障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会(3)
令和7年5月9日、厚生労働省の「第5回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」が中央合同庁舎5号館12階専用14会議室をホスト会場としてオンライン参加を交えて開催され、日本視覚障害者団体連合からは田中伸明評議員が構成員として出席しました。
今回は、障害者雇用率制度等の在り方のうち、常用労働者数が100人以下の事業主から障害者雇用納付金を徴収するのが適当か否かが議論されました。このテーマは法律改正の度に議論されてきたが、中小企業の経済的負担にかんがみ納付義務を適用しないこととしてきました。事務局の説明の概要は次の通りです。
1、制度発足当初は300人以下の企業が徴収の対象外だったが、平成22年7月から200人以下が、また、平成27年4月からは100人以下が対象外とされ、今に至っている。
2、令和6年6月現在の障害者雇用状況をみると、100人以下企業の実雇用率が他の規模の企業より低いが、増加傾向がみられる。また、100人以下企業の法定雇用率達成企業の割合は、企業全体の割合よりは低いが顕著に低いわけではない。
3、中小企業への支援としては、ハローワークでの支援、中小企業等への助成金、障害者雇用相談援助助成金、事業協同組合等算定特例等がある。中小企業や障害者雇用ゼロ企業に対して、重点的な支援施策を実施している。
以上のような事務局の説明を踏まえたうえで、田中委員は次の趣旨を発言しました。
1、納付金を100人以下の企業から徴収することについて慎重論があるが、徴収することにより障害者雇用が進展すると思われる。まず、実態として100人以下企業の実雇用率が低い水準にとどまっている。一方、過去の納付義務の対象範囲を拡大してきた結果をみると、新たに徴収することとなった中小企業の実雇用率が向上しており、その効果は明らかである。
2、中小企業を対象とする支援が既に色々行われており、納付金を徴収することとした場合、それらが組み合わさって効果を発揮するのではないか。いわゆる心のバリアフリーも進むものと期待される。
3、100人以下の企業の数が多いことから、その徴収に係る労力が気になる点ではあるが、各種の労働保険徴収システムと合わせて徴収することにより可能ではないかと考える。ただ、納付義務の対象範囲を拡大するとしても、それをいつ施行するかは検討する必要がある。周知期間等を考慮して適切なタイミングで行うのが良いと思う。
他の委員からは、中小企業が置かれている厳しい経済状況を勘案すると、徴収について慎重に臨む必要があるとの意見がありましたが、全体としては、企業間での公平性や障害者雇用促進上の効果を考えると、徴収することが望ましいという意見が多くありました。