愛盲時報 第224号(テキスト形式・全文)

2010年1月25日

愛盲時報 第224号 平成22年1月25日(月)

 《1.新春対談2010 長妻厚生労働大臣と笹川日盲連会長》
 昨年9月の就任以来、山積する重要課題への対応にお忙しい長妻昭厚生労働大臣に、笹川吉彦日本盲人会連合会長が新政権の下での障害者施策についてお話をうかがいました。
 笹川会長:明けましておめでとうございます。
 長妻厚生労働大臣:おめでとうございます
 笹川:新政権の下での新年でございます。大臣のご感想を伺えればと思います。
 大臣:昨年の9月16日に就任しまして、初めは厚生労働行政全般の現状を把握するというのが重要だということで、現場にも足を運ばせて頂いたり、あるいは相対的貧困率というような現状を示す指標なり基準を、何とか明らかにして発表していこうということで取り組んで参りまして、いよいよ今年は本当に中長期の視野に立って、日本のナショナルミニマム、憲法25条で保障されている最低限度の生活を、きちっと守る。しかしその前に、最低限度の生活は、具体的にどういうものなんだろうと、この発想が今まで不十分だった、基準が不十分だったという反省もあり、ナショナルミニマム研究会というものを作って、その哲学、大げさに言えば哲学を打ち立てて、それを国や地方自治体が守っていく。こういうことを、年金、医療、介護、障害者の方々の福祉、雇用から、最低限度のナショナルミニマムを確保する、こういう取り組みを今年は花を開かせていきたいと考えております。
 笹川:厚生労働大臣と申しますと重要ポストのひとつですけれども、ご就任のご感想はいかがでしょう。
 大臣:そうですね、やはり私が就任したその日から長妻昭という名前で無数の通知が出て、あるいは表彰状みたいなものも私の名前で、資格を取って頂いた方も私の名前でたくさんの資格の証明書のようなものが出るということで、本当に責任の重さ、発言一言一言の影響度を痛感しておりまして、本当に自分がしっかりと国民の皆様に約束した社会保障を立て直していくんだということで非常に今も緊張感を持ってやっているところです。
 笹川:そうですか。余談になりますけれども、大臣のお父上は東京の世田谷警察署の署長をなさっていたということで。実は私は、世田谷にもう50年ほど住んでおりまして、交通安全問題をはじめ、いろいろな面で大変お世話になりました。感謝しております。
 大臣:うちの父とお会い頂いて…。
 笹川:特に音響式信号機の整備の問題や何かで陳情に行ったことがございますので。放置自転車の問題でもお目に掛かったことがあると思います。
 大臣:ありがとうございます。今も元気に父はしておりますので、本当にそれはご縁ですので、またよろしくお願い致します。
 笹川:ところで大臣になられてから、いろいろ問題があって私どもの仲間の間でも問題になっていた障害者自立支援法を廃止するということを明言されました。全国の障害者は、もろ手をあげて賛成しているわけですけれども、ただ新しい障害者総合福祉法を制定するということで、これにはかなり時間が掛かると思うんですね。それと同時に、新しい法律が出来るまでの間をどうするのかというのが非常に不安でございます。この点については、どのようにお考えでしょうか。
 大臣:これについては、内閣の中に障がい者制度改革推進本部というのを設置することに致しまして、その中の会議体で障害者自立支援法に替わる新しい制度をご議論して頂こうということを考えております。その中には前の障害者自立支援法の反省に立って障害者ご自身、利用される方ご自身のご意見も十分に聞くような、そういう会議体にしたいということで考えておりまして、最終的に自立支援法を廃止して新しい制度を、考え方は制度の谷間がなくて、利用者の応能負担を基本とする制度ということであります。
 ただ、その前の段階として、やはりご負担を軽減するというのは、これはもう喫緊の課題となっていますので、これも財政当局ともご理解を頂き、国民の皆様方のご支援も頂いて、来年度100億円以上の予算を付けさせて頂きまして、このサービス利用料の部分については、低所得者、市町村民税が非課税の障害者の方々について、利用料負担を無料とすることと致しました。この措置のための予算はついたというか、これは国会での審議もありますけれども、予算編成過程で閣議決定を致しましたので、まずは第1段階、あくまで第1段階でありますけれども、そういう措置を今後も取らせて頂いて、この1期4年の鳩山政権の中で、新しい制度の実現をしていこうということで取り組んでおります。
 笹川:新しい法律に対する私ども視覚障害者の立場からの期待とお願いなんですけれども、特に取り上げていただきたいということで6点挙げております。一言に障害といっても本当に1人1人違いますし、種類によっても、また同じ視覚障害でも、かなり個人差があります。ですから施策そのものが本当にきめ細かな物でなければ、なかなか充分に対応できないということになろうかと思うんですけれども。まず先ほどお話しにございました費用負担の問題ですけれども、これは早速1歩前進して頂きまして、本当にありがとうございました。
 それから第2点としては、視覚障害者が一番苦慮するのが移動の問題、それから読み書きの問題ですね。これが日常生活の上では絶対必要なんですけれども、歩行訓練をしても盲導犬訓練をしても、一人では歩けないという方が多数おります。どうしてもそういう方々に対しては人的な対応が必要だと、この辺をぜひ充実して頂きたいということでございます。特に重度の視覚障害者の場合、高齢者の方が非常に多いもんですから、このガイドヘルパー制度に依存している方が大変多いわけです。この辺もぜひご配慮頂ければと思います。
 それから働く場の問題ですけれども、視覚障害者の就業率が平成18年のデータで20.4%、働きたくても働く場がないというのが実態です。何とか働く場を確保して頂きたいというのが第3点です。
 第4点が、ご承知のとおり視覚障害者の多くが鍼・灸・マッサージを生業としており、特に最近、無資格類似業者が大変はびこりまして、せっかく国家免許を取っても、十分生かされないという結果が出てきております。また、健常者が大量に、この世界に入って来ておりますので、鍼・灸・マッサージを業としていてもなかなか困難な面があり、厚生労働省で、ぜひしっかりした取り締まりを、お願いしたいということでございます。
 第5点が障害基礎年金の引き上げの問題ですけれども、年金といえば大臣の最もお得意とされるところで、少なくとも生活保護水準を上回る年金ということをぜひお願いしたいと思います。視覚障害者の場合は70歳以上が50%と、ものすごい高齢化なんですね。結局、年金に生活を依存しているという状況ですので、この辺もぜひご配慮頂ければと思います。
 それから最後に、今の制度の中で一番問題なのは、地域生活支援事業が各自治体の裁量で対応するということになっているもんですから、大変な地域格差が出ており、同じ国民でありながら住む所によって対応が全く違うという問題がありますので、この地域格差を無くすという点でぜひご配慮頂きたいと思います。
 大臣:本当にいろいろご指摘ありがとうございます。やはり移動が視覚障害者の皆様方にとっては大変なご苦労だというふうに思いまして、このガイドヘルパーによる介助ということについても引き続き、我々としてもご支援を申し上げていくということであります。これについても、一番最後におっしゃられた地域生活支援事業で対応させて頂いている部分もありまして、その中で、やはりその地域・自治体によって差があるという問題もあるというふうに考えておりまして、これも冒頭申し上げましたナショナルミニマムというか、最低限度の基準というようなことを下回るようなところは、やはり国として是正をするという姿勢をもって取り組んでいきたい。それと、この代筆代読などの読み書きの支援ということでありますけれども、これももちろん重要でありまして、これにつきましても移動支援、これはホームヘルプサービス、家事支援の中で提供されておりますけれども、これについても我々、引き続き予算も確保致しまして、ご支援を申し上げるということを続けてまいります。
 働く場でありますけれども、これにつきましても各企業に障害者の皆様方の雇用の比率なども定めさせて、目標を定めさせて頂いておりましたり、あるいは委託訓練という職業訓練でありますけれども、それでいろいろな能力を、技能を付けて頂こうというコースも、これからも皆様のニーズにあったものに拡充をしていく。とはいえお話にあったように、お年を召した方が大変多いということでありまして、この年金の問題であります。これは障害年金のみならず、国民年金につきましても、生活保護よりも低いのではないかというご指摘を頂いておりまして、そういう意味では年金制度改革というのも、将来実行していくわけであります。
 特にこの障害年金について、私も野党時代国会で、実は視覚障害者の方の障害年金について何度か質問しました。この障害年金と、その要件に当てはまるだろう視覚障害者の方の人数を比べますと、当てはまるであろう人数はかなり多いのに、実際に視覚障害者で障害年金をもらっている方が非常に少ないと、こういう事実がうかがえる可能性がありまして、それを今も調査をしているのです。
 これはぜひ会長におかれましても会員の皆様などで、実はその要件に当てはまって、申請をすれば障害年金が支給される可能性があるのだけれども、それをご存じなかったり、あるいは勘違いをされて、もらえないと思っておられたりという点もある方がいらっしゃるのではないかということを、今我々も調査しておりまして、そういうお呼びかけなどもして頂けるとありがたい。
 後は、全体の年金については、年金制度改革の中で我々も取り組んでまいりたいと考えております。そして、この鍼・灸についても、無資格者の問題ですが、これは警察とも協力をして、厚生労働省としても情報提供をして、あるいは皆様の会からも情報提供をぜひ頂きながら、我々も厳重に取り締まりを実行していきたいと考えております。
 笹川:ぜひお願い致します。最後に、全国の障害者は大臣の今後のご活躍に大変期待しております。厚生労働省というのは本当に重要な事業が山積しておりまして、いくら大臣が40代というお若いご年齢でも、容易じゃないということは重々承知しておりますけれども、ぜひ頑張って頂きたい。そこで、大臣の抱負をぜひお聞かせ頂きたいと思います。
 大臣:本当に厚生労働行政は幅広い、そして責任も重大で、皆様方お一人お一人の命と健康と安心を担わなければいけない大変な職務であります。ただ、大変なのはむしろ私よりも皆様方の方でありまして、社会保障のほころびがある中で、社会保障の現場からはいろいろな、本当に悲鳴に近い声も聞いてきておりますので、そういう意味では、本当にご苦労されている方々を見ると、私もさらに頑張らなければいけないということで、そういう使命感がますます強くなってくるわけであります。
 抱負と致しましては、厚生労働行政について大変不信感を持たれるようなことがこれまであったと思いますので、そういう意味では職員の皆様に申し上げているのは、生活する立場に立った信用できる厚生労働省に立て直していきましょうということです。
 国民の皆様に奉仕する厚生労働省、そしていつの日か皆様方から、多くの方から、心からありがとうと言われる行政になるように立て直す、自分たちがこの社会保障を担う担い手である、これを立て直す使命感を持ってやっていくんだという、そういう志気を上げるようなことも今やっておりますので、本当に厚生労働省も変わり、厚生労働行政も変わり、そしてナショナルミニマムをはじめ、きちっとした最低限度の基準というのは守られる。その上で当然、競争というのは社会の活力ですので、競争は重要ですので、競争してより良い社会を作っていく、こういう形があるべき姿だと考えておりますので、そういう理想を追い求めて私も精進して参ります。
 そして厚生労働省としても、私が就任させて頂いてから、皆様から厚生労働省に苦情とかご指摘を、電話、メール、FAXという形で、いろいろ頂きました。今までそれを集計していなかったのですが、これを集計すると、2000件ほど毎週頂くのですが、それを毎週毎週公表することにしました。そういう意味では、民間企業では、そういうご指摘は宝の山だと言われておりますので、そういう厳しいご指摘をどんどん、むしろ頂いて、それを梃子に、より良い行政に転換していきたいと思います。またぜひ会員の皆様方からも、厳しいご指摘を直接頂ければ、我々も改善努力を続けていきたい。また、先程の繰り返しになりますが、障害年金についても、本当に手続きをして頂ければ支給できる方も、かなり全国におられると思います。こちらからも何とかPRを致しますので、ぜひそういう点にも、お呼びかけも頂ければ幸いだと考えております。
 笹川:その点につきましては我々自身の問題ですから、可能な限り啓蒙して参りたいと思います。
 大臣:行政も本当にアピール、告知広報が下手な部分もありますけれども、ぜひ我々も改善して参りますので、よろしくお願い致します。
 笹川:どうも本日は大変お忙しい中を、いろいろお言葉を頂きましてありがとうございました。
 大臣:足を運んで頂きまして本当にありがとうございました。

 《2.謹賀新年2010年》
 新年のご挨拶 会長 笹川吉彦
 新年明けましておめでとうございます。会員の皆様には、お元気で平成22年の初春をお迎えのことと心からお慶び申し上げます。本年も皆様の力強いご支援のもと、障害者福祉増進のため、ベストを尽くして参りますのでよろしくお願い致します。
 昨年は政権交代を始め、新型インフルエンザの大流行、中国や北九州を襲った集中豪雨、そして円高と正に激動の1年でした。また私達にとってはルイ・ブライユ生誕200年、石川倉次生誕150年という記念すべき年でもあり、皆様の大変なご支援により「点字ビッグイベント」も成功裏に終了することが出来ました。さらに、鍼、灸、マッサージに従事する視覚障害者の将来を大きく左右する、鍼・灸専門学校のあん摩マッサージ指圧併科問題も、何とか無事に切り抜けることができました。
 しかし、その中でも最も大きなショックだったのは、重度視覚障害者を中心とした障害者自立支援法改正案が廃案になったことでした。そして、新政権の下で障害者自立支援法が廃止されたことでした。廃止はいいが、これからの障害者福祉は一体どうなるのかという大きな不安が全国の障害者の脳裏をよぎりました。特に政権交代後3か月たっても、さっぱり動きが見られないという事には、憤りを感ずるものもありました。
 そうした中、政府は12月8日の閣議で、ようやく「障害者制度改革推進本部」の設置を決め、動き始めました。今後この本部の下に障害当事者を中心とした推進会議を設置し、月に2回平均会合を持ち、障害当事者の生の声を直接聞き、政策に反映させていくとのことです。これまでの遅れを1日も早く取り戻し、具体的な方策を打ち立て、推進して行ってもらいたいものです。
 もちろん日盲連としても、このような動きに敏速に対応し、視覚障害者特有の問題を解決すべく全力を挙げてまいります。ただ、これまでと異なり、各団体の要望は政府としては受けとらず、すべて民主党幹事長の手元で処理することになっており、戸惑いを感じております。今のところ、費用負担を応益負担から応能負担に切り替え、市町村民税非課税世帯まで無料扱いを拡大するための予算要求をしているところです。現在、プロジェクトチームでは、今後の取り組みや要望事項、運動の進め方など、集中的に協議を重ねているところです。
 本連合の最大のイベントである第63回全国盲人福祉大会が、5月19日から3日間、秋田県秋田市の県民会館を中心に開催されますが、論議の的は、プロジェクトチームが取りまとめた報告書の審議になると思われます。大会を主管する秋田県視覚障害者福祉協会では、極めて厳しい財政状況を克服して、危機突破のため、なんとしても大会を成功させようと懸命になっておられます。その熱意に応えるべく、各団体こぞって多数参加され、大会を大いに盛り上げていただきたいと思います。
 昨年は皆様のご協力により、点字ビッグイベントを成功させることができましたが、本年は私達視覚障害者に管針を考案し、職業的自立の道を切り拓かれた杉山総検校生誕400年という記念すべき年にあたります。財団法人杉山検校遺徳顕彰会ではこれを期に、貴重な資料や遺品を永久保存するための記念館を建設すべく募金活動を行っています。本連合でも積極的に協力しておりますので、皆様のご理解ご支援よろしくお願い致します。お問い合わせは本連合事務局(電話03-3200-0011)まで。

 新春のご挨拶 副会長 竹下 義樹
 あけましておめでとうございます。2010年が会員のみなさんと日盲連にとって、輝かしい年であることを祈念し、年頭の挨拶をさせていただきます。
 昨年3月には、障害者自立支援法の改正を求める私たちの声が結実し、視覚障害者の移動支援に対する新たな制度が障害者自立支援法の改正案として国会に上程されました。移動支援事業が地域生活支援事業という枠組みの中で予算的制約を受けるだけでなく、市町村の考え方によって大きな格差が生じる結果となっていましたが、改正案に盛り込まれた「重度視覚障害者同行援護事業」は全国一律の制度として個別給付に位置づけられ、しかも外出保障の内容として移動支援だけでなく目的地での情報処理をも支援することを内容とする制度として実現されようとしていました。
 しかし、残念ながら改正案は審議されることなく廃案となり、日の目を見ることはありませんでした。2009年9月に発足した新政権は、障害者自立支援法の廃止と新たな障害者福祉の確立を宣言し、同年12月8日には「障害者制度改革推進本部」を立ち上げました。そして、本年1月には推進本部の下で具体的な制度作りを担当する「障害者制度改革推進会議」がスタートしようとしています。
 今後は日盲連としても、改正法によって実現しなかったコミュニケーション支援を含む同行援護事業の実現を求めて運動することになります。日盲連は、そのために2009年11月に「視覚障害者のための福祉制度のあり方検討会」を立ち上げ、本年5月までに日盲連としての制度改革に向けた政策提言をまとめることにしています。今年も障害者権利条約の批准と障害者差別禁止法の制定をも含め、日盲連としての役割を十分に発揮できる態勢を整え、みなさんとともに前進する1年にしたいと思います。本年もよろしくお願い致します。

 新年の所感 副会長 時任基清
 愛読者の皆様、あけましておめでとうございます。
 今年は西暦2010、平成22年、庚寅八白土星の年です。今年還暦を迎えられる人の生年、同じく庚寅、昭和25年は朝鮮戦争により我国がいわゆる「特需」で、戦後復興から所得倍増へと向かうきっかけの年でした。私たちは「不景気」を託っていますが、当時と比較すれば、現在日本の生活は王侯貴族並みです。この辺で少々「贅沢ばかりが人を幸福にする訳では無い」ことに思いを致すことが必要なのかも・・・。いや、これは単なる年寄りの繰り言でした。
 日盲連は会員を中心とする人々のご協力で一昨年、新館建設と移転に漕ぎ着けることができました。しかし、国、都道府県、区市町村の発注が「全て、競争入札」となったことにより、受託業務を盲人作業所など、作業単価を圧縮できる他の施設に奪われ、財政情況が著しく悪化した為、現在、組織内に「財政検討委員会」を設け、鋭意改善策を考えているところです。日盲連の役・職員、力を合わせて財政再建に努める覚悟ですので、どうぞ皆様からの絶大なご援助をお願いする次第です。今年は日盲連役員の任期満了による改選期です。現在の複雑な社会情勢に立ち向かい、日盲連を護り育てられる人材により、執行部が組織されることに期待致します。
 又、日盲連あはき協議会と車の両輪を成す日マ会は社団法人である為、平成25年11月末迄に「公益社団」か「一般社団」のいずれかを選択・申請し、認可されないと解散命令を受けることになるので、目下、公益法人化検討委員会が検討と申請の準備中です。公益法人では半ば以上の事業と予算が「不特定多数の為の公益目的事業」でなければならず、申請の為のハードルは非常に高いので、困難な作業を強いられています。私自身、日マ会の会長をも兼務しており、実際のところ、頭の痛い状況です。日マ会についても、各方面の皆様からのご支援をお願いしなければなりません。
 昨年の総選挙で政権が交替し、さらに、今年の参院選の結果では政治と行政がどうなって行くのか?行く先が誠に不透明です。日盲連はどこに、どう運動すべきなのか、今後の執行部の力量が問われる場面なのでしょう。しかし、執行部が誰になろうとも、日盲連が力強く運動を展開し、視覚障害者の福祉を護り、発展させるには、会員の皆様のバックアップが求められます。今年も日盲連加盟団体会員の皆様の一層のお力添えをお願いして年頭のご挨拶と致します。

 年頭のご挨拶 副会長 前川昭夫
 皆様新年明けましておめでとうございます。2010年の幕開けを、お元気で穏やかにお迎えのことと心からお慶び申し上げます。昨年の「政権交替」は、その言葉が流行語大賞に選ばれるほどの大きな変革をもたらしました。日盲連も「政治動向」を見据えながらの、速やかな対応が求められています。
 昨年11月30日には「視覚障害者福祉のあり方」検討プロジェクトチームを立ち上げ、さまざまな問題の検討を深め、国の諸機関への対処と2010年度の運動方針に、何らかの提言をしたいと考えています。
 京都大会では「模擬裁判」の実施など大きな成果がありました。京都府、京都市そして近畿ブロックの皆様ありがとうございました。点字ビッグイベントも国内での啓発や海外点字普及支援など、当初の目的を達成できたのではないかと思われ、関係者のご支援に心から感謝申し上げます。
 今年は秋田県と北海道東北ブロックの主管で第63回全国盲人福祉大会が開催されます。秋田県での開催は日盲連史上初と聞いていますが、「政権交代」に伴う日盲連の運動方針を決める大会であり、その重要性をご認識いただき、一人でも多くのご参加を心からお願い申し上げます。
 ところで鳩山総理は障害者等とのヒアリングの中で、「障害者権利条約」を22年度内に批准したいとしていますが、私は国内法を議論し「合理的配慮義務」を明確にした上で批准して頂きたいと思っています。
 また、昨年12月11日の第3期中央障害者施策推進協議会で「障害者制度改革推進本部」が設置されることとなり、推進会議も設置されると思いますが、視覚障害者の意見が十分反映される体制として行くことが求められます。
 現与党の方針では「自立支援法」を廃止し、総合福祉法の中で新たな施策を検討するとされていますが、これまで議論した行動援護、代読・代筆などは施策として取り組むと共に、負担金は「応能負担」とし、一日も早い成立を求めます。そして、三療従事者の資質向上と権益擁護は元より、視覚障害者の就労促進、教育情報保障、バリアフリーについても一層の充実が図られるよう期待しています。
 日盲連加盟の各ブロックや、県、政令指定市の大会においても、地域におけるさまざまな課題が決議されていますが、これらの課題も会員が一体となって運動していく必要があると考えています。
 終りに皆様のご健勝とご多幸を、心からお祈り申し上げ年頭のご挨拶とさせていただきます。

 《3.点字ビッグイベント開催 理解と普及を目指して》
 点字の歴史における大きな節目となった今年、「ルイ・ブライユ生誕200年、石川倉次生誕150年記念点字ビッグイベント」が、社会福祉法人日本盲人福祉委員会(社会福祉法人日本盲人会連合、社会福祉法人日本盲人社会福祉施設協議会、全国盲学校長会で構成)と日本点字委員会の主催により盛大に開催された。6点点字の考案者ルイ・ブライユと、それを日本語に翻案した石川倉次の功績を讃えると共に、点字の一層の啓発・普及をめざし、記念式典と中核的行事である点字競技会、作文コンクール、点字資料等の展示、海外点字普及支援など多彩な行事が行なわれた。
 *点字競技会と記念式典
 点字競技会は10月31日と11月1日の両日、東京都新宿区の全国障害者総合福祉センター「戸山サンライズ」を会場に開かれ、全国から47名が参加して「聞き書き」「写し書き」「速読み」の3種目で技を競った。31日の競技終了後は、阿佐博(あさひろし)・日本点字委員会前会長が「ルイ・ブライユと石川倉次」を記念講演。1日は競技と審査終了後、記念式典が開かれ、点字競技会並びに作文コンクール入賞者の表彰と講評、最優秀賞受賞者の作文朗読と点字競技速読みの部優勝者のデモンストレーションなどが行われた。また、海外点字普及支援の支援物資の目録が、笹川(ささがわ)吉彦(よしひこ)日本盲人福祉委員会理事長から駐日カメルーン大使館一等書記官に贈られた。最後に作家の藤本義一氏が「表現の深さ」をテーマに記念講演を行い、2日間にわたるイベントは幕を閉じた。
 点字競技会の入賞者は次の通り(敬称略)。
 【総合】優勝:愛媛県・神野一志、準優勝:東京都・三森敏雄、第3位:岐阜県・高井史子/【聞き書きの部】優勝:札幌市・柴田憲克、準優勝:東京都・西山春子、第3位:神戸市・牧野まりえ/【写し書きの部】優勝:岐阜県・高井史子、準優勝:神戸市・牧野まりえ、第3位:東京都・三森敏雄/【速読みの部】優勝:京都府・藤原健司、準優勝:愛媛県・神野一志、第3位:東京都・青木こずえ
 *作文コンクール
 点字をテーマに、全国の盲学校小学部児童と盲学校との交流経験がある小学校児童を対象に募集した作文コンクールでは、「盲学校の部」に32校から116作品、「一般の部」に17校から181作品が寄せられ、入賞作品各10編が選ばれた。入賞者のお名前と学校名は次の通り(敬称略)。
 【盲学校の部】最優秀賞:伊藤美穂(県立山形盲学校)/優秀賞:黒田凱(都立久我山盲学校)、井上真希(まき)(熊本県立盲学校)、山田翔登(奈良県立盲学校)、野澤幸男(山梨県立盲学校)/佳作:丹羽海斗(県立千葉盲学校)、深井聡太(県立福岡盲学校)、井上駿(同)、上妻七海(熊本県立盲学校)、河野マリナ(同)
【一般の部】最優秀賞:出井有名(岩見沢市立幌向小学校)/優秀賞:山崎海砂(東京都江戸川区立本一色小学校)、奥平桃子(沖縄県北中城村立北中城小学校)、内藤ゆきの(高崎市立城南小学校)、深田紗希(甲府市立池田小学校)/佳作:石田実那(東京都江戸川区立本一色小学校)、高橋望(大仙市立豊川小学校)、宮本菜由(高松市立古高松南小学校)、奈良友貴(札幌市立伏見小学校)、はんにゃりん(相馬市立中村第二小学校)
 *点字資料展
 会場の「戸山サンライズ」では、競技などと並行して「日本語は一つ、文字は二つ 指でたどる真・善・美の楽しさ」をテーマに資料展が開かれ、点字に関する貴重な歴史的資料や機器などを紹介する会場には、2日間で約250人が訪れた。主な展示品は、点字以前に使われた結び文字・通心玉・ろう盤文字・瓦文字・木刻漆塗文字など、凸字教科書の版木、各種点字盤や点字タイプライター・点字製版機など、点字新聞「あけぼの」・点字雑誌「むつぼしのひかり」・「点字毎日」創刊号などの出版物、初期の日本点字教科書、オプタコン・点字データタイプライター第1号機など戦後の機器、アメリカ点字など民族学博物館の資料。そのほか、石川倉次と小西信八のCD盤音声を聞ける体験コーナーや、オプタコン・点字印刷機の実演コーナーなども設けられ、注目を集めていた。
 *海外点字普及支援
 点字の普及が困難な国々に点字器などを贈る「海外点字普及支援」では、11月中旬から日本盲人福祉委員会により、梱包・発送作業が進められた。支援物資は1カ国あたり点字器100台、点字用紙1万枚、点字付絵本10冊に加え、全国から寄贈された点字器なども含まれる。
 支援先はベナン共和国、カンボジア、チャド、ガーナ、リベリア、ラオス、モーリタニア、モンゴル、モザンビーク、ミャンマー、ニジェール、ナイジェリア、パプアニューギニア、ベトナム、カメルーン、東ティモール、フィジー、フィリピン、タイ、西サモアの20カ国(世界銀行並びに国連の発展途上指数に基づいて選定)に、支援の要請があったケニアを加えた21カ国。

 《4.第33回全国盲人将棋大会 A級優勝は酒井正さん》
 日本盲人会連合主催による第33回全国盲人将棋大会が11月21、22の両日、東京・西早稲田(にしわせだ)の日本盲人福祉センターで開かれました。A級(有段者の部)に13人、B級(級位以下の部)に14人が出場。日本将棋連盟から先崎学八段を審判長に迎え、21日は予選、22日は決勝トーナメントと、熱い戦いが繰り広げられました。決勝では、A級が東京都の酒井正さん、B級が広島県の瀬戸川博正さんがそれぞれ優勝、厚生労働大臣杯を手にしました。さらに酒井さんにはNHK会長賞が、また3位までの入賞者には日本将棋連盟会長賞と日盲連会長賞が贈られました。そのほかの結果は次の通りです。(敬称略)
【A級】準優勝:島根県・御神本章、第3位:東京都・小俣隆三/
【B級】準優勝:佐賀県・松本豊治、第3位:横浜市・新井豊三

 《5.第24回全日本視覚障害者柔道大会 埼玉県が5回目の優勝》
 第24回全日本視覚障害者柔道大会(特定非営利活動法人日本視覚障害者柔道連盟主催)が11月29日、東京都文京区の講道館で開催され、全国から46名の選手が出場して、熱戦が展開されました。
 都道府県対抗戦では埼玉県が5回目の優勝を飾り、厚生労働大臣杯などを獲得。準優勝は東京都、第3位は熊本県でした。体重別個人戦の試合結果は、次の通りです。(優勝、準優勝、第3位の順。1人の場合は優勝、2人の場合は優勝と準優勝、3位は2人の場合あり。敬称略)
【男子60kg級】平井孝明、田村修也、田村竹晃/【同66kg級】広瀬誠、大山桂司、藤本聰、日下部大祐/【同73kg級】高橋秀克、木村崇之、中村隼人、川空礼将/【同81kg級】加藤裕司、大野錦治、有安諒平/【同90kg級】初瀬勇輔、坂野裕、西村達也/【同100kg級】廣瀬悠、松本義和/【同100kg超級】石川信介/【同シニア】牛窪多喜男、吉田勉、鷲山良/【女子63kg以下合同】半谷静香、米田真由美、田中亜弧、田中淳未

 《6.第15回全国フロアバレーボール滋賀大会開催》
 日本盲人会連合並びに滋賀県視覚障害者福祉協会主催による「第15回厚生労働大臣杯全国フロアバレーボール滋賀大会」が11月22、23の両日、滋賀県大津市の「市立におの浜ふれあいスポーツセンター」ほか2会場で、男子8チーム、女子4チームが参加して開催されました。初日の予選リーグ、2日目の順位決定トーナメントの結果、男子はバトラー、女子はスカーレットと、いずれも東京都チームが優勝、強豪バトラーは8連覇を達成しました。そのほかの結果は次の通りです。
 【男子】準優勝:福岡市・Fライオンズ、第3位:名古屋市・キングシャッチー/【女子】準優勝:新潟県・MAX(マックス)新潟、第3位:京都府・ハピネス京都

 《7.短信》
 【秋の叙勲・褒章】
 *旭日双光章:大久保哲男・元鹿児島県視覚障害者団体連合会会長(81)、直居鐵・元日本点字図書館常務理事(83)
 *旭日単光章:田上昭一・兵庫盲導犬協会理事長(80)
 *黄綬褒章:藤岡勝美・富山県視覚障害者協会黒部支部長(67)
 【訃報】
 *石川県視覚障害者協会理事長で日本盲人会連合評議員の石原直行氏が10月22日、急逝された。66歳。告別式は10月25日、金沢市の「金沢メモリアルホール・アネックス」でしめやかに営まれた。
 *特定非営利活動法人川崎市視覚障害者福祉協会の顧問で、同会前会長の大倉信一氏が9月27日、逝去された。77才。告別式は10月2日、川崎市の「渡田会館」でしめやかに営まれた。
 【法人認可】
 さいたま市視覚障害者協会は、11月5日付けで「特定非営利活動法人さいたま市視覚障害者福祉協会」として認証され、同20日に法務局で法人設立登記を行った。初代理事長は長根清平氏。

 《8.第35回全国盲人文芸大会 入賞者発表》
 平成21年に開催された日本盲人会連合主催「第35回全国盲人文芸大会」には、全国から短歌52人(153首)、俳句75人(200句)、川柳62人(185句)、随想・随筆14人(14編)のご応募をいただき、厳正な審査の結果、各部門の入選作品が決まりました。
 審査員の先生並びに1位から3位までの入賞者の方々のお名前は次の通りです。(敬称略)
 【短歌の部】審査員:佐佐木幸綱、池田はるみ、黒岩剛仁
 1位(厚生労働大臣賞):島根県・佐々木貞敏/2位:堺市・森脇洲子/3位:宮崎県・長谷川康子
 【俳句の部】審査員:松林尚志、松井国央
 1位(文部科学大臣奨励賞):大阪府・山影俊典/2位:東京都・田中久子/3位:長野県・江元保夫
 【川柳の部】審査員:金子蛙次郎、川端六点
 1位(NHK会長賞):千葉県・小船精伍/2位:神戸市・奥田弘/3位:新潟県・三浦五十弥
 【随想・随筆の部】審査員:高橋秀治、竹村實
 1位:愛媛県・仙波慶伸「線香の香りのなかで思い出す」/2位:福島県・佐藤徳雄「二つの人生」/3位:沖縄県・植木善雄「『肝苦りさ』と『胴苦りさ』」