視覚障害者のための日常生活用具と補装具の給付及び貸与の実態調査事業 報告書

2018年7月3日

 本連合では、社会福祉法人中央共同募金会、全国労働者共済生活協同組合連合会の助成を受け、「視覚障害者のための日常生活用具と補装具の給付及び貸与の実態調査事業」を実施し、報告書をとりまとめました。報告書は全国の自治体、視覚障害者情報提供施設、視覚障害者福祉団体等へ配布をしました。
 アンケート並びにヒアリング等にご協力いただきました皆様ありがとうございました。

Ⅰ.調査報告書のデータ

報告書は下記よりダウンロードができます。

1.墨字版(PDF形式/5.35MB)

2.テキスト版(テキスト形式/161KB)
※写真やグラフ、アンケート調査票等は省略しています。

3.DAISY版(DAISY形式/165MB)

4.点字版
※制作中

Ⅱ.調査の内容

1.目的

 補装具や日常生活用具は、視覚障害者の自立、社会参加、日常生活を支えるために重要な福祉制度である。そこで、これらの制度の利用実態や課題を明らかにするために視覚障害当事者、自治体(市区町村)、メーカー、販売店に対する全国調査を実施した。

2.方法

(1)当事者調査

調査方法:郵送式のアンケート・ヒアリング

①アンケート送付数:1,635人
 日本盲人会連合:950人
 日本網膜色素変性症協会(JRPS):300人
 弱視者問題研究会:50人
 盲学校生徒:335人
 実施期間:平成29年9月11日~10月5日

②ヒアリング 現地調査2箇所、電話及びメール
 山梨県 9人 10月12日
 新潟県 3人 10月18日
 電話及びメール 10人 12月14日~26日

(2)自治体(市区町村)調査

調査方法:郵送式のアンケート

①アンケート送付数:1741箇所
 市:771箇所
 区:23箇所(東京)
 町:744箇所
 村:183箇所
 政令市:20箇所

 「1次調査」
 実施期間:平成29年9月7日から10月5日
 「2次調査(1次未回答の自治体のみ)」
 実施期間:平成29年11月7日~11月20日

(3)メーカー調査

調査方法:郵送式のアンケート・ヒアリング

・アンケート送付数:45箇所
 実施期間:平成29年9月7日~10月5日

・ヒアリング 8社
 実施期間:平成29年9月20日

(4)販売店調査

調査方法:郵送式のアンケート・ヒアリング

・アンケート送付数: 46箇所
 実施期間:平成29年9月7日から10月5日

・ヒアリング 3社
 実施期間:平成29年9月20日

3.結果

  調査の結果を抜粋して紹介します。
 ※詳しくは、報告書をご覧ください。

(1)基本調査

①当事者調査
 有効回答:939人(57.4%)
 年齢:60歳代 317人(33.8%)70歳代 182人(19.4%)
 性別:男性 600人(63.9%) 女性 336人(35.8%)
 障害の程度:全盲383人(40.8%) 弱視508人(54.1%)
 給付を受けた経験者数:補装具 730人(77.7%) 日常生活用具 734人(78.2%)

②自治体
 有効回答:1,235箇所(70.9%)
 <内訳> 
 市:636箇所(51.5%)
 区:20箇所(1.6%)
 町:473箇所(38.3%)
 村:89箇所(7.2%)
 政令市:17箇所(1.4%)
 
③メーカー
 有効回答:27箇所(60.0%)

④販売店
 有効回答:29箇所(63.0%)
 

(2)主な結果

①当事者調査

補装具や日常生活用具に関する福祉制度に満足できていないことがわかった。

<補装具の満足度>

 満足:288人(39.4%)

 不満:410人(56.2%)

 

補装具費支給制度に対する当事者の満足度

補装具費支給制度に対する当事者の満足度

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<日常生活用具の満足度>

 満足:247人(33.6%)

 不満:473人(64.4%)

 

日常生活用具に給付等事業に対する当事者の満足度

日常生活用具に給付等事業に対する当事者の満足度

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不満足の理由(1)制度が伝わらない

・制度を知るまでにかかった時間が5年以上かかった
 補装具 173人(23.7%)、日常生活用具 216人(29.4%)

・補装具についての情報が入手しにくい
 144人(35.1%)

・補装具の制度を知ることの機会が少ない
 111人(27.1%)

・日常生活用具の品目や耐用年数等の 情報がなかなか手に入らない
 146人(30.9%)

 

不満足の理由(2) 自治体が法の趣旨や制度を適切に理解していない
 

・白杖や眼鏡(矯正眼鏡・弱視眼鏡・遮光眼鏡)を用途別として2本もらえない
 98人(23.9%)

・日常生活用具の対象品目が少ない 
 257人(54.3%)

・生活必需品であるにも関わらず品目に追加してもらえない
 210人(44.4%)

 

不満足の理由(3) 制度(耐用年数や給付条件)に問題点がある

・白杖の耐用年数が長い
 136人(33.2%)

・日常生活用具の耐用年数が長い
 322人(68.1%)

・日常生活用具の給付を申請した際に断られたことがある人
 218人(29.7%)

・家族に晴眼者がいると対象にならない品目がある
 222人(46.9%)

・故障した際の対応がしてもらえない
 130人(27.5%)

・手続きしてから手元に届くまでに時間がかかる
 93人(19.7%)

・耐用年数を過ぎても故障等していないと新しく給付してもらえない
 79人(16.7%)

 

当事者の補装具費支給制度に関する不満

 

人数

割合(%)

補装具についての情報が入手しにくい

144

35.1

白杖の耐用年数が長い

136

33.2

制度を知ることの機会が少ない

111

27.1

申請手続きが難しい

104

25.4

白杖や眼鏡(矯正眼鏡・弱視眼鏡・遮光眼鏡)を用途別として2本もらえない

98

23.9

補装具に関する相談にのってもらえるところが少ない

98

23.9

修理費でも申請手続きが面倒

93

22.7

支給決定の時期が遅い

87

21.2

自分に合う補装具を選ぶのが難しい

79

19.3

その他

91

22.2

 

当事者の日常生活用具給付等事業に関する不満

 

人数

割合(%)

耐用年数が長い

322

68.1

対象品目が少ない

257

54.3

新しい品目が追加されない

233

49.3

家族に晴眼者がいると対象にならない品目がある

222

46.9

生活必需品であるにも関わらず品目に追加してもらえない

210

44.4

給付上限額(基準額)が低い

180

38.1

ニーズを聞く場を設けてくれない

147

31.1

日常生活用具の品目や耐用年数等の情報がなかなか手に入らない

146

30.9

故障した際の対応がしてもらえない

130

27.5

手続きしてから手元に届くまでに時間がかかる

93

19.7

対象障害区分(手帳の等級)が狭く該当しない

83

17.5

耐用年数を過ぎても故障等していないと新しく給付してもらえない

79

16.7

申請手続きが複雑で、申請が難しい

79

16.7

対象者の年齢に制限がある

25

5.3

 

当事者調査の結果、様々な不満があることがわかった。当事者の不満の原因を探り、解決方法を模索するために自治体、メーカー、販売店に対して調査を実施した。

 

②自治体調査

当事者の不満(1) 制度に関する情報が伝わってこない

・自治体の情報提供の方法

 身体障害者手帳の交付の際に、本人に伝えているという自治体は多かった。

 補装具 994箇所(80.5%)、日常生活用具 961箇所(77.8%)

※しかし、当事者は必要な情報が伝わっていないと感じていた

 視覚障害者へ情報を届けるため、地域の社会福祉協議会や視覚障害者の関係団体及び施設に情報提供していない自治体が約半数に上った。

「特にお知らせしていない」 補装具 725箇所(58.7%) 日常生活用具 712箇所(57.7%)

※自治体が一方的に情報を提供しているだけで視覚障害者に情報を届ける努力が十分でないことがわかった

 

当事者の不満(2) 制度が正しく運用されていない。

白杖や眼鏡等を2種類、支給してもらえない。

用途が異なる補装具の2本申請について当事者からの申請がないと回答した自治体が、白杖812箇所(65.7%)、弱視眼鏡883箇(71.5%)、遮光眼鏡725箇所(58.7%)、矯正眼鏡822箇所(66.6%)

※補装具は用途が異なれば2つ支給される可能性があるという情報が視覚障害者に伝わっていないことが原因だと考えられる

日常生活用具の給付品目等の自治体間の差が大きい。

自治体の日常生活用具の品目の決め方(多かった順に3つ)

・厚生労総省の「日常生活用具参考例」等を参考にした 1,071箇所(86.4%)

・他の自治体の給付品目を参考にした 524箇所(42.4%)

・利用者からのニーズを参考にした 244箇所(19.8%)

日常生活用具の品目、給付基準額、対象者等の定期的な見直しを「していない」自治体 534箇所(43.2%)

※日常生活用具は品目が決められていえうわけではない、しかし例に示されている品目でないと出せないと勘違いされていることや見直しもされていない。

当事者の不満(3)窓口の職員が制度や視覚障害者の生活の実態を知らない

・補装具費支給に関する内規(要綱)を「定めていない」と回答した自治体が737箇所(74.9%)

※内規を定めているところが少なった。

・日常生活用具給付事業の実施要綱を「定めている」と回答した自治体939箇所(95.4%)

※実施要綱を定めているため、柔軟な対応ができていない恐れがある

 

自治体が制度を運用していく上で困っていること

自治体の調査の結果、自治体も制度を運用していく上で困っていることがわかった

 

補装具

日常生活用具

箇所

箇所

職員が定期的に異動するため、 専門的知識を習得するのが難しい

1,079

87.4

999

80.9

支給・給付の判断に 迷うことが多い

676

54.7

653

52.9

地域に住む視覚障害者へ支給制度を周知することが難しい

250

20.2

261

21.1

 

メーカーが補装具や日常生活用具において困っていること

メーカーの調査をとおして、予算額や給付基準額が決まっていることや、新しい品目の追加が許可されにくいため、安定供給や新製品の開発が困難であることがわかった。

補装具に関する課題

 

箇所

割合(%)

部品代等が高騰し、製造費を抑えることが困難

34.6

製品に対する自治体担当者の理解が不足している

26.9

補装具の基準が厳しい

15.4

補装具として認めてほしい製品も認められない

15.4

 

日常生活用具に関する課題

 

箇所

割合(%)

日常生活用具の給付上限金額が変更されないため製造及び輸入が困難

13

50.0

商品に対する自治体担当者の理解が不足している

13

50.0

部品代等が高騰し、製造費を抑えることが困難

12

46.2

耐用年数が長いため、新商品の販売がむずかしい

10

38.5

新商品を製造しても日常生活用具に指定されることが困難

34.6

アフターフォローの要望が多くて対応することが困難

19.2

 

販売店が補装具や日常生活用具において困っていること

販売店への調査を通して当事者へ製品の設置や修理等のアフターサービスを実施したくてもそのための補助がないため、ユーザの期待に応えきれていないことがわかった。

補装具に関する課題

 

箇所

割合(%)

製品価格の高騰により、補装具価格(上限額)では収まらない

13

46.4

自治体によっては提出書類が異なり手続きが複雑

12

42.9

自治体の職員が人事異動のため、入れ替わることでうまく連携が取れない

10

35.7

視覚障害当事者からの要望も多く、それらに答えることができない

25.0

補装具の申請をしてから利用者の手元に届くまでに時間がかかる

21.4

補装具関係書類(決定通知書・支給券)が申請者にしか届かない

14.3

補装具関係書類(決定通知書・支給券)の記載内容(基準超過額等)が不足している

14.3

 

日常生活用具に関する課題

 

箇所

割合(%)

各自治体によって提出書類が異なり手続きが複雑

19

67.9

製品の耐用年数が長く新商品の販売が難しい

19

67.9

フォロー(納品・設置・説明等)に対する対価

16

57.1

自治体の職員が人事異動のため、入れ替わることでうまく連携が取れない

14

50.0

視覚障害当事者からの要望も多く、それらに答えることができない

13

46.4

各市区町村と委託契約を結ばなくてはいけないのが大変

11

39.3

用具導入後の修理サポート体制

32.1

 

Ⅲ.課題と提言

制度の周知

・補装具費支給制度や日常生活用具給付等事業等の福祉制度を知るまでに5年以上かかった人が23.7%と29.4%いた。早く福祉制度に出会うことが出来るようにするために、自治体でわかりやすく周知徹底するとともに、眼科医などでの情報提供も求められる。

・当事者が必要なときに補装具費支給制度や日常生活用具給付等事業の情報にアクセスできるような工夫が必要である。

補装具費支給制度

・厚生労働省の「補装具費支給事務取扱指針」では、用途が異なれば、白杖や眼鏡を2種類支給することが可能とされている。しかし、2種類申請ができることを知ってる当事者は少なくなかった。

・新商品が補装具に認定されにくい。また、白杖につけるパームチップ等の部品も認定がされない。

当事者ニーズに対応するためには

・補装具費支給のルールを当事者に周知する必要がある。また、定期的に情報にアクセスできるようにする必要がある。

・補装具の認定について幅を広げることを検討する必要がある。

日常生活用具給付等事業

・日常生活用具の給付品目や給付上限額等が自治体によって異なっている。

・時代にあった新商品が日常生活用具の給付品目として認められない。

・日常生活を送る上で必要なものであっても給付を断られることがある。

・販売店や製品を指定している自治体があり、当事者がアフターフォローのしっかりしている販売店や自分の用途にあった製品を選ぶことができない。

当事者のニーズに対応するためには

・自治体が制度の趣旨を適切に理解し、運用してほしい。

・定期的に給付品目や条件等を自治体が見直す必要がある。給付品目等の見直しに当たっては、視覚障害当事者の意見を聞いてほしい。

・給付の手続き等を迅速化する必要がある。

・日常生活用具の目的を鑑みて、当事者の自立が大切であり、本人が一人で使用することを前提とすべきである。家族や代理人が変わって見てくれることを前提とした給付の考え方は見直してほしい。