竹下亘復興大臣との懇談

2015年2月25日
 平成27年2月10日、視覚障害者の震災復興に関して復興庁・竹下亘復興大臣と懇談を行いました。
 当日は、東日本大震災での被災地を代表して日盲連・及川清隆副会長(岩手県視覚障害者福祉協会理事長)と日盲連組織部藤井貢部長が訪問をし、被災地に住む視覚障害者から集められた意見を元に、被災地で生活をする視覚障害者の現状や要望をお伝えしました。
 要望に関しては、①仮設住宅に住む視覚障害者への対応、②福島県内での音声式線量計の配布、③災害時要援護者避難支援プランの作成、④復興における都市整備・外出支援の対応、⑤福祉有償運送制度を活用した外出支援の5点を中心に要望を行い、竹下大臣からは提出した要望は実現出来るように努力し、一日も早く、視覚障害者も含めた全ての方の復興が出来るように全力を尽くしたいという力強いお言葉を戴きました。
 
 
左から及川清隆副会長 真ん中は竹下亘復興大臣 右は藤井貢組織部長

竹下亘復興大臣との懇談

 
以下、添付の要望書を記載
 

平成27年2月10日

復興大臣 竹下亘 様

社会福祉法人日本盲人会連合 
会長 竹下義樹 

震災復興に関する要望書

 平素は、視覚障害者の福祉向上への深いご理解とご支援を賜り心より感謝申し上げます。

 当法人は平成23年3月11日に発生した東日本大震災以降、被災を受けた地元加盟団体、全国の加盟団体と連携を行い、被害にあった視覚障害者に対する支援や調査、震災や防災に対する啓発活動などを行い、視覚障害者の立場からの震災復興に力を注いでおります。
 全国の会員等からは義援金を募り、被災視覚障害者への義援金の配布や音声式線量計の配布を行い、震災によって心に傷を負った視覚障害者のために、相談の場として「震災ホットライン」を開設するなどの支援活動を行ってまいりました。
 また、大震災で受けた被害を風化させないため、視覚障害者の「語り部」の育成と全国への派遣活動、情報誌「語り継ぐ未来への友歩動」の発行を行い、被災地域での実態調査をまとめた報告書「視覚障害者のための防災・避難マニュアル」を作成し、復興事業に役立てるとともに視覚障害者に対する防災意識の向上にも努めてまいりました。
 そして、全国から寄せられた視覚障害者の声は、関係機関や各種検討会に反映するように努め、早期の震災復興が達成されることと、視覚障害者の防災対策が推進されることを強く望んでおります。

 この度、竹下復興大臣との面会という貴重なお時間を頂き、感謝の念と共に、僭越ながら、視覚障害者の復興に対する思いをお伝えしたく、本要望書を提出いたします。
 当法人はこの度の大震災と大津波で亡くなられた東北3県119名の視覚障害者の無念の思いを伝えるために、今後も活動を継続して参りたいと考えております。
 何卒、内容をご高覧の上、格段のご配慮を頂きますよう、お願い申し上げます。
要望事項
1.仮設住宅に住む視覚障害者への対応について 
 現在も仮設住宅に住んでいる視覚障害者に対して、早急に復興支援住宅へ入居できるように要望する。特に、一人暮らしの視覚障害者に対しては、心身の健康管理の観点から早急な対応が必要なため、強く要望する。
(要望の趣旨)  
 視覚障害者はその障害特性から外出困難者であり、かつ移動困難者であるため、慣れない生活環境や居住環境が劣悪な仮設住宅での生活には困難を極め、仮設住宅に住む視覚障害者においては精神的苦痛を抱える者が多く存在します。
 よって、早急な復興支援公営住宅への入居を要望し、いち早く視覚障害者の生活環境が保障されることを望みます。
 
2.音声式線量計の配布について 
 福島県における視覚障害者の健康管理のために、県内の未所持者に対する音声式線量計の無償配布を要望する。
(要望の趣旨)
 津波による原発事故で放射能汚染被害が発生し、放射能を測定する線量計は必要不可欠である。視覚障害者においては、音声で計測値の確認が出来る音声式線量計が必要で、当法人では164台の無償配布を行った。また、個人購入や市町村で貸し出しが行われている台数が約50台程度になり、全体では200台弱の音声式線量計が使用されています。
 しかし、平成26年4月1日現在、福島県内における視覚障害者1級の手帳所持者は2246名、2級手帳所持者は1711名になり、福島県内の音声式線量計を必要とする視覚障害者に音声式線量計が行き渡っていない現状があります。特に、津波と原発事故の被災10市町村における視覚障害者手帳所持者に関しては合計で520名おり、1級・2級の手帳所持者は推定で340名程度と想定されていますが、その大半には音声式線量計は行き渡っていません。
 放射能被災地域への帰還が行われ始めた現在、音声式線量計を持たない視覚障害者が多く、地元に戻ったとしても、自身の危険を確認することが出来ないことがあり、健康管理等の観点で不安を覚えることが多く、住み慣れた土地に戻っても安心な生活が送れない現状があります。
 よって、最低でも300台の音声線量計を被災地域の視覚障害者に対し無償配布を行い、生活環境の安心を取り戻す事を要望する。

3.災害時要援護者避難支援プランについて 
 各市町村に対し、災害時要援護者避難支援プラン(全体計画・個別計画)が速やかに策定され、その内容が地域の町内会等で決められる災害避難計画、及び防災に関する社会システムとして構築されることを要望する。
(要望の趣旨)
 視覚障害者への災害避難や防災については、地域において平常時に要援護者情報を収集し、災害非常時に活用することが不可欠です。
 しかし、視覚障害者の地域居住者人数が少人数であることから、そのニーズの把握が困難なのが実態です。そのため、平常時から要援護者である視覚障害者の情報収集を進め、市町村においては、収集された情報を活かして災害時要援護者避難支援プラン(全体計画・個別計画)を策定し、災害非常時の実施、及び関連機関への啓発指導や連携を要望する。

4.復興における都市整備、外出支援について 
 復興における都市整備、及び視覚障害者の外出支援は人にやさしい街づくりの観点と全国のモデル的視点に立った上で、視覚障害者に配慮した環境整備が行われることを要望する。
(要望の趣旨)
 震災と津波により生活環境が破壊された地区では、親しんだ町並みから一変し、まったく別の町並みになってしまったことから、歩きなれた町並みの記憶に頼りながら移動をする視覚障害者にとっては、1人で外出することは困難になり、外出を控える視覚障害者が増えています。また、転居を余儀なくされた視覚障害者は、慣れない土地での移動には更なる不安を覚え、更に外出を控える傾向にあります。
 そして、視覚障害者の外出支援においては欠かすことの出来ない存在であるガイドヘルパーは、被災によって他の市町村に転居する者も多く、外出に関する支援環境も劣化の一途をたどっています。
 このような移動支援に関する環境の変化は、視覚障害者の移動を制限しているほかに、視覚障害者自身にストレスを与え、視覚障害者の心と体の健康に悪影響を及ぼしています。
 よって音声信号機や点字ブロック敷設などの視覚障害者が移動しやすい都市整備を行う事や、ガイドヘルパーの人材確保と配慮の行き届いた外出支援体制を構築する事を、地域に住む視覚障害者の実情に合わせながら環境整備が行われることを要望します。
 
5. 福祉有償運送制度における外出支援について 
 福祉有償運送制度は、視覚障害者にとって、制度趣旨に沿った活用がしにくい現状にある。よって、視覚障害者の社会自立や社会参加の福祉支援の観点から、震災復興特別特区や福祉支援モデルとして外出支援に制度活用が容易にできるよう要望する。
 (要望の趣旨)
 私たち視覚障害者は、移動困難者であり、外出困難者でもあります。震災で公共交通機関が寸断されていることや、過疎地・中山間地における路線バスの廃止、居住地が広域であることなどから、外出環境が劣悪です。このような交通環境を補うためには、同行支援・移動支援等の福祉サービスと福祉有償運送の複合的活用が私たちの外出支援には不可欠な現状です。よって、早急に全国もしくは震災地において福祉有償運送制度が容易に活用できるよう要望します。