愛盲時報 第192号(テキスト形式・全文)

2002年6月10日

 愛盲時報 第192号(平成14年6月10日発行)

 1. 許すな福祉の後退支援費制度を完全なものに 第55回全国
盲人福祉大会 大津に2800人
 新しい息吹で 3日間、組織あげて討議
 「アジア太平洋障害者の十年」の最終年を迎える2002年、第5
5回全国盲人福祉大会滋賀大会(日本盲人会連合、滋賀県視覚障害者
福祉協会共催)が5月15日から17日の3日間、滋賀県大津市の大
津プリンスホテルで、全国から視覚障害者及び関係者約2800人が
参加して開かれた。
 会場に掲げられた「社会への完全参加は 職業の安定確保から」
「許すな 福祉の後退 支援費制度を完全なものに」「歩行の安全を
確保し 社会参加を促進しよう」「法19条にはり・きゅうを加え 
養成校の新増設を阻止しよう」の4つの大会スローガンのもと、社会
福祉基礎構造改革に基づき平成15年度から導入される支援費制度、
第3種・第4種郵便の存続、IT社会への対応など視覚障害者にとっ
て重要な問題が山積するこの年、日盲連全組織を上げて強力な運動を
展開すべく熱心な討議が重ねられた。

 共に羽ばたこう 笹川会長あいさつ
 17日の大会式典では、開催地元である滋賀県視覚障害者福祉協会
の堂前茂会長の挨拶に続き、國松善次滋賀県知事、山田豊三郎大津市
長から歓迎の挨拶があり、厚生労働大臣、文部科学大臣の祝辞が述べ
られた。席上、猪股功忠さんら21人と1団体に対し、日盲連顕彰に
よる表彰が行われた。
 大会議事では、平成13年度決議処理報告に続き笹川吉彦会長が
「皆様と共に作り上げた日盲連の伝統の上に新しい息吹を吹き込み、
21世紀にふさわしい視覚障害者の自立と社会参加に向け、共に羽ば
たこう」と挨拶し、前日の第39回全国盲人代表者会議で採択された
平成14年度運動方針を提案、大きな拍手をもって承認された。続い
て大会宣言案及び決議案を満場一致で採択、3日間の大会の幕を閉じ
た。なお、平成15年度の第56回全国盲人福祉大会は神奈川県で開
催される。

 2.大会決議
 1、盲人の生活権を守り、自立と社会参加を堅持するため、はり、
きゅうをあん摩師等法第19条に加え、養成施設の新・増設を法的に
規制すると共に、カイロ・整体等類似行為者の横行を法的に取り締ま
れるよう、法整備を強く要望する。
 1、支援費制度の実施に当たっては、ホームヘルプ、ガイドヘルプ
事業が現状を下回ることのないよう、適切な措置を講ずるよう強く要
望する。
 1、障害基礎年金を、1級は月額10万円以上、2級は月額7万5
000円以上に引き上げ、所得制限を大幅に緩和すると共に税制を改
正し、障害者の経済負担を軽減するよう要望する。
 1、盲人への情報提供、文化活動、団体活動を堅持・推進するため、
第3種・第4種郵便の取り扱いを、現状のまま存続させることを、郵
政公社関連法の条文に明記するよう強く要望する。
 1、障害者基本計画の策定に当たっては、障害の特性に十分配慮し、
障害者間に格差や不平等を生じないよう適切な対応を要望する。
 1、IT社会に対応するため、使いやすい機器の開発、盲人を対象
としたパソコン指導者の養成、講習会の開催など万全を期すよう要望
する。
 1、盲人の社会参加を促進するため、交通バリアフリー法を基本と
して、道路や建築物のバリアを取り除くと共に、歩行者の安全確保の
ため、ITS機器の開発、音声誘導システムの全国統一を急ぐよう要
望する。
 1、盲人の高等教育振興を図るため、筑波技術短期大学を早急に4
年制大学に昇格させると共に、統合教育のための条件整備に万全を期
すよう要望する。

 3.大会宣言
 古来より、多くの歴史を秘めた、比叡の山並み、日本一の大湖、琵
琶湖に面し、風光明媚な近江の国、大津市において、全国の盲人団体
代表並びに関係者が相集い、第55回全国盲人福祉大会を盛大に開催
することができたことは大きな喜びであり、開催に際し多大のご尽力、
ご援助を頂いた滋賀県並びに大津市をはじめ、滋賀県視覚障害者福祉
協会、そして滋賀県民の皆様に深甚なる感謝の意を表するものである。
 本年は私達にとって、きわめて重要な年であり、今こそ団結を強化
し、組織を上げて強力な運動を展開しなければならない。
 まず、第1に取り組まなければならない課題は、はり師、きゅう師
養成施設の新・増設阻止問題である。既に、今国会に対し請願活動を
行っており、盲人の生存権を守り、自立と社会参加への道を切り拓い
て行かなければならない。
 また、平成15年度から始まる支援費制度については、構造改革に
より福祉が後退することのないよう、特に盲人が地域で生きるために
最も必要なホームヘルプ、ガイドヘルプ制度を確保するなど準備万端
整え万全の体勢で臨まなければならない。
 今、大きな課題となっている第3種・第4種郵便の存廃問題は、団
体活動、盲人への情報提供、教育文化を推進して行く上で何としても
現状を維持する必要があり、郵政公社関連法の制定に当たっては、そ
の条文に第3種・第4種郵便の存続を明記させる必要がある。
 本年度は「障害者プラン」7カ年戦略の最終年に当たり、政府はそ
の目的をほぼ100パーセント達成したとしているが、私達は当事者
の立場から、その評価と分析を行う必要がある。特に障害の特性に対
し、どのような配慮がなされたか、各種の障害者間に格差を生ずるこ
とが無かったかなど、詳細な調査が必要である。政府は平成15年度
以降、向こう10年間の障害者基本計画を策定すべく懇談会を発足さ
せたが、「障害者プラン」の経験をふまえ、今や少数派となった盲人
の立場が不利になることのないよう、ベストを尽くさなければならな
い。
 また、IT社会への対応は、緊急を要する課題であり、盲人を対象
としたパソコン指導者の養成、講習会の開催、各種機器の開発など条
件整備を急がなければならない。
 生活環境の整備については、交通バリアフリー法を基本に、道路や
建築物など環境整備を推進すると共に、歩行の安全を確保するための
歩行者ITSシステムの開発も重要である。
 さらに、平成15年度から実施される統合教育については条件整備
を急ぐと共に、筑波技術短期大学の4年制大学への昇格も盲人の高等
教育推進のため、きわめて重要である。
 その他、山積する課題は多いが、今大会を契機に、これら諸問題を
解決するため総力を結集し、力強く前進することをここに宣言する。

 4.礎賞など日盲連顕彰 視覚障害者福祉に貢献 大会で表彰
 第55回全国盲人福祉大会で視覚障害者福祉に貢献された方々に贈
られる日盲連顕彰による表彰が行われた。今回は、礎賞4人、青い鳥
賞1人、ブライトスター賞1人、パイオニア賞1人、光の泉賞14人、
感謝状1団体の21人と1団体。お名前は次の通り(敬称略・順不同)

 礎賞(組織功労):山本弘(栃木県)、猪股功忠(横浜市)、田淵
茂三郎(鳥取県)、大田弘(福岡県)
 青い鳥賞(福祉・文化功労):岡康子(宮城県)
 ブライトスター賞(スポーツ功労):堀内幹夫(山梨県)
 パイオニア賞(先駆的功績):杉山悦雄(京都府)
 光の泉賞(内助等功労):木村志津子(北海道ブロック・札幌市)、
大谷周蔵(関東ブロック・茨城県)、山本政子(同・栃木県)、大野
春江(北信越ブロック・石川県)、草深みさ子(東海ブロック・三重
県)、澤田きよ子(近畿ブロック・滋賀県)、木村千鶴子(同・奈良
県)、佐藤武子(中国ブロック・島根県)、岡ヒデコ(四国ブロック
・香川県)、金堂レイ子(九州ブロック・福岡県)、畑中タカ子(同
・宮崎県)、河辺豊子(日盲連・東京都)、譜久島和美(同)、倉科
一代(同)
 感謝状:滋賀県視覚障害者福祉協会(第55回全国盲人福祉大会共
催)

 5.第39回代表者会議 8項目の運動方針決定 加盟団体の提出
議案も討議
 大会2日目の16日は、第39回全国盲人代表者会議が全国から約
300人の代表者、関係者が参加して開かれ、平成14年度の運動方
針や加盟団体からの提出議案を討議した。会議に先立ち、昨年9月に
逝去された村谷昌弘日盲連名誉会長の功績を偲び、出席者全員で黙祷
を捧げ、故人の冥福を祈った。
 全体会議で笹川吉彦日盲連会長は、社会福祉基礎構造の大改革が行
われようとしている現状に対応するため、組織を上げて問題の解決に
取り組まなければならないとし、次の八項目の運動方針が本部提案通
り承認された。
 (1)鍼灸師養成施設の新・増設阻止と無資格者対策(2)支援費
制度への対応(3)所得保障対策(4)第3種・第4種郵便対策(5)
IT社会への対応(6)障害者基本計画への対応(7)生活環境の整
備(8)統合教育、高等教育の振興。また、職業分科会から提出され
た、学校法人豊田学園(岐阜市)の晴眼アハキ養成課程新設に断固反
対する緊急動議を大会決議として採択した。(注・豊田学園からは岐
阜県視覚障害者福祉協会宛に5月25日付文書であん摩マッサージ指
圧課程については中止するとの連絡があった)
 各団体から提出された56項目の議案は、生活、バリアフリー、職
業の3分科会で討議された。
 生活分科会では、支援費制度の導入に関して、現在の制度からの後
退はないのか、自己負担額の決定は障害者本人の所得を算定基準にで
きないか、視覚障害の程度を調査する評価表の見直しが必要では、な
ど制度実施に対する不安を訴える意見が相次いだ。また、日常生活用
具給付制度の拡充として、パソコンに加え、色の識別機器を要望する
声が上がっていた。
 バリアフリー分科会では、移動の安全確保のための誘導ブロック、
音声誘導装置、音響式信号機などの仕様の全国統一や、IT関連では
電話ナビゲーションシステムの有効利用とインターネット利用促進、
視覚障害者に対するパソコンボランティア養成などが議論された。テ
レビ放送の音声情報普及に対する要望も上った。
 職業分科会では、あはき等法19条に鍼灸を加え鍼灸師養成施設の
新・増設を規制する件や、無資格者の取締り、保険問題に議論が集中
した。

 6.第3種・第4種郵便存続 理事会、評議員会で取り組み確認
 15日の理事会では同大会に提案する議案の準備・進行などについ
て協議した。引き続き行われた評議員会では平成13年度事業報告、
決算などを本部提案通り承認。笹川吉彦日盲連会長は、郵政事業民営
化に伴う第3種、第4種郵便の存廃問題について、現状を後退させな
いよう今後とも全力を上げて取り組むとした。はり師・きゅう師養成
施設問題では請願書の提出を急ぐよう各加盟団体に呼びかけた。
 平成13年度の事業報告では、第2種社会福祉事業として行ってい
る58団体に対する連絡・助成や、更生相談所、点字図書館、点字出
版所の設置、経営等を当初の計画通り実施、成果を上げたこと、視覚
障害者に対する事項としては(1)情報機器利用状況や支援費制度に
ついての意見など各種調査の実施(2)文化・スポーツ行事の開催
(3)鍼灸師養成施設問題や健保取扱い推進など職域拡大・生業安定
のための取り組み(4)国内外の関係団体との情報交換・連携強化に
努め、9月にタイで開かれたWBU(世界盲人連合)東アジア・太平
洋地域協議会総会、11月にマレーシアで行われた第6回東アジア・
太平洋地域マッサージセミナーなどに代表者を派遣したことなどが報
告された。
 日盲センターにおける事業では録音製作所、用具購買所、ガイドヘ
ルパーネットワーク事業、点字情報ネットワーク事業などが予定通り
の成果を収めたこと、5月に埼玉県視力障害者福祉協会との共催で開
催された第54回全国盲人福祉大会が成功裡に終了したことも報告さ
れた。

 7.鍼灸師養成施設の新・増設断固阻止 アハキ協代議員会
 15日の日盲連アハキ協議会代議員会では、平成13年度事業報告、
同決算、平成14年度事業計画案、同予算案が審議され、いずれも執
行部提案通り承認された。任期満了に伴う役員改選では一部委員が交
代するが、現体制を継続することとなった。
 平成13年度事業報告で、関米一郎協議会長は視覚障害アハキ師の
権益保持と生業安定の観点から、急増している鍼灸師養成施設の新・
増設問題で、昨年5月の全国盲人代表者会議と10月の臨時評議員会
での全会一致の決議を踏まえ、鍼灸をあん摩師等法第19条に加える
よう国会請願を行ったが、採択されるに至らなかった経過を報告。
 また、健保取扱い改善、療養費引き上げ問題では、関係4団体で構
成する保険推進協に参加し、改善すべく陳情に努めたが進展していな
いこと、無資格、類似業者対策についても解決の目処は立っていない
との報告があった。いずれも、アハキを業としている視覚障害者の生
活の基本に関わる重要な問題であることから、運動は平成14年度も
継続して行うこととなった。
 平成14年度の主な事業計画は(1)鍼灸師養成施設の新・増設を
規制するため、法第19条に鍼灸を加える法改正運動を引続き実施
(2)施術単価の引き上げ、同意書の簡素化など健保取扱い条件改善
運動推進(3)無資格、違法類似業者一掃のための運動推進(4)日
本あん摩マッサージ指圧師会と連携を深め、同会の組織強化に積極的
に協力(5)視覚障害同業者の資質の向上を図る(6)組織強化に努
める。

 8.スポーツ連盟協議会 ボウリング連盟を創設
 15日のスポーツ連盟協議会代表者会議では、平成13年度事業報
告、同決算を本部提案通り承認。14年度事業計画案と803万50
00円を計上した予算案も承認された。また、同連盟の中に新しくボ
ウリング連盟を創設することが認められた。
 平成13年度のスポーツ連盟協議会の登録状況は、58団体、25
18人(グランドソフトボール55団体、1269人/視覚障害者卓
球52団体、1051人/フロアバレーボール34団体、676人)
で、平成12年度より137人増。また、事業報告の中で田辺建雄協
議会長から、同一種目のルールが地域によって異なる部分について、
他団体と打ち合わせを行ったことなどが報告された。任期満了に伴う
役員改選では、協議会長に田代浩司日盲連副会長が、副協議会長に西
村秀樹青年協議会長と鈴木孝幸神奈川県視覚障害者福祉協会会長(フ
ロアバレーボール連盟会長)が選出された。
 なお、代表者会議終了後、日盲連スポーツ連盟協議会ボウリング連
盟結成会議が開かれ、規約案、14年度事業計画案等を討議。担当幹
事には福岡市視覚障害者福祉協会の上野文雄氏が選出された。
 平成14年度の主なスポーツ行事は次の通り。
 (1)第2回全国障害者スポーツ大会グランドソフトボール地区予
選(5月~6月、全国七ブロックで)、(2)第9回全国フロアバレ
ーボール大会(9月21日~23日、青森市)、(3)第3回全日本
グランドソフトボール選手権大会(10月12日~14日、名古屋市)
、(4)第17回全日本視覚障害者柔道大会(11月3日、東京都)。

 9.叙勲・褒章
 2002年春の叙勲・褒章で、日盲連関係では次の方々が受章され
た(敬称略)。
 勲五等双光旭日章・堂前茂(70、滋賀県)、勲五等瑞宝章・馬場
弘(79、宮崎県)、勲六等単光旭日章・古屋保(76、山梨県)、
藍綬褒章・堀忠男(64、兵庫県)。黄綬褒章・浦島多吉(80、鳥
取県)。

 10.日盲連新体制スタート 常務理事・協議会担当理事など
 日本盲人会連合(笹川吉彦会長)の新しい役員による理事会が4月
22日、東京・高田馬場の東京都盲人福祉センターで開かれ、常務理
事、各協議会担当理事及び委員が次の通り選任された(敬称略)。
 総務担当常務理事:蒔苗實
 組織担当常務理事:猪股功忠(横浜市)
〈総合企画審議会〉
 担当理事:齊藤績(札幌市)、高橋一居(東京都)、福嶋愼一(京
都府)、竹田寿和(佐賀県)
 委員:柿沼正良(宮城県)、小林文雄(東京都)、室岡正司(千葉
県)、花形幹雄(山梨県)、小山尊(福井県)、杉本由司(名古屋市)
、堀忠男(兵庫県)、舛尾政美(山口県)、楠本光男(愛媛県)、石
渕貞次郎(熊本県)、西村秀樹(青年協議会)、名取陸子(女性協議
会)、島津祐策(音楽家協議会)
〈あはき協議会〉
 担当理事:関米一郎(群馬県)、猪股功忠(横浜市)、時任基清
(東京都)、渡辺哲宏(同)、桜井俊二(長野県)、久米清美(徳島
県)
 委員:東川信夫(北海道)、千葉文児(仙台市)、稲垣佳生(東京
都)、松永秀夫(新潟県)、萩原善次郎(静岡県)、浦友亮(大阪府)
、井上孝昭(岡山県)、岡田八郎(香川県)、笠峰雄(福岡市)
〈スポーツ連盟協議会〉
 担当理事:田代浩司(福岡県)、橋井正喜(名古屋市)
 幹事: 鈴木孝幸(神奈川県)、西村秀樹(滋賀県)、大沼光雄
(仙台市)、加藤範義(栃木県)、東慎一(石川県)、辰巳寿啓(奈
良県)、平子浩(愛媛県)、森永速雄(鹿児島市)、本橋昭人(山形
県)、大橋博(滋賀県)、保坂正勝(札幌市)、加藤則夫(埼玉県)、
上野文雄(福岡市)

 11.身障者10.4%の大幅増 01年の厚労省実態調査
 厚生労働省は4月11日、在宅で暮らす身体障害者の2001年実
態調査(昨年6月1日現在、推計)結果を発表。18歳未満の身障児
を含む身障者の総数は332万6900人で、1996年の前回調査
より10.4%増と大幅に増加した。障害の原因となった疾患別にみ
ると18歳以上の身障者では心臓疾患、脳血管障害、骨関節疾患の割
合が高く、身障児は脳性まひや心臓疾患が高い。厚労省は「高齢化の
進展に伴い高い伸びとなった」と分析している。
 調査によると、身障児は8万1900人で、前回調査と比べてほぼ
横ばい。これに対し、身障者は324万5000人と31万2000
人増えた。65歳以上は41万7000人増の200万4000人で、
全体の60.2%(前回比7.6ポイント増)に上り、高齢化の傾向
がうかがえる。また1、2級の重い障害を持つのは身障者の45.1
%、身障児の63.9%といずれも増加、重度化の傾向もみられると
いう。障害の種類別では肢体不自由がいずれも半数以上を占める。そ
れ以外では、身障者は心臓や呼吸器などの内部障害26.2%、聴覚
・言語障害10.7%、視覚障害9.3%で、身障児は聴覚・言語障
害18.6%、内部障害17.3%、視覚障害5.9%だった。

 12.施術料0.65%引下げ 期間・回数制限見直しへ
 厚生労働省は今年4月1日から診療報酬点数表(保険医療機関の料
金表)を改訂し、平均で約2.65%の引き下げを行なったが、鍼灸
マッサージについても健保療養費払い施術料金を6月1日から平均0
.65%引き下げることなどを5月24日付で通知した。医療費に比
べて比較的引き下げが小幅だったのは、従来、医療費の引き上げ率に
対して鍼灸マッサージのそれが3ないし4分の1程度であったことか
ら、引き下げについても同様とされたもの。
 また、従来、柔整師の往療料は2000円、鍼灸マッサージは19
00円であったものが、今回の改訂では、同額の1875円と揃うこ
とになった。これらは鍼灸マッサージを考える国会議員の会に保険推
進協が陳情を続けたことが実ったとも言えよう。6月からの施術料金
は次の通り(カッコ内は現行料金)。
 はり又はきゅう1術の場合、初回2300円(現行のまま)、2回
目以降10円マイナスの1090円(1200円)。2術併用の場合、
初回2650円(現行のまま)、2回目以降10円マイナスの149
0円(1500円)。
 はり、きゅうに併用する電気針や電気温灸器は、1術の場合、初回
2330円(現行のまま)、2回目以降10円マイナスの1220円
(1230円)。2術併用の場合、初回2680円(現行のまま)、
2回目以降10円マイナスの1520円(1530円)。
 あん摩・マッサージ1局所240円、変形徒手矯正術1肢につき5
20円。あん摩・マッサージに併用する温あん法1回80円加算、温
あん法と合わせて行なう電気光線療法110円は現行のまま。
 はり、きゅう、あん摩・マッサージの往療料は25円マイナスの1
875円(1900円)。
 さらに同通知では、従来、はり、きゅう施術療養費の支給期間と支
給回数について、「初療の日から1カ月以内は15回までを、1カ月
を超えて6カ月以内は各月10回までを限度として支給」となってい
たものが、6月1日以後は「個別の症状を勘案し、従来の支給期間や
支給回数の限度を超えて支給しても差し支えないものとする」となり、
日盲連などが以前から運動していた「期間・回数制限撤廃」の要望に
添うものとなっている。

 13.盲・ろう学校など 就学基準見直し
 政府は4月19日の閣議で盲、ろう、養護学校に就学すべきだとさ
れる障害の程度の基準を見直すとともに、市町村教育委員会の判断で
小・中学校へ就学できるとする改正学校教育法施行令を決定した。今
国会に提出する。9月に施行、2003年度の就学者から適用の予定。
 改正により、盲、ろう、養護学校に行くこととされる児童・生徒で
も、障害を補助する医療器具の使用により、小・中学校に就学しやす
くなる。例えば、両眼の矯正視力が0.1未満の場合はすべて盲学校
に行くことになっているが、拡大鏡などの使用で文字が認識できれば
小・中学校に就学できる。
 また、市町村の教育委員会が就学を認める手続きも見直し、障害に
対応した学校設備が整っていることや、経験のある教員が配置されて
いるなど「特別な事情」があれば就学を認める。障害のある児童・生
徒の状態を適切に判断するため、教育委員会に専門家の意見を聞くこ
とを義務付ける。

 14.聴導、介助犬も交通機関OKに
 盲導犬や聴導犬、介助犬の同伴を公共の施設や交通機関が拒むこと
を禁じた「身体障害者補助犬法」が5月22日、参院本会議で可決、
成立した。10月1日から施行し、身障者が公共施設などを利用しや
すくすることで自立と社会参加を促す。
 同法は道路交通法で規定している盲導犬に加え、これまでペット扱
いされてきた聴導犬と介助犬についても「補助犬」として法的に基準
を設け、国の指定を受けた社会福祉法人などが訓練や認定を行う。盲
導犬に比べて歴史が浅く、30頭にも満たない聴導犬と介助犬につい
ては育成費用を公費助成し、普及を図る。
 公共施設・交通機関だけでなく、身障者は公団・公営住宅で補助犬
と一緒に暮らせるようになり、2003年10月からは不特定多数が
利用するホテルやスーパー、レストランなどでも同伴が可能になる。
民間の職場や賃貸住宅については努力規定を設けた。
 また、国と地方自治体は教育・広報活動を通じ、補助犬が果たす役
割の重要性について国民の理解が深まるよう努め、国民も補助犬を連
れた身障者に必要な協力をするよう努力しなければならない。

 15.第28回全国盲人文芸大会作品募集
 日盲連は厚生労働省、文化庁などの後援で今年も全国盲人文芸大会
を実施、その作品を次の要領で募集している。
 作品の種類:「短歌」「俳句」「川柳」「随想・随筆」の4部門で
自作、未発表の作品。
 応募資格:日盲連組織団体会員であること。
 応募方法:短歌、俳句、川柳は一人3首、または3句以内、随想・
随筆は点字で32マス250行以内(墨字は400字詰め原稿用紙1
0枚以内)。川柳の課題は「光(ひかり)」と「陰(かげ)」。
 書き方:応募用紙は部門ごとに別々の用紙を用い、1行目に部門、
2行目に住所、氏名、次の行から作品。墨字版・点字版作品集に掲載
する際の正確を期するため、点字で応募する場合は、固有名詞等にで
きるだけ墨字(漢字)を書き添え、墨字で応募する場合は漢字にふり
がなをつけること。
 参加料:短歌、俳句、川柳は1部門1000円、随想・随筆は15
00円、2部門以上はそれぞれ加算し①~③のいずれかで送付。①現
金書留②小為替または切手(応募作品に同封)③郵便振替(「文芸大
会参加料」と必ず明記)。
 締切り:8月31日(当日消印有効)。
 入選者発表:日盲連機関誌「点字日本」、機関テープ「日盲連アワ
ー」12月号。
 送り先・問い合せ先:〒169―8664東京都新宿区高田馬場1
―10―33、日盲連文芸係(電話03―3200―3439、郵便
振替00170―9―48326)

 16.大会決議事項を各省庁に陳情
 日盲連(笹川吉彦会長)は5月24日、前日の総合企画審議会、理
事会で整理した第55回全国盲人福祉大会の決議に基づく要望事項が
来年度(平成15年度)予算に盛り込まれるよう、東京・霞が関の関
係各省庁に陳情した。主な内容は次の通り。
 〔内閣府関係〕
 1、新しい「障害者基本計画」及び「障害者プラン」の策定につい
て(1)障害の種別、程度に即したきめ細かな数値目標を設定(2)
障害者福祉施策の具体的な方向を示す(3)IT革命を始めとする急
激な時代の変化に対応できる計画、プランを策定。
 〔警察庁関係〕
 1、歩道や道路の障害物を撤去するよう強力に取締り。
 2、音響式信号機について(1)道路交通法に規定し、速やかに全
国に配備(2)音響は全国統一し、鳴き交わし方式を導入(3)微弱
電波方式のシステムを採用。
 〔総務省関係〕
 1、第3種、第4種郵便を存続し、法律に明記。
 2、視覚障害者に配慮した情報環境充実のため(1)ホームページ
に利用されるPDFファイルの音声読み上げなど視覚障害者向け情報
システム確立(2)視覚障害者の利用に留意した機器の開発・普及
(3)機器・ソフト購入を助成(4)講習会開催、指導者養成。
 3、住民税の特別障害者控除現行30万円を70万円以上に、障害
者控除現行26万円を52万円以上に。
 4、選挙投票に当たって(1)記入位置を示すサインガイドを投票
所に(2)在宅投票を可能に(3)選挙公報の点字・録音版発行、配
布(4)電子投票実施。
 6、情報不足解消のため(1)テレビの解説放送促進(2)緊急字
幕放送の音声化(3)外国語音声の日本語字幕音声化。
 6、携帯電話による通信、通話の利便の拡充と利用しやすい機器の
開発。
 7、銀行との連携の際にも
郵貯ATM残高を音声表示。
 8、民営化しても郵貯ATM機の音声表示存続。
 〔厚生労働省関係〕
 1、支援費制度施行に当たっては(1)障害者福祉が後退しないよ
う視覚障害者のニーズに対応した法制度構築(2)サービスの充実
(3)選択、契約に当たって視覚障害者が不利とならないような制度
実現(4)ガイドヘルパー派遣事業は現在実施している事業者が継続。
 2、障害基礎年金について(1)障害基礎年金1級は月額10万円
以上、2級は月額7万5000円以上に(2)特別障害者手当を常時
介護を要する全盲等の単一の重度障害者にも給付、または介護手当の
創設(3)所得制限は緩和(4)無年金者の救済。
 3、ホームヘルプ・ガイドヘルプサービスの位置づけの明確な制度
化と見直し、及び介護サービスの拡充。
 4、介護体制、介護サービス拡充のため(1)介護保険の要介護認
定にあたって視覚障害者の特性に配慮(2)ホームヘルパー派遣事業
を後退させない(3)介護サービスの自己負担減免。
 5、補装具、日常生活用具について(1)視覚障害者が使用できる
パソコン・ソフトや周辺機器、墨字文書読み上げ装置や色彩識別装置
など最新の情報機器、支援費制度における契約書等の確認に必要な活
字文書読み上げシステムを給付品目に(2)給付は実態とニーズに即
して適用範囲拡大など制度の改善(3)所得制限の撤廃または本人の
みの所得による(4)点字図書給付事業を単独事業とし、対象拡大と
給付限度撤廃、手続きの簡素化。
 6、視覚障害者に配慮した情報環境実現へ(1)機器の開発、普及
(2)機器・ソフト購入のための助成(3)講習会開催、指導者養成。
 7、身体障害者福祉法等施策の拡充として(1)点字図書館職員の
増員と補助金引上げ(2)点字情報ネットワーク端末設置施設の作業
及び資材購入等に対する補助金交付。
 8、視覚障害者の就業促進等にあたって(1)あはき関係では①鍼
灸師養成施設新・増設は法律で強力に規制②あはき師国家試験は従来
どおり東洋療法研修試験財団が継続実施③視覚障害ヘルスキーパー、
機能訓練指導員(特養老人ホーム等)を優先採用④介護保険の介護サ
ービスにあはきを加える⑤あはきに類似、競合する行為の規制⑥介護
保険制度のもとでの就業促進⑦特別養護老人ホーム等への優先採用⑧
雇用主に対する各種助成制度充実、(2)雇用関係では①授産所、福
祉工場、第3セクター方式による企業の増・開設促進②情報機器の活
用による重度視覚障害者の社会参加、とりわけ雇用・就労支援に対し、
通所授産施設の事業を「就労支援事業」として実施③パソコン等職業
訓練充実と機器貸与④就職した障害者に関する資料を作成、公表。
 〔文部科学省関係〕
 1、筑波技術短期大学の4年制大学昇格。
 2、統合教育をより進めるための条件整備。
 3、盲学校教育を充実して職業課程、交流教育、統合教育推進、成
人障害者の生涯社会教育の普及。
 4、あはき師国家試験に対する盲学校教育の問題点改善。
 5、義務教育の段階から障害者への理解と福祉の心を育てる教育・
指導、点字、手話などを含む福祉教育。
 6、すべての教員養成課程に視覚障害者への理解を深める講座。
 〔国土交通省関係〕
 1、交通機関関係では(1)JRの新幹線を含む特急料金を障害者、
介護者とも5割引(2)全国の鉄道駅に誘導ブロックの敷設と段差及
び階段の色分け、電波で作動する音響・音声機器によるガイドシステ
ムの全国統一と設備・普及、駅構内における安全誘導の点検・見直し
(3)障害者に配慮した駅・ターミナルの施設整備と、案内・誘導等
について①ホームドアなど転落防止柵設置②電波で作動する音響・音
声機器によるガイドシステムの全国統一と設備・普及③階段の手すり
にホーム番号、行き先を点字表示、音声誘導システムを設置④弱視者
のため階段の段鼻と踏み面に明度差⑤案内放送は適切な場所と明解な
音量で⑥公共交通機関車内の座席番号を点字と弱視者にも判り易い表
示にし、時刻表も弱視者・高齢者に読みやすく⑦人的な介助体制の充
実(4)航空運賃を障害者、介護者とも5割引(5)バス停留所での
停車位置、乗車地点を視覚障害者が確認できる設備の設置と標柱に音
声誘導・案内機器が設備されるよう基準を設定し、定位置で停車する
よう指導(6)バスの車内・車外向け行先案内放送を義務付け指導を
徹底(7)点・線ブロック、音声誘導システム、ホームドアなど安全
設備の全国統一・普及と機器・設備の研究・開発に当事者の意見尊重。
 2、まちづくり・道路・建築物関係
(1)「住みよいまちづくり」の全国、全地域への一斉普及。「ハー
トビル法」等によるブロック敷設などの基準統一と音響・音声誘導機
器の設備の普及(2)歩車道の段差最低2センチメートルを確保し、
誘導ブロックを必らず設置(3)道路等の基準改定について、①具体
的な基準を全国統一②誘導ブロック敷設にあたって道路の連関の普及
・促進、また横断歩道等に音響・音声機器を加えて立体的な誘導シス
テムを整備、弱視者には誘導ブロックを黄色と規定して統一し階段段
鼻の色分け、照明にも配慮(4)有料道路通行料金割引制度の「介護
者が運転する乗用車」の適用範囲を重度障害者に限らず、また所有者
にかかわらず減免し、障害者が団体で乗車するバス等にも適用(5)
公共建築物における点字表示、触覚案内表示についてのガイドライン
作成(6)ITS(高度交通システム)の研究・開発を促進。
 〔経済産業省関係〕
 1、家電製品、自動券売機、ATM等の画面表示を音声に、スイッ
チやボタンは触れて判るよう各企業に指導し改善のための研究システ
ム設置。
 2、視覚障害者向け情報伝達システムの確立と簡便で安価な情報機
器の開発、製作、普及促進。
 3、インターネットに接続可能な携帯電話、デジタルテレビ等、双
方向情報交換が可能な情報端末機の開発に視覚障害者への配慮。
 4、視覚障害者用機器、ソフトの研究開発、購入費に対する補助、
利用のための講習会開催、指導者養成など情報環境の充実。
 〔財務省関係〕
 1、「障害者プラン」の具体化促進に係る各省庁の予算要求を全額
確保。
 2、所得税の特別障害者控除、現行40万円を70万円以上に、障
害者控除、現行27万円を54万円以上に。
 3、補装具、日常生活用具及び介護等にかかる費用、障害者自身が
運転する自動車や重度障害者介助用の自動車の消費税を非課税に。
 4、固定資産税、相続税、贈与税、障害者が主体となる用地を含む
住居、小規模店舗等は非課税に。
 5、ATMの音声対応化を金融機関に指導。
 6、金融機関などの申請事務に代筆も受け付け。

 17.日盲連加盟団体代表異動など
 *日盲連加盟団体代表交代
 社団法人秋田県視覚障害者福祉協会:佐藤晃一会長から石塚三雄新
会長(63)に。
 社団法人栃木県視覚障害者福祉協会:山本弘会長から蓼沼博夫新会
長(71)に。
 社団法人福岡市視覚障害者福祉協会:柴田文明会長から笠峰雄新会
長(69)に。
 社団法人青森県視力障害者福祉連合会:小田垣康次会長から内田利
男(66)新会長に。
 社団法人広島市視力障害者福祉協会:徳川憲邦会長から川本正行
(58)新会長に。
 *社会福祉法人日本盲人福祉委員会は、4月1日付で東京・高田馬
場の東京都盲人福祉センター本館3階に事務局を移転したが、多田威
夫事務局長が病気療養のため辞職したのに伴い、日盲連の蒔苗實常務
理事(総務部長)が事務局長を兼務することとなった。