国の皆様のお役に立つ仕事をしていきたいと思っておりますので、会員・役員の皆様のご支援・ご協力を賜りますよう謹んでお願い申し上げます。 【新年のご挨拶】 副会長 及川清隆  謹賀新年。  全国の視覚障害者の皆様にはお健やかで初春をお迎えになられたこととお喜び申し上げます。昨年中は公私共々大変お世話になりました。本年も昨年同様ご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。  私は昨年、副会長として「障害者差別解消法」に伴う「合理的配慮」の対応要領や対応指針のガイドライン作成に関わるヒアリングなどに出席させていただきました。また、内閣府主催の「福祉避難所ワーキンググループ」などにも、出席させていただきました。他にもいろいろ出席させていただきましたが、体験を通じていかに日盲連の役割が大きいか、当たり前かもしれませんが身を以て感じました。  私は、岩手県平泉町、中尊寺からやや北に位置する奥州市(旧水沢市)という地方に在住していますが、昨年の活動を通じて、地域経済の疲弊による福祉サービス格差の広がりや、視覚障害者理解度が大きく異なっていることを懸念させられた年でした。  本年は第16回全国障害者スポーツ大会 希望郷きょういわて大会の開催されることとなっています。この大会を通じて視覚障害者理解を一層促進するとともに、日盲連においては先人のご苦労の恩に報いられるように、もう少し組織を磐石にしながら全国の仲間のために汗を流したいと決意しております。どうぞ本年も公私共に宜しくお願い申し上げます。  本年の皆様方のご多幸を祈念申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。 ≪3.日盲連の最近の要望から≫  要望書の全文は日盲連のホームページで公開されています。  ①国土交通省 「鉄道輸送における安全配慮の促進を求めて」  平成27年11月27日、石井啓一国土交通大臣に対し、鉄道輸送における安全配慮の促進を求めて緊急に要請を行いました。  鉄道駅の無人化が進む中、視覚障害者が駅ホームから転落するなどの事故が相次いでいるところから、緊急にホームドアなどの設置の促進とホーム上の駅員の常時配置を求めて要望書を提出しました。  ②総務省・文科省 「選挙権年齢引き下げに伴う高校生等のための副教材について」  11月27日、高市早苗総務大臣と馳浩文部科学大臣に対して、選挙権年齢引き下げに伴う高校生等のための副教材について、特別支援学校及び高等学校などに在学する視覚に障害のある生徒のために点字や拡大文字などでも配布するよう要望しました。  ③総務省 「マイナンバー制度について」  12月18日、高市早苗総務大臣に対してマイナンバー制度についての緊急の要望書を提出しました。  要望書は、「多数の視覚障害者が通知書に記載されたマイナンバーを読むことができない」現状、または個人番号カードの「点字表記」について訴えるものとなっています。  提出された要望に対して、その場では明確な回答はありませんでしたが、カードに記載される個人名の点字については、システム上可能かどうかを検討し、新たな啓発パンフレット(点字、音声)の作成を検討したいと回答がありました。