視覚障害者の外出時の安全を総合的に保障するシステムを確立するための研究事業 ――報告書 ―― 平成25年12月 社会福祉法人日本盲人会連合 本事業は、教職員共済生活協同組合と 全国労働者共済生活協同組合連合会の助成により実施されたものである。 ――目次― ― はじめに 第T章事業概要 1.研究事業の概要 2.委員会の開催とアンケート調査の経過 第U章アンケート調査結果と分析 1.アンケート調査票 2.アンケート結果と分析 3.クロス集計 第V章外出時の安全を保障するシステムの検討 1.歩車分離式信号機が設置された交差点を安全に歩行するには 2.音の静かな車両との接触を避けるには 3.視覚障害者のてがかり 4.視覚障害者が求める音声歩行補助具の検討 (1)設置された機器が発信した情報を得る方法 (2)手元から電波を発信して受信した機器から情報を得る方法 (3)白杖又は白杖に取り付けられた機器から情報を得る方法 5.環境条件の設備を統一的に作るための提案 第W章まとめ 1.視覚障害者が安全に外出することができるようになるには (1)視覚障害当事者及び視覚障害者の移動に関する人から @全盲の立場から Aロービジョンの立場から B歩行訓練士の立場から Cガイドヘルパーの立場から D白杖製作メーカーの立場から (2)歩行支援機器メーカーから @点字ブロック(視覚障害者誘導用ブロック) A音声音響案内装置 B触知図及び手すり点字 Cトイレ内音声案内 編集後記 はじめに 視覚障害者は、目が見えない、見えにくいことにより外出など における移動時に不自由さを感じています。また、怪我や命に係 わる危険がつきまとうことから、命がけといっても過言ではない 決意で外出をしています。視覚障害者が安全に外出するための環 境を整えるためには、視覚障害者が外出をする時にどのような危 険な体験をしているのかを理解していただく必要があります。 今回、視覚障害があるが故の移動の困難さのアンケートを実施 したところ508件の回答を得ることができました。アンケート 結果からは、多くの視覚障害者が外出時に困難を感じ、様々な手 助けを必要としていることがわかりました。 検討委員会では、アンケートに加え、視覚障害当事者が外出時 に不自由を感じていることの国民への理解を求めること、また、 外出の安全が確保できるような環境を整えるためにはどうした ら良いか検討しました。 この検討委員会には視覚障害当事者の他、視覚障害者の外出に 関係の深い歩行訓練士、白杖製作業者、ガイドヘルパーに参加頂 き広く意見を求めました。さらに点字ブロックや点字案内や音声 案内等の歩行を補助する機器メーカーから、普段機器の製作や設 置の際に気になる点等をヒアリングし、報告書としてまとめるこ とができました。 この報告書を、全国の自治体、視覚障害者団体、盲学校、同行 援護事業所等に配布し、今後のまちづくりや歩行訓練の際に利用 して頂ければ幸いです。 また、報告書は多くの方に読んでいただけるよう、ホームペー ジにも掲載いたします。この報告書によって、危険を伴った視覚 障害者の外出が少しでも安全になり、より多くの視覚障害者が社 会参加できることを切望します。 末筆ではありますが、本事業実施にご協力を賜りました関係者 の皆様と、事業の実施に携わった検討委員並びにアンケート調査 にご協力を頂いた皆様に厚くお礼を申し上げます。 第T章事業概要 1.研究事業の概要 (1)事業名 視覚障害者の外出時の安全を総合的に保障するシステムを 確立するための研究事業 (2)調査の目的 視覚障害者は、目が見えない、目が見えにくいことによって 外出などにおける移動時には不自由さと怪我や命に関わる危 険がつきまとうことから、命懸けといっても過言ではない決意 で外出をしている。視覚障害者が外出する時には、どのような 危険な経験をしているのか等、視覚障害があるが故の困難なこ とを理解していただけなければ安全に外出するための環境整 備はできない。 そこで、検討委員会を設置し、視覚障害当事者の不自由さの 理解を求めるとともに、外出の安全が確保できるような環境整 備を検討する。検討委員会には視覚障害当事者の他、視覚障害 者の外出に関係の深い歩行訓練士、白杖製作業者等の外部有識 者から構成し広く意見を求める。 さらに点字ブロックや点字案内、音声案内等の歩行を補助す る機器メーカーから視覚障害者の外出に有効的な設置例等の ヒアリングを実施し、視覚障害者の安全な歩行の確保への取り 組み、環境整備の課題等について検討し、視覚障害者の外出の 安全を総合的に保障するシステムを提唱する。 本事業により視覚障害者の外出時の安全を総合的に保障す るシステムが確立し、尊い命が失われることなく視覚障害者の 社会参加が促進されることを目的に研究事業を実施する。 視覚障害者の外出時において、限りある支援を有効的に利用 して安全を総合的に保障するシステムを確立しまとめ、報告書 を作成して全国の自治体、視覚障害者団体、盲学校、同行援護 事業所等に配布し、今後のまちづくりや歩行訓練の際に利用し、 役立てていただく。 また、本連合ホームページにPDFデータの他、テキストデ ータ、点字データをダウンロードできるようにして、多くの視 覚障害者並びに関係者、同行援護事業従事者の参考となり、視 覚障害者の社会参加が促進される。 (3)調査方法 全国の日本盲人会連合の都道府県政令指定都市にある61 の加盟団体を通じて、各地域の視覚障害者また情報メールの講 読者に対し、点字・墨字・メールによるアンケート調査の手法 を用いた。また、日本盲人会連合青年協議会並びに女性協議会 にも調査を依頼し、計630件を調査対象とした。 (4)調査期間 平成25年7月30日(火)〜平成25年8月31日(土) (5)回収結果 調査件数:630件 有効回答数:508件(回答率80.6%) 2.委員会の開催とアンケート調査の経過 本報告書の作成にあたり、平成25年1月から12月までに 下記のとおり検討委員会を5回開催した。 第1回検討委員会 期日:5月15日(水) 場所:日本盲人福祉センター研修室 議事:委員長、副委員長の選任 検討委員会の進め方と日程の確認他 第2回検討委員会 期日:7月10日(水) 場所:日本盲人福祉センター研修室 議事:アンケート調査票(案)の確認 外出時の安全を保障するシステムの検討他 アンケート調査 開始:7月30日(火) 終了:8月31日(土) 点字、墨字、電子メールにてアンケート調査 を実施した。 第3回検討委員会 期日:9月18日(水) 場所:日本盲人福祉センター研修室 議事:アンケート結果の中間報告の確認 機器メーカーからのヒアリング他 第4回検討委員会 期日:11月20日(水) 場所:日本盲人福祉センター研修室 議事:アンケートのクロス集計結果の報告 報告書の目次の検討と執筆者の確認他 第5回検討委員会 期日:12月18日(水) 場所:日本盲人福祉センター研修室 議事:報告書案の作成 機器メーカーからのヒアリング他 第U章アンケート調査結果と分析 1.アンケート調調査票 視覚障害者の外外出時の安全を総合的に保保障する システムを確確立するためのアンケーート調査 このアンケートは視覚障害があるが故に生じる移移動の困難を 国民に理解していただだき、それらが少しでも改善されれることを目 的に実施致します。 質問は全部で65問問です。ご不明な点等がございまましたら下記 の連絡先までお問い合合わせください。 なお、回答を他の目目的で使用することはありません。日頃お感 じのことなどを気軽ににお答えください。 お忙しいところ申しし訳ございませんが、ご理解、ごご協力の程よ ろしくお願い致しますす。 ●回答の締め切り平平成25年8月31日(土)ま まで ●回答の送り先 ariiizumi-k@jfb.jp または下記連絡先 問い合わせ先 社会福福祉法人日本盲人会連合組織部部団体事務局 〒1669−8664 東京都都新宿区西早稲田2−18−22 電話話:03−3200−0011 F a x:03−3200−7755 E-maiil: ariizumi-k@jfb.jp 質問票 ◆ご記入されるあなた自身のことについてお聞きします 1.基本調査について 問1.あなたの年代をご記入ください。 @10代A20代B30代C40代D50代 E60代F70代以上 問2.あなたの性別をご記入ください。 @男性A女性 問3.あなたの視覚障害程度をご記入ください。 @全盲Aロービジョン(弱視) 問4.あなたの視覚に障害が発生した時期をご記入ください。 また、中途失明の方は、該当する年代も選択してください。 @先天性 A中途失明(10代・20代・30代・40代・50代 ・60代・70代以上) 問5.あなたのお住まいの都道府県・政令指定都市をご記入くだ さい。 (   ) 問6.あなたの外出する主な手段は何ですか。 @単独歩行Aガイドヘルパーや家族と歩行B盲導犬 Cその他(     ) 問7.あなたの外出頻度をご記入ください。 (該当する番号を一つだけ選んで下さい) @ほぼ毎日A週に2〜3回B週に1回C月に数回 Dその他(    ) 2.白杖使用について 問8.一人歩きの時に白杖を使用しますか。 @はいAいいえ 問9.問8で白杖を使用していないと回答した方にお聞きします。 使用していない理由をご記入ください。(自由記述) 問10.普段から白杖を使用している方にお聞きします。ガイド ヘルパーや付添者と一緒に外出する時には、白杖を使用していますか。 それともしまっていますか。 @使用しているAしまっている Bほとんど単独歩行のため付き添はいない 問11.問10で付添者と歩く時に白杖をしまっていると回答し た方にお聞きします。その理由をご記入ください。(自由記述) 問12.走行中の自動車や自転車等と接触し、白杖が折られたり 破損したことがありますか。 @はいAいいえ 問13.問12であると回答した方にお聞きします。どのように して折られたり破損したかご記入ください。(複数回答可) @右左折している自動車・自転車等と接触 A脇道から出てきた自動車・自転車等と接触 B歩道上で自動車・自転車等と接触 C駐車場へ出入りしている自動車と接触 Dその他(   ) 問14.白杖の予備を外出時に持ち歩いていますか。 @はいAいいえ 問15.白杖使用時に工夫している点がありましたらご記入ください。(自由記述) 3.歩行訓練について 問16.あなたは歩行訓練を受けたことがありますか。 @はいAいいえ 問17.問16で歩行訓練を受けたことがあると回答した方にお 聞きします。歩行訓練を受けて外出時に活かされている点、または気になる点がありましたらご記入ください。 (自由記述) 問18.問16で歩行訓練を受けたことがないと回答した方にお聞きします。歩行訓練を受けていない理由をご記入くださ い。(自由記述) 4.同行援護・移動支援事業について 問19.ガイドヘルパーを利用したことがありますか。 @はいAいいえ 問20.問19で利用したことがあると回答した方にお聞きします。 ガイドヘルパーの利用について満足していますか。 @はいAいいえ 問21.問20で満足していると回答した方にお聞きします。その理由をご記入ください。(自由記述) 問22.問20で満足していないと回答した方にお聞きします。その理由をご記入ください。(自由記述) 問23.ガイドヘルパーと同行中にヒヤリとしたことや怪我をしたことがありますか。ある場合は具体的にご記入ください。 (自由記述) 5.天候と時刻による危険度について 問24.外出時に、以下の天候の中で危険度が増すと感じるのはどれですか。(複数回答可) @晴(特に日差しの強い日)A曇B雨C強い雨 D風が強い日E雪やアイスバーンFその他(    ) 問25.危険を感じる天候の時に、何か工夫をしている方は、その対策をご記入ください。(自由記述) 問26.1日の中でどの時間が外出時に移動しづらい、または危険度が増すと思いますか。(自由記述) 時間(     ) 理由(     ) 問27.移動しづらい、危険度が増すと思われる時間に関して、何か工夫をしている方は、その対策をご記入ください。(自 由記述) 6.道路について 問28.歩道上において人や障害物との接触や怪我には至らなかったものの、ヒヤリとした経験はありますか。 @あるAない 問29.問28であると回答した方にお聞きします。どのような経験をしましたか。(複数回答可) @人や停車している自転車、自動車、看板、電柱、標識、お店の商品や荷物等の障害物にぶつかった A走行中の自転車、電動自転車、自動車、電動車いす等とぶつかった Bガードレール、ポール、車止め等にぶつかってしまった Cその他(     ) 問30.歩道上における安全確保として何が必要だと思いますか。 (自由記述) 問31.道路上において自転車や自動車との接触や怪我には至らなかったものの、ヒヤリとした経験はありますか。 @あるAない 問32.問31であると回答した方にお聞きします。どのような場所・場面で接触やヒヤリとした経験をしましたか。 @交差点内A駐車場の出入B脇道C歩道から知らずに道路に出てしまった D歩道から知らずにバスや自転車の専用レーンに入ってしまった Eその他(   ) 問33.停車中の自動車(ダンプ等を含む)により危険な目にあったことがありますか。 @あるAない 問34.問33であると回答した方にお聞きします。どのような危険な目にあいましたか。 @停車中の自動車のサイドミラーにぶつかってしまった A停車中の自動車の荷台にぶつかってしまった B停車中の自動車(ワゴン車等)の開いている後ろのドアにぶつかってしまった Cその他(    ) 問35.道路上や交差点内における安全確保として何が必要だと思いますか。(自由記述) 7.歩行を手助けする設備について 問36.外出時に以下の歩行を手助けするための設備を利用していますか。 利用しているものを選択してください。(複数回答可) @点字ブロックAエスコートゾーンB触知図 C手すりなどの点字標示D音声案内E盲導鈴(チャイム) Fトイレ内音声案内G音響式信号機 Hその他(   ) ※エスコートゾーンとは、横断歩道を利用する視覚障害者に対し、安全で利便性を高めるために、横断歩行の手がか りとする突起体の誘導ラインのことです。 問37.地域によって音が異なる音響信号機の音は統一された方がいいと思いますか。 @はいAいいえ 問38.問37ではいと回答した方にお聞きします。どのような音がいいと思いますか。(自由記述) (例:ピヨピヨ、カッコウ) 問39.駅構内や建物等の音声案内等について、どのような音声が聞きやすいと思いますか。 問40.設置位置が異なる手すり用点字標示、触知図については統一して欲しいと思いますか。 @はいAいいえ 問41.色や形状、敷設位置が異なる点字ブロック等の歩行を手助けする設備についてご意見がありましたらご記入ください。(自由記述) 問42.歩車分離式信号機をご存じですか。 @はいAいいえ 問43.問42で歩車分離式信号機をご存じと回答した方にお聞きします。歩車分離式信号機において危険な目にあったこ とがありましたらご記入ください。(自由記述) 問44.歩行時間延長信号機用小型送信機を利用していますか。 @はいAいいえ 問45.歩行時間延長信号機用小型送信機を利用しての利便性、または改善して欲しいことなどありましたらご記入ください。(自由記述) 8.看板・サイン等について ※ロービジョン(弱視)の方にお聞きします。 問46.外出時に駅や建物内等の看板やサインを利用していますか。 @はいAいいえ 問47.問46で利用していると回答した方にお聞きします。どのような看板やサインが利用しやすいですか。設置位置や コントラストについてご記入ください。(自由記述) 問48.駅や建物内の照明の明るさについてお伺いします。明るくて安全が確保されたこと、暗いまたは明るすぎて困った ことなどがありましたらご記入ください。(自由記述) 問49.明るさや暗さの対策として外出時に工夫している方法等がありましたらご記入ください。(自由記述) 問50.建物のガラス扉やお店の商品陳列棚にぶつかったことがありますか。 @はいAいいえ 9.駅・ホームについて 問51.駅・ホームで危険と思う所はどこですか。(複数回答可) @相対式ホームA島式ホームB階段CエスカレーターD改札口E構内Fその他(    ) 問52.問51で危険と回答した方にお聞きします。危険と思う理由及び危険を回避できる方法がありましたらご記入く ださい。(自由記述) 問53.ホームから転落したことがありますか。また、転落しそうになったことはありますか。 @転落したことがある(約   回) A転落しそうになったことがある(約   回) B特にない 問54.電車を利用して外出する時に、駅構内の構造や電車の乗継方法をあらかじめ調べますか。 @調べるA特に調べない 問55.問54で調べると回答した方にお聞きします。どのような方法で調べますか。 @インターネットA友人や知人に聞くB交通事業所に聞くC利用する駅員に聞く 問56.駅ホームにおいてスマートフォンやタブレット端末を使い、前を見ないで歩く人が増えていますが、最近駅ホームで人にぶつかることが増えたと感じますか。 @はいAいいえ 10.バスターミナルについて 問57.バスターミナルにおいて、危険な経験やヒヤリとした経験等はありますか。(複数回答可) @道路に出てしまったA人や障害物とぶつかったB段差につまずいたC方向感覚を失った Dその他(  )E特になし 問58.バスターミナルにおいて、どのようなことが困りますか。 (複数回答可) @乗り場がわからないA料金がわからないB時刻表がわからないCその他(  )D特に困らない 問59.問58の困ることの改善として何が必要だと思いますか。 (自由記述) 11.タクシーについて 問60.タクシーをどのように利用しますか。 @タクシー乗り場まで一人で行く A電話してタクシーに来てもらう Bタクシー乗り場まで人に案内してもらう C単独では乗らずに付添者と一緒に乗る Dその他(    ) 問61.タクシーに乗る時に、困ったことがありますか。(自由記述) 問62.タクシーを降りる時に、困ったことがありますか。(自由記述) 12.情報提供について 問63.近隣地域において、新たに点字ブロック、交差点の音響式信号機や音響・音声案内が設置された時に関係機関から 設置に関する情報提供はありますか。その情報はどこからの情報ですか。 @ある(   )Aない 問64.問63で情報提供がないと回答した方にお聞きします。どのように情報提供して欲しいと思いますか。(自由記述) 問65.安心・安全な移動のために必要と思われることがありましたらご記入ください。(自由記述) 以上で質問は終わりです。ご協力ありがとうございました。 2.アンケート結果と分析 1基本調査 (1)年齢 人数パーセント 10代 9人 1.8% 20代 7人 1.4% 30代 25人 4.9% 40代 52人 10.2% 50代 114人 22.5% 60代 180人 35.4% 70代以上 121人 23.8% 合計 508人 100.0% 60代が1番多く35.4%、続いて70代以上が23.8%、 50代が22.5%と、全体の80%以上が50代以上であった。 (2)性別 人数パーセント 男性 315人 62.0% 女性 190人 37.4% 無回答 3人 0.6% 合計 508人 100.0% 男性が62%、女性が37.4%と、男性の回答者の方が多かった。 (3)視覚障害程度 人数パーセント 全盲 339人 66.7% ロービジョン 168人 33.1% 無回答 1人 0.2% 合計 508人 100.0% 全盲が66.7%、弱視が33.1%の回答であった。この調査においては全盲がロービジョンよりも多い。 (4)視覚に障害が発生した時期 人数パーセント 先天性 256人 50.4% 中途失明 251人 49.4% 無回答 1人 0.2% 合計 508人 100.0% 回答者の内、先天性の方と中途失明の方がほぼ同数であった。 中途失明した時期 中途失明の時期人数パーセント 10代 79人 31.5% 20代 44人 17.5% 30代 29人 11.6% 40代 42人 16.7% 50代 26人 10.4% 60代 11人 4.4% 70代以上 1人 0.4% その他(幼児期)16人6.4% 無回答 3人 1.1% 合計 251人 100.0% 10代が31.5%、20代が17.5%と若い時期に失明した方が多かった。 (5)お住まいの都道府県 北海道3人 千葉市7人 滋賀県11人 徳島県7人 札幌市8人 神奈川県5人 京都府8人 愛媛県10人 青森県10人 横浜市6人 大阪府10人 高知県2人 岩手県15人 川崎市5人 大阪市5人 福岡県3人 秋田県9人 相模原市21人 堺市4人 福岡市1人 宮城県4人 山梨県4人 奈良県8人 北九州市2人 仙台市13人 新潟県7人 和歌山県5人 佐賀県5人 山形県0人 長野県10人 兵庫県4人 長崎県11人 福島県23人 富山県7人 神戸市6人 大分県6人 茨城県6人 石川県9人 岡山県19人 熊本県16人 栃木県7人 福井県9人 鳥取県9人 宮崎県7人 群馬県1人 静岡県5人 島根県11人 鹿児島県7人 埼玉県11人 愛知県10人 広島県18人 沖縄県8人 さいたま市8人 名古屋市14人 広島市1人 東京都26人 岐阜県7人 山口県6人 千葉県11人 三重県5人 香川県7人 (6)外出する主な手段(複数回答可) 人数 単独歩行 296人 ガイドヘルパーや家族 266人 盲導犬 23人 その他 28人 ※その他の主な意見:・自家用車・タクシー 単独歩行と、ガイドヘルパーの利用がほぼ同数で多い。外出時の安全対策のためには、機器の設置とガイドヘルパー利用の両方 が必要であることが読み取れる。 (7)外出頻度 人数パーセント ほぼ毎日 256人 50.4% 週に2〜3回 172人 33.9% 週1回 39人 7.6% 月に数回 33人 6.5% その他 5人 1.0% 無回答 3人 0.6% 合計 508人 100.0% ほぼ毎日外出する方が50%を超えていた。週に2〜3回外出 する人も30%を超えている。80%以上の方が週に2〜3回外 出している結果から、本調査においては外出頻度が高いことがわ かった。 2白杖使用について (8)一人歩きの白杖利用 人数パーセント はい 389人 76.6% いいえ 102人 20.1% 無回答 17人 3.3% 合計 508人 100.0% 回答者の66%が全盲の方ということも理由の一つであるが、 76.6%が普段白杖を使用していることがわかった。 また、全盲の方以外にもロービジョンの方も白杖を普段使用し ていることもわかった。 (9)白杖を使用していない理由 単独歩行が可能だから(弱視で少し見えている)・必要と感じない 49人 常に家族と同行 15人 盲導犬を使用しているため 8人 白杖使用の訓練を受けていない 7人 荷物になる 4人 一応持って入る(夜間やたまには使う) 17人 (10)普段から白杖を使用している人でガイドヘルパーや付き添いと同行時に白杖を使用しているか。 人数パーセント 使用している 297人 75.4% しまっている 70人 17.8% ほとんど単独歩行 27人 6.8% 合計 394人 100.0% 75%以上と多くの方が付添者と同行時にも白杖を使用している。周囲に視覚障害を理解してもらうことや自らの身を守るた めにも白杖は常に持ち歩くことが必要である。 (11)白杖をしまっている理由 介助者がいると安心 27人 荷物を持つので邪魔になる・片手を開けておきたい 25人 必要性を感じない 16人 白杖を使用していない理由としまっている理由がほぼ同一意見であった。 (12)走行中の自動車や自転車と接触し白杖が折られたり破損 したことがあるか。 人数パーセント はい 213人 46.6% いいえ 244人 53.4% 合計 457人 100.0% 46.6%の方が折られた経験があり、多いと思われる。 (13)白杖が折られたり破損した理由 人数 右左折している自動車・自転車等と接触 457人 脇道から出てきた自動車・自転車等と接触 92人 歩道上で自動車・自転車等と接触 135人 駐車場へ出入りしている自転車と接触 32人 その他 50人 その他の主な意見:人に踏まれておられた 17人 溝穴にはまってしまった 4人 (14)白杖の予備を持ち歩いているか 人数パーセント はい 97人 19.1% いいえ 345人 67.9% 無回答 66人 13.0% 合計 508人 100.0% 46.6%もの方が白杖を折られたと回答している。それに対 し、予備の白杖を持ち歩いている方は、19.1%と少なかった。 折られたことを考えて予備の白杖を持ち歩くことを、当事者がで きる安全対策の1つとして、提言する必要がある。 (15)白杖利用の工夫 混雑時白杖の使い方・振り幅を小さく・立てて短く 46人 折りたたみの杖を使用し適宜たたむ 16人 石づきを工夫する 11人 反射材・蛍光テープを使用 6人 ゴムや紐を付けて白杖が手から離れないようにする 5人 鈴をつける 5人 3歩行訓練 (16)歩行訓練を受けたことがあるか 人数パーセント はい 261人 51.4% いいえ 235人 46.3% 無回答 12人 2.3% 合計 508人 100.0% (17)歩行訓練を受けて生かされている点、気になる点 白杖の操作方法がわかった 63人 外出が自由にできるようになった 25人 安全に歩行できるようになった 15人 その他の意見:定期的に訓練を受けるべきだ 3人 (18)歩行訓練を受けていない理由 必要ない・単独で歩ける 82人 歩行訓練を受ける機会がなかった 74人 一人で出かけない 18人 歩行訓練が必要ないという回答が82人に対し、歩行訓練を受 けたため、外出ができるようになったり、安全に歩けるように なったという回答が40人あった。 また、歩行訓練を受ける機会がなかったという回答が74人 あった。街のインフラ整備を充実させることと同様に、歩行訓練 が重要であることがわかる。 視覚障害者の外出時の安全確保のために、広く歩行訓練を受け る機会をつくる必要がある。そのためにも盲学校やリハビリテー ションセンター等においても歩行訓練を実施していただくこと を提言する。 また、歩行訓練士を養成し、全国に配置することも必要性である。 4同行援護・移動支援事業について (19)ガイドヘルパーの利用の有無 人数パーセント はい 344人 67.7% いいえ 154人 30.3% 無回答 10人 2.0% 合計 508人 100.0% (20)ガイドヘルパーの利用に満足しているか 人数パーセント はい 253人 73.5% いいえ 91人 26.5% 合計 344人 100.0% 508人中344人(67.7%)という多くの方がガイドヘ ルパーを利用している。344人のガイドヘルパー利用者の内、 253人(73.5%)が概ね満足していると回答している。 満足している回答が多いことは良いが、91人(26.5%) に不満があることも十分意識する必要がある。 (21)満足している理由 対応がいい・親切・丁寧 57人 安心・安全だから 51人 希望どおりしてくれる 37人 お互いになれている 11人 満足している理由が大きく分けて2点あることがわかる。1点 目はガイドヘルパーという人への満足。2点目は安心して安全に 移動できることへの満足があげられている。 (22)満足していない理由 案内がへた・状況説明できない 46人 時間・目的に制限がある 21人 ヘルパーが足りない 14人 満足していない理由も大きく分けて2点あり、1点目はガイド ヘルパーの対応の悪さやヘルパー不足という人への不満。2点目 は制度への不満があげられている。 同行援護より前の資格でガイドヘルパーに従事している人は、 情報提供の研修を受けていない。そのため状況説明ができない人 もいる。今後は情報提供の研修を受けた人がガイドヘルパーにな るため、徐々に改善されると思われる。 また、ガイドヘルパーの時給は 1,000円前後である。その金額 では生活することは難しいため、30代、40代の若い世代のガ イドヘルパーは少ない。ガイドヘルパーが足りない上に、なり手 も少なく早急に解決しなければならない問題である。 (23)ヘルパーと同行中にヒヤリとしたり、怪我をしたことがあるか 階段・段差で転倒・踏み外し 31人 ぶつかる・ぶつける 23人 転んだ 6人 道に迷う 4人 遅刻した 3人 ドアにはさまる 3人 命に関わることにもつながるので、ガイドヘルパーには質の向 上をお願いする。また、利用者にもガイドヘルパーにお任せでは なく、歩行を意識することをお願いする。 5天候と時刻による危険度 (24)危険度が増す天候(複数回答可) 人数 晴れ(特に日差しの強い日) 87人 曇 15人 雨 188人 強い雨 370人 風が強い日 347人 雪やアイスバーン 355人 風、雨、雪と音が聞き取りにくい状況において、危険度が増す と多くの人が回答している。悪天候の際の安全対策のためには、 点字ブロックやエスコートゾーン、手すり点字など触覚で確認が できるものが必要になる。 (25)危険と感じる天候で工夫している対策 外出しない 86人 タクシー・車 80人 サングラス・帽子 38人 カッパ・レインコート着用 31人 靴に滑り止めをつける・滑らない靴をはく 30人 ゆっくり歩く 18人 アンケート結果からは、車を利用したり、外出しないことで危 険を回避している人が多い。その他は帽子やすべらない靴等身に つけるものによる工夫で回避している。 ゲリラ豪雨の際は信号も渡れず、冠水して白杖を利用すること もできない。また、タクシーも来ないので、今後何らかの対策が必要になる。 (26)外出しづらい時間 夕方・夜 172人 朝夕ラッシュ時 123人 昼間 28人 早朝・深夜 28人 朝 23人 外出しづらい理由 人が多い 101人 車・交通量が多い 81人 暗い・見えにくい 68人 まぶしい・日差しが強い 20人 暗いと人や車から見えにくい 20人 深夜・早朝人が少ないと尋ねられない 17人 音響式信号機がとまってしまう 10人 (27)移動しづらい・危険度が増す時間の工夫 外出しない・その時間帯をさける 57人 反射材・懐中電灯を使用する 47人 ゆっくり・慎重に歩く 37人 タクシーを利用 32人 ヘルパー・家族に頼む 23人 白杖の使い方を工夫する 15人 遮光レンズ・サングラス・帽子 14人 明るい目立つ服装をする 10人 危険を避けるという回答が多いが、それぞれ工夫もしている。 さらなる安全対策が必要である。 6道路について (28)歩道上においてヒヤリとした経験はあるか。 人数 パーセント はい 446人 87.8% いいえ 49人 9.6% 無回答 13人 2.6% 合計 508人 100.0% 9割近くの方がヒヤリとした経験があると回答している。外出 時に当事者は、危険回避のためにも必ず白杖を持つ必要がある。 (29)どのような経験をしたのか。(複数回答可) 人数 人・停車している自転車・看板等にぶつかった。 389人 走行中の自転車等とぶつかった。 252人 ガードレール、ポール等にぶつかった。 286人 ※その他の意見:溝や穴に落ちた 15人 駐停車車両においては、視覚障害者の移動時には非常に危険で あることを訴え、更なる取り締まりの強化を求める必要がある。 また、自動車学校に対してもこれから免許を取得する方々に対 して駐停車が視覚障害者の外出の妨げになることや、白杖と車体 が接触した際の対処方法等を伝え、広く啓発していく必要がある。 歩道上の看板や自転車運転のマナーにおいても社会に対して マナーの向上を訴える必要がある。 (30)歩道上の安全対策は何が必要か 点字ブロック・道路上に物を置かない 122人 点字ブロック設置 104人 違法駐車・駐輪 54人 歩道の自転車走行禁止 33人 歩道と自転車道の分離 29人 自転車のマナー向上 17人 ガードレールを付ける 13人 電信柱撤去 13人 (31)道路上においてヒヤリとした経験はあるか 人数パーセント はい 404人 79.6% いいえ 88人 17.3% 無回答 16人 3.1% 合計 508人 100.0% (32)どのような場所・場面で接触やヒヤリとした経験があるか(複数回答可) 人数 交差点内 231人 駐車場の出入口 171人 脇道 195人 歩道から道路に出てしまった 170人 歩道からバスや自転車の専用レーンへ出てしまった 56人 交差点内でヒヤリとした経験が多いことから、エスコートゾーンの敷設が必要である。 (33)停車中の自動車により危険な目にあったことがあるか 人数パーセント ある 298人 58.7% ない 182人 35.8% 無回答 28人 5.5% 合計 508人 100.0% (34)どんな危険な目にあったか(複数回答可) 人数 サイドミラーにぶつかってしまった 238人 荷台にぶつかってしまった 179人 開いている後ろのドアにぶつかってしまった 107人 その他 44人 ※その他の主な回答:荷台から出ている荷物にぶつかってしまっ た、急にドアが開いた。 (35)道路上や交差点における安全確保として何が必要か 音響式信号機の設置 113人 エスコートゾーンの設置 85人 点字ブロックの敷設 51人 違法駐車・マナー向上 46人 声掛け 11人 ※その他の意見:白杖使用者であることを知らせる事 2人 道路に凹凸をつける 2人 ガードレールをつける 2人 7歩行を手助けする設備 (36)外出時に利用している歩行を手助けする設備(複数回答可) 人数 点字ブロック 443人 エスコートゾーン 229人 触知図 38人 手すりなどの点字標示 237人 音声案内 329人 盲導鈴(チャイム) 258人 トイレ内音声案内 234人 音響式信号機 397人 (37)地域で異なる音響式信号機の音は統一された方がよいか。 人数パーセント はい 396人 78.0% いいえ 89人 17.5% 無回答 23人 4.5% 合計 508人 100.0% (38)どのような音がいいと思うか。 ピヨピヨ・カッコー 257人 統一されていればなんでもいい 30人 歌・メロディ 23人 音声ガイド 20人 信号機の音については、ピヨピヨ・カッコーが良いという回答 が1番多い。音の種類にこだわるよりも今一番普及されているピ ヨピヨ・カッコーで全国的に統一してほしいということがアン ケート結果から覗えた。 (39)駅構内や建物内の音声案内等についてどんな音声が聞き やすいか。 女性の声 74人 人の声 57人 ゆっくりはっきりした言い方 39人 チャイム・ピンポン 29人 今のままでいい 17人 (40)設置位置が異なる手すり用点字標示、触知図は統一してほしいか。 人数パーセント はい 390人 76.8% いいえ 49人 9.6% 無回答 69人 13.6% 合計 508人 100.0% (41)色や形状、敷設方法が異なる点字ブロック等についての意見。 コントラストをつけてほしい・黄色がいい 69件 形や厚さを統一してほしい 60件 敷設の時は当事者団体に立ち会わせる 6件 凹凸がわかりやすいように 6件 (42)歩車分離式信号機を知っているか 人数パーセント はい 205人 40.4% いいえ 274人 53.9% 無回答 29人 5.7% 合計 508人 100.0% 車両が右左折時に人を巻き込みにくく、交通事故が減少してい ることから、歩車分離式信号機が増加している。ところが、視覚 障害者に対して周知が充分されていないことが読み取れる。 (43)歩車道分離式信号機において危険な目にあったことがあるか。 青だと思い横断しかけたら車と接触しそうになった 14人 音声がないと渡るのが難しい 7人 車の音を頼りに交差点に入ってしまった 6人 青の時間が短くて渡りきれない 4人 アンケート結果によると危険な目にあったという人数は少な いが、そもそも視覚障害者にとっては、今渡ろうとしている信号 が歩車分離式信号機かそうではない一般的な信号機かどちらか わからない。特に全盲の方は車や人の流れから信号を横断するた め、単独で歩車分離式信号機を横断することは容易ではない。歩 車分離式の信号機においては何らかの安全対策と、歩車分離式信 号機そのものの周知広報が必要である。 (44)歩行時間延長信号機用小型送信機を利用しているか 人数パーセント はい 42人 10.6% いいえ 337人 85.3% 無回答 16人 4.1% 合計 395人 100.0% (45)歩行時間延長信号機用小型送信機を利用しての利便性・ 改善点 全ての信号機において利用できるようにしてほしい 20人 電池寿命を長く・小型化してほしい 6人 24時間音声が出るようにしてほしい 5人 どの信号機が対応かをわかるようにしてほしい 5人 太陽電池などの工夫ができればもっと使いやすい。 8看板・サイン等 ※ロービジョンのみ回答 (46)外出時、駅や建物内等の看板やサインの利用 人数パーセント はい 83人 49.4% いいえ 68人 40.5% 無回答 17人 10.1% 合計 168人 100.0% (47)どのような看板やサインが利用しやすいか。設置位置やコントラストについて コントラストをはっきりさせる 57人 高いと見えないので設置位置を工夫してほしい 39人 大きい太い文字で書く 29人 足元にも内容を書いてもらいたい 4人 駅ホームでは看板が見えにくい弱視者に対する配慮として、足 元や目の高さに情報を掲示することは効果がある。ただし、その 情報が記載された所に人が立たれると使えない不利点もある。 (48)駅や建物の照明について、暗いまたは明るすぎて困ったことがあるか 節電から照明が少ない駅が多く、暗くて歩く時に困る 49人 明るすぎると見えない 12人 床・壁が黒いと見えない 2人 (49)明るさや暗さの対策として外出時に工夫している方法 サングラス・遮光メガネを使用 47件 ライトを持参 29件 帽子をかぶっている 8件 ゆっくり回り道する 5件 (50)建物のガラス扉やお店の商品陳列棚にぶつかったことがあるか 人数 はい 79人 いいえ 17人 無回答 72人 合計 168人 9駅・ホームについて (51)駅・ホームで危険と思うところはどこか。(複数回答可) 人数 相対式ホーム 185人 島式ホーム 271人 階段 220人 エスカレーター 96人 改札口 50人 構内 78人 (52)危険と思う理由と回避できる方法 転落防止のためにホームドアや可動柵の設置 81人 階段を踏み外さないように段鼻への色づけ 26人 点字ブロックをホームの中央に敷設してほしい 19人 駅ホームに電車が入っている際は音声案内が必要 17人 人とぶつかると方向がわからなくなり困る 16人 電車とホームとの高さを一緒にしてほしい 10人 無人駅を作らずに、ホームには必ず人員を配置してほしい 10人 ごみ箱や売店や電柱などがありホームが狭い 9人 人が多い所では白杖の使い方に気を付ける 5人 (53)ホームから転落したことや転落しそうになったことがあるか。 人数 転落したことがある 105人 1回 54人 2回 28人 3回 13人 5〜10回 5人 回数無回答 5人 転落しそうになったことがある 135人 1回 44人 2回 30人 3回 25人 5〜10回 29人 回数無回答 7人 特にない 256人 アンケート回答者508人の内、105人が転落した経験があ り、135人が転落しそうになったことがあると回答している。 転落防止にはホームドアや可動柵の設置と内方線付き誘導用 ブロックの敷設が必要である。また、併せて駅ホームには駅員を 配置する必要がある。 (54)電車を利用して外出する際、駅構内の構造や電車の乗継方法を事前にしらべるか。 人数パーセント 調べる 261人 51.4% 特に調べない 198人 39.0% 無回答 49人 9.6% 合計 508人 100.0% (55)どのような方法で調べるか。 人数 インターネット 133人 友人や知人に聞く 120人 交通事業所に聞く 69人 利用する駅員に聞く 122人 (56)駅ホームにおいてスマートフォンやタブレット端末を利用し前を見ないで歩く人が増えている。そのことを踏まえ て、最近駅で人とぶつかることが増えたか。 人数パーセント はい 211人 41.5% いいえ 216人 42.6% 無回答 81人 15.9% 合計 508人 100.0% 10バスターミナル (57)バスターミナルにおいて危険な経験やヒヤリとした経験はあるか(複数回答可) 人数 道路に出てしまった 94人 人や障害物とぶつかった 176人 階段につまずいた 186人 方向感覚を失った 156人 特に困らない 144人 歩車道の段差のない所や、バス乗り場の場所がわかりにくい所 が多い。視覚障害者にとってバスターミナルの利用は困難である。 全てのバスターミナルに点字ブロックや音声案内、または案内人 の配置など配慮が必要である。 (58)バスターミナルにおいて困ること(複数回答可) 人数 乗り場がわからない 331人 料金がわからない 231人 時刻表がわからない 302人 特に困らない 66人 ※その他の意見:停留所が1つで複数の行き先があるため、 停車したバスの行き先がわからない 27件 (59)困ることへの改善点として何が必要か。 音声案内を設置してほしい 81人 案内窓口に人を設置して対応をしてほしい 77人 行き先をアナウンスしてほしい 40人 点字ブロックや点字の案内板を設置してほしい 40人 時刻表を大きく見やすい位置に設置してほしい 22人 人による声掛けやサポートをしてほしい 7人 11タクシー利用 (60)タクシーをどのように利用しているか(複数回答可) 人数 乗り場まで一人で行く 198人 電話してきてもらう 354人 乗り場まで人に案内してもらう 117人 単独では乗らずに付添者と一緒に乗る 72人 (61)タクシーに乗る時に困ったこと。 乗り場の位置やどの車が空車かわからない 34人 不機嫌な運転手が多い 26人 タクシーのドアの位置がわからず頭をぶつける 24人 道を知らない運転手 15人 タクシーに乗車中に今料金はいくらか知りたい 7人 行先をきちんと説明しても違う場所に降ろされた 7人 盲導犬との乗車を断られた 5人 乗車の際に歩車道の段差に躓く 3人 乗車拒否された 2人 (62)タクシーを降りる時に困ったこと。 自分が希望した場所とは全く異なる所で降ろされた 92人 進みたい方向とは逆の向きで降ろされた 27人 水たまりや植木や段差などがある場所で降ろされた 21人 障害者割引を利用すると嫌な態度をとられる 8人 料金をごまかされた 7人 道を間違えられた 3人 調査結果をタクシー協会に伝えてマナー向上の啓発を図る。 12情報提供について (63)近隣地域において、新たに点字ブロック、交差点の音響式信号機や音響・音声案内が設置された時、関係機関から 設置に関する情報提供はあるか。 人数パーセント ある 138人 27.2% ない 303人 59.6% 無回答 67人 13.2% 合計 508人 100.0% ※ある場合の情報提供元 視障協・団体 54人 警察・官公署 35人 友人・知人 8人 職場・学校 3人 (64)情報提供がないと回答した方でどのように情報を提供して欲しいと思うか。 広報誌 92人 協会・団体 51人 自治体・行政 16人 事前に知りたい 13人 電話で 12人 インターネット・メールで 8人 (65)安心・安全な移動のために必要と思われること。 ガイドヘルパーの充実60人 主な内容 ・いつでもガイドヘルパーが利用できるようにしてほしい。 ・同行援護におけるサービス利用時間などの地域間格差をなくしてほしい。 ・ガイドヘルパーの質を高めてほしい。 点字ブロックと音声・音響式信号機等の設置 56人 主な内容 ・夜間であっても音声・音響式信号機の音が鳴るようにしてほしい。 ・都市部ばかりではなく、全国どこにでも点字ブロックを敷設してほしい。 視覚障害者への声かけと福祉教育の充実 53人 主な内容 ・困っている視覚障害者がいたら声をかけてほしい。 ・小学校や中学校において福祉教育を充実させてほしい。 ・ボランティア等を配置していただきたい。人による声かけが一番安心できる。 白杖の必要性と視覚障害者の自覚 33人 主な内容 ・白杖が折れても大丈夫なように白杖の予備は必ず持ち歩くように心がけること。 ・近隣の方と、普段から近所付き合いをして、緊急時には声をかけてもらえるようにしておくこと。 交通ルールの周知徹底とマナーの向上 28人 主な内容 ・点字ブロックの上にものを置かないでいただきたい。 ・歩道で立ち話をしないでほしい。 ・自転車や自動車の運転手に視覚障害者へ配慮する気持ちをもってもらいたい。 ピヨピヨ・カッコーの統一と音声ガイドの充実 14人 主な内容 ・音声や音響案内を全国統一していただきたい。 3.クロス集計 (1)歩道上でヒヤリとした経験のある人の内、歩行訓練を受けた人と受けていない人の割合          ヒヤリ経験あり ヒヤリ経験なし 歩行訓練を受けた 183人       14人 歩行訓練を受けてない 167人     23人 (2)歩道上でヒヤリとした経験がある人の内、白杖を持ち歩く人と持ち歩かない人の割合       ヒヤリ経験あり ヒヤリ経験なし 白杖を持ち歩く 262人     22人 白杖を持ち歩かない 81人    12人 (3)全盲とロービジョンの方で、白杖を持ち歩く人と持ち歩かない人の割合    白杖を持ち歩く 白杖を持ち歩かない 全盲    205人    26人 ロービジョン83人 67人 (4)外出時の天候で晴れ(特に日差しの強い日)の日に危険度が増すと回答した人の割合 全盲 20人 ロービジョン 59人 (5)夜間において危険を感じ外出を避ける人の割合 全盲 47人 ロービジョン 50人 第V章外出時の安全を保障するシステムの検討 1.歩車分離式信号機が設置された交差点を安全に歩行するには 平成4年11月、上川橋交差点において登校途中の小学生が左 折ダンプと接触した事故がきっかけとなり、歩車分離式信号の設 置が全国で検討されることになったと言われています。 また、平成22年に内閣府で発行した交通安全白書によると交 通死亡事故の約半数が交差点や交差点付近で発生しているとい うデータがあります。そこで全国の横断する歩行者の多い交差点 において歩行者と右左折車両との接触事故を防ぐため、歩車分離 式信号機の整備が進められています。 その結果、歩車分離式信号機が設置された交差点においては歩 行者と車両の双方が信号を守れば、接触事故がない仕組みになり 交差点内の人身事故は減少するなど成果が上げられています。 その一方で、周囲の動きを感じながら信号を渡る視覚障害者に とっては、歩車分離式信号機が設置されている交差点が必ずしも 安全とは言えません。その主な原因は、横断しようとしている交 差点が歩車分離式信号機であるかどうかの確認は、目で確認する ことが難しい視覚障害者にとっては困難なことがあげられます。 先にも述べたとおり、視覚障害者が交差点を渡る場合は、多くの 人が周囲の状況(歩行者の靴の音や車両が進行するエンジン音) を参考にしています。 つまり、歩行者と車両の通行が分かれていると歩行者用の信号 は赤のままで、直進車の信号が青から赤に代わります。次に右左 折車の信号が青に代わったことが視覚障害者は確認することが できません。同じ方向へ進む車両のエンジン音を耳で確認し、自 分が進む歩行者用信号も青に代わったと思ってしまいます。その 結果、交差点を渡ろうとしてしまうので車両と接触する危険性が 高いのです。 また、すべての方向の車両用信号が赤になり、歩行者が斜めに 横断できるようになるスクランブル方式の交差点ではあらゆる 方向から来る人とぶつかってしまい、自分の進みたい方向を見 失ってしまいます。 そこで、視覚障害者が安心して安全に交差点を渡るためには、 音声・音響式信号機の設置とエスコートゾーン(横断歩道帯上に 突起上の誘導ライン)の敷設が必要だと考えられます。 また、アンケート結果から、78%もの人が音声・音響式信号 機の音は統一した音響と鳴らし方で設置することが望ましいと 回答しています。現在設置されている多くの音声・音響式信号機 はその地域によって音の種類や鳴らし方が異なります。その地域 に慣れていない視覚障害者にとっては音響が何を知らせている のか判断することが難しく有効に利用されないこともあるから です。 また、音声・音響式信号機は地域住民への配慮から、夜間や早 朝に音がならないよう音声案内をする時間が制限されている信 号機もあります。周囲に人や車両が少ない夜間や早朝に音声案内 を利用したくともできない状況では、せっかく設置された機器が 有効に利用されていません。 視覚障害者が全国各地のすべての交差点を安心して安全に渡 るためには、音声・音響案内を全国で統一すること。また、音声・ 音響案内は、時間に制限されることなく、地域住民への配慮がで きるよう、小型送信機で電波を送信して、反応するタイプの音響 式信号機の設置が今後も望まれます。 日本における主な5つの歩車分離式信号機 @歩行者専用現示方式 すべての方向の車両用信号が赤に なっている間に、すべての歩行者用 信号が青になるもの。斜め横断はで きません。 Aスクランブル方式 すべての方向の車両用信号が赤に なっている間に、すべての歩行者用 信号が青になるもの。斜め横断もで きるもの。 B右左折車両分離方式 (セパレート式) 歩行者用信号が青の 時は、同一方向に進行す る車両は矢印信号によ り右左折させないもの。 C右折車両分離方式 歩行者用信号が青の時は、同 一方向に進行する車両は矢印 信号により右折させないもの。 D押しボタン式 ボタンを押したときのみすべての歩行者信号が青になる方式 ・京都府警察本部ホームページから転用 2.音の静かな車両との接触を避けるには 視覚障害者は走行している車両との接触を避けて安全に歩行 するために車両のエンジン音を参考にしています。車両のエンジ ン音を聞いて、車と自分との距離や車がどの方向に進もうとして いるのかを判断し歩いています。視覚障害者にとって車両のエン ジン音は、安全に歩行するために欠かすことができないものです。 音が静かでエンジン音が聞こえにくいハイブリット車や電気自 動車等が現在多く走っており、視覚障害者は接触しそうになるな ど恐い思いをしています。特に接触する危険があるのが、歩道と 車道の区別がない細い道で車の運転手が歩行者を追い抜こうと する時です。エンジン音がほとんどないために、視覚障害者は車 両が接近していることに気付くことができません。歩いている進 路を変えたり、道路を横断しようとして、近づいている車と接触 しそうになるなど危険な思いをしています。また、視覚障害者の みならず高齢者も同様に危険な思いをしていると聞きます。 車の運転手から見ても、視覚障害者や高齢者に車の存在を認識 してもらえず接触しそうになるなどヒヤリとした経験も多くあ ります。 そうした背景をもとに、国土交通省ではハイブリッド車等の静 音性に関する対策検討委員会を平成21年7月から4回開催し、 「平成22年1月にハイブリッド車等の静音性に関する対策に ついて(報告書)」を作成しました。 その報告書の中でも、車両接近通報装置の設置に一定の要件が 示されて各自動車メーカーにおいても発音装置の取り付けに理 解が進んでいます。今後もすべての音が静かなハイブリット車や 電気自動車に発音装置が整備され、視覚障害者に車の接近を知ら せることが必要になってきます。 同様に、歩道を走る自転車についても接触する恐れがあります。 自転車のタイヤホイールに簡単に取り付けることができる発音 装置があるのでその発音装置の取り付けが進むことを望みます。 自動車と自転車の運転手に視覚障害者への配慮と、運転マナー の向上が求められているのです。 (1)ハイブリット車の保有台数 国土交通省:ハイブリッド車等の静音性に関する対策検討委員会 平成22年ハイブリッド車等の静音性に関する対策について(報 告書)から掲載 3.視覚障害者の手がかり 視覚障害者は外出する際に、見えない、見えにくいことによっ て周囲の状況を確認することが難しいと感じる方が多くいます。 そのため、目的地とは逆の方向へ歩いてしまうことや、何らかの 拍子に自分の位置がわからならくなってしまうことがあります。 多くの視覚障害者は白杖を持ち目的地までの地図を頭の中に 描いて外出しています。頭に地図を描く時には、周囲の環境を参 考にします。例えば、パチンコ店の騒音や商業施設からのBGM、 自動販売機の運転音、商業施設や民家などのエアコン室外機から 発せられる音、飲食店からの匂い、足から伝わる道路の感触(斜 めになっているところ、凸凹しているところ等)を参考に自分の いる位置やどこの道で曲がるか等を確認しています。それらの私 たちにも身近な音が視覚障害者にはとっても重要なのです。ただ、 こうした音はいつも同じようにあるわけではありません。飲食店 の匂いや商業施設の音は営業時間外にはなくなります。これらの 身近な音や感触を頼りにはしつつも、視覚障害者が安全に安心し て外出するためには、音声・音響案内装置や、点字ブロックや点 字案内板の整備が必要不可欠だと言えます。 次に、視覚障害者がどのようにして周囲の状況を確認しながら 歩行しているかを、実例をあげて解説します。図1は、西早稲田 駅周辺の地図です。西早稲田駅1番出口から日本盲人福祉セン ターまでの移動を解説します。 西早稲田駅1番出口から日本盲人福祉センターへの移動 (1)西早稲田駅の1番出入り口を出ると左側にコンビニエンス ストアがあります。その自動ドアの開閉音やBGMが聞こえます。 (2)直進し、歩道に出ます。点字ブロックが敷設されているの で足で警告ブロックを確認します。その点字ブロックを右折 します。コンビニエンスストアのBGMとは逆の方向に進みます。 (3)直進すると、左側に横断歩道があり、音響式信号が設置さ れています。耳でその音響と、足で警告ブロックを確認して 右折します。曲がる角に自転車屋があるので接客している声なども参考になります。 (4)登り坂になっていますので、点字ブロックと坂を足で確認 しながら直進します。その途中に右側から自動販売機の運転音が確認できます。 (5)直進すると、警告ブロックで一旦停止をします。左側からは自動販売機の運転音を確認するとそこが十字路になっています。 (6)車両が来ないことを確認し、十字路を直進します。点字ブロックに沿って直進すると、右側に自動販売機の運転音を確認します。 (7)そのまま直進すると警告ブロックがあり、日本盲人福祉センターが左側にあります。音声案内が設置されているので、 小型送信機を使い、音声案内を聞くこともできます。 4.視覚障害者が求める音声歩行補助具の検討 (1)設置された機器が発信した情報を得る方法 視覚障害者にとって音の情報は大切なものである。様々な音声 情報機器が歩行支援方法として提供され、安全保障を担っている。 また、各方面で規格や法規が整備されている。 @利用者に反応しなくても情報発信を得る場合(常時音) 1)音響式信号機 「ピヨピヨ」「カッコー」等の擬音や「通りゃんせ」「富士の山」等の音響によって自分の進む方向の信号が「赤」なのか「青」 なのかわかるように設置されている。最近では、鳴き交わしにより進行方向をわかりやすくする方式もとられており、エス コートゾーンと併用することで更に、安全性は確保されている。 2)盲導鈴(チャイム) 視覚障害者が最も方向定位できる装置として定着した装置。 主に、駅改札口や公共施設の入口に設置され玄関の場所をお知 らせしている。最近では、国土交通省の音のガイドラインによ り、トイレなどでは「女子トイレ」「男子トイレ」という音声 で案内する方法も推奨されている。 A利用者に反応して情報発信を得る場合 1)センサーに反応して情報提供 視覚障害者を特定できないが、センサーに反応した時だけ音 声情報を提供する方式で、常時音の方式と比較して、センサー が反応したときだけ動作するので周りの人への騒音問題には 配慮された方式と言える。音声発生源(スピーカーなど)を目的 場所に設置することで安全に案内することが可能である。 2)その他 JIST0901では、音声案内を行うにあたり安全保障のため に必要な音声提供場所およびタイミング等を規定している。 参考文献 1 公共交通機関の旅客施設に関する移動円滑化整備ガイド ライン(国土交通省) 2 JIS T0901 高齢者・障害者配慮設計指針移動支援のた めの電子的情報提供機器の情報提供方法 3 ARIB STD-T68特定小電力無線局音声アシスト用無線 電話用無線設備(総務省) (2)手元から電波を発信して受信した機器から情報を得る方法 @音響式信号機 視覚障害者が横断歩道を安心して安全に歩行するために、 (1)項で説明した音響信号機がある。この音響信号機は、視覚障害者にとって 1)「押しボタン」の位置が不明 2)常時音響がなっていると周りの住民の方への騒音問題として気兼ねがある 3)夜間になると音響が止められてしまうなどの問題点もある。 この問題解決の方法として、各市区町村が「自立支援用具」 として認定している小型送信機(シグナルエイド)がある。 視覚障害者が、交差点付近まで来たときに小型送信機を操作 すると電波が発信され、音響信号機がその電波を受信すると歩 行者信号機を「赤」から「青」に変え、音響を放送することが できます。また、発信器の電波を受信したときには、「青延長 用押しボタン」を押されたのと同様に青時間が延長され、視覚 障害者の方が、安心して安全に歩行することができます。 携帯用発信器による「音響式信号機」と「青延長用押しボタン付き信号機」の遠隔操作 「音響式信号機」と「青延長用押しボタン付き信号 機」は、「携帯用発信器(シグナルエイド)」を使用する ことで遠隔操作が可能です。 (一部未対応箇所があります。)また、携帯用発信器は 身体障害者福祉法に定められている「自立支援用具」 に指定されており、各市区町村から「歩行時間延長信 号機用小型送信機」として給付の措置が行われる場合 があります。(警視庁ホームページより引用) A音声案内装置 小型送信機は、音響信号機の他にも公共施設の玄関やトイレ 案内を行う音声案内装置用の発信器としても利用され、音声案 内装置は、全国に設置活動が推進されている。 小型送受信機(シグナルエイド) このシステムは、利用者が携帯する小型送信機(シグナルエ イド)と音声案内の必要箇所に設置する音声ガイド装置から構 成されます。 音声ガイド装置側から発信される電波の受信範囲に利用者 が入るとシグナルエイドが「ピッピッピッ」と反応し、音声案 内を受けられることを利用者に知らせます。情報が必要であれ ばシグナルエイドの押しボタンスイッチを押すことにより電 波が10〜15m圏内に送信され、この電波を音声ガイド装置 が受信するとスピーカーから具体的な音声案内が放送される システムです。 視覚障害者の方はこの案内に対し、音源で目的場所の方向、 音量で距離感、言葉で具体的な施設名称や施設状況を把握する ことができます。 現在、このようなシステムが公共施設や公共交通機関、金融 機関の店舗など全国で約 3000ヶ所に設置され利用されていま す。このように視覚障害者が専用の端末を携帯する方式は、視 覚障害者に利用が限定されるため、不要なときには案内を放送 せず、周辺の騒音環境にも配慮できます。 (3)白杖又は白杖に取り付けられた機器から情報を得る方法 視覚障害者が外出する時に、白杖、電子機器、盲導犬などを利 用することがあります。これらの補装具や補助具等を使用して安 全に外出しているのです。 1 法的な定め 道路交通法第 14条第 1項では、「目が見えない者(目が見えな い者に準ずる者を含む。以下同じ)は、道路を通行するときは、 政令で定めるつえを携え、又は政令で定める盲導犬を連れていな ければならない」となっています。 上記のように、視覚障害者が外出する時には、白杖・盲導犬を 使用しなければならないことになっています。 2白杖 白杖は歩行補助具として位置づけられています。そして、白杖には次のような機能があります。 @自分が視覚障害者であることを周囲の人に伝える。 A前方の路面や障害物の有無の状況を把握する。 B障害物が直接体にぶつかることを防ぐ。 上記のような機能を達成するために作られている白杖には、直杖、折りたたみ式、スラ イド式が主流ですが、最近では体を支える目的を含む白杖もあります。 白杖の部品は、グリップ、本体、石突の3つに分けられます。 @グリップ グリップは白杖を握る部分ですが、基本的に握りやすければ良いのですが、 最近では操作をしやすいように工夫されているものもあります。 A本体 本体は、石突で得た情報をグリップに伝える機能があります。 その材質として木製、軽金属、グラスファイバーやカーボンファイバーなど様々な材質があると共に、その太さなどもさまざまです。 B石突 白杖の先である「石突」は、路面の情報を得る先端の部分で、 白杖の中で重要な部分です。そのため利用者の年齢や歩行状態によってさまざまな種類があります。 白杖は視覚障害者の身体の一部であるため、引っ張ったりする ことは、とても危険な行為であり、安全な歩行を妨げると共に、身体の一部を引っ張っているのと同じことになり、不安を与える ことになります。単独で歩行している視覚障害者は、白杖を利用して路面の状態を捉えたり、階段を確認しながら昇降したり、電車などの乗降時 には白杖で車体とホームの間を確認しています。しかし、歩行中に白杖がマットに引っかかったり、自動ドアのレールの溝やグレーチングに挟まってしまうこともあるので安全に歩くために は本人の白杖操作の技術も必要になります。歩行技術を身に着けるために「歩行訓練」などを行って、安全に歩くようにしている 人もいます。しかし、失明して間もない視覚障害者の中には、「杖を持ちたくない」や「自宅の周辺では杖を使いたくない」更には、 遠くに行くときは使うが自宅の近くでは杖をたたんでしまう」などの、問題があるため、安全な歩行が確保しにくい状況で歩行している場面も多くみられるのです。 これは、自分が視覚障害になったことを知られたくないと言う心理がそうさせるものと考えられています。 3 電子機器 電子機器は、超音波を使用して周囲の情報を得るものです。 白杖は足元や腹部までの部分においては安全を確保できるのですが、胸部や頭部にあたる部分についての情報は得られません。そこで、上半身の前方にある障害物を、超音波を用いて察 知することに有効な「電子機器」があります。 これらの電子機器は、白杖に加え単体で使用していますが、最近では白杖のグリップ部分に超音波機器を備えた白杖もでています。このことによって白杖と電子機器の両方を持つ必要が なくなり安全な歩行が確保されることになります。 4 盲導犬 視覚障害者が屋外を歩行する際の、安全性を確保するために訓練された犬を「盲導犬」と言います。 盲導犬利用者にとっては、盲導犬は単なる移動の道具ということではなく、体の一部であり、精神的な支えに加えて家族ともい える存在であり、盲導犬使用者のパートナーとなっています。この信頼関係があってこそ安全な歩行が確保されるのです。 盲導犬が体につけている白い胴輪を「ハーネス」といい、盲導犬の動きをこのハーネスを通じて視覚障害者が知り、それによっ て指示をします。このハーネスをつけているときは、盲導犬としての仕事中となります。 盲導犬の動きは次の3つです。 @段差があったら停止する。 A角があったら停止する。 B障害物があったらよけて通過する。 このことで視覚障害者が安全に歩くことができるのです。 ここで間違えてはいけないのは、盲導犬が道を知っているわけではありません。盲導犬使用者が道を知っていなければ、 目的地に到着することはできないのです。白状を使用して歩いている視覚障害者と変化はありません。白杖の変わりが盲導犬なのです。 しかし、前述のように心の支えでもあることを知っておくことが必要です。 盲導犬がたとえ歩いておらず机の下などに待機していても、ハーネスを付けているときは「待つ」という仕事中です。仕事中 の盲導犬に対して、声をかけたり、口笛を吹いたり、手招きをしたりするなどの行為は迷惑となりますのでやめましょう。もし、 盲導犬に触れる必要があるときは、盲導犬利用者に確認を取ってからが望ましいと言えます。 2002年には身体障害者補助犬法が施行され、公共機関だけでなくデパートやスーパーマーケット、ホテルなどの民間施設でも、 受け入れを拒否できないことになりましたが、まだまだ浸透していないため、更なる社会の理解が必要なのです。 5.環境条件の設備を統一的に作るための提案 視覚障害者の外出時の安全確保に必須な条件は、当事者が歩行訓練を受け白杖の使用方法や歩き方を学ぶこと、視覚障害者の歩 行を手助けする点字ブロック、音声・音響式案内、点字案内板などが整備されること、点字ブロックの上にものを置かないなどの 視覚障害者への配慮(心のバリアフリー)です。視覚障害者がガイドヘルパーや家族等の付添者と一緒に同行する時にでも同行者に頼るだけでなく、自分で白杖を持ち、危険 を回避するよう心がけることで、歩いている時に急な段差等につまずかずに安全に歩行することができます。 次に視覚障害者が安心して安全に歩行するため、点字ブロック、音響式信号機、盲導鈴等のチャイムで視覚障害者へ現在位置から目的地までの進む方向を示すことが必要です。 例えば、電車等の公共交通機関を利用した際には、入り口には音声・音響案内や点字案内板を設置する。切符売り場への点字ブロック敷設や改札に音響案内を設置するなどが必要です。 駅ホームにおいては、点字ブロックの敷設と転落防止のため、ホームドアの設置が望まれます。またホームには障害物が多いので売店や電柱などの整備をしてもらう必要がある。ホームへの階 段についても弱視者用に段鼻に黄色い色をつけるなどの配慮も必要になります。 また、道路においても視覚障害者の安全確保に誘導的な条件は、点字ブロックや交差点にエスコートゾーンの敷設が必要になり ます。 全国各地で、視覚障害者の歩行を手助けする点字ブロック、音声・音響案内・点字案内板等の設置が違うと実際に利用する視覚障害者は混乱してしまい、 目的地までの安全な歩行という本来の役割が果たせなくなる恐れもあります。 そこで、点字ブロックや点字案内板にはJIS規格が設けられています。 そうした統一規格をもとに設置するとともに地域の視覚障害者福祉団体に設置のヒアリングをし、実際に設置した時には広報するなどの配慮が必要になってくると思われます。 第W章まとめ 1.視覚障害者が安全に外出することができるようになるには (1)視覚障害当事者及び視覚障害者の移動に関する人から @全盲の立場から 松永秀夫 私達も、いつでもどこへでも一人で自由に外出したい、 しかし、その望みは叶えられていない。 視覚障害者が外出を控える理由は、 1.目からの情報が入らないため方向や危険な箇所を確認できず不安になり外出できない。 2.ガイドヘルパー制度に制限があり利用しにくい地域がある。 3.単独歩行の訓練を受けたくても歩行訓練士がいないため訓練を受けられない。 4.障害の受容ができない、周囲の目を気にして白杖を持つことができない。 視覚障害者の外出方法は、白杖をついての単独歩行、どなたかに誘導していただくか、盲導犬を伴う歩行があるが、いずれにし ても課題が多い。 私が視力を失い一人歩きが困難になったとき、最初は家族に誘導してもらっていたが、歩行訓練を受け一人歩きができるように なり活動範囲も広がった。その後、ガイドヘルパーの制度が充実してきたので単独歩行よりもガイドと歩くことが多くなってきた。 道路環境は点字ブロックや音声信号機が整備され、視覚障害者の外出が安全にできるようになってきているがまだ、多くの課題 が見受けられる。私も今思い出すだけでも何度か危険に遭遇してきている。新幹線から下車するときにホームと電車の隙間に足を入れて すねをけがしたことや、東京駅で階段を転げ落ちたこと、バス停で道路に転びおちたことなど、数え切れないほどのひやりとする ことを経験している。 現在は同行援護制度の下でガイドヘルパーと歩くことがほとんどであるが、ガイドヘルパーとの歩行時に道路の状況や、季節 の変わって行く様子、建物の名称などを説明してくれる方、話に夢中になり足下がおろそかになる人もいる。 久しぶりに一人歩きをしてみたが歩道のないところは杖の先からかすかに感ずる道路上の白線をたよりに歩くと、以前は舗装さ れているところと土の境を確認して歩いていたところが側溝が整備され、歩きやすくなっていた。 まだ、整備されていない交差点や音声信号機を設置してほしいところ、夜間になると音声が止まる信号機や歩道の点字ブロック が剥がれて危険なところ、歩道に駐車する車、自転車、横断しにくいスクランブル交差点等、ガイドヘルパーと歩いていると気が つかない危険なところもあった。 一人歩きするときに現在位置を確認したいときがあるが、新潟市には新潟駅前から国道沿いに約3キロに亘って音声で位置を 確認することができる装置が設置してある。 手元の送受信機で信号を受信し送信ボタンを押すと歩道の案内板から位置の案内が流れてくる。 街を歩いているときや、駅で待ち合わせをしていると、なにかお手伝いしましょうかと声をかけてくださる方々が多くなった。 最近新潟から県外へ出かけることがあり、東京までは慣れているので不安を感じなかったが、東京駅から先は不慣れなところであ り、少々不安であった。 列車の乗り換えは駅員に、車内では車掌さんに対応していただいた。 行く先では現地の同行援護事業所のガイドヘルパーにお願いをし、お陰で楽しい旅行ができました。 鉄道会社や航空会社で誘導をお願いできるようになってきているので安心して移動できる、目的地でのガイドヘルパーは同行 援護事業所で対応していただければ全国どこへでも安心して出かけることができるはずである。 中途視覚障害者で全盲の方は単独歩行、ガイドヘルパーとの歩行、いずれにせ歩行訓練士に歩行訓練を受けることは必要だと思う。 全国を見ると、歩行訓練を受けられるところ、訓練士がいないため生活する地域での訓練を受けられないところもある。 今回のアンケート調査から見て、視覚障害者が安心して外出できるようになるのは、道路環境の整備、同行援護制度の確実な実 施、市民の視覚障害者の理解が必要である。 しかし、重要なのは当事者の外出しようとする意欲であり、多くの視覚障害者が外出することにより外出環境が充実してくる と思う。 Aロービジョンの立場から 弱視者にとっての安全且つ利便性に配慮した公共交通バリアフリー 大橋由昌 1.バリアフリー新法と弱視者の交通安全 平成 18年に交通バリアフリー法(高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律)とハー トビル法(高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律)が統合・拡充され、バリアフリー新 法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)が施行されました。この通称「バリアフリー新法」によって、対象 者が身体障害者等から障害者等へと広がったため、色覚障害者・弱視(ロービジョン)者も対象となり、これまで弱視当事者の自 助努力にゆだねられていた交通安全対策が公的な政策となりました。本連合でも、平成 25年度の運動方針に弱視者対策の推進 を掲げて取り組んでいます。 2.弱視(ロービジョン)とは 弱視(ロービジョン)の定義については、研究者によって見解を異にしているのが現状です。世界保健機関(WHO)では、両眼 に矯正眼鏡を装用した場合の視力 0.05以上 0.3未満を弱視(ロービジョン)と定義しています。また、日本ロービジョン学会で は、医学的弱視と教育的・社会的弱視の 2種類に大きく分類しています。前者は、乳幼児期の視機能が発達していく過程で、正常 な視覚の発達が停止あるいは遅延している状態、後者は、視覚障害はあるが視覚による日常生活および社会生活が可能である状 態、と定義しているのです。本連合においては、「弱視者」という場合、矯正視力が悪いだけでなく、視野狭窄や視野欠損、眼振、 夜盲症、羞明などが原因となって、社会生活における不便さや困難さを感じる「社会的弱視(ロービジョン)」のことを意味しま す。ですから、矯正視力が 0.3未満であり、めがねやコンタクトレンズを使用しても視力が十分に出ない状態を「弱視」というこ ともできます。裸眼視力は 0.1であっても、コンタクトレンズを入れると 1.0になると言った場合、弱視とは言わない訳です。 3.「盲」と「弱視」の違い 世界保健機関(WHO)の定義に従いますと、盲(Blindness)は両眼での矯正視力0.05未満になります。弱視(partialsight) は、両眼での矯正視力 0.05〜0.3未満ということですが、我が国の実態とはかなり違っているのも事実です。視覚障害者の間では、 眼前指数弁、すなわち目の前の指の数がわかる程度の者を全盲の範疇としております。本連合においても、慣習的におおむね同様 の解釈をしております。また、一般的な定義として、「盲」とは視覚を用いて日常生活が難しい者、「弱視」は教育的・社会的弱 視の意味で、眼科診療で用いている弱視(amblyopic)との混乱を避けるため、最近はロービジョン(低視覚)というようになっ てきています。そうした趨勢を勘案して本連合においても、名称の統一を検討しているところです。 4.安全性に関する最大公約数 弱視者の見え方は千差万別であり、「百人寄れば百通りの見え方がある」といわれるほどです。歩行の際の安全性に関しても、 すべての弱視者のニーズを満たすのは大変困難なことなのです。 どのような状況においても、周りの人の援助が不可欠だといえます。しかし、このような配慮をすれば弱視者の大多数は視認しや すくなるという最大公約数的な方法はあるのです。 B歩行訓練士の立場から 長岡雄一 視覚障害の有無に拘わらず、人が目的地に向かって歩行をする場合には、@安全の確保、A自分の居場所や方向の確認、が最低 限必要とされます。 歩行訓練は、上記の2つの条件を満たすことを目標として訓練を行っていますから、ただ、白杖の操作を習得することを目標と している訳ではありません。と言って、白杖の操作が軽んじられることは、あってはならないことです。「安全の確保」と言う、 歩行訓練において最も重要視される目標を達成するためにも、白杖の適切な使用法は大切なことになります。 しかし、白杖をいかにうまく使いこなしても、探しきれない限界はあります。たとえば、トラックの荷台等、頭付近に飛び出て くる障害物は非常に厄介なものです。これは、訓練で解決できるものではありません。そこに社会的な対策の必要性が生まれてく ると考えられます。 また、歩行訓練におけるもう一つの大きな課題。居場所や方向をいかに知るかと言う課題の解決については、多くのランドマー クなどの利用、メンタルマップの作成等を中心に訓練は行われますから、今ある環境をいかに利用するかを考えることになります。 しかし、「今ある環境の利用」は社会的なさまざまな設備の未整備を認めている訳ではありません。情報障害と言われる視覚障 害では、取得できる情報は限定的になりますから、少しでも多くの有用な情報があった方が良いわけです。 ただ、問題は、それらの新たな情報をいかに「上手く利用するか」にあるのです、新たな情報に振り回されないように、あくま でも主体は当事者本人にあることを、訓練において理解してほしいと考えます。誘導ブロックを利用するのか、それとも、道の端 の壁を利用するのか、音声による支援を利用するのか。そうした自己選択ができるようになることが大切なことですし、自己選択 ができるよう、選択肢を準備しておくことが、社会的な責任とも言えるのではないでしょうか。 さらに、歩行訓練では、「単独」で歩くことは、周囲に支援を求めないことと同意語ではありません。支援を求めることも、そ の判断ができることも、「単独」で歩くことの一つと考えます。 ですから、前述した選択肢の中に、人の支援も含まれることになります。となると、人の支援を求めることのできない環境下では、 それに代わるものとして、ハード面での充実はより必要なこととなる筈です。 視覚障者の外出を考えたとき、制度としての同行援護や各種設備の充実、社会の理解、さらに歩行訓練は決して欠くことのでき ない要素だと考えます。どれを欠いても外出の保障は難しくなります。そうならないためにも、より多くの方に訓練を受けていた だける機会が保障されればと考えます。 Cガイドヘルパーの立場から 橋本賢二 「視覚障害者の外出時には、ガイドヘルパーを同行するのが一番安全な方法です。」と、ガイドヘルパーを利用する方やガイド ヘルパー自身が言い切れる時が来ることを目標にしています。 ガイドヘルパー(同行援護従業者)は、専門の研修を受けその資格を得た人達が、安全かつ快適に視覚障害者への「移動の支援」 と「視覚情報の提供」をすることを心掛けています。同行している外出中に行う、「周囲の状況の説明」や「安全を確保するため の声掛け」等は、目的地に確実に移動できるだけではなく、移動中における危険に対しての不安感等によるストレスの除去にも つながるでしょう。 ただ、アンケート結果にも表れているように、ガイドヘルパーの利用に関して、全ての利用者が満足をされている訳ではありま せん。「ガイドヘルパーとの外出を最も安全な方法」と言えるようにするためには、いくつかの問題の解決を図っていくことが必要です。 まず一番重要なのは、「ガイドヘルパーの質の向上を図る。」ことです。平成26年9月30日の経過措置期間が過ぎても、同行 援護従業者の資格を持ったガイドヘルパー(情報提供の研修と確立されてきた技術の習得を併せて受けた者)と、移動支援従業者 や居宅介護従業者の資格等でかつ 1年以上視覚障害者に直接処遇経験のあるガイドヘルパーが働きます。同行援護従業者として の養成研修を受けることが重要であるとことは言うまでもありませんが、例え受けていなくても、報酬を得る(ボランティアで はない。)ガイドヘルパー自身が、今まで講習会等に参加して資質(技術等)の向上を図ってきたか、利用者の不満や事業所の要 望等に真摯に向き合い自己研さんを図ってきたかが問題です。ガイドヘルパーが同行していて、ヒヤリ・ハットがあっても、何も 感じず(気が付かないのは最悪です。)、「○○あるから、気をつけて」のような声掛け(気をつけるのはガイドヘルパーの仕事で す。)をしているようでは、利用者の満足など得る訳がありませ ん。事業所も、利用者の不満の解決を図る内容や、ガイドヘルパーの不安や悩みを解決する内容のフォローアップ研修等を開催する 必要があるでしょう。 また、ガイドヘルパーの高齢化の問題も考えなくてはなりません。若い年代が、ガイドヘルパーとして生活を維持していける報 酬体系になっていないため、どうしても高齢のガイドヘルパーに頼っている感じがします。今まで単独歩行をしてきて、今後、ガ イドヘルパーを利用しようとする視覚障害者は、「自分より年上のガイドヘルパーで外出時の安全を確保できるのか。」と不安を 抱くことも多いようです。事業所が年齢制限を設けているところもあるようですが、ガイドヘルパー自身が、「利用者の安全を保 障するのに不安を感じた。」時は、人の命に関わることですから身を引くことを考えましょう。 そのことがガイドヘルパーの世代交代につながる行動になるハズです。 次にガイドヘルパーを利用する方の考え方にも問題がありそうです。「ガイドヘルパーを信頼しているから。」「荷物を持つの で邪魔になるから。」等の理由で、「普段白杖を使用している方の中にも、同行中はしまっている方がいる。」ことが、アンケート の結果で見受けられます。自らの身を守るためにも、同行するガイドヘルパーの不安を解消するためにも、同行中も白杖の使用を お願いします。社会が配慮してくれるための自らの行為を拒んでしまって、同行中のヒヤリ等を、ガイドヘルパーの質の責任にし てないでしょうか。ガイドヘルパーが技術の向上を図らなければならいのはもちろんですが、利用者も歩行時の安全を意識する必 要があるのではないでしょうか。特に、単独歩行もされる方は、ガイドヘルパーを利用して単独歩行時の感覚を失ってしまって は、意味があるとは思えません。 最後には、制度の問題があると思います。平成23年10月から始まった同行援護サービスが未だ実施されていない地域が存 在する(事業所がない。養成研修が実施されてないのでガイドヘルパーがいない。自治体が移動支援からの移行をしていない。)、 地域ごとに支給時間に差があったり、利用の制限にバラツキがあったりで、地域格差を解消するための制度だったにも関わらず、 格差は全く解消されていません。 視覚障害者の外出を、ガイドヘルパーとして安全を保障するためには、まだまだ解決すべき問題があります。この問題を、ガイ ドヘルパー自身はもちろんですが、事業所、利用者、それぞれが協力しながら考え、制度の問題の解決、地域格差の解消に向けて 行動することが必要と考えます。 D白杖製作メーカーの立場から 白杖は社会を広げる、社会を変える。 浜松市 盲人福祉研究会 代表斯波千秋 1.白杖の役割 白杖の役割には@歩行環境の情報を得るアンテナA障害物に身体が当たる前に白杖が当たり身を守るバンパーB周囲の人に 視覚障害を認識させるシンボル(国際的に)の三つの役割があります。 アンケートによると外出手段として単独歩行とガイドとの歩行が約同数であり、多くの方が単独歩行をされています。単独歩 行での白杖利用が76.6%は実に多い数であり、白杖がいかに重要な補装具であることがわかる。また、使わない人が20.1% であり、その多くが弱視者と中途視覚障害者でした。 私達は、中途視覚障害者を含む多くの方々の社会参加を支援する現場を持っているが、弱視の方、障害の受容以前の中途視覚障 害の方に対しての白杖利用を勧めることには細心の注意を払っています。白杖を活用する先輩のさり気ない勧めの言葉は重要と なります。また、ガイドヘルパーとの歩行中にも、白杖の携帯はいろいろな場面で役立つものです。 2.白杖に求められるもの 白杖の基本は白い棒であり、感覚器の延長として、石突きを通して手や耳に伝わる情報を得て、それを処理することに集中する ため、できる限り白杖に他の機器などを付加せず、軽量で丈夫、伝達性に優れた白杖が求められる。近年は高齢化も進み、身体を 支えるための白杖、そしておしゃれな白杖も要求されています。 3.歩行訓練の必要性 白杖をより効果的に活用し、安全、安心、そして楽しい歩行を可能とする技術を提供することが歩行訓練士の役割です。しかし、 歩行訓練士のいない地域や訓練の場や機会のない地域があるのが残念なことです。いつでもどこでも訓練を受けられる制度と訓 練士の身分保障と活躍の場の保障が課題です。 4.白杖歩行と環境整備 点字ブロックや音声式信号機などの歩行環境は着々と整備が進みつつありますが、都市部と地方都市との格差があります。地 域差のない整備と統一された敷設方法が求められています。 一方、新しい方法の交通信号方式に対応する歩行ルールや横断歩道上のエスコートゾーンの普及と白杖の活用の開発が急がれます。 白杖が他の歩行者や自動車、自転車などと接触し、折られる数があまりにも多く驚きです。全国の自転車利用者への啓発と自動 車学校などへの指導の徹底など、警察庁と共に、各方面への要望が必要となります。 歩行中に白杖が折られると身動きがとれません。そのため、厚生労働省は平成25年2月25日障害健康福祉課長会議にて「盲 人安全つえについては、普通用と携帯用との二種について補装具費を支給行うよう配慮する」との通知を出しています。 5.最後に 安全で安心、そして楽しい白杖歩行は、シンプルな白杖に適切な歩行訓練、歩行環境の整備、そして何より重要なのが、社会の 人達の優しい配慮と声かけとちょっとしたお手伝いがあれば保障されます。 障害者が街へ出ると街が変わるよ!です。 (2)歩行支援機器メーカーから <@点字ブロック(視覚障害者誘導用ブロック)> ・観光地などの点字ブロックの色は、景観に合わせてあまり目立つ色ではないところが多い。弱視の方にも見えやすいよう に点字ブロックの色や輝度比の基準を設けて欲しい。 ・点字ブロックを連続して敷設する際は、横断歩道の付近のみ歩道の中央部に寄せているケースが多い。 ・点字ブロックは、ガイドラインでは官民境界線から60p離して敷くこととなっているが、メーカーとしては看板などの 障害物があるので、最低60pと考えている。敷設の際にスペースが取れる広い場所では60p以上離して敷設した方 が良いのではと考えている。 歩行訓練士からも点字ブロックをあまり壁側に敷設してほしくないという意見を聞いたことがある。点字ブロックの使 い方は、その上を歩く人、その端を歩く人、白杖を這わせて歩く人があり、60pではぎりぎりだと思う。 ・点字ブロックは効果がある反面、機器があっても設置場所がわからないことから有効利用されていない。利用者への説明 不足もあり、情報提供をして設置された点字ブロックは広く活用していただきたい。 <A音声音響案内装置> ・音響式信号機は夜間止まるが、シグナルエイド(歩行時間延長信号機用小型送信機)を使えば対応している信号機なら音 を出すことができる。夜間なら音量を下げて音を出すことも可能。調節ができるので設置を推進したい。 ・盲導鈴(チャイム)や音声・音響案内は、地域や設置業者各社様々な音を出している。これらを統一してわかりやすくできないか。 また、アンケートの回答では音響式信号機のピヨピヨ・カッコーの音が良いという意見がもっとも多いが、東西と南北の 鳴らし方が地域で異なるので、統一していただきたい。 ・視覚障害者が情報を耳で聞くことは大切で重要なことだと考えている。今後も信号機や建物等に積極的に音声案内を設置したい。 ・アンケート結果において回答した約半数以上の人が歩行訓練を受けていない結果に驚いた。音声案内を広めて単独歩行をしやすく 努力しているので、より多くの方に歩行訓練を受けていただきたい。 また、アンケートを参考に今後の音声案内の取り組みの参考にしたい。 <B触知図及び手すり点字> ・触知図は設置している場所がわかりにくいことや書かれている図柄がわかりにくいことが問題であると思う。わかりやす い図柄の触知図を製作する必要がある。 ・手すり点字案内板は、駅の上り下りによく使われていると聞いている。今後も階段等で多く設置されるように取り組んで いきたい。 ・触知図は、利用者の少ない駅や無人駅など、人に尋ねることが難しいところにこそ必要だという声も多く聞く。例えば、 夜行バスで早朝到着するため、周辺に人がいなくて困ったところ、触知図の「ピンポーン」という音を頼りに触知図を触 読して何とかなったという人もいる。 ・触知図はJIS規格化されたものを設置してほしい。JIS化されているにもかかわらず、未だにJIS規格外の製品が 新規で納入されているケースがある。自治体に積極的に要望し、JIS規格化されたものを設置してもらうようにしたい。 ・触知図の設置位置をわかりやすくするには音声案内を組み込む必要がある。ところが、音声案内は予算面から削られてし まうことが多い。設置位置を知らせるためには音声案内が必要なことをPRしていきたい。 <Cトイレ内音声案内> ・トイレ内の音声案内を始めて9年目になる。アンケートの最終報告を見て、多くの方々が利用していることがわかり、開発して良かったと思っている。 今後も、トイレ内音声案内の必要性を強くPRしていきたい。 ・多機能トイレ用「ポッチ Pro」は、開発当初は、トイレに入った直ぐのドア付近壁に設置していたが、利用者からの要望を受け、便器横に設置ができるように再開発した。 便器横に設置する利点は、便器の設置位置が音声を発している場所にあるため探しやすい事、ゆっくり用を足しながらトイレットペーパーの位置・水洗操作方法等を押しボタン操作 により(手動)聞き直しが何度でもできること。利用者からの要望もあり、多くの施設に導入設置が進んでいる。 ・一般トイレ用は、自動案内の「ポッチ AS」・便房内は手動案内「ポッチ A」があり、展示会や会合等で多くの仮設依頼がある。 今後は、各施設に常設設置されるようPRしていきたい。 ・外出時は、どこの施設のトイレでも安心して利用できるように、音声案内の設置が進むよう、これからも積極的にPRしていきたい。 <D共通認識> ・どんなに視覚障害者の歩行を手助けする機器の整備が進んでも利用者に広報されなければ有効に活用されないので共通課題として広報の仕方も取り組みたい。 視覚障害者の外出時の安全を総合的に保障するシステムを確立するための研究事業委員名簿 (順不同・敬称略) <委員> ・竹下義樹(社会福祉法人日本盲人会連合会長) ・小野束(社会福祉法人日本盲人会連合常務理事) ・鈴木孝幸(社会福祉法人日本盲人会連合事業部長) ・橋井正喜(社会福祉法人日本盲人会連合組織部長) ・大橋由昌(社会福祉法人日本盲人会連合情報部長) ・長岡雄一(歩行訓練士東京都視覚障害者生活支援センター所長) ・斯波千秋(盲人福祉研究会代表) ・松永秀夫(同行援護事業所等連絡会会長) ・橋本賢二(ガイドヘルパーNPO法人杉並区視覚障害者福祉協会) <機器メーカー> ・三宅三郎(一般財団法人安全交通試験研究センター理事長) ・由利公弘(一般財団法人安全交通試験研究センター常務理事) ・松村孝好(池野通建株式会社部長) ・田久保孝二(池野通建株式会社課長) ・杉山欣司(株式会社サン工芸代表取締役) ・諏訪部俊彦(株式会社サン工芸常務取締役) ・一二三吉勝(レハ・ヴィジョン株式会社代表取締役) <参考> 1点字ブロック 点字ブロックは二つの種類があります。点状ブロックは交差点や段差などの危険な場所や出入口の手前などに設置され、注意や 止まれを意味しています。線状ブロックは道路の進行方向に向かって設置され、線をたどって安全にすすめる道筋を示しています。 2点字案内 点字案内は、視覚障害者が自分はどこにいるのか、どうやって目的地まで行くのかということを教えてくれます。主に手すりや 部屋の入口、エレベーターなどにつけられています。 点字案内に触れることによって、知りたいときに確認をしながら情報を得ることができるので、目の不自由な人が安心して移動 をすることができるようになります。 3音声案内 音声案内は建物の入り口に設置されていて視覚障障害者の持っているシグナルエイドドで反応する装置もあります。 4トイレ内音声案内内 男子トイレや女子トトイレの案内や、どこに便器があるのか、紙の位置や水の流し方ななどを音声で案内します。 トイレの音声案内にには、人の気配を感じると自動的的に案内が始まるものと、実際に必必要な人がボタンを押すと案内がが始まるものがあります。 また、下の写真のよように便器に座って手の届く位置置に設置とトイレの入り口に設置すする方法があります。 5エスコートゾーン エスコートゾーンは、横断歩道上に突起上の誘導ラインを設けて視覚障害者に正しい横断方向を知らせます。視覚障害者は、エスコートゾーンの上を歩いたり、白杖でエスコートゾーンをつつ きながら歩きます。車の走行を妨げないため、突起は大きくなっていません。 編集後記 本事業のアンケート調査にご協力いただきました皆様には、65項目に亘る調査項目にご回答いただき、ありがとうございました。 今回のアンケートは自由筆記が26項目もある中、皆様が熱心に回答していただき、こうして報告書が作成できましたことを感謝いたします。 アンケート調査に協力していただきました9割の方が、道路上でヒヤリとした経験があると回答しています。また、半数近くの方が、ホームから転落したことがある、または、転落しそうにな ったという結果が得られました。 これにより、道路には点字ブロックの敷設、横断歩道上には音声音響式信号機やエスコートゾーンが、また駅ホームにはホームドアや駅員の配置が必要であることがわかります。 しかしながら、これらの設備等は地域差があります。すべての地域で同じような設備が設置され、視覚障害者が安心して外出できるようにすることが必要です。 さらに、悪天候や夜間の外出など、外出を控えることで回避するのではなく、だれもが必要なときに外出できるように同行援護事業を拡充していかなければなりません。 同行援護事業も利用できる時間数等で地域差があるのが現状です。視覚障害者が日本中どこにいても同じサービスが受けられるよう、制度の拡充をはかる必要があります。 また、当事者自身も必ず白杖を使用する、滑りにくい靴を履いたり、フード付きレインコートを着るなどが望まれます。こうした努力を無駄にすることがないよう、さらなる歩行の安全を保障 するシステムを総合的に確立していきます。 また、当事者が安心して外出するために設置されている機器を有効に活用するため、利用方法などの情報や機器についての情報を広めていくことも大切な課題です。歩行を補助する機器メー カー等とも協力し、さらなる有効利用を進めていきます。 視覚障害程度にかかわらず、すべての障害者・高齢者が安心して外出できる社会が形成されることを願っています。 視覚障害者の外出時の安全を総合的に 保障するシステムを確立するための研究事業 ――報告書― ― 発行日平成 25年 12月 発行社会福祉法人日本盲人会連合 〒 169-8664 東京都新宿区西早稲田2−18−2 電話 03-3200-0011 F A X 03-3200-7755 U R L http://www.normanet.ne.jp/~nichimo/