【第五報】石井啓一国土交通大臣と竹下会長が面談、鉄道駅の安全に関する要望書を提出

2016年9月16日

 東京メトロ銀座線「青山一丁目駅」で発生した盲導犬使用者の転落事故を受け、日本盲人会連合は事故現場の調査や声明文の発表、(公社)東京都盲人福祉協会とともに「危険と思われる東京都内の駅ホームの緊急アンケート」の実施など、集中的に対策を講じてきました。

石井啓一国土交通大臣と面談

 日本盲人会連合は9月16日(金)に国土交通省大臣室を訪れ、竹下義樹会長と藤井貢組織部長が石井啓一国土交通大臣に「要望書」と「危険と思われる東京都内の駅ホームの緊急アンケート」の調査結果を手渡し、報告しました。

 今回の面談は、事故の発生後、現場に足を運び調査をした公明党の高木美智代衆議院議員などの働きかけにより実現しました。当日は高木議員の他に、吉倉正美都議会議員・松葉多美子都議会議員・齋藤泰宏都議会議員などが同席され、日本盲人会連合からはこの事故の対応について要望し、高木議員からも予算面などの助言を頂きました。

主なやりとりから

  • 竹下会長「このような悲しい事故が今回で最後になるように、強力な取り組みを頂きたい」「ホームは危険と隣り合わせ。ホームドアの設置はお金がかかるが、視覚障害者の外出時の安全の確保のためにもホームドアの設置を急いでほしい」
  • 高木議員「ホームドアなどのハード面、声かけなどのソフト面、この両面の対策を早急にお取りくみ頂きたい」
  • 石井国土交通大臣「国土交通省内で検討会を設置した。ハード・ソフトの両面から対策を検討する。平成28年度の当初予算は22億円、補正予算では約40億円を計上しており、合計150程度の駅を緊急に整備する。また、平成29年度の概算要求でも27億円要望しているので、緊急性の高い駅については優先的に整備を実施する。ソフト面では声かけや接遇の改善などを、皆様のご意見を踏まえ検討したい」

記者会見にて

 要望書が手渡された後、会場をロビーに移し、記者会見が行われました。
 記者からの質問でホームドアは設置費用がかかるので普及のネックになっていることを尋ねられた竹下会長は、「一年間に3,600人を超える人が転落していて、その中で80人が視覚障害者になる。視覚障害者のために我々は運動はしているが、ホームドアの設置が国民全体の安全な鉄道利用に結びつくことを訴えていきたい」と予算化の重要性を訴えました。

要望書全文

日盲連発第83号
平成28年9月16日

国土交通大臣 石井 啓一 様

社会福祉法人 日本盲人会連合
会長 竹下 義樹

視覚障害者が安心して自由に外出するための鉄道駅の安全に関する要望書

 障害者、殊に視覚障害者が安心して自由に外出できるまちづくりに対する弛まざるお取り組みに感謝申し上げます。
 また、先の8月15日に東京メトロ銀座線青山一丁目駅ホームから盲導犬を連れた視覚障害者が転落し亡くなられた事故に対する真摯なお取り組みに対し心より敬意を表します。
 亡くなられた方のご遺族の心中を察しますに、私どもが、ご遺族に直接お会いすることはかないませんが、この事故を徒や疎かに扱うことも厳に慎むべきことと受け止めており、亡くなられた方の生命を無駄にすることなく、今回の事故が最後の悲劇で終わらせるよう努力する決意でございます。
 また、この事故の報を受けまして、現地の調査、緊急アンケートなどを実施し、このような悲惨な事故を惹起させないためには、私ども視覚障害者団体はもとより、福祉関係者、リハビリテーション関係者、行政関係者、鉄道事業者それぞれに取り組まなければならない課題が横たわっているものと受け止めております。
 そこでこの度は、それぞれに担うべき課題を含め、国として取り組んでいただきたいこと、ご支援いただきたいことなどにつきまして、次のとおり要望をとりまとめました。
 駅ホームからの転落事故は、視覚障害者に止まらず、年間3600件を超える多数の国民の転落事故が発生していることを踏まえ、私どもの願いは視覚障害者の安全確保に止まらず、国民全体の安全確保に結びつくことをご理解いただき、是非ともお取り組みいただきますようお願い申し上げます。

一 事故原因の究明にあたっては、本人の責任に転嫁しないことを前提に、盲導犬の使用並びに本人の歩行訓練の状況を含め、事故原因を深く究明いただくとともに今後の施策に生かしていただきたい
一 これら原因の究明、今後の施策の検討にあたっては、私ども視覚障害者団体及び視覚障害者の歩行訓練や盲導犬関係者が参加し意見反映が可能となる体制を確立いただくよう検討いただきたい
一 すべての駅ホームの危険箇所の実態を調査し、危険箇所(特に狭矮で障害物の多い駅ホーム)の優先的な対策を実施し、駅ホームのみならず鉄道駅全体の安全が確保できる対策を実施いただきたい
一 現在計画中の対象駅ホームへの転落防止柵の設置を進めるだけでなく、特に転落の危険性が高い駅に対し可及的速やかに転落防止柵を設置していただきたい
一 すべての駅ホームに内方線付き点状ブロックの敷設を急ぐとともに、駅ホームの警告用ブロックの敷設の在り方について改めて検討いただきたい
一 駅ホームの構造上転落防止柵設置が困難な駅については、当面ホーム上の点字ブロックのホーム端側と、ホーム側の床材の材質を変えるなど、視覚障害のある歩行者にわかりやすく注意喚起できる構造とするようご検討いただきたい
一 駅ホームからの転落事故に備え、全てのホーム下等に転落者の退避空間を設けるようお取り組みいただきたい
一 また、転落者があった場合に備え、鉄路面に転落感知マットを敷設し、人に頼らない緊急警報が可能となるよう施設・設備の改善を行っていただきたい
一 すべての駅に安全監視員を配置するとともに、マニュアルを作成し、駅の安全管理に従事する職員に安全管理について研修を行っていただきたい。その際には、視覚障害当事者を講師とするなどの工夫をしていただきたい
一 駅ホームの照明を工夫するとともに、床面と柱、壁の色彩・色調にコントラストをはっきりさせ、弱視者、色覚障害者、高齢者にも視認しやすい駅の実現にお取り組みいただきたい
一 法令によって全ての鉄道事業者に駅ホームの安全対策を義務付けていただきたい
一 駅ホームでの歩きスマホを始めとする危険行為を禁止していただきたい
一 危険に遭遇しようとしている視覚障害者に対する適切な声かけ・援助の仕方について研究し啓発を促進していただきたい
一 視覚障害者の安全な移動について、視覚障害者への声かけを呼びかけるなど、国民全体の理解を高めるようお取り組みいただきたい
一 視覚障害者の鉄道利用における歩行訓練、盲導犬の育成及び使用訓練の機会が十分に保障されるため、簡易な手続で鉄道施設の使用許可をいただけるよう鉄道事業者に対しご指導いただきたい