愛盲時報 平成26年10月25日(土) 第244号 ≪1.第60回記念全国盲女性研修大会報告―女性協議会会長 新城(しんじょう)育子(いくこ)−≫  第60回記念全国盲女性研修大会は、さる9月7日〜9日の3日間、東京都盲人福祉協会の主管により、 港区のメルパルクTOKYOに1200名の会員ならびに関係者が相集い、盛大に開催されました。  記念大会ならではの企画、準備、運営にいたるまでご尽力いただきました笹川(ささがわ)吉彦(よしひこ)会長、 ならびに実行委員、関係者の皆様方に心より感謝申し上げます。  第1日目は常任委員会、全国委員会などの役員会議。  第2日目午前中は、本会の決議機関である全国代表者会議。主催ならびに主管団体会長の挨拶のあと、 WBUAP会長の田畑(たばた)美智子(みちこ)さんからアジア各国における盲女性への現状と課題についての報告がなされました。 アジア各国と比較して、我が国の福祉サービスの充実に感謝する一方、他国の盲女性達の意欲的な取り組みに学ぶことの多いお話でした。  議題としては昨年度の会務や収支決算の報告の承認、今年度の事業計画、予算案の審議、各ブロックからの提出議題の討議では、 日常生活の中で抱えている諸課題、特に入院時のヘルパー利用の問題、同行援護の地域間格差の是正、 テレビの緊急放送やニュースの中の外国語の字幕音声化などについて活発な討議がなされました。 その他女性協議会の歩み第2号と会報あかね99・100号合併号の発行準備状況の報告確認が行われ時間内に終了しました。  午後の研修会には非公式とはいえ秋篠宮妃殿下にご臨席頂くというこれまでにない光栄に、 日盲連の竹下(たけした)義樹(よしき)会長の先導でご入場になる秋篠宮妃殿下を万雷の拍手でお迎えいたしました。  第1部はスポーツジャーナリスト・増田(ますだ)明美(あけみ)さんの講演。演題は「長距離ランナーという私の人生」。 放送を通じて聞き慣れた爽やかな声、ユーモアたっぷりにスポーツ界や放送界の裏話、実力が発揮できなかったオリンピックの秘話、 生きる目標を失った辛い引きこもりの時期から立ち直りまでの貴重な体験談など、会場は笑いと感動の涙に満ちあふれ、あっという間の1時間でした。  第2部は全国9ブロック代表のレポート発表と意見交換会。テーマは「バリアフリー商品と私」。 9名のレポーターからは日頃使っている点字表記や音声案内付きの商品によって日常生活が便利で充実したという体験、 こんなものがあればもっと暮らしやすくなるだろうというアイディアなどが発表され、そのあと参加者・レポーター・助言者間の情報交換や意見が出され、 最後に助言者の竹下会長から「障害者や高齢者のためのバリアフリー商品というネーミングが必要でなくなり、 誰にとっても使いやすい商品が作られることが当たり前になる社会を目指して頑張りましょう」というまとめの言葉をいただき研修会を終了しました。 この2時間半にも及ぶ長時間、秋篠宮妃殿下は熱心にお聞きになり、日常生活用具などの商品名、例えばプレクストークやカラートークなどが出てくると、 どのような利用価値があるのか、どんな使い方をするのかなど、積極的に質問されます。ご説明役の私は言葉に注意しながら必死にお答え致しました。 また、私が持っていたブレイルメモや触知式の腕時計を触らせて欲しいと実際に手に取り指で触れてご覧になるというご関心の深さに驚きました。 視覚障害者の思いや生活の様子を少しでも深く理解したいというお気持ちが伝わって参りました。実り多い研修会であったと思います。  最終日は大会式典と議事。秋篠宮妃殿下ならびに多くの来賓のご臨席の下、厳粛な雰囲気の中で記念式典が進められました。 長期に亘り女性部活動に貢献した方々の表彰が行われたあと、秋篠宮妃殿下よりお言葉を賜りました。 この記念大会ご臨席に先駆けて日盲福祉センターと都盲協をご訪問された時のご様子やご感想、私たち会員への励ましのメッセージなど、 心のこもったお言葉に参加者一同感激の極みでございました。  第2部の議事では宣言・決議を採択し、閉会式では来年度主管団体宮城県からの案内の御挨拶があり、全ての日程をつつがなく終了することができました。  60有余年に亘り女性協議会の歴史を紡いできた伝統を次世代に継承するとともに、魅力ある女性協の将来ビジョンについて検討し、 70年、80年に向かって確実な歩みを進めて参りたいと決意を新たにした記念大会でした。  本大会を支えて下さいました多くの関係者、ボランティアの皆様方に心から成る敬意を表し、記念大会報告と致します。 ≪2.全国盲女性研修大会に秋篠宮妃殿下ご臨席≫  日本盲人会連合及び同女性協議会の主催、東京都盲人福祉協会並びに同女性部の主管による「第60回記念全国盲女性研修大会」の式典が、 9月9日に東京港区のメルパルクTOKYOで開催され、全国から過去最高の関係者約1200人が記念大会を祝って参集しました。  挨拶に立った日盲連の竹下(たけした)義樹(よしき)会長は、同協議会が長年にわたる活動により視覚障害者のQOLの向上に寄与したことを高く評価しました。  一方、新城(しんじょう)育子(いくこ)同協議会会長は、今後も女性ならではの視点から諸問題の解決に一層努力すると決意を述べました。  今回の記念大会には、秋篠宮妃殿下がご臨席になり、前日の研修会「バリアフリー商品と私」での発表のご感想や、 5月に日盲連と都盲協を視察した折のご感想などを率直に語られました。都内参加者の一人は、秋篠宮妃殿下の優しい励ましのお言葉に感動した、 最高の記念大会だった、と声を詰まらせた様子でした。  来年の同大会は、宮城県で開催の予定です。 ≪3.第60回全国盲青年研修記念大会≫  日本盲人会連合並びに同青年協議会、岩手県視覚障害者福祉協会並びに同青年部の主催による第60回全国盲青年研修大会盛岡大会が8月30日及び31日の2日間、 盛岡市のホテルメトロポリタン盛岡他を会場に開催され、全国から約150人が参加した。  1日目午後に行われた全国代表者会議では、審議に先立ち、竹下(たけした)義樹(よしき)日盲連会長から、 「現状に甘んじることなく、高い目標を掲げて行動してほしい」と激励の言葉が寄せられ、 今年度から青年協議会会長に就任した大胡田(おおごだ)誠(まこと)会長は、「伝統を受け継ぎつつ、 フレッシュな感覚で新しい青年協議会を作っていきたい。」と決意を表明した。 また、会議終了後には、世界盲人連合アジア太平洋支部代表の田畑(たばた)美智子(みちこ)氏の特別スピーチがあり、青年が世界に目を向け、 広い視野を持って活動することの大切さが強調された。  続く分科会では、第1分科会が交通問題、第2分科会が就労問題、第3分科会がバリアフリー・組織強化等について、各団体の提出議案を審議した。 17時からの全国委員会では、これら審議を踏まえ、来年の全国盲人代表者会議に提出する議案が選択された。提出議案の概要は次のとおり。  1、バリアフリー新法に該当しない小規模な駅においてもバリアフリーの徹底を求める。  1、全国の地方公務員試験に残る差別的な受験条件の見直しと合理的配慮の提供を求める。  1、屋内での位置情報の取得など、視覚障害者の生活をより便利にするスマートフォン等の携帯型端末の開発を求める。  その後の懇親会では、岩手県の名産品争奪の福引大会が行われ、大いに盛り上がった。  2日目午前の研修会では、手でみる博物館の見学、「宮沢賢治の心といそしみ」と題する講演、震災語り部のお話、初めてのスマートフォン体験の4つの研修メニューが用意され、 それぞれの参加者は、岩手ならではの貴重な経験をつむとともに、全国各地から集まった仲間との交流を深めた。  2日目午後は、式典の後、宮城教育大学の長尾(ながお)博(ひろし)教授による、「日本盲人史の脈動に何を学ぶ」と題する記念講演が行われ、 「求めるだけでなく、自ら動かなければ何も変わらない。皆さんには、やりがいのある仕事がまだ残されている。」という氏の強いメッセージに会場全体が深い感動に包まれ、全日程を終えた。  本大会で決議された9項目の要望事項のうちでは、震災被災地での開催ということもあり、災害時の視覚障害者への情報伝達システムや避難所の整備が第1にあげられた。   また、青年層にとって最も重大な関心事のひとつである職業問題については、無資格マッサージ師の一掃、地方公務員試験における差別的な受験条件の撤廃と合理的配慮の提供を求めることが決議された。  さらに、本年1月の障害者権利条約の批准を受け、同条約の理念が骨抜きにならないよう、実効性の高い障害者差別解消法のガイドライン策定を求めた。  次回大会は平成27年9月12日13日の2日間、広島県福山市で開催される予定である。 ≪4.第52回全国盲人三曲演奏大会≫  9月21日(日)、名古屋市中電ホールにおいて第52回全国盲人三曲演奏大会が開催された。 主催は日本盲人会連合および同音楽家協議会、共催は国風音楽会および名古屋市視覚障害者協会。  今回は国風音楽会生田祭箏曲定期演奏会が共催され、全国から参集した音楽家協議会会員と地元国風会会員の白熱した演奏が28曲発表された。 音楽家協議会会員は1年ぶりの出会いに交流を深めていた。  演奏会の主なプログラムは以下の通り。  六段(ろくだん)の調(しらべ)(出演者有志)、千鳥(ちどり)の曲(きょく)(関東・東海地区)、雲(くも)の峰(みね)(九州地区)、曲鼠(きょくねずみ)(関東地区)、 秋(あき)の言(こと)の葉(は)(九州地区)、紫(むらさき)式部(しきぶ)(四国地区)、さらし風(ふう)手事(てごと)(関東地区)、唐(から)砧(ぎぬた)(九州・中国地区)、 尻(しり)尽(づく)し(関東・東海地区)、夕(ゆうべ)の曲(きょく)(東海地区)、陽光(ようこう)賛歌(さんか)(近畿地区)、冬(ふゆ)の曲(きょく)(近畿・東海地区)、 明治(めいじ)松竹梅(しょうちくばい)(近畿・東海地区)。  続いて22日(月)には名古屋市名鉄ニューグランドホテルにおいて第53回日本盲人会連合音楽家協議会福祉大会が開かれた。事務連絡や熱のこもった意見交換が行われ、充実した2日間となった。 ≪5.盲導犬が刺された事件について思う−元全日本盲導犬使用者の会会長 清水(しみず)和行(かずゆき)−≫  新聞報道などによりますと、7月28日、埼玉県の盲導犬使用者が通勤のために同伴していた盲導犬が、 何者かによりフォークの様な先の尖ったもので右の腰辺りの3・4箇所を深さ1〜2cm刺され負傷させられたという事件がありました。 使用者は職場に到着したとき、同僚に盲導犬の出血について知らされ初めて気付いたとのこと。  治療した獣医師も、日常生活では起こりえず、よほどの力が加わらなければできない傷だと言っているようです。 埼玉県警も器物損壊容疑で捜査しているようですが、いまだに加害者は見つかっていません。盲導犬使用者として、また一視覚障害者として見過ごせない事件です。  この事件の問題点は無抵抗な盲導犬が傷つけられたということです。 私の知っている盲導犬使用者にも、横断歩道で待っているときにたばこの火を盲導犬の体に押しつけられたという人がいます。正に今回の事件のような出来事です。  「盲導犬はおとなしい」「盲導犬は尻尾をふまれても怒って吠えたり噛んだりしない」そんなことを試すかのような嫌がらせです。 今回の事件の加害者がどのような意図で盲導犬を傷つけたのか分かりませんが、無抵抗な盲導犬に刃を向けた行為は許されるものではありません。  しかし、それ以上に問題なのは、加害者が盲導犬使用者、すなわち視覚障害者をターゲットにしたということではないでしょうか。 加害者の顔や特徴を見ることができない、逃げることもできない、そんな視覚障害者が被害にあったことです。  私の妻も盲導犬使用者ですが、バイクに乗っていた不審者に自宅まで後をつけられ、危ない目に合いそうになったことがあります。 私自身そんな目に合ったことはありませんが、いわゆる「おやじ狩り」のターゲットにされればひとたまりもないでしょう。 できるだけ安全そうな道を歩くなどの自己防衛を心がけることはもちろんですが、やはり社会全体の治安を保つことが最も大切になるでしょう。  私の子供のころはサザエさんの家のように玄関の鍵をかけていない家がほとんどでした。しかし、今ではそんな家は少ないのではないでしょうか。 子供にも防犯ベルを持たせる学校もあるようです。比較的治安の良い日本でも、自らを守ることを考えなければならない時代になったのかもしれません。残念なことです。  ところで、今回のマスコミの報道やニュースキャスターのコメントなどにも、少し違和感を感じています。「盲導犬は厳しい訓練に耐えて視覚障害者のために働いている」 「盲導犬はむやみに吠えないように訓練されている」「盲導犬は何をされても我慢して鳴かない」「盲導犬は神経を使うために寿命が短い」これらは全て誤った理解です。  盲導犬の歩行指導員も使用者もボランティアも盲導犬には愛情を持って接し、また盲導犬も使用者や人間を信頼しています。 決して盲導犬が犬として過酷な使役を強いられているものではありません。今回の事件がこのような盲導犬に対する誤解のために生じたものではないと思いますが、 マスコミの皆さんには盲導犬に対する誤った理解が進むことのないようにご配慮いただきたいものです。  この度の事件は私たち視覚障害者にとって大変ショッキングなものでありました。しかし今はおちついて事件の行方を見守っていく時期だと思います。 まだ加害者も逮捕されていません。犯行の動機も分かりません。事件の背景に何があったのかも分かりません。これらのことが明らかになってから、 冷静な取り組みを進めていくことが賢明ではないでしょうか。  この事件を補助犬使用者の問題、あるいは障害者の問題として捉えるだけでなく、 我が国に暮らす人々全体の問題として取り組んでいけるようなしなやかな運動として広がっていくことを望みます。 ≪6.短信≫  *お詫びと訂正 7月25日発行の愛盲時報第243号に掲載した、「第67回全国盲人福祉大分大会」の記事中の人名に誤りがありました。 スポーツ協議会副会長兼事務局の「加藤(かとう)宏(ひろし)」は、正しくは「加藤(かとう)弘(ひろし)」です。お詫びとともに訂正させて頂きます。  *福岡市視協 一般社団法人に移行  福岡市視覚障害者福祉協会(染井(そめい)圭弘(よしひろ)会長)は4月1日付けで、社団法人から一般社団法人に移行し、 名称を「一般社団法人福岡市視覚障害者福祉協会」に改めた。  *埼玉県視障協 公益社団法人に移行  新制度上の公益法人への移行を申請していた社団法人埼玉県視力障害者福祉協会(岸(きし)邦久(くにひさ)会長)が 公益社団法人埼玉県視覚障害者福祉協会に、9月より移行した。 ≪7.短信≫  9月12日、高階(たかがい)恵美子(えみこ)議員が厚生労働大臣政務官の就任のご挨拶に日本盲人福祉センターにお越しくださいました。  本連合からは、9月9日に開催した第60回記念全国盲女性研修大会に高階先生がご臨席くだったことに対して御礼を申し上げました。  高階先生は、9月8日の朝に埼玉県の川越駅構内で全盲の生徒が足を蹴られて怪我をした事件に触れ、極めて遺憾であり、注意喚起が必要。 こういった問題も一緒に解決していきましょうと、力強いお言葉をくださいました。 ≪8.第9回視覚障害者向け総合イベントサイトワールド2014≫ ふれてみよう! 日常サポートから最先端テクノロジーまで 【日時】平成26年11月1日(土)〜3日(月)     午前10時〜午後5時(3日は午後4時まで) 【会場】すみだ産業会館サンライズホール    (JR・地下鉄 錦糸町駅前 丸井錦糸町店8・9階) 【入場料】無料 【イベント】体験発表、講演会、セミナー等のほか、       最先端の技術・機器および、日用品等の展示会 主催:(社福)日本(にほん)盲人福祉委員会(サイトワールド実行委 員会) 共催:(社福)日本(にほん)盲人会連合 (社福)日本(にほん)盲人社会福祉施設協議会/全国盲学校長会 (社福)日本(にっぽん)点字図書館/(社福)日本(にっぽん)ライトハウス (社福)視覚障害者支援総合センター  詳細はホームページ(http://www.sight-world.com/)に掲載。